説明

被懸架部材の取付装置

【課題】容易な操作で表示装置の取付位置を少なくとも2方向において調整できる取付装置を提供する。
【解決手段】取付装置1は取付面に固定される固定部材10と、いずれもその操作量が取付面に平行な第1方向の一方から操作される第1及び第2の操作部81,82と、固定部材10に対して第1方向に移動自在に固定され、第1の操作部81の操作量に基づいて表示装置9を固定部材10に対して第1方向へと移動させる第1の部材20と、第1の部材20に対して回転自在に固定され、第2の操作部82の操作量に基づいて回転して、表示装置9を固定部材10に対して第2方向へと移動させる第2の部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被懸架部材の取付装置に関し、例えば複数の薄型表示装置をマルチタイリングに配置して大画面を構成する表示装置についての取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の表示装置をマルチタイリングに(即ち鉛直及び水平方向に並べて)配置して、これら全体を一つの画面と見なした大画面表示装置がある。従来では個々の表示装置として、スクリーン端部まで映像が表示可能な背面投射型プロジェクターが主に採用されている。しかし近年では、液晶ディスプレイに代表される薄型表示装置においても、マルチタイリングに特化した狭縁タイプの薄型表示装置が製品化されてきている。
【0003】
このような薄型表示装置は、背面投射型プロジェクターとは異なり、その厚みが薄いために壁面に取り付けて設置され得る。例えば特許文献1,2には薄型ディスプレイを壁面に取り付けるための壁掛装置が記載されている。より詳細には、特許文献1には、上下方向で表示装置を取付部材に接触させた状態から表示装置を左右方向に移動させ、適切な位置関係に達したときに表示装置及び取付装置が嵌合し、これによって表示装置を取付部材に固定する技術と、チルト機構が設けられた技術とが記載されている。また、特許文献2には壁面に容易に着脱可能な壁掛装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−15541号公報
【特許文献2】特開2006−53212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図27,28は、複数の表示装置をマルチタイリングに配置して得られる大画面表示装置の模式的な一例を示している。図27は大型画面表示装置の正面図を示し、図28は大型画面表示装置の側面図を示す。図27,28の例示では、4つの表示装置100a〜100dが2×2面に配置されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の壁掛装置を採用して表示装置100a〜100dを壁面に取り付けると、表示装置100a〜100dが互いに適切な姿勢で且つ適切な位置に配置されない可能性がある。
【0007】
図29は4つの表示装置100a〜100dのいずれをも含む領域A(図27も参照)を拡大して示している。図30は上下に配置された2つの表示装置100a,100b(或いは100c,100d)の両方を含む領域B(図28も参照)を拡大して示している。図29の例示では、右上の表示装置100cが適切な位置から右上方向にずれて配置されて、表示装置100cと、これと隣接する表示装置100a,100dとの間で隙間が生じている。しかも正面から見て、表示装置100cが表示装置100a,100dに対して傾斜して配置されている。このように表示装置100cが配置された場合、表示装置100cと表示装置100a,100dの各々との間で映像が欠落した部分が大きくなる。
【0008】
また図30の例示では、上の表示装置100a(或いは100c)が下の表示装置100b(或いは100d)に対して前方(画面に垂直な一方向)にずれて配置されている。このように表示装置100cが配置された場合、例えば斜め方向D1,D2から画面を見た場合に映像が欠落した部分が大きくなる。方向D1から見れば表示装置100bの上部が表示装置100aによって隠れ、方向D2から見れば表示装置100a,100bの間で映像の無い部分が生じるからである。
【0009】
以上のように、表示装置100a〜100dが互いに適切な姿勢で且つ適切な位置に配置されない場合には、映像の品質の低下を招く。また大型画面表示装置の見た目の品位、美観を損ねる。
【0010】
そこで、本発明は、少なくとも2方向でかかる映像の欠落を抑制でき、しかも容易な操作を実現する表示装置の取付位置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる被懸架部材の取付装置は、被懸架部材と取付面との間に介在して前記被懸架部材を前記取付面に取り付ける取付装置であって、前記取付面に固定される固定部材と、いずれもその操作量が前記取付面に平行な第1方向の一方から操作される第1及び第2の操作部と、前記固定部材に対して前記第1方向に移動自在に固定され、前記第1の操作部の前記操作量に基づいて前記被懸架部材を前記固定部材に対して前記第1方向へと移動させる第1の部材と、前記第1の部材に対して回転自在に固定され、前記第2の操作部の前記操作量に基づいて回転して、前記被懸架部材を前記固定部材に対して第2方向へと移動させる第2の部材とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる取付装置によれば、第1および第2の操作部の操作量を操作することによって表示装置を第1方向および第2方向に移動させることができる。しかも、第1および第2の操作部はいずれも第1方向の一方から操作されるので、表示装置の位置を調整しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】取付装置及び薄型表示装置の模式的な一例を示す側面図である。
【図2】取付装置及び薄型表示装置の模式的な一例を示す背面図である。
【図3】取付装置及び薄型表示装置の概念的な一例を示す側面図である。
【図4】取付装置及び薄型表示装置の概念的な一例を示す背面図である。
【図5】薄型表示装置の概念的な一例を示す背面図である。
【図6】薄型表示装置の概念的な一例を示す側面図である。
【図7】取付装置の概念的な一例を示す正面図である。
【図8】薄型表示装置を取付装置に取り付ける様子を示す側面図である。
【図9】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図10】上下調整機構の概念的な一例を示す背面図である。
【図11】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図12】左右調整機構の概念的な一例を示す上面図である。
【図13】左右調整機構の概念的な一例を示す背面図である。
【図14】左右調整機構の模式的な一例を示す分解斜視図である。
【図15】左右調整機構の模式的な一例を示す分解斜視図である。
【図16】左右調整機構の概念的な一例を示す背面図である。
【図17】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図18】上下調整機構の模式的な一例を示す分解斜視図である。
【図19】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図20】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図21】上下調整機構の模式的な一例を示す分解斜視図である。
【図22】薄型表示装置への係止を解除する様子を示す側面図である。
【図23】上下調整機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図24】薄型表示装置への係止を解除する解除機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図25】薄型表示装置への係止を解除する解除機構の概念的な一例を示す側面図である。
【図26】薄型表示装置を斜めに支持する様子を示す側面図である。
【図27】マルチタイリングに配置された表示装置の模式的な一例を示す正面図である。
【図28】マルチタイリングに配置された表示装置の模式的な一例を示す側面図である。
【図29】図27の一部を拡大して示す図である。
【図30】図28の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<取付装置の概要>
