説明

被搬送媒体搬送装置および記録装置

【課題】記録用紙150を搬送する吸引プラテン250。
【解決手段】ベルト側吸引孔253を有する無端ベルト254と、減圧源に連通した支持部側吸引孔251を有して無端ベルト254を支持する支持部252とを備え、ベルト側吸引孔253と支持部側吸引孔251とが重なったときに吸引力を発生して、無端ベルト254の表面に記録用紙150を吸引しつつ搬送する吸引プラテン250であって、支持部側吸引孔251は格子状に配され、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さは、搬送方向に隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きく、搬送方向に隣接して配される二つのベルト側吸引孔253の間に、搬送方向に直交する方向について隣接したベルト側吸引孔253が少なくとも1つ配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送媒体搬送装置および記録装置に関する。より詳細には、シート状の被搬送媒体を吸引しつつ搬送する被搬送媒体搬送装置と、その被搬送媒体搬送装置を備えた記録装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、樹脂フィルム、テキスタイル製品等のシート状の被搬送媒体を搬送する被搬送媒体搬送装置がある。この種の装置では、一対のロール間に張り渡されたベルトの上に被搬送媒体を載せて、ベルトの走行に従って移動させる。
【0003】
更に、ベルト上で被搬送媒体が移動し、あるいは、被搬送媒体に皺、弛み等が生じることを防止する目的で、ベルトに対して被搬送媒体を吸着させる場合がある。これにより、搬送量を確実に制御できると共に、被搬送媒体とベルトとの間に摺動が生じないので、被搬送媒体の表面に擦過傷が生じることを防止できる。
【0004】
被搬送媒体をベルトに吸着させる方法としては、ベルトを帯電させて静電吸着する方法の他、負圧に連通した吸引孔をベルトに形成して吸引する方法がある。これにより、被搬送媒体の表面性状、電気的性質を選ぶことなくベルトに吸着させて搬送できる。
【0005】
下記の特許文献1には、表裏を貫通する貫通孔を有して走行する搬送ベルトと、負圧に連通する複数の開口を有する吸引装置と、表裏を貫通する開口を有して搬送ベルトおよび吸引装置の間に配置された開閉ベルトとを備えた記録材搬送装置が記載される。この記録材搬送装置では、吸引装置の開口と開閉ベルトの開口とが一致した領域において、搬送ベルトの表面に記録材が吸引され、搬送ベルトと共に移動する。また、また、下記の特許文献2には、多数の吸着孔を有する吸着ローラを備えた記録媒体搬送機構が記載される。
【特許文献1】特開平07−281495号公報
【特許文献2】特開2001−335183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ベルトに吸着して被搬送媒体を搬送する被搬送媒体搬送装置では、負圧に連通されつつベルトを支持する支持部側吸引孔が固定されているのに対して、ベルトの表裏を貫通して形成された吸引孔はベルトと共に不断に移動するので、ベルトの表面における吸引力が変動する。このため、被搬送媒体の領域によって吸引力が異なり、却って被搬送媒体が変形する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の第1の形態として、表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有する無端ベルトと、減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、ベルト側吸引孔と支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する被搬送媒体搬送装置であって、複数の支持部側吸引孔は、支持部上に搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、ベルト側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの支持部側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、搬送方向に隣接して配される二つのベルト側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接したベルト側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする被搬送媒体搬送装置が提供される。これにより、被搬送媒体を吸引して搬送する場合に、無端ベルトが被搬送媒体に接する領域全体において均一な吸引力が維持され続ける。
【0008】
また、本発明の第2の形態として、表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有する無端ベルトと、減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、ベルト側吸引孔と支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する被搬送媒体搬送装置であって、複数のベルト側吸引孔は、被搬送媒体の搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、支持部側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つのベルト側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、搬送方向に隣接して配される二つの支持部側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した支持部側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする被搬送媒体搬送装置が提供される。これによっても、被搬送媒体を吸引して搬送する場合に、無端ベルトが被搬送媒体に接する領域全体において均一な吸引力が維持され続ける。
