説明

被膜組成物、被膜製造方法及び建材

【課題】 紫外線の照射時及び紫外線が照射されない場合でも、抗菌・防汚性能及び消臭・防錆効果を十分に発揮できる被膜組成物を提供する。
【解決手段】 金属系触媒16と、トルマリン粉末18と、ナノカーボン22と、無機バインダー20とを混合してなる。金属系触媒16としては、酸化チタンが用いられ、無機バインダー20としては、シリカ及びアルミナが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被膜組成物、被膜製造方法及び建材に関し、特に、抗菌・防汚・防臭・防錆機能を有する被膜組成物、被膜製造方法及び建材に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】近年、例えば建築材料の分野で、抗菌・防汚・防臭等の機能を持たせることが行われている。
【0003】このような機能を持たせたものとして、表面に酸化チタン系触媒を用いた薄膜を形成した抗菌・防汚染性建材が知られている。
【0004】このような抗菌・防汚染性建材は、紫外線が照射されることにより、酸化チタン系触媒によって表面に強い酸化分解力と親水性が生じ、これによって抗菌・防汚性能及び防臭効果を発揮するものである。
【0005】しかし、このような抗菌・防汚染性建材は、紫外線が照射される明るいところでは十分な効果を発揮するものの、紫外線が照射されない暗いところでは十分な効果を発揮することができないという問題がある。
【0006】本発明の目的は、紫外線の照射時及び紫外線が照射されない場合でも、抗菌・防汚性能及び消臭・防錆効果を十分に発揮できる被膜組成物、被膜製造方法及び建材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明の被膜組成物は、金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーとを混合してなることを特徴とする。
【0008】この場合、前記金属系触媒として酸化チタンを用いることができる。
【0009】また、前記無機バインダーとしてシリカとアルミナの少なくとも一方を用いることができる。
【0010】このような発明によれば、紫外線の照射されている明るいときには、金属系触媒、特に酸化チタンの酸化分解力によって、抗菌・防汚及び防臭効果を発揮することができ、紫外線の照射されていない暗いときには、トルマリンの水分存在下における水分子の電気分解作用により親水性を発揮すると共に、トルマリンから発生する微弱電流により酸化チタンに電気を供給することで抗菌・防汚・防臭性能を発揮することとなる。
【0011】また、金属の錆は、金属が電子を失って酸素と結びつくことで発生するもので、トルマリンによって金属に電子を供給することで防錆性能を発揮することができる。
【0012】特に、ナノカーボーンや酸化マンガンランタン等の超伝導半導体は、抗菌や汚染物質を分解・無害にする働きがあり、このナノカーボンや酸化マンガンランタン等がトルマリンによって活性化されることで、汚染物質や細菌などの分解力を著しく増強させることができ、しかも、金属触媒やトルマリンの量を半減することができる。
【0013】本発明の被膜製造方法は、金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーと、溶媒または水とを混合した組成物を形成する工程と、前記組成物を基材の表面に塗布または焼き付けて被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】本発明によれば、基材に組成物を塗布または焼き付けることで、紫外線の照射されているところでも、照射されていないところでも、抗菌・防汚・防臭・防錆性能を発揮できる多機能な被膜を簡単に製造することができる。
【0015】また、基材に塗布または焼き付けで製造できることから、種々の基材に広範囲に適用することが可能である。
【0016】本発明の建材は、金属基材と、この金属基材の表面に形成された金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーとからなる被膜とを有することを特徴とする。
【0017】本発明によれば、酸化チタンやトルマリン粉末、あるいはナノカーボンや酸化マンガンランタンによって抗菌、防汚、防臭機能を発揮でき、特に、トルマリン粉末によって金属基材に電気を供給することで、防錆機能を生じさせて耐久性を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】図1は、本発明の一実施の形態にかかる被膜を有する建材を示す図である。
【0020】この建材10は、例えば外装材として用いられるもので、基材として金属、例えば鉄板12の表面に抗菌・防汚・防臭・防錆性能を有する被膜14が形成されている。
【0021】被膜14は、金属系触媒16と、トルマリン粉末18と、ナノカーボン22と、無機バインダー20とが混合されてなる被膜組成物からなっている。
【0022】被膜14を形成するには、金属系触媒16と、トルマリン粉末18と、ナノカーボン22と、無機バインダー20と、溶媒または水とを混合した組成物を形成し、この組成物を鉄板12の表面に塗布または焼き付けて形成するようにしている。
【0023】金属系触媒16としては、例えば、酸化チタン、銀、または銅等が採用できる。