まず取付装置1の詳細な説明に先立って、その概要について簡単に説明する。図1は取付装置1を薄型表示装置9に取り付けた状態の模式的な一例を示す側面図、図2はその背面図である。取付装置1は薄型表示装置9と取付面との間に介在し、薄型表示装置9を取付面に固定することができる。取付面は例えば壁面である。以下では取付面を壁面として説明する。なお、以下の説明において、壁面の法線方向を前後方向と呼び、薄型表示装置9を正面に見た鉛直方向を上下方向と呼び、法線方向および上下方向に垂直な方向を左右方向と呼ぶ。また、前後方向において壁面側を後方側と、前後方向において薄型表示装置9側を前方側とも呼ぶ。
【0015】
取付装置1は固定部材(以下、ベース板と呼ぶ)10と第1部材20とを有している。なお図1においては、ベース板10の一例と第1部材20の一例とを二点差線で示して、これが模式図であることを強調している。ベース板10は壁面に固定され、第1部材20には薄型表示装置9が取り付けられる。
【0016】
また取付装置1は薄型表示装置9の位置を調整するための操作部81,82を有している。操作部81,82はいずれも壁面に平行な第1方向(図1,2の例示では上下方向)の一方(図1,2の例示では上方)から、ユーザあるいは作業員によって、その操作量が操作される。
【0017】
第1部材20はベース板10に対して第1方向に移動自在に固定され、操作部81の操作量に基づいて薄型表示装置9をベース板10に対して第1方向へと移動させる。かかる機能を実現するためのベース板10、第1部材20及び操作部81の具体的な構造の一例は後に詳述するが、概要を次に説明する。
【0018】
第1部材20は第1方向で薄型表示装置9と連動する。これは、第1方向が上下方向に沿っていれば、第1部材20が例えば薄型表示装置9の一部を上下方向で支持することで実現できる。また第1方向が左右方向に沿っていれば、第1部材20が例えば薄型表示装置9の一部を左右方向で挟むことによって、これを実現してもよい。
【0019】
さて、操作部81は第1方向の一方側から操作されるべく、取付装置1のうち第1方向における一方側の部分に配置される。例えば第1部材20はベース板10に対して第1方向の一方側に位置する曲げ部21を備えており、操作部81の一例たるおねじ部材(例えば調整ボルト)が曲げ部21を第1方向に貫通してベース板10と螺合する。また、曲げ部21が操作部81に対して第1方向で位置決めされるべく、位置決め部材が設けられる。位置決め部材としては例えば操作部81の螺子頭とともに曲げ部21を第1方向で挟むカラーセットが採用される。
【0020】
このような構造によれば、操作部81の回転により、調整ボルト81の螺子頭とベース板10までの距離が変化する。つまり、第1部材20がベース板10に対して第1方向に移動する。これにより薄型表示装置9を第1方向に移動させることができる。
【0021】
また第1部材20には第2部材30が回転自在に固定される。これは、例えば所定のねじが第2部材30を貫通して第1部材20へと螺合することによって実現される。
【0022】
第2部材30は操作部82の操作量に基づいて回転して薄型表示装置9をベース板10に対して第2方向(図2の例示では左右方向)へと移動させる。かかる機能を実現するための第1部材20、第2部材30及び操作部82の具体的な一例は後に詳述するが、概要は次の通りである。
【0023】
即ち、第2部材30は第2方向に垂直な回転軸(図2の例示では前後方向)を中心として第1部材20に回転自在に固定される。また第2部材30のうち当該回転軸よりも第1方向にずれて位置する作用点部分30aが薄型表示装置9へと第2方向への力を作用させる。これは、例えば作用点部分30aが薄型表示装置9の一部を第2方向で挟むことで実現できる。なお、第2方向が上下方向であれば、作用点部分30aは薄型表示装置9の一部を上下方向で支持すればよい。
【0024】
第2部材30を回転させる操作部82は操作部81と同様に第1方向の一方から操作される。例えば操作部82の一例たるおねじ部材(例えば調整ボルト)は第1方向の一方側から曲げ部21を貫通している。また、操作部82が曲げ部21に対して第1方向で固定されるべく、位置決め部材が設けられる。
【0025】
かかる操作部82の回転によって、第2部材30のうち当該回転軸から第2方向にずれて位置する力点部分30bには第1方向への力が作用する。力点部分30bの第1方向における移動によって結果的に第2部材30は回転する。これにより操作部82の回転量(操作量)に基づいて、薄型表示装置9を左右方向に移動させることができる。
【0026】
以上のように、操作部81,82によって、薄型表示装置9を第1方向及び第2方向へと移動させることができる。したがって、複数の薄型表示装置9をマルチタイリングに配置して大画面表示装置を組み立てる場合に、薄型表示装置9の間で生じる映像の欠落部分を低減することができる。
【0027】
しかも、操作部81,82はいずれも第1方向の一方から操作されるので、これらを容易に操作できる。上述したように操作部81,82が上方から操作される態様であれば、複数の薄型表示装置9を水平方向に一列に並べた後で、列毎に位置調整を行うことができる。つまり薄型表示装置9の配置および位置調整をそれぞれ列毎にまとめて行うことができる。
【0028】
以下では、本実施の形態にかかる取付装置1の一例についてより詳細に説明する。参考のためにまず図1,2に対応する詳細な図面を図3,4に示す。取付装置1の詳細な構造については後の説明によって明らかとなる。
【0029】
さて、取付装置1による薄型表示装置9の位置調整の説明に先立って、薄型表示装置9を取付装置1に取り付ける方法の一例について説明する。
【0030】
<表示装置の取付装置への取り付けの一例>
ここでは、まず薄型表示装置9側において取り付けに関連する部材を説明し、次に取付装置1側において取り付けに関連する部材を説明し、続いて薄型表示装置9を取付装置1に取り付ける方法ついて説明する。
【0031】
図5,6はそれぞれ薄型表示装置9の一例の背面図及び側面図である。薄型表示装置9はその後方側において複数のストリッパボルト932が取り付けられている。ストリッパボルト932は螺子頭932aとねじ山を有さない円柱部932bとねじ山を有する螺子部とがこの順で互いに連続した形状を有している。図5,6の例示ではストリッパボルト932は左右方向における両側面で薄型表示装置9にねじ止めされる。これにより、ストリッパボルト932は薄型表示装置9から左右方向へと突出する姿勢で固定される。
【0032】
ストリッパボルト932(より詳細には円柱部932b)は後述するように取付装置1によって支持される。これにより、薄型表示装置9が取付装置1に取り付けられる。
【0033】
なお、取付装置1によって支持される部材はストリッパボルト932に限定されるわけではなく、要するに薄型表示装置9から左右方向に突起した突出部材が設けられて、これらが取付装置1によって支持されればよい。
【0034】
また図5,6の例示では、ストリッパボルト932は直接に薄型表示装置9に固定されておらず、ブラケット91R,91Lを介して薄型表示装置9に固定されている。ブラケット91R,91Lは例えば上下方向に沿って見てT字状の形状を有する。ブラケット91R,91Lは、それぞれ薄型表示装置9の左右方向の両側において、薄型表示装置9の側面および背面と接している。なお図5,6の例示においては、薄型表示装置9の背面に電子部品等を収納する収納ユニット92が設けられており、ブラケット91R,91Lはこの収納ユニット92に取り付けられている。ブラケット91R,91Lはそれぞれ例えば2本のボルト90によって収納ユニット92の側面で固定される。
【0035】
ストリッパボルト932はブラケット91R,91Lに取り付けられる。図5,6の例示では、ブラケット91R,91Lのうち収納ユニット92とは接しない面をストリッパボルト932が左右方向に貫通し(図6参照)、ナット932cと螺合して、ストリッパボルト932がブラケット91R,91Lに固定されている(図5参照)。かかる構造によれば、螺子頭932a及び円柱部932bはブラケット91R,91Lからナット932cとは反対側の空間に位置する。つまり、ストリッパボルト932はブラケット91R,91Lから左右方向に突出した姿勢で固定可能となる。
【0036】
図5,6の例示では、2本のストリッパボルト932がそれぞれブラケット91Rの上側及び下側に固定され、2本のストリッパボルト932がそれぞれブラケット91Lの上側及び下側に固定されている。これによれば、4箇所で取付装置1へと薄型表示装置9を取り付けることができ、薄型表示装置9の安定した保持に寄与する。
【0037】
また図5,6の例示では、ブラケット91R,91Lがそれぞれストリッパボルト931およびボルト90によって収納ユニット92の背面で固定されている。これによって、ブラケット91R,91Lが収納ユニット92の側面及び背面の2面に固定されるので、より強固に固定される。
【0038】