【0009】
また、上記被搬送媒体搬送装置において、ベルト側吸引孔および支持部側吸引孔の少なくとも一方は、搬送方向、および、搬送方向に直交する方向に一定の吸引孔間隔で複数配されて集合体をなし、集合体は、吸引孔間隔よりも広い集合体間隔で複数配置されてもよい。これにより、少ない数のベルト側吸引孔および支持部側吸引孔を用いて均一な吸引力を発生させることができる。
【0010】
更に、本発明の第3の形態として、往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有して、記録ヘッドに対向する位置において、往復移動の方向と交差する搬送方向に走行する無端ベルトと、減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、ベルト側吸引孔と支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する記録装置であって、複数の支持部側吸引孔は、支持部上に搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、ベルト側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの支持部側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、搬送方向に隣接して配される二つのベルト側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接したベルト側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする記録装置が提供される。これにより、記録装置において上記の効果を享受できる。
【0011】
また更に、本発明の第4の形態として、往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有して、記録ヘッドに対向する位置において、往復移動の方向と交差する搬送方向に走行する無端ベルトと、減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、ベルト側吸引孔と支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する記録装置であって、複数のベルト側吸引孔は、被搬送媒体の搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、支持部側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つのベルト側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、搬送方向に隣接して配される二つの支持部側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した支持部側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする記録装置が提供される。これにより記録装置において、前記の効果を享受できる。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【実施例1】
【0014】
図1は、一実施形態に係るインクジェット式記録装置100の外観を示す斜視図である。なお、このインクジェット式記録装置100は、例えばJIS規格のA0判、JIS規格のB0判といった大判の単票、同単票と同じ用紙幅を有するロール紙にインクを吐出することより記録をする。被記録媒体としては、紙の他に、樹脂フィルム等を用いることもできる。
【0015】
同図に示すように、インクジェット式記録装置100は、互いに積層された上部筐体112および下部筐体114と、下部筐体114の下に吊り下げられた小型筐体116とを含む筐体110を有する。筐体110は、下方から脚部120により持ち上げられて支持される。これにより、筐体110の下方に、記録済みの記録用紙150を排出するスペースが形成される。
【0016】
また、上部筐体112には、このインクジェット式記録装置100をスタンドアロンで操作する場合に使用する操作パネル130が設けられる。操作パネル130には、インクジェット式記録装置100の動作状態を示す表示パネル、表示ランプ等が設けられる場合もある。一方、下部筐体114には、インクを収容したインクカートリッジ240を装填するカートリッジホルダ140が設けられる。
【0017】
このインクジェット式記録装置100において、画像を記録された記録用紙150は、上部筐体112および下部筐体114の間から前方に送り出される。送り出された記録用紙150は、自重により下方に垂れ下がる。このため、上部筐体112および下部筐体114の間隙に見える吸引プラテン250の前端には、記録用紙150を円滑に案内する滑らかな案内面115が形成される。
【0018】
図2は、インクジェット式記録装置100を背面から見た様子を示す斜視図である。同図に示すように、インクジェット式記録装置100の背面において、下部筐体114の後部には、水平に掛け渡されたスピンドル160と、スピンドル160を挿通されて水平に支持されたロール152とが装着される。ロール152は、長尺の記録用紙150を巻き重ねて形成される。図1に示した記録用紙150は、ロール152から引き出されて、筐体110の内部を通過した後に前面に引き出された記録用紙150の前端に相当する。
【0019】
図3は、インクジェット式記録装置100の内部機構200の構造を模式的に示す斜視図である。同図に示すように、内部機構200は、ガイド軸270、記録ヘッド組立体230および吸引プラテン250を含む。
【0020】
ガイド軸270は、筐体110の長手方向に水平に延在する。記録ヘッド組立体230は、記録ヘッド310と、記録ヘッド310をガイド軸270の延在方向に挟む一対の紫外線照射ヘッド320とを含み、ガイド軸270に沿って図中に矢印で示す往復移動方向Mに往復移動する。
