説明

被検物処理方法

【課題】 生物学的又は組織学的標本等の被検物の全体として可及的迅速に処理可能な方法。
【解決手段】 被検物キャリア上ないし被検物キャリアマガジン内の被検物キャリア上の標本を移送装置によって種々の処理ステーションへ運び、そこに装填し、予設定可能な処理プログラムに従って処理する形式の、自動着色装置又は組織処理装置における細胞学的又は組織学的標本等の被検物の処理方法は、グラフ理論的及び/又は線形計画法的解法によって、又は各処理プログラムを実行するために予設定された順序で到達されるべき処理ステーションの配置若しくは再配置によって、移送装置の走行路を最小化することにより処理量の最適化(ないし最適解の導出)を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動着色装置又は組織処理装置における、被検物処理方法、とりわけ細胞学的又は組織学的標本の処理方法に関する。この場合、被検物は、好ましくは被検物キャリア上で及び場合により更に被検物キャリアマガジン(ないしボックス)に収容されて、移送装置によって種々の処理ステーションに運ばれ、そこで装填され、予設定可能な処理プログラムに従って処理される。
【0002】
【従来の技術】単なる例としてEP 0 849 582 A2を挙げる。この刊行物から、この種の被検物処理方法、とりわけ細胞学的又は組織学的標本の処理方法が既知である。細胞学的又は組織学的標本は、そこでは、被検物キャリアないしケージ及び場合によりさらにマガジン(ないしボックス)に収容されることによって、自動着色装置の種々の処理を行う作業ステーションに供給される。この自動着色装置は、種々の試薬を有する複数の作業ステーションを含む。
【0003】EP 0 849 582 A2から既知のこの種の方法は、自動着色装置(マルチステイナ:Multistainer)に関するが、この装置は、具体的には、組織学的標本の着色装置である。この組織学的標本は、被検物キャリア上で自由に処理することができ、また複数の被検物キャリアをマガジンに配することもできる。種々の作業ないし処理ステーション(同士)は、ロボットアームを含みうる移送装置を介して連絡がとられる。移送装置は、選択可能な着色方法に従って処理措置がなされる各作業ステーションへ被検物キャリアないし被検物キャリアマガジンを移送する。被検物キャリアないし被検物キャリアマガジンは、試薬を含む作業ステーションの容器に装填され、移送装置は、被検物キャリアないし被検物キャリアマガジンが解放(ないし接続解除)されるたびごとに、行われた処理とは無関係に更に移送を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし既知の自動着色装置及びそこで使用される細胞学的又は組織学的標本の処理方法では、処理ステーションは、実行されるべき処理プログラムとは独立して多かれ少なかれ固定的に配設され、そのため移送装置は各処理ステーションの位置付け(ないし配置)に応じた挙動を取らなければならない。これは、被検物キャリアの運動にとって、全く著しい時間の浪費であって、各処理(時間)の間の時間は、常に被検物キャリアの運動のために使用されてしまう。
【0005】そこで本発明の課題は、この種の被検物処理方法、とりわけ細胞学的又は組織学的標本の処理方法を、各処理ステーションにおける処理時間内にできるだけ多くの移送作業を行うことができるように構成及び発展させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この課題は、請求項1の特徴により解決される。即ち、本発明の一視点によれば、被検物キャリア上ないし被検物キャリアマガジン内の被検物キャリア上の被検物(試料ないし標本等)を移送装置によって種々の処理ステーションへ運び、そこに装填し、予設定可能な処理プログラムに従って処理する形式の、自動着色装置又は組織処理装置における細胞学的又は組織学的標本等の被検物の処理方法は、グラフ理論的及び/又は線形計画法的解法によって、又は各処理プログラムを実行するために予設定された順序で到達されるべき処理ステーションの配置若しくは再配置によって、移送装置の走行路を最小化することにより処理量の最適化(ないし最適値の導出)を行うことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】処理方法は、移送装置が、一の処理中に、別の(複数の)被検物(標本など)又は被検物キャリアを他の(複数の)処理ステーションへ運搬することができ、複数の処理プログラムに従った種々異なる処理ステーションでの並行的処理ないし作業が、処理量を最適化されて、実行可能であることが好ましい。処理方法は、最適値を求めるプログラムが、処理装置に組込まれたコンピュータ又は外部PC(パーソナルコンピュータ)によって実行されることが好ましい。
【0008】本発明によって第一に確認されていることは、処理量の最適化(Durchsatzoptimierung)の基礎を形成するために、各処理時間内において、即ち各処理ステーションで行われる処理の経過中に、できるだけ多くの移送運動工程(Transportaktionen)が実行されなければならないということである。移送装置が最小の走行路を進む限り、最大数の移送運動工程を実行することができ、それにより処理量も、少なくとも十分に多くの処理ステーションが存在する場合、複数の作業ないし処理ステーションでの同一の処理方法ないし装填(物)による並行的処理時においても、全体として増加する。
【0009】移送装置の最短の走行路は、数学モデルによって、とりわけグラフ理論的及び/又は線形計画法的手法によって実現することができるであろう。この点で、処理ステーションを所定の位置に配置する場合−これを変更することなしに−最適化(ないし最適解の導出)を行うことが、それも各着色プログラムにそれぞれ適合させて、できるであろう。種々の着色プログラムを同時に実行する場合は、全ての走行路を顧慮して最適化が行われる。
