説明

被覆剤に用いられる難燃性添加剤を調製する方法、および該方法によって調製された調製物

本発明は、改良した難燃性を付与するために被覆剤に混和させる、金属水酸化物、特に水酸化マグネシウムを主成分とする添加物の調製方法に関する。水酸化マグネシウムの平均粒度は、1nmから10μmの範囲から選ばれ、好ましくはばらつきが非常に少ない。水酸化マグネシウムには洗浄および分散処理を施すことで、効率的に分散し、被覆剤の好ましい特性を悪化させないようにする。処理に用いられる材料および条件、並びに粒径は、被覆剤の種類に従って選択される。仕上がりの被覆剤は、主成分として水と、溶媒と、油と、アルコールとを含むことができる。ASTMのD1360規格試験において、他の難燃性化合物を用いて調製された被覆剤と比較して、本発明の添加剤を用いた場合、燃焼による重量損失が少ないことが証明された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材等に塗布される被覆剤に使用されたり、木材やおよび木材から作られるもの等の燃焼性の材料に対する仕上げ剤として使用されたりする添加剤の調製方法に関し、その目的は、保護すべき材料を被覆することによって難燃性を持たせることである。具体的には、本発明は、分散剤と、適合媒体(有機溶媒)と、水と、樹脂との混合物、および、金属水酸化物を用いて調製される添加剤の調製方法に関する。なお、該混合物は、調製された添加剤が被覆物に対して親和性を有するようにするために用いられる。
【背景技術】
【0002】
住宅や、労働、娯楽等の様々な活動を行うことを目的とした建物には、火災を抑制できたり、火災の拡大を遅滞させたりすることができる手段を組み込んで建設することが求められていることが知られている。国によっては、建物内に置かれる家具を製造するために用いられる材料と同様に、建物の建築資材に対しても規制を設けているところがある。
【0003】
多くの家具は、見栄えを良くし、またその家具を形成する材料を保護するための被覆剤を含んでいるが、そのような被覆剤の多くは可燃性のものである。そのため、そのような被覆剤が、可燃性の基材に被覆されれば、延焼の要因を生み出すことになってしまう。
【0004】
周知の難燃性の被覆剤は、主に、リン酸塩類、ケイ酸塩類またはホウ酸塩類(発泡剤)から構成されている。このような発泡性の難燃性材料は、炎の作用によって、まず上記材料が泡層を形成し、それが灰に変わって硬い外皮となって、炎を基材に到達させることを妨げる特性がある。
【0005】
一方、金属水酸化物類は難燃性添加剤として、例えばポリマーの形態で等用いられており、様々な用途がある。例えばケーブルの被覆物、家具、屋根用タイル‘屋根ふき材’等である。水酸化マグネシウムには、他の難燃剤と比較して、環境に優しく、また防煙剤として用いた場合にも有毒ガスを発生させないという利点がある。
【0006】
延焼を抑制するために用いられる金属水酸化物を用いた代替物は、数多く存在している。以下に、例をいくつか挙げる。 欧州特許EP1156092には、水酸化マグネシウムを用いて作られる、2つの成分からなる接着剤の製造に関して記載されており、その接着剤は、難燃性のあるニスとして用いることができると述べられている。
【0007】
米国特許US6448308には、赤リンを主成分とする難燃性被覆剤の調製において、その一部として水酸化マグネシウムを含むことが記載されている。ここで水酸化マグネシウムは、特に炎を抑制する過程におけるリン酸の生成を低減するために用いられる。
【0008】
米国特許US4849298には、塗料の生成において水酸化アルミニウムを用いることが記載されている。ここで、水酸化アルミニウムは、従来周知の塗料に対して直接添加されたり、従来周知の塗料に含まれている成分(二酸化チタン等)の代替物として用いられたりしている。本特許には、この添加剤を用いて調製された被覆剤の持つ難燃性の効果が記載されている。
【0009】
ニスや下地塗料等の従来の木材被覆物、または塗料や防水塗料等の従来の美化剤に対して、前処理された水酸化マグネシウムを適量添加することで、難燃剤および防煙剤として優れた効果を発揮する。また、このように調製された被覆剤は、仕上がりの外観(光沢、透明度、被覆力、機械抵抗等)を変化させることはない。
【発明の概要】
【0010】
従来の発明において見られる問題を踏まえて、本発明の目的の1つは、燃焼しやすい面を被覆および保護する被覆剤の調製の際に用いられる添加剤であって、難燃剤および防煙剤として機能し、既存の難燃性被覆剤よりも効果的な添加剤を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、保護する面に塗布される前の被覆剤と容易に混和しうる難燃剤を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、炎にさらされた場合にも有毒残留物を生成することがない材料を耐炎性材料として含む添加剤にある。