【0021】
記録ヘッド310は、その下面にノズルを有して、紫外線硬化型インクを吐出する。一方、紫外線照射ヘッド320は、紫外線を発生する紫外線光源と、紫外線光源が発生した紫外線を記録用紙150の表面に導く反射鏡とを有する。
【0022】
紫外線光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等の紫外線ランプを例示できる。また、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)等を材料とする発光ダイオードを紫外線光源として用いることもできる。反射鏡は、鏡面仕上げされた反射面を有するアルミ板等により形成できる。
【0023】
ガイド軸270の後方には、一対のプーリ260に掛けわたされたタイミングベルト220が配置される。プーリ260の一方は、キャリッジモータ222により回転駆動される。従って、キャリッジモータ222を動作させることにより、タイミングベルト220はプーリ260の間でガイド軸270に対して平行に走行する。更に、タイミングベルト220の一部は、記録ヘッド組立体230に結合される。従って、キャリッジモータ222の動作に応じて記録ヘッド組立体230が往復移動方向Mに沿って移動する。
【0024】
更に、ガイド軸270の上方に、往復移動方向Mに対して平行なリニアスケール214が配される。リニアスケール214は、透明な担体と、往復移動方向Mについて一定の周期で担体に形成された遮光帯とを有する。一方、記録ヘッド組立体230は、遮光帯を検出して計数する検知部を備える。これらにより、記録ヘッド組立体230の移動量が正確に検知される。なお、これらガイド軸270、記録ヘッド組立体230、タイミングベルト220およびリニアスケール214は、上部筐体112に収容される。
【0025】
一方、記録ヘッド組立体230の移動範囲の下方には、吸引プラテン250が配置される。吸引プラテン250は、下部筐体114に収容される。吸引プラテン250は、記録用紙150を下方から支持すると共に吸着する。これにより、巻き癖等のついた記録用紙150も、記録ヘッド310の下方では平坦に保持される。
【0026】
また、吸引プラテン250は、ロール152から記録用紙150を引き出してインクジェット式記録装置100の前面に向かって搬送する搬送装置も兼ねる。吸引プラテン250の詳細な構造と動作については、図4を参照して後述する。
【0027】
更に、記録ヘッド組立体230の移動方向について吸引プラテン250の外側には、フラッシング部290およびキャップ280が順次配置される。フラッシング部290は、記録ヘッド310から大量のインクを吐出させるフラッシングが実行された場合に、吐出されたインクを吸収する。このようなフラッシングにより、増粘したインクを記録ヘッド310から除去することができる。
【0028】
また、キャップ280は、インクジェット式記録装置100が休止している期間に、記録ヘッド310の下面を気密に封止する。これにより、記録ヘッド310においてインクが増粘または固化することを防止する。
【0029】
図4は、吸引プラテン250の構造を、記録用紙150の搬送方向Sに沿って切った断面において示す図である。同図に示すように、吸引プラテン250は、一対のローラ256と、ローラ256に掛け渡された無端ベルト254と、ローラ256の間で上側の無端ベルト254を下方から支持する支持部252とを含む。
【0030】
ローラ256は、付勢部材255により互いに離間する方向に付勢される。これにより、無端ベルト254に弛みが生じることが防止される。支持部252の内部は、ダクト257を介して吸引ファン258に連通する。また、吸引ファン258は、ダクト259を介して外部に連通する。これにより、吸引ファン258を動作させることにより支持部252内部の空気が排気されて負圧が生じる。
【0031】
図5は、支持部252および無端ベルト254を上方から見下ろした様子を示す平面図である。また、無端ベルト254の一部分Aを拡大して、無端ベルト254の変位に応じた状態の変化を併せて示す。
【0032】
同図に示すように、支持部252は、搬送方向Sおよび往復移動方向Mに沿ってマトリックス状に配列された複数の支持部側吸引孔251を上面に有する。支持部側吸引孔251は、支持部252内部の負圧に連通する。
【0033】
一方、無端ベルト254も、その表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔253を有する。ベルト側吸引孔253も2次元状に配置される。ただし、搬送方向Sに関しては直線的な列をなしているのに対して、搬送方向Mに関しては傾斜した列をなす。
【0034】
これにより、搬送方向Sに隣接して配されて列Xをなす二つのベルト側吸引孔253の最も遠い端部の間に、往復移動方向Mについて隣接して列Yをなすベルト側吸引孔253が少なくとも1つ配される。また、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きい。
【0035】
右側に部分Aの状態の遷移を拡大して示すように、列Xをなす支持部側吸引孔251とベルト側吸引孔253とが同じ位置にある場合(状態1)は、支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253が連通して、無端ベルト254の上の記録用紙150が吸着される。やがて、無端ベルト254が移動して、支持部側吸引孔251とベルト側吸引孔253とはずれ始めるが、隣接する列Yにおいては、他のベルト側吸引孔253と他の支持部側吸引孔251との重なりが大きくなり(状態2)、列Yのベルト側吸引孔253において吸引力が大きくなり始める。
【0036】
更に無端ベルト254が移動して、列Xにおける支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253の重なりが小さくなり始めると(状態3)、列Yにおいて支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253の重なりが大きくなる。従って、隣接するふたつの列X、Yを合わせると、部分A全体の吸引力は殆ど変化しない。
