説明

被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構

【課題】礼服では、その袖口から突出するドレスシャツのカフス長は、ある範囲が正式なものとされており、このような範囲に入るように、被服上衣及びドレスシャツの袖長を適切に選択して組み合わせたとしても、体の動き、特に前腕部の動きによる被服上衣とドレスシャツの相対的な移動によってずれてしまい、上記範囲を逸脱して美しいシルエットを保てなくなってしまう
【解決手段】そこで本発明では、ドレスシャツのカフス4において、組み合わせる被服上衣の袖口3から突出させない部位に、対を成すファスナーの一方側の部材5b,6bを取り付けると共に、他方側の部材5a,6aを前記被服上衣の袖口の裏側に取り付けて保持機構を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は礼服やスーツ等の被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば礼服では、その袖口から突出するドレスシャツのカフス長は、一般的に、1.2cm〜1.3cmが正式とされている。
【0003】
このような範囲に入るように、被服上衣及びドレスシャツの袖長を適切に選択して組み合わせたとしても、図6に示すように、体の動き、即ち前腕部の動きによる被服上衣とドレスシャツの相対的な移動によってずれてしまい、上記範囲を逸脱して美しいシルエットを保てなくなってしまうことは良くあることである。尚、図6中、符号aは被服上衣の袖、bはその袖口、cはドレスシャツのカフス、dはカフスボタンを示すものである。
【0004】
例えば、ダンススポーツの競技は、リズム感、躍動感、表現力等と共に、踊る姿の美しいシルエットを競うものであり、服装のシルエットも大きな要素となるものであるところ、ドレスシャツのカフス突出長が長すぎたり、短くなりすぎたりした場合には、美しいシルエットが崩れ、美的印象を減じてしまう場合も有り得る。
【0005】
例えば特許文献1や特許文献2に示されるように、ドレスシャツの袖の長さを調節可能として、袖丈を適切に合わせられるようにする技術は、従来から知られているが、被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長を、体の動きに係わらず保持しようとする技術的思想は未だ開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−214839号公報
【特許文献2】特開2008−214840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被服上衣及びドレスシャツの袖長を適切に選択して組み合わせたとしても、体の動き、特に前腕部の動きによる被服上衣とドレスシャツの相対的な移動により、ずれてしまい、範囲を逸脱して美しいシルエットを保てなくなってしまう事であり、本発明は、このような課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決するために、ドレスシャツのカフスにおいて、組み合わせる被服上衣の袖口から突出させない部位に、対を成すファスナーの一方側の部材を取り付けると共に、他方側の部材を前記被服上衣の袖口の裏側に取り付けたことを特徴とする被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構を提案する。
【0009】
そして本発明では、上記の構成において、ファスナーは、スナップボタン等の点ファスナーとし、その部材を、カフスと被服上衣の袖口の周囲方向に沿った複数個所に取り付けることを提案する。
【0010】
そして本発明では、上記の構成において、点ファスナーは、2組を対向位置に設けることを提案する。
【0011】
更に、本発明では、上記の構成において、ファスナーは、面ファスナーとすることを提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ドレスシャツのカフスに取り付けた対を成すファスナーの一方側の部材を、前記被服上衣の袖口の裏側に取り付けたファスナーの他方側の部材と係合させて固定状態とすることにより、被服上衣の袖口からのドレスシャツのカフス突出長を、ファスナーを取り付けた位置によって予め設定された長さとすることができ、この長さは、体を動かし、前腕部が動いても保持することができる。また、袖口において被服上衣とドレスシャツとが固定状態となることで、被服上衣の前腕部に対応する部位の皺が寄りにくくなる。
【0013】
ファスナーは、適宜の型式のものを適用することができるが、スナップボタン等の点ファスナーとした場合には、係合位置が不変であるため、ただ係合を行うだけで、予め設定されたカフス突出長を得ることができ、また固定状態も確実である。
【0014】
この場合、点ファスナーは2組を対向位置に設けることにより、必要最小限の数の点ファスナーで、確実にカフス突出長を保持することができ、面倒でもない。
【0015】
ファスナーとして、面ファスナーを用いた場合には、係合位置をある程度ずらすことができるので、所定のカフス突出長とする際に、位置を気を付けて調節する必要があるが、使用者が上述した範囲内において、カフス突出長を調節することができるという利点はある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明に係る保持機構の第1の実施の形態の要素を説明するもので、(a)、(b)は被服上衣の夫々上袖側、下袖側から見た説明図であり、また(c)、(d)はドレスシャツの夫々上袖側、下袖側から見た説明図である。
【図2】図2は、図1に示すドレスシャツのカフスに取り付けたファスナーの一方側の部材を、被服上衣の袖口の裏側に取り付けたファスナーの他方側の部材と係合させた固定状態を示すもので、(a)、(b)は夫々上袖側、下袖側から見た説明図である。
【図3】図3は本発明に係る保持機構の第2の実施の形態の要素を示すもので、(a)、(b)は、夫々被服上衣、ドレスシャツを上袖側からみた説明図である。
【図4】図4は、図3に示すドレスシャツのカフスに取り付けたファスナーの一方側の部材を、被服上衣の袖口の裏側に取り付けたファスナーの他方側の部材と係合させた固定状態を、上袖側から見た説明図である。
【図5】図5(a)、(b)は、本発明の保持機構を適用することにより、前腕部が動いてもカフス突出長が変化しない状態を模式的に示す説明図である。