【0013】
本発明のまた別の目的は、難燃性材料が金属水酸化物の一種であることである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、本発明の添加物に含まれる難燃性材料が、塗布前の被覆剤中で凝集しないことである。
【0015】
本発明のまた別の目的は、本発明の添加物に含まれる難燃性材料が、被覆および保護する面に形成される被覆剤の仕上がり膜に、均一に(均質に)分散されることである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、難燃性添加剤が、添加先である上記被覆剤における基礎的な特性を損なわないことである。基礎的な特性とは、例えばニスの透明性が挙げられる。
【0017】
本発明のまた別の目的は、添加物に含まれる難燃性材料が、それを含む被覆剤の粒子と類似する粒子から形成されていることである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法による材料を用いて調整された、被覆剤に対する添加剤は、その難燃性の源として、金属水酸化物、好ましくはマグネシウムからなる金属水酸化物を含んでおり、その粒子の大きさによりそれぞれ特徴がある。本発明の添加剤には、それが混和される被覆剤の性質に関連した処理が施され、結果物としての添加剤を選択された被覆剤に対して効率的に一体化させることができるようにする。
【0019】
本発明の方法による材料を用いて生成された添加剤には、以下のような特徴がある;
a) 被覆剤に要求される仕上がりが示す機能に応じて、金属水酸化物の粒子の平均直径(D50)が1nmから10μmまでの範囲から選択される。
【0020】
b) 添加剤内における金属水酸化物粒子の粒子濃度は、添加剤の重量の99%にまですることができる。
【0021】
本発明の方法によると、有機溶媒と、分散剤と、樹脂と、場合によっては水とからなる材料中で、他の適合媒体(有機溶媒または水)と、分散剤と、最後には界面活性剤とを用いて処理された金属水酸化物の粒子を含むペーストまたは好ましくは懸濁液が生成されるが、これには以下のような効果がある。
1. 発泡性添加剤の持つ難燃性の効率を向上させる。難燃性に関する上記の比較試験では、主成分がリン酸塩類からなる被覆剤よりも、主成分が水酸化マグネシウムである被覆剤の方が良好な結果が得られることが示された。当該結果は、炎の作用に対する重量損失のパーセンテージによって表わされる。
2. すでに市販されている被覆剤に対して容易に混和させることができる。被覆剤の調製において従来から用いられているものと異なる装置を用いる必要がない。添加剤は、その主成分が混和する対象である被覆剤に対して適合性(incorporar)がある。
3. リンを主成分とする難燃剤とは異なり、被覆剤の仕上がりの外観を変化させることがない。リンの場合、仕上がり時に望まれる最終的な外観を付与するための追加の被覆剤を添加する必要がある。本発明の添加剤を用いれば、光沢、透明性、被覆力、機械抵抗等の被覆剤の持つ特性は変化しない。
4. 環境に優しく、人間や生物に対して有害ではない。難燃性被覆剤として金属水酸化物を用いた場合、ハロゲン化合物やリン酸化合物等の物質と等比較して有害ガスを放出せず、上記金属水酸化物の分解反応において生成される水は、煙の排気を抑制する効果があると様々な研究によって示されている。
5. 水酸化マグネシウムに対して施される表面処理に用いる表面添加剤には、添加剤および被覆剤に含まれる樹脂と水酸化マグネシウムとを適合させるものが選択され、これにより、光沢、透明性、被覆力、機械抵抗等の被覆剤が持つ特性を維持する。
【0022】
下記の説明を読む際には、説明をより良く理解するために、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の目的である、添加剤の生成方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の方法によって調製される添加剤は、1nmから10μmまでの平均粒度を持つ金属水酸化物から作られ、この金属水酸化物は、好ましくは、単分散であって、様々なサイズを有していて、純度が90%以上であるものである。
【0025】
金属水酸化物粒子は、最終的な被覆剤中に混和させる処理に供される。このために金属水酸化物粒子は、当初の水酸化物と形成される添加剤の主成分との間の適合性が限定されない限りにおいて、希薄懸濁液内で有機水酸化物、または粉末状の水酸化物から分離することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態においては、金属水酸化物は水酸化マグネシウムであると良い。水酸化マグネシウムには、その難燃性に加えて、下の式(1)に示すように、反応物が分解される際に水を放出し、煙の排気を抑制する働きがある。