【0037】
更に無端ベルト254が移動すると(状態4)、列Xにおいては支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253の重なりが非常に小さくなるが、列Yにおいては支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253が略完全に重なる。更に無端ベルト254が移動すると(状態5)、列Xにおける支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253の重なりは殆どなくなるが、列Yにおける支持部側吸引孔251およびベルト側吸引孔253は完全に重なり、部分Aにおいて当初の状態1と同じ吸引力が生じる。
【0038】
以下、無端ベルト254の移動に従って上記の状態の遷移が繰り返されるので、無端ベルト254は、記録用紙150を継続的に吸着される。無端ベルト254に吸着された記録用紙150は、無端ベルト254の移動と共に搬送されるので、無端ベルト254の移動量を制御することにより記録用紙150の搬送量を正確に制御できる。
【0039】
また、記録用紙150は、無端ベルト254に吸着されて移動するので、記録用紙150と無端ベルト254との間に摺動が生じることがない。従って、摺動に起因する記録用紙150の擦過傷等が根本的に防止される。
【0040】
なお、上記の例では、支持部側吸引孔251の配列は搬送方向Sおよび往復移動方向Mのいずれに対しても平行に形成されるが、ベルト側吸引孔253は、搬送方向Sには直線状に配列される一方、往復移動方向については非直線的に配列された。しかしながら、これを逆にして、支持部側吸引孔251を非直線状に配列した場合でも、同様の作用を得ることができる。
【0041】
以上のような構造を有するインクジェット式記録装置100においては、まず、吸引プラテン250が、記録用紙150の新たな領域を記録ヘッド310の下方に送り込む。送りこまれた記録用紙150は、記録ヘッド310の下方において平坦に保持される。
【0042】
記録ヘッド310は、往復移動方向Mに移動しながら、記録用紙150の表面に向けてインクを吐出する。また、記録ヘッド310に追従する側の紫外線照射ヘッド320は、記録用紙150上に記録ヘッド310が吐出した直後の紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する。これにより、紫外線硬化型インクが順次硬化されて、記録用紙150の表面に画像が固定される。
【0043】
以下、吸引プラテン250による搬送方向Sへの記録用紙150の搬送と、記録ヘッド310が往復移動方向Mに往復移動しつつ紫外線硬化型インクを吐出する動作とを交互に繰り返して、記録用紙150表面の任意の領域にインクを付着させて画像を形成する。なお、紫外線光源部322から放射される紫外線は、記録ヘッド310から吐出される全ての種類の紫外線硬化型インクを硬化させることができる帯域をすべて含み、記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクを一括して硬化させることができる。
【0044】
図6から図10までは、それぞれ、他の実施形態に係る搬送装置を兼ねた吸引プラテン250の構造を、図5に対照して示す平面図である。なお、以下に説明する固有の点を除くと、各実施形態に係る吸引プラテン250は、図1から図5までに示した吸引プラテン250およびインクジェット式記録装置100と共通の構造を有する。そこで、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0045】
図6に示す吸引プラテン250は、無端ベルト254において列X、Yを形成するベルト側吸引孔253の間隔が広い。これに対して、列方向について、支持部側吸引孔251は、図5に示した実施形態と同じ間隔を有する。
【0046】
しかしながら、搬送方向Sに隣接して配されて列Xをなす二つのベルト側吸引孔253の間に、往復移動方向Mについて隣接して列Yをなすベルト側吸引孔253が少なくとも1つ配される。また、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きい。従って、図5に示した実施形態と同様に、無端ベルト254の表面には、継続的な吸引力が発生する。従って、無端ベルト254は、記録用紙150を吸着したまま移動して搬送する。
【0047】
図6に示す吸引プラテン250では、無端ベルト254において列X、Yを形成するベルト側吸引孔253の間隔が広い。これに対して、列方向について、支持部側吸引孔251は、図5に示した実施形態と同じ間隔を有する。
【0048】
しかしながら、搬送方向Sに隣接して配されて列Xをなす二つのベルト側吸引孔253の間に、往復移動方向Mについて隣接して列Yをなすベルト側吸引孔253が少なくとも1つ配される。また、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きい。従って、図5に示した実施形態と同様に、無端ベルト254の表面には、継続的な吸引力が発生して、無端ベルト254は、記録用紙150を吸着したまま移動して搬送する。
【0049】
図7に示した吸引プラテン250では、無端ベルト254において列X、Yを形成するベルト側吸引孔253の間隔も、支持部側吸引孔251の列方向の間隔も、いずれもが図5に示した実施形態と同じである。ただし、往復移動方向Mについて列Xに隣接して列Yおよび列Zをなして、列Xにおいて搬送方向Sに隣接する2つのベルト側吸引孔253の最も遠い端部の間に位置するベルト側吸引孔253をそれぞれ有する。これにより、無端ベルト254の表面における吸引力の変動は一段と平準化され、記録用紙150を安定的に保持して搬送する。
【0050】
図8に示す吸引プラテン250は、図7に示す吸引プラテン250と同様に、往復移動方向Mについて列Xに隣接して列Yおよび列Zをなして、列Xにおいて搬送方向Sに隣接する2つのベルト側吸引孔253の最も遠い端部の間に位置するベルト側吸引孔253をそれぞれ有する。ただし、各列X、Y、Zにおいて、搬送方向Sに係るベルト側吸引孔253の間隔は、支持部側吸引孔251の2倍ある。