【図6】図6(a)、(b)は、本発明の保持機構を適用しない場合において、前腕部が動くことによってカフス突出長が変化してしまう状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の被服上衣の実施の形態を図を参照して説明する。
まず図1、図2は本発明に係る保持機構の第1の実施の形態を示すもので、符号1は被服上衣の袖、2はドレスシャツの袖を示すものであり、3は被服上衣の袖口、4はドレスシャツのカフスを示すものである。
【0018】
この実施の形態においては、ドレスシャツのカフス4において、組み合わせる被服上衣の袖口3から突出させない部位に、対を成すファスナー5(5a,5b);6(6a,6b)の一方側の部材5a,6aを取り付けると共に、他方側の部材5b,6bを前記被服上衣の袖口3の裏側に取り付けている。
【0019】
この実施の形態では、対を成すファスナー5(5a,5b);6(6a,6b)は、2組であり、それらを対向位置、即ち、上記袖口3とカフス4の断面形状を便宜的に円形として捉えた場合に、その直径位置又は直径位置の近傍の位置に取り付けている。
【0020】
尚、図中、符号7はカフスボタンを示すものである。
【0021】
以上の構成において、ドレスシャツのカフス4に取り付けた対を成すファスナー5,6の一方側の部材5b,6bを、前記被服上衣の袖口3の裏側に取り付けたファスナーの他方側の部材5a,6aと係合させて固定状態とすることにより、被服上衣の袖口3からのドレスシャツのカフス4の突出長を、ファスナーを取り付けた位置によって予め設定された長さとすることができ、この長さは、体を動かし、前腕部が動いても保持することができる。また、袖口3において被服上衣とドレスシャツとが固定状態となることで、被服上衣の前腕部に対応する部位の皺が寄りにくくなる。
【0022】
ファスナーとしては、適宜の型式のものを適用することができるが、この実施の形態に示すように、スナップボタン等の点ファスナーとした場合には、係合位置が不変であるため、ただ係合を行うだけで、予め設定されたカフス4の突出長を得ることができ、また固定状態も確実である。
【0023】
また、この実施の形態では、点ファスナーは2組5(5a,5b);6(6a,6b)を対向位置に設けており、この実施の形態では、必要最小限の数の点ファスナーで、確実にカフス突出長を保持することができ、面倒でもない。
【0024】
しかしながら面倒さは許容して、3組以上の点ファスナーを取り付けることにより、保持の確実性を更に向上することもできる。
【0025】
上記実施の形態に示されるような点ファスナーでなく、面ファスナーを用いることもでき、この場合には、係合位置をある程度ずらすことができるので、所定のカフス突出長とする際に、位置を気を付けて調節する必要があるが、使用者が上述した範囲内において、カフス突出長を調節することができるという利点はある。
【0026】
次に図3、図4は本発明に係る保持機構の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と同様に、符号1は被服上衣の袖、2はドレスシャツの袖を示すものであり、3は被服上衣の袖口、4はドレスシャツのカフスを示すものである。
【0027】
この実施の形態では、点ファスナーは2組8(8a,8b);9(9a,9b)であることは第1の実施の形態と同様であるが、取り付ける位置は、対向位置ではなく、上袖側において所定距離を隔てて並設して取り付けている。
【0028】
この実施の形態において、必要最小限の数の点ファスナーで、目立つ側である上袖側のカフスの突出長を確実に保持することができ、面倒でもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明における保持機構は、例えばダンススポーツ用の燕尾服やタキシード等に適用することにより、ダンスの動き、姿勢に対応して、カフス突出長の観点から美しいシルエットを保持することができ、従ってダンスの美的要素を更に向上することができる。また、指揮者の燕尾服に適用した場合にも、指揮に伴う動きに対応した美しいシルエットの保持により、音楽と共に美的要素を向上させ、更に、一般人の礼服に適用した場合においても、礼服を着用する儀式における美しいシルエットの保持により、儀式における着用者の品格の向上にも資するものである。
【符号の説明】
【0030】
1 被服上衣の袖
2 ドレスシャツの袖
3 被服上衣の袖口
4 ドレスシャツのカフス
5 ファスナー
5a,5b ファスナーの部材
6 ファスナー
6a,6b ファスナーの部材
7 カフスボタン
8 ファスナー
8a,8b ファスナーの部材
9 ファスナー
9a,9b ファスナーの部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレスシャツのカフスにおいて、組み合わせる被服上衣の袖口から突出させない部位に、対を成すファスナーの一方側の部材を取り付けると共に、他方側の部材を前記被服上衣の袖口の裏側に取り付けたことを特徴とする被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構。
【請求項2】
ファスナーは点ファスナーとし、その部材を、カフスと被服上衣の袖口の周囲方向に沿った複数個所に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構。
【請求項3】
点ファスナーは、スナップボタンであることを特徴とする請求項2に記載の被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構。
【請求項4】
点ファスナーは、2組を対向位置に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構。
【請求項5】
ファスナーは、面ファスナーであることを特徴とする請求項1に記載の請求項1に記載の被服上衣からのドレスシャツのカフス突出長の保持機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−97379(P2012−97379A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247281(P2010−247281)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(504199910)
【Fターム(参考)】