なお、ブラケット91Rと収納ユニット92との間の固定という観点では必ずしもストリッパボルト931を採用する必要はない。単なるボルトでも構わない。ただし、薄型表示装置9の位置調整にストリッパボルト931を利用することができるため、図5,6の例示ではストリッパボルト931が採用される。この点については、後に詳述する。
【0039】
次に取付装置1について説明する。図7は取付装置1の一例を示す正面図である。よって、図7においては紙面奥側が壁面である。また図7においては、取付装置1と薄型表示装置9との位置関係を見やすくするために、紙面手前側に配置されるべき薄型表示装置9の外形を破線で表している。
【0040】
図7に例示するように、取付装置1は壁掛ユニット5R,5Lを有している。壁掛ユニット5R,5Lはそれぞれ壁面に固定される。図7の例示では壁掛ユニット5R,5Lの各々は2本のボルト90によって壁面に固定されている。
【0041】
壁掛ユニット5R,5Lはそれぞれ薄型表示装置9に固定されたストリッパボルト932を支持する構造を有している。より詳細な壁掛ユニット5R,5Lの構造について、図8も参照して説明する。図8は、薄型表示装置9を取付装置1に取り付ける様子を示している。壁掛ユニット5Rには凹部20a,20bが形成されている。凹部20aは壁掛ユニット5Rの上部において上方に開口し、ブラケット91Rの上側に取り付けられたストリッパボルト932を支持する。凹部20bは壁掛ユニット5Rの下部において前方に開口し、ブラケット91Rの下側に取り付けられたストリッパボルト932を支持する。
【0042】
同様に、壁掛ユニット5Lにも凹部20a,20bが形成される。壁掛ユニット5Lにおいて、凹部20a,20bはブラケット91Lの上側及び下側に取り付けられたストリッパボルト932をそれぞれ支持する。
【0043】
かかる構造において、薄型表示装置9の上部をその下部よりも取付装置1側へと近づけた状態で、ブラケット91R,91Lに固定された上側のストリッパボルト932(より詳細には円柱部932b)をそれぞれ壁掛ユニット5R,5Lの凹部20aに上方から挿入する。続けて、下側のストリッパボルト932を壁面に近づけるように上側のストリッパボルト932を中心として薄型表示装置9を回転させると、下側のストリッパボルト932(より詳細には円柱部932b)がそれぞれ壁掛ユニット5R,5Lの凹部20bに挿入される。つまり、薄型表示装置9は4本のストリッパボルト932で軸支される(図3も参照)。
【0044】
なお図7の例示では壁掛ユニット5R,5Lは上下方向から見て並んで配置されている。換言すればこれらは互いに左右方向に分離している。なお、かかる分離は必須要件ではなくこれらが一体で構成されていても良い。ただし、壁掛ユニット5R,5Lが分離していれば、ストリッパボルト932の間の左右方向における距離に応じて、壁掛ユニット5R,5Lの間の距離を調整してこれらを壁面に固定することができる。よって、例えばストリッパボルト932の間の左右方向における距離が相違する複数種類の薄型表示装置9に対しても、同一の壁掛ユニット5R,5Lを採用することができる。
【0045】
次に取付装置1が有する薄型表示装置9の位置調整機構について説明する。
【0046】
<上下調整機構>
図9は薄型表示装置9を上下方向に移動させる上下調整機構の一例を示す側面図、図10はその背面図である。なお、図9,10は、壁掛ユニット5Rの近傍を拡大して示している。また図の煩雑を避けるために、上下方向以外の方向に対する調整機構の一部を省略して示している。なおここでは、壁掛ユニット5R,5Lは互いに同一の上下調整機構を有しているものとして説明する。
【0047】
壁掛ユニット5Rはベース板10と第1部材20(以下、上下移動部材20と呼ぶ)とを備えている。図10においては、ベース板10を破線で示し、図9においては斜線のハッチングで上下移動部材20を示している。ベース板10は図10に例示するように例えば2つのボルト90によって壁面に固定される。上下移動部材20は薄型表示装置9を上下方向で支持する。上述した取り付けの例に即して述べると、上下移動部材20には凹部20a,20bが形成される。
【0048】
壁掛ユニット5Rには、上下移動部材20をベース板10に対して上下方向に移動させるための操作部81が設けられる。図9,10の例示では、操作部81は上方から操作されるべく壁掛ユニット5Rの上部に設けられている。例えば上下移動部材20は自身の上部において後方側(ベース板10側)へと屈曲して延在する曲げ部21を有している。曲げ部21はベース板10の上方に位置している。操作部81はこの曲げ部21に設けられる。
【0049】
図9,10の例示では操作部81はおねじ部材(以下、調整ボルト81と呼ぶ)で構成されている。調整ボルト81は、曲げ部21に設けられた貫通孔を上方から下方へと貫通する。調整ボルト81は曲げ部21に対して回転自在である。また、調整ボルト81の上下移動部材20に対する上下方向の位置を決める位置決め部材811が設けられている。例えば位置決め部材811としてセットカラー811が採用される。セットカラー811は円形の空芯を有する円形の部材であって、調整ボルト81の螺子部が当該空芯を貫通する。セットカラー811は曲げ部21よりも下方で調整ボルト81に固定される。これにより、曲げ部21は調整ボルト81の螺子頭とセットカラー811によって挟まれる。したがって、上下方向において調整ボルト81は曲げ部21に対して位置決めされる。
【0050】
一方、ベース板10には、上下方向で曲げ部21と対面する曲げ部11が設けられている。当該曲げ部11にはねじ孔が設けられており、調整ボルト81はこのねじ孔に螺合する。
【0051】
このような構造によれば、調整ボルト81を回転させることで、上下方向における曲げ部21とベース板10との間の距離を調整できる。つまり上下移動部材20をベース板10に対して上下方向に移動させることができる。上下移動部材20は薄型表示装置9を上下方向で支持しているので、結果的に薄型表示装置9をベース板10に対して上下方向に移動させることができる。
【0052】
図11には、調整ボルト81を締め付け方向に回転させて、薄型表示装置9を下方へと移動させた状態が示されている。
【0053】
また壁掛ユニット5Lも壁掛ユニット5Rと同様の上下調整機構が設けられている。したがって、各壁掛ユニット5R,5Lにおいて互いに同量且つ同方向の上下移動を行えば、薄型表示装置9を上下方向に平行移動させることができる。一方で、各壁掛ユニット5R,5Lにおいて互いに異なる量あるいは異なる方向の上下移動を行えば、前後方向に沿って見た薄型表示装置9の傾斜をも調整することができる。
【0054】
なお、当該傾斜を調整する機能を必要としなければ、2つの操作部81の操作量によってそれぞれ上下方向に移動する2つの上下移動部材20が、上下方向から見て並んで配置される必要はない。換言すれば取付装置1は必ずしも壁掛ユニット5R,5Lを有している必要はない。例えば上下方向から見て一つの上下移動部材が配置され、これが4つのストリッパボルト932を支持し、当該一つの上下移動部材が一つの操作部によって上下方向に移動してもよい。
【0055】
<上下移動部材20とベース板10との間の固定>
上下移動部材20とベース板10とは調整ボルト81によって互いに固定されているものの、これらはより強固に固定されることが望ましい。図9〜11の例示では、調整ボルト81とは異なる箇所で上下移動部材20とベース板10とが相互に固定されている。例えば上下移動部材20の一部はベース板10と左右方向で対面する。この一部を固定用部分22と呼ぶ。固定用部分22には左右方向に自身を貫通する長孔22aが形成されている。長孔22aは上下方向に長尺の形状を有している。一方、ベース板10のうち長孔22aと対面する位置にはねじ孔が形成されている。そして、ねじ95は長孔22aを貫通して当該ねじ孔に螺合する。ねじ95は例えば段付きねじであって、その段差において上下移動部材20をベース板10側に摺動自在に固定する。
【0056】
かかる構造によれば、ねじ95が長孔22aの上方で上下移動部材20に接触する下限位置(図11の状態)と、ねじ95が長孔22aの下方で上下移動部材20に接触する上限位置との間の範囲内で、上下移動部材20はベース板10に対して上下方向に移動でき、かつ上下移動部材20とベース板10の取付けを強固にできる。また、任意のねじ95を段付きねじではなく、通常のねじにすることによって、任意の位置でねじ95を締め付けてより強固に固定できる。なおねじ95を締め付けた状態であっても、調整ボルト81によって上下移動部材20をベース板10に対して移動することができる。これは、ねじ95の締め付け力を調整することで実現することができる。
【0057】