【0027】
【化1】

【0028】
図1は本発明の添加剤の生成過程を示すブロック図であり、2つの領域をもって示されている。ブロック(10)から(40)により構成される第1の領域は金属水酸化物粒子に対する前処理を表わしており、ブロック(50)および(60)により構成される第二の領域は、添加剤自身の調製過程を表わしている。
【0029】
領域I、すなわち前処理段階において、ブロック(10)は添加剤の調製に用いられる難燃性材料を表わし、好ましくは湿ったペースト状の金属水酸化物である。無水であることが求められる非常に特別な用途においては、乾いた粉末状の水酸化物を用いることが好ましい。上述したように、水酸化物は1nmから10μmまでの平均粒度を持つ粒子であり、純度が90%以上のものである。この材料は、次のブロックに加えられる。
【0030】
ブロック(20)は、いわゆる「媒体交換」の工程を表わしている。この工程では、湿ったペースト状の金属水酸化物が含有している水を取り除き、適合性のある有機溶媒と入れ替えることを目的に、当該金属水酸化物を洗浄する。すなわち、金属水酸化物は、相分離を生じることなく最終塗布物(所望の被覆剤)の溶媒または希釈剤と混合する。当該混合は、形成された塊が所望の被覆剤と接触すると停止する。この処理は、好ましくは5分から30分、または必要と判断される時間だけ、強く攪拌して行う。攪拌には、少なくとも2m/秒であって、30m/秒以下の周速度を有する、縁の鋭い円盤等を備えた拡散器またはそれに準ずる他の装置を用いて、混合物は不規則なパターンで攪拌したままに保つ。攪拌の結果、相ごとに分離され、この処理は、固体の状態で残留している水分が5%未満になるまで繰り返すことができる。
【0031】
溶媒または希釈剤の性質、および最終塗布物に含まれる樹脂の性質により、金属水酸化物が反応を起こす可能性がある場合、ブロック(15)に示されるように、「媒体交換」工程(20)の前に、所望の被覆剤に用いる界面活性剤と同様の従来の界面活性剤を用いて、粒子に表面処理(16)を施すことの必要性が評価される。
【0032】
「媒体交換」の処理(20)は、領域IIの拡散段階(50)、被覆剤への混和、あるいは被処理面に対する当該被覆剤の塗布において、水酸化物粒子が凝集するのを防ぐためである。
【0033】
決定のブロック(30)においては、所望の被覆剤に含まれる樹脂および、溶媒または希釈剤の性質により、添加剤に残留している水分が非常に少なく、ゼロに近い場合、「媒体交換」工程(20)が終了すると、固相は乾燥工程(40)入る。当該工程においては、温度を常に媒体の沸点よりも低くしておく必要がある。この工程は、所望の被覆剤が耐えうる残留水分量が得られるまで続けられる。
【0034】
この工程の結果、乾燥した粉末状の水酸化物が得られ、これは後に行われる添加剤の調製のために保存しておくことができる。この手段で得られる生成物は12ヶ月間、分散性を保った乾燥した粉末のままにしておくことができる。
【0035】
これ以前の段階で水分含有量が5%に達していた場合、ブロック(30)で表わされる乾燥段階は省略される。
【0036】
この過程の最初の段階における前2つの工程のいずれかを終えて得られた乾燥した水酸化物、または湿った水酸化物は、領域IIの拡散工程(50)へと進む。この工程では、所望の被覆剤に用いることができる状態の、本発明に係る材料である添加剤の調製を行う。
【0037】
この段階では、ブロック(20)または(30)から得られたペーストまたは乾燥した粉末が拡散工程(50)に加えられ、当該工程において、樹脂および類似した分散剤が下の表に従って所望の被覆剤に加えられる。
【0038】
【表1】

【0039】
拡散(50)は、周速度が15m/秒から30m/秒までの攪拌器または分散器を用いて行う。好ましくは、被覆剤に用いられる溶媒または希釈剤と主成分が同じ溶媒または希釈剤、または、少なくともこれと適合する溶媒または希釈剤を混合物に添加することによって、当該混合物の粘度を所望の被覆剤の粘度に調製する。混合物中の分散剤の割合は、乾燥した水酸化物に対して0.5%から10%までの割合を維持する。
【0040】
拡散工程(50)によって得られる生成物(60)は、本発明に係る添加剤である。好ましい実施形態において、当該生成物は、その重量の99%以下が金属水酸化物によって形成されている。
【0041】