【0010】全くとりわけ有利な態様においては、移送装置の走行路は、各処理プログラムを実行するために予設定された順序で到着されるべき処理ステーションの配置ないし再配置によって最小化される。処理ステーションの新たな配置ないし再配置は、処理ステーションに存在する容器が好ましくは移送装置によって移動させられることによって行うことができる。しかしながら、処理ステーションを実行されるべき処理プログラムに従って装填することも同様に考えられるが、この場合処理ステーションの最適な装填ないし最適な配置はコンピュータにより、即ち実行されるべき処理プログラムを顧慮して予設定される。
【0011】上述の通り、移送装置を被検物キャリアないし被検物キャリアマガジンとは独立に操作することができるので、被検物キャリアないし被検物キャリアマガジンを処理ステーションに挿入したあと、移送装置は、処理の間に更なる作業を行うことができる。従って、被検物キャリアマガジンの処理(時間)中に、他の被検物キャリアマガジンを握持し、運動させ、かつ他の処理ステーション内へ運び込むことが可能である。複数の処理プログラムに従った種々の処理ステーションにおける並行的処理ないし作業を、それも特許請求された教示に従い処理量を最適化する方法で、行うことができる。
【0012】今一度とりわけ注意を喚起すべきことは、処理ステーションで処理を行っている時間内に、移送運動が行われるということである。必要とされる走行路が短ければ短いほど、即ち最適化された走行路及び/又は処理ステーションの極めて特別な配置ないし再配置に基づくことにより、一層確実に移送運動を処理時間内に行なう(ないし終える)ことができる。この点で、処理工程に必要な処理ステーションないし試薬ステーションの配置及びそれゆえ各ステーションの装填は装置の処理量に決定的な影響を及ぼす。
【0013】ここで目的とされる処理量の最適化は、EDV(電子データ処理:elektronische Datenverarbeitung)−プログラムによって求められ、処理装置に組込まれたコンピュータで実行されることができる。この場合、原則的には任意のコンピュータが考慮の対象となるが、−例えば−パーソナルコンピュータ(PC)もそれに含まれる。類似のEDV−システム−論理的に作動するモジュール(Baugruppen)−、例えばマイクロコントローラも使用することができる。処理ステーションの最適な配置及び/又は最短の走行路を求めた後、移送装置は直ちに制御される。それに応じた処理全体の適合化が行われる。
【0014】最適解(ないし最適値)を求めたEDV−プログラムを外部のコンピュータで、好ましくはPCで実行することも考えられる。この点で、相応する最適化プログラムによる機能向上も問題なく行うこともでき、その場合外部PCをプロセス制御に使用することもできる。とりわけ容易な形態では、外部PCは、処理ステーションの最適化された配置のみを求めることができ、そのため利用者は、処理ステーションの最適化された配置ないしそこに存在し試薬を含む容器の対応する装填を手動で行うこともできるであろう。最後に、利用者には、処理ステーションの最適化された配置のみを与えることができ、そのため装置自体に対する追加装備措置、とりわけ制御に必要な介入は、不必要であろう。
【0015】最後に今一度とりわけ注意を喚起すべきことは、ここで述べられた最適化は、自動着色装置において、細胞学的ないし組織学的標本等の被検物を処理するために使用できるということである。この場合、処理ステーションは、試薬ステーションとして構成され、試薬は対応する容器内に存在する。
【0016】なお、ここで更に注意すべきことは、上記方法は、自動着色装置で使用できるが、これは単なる一例として述べたものであり、本方法をこれに限定することは意図しない。同様に注意すべきことは、ここで問題となる方法を使用する場合、組織処理装置では、試料ないし被検物は被検物キャリアに配されているが、これは必要不可欠というわけではない。
【0017】
【発明の効果】本発明の独立請求項1により対応する所定の目的として掲げる効果が達成される。即ち、各処理ステーションにおける処理時間内にできるだけ多くの細胞学的又は組織学的標本等の被検物の移送作業を行い、処理過程全体としての迅速化を図ることができる。各従属請求項により、更に付加的な効果が、前述の通りそれぞれ達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】被検物キャリア上ないし被検物キャリアマガジン内の被検物キャリア上の被検物を移送装置によって種々の処理ステーションへ運び、そこに装填し、予設定可能な処理プログラムに従って処理する形式の、自動着色装置又は組織処理装置における細胞学的又は組織学的標本等の被検物の処理方法であって、グラフ理論的及び/又は線形計画法的解法によって、又は各処理プログラムを実行するために予設定された順序で到達されるべき処理ステーションの配置若しくは再配置によって、移送装置の走行路を最小化することにより処理量の最適化(ないし最適解の導出)を行うことを特徴とする処理方法。
【請求項2】前記移送装置は、一の処理中に、別の(複数の)被検物又は被検物キャリアを他の(複数の)処理ステーションへ運搬することができ、複数の処理プログラムに従った種々異なる処理ステーションでの並行的処理ないし作業が、処理量を最適化されて、実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】前記最適解を求めるプログラムは、処理装置に組込まれたコンピュータ又は外部PC(パーソナルコンピュータ)によって実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2002−90371(P2002−90371A)
【公開日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−250967(P2001−250967)
【出願日】平成13年8月22日(2001.8.22)
【出願人】(500113648)ライカ ミクロズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】