また図10の例示では、上下移動部材20とベース板10とが左右方向に対面して互いに固定されているが、前後方向に対面して同様の構造によって相互に固定されてもよい。また長孔およびねじ孔が設けられる対象を入れ替えてもよい。なお上述したねじの締め付け力、2つの部材が対面する方向、および長孔とねじ孔が設けられる対象の内容は、以下で説明する他の部材に対しても適用可能であるため、繰り返しの説明を避ける。
【0058】
また図9〜11の例示では、複数の箇所(例えば調整ボルト81及び5個のねじ95によって6箇所)で上下移動部材20とベース板10とが互いに固定されている。これによって、上下移動部材20とベース板10との間の固定力を高めることができる。
【0059】
<左右調整機構>
薄型表示装置9は上下移動部材20に支持された状態であっても左右方向へと移動することができる。この点について上述した例に即して説明する。4つのストリッパボルト932は左右方向に突出している(図5も参照)。左右方向に突出する4つのストリッパボルト932はそれぞれ凹部20a,20bにおいて上下移動部材20を左右方向に貫通する。また円柱部932bは左右方向において凹部20a,20bよりも十分に長い。よって、ストリッパボルト932は凹部20a,20bを左右方向に滑って移動することができる。つまり、薄型表示装置9へと左右方向への力を作用させれば、これを左右方向に移動させることができる。なお、上述した例では、ストリッパボルト932の螺子頭932aが左右方向において上下移動部材20に接することにより、薄型表示装置9の左右方向における移動可能範囲を制限するとともにストリッパボルト932が凹部20a,20bから抜け落ちることを防止している。
【0060】
次に、薄型表示装置9へと左右方向の力を作用させる機構について説明する。左右方向の力が作用される部材として例えば上述したストリッパボルト931が利用される(図5,6を参照)。ストリッパボルト931は薄型表示装置9に対して後方側(取付装置1側)に突出している。このストリッパボルト931に左右方向の力を作用させることで、薄型表示装置9を左右方向に移動させる。
【0061】
図12は左右調整機構の一例を示す平面図、図13はその背面図である。図12,13において左右調整機構を分かりやすくするため、その他の部品は省略している。図12においては曲げ部21を破線で示し、更に透明で示している。図13においては上下移動部材20を実線で示し、更に透明で示している。また図14には左右調整機構の一例を構成する要素を分解して模式的に示している。
【0062】
上下移動部材20には左右移動部材31が左右方向で移動自在に固定されている。図12−14の例示では、上下移動部材20は前後方向で左右移動部材31と対面する部分23を有している。当該部分23には前後方向に沿って自身を貫通する2つの長孔23aが形成されている。長孔23aは左右方向に長尺の形状を有している。一方、左右移動部材31のうち前後方向で長孔23aと対面する部分にはねじ孔31aが形成されている。ねじ孔31aは左右方向における左右移動部材31の両側に形成されている。そして、ねじ961,962はそれぞれ2つの長孔23aを貫通して2つのねじ孔31aに螺合する。かかる構造によれば、ねじ961,962の少なくともいずれか一方が長孔23aの左右方向で上下移動部材20に接触する範囲内で、左右移動部材31は上下移動部材20に対して左右方向に移動できる。
【0063】
左右移動部材31は部分23に対して前方側(薄型表示装置9側)に位置し、ストリッパボルト931を少なくとも左右方向で挟む。図12〜14の例示では、左右移動部材31には、上方に開口し前後方向に左右移動部材31を貫通する凹部31bが形成されている。ストリッパボルト931は凹部31bへと上方から挿入される。よって、左右移動部材31が左右方向へと移動すれば、これに伴ってストリッパボルト931に左右方向への力が作用する。したがって、薄型表示装置9は左右移動部材31の移動に伴って上下移動部材20、ひいてはベース板10に対して左右方向へと移動する。
【0064】
さて左右移動部材31を左右方向へと移動させるための操作部82は、操作部81と同じ方向(ここでは上方)から操作される。図12〜14の例示では操作部82の一例たるおねじ部材(以下、調整ボルト82と呼ぶ)は曲げ部21に設けられる。曲げ部21には上下方向で自身を貫通する貫通孔が設けられており、かかる貫通孔を通って上方から下方へと調整ボルト82が曲げ部21を貫通している。調整ボルト82は曲げ部21に対して回転自在である。また、上下移動部材20に対する調整ボルト82の上下方向の位置を決める位置決め部材821が設けられる。この点については調整ボルト81および位置決め部材811と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0065】
調整ボルト82はジョイント部材33に形成されるねじ孔33aに螺合する。ジョイント部材33は後述するように上下方向を軸としては回転しないので、調整ボルト82の回転によって曲げ部21とジョイント部材33との間の距離が調整される。つまりジョイント部材33は上下移動部材20に対して上下方向に移動する。
【0066】
ジョイント部材33と左右移動部材31とはリンク部材32を介して相互に固定される。リンク部材32はジョイント部材33の上下方向における移動を左右方向へと変換して左右移動部材31を左右方向へと移動させるための部材である。図12〜14の例示では、リンク部材32はL次状の形状を有している。より詳細には、リンク部材32は上下方向に延在する部分321と、部分321の上下方向における一端から左右方向の一方に延在する部分322とを有している。
【0067】
リンク部材32は、上下方向および左右方向に垂直な(前後方向に平行な)回転軸を中心として、上下移動部材20に対して回転自在に固定されている。図12〜14の例示では、リンク部材32には前後方向に自身を貫通する孔32aが形成されている。部分23のうち前後方向において孔32aと対面する部分にはねじ孔23bが形成されている。ねじ963は孔32aを遊貫してねじ孔23bに螺合している。これによって、リンク部材32はねじ963を回転軸として上下移動部材20に対して回転自在に固定される。なお、ねじ963を締め付けた状態であっても、リンク部材32は上下移動部材20に対して回転することができる。これは、ねじ963が例えば段付きねじであって、その段差においてリンク部材32の孔32aに挿入されることで実現できる。またはねじ963に孔32aの内径より少し小さい外径を持ち、リンク部材32の孔32aの厚さより少し厚いカラーを挿入し、そのカラーにおいてリンク部材32の孔32aに挿入されるようにねじ963を固定することで実現できる。また孔とねじ孔が設けられる対象を入れ替えても構わない。なお、回転自在にねじ止めする手段および孔とねじ孔が設けられる対象についての内容は、以下で述べる他の部材に対しても適用可能であるため、繰り返しの説明を避ける。
【0068】
部分321の他端は左右移動部材31に対して回転自在に固定される。図12〜14の例示では、当該他端には部分321を前後方向で貫通する孔32bが形成されている。ねじ961は孔32bと長孔23aとを貫通してねじ孔31aに螺合する。ねじ961は長孔23aを遊貫してリンク部材32と左右移動部材31とを互いに固定する。なお、ねじ961は長孔23aを左右方向に移動するので、リンク部材32の小幅な回転を妨げない。
【0069】
部分322の部分321とは反対側の一端は、ジョイント部材33に対して回転自在に固定される。図12〜14の例示では、例えば当該一端には部分322を前後方向で貫通する孔32cが形成されている。ねじ964は孔32cを遊貫して、ジョイント部材33に形成されたねじ孔33bに螺合する。なお図12〜14の例示では、ねじ964は上下移動部材20(部分23)も貫通している。部分23のうち孔32cと対面する部分には長孔23cが形成されている。長孔23cは上下方向に長尺の形状を有している。そして、ねじ964が長孔23cと孔32cを遊貫して、ジョイント部材33に形成されたねじ孔33bに螺合している。なお、ねじ964は長孔23cを上下方向に移動することができるので、ジョイント部材33の上下方向の移動およびリンク部材32の小幅な回転を妨げない。またジョイント部材33と螺合したねじ964がリンク部材32を遊貫することにより、上下方向を軸としたジョイント部材33の回転が防止されて、調整ボルト82の回転によってジョイント部材33が上下方向へと移動する。
【0070】
上述した構造によれば、調整ボルト82の回転によってジョイント部材33が上下方向に移動し、これと回転自在に固定された部分322の一端も上下方向に移動する。
【0071】