本発明に係る工程により添加剤が得る利点は、例えば、段階(20)における媒体交換処理並びに段階(50)における樹脂および分散剤との混合の結果、生成物が所望の被覆剤に対して完全に適合する点である。これは、上述の表に基づいて適切な界面活性剤、樹脂および分散剤を選択し、さらには、添加剤の形成において金属水酸化物の粒子を非常に均質に分散させた状態を維持することができるためである。これにより、当該添加剤を所望の被覆剤に添加した場合、添加剤は素早くかつ容易に混和し、保護する面に対して塗布された被覆剤の層において、被覆剤全体に渡って粒子の均質性が確実に保たれる。
【0042】
本実施形態に係る好ましい手段においては、透明加工を行う場合には、平均粒度がナノ粒子の範囲内であり、かつ低い変動性(単分散)の粒子を用いるため、ニスの透明性は変化しない。よって、粒度の大きい粒子、または不均質な試料、あるいはばらつきの大きい試料では、上記の効果を得ることができない。
【0043】
従って、透明なニスに用いる添加剤を調製する場合、上記の平均粒度範囲の下限に当たる粒度の粒子を用いることが推奨される。同様に、不透明な被覆剤には、粒度の比較的大きい粒子を用いてもよく、特定のきめを施す処理を行う場合は、平均粒度範囲の上限に当たる粒度の粒子を用いることもできる。
【0044】
平均粒度範囲の上限に当たる粒度(10μm)の粒子を用いた場合、表面を保護する被覆剤の層において、粒子を均質に分布することができない。その結果、難燃効率は著しく低下する。
【0045】
様々な分野において、一般的な用途に用いられる従来の被覆剤として推奨される試薬およびパラメータ値の選択の概要を表2に示す。これらを用いれば、本発明に係る調製方法に基づいて添加剤を調製することができる。本発明の添加剤の特徴として、例えば、所望の被覆剤への混和を容易に行うことができ、難燃性および防煙性材料の粒子を均質(均一)に分布させることができ、また、被覆剤における望ましい特性を維持することができる点等がある。
【0046】
【表2】



【0047】
表1および表2のデータの使用をより良く理解するために、以下にASTMのD1360規格に則って行った実施例を示す。これら実施例により、本発明に係る調製方法による添加剤の調製の、多様な代替例を説明する。
【0048】
〔実施例1〕残留している水分が5%未満の塩化エチルアンモニウムを主成分とする被覆剤において用いられる添加剤の調製
工程1: 残留している水分が65%で、以下に示すような粒度別分布を持つナノメートルサイズの水酸化マグネシウムを分離する。COULTER−LS230を用いてレーザ光線回折により計測した場合において、D10:59.0nm、D50:92.7nm、D90:153nmを有するもの。本実施例においては、1200gを用いる場合を説明する。
工程2: 注ぎ口を有する6Lの容器に水酸化マグネシウムを入れる。
工程3: エチレングリコールブチルエーテルを3600g注入し、分散促進剤を用いて、5m/秒から30m/秒までの周速度で攪拌(分散)する。攪拌(分散)は5分から15分までの間続ける。
工程4: 遠心分離機、デカンタ、フィルタまたは液体から個体を分離する他の手段を用いて、分離を行うために選択した機器の機能に応じて、可能な限り液体部分を取り除く。
工程5: 得られたペーストの水分含量が5%未満になるまで上記の工程3および4を繰り返し行う。
工程6: 工程5を終えたペーストを、適切な乾燥機に入れ、有機溶媒を除去する。乾燥機は、溶媒の沸点よりも高い温度も設定しない。これにより、得られる水酸化マグネシウムの粉末が、粒子の側面における変化を受けず、また難燃性添加剤に対して効率的に混和させることができる。
工程7: 注ぎ口のない1.0Lのベルセリウスビーカに、590gの塩化エチルアンモニウムを入れる。
工程8: ベルセリウスビーカを、ディフレクタおよび拡散促進剤を備えた拡散器に設置する。
工程9: 1m/秒から5m/秒までの適度な周速度で、樹脂を攪拌する。
工程10: 樹脂に対して適合性のある分散剤DCM−305(酸性基を有する共重合体)を10g注入する。
工程11: 工程6にて得られた水酸化マグネシウムを400g添加する。
工程12: 水酸化マグネシウムが完全に液体になるまで、中位の速度で攪拌を続ける。
工程13: 混合物が均質になったら、効率的な分布を行うのに十分な切削力が得られるまで、分散器の周速度を15m/秒から30m/秒まで上げる。
工程14: 15分間、あるいは塗布物の品質を実現するのに必要な時間だけ、拡散を続ける。
【0049】
〔実施例2〕残留している水分が5%未満であることを必要とするニトロセルロース誘導体を主成分とする被覆剤において用いられる添加剤の調製
工程1: 490gのニトロセルロース樹脂を、注ぎ口のない1.0Lのベルセリウスビーカに入れる。
工程2: ベルセリウスビーカを、ディフレクタおよび直径7cmの拡散体を備えた拡散器に設置する。
工程3: 適度な速度で、樹脂を攪拌する。
工程4: 樹脂に対して適合性のある分散剤DCM−305(酸性基を有する共重合体)を10g注入する。
