説明

被覆した制酸剤

【課題】酸化マグネシウムを含有する錠剤は独特のえぐみ、口腔内への付着等があり、嚥下性に乏しい製剤であった。
【解決手段】酸化マグネシウムを含有する錠剤にヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子を用いてコーティングを実施することにより、嚥下性が向上する。また、ある程度の防湿性を有する容器を用いることにより、経時的に安定な酸化マグネシウム製剤を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制酸剤、特に酸化マグネシウムを含む製剤を水溶性高分子物質で被覆することにより飲み込みやすい制酸剤含有医薬品製剤の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食生活の変化、ライフスタイルの変化、ストレス社会により、胃、十二指腸潰瘍になる人が増加している。これらの症状は不定愁訴とも言われこれらの症状より日常生活に支障をきたすこともしばしば見受けられる。また、薬、アルコール、暴飲暴食、コーヒー、香辛料等による急性的な胃潰瘍などもある。
【0003】
現在、胃、十二指腸潰瘍を抑える方法としては胃酸を中和させる方法やヒスタミン受容体をブロックする方法等が知られている。一般的には後者のようなヒスタミン受容体を使用することがしばしば見受けられるが、現在でも胃酸の中和作用を期待する上で制酸剤の使用は非常に有意義な医薬品として用いられている。また、酸化マグネシウムは下剤としても使用されることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】日本薬局方解説書編集委員会「第十四改正 日本薬局方解説書」、株式会社廣川書店、2001年6月 p.C-1392―C-1397
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、制酸剤はアルカリの金属塩が多く、これらの錠剤を服用すると独特の金属のえぐみを生じることが知られている。また、制酸剤でも特に酸化マグネシウムは口腔内の唾液を吸収し嚥下しにくくなるばかりか、口腔内に付着するため、非常に不快に感じることが知られている。このように不快な感覚をなくすために様々な検討を実施した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこれらの問題を解決するにあたり、高分子を用いてコーティングを実施することにより嚥下しやすく口腔内に付着しにくい製剤を得ることができた。更にはこのように有用な製剤が経時的な変化により崩壊遅延を起こさない包装について有意義な形態を確認することができた。
【0007】
即ち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
(1)医薬品有効成分として制酸剤を含有し水溶性高分子物質でフィルムコーティングした嚥下容易な医薬品組成物
(2)制酸剤が酸化マグネシウムである(1)の医薬品組成物
(3)水溶性高分子がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アルキル系樹脂である(1)ないし(2)の医薬品組成物
(4)透湿度が4.0g/m・24hr以下である包装容器に包装した(1)ないし(3)の製剤
(5)透湿度が1.0g/m・24hr以下である包装容器に包装した(1)ないし(4)の製剤
【発明の効果】
【0008】
本発明により製造された酸化マグネシウム錠は金属無機塩独特のえぐみを解消し、更に酸化マグネシウム錠独特の口腔内での付着を抑えることができることにより、より服用性が向上した酸化マグネシウム製剤を得ることができる。更に、経時的な崩壊遅延を抑えることもでき、輸送、保存時における品質が保障できることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いることができる酸化マグネシウムは医薬品に用いることができればどのような性質のものでも特段問題にならない。良好に圧縮製剤を得るためにはその粒径は0.1〜200μm程度が良い。
【0010】
酸化マグネシウムの圧縮製剤を得るためには常法であれば、どのような方法でも特段問題はない。具体的には単発打錠機、ロータリー打錠機などが挙げられる。
【0011】
このように製造した圧縮製剤にコーティングを施すことにより金属無機塩の独特のえぐみや口腔内での付着等を抑えることができる。
【0012】
フィルムコーティング剤としては圧縮成形製剤を均一なフィルムで覆うことができれば特段どのような基材を用いてもよい。具体的にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS等が挙げられる。また、このような基材を補完するために可塑剤、分散剤、色素等を添加することもできる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコール、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。また、分散剤としてはタルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。また、色素としては、酸化チタン、食用の色素等が挙げられる。
【0013】
先に述べたように酸化マグネシウムの圧縮成形製剤は素錠の状態では、金属独特のえぐみ、口腔内への付着等がある。本発明ではこのようなコンプライアンスの悪さを改善するためにコーティングの技術を用いている。しかし、酸化マグネシウムの圧縮成形製剤をそのままの状態で保存すると崩壊遅延を起こす。従って、特殊な包装が必要になる。
【0014】
その特殊な包装は透湿度が4.0g/m2・24hr以下である包装容器に包装することである。更に好ましくは透湿度が1.0g/m2・24hr以下である包装容器で包装することである。このような包装基材としては硝子、アルミ、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレン等が挙げられ、これらの基材の合剤であっても良い。また、形態としてはこれらを用いた袋、瓶、PTPなどが挙げられる。最も利便性の良い形態としてはPTPが挙げられる。
【0015】
また、本発明の効果を損なわない程度に製造性を改善するために酸化マグネシウムと従来公知の種々の滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、吸着剤、結合剤、懸濁化剤、抗酸化剤、充填剤、pH調整剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、防湿剤、防腐剤、溶剤、溶解補助剤、流動化剤等を使用することができる。
【0016】
賦形剤としては、例えば乳糖、精製白糖、結晶セルロース、コーンスターチ、バレイショデンプン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、トレハロース、無機塩、デキストラン、デキストリン、ブドウ糖、粉糖等が挙げられる。崩壊剤としては例えば、コーンスターチ、バレイショデンプン等のデンプン類、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツ等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げ本特許を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0018】
比較例1
酸化マグネシウム 2970g、セオラスPH101 378g、アクチゾル 180gを50%エタノール水溶液を用いて攪拌造粒機で造粒した。造粒した顆粒2822.4gにステアリン酸マグネシウムを57.6g添加し、V型混合機を用いて混合後、径8mmの杵で1錠400mgになるように圧縮成形した。
【0019】
実施例1
比較例と同様に酸化マグネシウム錠を作成した。この錠剤を用い、表1の組成の溶液を用いてコーティングを実施した。
【0020】
【表1】