なお、より厳密には、部分322の一端は孔32aを中心とした周方向に移動するのに対し、ジョイント部材33は上下方向に移動する。よって、これらの位置が乖離しえるが、例えば調整ボルト82が曲げ部21に対して左右方向への若干の移動を許す程度に固定され、或いはリンク部材32が左右方向への若干の移動を許す程度に固定されていることで(つまりリンク部材32の孔32cが左右方向に長尺の形状を有する長孔であることで)、実質的な乖離を防止できる。また部分322の一端とジョイント部材33とが回転自在に固定されていることから、ジョイント部材33の上下移動に伴って部分322およびジョイント部材33に曲げ応力が発生することも防止できる。これらの内容は、以下で説明する、直線方向に移動する部材と周方向に移動する部材との固定についても適用されるので、繰り返しの説明を省略する。
【0072】
このようなジョイント部材33の上下方向の移動、即ち部分322の一端における上下方向の移動によって、リンク部材32はねじ963を回転軸として回転する。かかる回転によって、部分321の他端はねじ961を介して左右移動部材31へと左右方向の力を作用させる。これにより、左右移動部材31は左右方向へと移動する。左右移動部材31の移動によってストリッパボルト931には左右方向に力が作用して、ストリッパボルト931は左右方向へと移動する。したがって、調整ボルト82の回転量に基づいて薄型表示装置9を上下移動部材20、ひいてはベース板10に対して左右方向に移動させることができる。
【0073】
図15には、調整ボルト82を締め付け方向とは反対方向に回転させて、薄型表示装置9を左方向(図15では壁面側から見ているので右方向)へと移動させた状態が示されている。
【0074】
なお、部分321,322が連結する付近は上下移動部材20に対して前後方向に平行な軸を回転軸として回転可能に固定される回転軸部分と把握でき、部分322の一端は調整ボルト82による上下方向の力が作用する力点部分と把握でき、部分321の他端は薄型表示装置9へと左右方向の力を作用させる作用点部分と把握できる。
【0075】
また回転軸と力点部分との間の距離が回転軸と作用点部分よりも長くてもよい。これによれば、ジョイント部材33の移動量に比して、左右移動部材31の移動量が小さくなるので、左右方向における細かな調整を行いやすい。またてこの原理に鑑みれば、ジョイント部材33を小さな力で上下方向に移動でき、ひいては調整ボルト82の操作に要する力を低減できる。なおこの内容は、以下で説明する回転軸部分、作用点部分及び力点部分にも適用可能であるため、繰り返しの説明を避ける。
【0076】
またリンク部材32はL字状の形状を有する必要はなく、要するにリンク部材32が上下移動部材20に対して前後方向を回転軸(例えばねじ963)として回転自在に固定され、当該回転軸に対して上下方向にずれて位置する作用点部材において左右移動部材31と固定され、回転軸に対して左右方向にずれて位置する力点部材においてジョイント部材33と固定されていればよい。
【0077】
また左右移動部材31は必須の要件ではない。図16に例示するように、リンク部材32を部分23に対して薄型表示装置9側に配置し、リンク部材32の部分321の他端側においてストリッパボルト931を少なくとも左右方向で挟む凹部32dを形成してもよい。なお薄型表示装置9が、上方から下方へとストリッパボルト932を凹部20aに挿入して、上下移動部材20に取り付けられるのであれば、これと同様に上方から下方へとストリッパボルト931をリンク部材32の凹部32dに挿入できることが望ましい。これは、図16に例示するように、部分321が回転軸(ねじ963)から上方へと延在し、部分321の上方側の一端に凹部32dを形成し、この凹部32dが上方に開口していることで実現できる。かかる構造によっても調整ボルト82の回転によってリンク部材32の凹部32dは左右方向に移動するので、薄型表示装置9の上下移動部材20に対する相対位置を左右方向に調整できる。
【0078】
なお左右調整機構は壁掛ユニット5R,5Lのいずれか一方に設けられていればよい。他方は、薄型表示装置9の左右方向における移動を許す構造を有していればよい。
【0079】
また上述した例では、調整ボルト82、ジョイント部材33およびリンク部材32は、部分23よりも後方側(壁面側)に配置されている。これによって、部分23に対して前方側の部品数を減らすことができる。よって、薄型表示装置9を取付装置1に取り付けやすい。
【0080】
またリンク部材32の作用点部分がその回転軸(ねじ963)よりも上下方向および左右方向にずれて位置していてもよい。この場合であっても、上下移動機構が設けられていれば、薄型表示装置9の位置を2次元的に調整できる。
【0081】
<前後調整機能>
薄型表示装置9は上下移動部材20に支持された状態であっても前後方向へと移動することができる。この点について上述した例に即して説明する。4つのストリッパボルト932は左右方向に突出している(図5も参照)。左右方向に突出する4つのストリッパボルト932はそれぞれ凹部20a,20bにおいて上下移動部材20を左右方向に貫通している(図9も参照)。また凹部20a,20bの前後方向における長さはストリッパボルト932の円柱部932bの前後方向における長さ(即ち径)よりも長い。よって、ストリッパボルト932は凹部20a,20bを前後方向に滑って移動することができる。つまり、薄型表示装置9を前後方向に移動させることができる。なお、上述した例では、凹部20a,20bの前後方向における長さは、薄型表示装置9の前後方向における移動可能範囲を制限する。
【0082】
次に、薄型表示装置9へと前後方向の力を作用させる機構について説明する。前後方向の力を作用させる部材として例えば上述したストリッパボルト932が利用される(図5,6を参照)。ここでは4つのストリッパボルト932の各々を前後方向に移動させることによって、薄型表示装置9を前後方向に移動させる。
【0083】
図17は上側のストリッパボルト932を前後方向に移動させるための前後位置調整機構の一例を示す側面図である。図において構造を分かりやすくするため上下移動部材20は1点鎖線で表し、さらに透明で示している。また図18には前後調整機構を構成する要素を分解して模式的に示している。
【0084】
上側のストリッパボルト932は前後移動部材41によって少なくとも前後方向で挟まれている。図17,18の例示では、前後移動部材41にはその上部において凹部41aが形成されている。凹部41aは上方に開口するとともに前後移動部材41を左右方向で遊貫させる。上側のストリッパボルト932は凹部41aに挿入されて前後移動部材41によって前後方向で挟まれる。かかる凹部41aが前後方向に移動することによって、上側のストリッパボルト932へと前後方向の力を作用させる。ひいては、薄型表示装置9はその上部において前後方向に移動する。
【0085】
さて凹部41aを前後方向へと移動させるための操作部83は、操作部81と同じ方向(ここでは上方)から操作される。図17,18の例示では操作部83の一例たるおねじ部材(以下、調整ボルト83と呼ぶ)は曲げ部21に設けられる。曲げ部21には上下方向で自身を貫通する孔が設けられており、かかる孔を通って上方から下方へと調整ボルト83が曲げ部21を貫通している。調整ボルト83は曲げ部21に対して回転自在である。また、上下移動部材20に対する調整ボルト83の上下方向の位置を決める位置決め部材831が設けられる。この点については調整ボルト81および位置決め部材811と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0086】
調整ボルト83はジョイント部材42に形成されるねじ孔42aに螺合する。ジョイント部材42は後述するように上下方向を軸としては回転しないので、調整ボルト83の回転によって曲げ部21とジョイント部材42との間の距離が調整される。つまりジョイント部材42を上下移動部材20に対して上下方向に移動させることができる。
【0087】
前後移動部材41はジョイント部材42の上下方向の移動に伴って凹部41aを前後方向に移動させる機能を有している。すなわち前後移動部材41は、凹部41aから上下方向にずれて位置し上下方向および前後方向に垂直な(左右方向に平行な)回転軸を中心として、回転自在に上下移動部材20に固定されている。図17,18の例示では、前後移動部材41には凹部41aの下方においてねじ孔41bが形成されている。一方、上下移動部材20において凹部20aが形成される側面を呈する部分24のうち、左右方向で孔41bと対面する部分には孔24aが形成されている。孔24aは部分24を左右方向で貫通する。そして、ねじ941が孔24aを遊貫してねじ孔41bに螺合する。これにより、前後移動部材41はねじ941を回転軸として部分24に対して回転自在に固定される。
【0088】