【0024】この金属系触媒16の粒径は、0.02〜0.1μm程度のものを採用している。
【0025】また、トルマリン粉末18の粒径は、0.02μm以下のものを採用している。
【0026】ナノカーボン22は、特殊加工活性炭の表面にナノサイズの細孔が無数に開口し、その開口部が3nm程度で細かい部分が0.1〜0.2nm(1〜2Å)というラッパのような構造となっており、この中には、多数のナノフラーレン・カーボンナノチューブが存在している。
【0027】ナノフラーレンの形は、5角形が12個と6角形が20個集まった球体となっている。
【0028】そこには超伝導半導体としての機能があり、そこを通過することにより、細菌や汚染物質を分解・無害にする効果がある。
【0029】また、ナノカーボン22に代えて、ナノカーボン22と同様の働きをする酸化マンガンランタン(LaMnO3等の超伝導半導体)を単独で用いることもでき、あるいはナノカーボン22と酸化マンガンランタンを併用することもできる。
【0030】無機バインダー20としては、コロイダルシリカやアルミナを採用することができる。
【0031】溶媒としては、アルコール、トルエン、キシレン等を採用することができる。
【0032】次に、このような組成物の組成の一例を重量比にて以下に示す。
【0033】
金属系触媒(酸化チタン) 3〜5%トルマリン粉末 4〜10%ナノカーボン 2〜4%コロイダルシリカ 2〜5%アルミナ 1〜5%溶媒 88〜71%このような組成の被膜14を鉄板12上に形成した場合、トルマリン粉末18の働きによって次のような機能を発揮することができる。
【0034】トルマリン粉末は、結晶の両端に+電極と−電極を有し、両極間に永久的に直流の微弱電流0.06mAが発生し続ける。
【0035】−電極の電子は水分存在下で水分子は水素イオン(H+)と水酸イオン(OH−)に電気分解され、OH−イオンはH2O分子と結合してヒドロキシルイオン(H32−)を発生し親水性を発揮する。
【0036】また、夜間、紫外線が当たらない場合でも、トルマリン粉末18から微弱電流(電子の流れ)が発生し、酸化チタンへ絶え間なく電気を供給し続けるので、抗菌・防汚・防臭性能を発揮することとなる。
【0037】さらに、金属の錆は、金属が電子を失って酸素と結びついて発生するもので、トルマリン粉末によって金属に電子を供給することにより金属を防錆することができ、基材である鉄板12の防錆効果を発揮することができる。
【0038】このように、紫外線の照射時は酸化チタンにより、紫外線の照射しないところではトルマリン粉末により、それぞれ抗菌・防汚・防臭・防錆性能を発揮することができる多機能な建材を得ることができる。
【0039】また、ナノカーボン22は、トルマリン粉末によって電気が供給されることで活性化され、汚染物質や細菌などの分解力を著しく増強することとなり、しかも、トルマリン粉末18や金属触媒16の量を半減することができる。
【0040】また、このような建材10は、鉄板12に組成生物を塗布あるいは焼き付けることにより簡単に製造でき、各種の建材に広範囲に適用することができる。
【0041】本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0042】例えば、前記実施の形態では、基材として鉄板を用いた建材を示したが、この例に限らず、鉄板以外の金属や木材等を基材とする建材にも適用することができる。
【0043】また、建材としては、外装材に限らず内装材にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる被膜を有する建材を示す断面図である。
【符号の説明】
10 建材
12 鉄板
14 被膜
16 金属系触媒
18 トルマリン粉末
20 無機バインダー
22 ナノカーボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーとを混合してなることを特徴とする被膜組成物。
【請求項2】 請求項1において、前記金属系触媒として酸化チタンを用いることを特徴とする被膜組成物。
【請求項3】 請求項1または2において、前記無機バインダーとしてシリカとアルミナの少なくとも一方を用いることを特徴とする被膜組成物。
【請求項4】 金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーと、溶媒または水とを混合した組成物を形成する工程と、前記組成物を基材の表面に塗布または焼き付けて被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする被膜製造方法。
【請求項5】 金属基材と、この金属基材の表面に形成された金属系触媒と、トルマリン粉末と、ナノカーボーン及び酸化マンガンランタンのうち少なくとも一方と、無機バインダーとからなる被膜とを有することを特徴とする建材。

【図1】
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【公開番号】特開2003−135957(P2003−135957A)
【公開日】平成15年5月13日(2003.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−336594(P2001−336594)
【出願日】平成13年11月1日(2001.11.1)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】