【0051】
しかしながら、この吸引プラテン250においても、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きい。従って、図5に示した実施形態と同様に、無端ベルト254の表面には、継続的な吸引力が発生して、無端ベルト254は、記録用紙150を吸着したまま移動して搬送する。
【0052】
図9に示す吸引プラテン250は、図8に示す吸引プラテン250に対して、各列X、Y、Zにおけるベルト側吸引孔253の間隔が更に広く、搬送方向Sに係る支持部側吸引孔251の間隔の3倍ある。しかしながら、この吸引プラテン250においても、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きく、無端ベルト254の表面には、継続的な吸引力が発生する。従って、無端ベルト254は、記録用紙150を吸着したまま移動して搬送する。
【0053】
図10に示す吸引プラテン250において、支持部252は、搬送方向Sおよび往復移動方向Mに隣接したそれぞれ4個の支持部側吸引孔251を含むグループを複数有する。これに対して、無端ベルト254は、搬送方向Sについて異なる位置に配置された一対のベルト側吸引孔253を含むグループを複数備える。
【0054】
しかしながら、各列、X、Yに着目すると、ベルト側吸引孔253における搬送方向の最大長さである直径は、搬送方向に互いに隣接した二つの支持部側吸引孔251の外周の最も近い距離よりも大きい。また、列Yにおけるベルト側吸引孔253は、列Xにおいて搬送方向Sに隣接する2つのベルト側吸引孔253の最も遠い端部の間に位置する。従って、この吸引プラテン250も、継続的な吸引力を発生して、無端ベルト254は、記録用紙150を吸着したまま移動して搬送する。
【0055】
図11および図12は、他の実施形態に係る吸引プラテン250の構造を、図4に対照して示す断面図である。なお、以下に説明する部分を除くと、この吸引プラテン250は、図4に示した吸引プラテン250と同じ構造を有する。そこで、共通の構成要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省く。
【0056】
図11に示す吸引プラテン250において、無端ベルト254は内面に一定周期で形成された歯を有する。一方、ローラ256の各々は、その周面に歯を形成されて歯車を形成する。無端ベルト254の歯とローラ256の歯は相互に相補的な形状を有して噛み合う。これにより、無端ベルト254は、ローラ256に対して全く滑ることなく、ローラ256の回転に従って走行する。従って、ローラ256の回転量に基づいて、無端ベルト254による記録用紙150の搬送量を正確に制御できる。
【0057】
図12に示す吸引プラテン250は、回転駆動されるローラ256に対して無端ベルト254を押し付けるピンチローラ356を有する。ピンチローラ356は、ローラ256の回転軸と平行な軸の回りに回転自在に装着される。これにより、ピンチローラ356は、ローラ256の回転に連れ回される。従って、無端ベルト254をローラ256に押し付ける一方で、ローラ256の回転を妨げることがない。
【0058】
これにより、無端ベルト254は、ローラ256に対して滑ることなく、ローラ256の回転に従って走行する。従って、ローラ256の回転量に基づいて、無端ベルト254による記録用紙150の搬送量を正確に制御できる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】インクジェット式記録装置100を前面から見た外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェット式記録装置100を背面から見た外観を示す斜視図である。
【図3】インクジェット式記録装置100の内部機構200を示す斜視図である。
【図4】吸引プラテン250の構造を示す断面図である。
【図5】吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図6】他の吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図7】他の吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図8】他の吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図9】他の吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図10】他の吸引プラテン250の構造を示す平面図である。
【図11】他の吸引プラテン250の構造を示す断面図である。
【図12】他の吸引プラテン250の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
100 インクジェット式記録装置、110、328 筐体、112 上部筐体、114 下部筐体、115 案内面、116 小型筐体、120 脚部、130 操作パネル、140 カートリッジホルダ、150 記録用紙、152 ロール、160 スピンドル、200 内部機構、220 タイミングベルト、222 キャリッジモータ、230 記録ヘッド組立体、240 インクカートリッジ、250 吸引プラテン、260 プーリ、270 ガイド軸、280 キャップ、290 フラッシング部、310 記録ヘッド、320 紫外線照射ヘッド、251 支持部側吸引孔、252 支持部、253 ベルト側吸引孔、254 無端ベルト、255 付勢部材、256 ローラ、257、259 ダクト、258 吸引ファン、356 ピンチローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有する無端ベルトと、
減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される前記無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、