また前後移動部材41は、当該回転軸よりも前後方向にずれて位置し左右方向に平行な回転軸を中心として、ジョイント部材42に対して回転自在に固定される。図17,18の例示では、前後移動部材41のうちねじ孔41bよりも壁面側に位置する部分には、左右方向に前後移動部材41を貫通する孔41cが形成されている。一方、ジョイント部材42のうち左右方向で孔41cと対面する部分にはねじ孔42bが形成されている。ねじ942は孔41cを遊貫してねじ孔42bと螺合する。なお、かかる構成によってジョイント部材42は上下方向を軸としては回転せずに、調整ボルト83の回転によって上下方向に移動する。
【0089】
このような構造によれば、ジョイント部材42の上下方向の移動によって前後移動部材41はねじ941を回転軸として回転する。かかる回動によって凹部41aは前後方向に移動する。したがって、調整ボルト83の回転量に基づいて、上側のストリッパボルト932を、即ち、薄型表示装置9をその上部において上下移動部材20に対して前後方向に移動させることができる。
【0090】
図19には、調整ボルト82を締め付け方向とは反対方向に回転させて、薄型表示装置9を前後方向における壁面側へと移動させた状態が示されている。
【0091】
なお、前後移動部材41のうち、ねじ孔41bの近傍を回転軸部分と、凹部41aの近傍を作用点部分と、ねじ孔41cの近傍を力点部分と把握できる。
【0092】
また図17,18の例示では、ジョイント部材42は上下移動部材20に対して上下方向において移動可能に固定されている。より詳細には、ジョイント部材42には左右方向で自身を貫通して上下方向に長尺の形状を有する長孔42cが形成され、ねじ95が上下移動部材20の固定用部分22に形成された長孔22aと長孔42cとを遊貫してベース板10に螺合する。これによって、ジョイント部材42の上下方向の移動を確保しつつも固定力を向上できる。
【0093】
また上述した例では、調整ボルト83、ジョイント部材42は、部分23よりも後方側(壁面側)に配置されている。これによって、部分23に対して前方側の部品数を減らすことができる。よって、薄型表示装置9を取付装置1に取り付けやすい。この場合、前後移動部材41は、部分23を挟んで互いに異なる空間に配置されるストリッパボルト932及びジョイント部材42と接触するので、例えば部材23には前後移動部材41を前後方向で遊貫させる切欠24eが設けられる。
【0094】
図20は下側のストリッパボルト932を前後方向に移動させるための前後位置調整機構の一例を示す側面図である。図において構造を分かりやすくするため上下移動部材20は1点鎖線で表し、透明で示している。また図21には前後調整機構を構成する要素を分解して模式的に示している。
【0095】
下側のストリッパボルト932は前後移動部材51によって少なくとも前後方向に挟まれる。なお、上述した取り付けの例においては下側のストリッパボルト932は上下移動部材20の凹部20bに前後方向に沿って挿入される。よって、前後移動部材51はかかる挿入を阻害せず、ストリッパボルト932の挿入後はこれを前後方向に挟む。かかる機能を実現すべく、図20,21の例示では、前後移動部材51は回転部材52と係止部材53を備えている。
【0096】
図20,21の例示では、回転部材52は四角形の板の一つの角をより小さい四角形で削った形状を有している。この削り取られて段差を形成する段差部52aに下側のストリッパボルト932が配置される。
【0097】
係止部材53は回転部材52に対して、段差部52aよりも壁面側に位置して上下方向および前後方向に垂直な(左右方向に平行な)回転軸を中心として、回転自在に固定される。例えば回転部材52には段差部52aよりも壁面側で孔52bが形成される。孔52bは左右方向において回転部材52を貫通する。係止部材53のうち孔52bと左右方向で対面する部分にはねじ孔53aが形成される。そして、ねじ951が孔52bを遊貫してねじ孔53aに螺合する。これによって、係止部材53は回転部材52に対して回転自在に固定される。
【0098】
また係止部材53は、ストリッパボルト932に対して薄型表示装置9側に位置するつめ部53bを有している。図20,21の例示では、係止部材53はねじ孔53aからストリッパボルト932を跨いで薄型表示装置9側へと延在し、ストリッパボルト932に対して薄型表示装置9側においてつめ部53bを有している。
【0099】
そして、係止部材53を回転部材52に対して回転させれば、図22に示すように、つめ部53bをストリッパボルト932に対して上方へと移動させることができる。かかる状態では、ストリッパボルト932が前方側(薄型表示装置9側)に開放される。つまりストリッパボルト932の前方への移動が許可される。一方、ストリッパボルト932が凹部20bに挿入された状態で、係止部材53を回転部材52に対して回転させてつめ部53bを下方へと移動させれば、所定の回転位置において回転部材52及び係止部材53が協働してストリッパボルト932を前後方向で挟むことができる。なお係止部材53がストリッパボルト932を挟む形状を有しており、係止部材53のみによってストリッパボルト932を挟んでもよい。
【0100】
また、ストリッパボルト932が凹部20bへと挿入されるに際して、ストリッパボルト932が薄型表示装置9側からつめ部53bと接してこれを上方へと移動させることが望ましい。これは、例えばつめ部53bの薄型表示装置9側の側面に、左右方向から見て傾斜した傾斜部53dを設けることにより実現できる。
【0101】
以上のように、前後移動部材51はストリッパボルト932の凹部20bへの挿入を阻害することなく、ストリッパボルト932を前後方向で挟む。このストリッパボルト932を挟む部分51a(図20,21の例示では段差部52a及びつめ部53b)を前後方向へと移動させることにより、ストリッパボルト932を前後方向に移動させる。
【0102】
さて部分51aを前後方向へと移動させるための操作部84は、操作部81と同じ方向(ここでは上方)から操作される。図20,21の例示では操作部84の一例たるおねじ部(以下、調整ボルト84と呼ぶ)は曲げ部21に設けられる。曲げ部21には上下方向で自身を貫通する孔が設けられており、かかる孔を通って上方から下方へと調整ボルト84が曲げ部21を貫通している。調整ボルト84は曲げ部21に対して回転自在である。また、上下移動部材20に対する調整ボルト84の上下方向の位置を決める位置決め部材841が設けられる。この点については調整ボルト81および位置決め部材811と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0103】
調整ボルト84はジョイント部材54に形成されるねじ孔54aに螺合する。ジョイント部材54は後述するように上下方向を軸としては回転しないので、調整ボルト84の回転によって曲げ部21とジョイント部材54との間の距離が調整される。つまりジョイント部材54が上下移動部材20に対して上下方向に移動される。
【0104】
前後移動部材51はジョイント部材54の上下方向の移動に伴って、部分51aを前後方向に移動させる機能を有している。すなわち前後移動部材51は、部分51aから上下方向にずれた位置で上下方向および前後方向に垂直な(左右方向に平行な)回転軸を中心として、回転自在に上下移動部材20に固定されている。図20,21の例示では、回転部材52のうち段差部52aよりも下方に位置する部分にはねじ孔52cが形成されている。一方、上下移動部材20の部分24のうちねじ孔52cと左右方向で対面する部分には孔24aが設けられている。孔24aは左右方向に部分24を貫通する。そして、ねじ952が孔24aを遊貫してねじ孔52cと螺合する。これにより、前後移動部材51はねじ952を回転軸として部分24に対して回転自在に固定される。
【0105】
また前後移動部材51は、ねじ952よりも前後方向にずれて位置し左右方向に平行な回転軸を中心として、ジョイント部材54に対して回転自在に固定される。図20,21の例示では、回転部材52には、ねじ孔52cに対して壁面側で孔52dが形成されている。孔52dは左右方向に回転部材52を貫通する。ジョイント部材54のうち左右方向で孔52dと対面する部分にはねじ孔54bが形成されている。ねじ953は孔52dを遊貫してねじ孔54bと螺合する。なお、かかる固定によってジョイント部材54は上下方向を軸としては回転せずに、調整ボルト84の回転によって上下方向に移動する。
【0106】
このような構造によれば、ジョイント部材54の上下方向の移動によって前後移動部材51はねじ952を回転軸として回転する。かかる回転によって部分51aは前後方向に移動する。したがって、調整ボルト84の回転量に基づいて、下側のストリッパボルト932を、即ち、薄型表示装置9をその下部において上下移動部材20に対して前後方向に移動させることができる。