【0021】
試験例1
実施例1と比較例1との錠剤を服用して口腔内での付着具合及びえぐみを確認した。その結果を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
上記の通り、酸化マグネシウム錠にコーティングを実施することによりコンプライアンスが上昇することが確認された。
【0024】
実施例2
実施例1で製造した錠剤を用い、下記のような包装を用いて包装を実施した。
検体1 塩化ビニル製のPTPシート
検体2 防湿PTPシート
検体3 包装なし
試験例2
実施例2の試験1〜3について25℃75%RHの開放条件下で1ヶ月間放置した。放置した錠剤を第十四改訂日本薬局方に記載されている崩壊試験法を用い、錠剤の崩壊の仕方について確認した。その結果を表3にしめす。
【0025】
【表3】

【0026】
このように、酸化マグネシウムのコーティング錠は湿度を遮断する包装容器を用いて包装することにより崩壊遅延を起こさないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明を利用することにより酸化マグネシウム錠の独特のえぐみ、口腔内への付着を抑えつつ、更に崩壊遅延を抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品有効成分として制酸剤を含有し水溶性高分子物質でフィルムコーティングした嚥下容易な医薬品組成物
【請求項2】
制酸剤が酸化マグネシウムである請求項1の医薬品組成物
【請求項3】
水溶性高分子がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アルキル系樹脂である請求項1ないし2の医薬品組成物
【請求項4】
透湿度が4.0g/m2・24hr以下である包装容器に包装した請求項1ないし3の製剤
【請求項5】
透湿度が1.0g/m2・24hr以下である包装容器に包装した請求項1ないし4の製剤

【公開番号】特開2007−15950(P2007−15950A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196999(P2005−196999)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000208145)大洋薬品工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】