前記ベルト側吸引孔と前記支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、前記無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する被搬送媒体搬送装置であって、
前記複数の支持部側吸引孔は、前記支持部上に搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、
前記ベルト側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの前記支持部側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、
搬送方向に隣接して配される二つの前記ベルト側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した前記ベルト側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする被搬送媒体搬送装置。
【請求項2】
表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有する無端ベルトと、
減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される前記無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、
前記ベルト側吸引孔と前記支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、前記無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する被搬送媒体搬送装置であって、
前記複数のベルト側吸引孔は、前記被搬送媒体の搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、
前記支持部側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの前記ベルト側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、
搬送方向に隣接して配される二つの前記支持部側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した前記支持部側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする被搬送媒体搬送装置。
【請求項3】
前記ベルト側吸引孔および前記支持部側吸引孔の少なくとも一方は、前記搬送方向、および、搬送方向に直交する方向に一定の吸引孔間隔で複数配されて集合体をなし、
前記集合体は、前記吸引孔間隔よりも広い集合体間隔で複数配置される請求項1または請求項2に記載の被搬送媒体搬送装置。
【請求項4】
往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、
表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有して、前記記録ヘッドに対向する位置において、前記往復移動の方向と交差する搬送方向に走行する無端ベルトと、
減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される前記無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、
前記ベルト側吸引孔と前記支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、前記無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する記録装置であって、
前記複数の支持部側吸引孔は、前記支持部上に搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、
前記ベルト側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの前記支持部側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、
搬送方向に隣接して配される二つの前記ベルト側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した前記ベルト側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、
表裏を貫通する複数のベルト側吸引孔を有して、前記記録ヘッドに対向する位置において、前記往復移動の方向と交差する搬送方向に走行する無端ベルトと、
減圧源に連通した複数の支持部側吸引孔を有して、駆動される前記無端ベルトの一部を支持して案内する支持部とを備え、
前記ベルト側吸引孔と前記支持部側吸引孔とが互いに略重なったときに吸引力を発生して、前記無端ベルトの表面に支持される被搬送媒体を吸引して当該被搬送媒体を所定方向へ搬送する記録装置であって、
前記複数のベルト側吸引孔は、前記被搬送媒体の搬送方向、及び、搬送方向と直交する方向に格子状に配され、
前記支持部側吸引孔における搬送方向の最大長さは、互いに搬送方向に隣接した二つの前記ベルト側吸引孔の外周の最も近い距離よりも大きく形成され、
搬送方向に隣接して配される二つの前記支持部側吸引孔の間に、搬送方向に直交する方向について隣接した前記支持部側吸引孔が少なくとも1つ配されることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−107768(P2009−107768A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281009(P2007−281009)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】