【0107】
図23には、調整ボルト84を締め付け方向に回転させて、薄型表示装置9をその下部に置いて壁面とは反対側へと前後方向に移動させた状態が示されている。
【0108】
なお、前後移動部材51のうち、ねじ孔52cの近傍を回転軸部分と、部分51aの近傍を作用点部分と、ねじ孔52dの近傍を力点部分と把握できる。
【0109】
また図20,21の例示では、ジョイント部材54は上下移動部材20に対して上下方向において移動可能に固定されている。より詳細には、ジョイント部材54には前後方向で自身を貫通して上下方向に長尺の形状を有する長孔54cが形成される。上下移動部材20の部分23には長孔54cに対面する部分にねじ孔23dが形成される。ねじ954は長孔54cを遊貫してねじ孔23dに螺合する。これによって、ジョイント部材54の上下方向の移動を確保しつつも固定力を向上できる。
【0110】
また上述した例では、調整ボルト84、ジョイント部材54は、部分23よりも後方側(壁面側)に配置されている。これによって、部分23に対して前方側の部品数を減らすことができる。よって、薄型表示装置9を取付装置1に取り付けやすい。この場合、前後移動部材51は、部分23を挟んで互いに異なる空間に配置されるストリッパボルト932及びジョイント部材54と接触するので、例えば部分23には前後移動部材51を前後方向で遊貫させる切欠24fが設けられる。
【0111】
また、壁掛ユニット5Lにも壁掛ユニット5Rと同様に上側及び下側のストリッパボルト932を前後方向に移動させる前後調整機構を有している。よって、4箇所で薄型表示装置9を前後方向に調整できる。これら4箇所において互いに同量および同方向に薄型表示装置9を前後方向に移動させれば、薄型表示装置9を前後方向に平行移動させることができる。よって、上下調整機構及び左右調整機構が設けられていれば、薄型表示装置9を3次元で調整できる。
【0112】
また例えば4箇所の各々において異なる量あるいは異なる方向に移動させれば、左右方向或いは上下方向から見た薄型表示装置9の傾斜を調整することができる。なお上下方向から見た傾斜を調整する機能を必要としなければ、例えば前後移動部材41,51がそれぞれ上下方向から見て並んで配置されていなくてもよい。この場合、上下方向から見て薄型表示装置9の重心近傍に前後移動部材が設けられていればよい。また左右方向から見た傾斜を調整する必要がなければ、前後移動部材41,51が左右方向から見て並んで配置されていなくてもよい。この場合、左右方向から見た薄型表示装置9の重心近傍において、前後移動部材が設けられていればよい。
【0113】
なお、前後移動部材41,51は、上下方向および左右方向を含む平面と交差する方向へと薄型表示装置9を移動させる、と把握できる。なお、前後移動部材41,51は必ずしも前後方向に移動させる必要はない。換言すれば、前後移動部材41,51の回転軸が当該平面と交差するように上下移動部材20に対して回転自在に固定されていてもよい。また前後移動部材41,51の作用点部分がこれらの回転軸よりも上下方向および前後方向にずれて位置していてもよい。この場合であっても、上下移動機構および左右移動機構が設けられていれば、薄型表示装置9の位置を3次元で調整できる。
【0114】
また前後移動部材51は下側のストリッパボルト932の係止機能と下側のストリッパボルト932を前後方向へ移動させる機能とを兼用するので、部品点数を低減できる。
【0115】
<下側のストリッパボルトの係止と取り外し>
図20〜22の例示を参照して説明したように、下側のストリッパボルト932はつめ部53bによって係止されている。この状態をより確実に維持するためには、ストリッパボルト932が凹部20bに挿入された状態でつめ部53bは下方に付勢されていることが望ましい。これを実現すべく、図22の例示では、回転部材52と係止部材53との間に弾性部材55が設けられている。弾性部材55は例えばねじりコイルばねである。なおそのコイル部分は必ずしも周回する必要がなくU字状であってもよい。コイル部分がねじ951の周りを覆うように、弾性部材55が回転部材52と係止部材53の間に配置され、その一端が回転部材52に支持され、その他端が係止部材53に支持されている。弾性部材55はその一端と他端とを広げる方向に力を作用させる。これによって、つめ部53bを下方に付勢するような弾性力が回転部材52および係止部材53に作用する。
【0116】
一方で、つめ部53bを上方へと移動させる機能を有していなければ、ストリッパボルト932を取り外すことが困難である。よって、次につめ部53bを容易に上方へと移動させることが可能なロック解除機構について説明する。
【0117】
図24はロック解除機構の一例を示す側面図である。ただし、上下移動部材20については一点鎖線で表し、透明で示している。また下側のストリッパボルト932を取り外すための機構以外については図示を省略している。
【0118】
係止部材53には左右方向に沿って突起する突起部53cが設けられている。かかる突起部53cを上方に移動させることでつめ部53bを上方へと移動させる。図24の例示では、突起部53cはつめ部53bの上方に設けられている。突起部53cは上下移動部材20(部分24)を左右方向に貫通して延在する。部分24に形成されて突起部53cが貫通する孔24dは、つめ部53bがストリッパボルト932から外れる状態まで突起部53cが移動するのに十分な広さを有している。
【0119】
かかる構造によれば、ユーザ或いは作業員が突起部53cを左右方向から把持して、これを容易に上方へと持ち上げることができる。したがって、つめ部53bが上方へと移動して下側のストリッパボルト932への係止が解除される。
【0120】
なお図24の例示においては、ユーザが突起部53cを直接に操作するのではなく、解除レバー60を介して突起部53cを上方へと移動させることができる。よって次に解除レバー60の概要について説明する。解除レバー60は上下移動部材20(より詳細には部分24)に対して上下方向に移動自在に固定されている。また解除レバー60は下方から突起部53cを引っ掛ける構造を有している。図24の例示では、解除レバー60には突起部53cが貫通する孔62aが形成されている。一方、解除レバー60はその上部において、左右方向に沿って外側に突起する突起部60aを有している。部分24において突起部60aの上方には左右方向に沿って外側に突起する突起部24cが設けられている。
【0121】
かかる構造によれば、突起部24c,60aを指で挟んで互いを近づければ、解除レバー60を上下移動部材20に対して上方へ移動させることができる。かかる移動に伴って、突起部53cが上方へと移動して、つめ部53bによるストリッパボルト932の係止が解除される。図25には解除レバー60を上下移動部材20に対して上方に移動させた場合の一例が示されている。
【0122】
<チルト機構>
図24,25の例示によれば、解除レバー60を利用して、薄型表示装置9を傾斜させた姿勢で固定することができる。以下、より詳細な一例について図24,25の例示を参照して説明する。
【0123】
解除レバー60は上部材61と下部材62とを有している。上部材61と下部材62とはいずれも上下移動部材20に対して上下方向に移動自在に固定される。
【0124】
下部材62は、解除レバー60を上方側に移動した状態で係止部材53を上方へと持ち上げてストリッパボルト932を前方側に開放する。図24,25の例示では、部材62は突起部53cが左右方向で貫通する孔62aを有している。
【0125】
上部材61は解除レバー60を上方側に移動した状態で下部材62に対して前方側(薄型表示装置9側)へと回転可能である。以下、上部材61と下部材62の上下方向に移動自在な固定、及び上部材61の回転を実現する構造についてその詳細な一例を説明する。
【0126】
図24,25の例示では、上部材61と下部材62にはそれぞれ左右方向に自身を貫通する孔が形成される。下部材62に形成される孔はねじ孔である。上部材61は部分24に対して左右方向の外側に配置され、部材62は部分24に対して内側に配置される。一方、例えば部分24には長孔24bが形成される。長孔24bは上下方向に長尺の形状を有している。そして、ねじ961が上部材61の孔と長孔24bとを貫通して下部材62のねじ孔に螺合する。かかる構造によれば、上部材61は下部材62に対して回転自在に固定される。しかも、ねじ961が長孔24bを上下方向に移動できる範囲で、解除レバー60(上部材61、下部材62)は上下移動部材20に対して上下方向に移動できる。
【0127】
上部材61は下部材62に対して回転自在であるので、上部材61の周方向の位置を固定するする必要がある。図24,25の例示では、部分24には左右方向の外側に突起する突起部962を有している。当該突起部962は例えばねじ(以下、ねじ962と呼ぶ)で構成される。ねじ962は左右方向の外側に突出する姿勢で部分24にねじ止めされる。一方、上部材61にはねじ962と係止される孔61bが形成される。孔61bは上部材61を左右方向に貫通するとともに、左右方向から見てL字状の形状を有している。より詳細には、孔61bは壁面側に開口しており、この開口部から薄型表示装置9側へと延在し、続けて屈曲して上方へと延在している。ねじ962は解除レバー60が下方に位置している状態で孔61bにおいて左右方向に挟まれる(図24参照)。よってこの状態では、ねじ961を回転軸とした上部材61の周方向における位置は固定される。一方、解除レバー60が上方に位置している状態では壁面側においてねじ962が開放される(図25参照)。したがって、この状態では上部材61は下部材62に対して、薄型表示装置9側へと回転することができる。
【0128】
また図26に例示するように、上部材61は、下側のストリッパボルト932を凹部20bから抜いて薄型表示装置9を斜めに持ち上げた状態で、当該下側のストリッパボルト932を係止する係止部61aを有している。より詳細には、図24,25をも参照して、係止部61aは例えば孔61aである。孔61aは上部材61を左右方向に貫通するとともに、左右方向から見てL字状の形状を有している。より詳細には、上部材61がねじ961に係止された状態で、孔61aは薄型表示装置9側に開口しており、この開口部から壁面側へと延在し、続けて屈曲して下方へと延在している。かかる形状によれば、薄型表示装置9が斜めに持ち上げられた状態で、上部材61を薄型表示装置9側に回転させて下側のストリッパボルト932に対して上方から孔61bに挿入することができる。
【0129】
以上のように、解除レバー60によって下側のストリッパボルト932の係止を解除でき、しかも解除レバー60を利用して薄型表示装置9を傾斜した姿勢で固定できる。このように、ストリッパボルト932の係止の解除機能と、薄型表示装置9を傾斜した姿勢での下側のストリッパボルト932の係止機能とを解除レバー60が兼用するので、部品数を低減できる。
【符号の説明】
【0130】
1 取付装置、9 薄型表示装置、10 ベース板、20 上下移動部材、32 リンク部材、41,51 前後移動部材、60 解除レバー、61 上部材、61b 系止部、62 下部材、81〜84 操作部、811,821,831,841 位置決め部材、932 ストリッパボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被懸架部材と取付面との間に介在して前記被懸架部材を前記取付面に取り付ける取付装置であって、
前記取付面に固定される固定部材と、
いずれもその操作量が前記取付面に平行な第1方向の一方から操作される第1及び第2の操作部と、
前記固定部材に対して前記第1方向に移動自在に固定され、前記第1の操作部の前記操作量に基づいて前記被懸架部材を前記固定部材に対して前記第1方向へと移動させる第1の部材と、
前記第1の部材に対して回転自在に固定され、前記第2の操作部の前記操作量に基づいて回転して、前記被懸架部材を前記固定部材に対して第2方向へと移動させる第2の部材と
を備える、被懸架部材の取付装置。
【請求項2】
その操作量が前記第1方向の前記一方から操作される第3の操作部と、
前記第1の部材に対して回転自在に固定され、前記第3の操作部の前記操作量に基づいて回転して、前記被懸架部材を前記固定部材に対して、前記第1方向および前記第2方向を含む平面と交差する第3方向へと移動させる第3の部材と
を備える、請求項1に記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項3】
前記第1の操作部および前記第1の部材をそれぞれ2つ備え、
前記2つの前記第1の部材はそれぞれ前記2つの前記第1の操作部の前記操作量に基づいて移動し、
前記2つの前記第1の部材は前記第1方向から見て並んで配置される、請求項1又は2に記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項4】
前記第2方向は前記取付面に垂直な前後方向であり、
前記第2の操作部および前記第2の部材をそれぞれ2つ備え、
前記2つの前記第2の部材はそれぞれ前記2つの前記第2の操作部の前記操作量に基づいて回転し、
前記2つの第2の部材は前記前後方向に垂直な方向から見て並んで配置される、請求項1又は2に記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項5】
前記第2の部材は、
前記第1方向および前記第2方向に垂直な第1回転軸を中心として前記第1の部材に対して回転自在に固定される回転軸部分と、
前記第1回転軸から前記第2方向にずれて位置し、前記第2の操作部の前記操作量に基づいて前記第1方向に沿った力が作用する力点部分と、
前記第1回転軸から前記第1方向にずれて位置し、前記被懸架部材へと力を作用させる作用点部分と
を有し、
前記力点部分と前記第1回転軸との間の距離は、前記作用点部分と前記第1回転軸との間の距離よりも長い、請求項1乃至4の何れか一つに記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項6】
前記第1の操作部はおねじ部材であって、前記第1方向の前記一方から前記第1の部材を貫通して前記固定部材に螺合し、
前記取付装置は、前記第1方向において前記第1の操作部を前記第1の部材に対して位置決めする第1の位置決め部を更に備える、請求項1乃至5の何れか一つに記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項7】
前記第2の操作部はおねじ部材であり、前記第1の部材を前記第1方向の前記一方側から貫通し、
前記第2の部材は、
前記第1方向および前記第2方向に垂直な第1回転軸を中心として前記第1の部材に対して回転自在に固定される回転軸部分と、
前記第1回転軸から前記第2方向にずれて位置する力点部分と、
前記第1回転軸から前記第1方向にずれて位置し、前記被懸架部材へと力を作用させる作用点部分と
を有し、
前記取付装置は、
前記第1方向において前記第2の操作部を前記第1の部材に対して位置決めする第2位置決め部と、
前記第2の操作部と螺合するとともに、前記第1回転軸と平行な第2回転軸を中心として前記作用点部分に対して回転自在に固定されるジョイント部材と
を更に備える、請求項1乃至5の何れか一つに記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項8】
前記第2の部材は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3回転軸を中心として互いに回転自在に固定される回転部材および係止部材を有し、
前記回転部材は、前記第3回転軸から前記第1方向にずれて位置して前記第3回転軸に平行な第4回転軸を中心として、前記第1の部材に対して回転自在に固定され、前記第2の操作部の前記操作量に基づいて回転し、
前記回転部材および前記係止部材は、前記第3回転軸よりも前記第2方向にずれた位置において、前記被懸架部材に固定された突出部材を少なくとも前記第2方向で挟み、前記係止部材を前記回転部材に対して回転させて前記突出部材を前記第2方向において開放する、請求項1乃至7の何れか一つに記載の被懸架部材の取付装置。
【請求項9】
前記第1方向は鉛直方向であり、前記第2方向は前記取付面に垂直な前後方向であり、
前記第1の部材は前記被懸架部材をその上部において、前記鉛直方向および前記前後方向に垂直な左右方向に平行な軸を中心として回転自在に支持し、前記突出部材は前記被懸架部材の下部に位置し、
前記取付装置は、
いずれも前記第1の部材に対して前記鉛直方向に移動自在に固定される上部材及び前記下部材を有する解除部材
を更に備え、
前記下部材は、前記鉛直方向において上方側に移動した状態で、前記係止部材を上方へと持ち上げて前記突出部材を前記前後方向の前記被懸架部材側に開放し、
前記上部材は、前記状態で前記下部材に対して前記被懸架部材側に回転可能であって、前記被懸架部材をその上部に対してその下部を前記前後方向にずらした状態で前記突出部材を係止する係止部を有する、請求項8に記載の被懸架部材の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−253080(P2011−253080A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127535(P2010−127535)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】