工程5: 平均粒度が100nmの、乾燥した水酸化マグネシウムを400g加える。
工程6: 水酸化マグネシウムが完全に液体になるまで、中位の速度で攪拌を続ける。
工程7: 混合物が均質になったら、効率的な分布を行うのに十分な切削力が、得られるまで、分散器の周速度を15m/秒から30m/秒まで上げる。
工程8: 15分間、あるいは塗布物の品質を実現するのに必要な時間だけ、拡散を続ける。
【0050】
実施例1で調製された塩化エチルアンモニウムニスに用いる難燃性添加剤は、市販されているいずれの塩化エチルアンモニウムニスと、様々な比率で混合させても良い。また、実施例2で調製されたニトロセルロースを主成分とする下地塗料に用いる難燃性添加剤は、ニトロセルロースを主成分とするいずれの市販の下地塗料と混合させても良い。
【0051】
木製製品のニスは、下地塗料と同じくらい、ニスとしても最も頻繁に用いられている。実施例1および2で調製された難燃性添加剤に、様々な組み合わせの下地塗料とニスとを混合させ、ASTMのD1360規格に則った燃焼試験を行った結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
様々な種類の被覆剤に対して適用できる様々な種類の樹脂を用いて調製された添加剤の残りの例を表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
上記の試験において、木材の被覆剤に水酸化マグネシウムを含む添加剤を用いた場合の効果を表5に示す。この効果は、上記の方法によって調製された添加剤を適用する実施例の結果を示している。
【0056】
被覆剤に水酸化マグネシウムが含まれている場合の難燃剤の効果を明確に確認することができる。物理試験において、本発明の添加剤を含む被覆剤の、塗布後の仕上がりの外観は、添加剤を含まない被覆剤によってもたらされる外観と比較して変わらないことがわかる。このことは、ニス等のような透明度の高い被覆剤にもあてはまる。
【0057】
【表5】

【0058】
この点においては、水酸化物粒子の大きさが重要であり、また、ひとたび塗布された時は、被覆剤の最終的な層に含まれる粒子の、大きさの均一さおよび分布の均質さが重要である。
【0059】
上記の実施例を通して記述および説明したとおり、本発明は難燃剤および防煙剤としての性質を持つ添加剤の調製に関するものであり、この添加剤は、添加先の被覆剤の特性に影響を与えることがないものである。
【0060】
実施例では、特に木材や木材から作られるものの面を保護するための一般的な被覆剤をいくつか用いた。当業者には理解できるように、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、それを説明するものである。上記以外の面への塗布に用いる上記以外の被覆剤に本発明の添加剤を用いることも、本発明の範囲に含まれ、本発明は請求項を考慮に入れて認められるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼しやすい面を保護するために従来の被覆剤と混和させる、難燃剤および防煙剤としての金属水酸化物を主成分として含む難燃性添加剤の調製方法であって、
上記方法は、
(a) 上記難燃剤の前処理工程と、
(b) 上記難燃性添加剤の調製工程と
を含み、
上記調製方法においては、
i) 上記金属水酸化物の平均粒度は、1nmから10μmまでの範囲内から選択され、
ii) 上記前処理工程における第1段階の処理として、上記金属水酸化物に含まれる水分を減少させる処理をおこなうことによって、上記金属水酸化物に残留する水分を、調製される上記難燃性添加剤の添加対象である被覆剤、すなわち目的被覆剤、にとって許容できる値まで低減させ、当該処理に必要であれば、上記目的被覆剤において用いられる溶媒または希釈剤に対して適合性のある物質を上記金属水酸化物に含まれる水分と置換する処理をおこなうことによって、上記金属水酸化物に残留する水分を、上記目的被覆剤にとって許容できる値まで低減させ、
iii) 第2段階の処理として、上記目的被覆剤に対して容易に混和させることができる添加剤を得るために、樹脂と、分散剤と、上記目的被覆剤に対して適合性のある上記溶媒または上記希釈剤とを含む混合物中に、上記第1段階の処理を施した上記金属水酸化物を分散させる
ことを特徴とする難燃性添加剤の調製方法。
【請求項2】
処理前の上記金属水酸化物は、懸濁状であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項3】
処理前の上記金属水酸化物は、湿ったペースト状であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項4】
処理前の上記金属水酸化物は、固体の状態であり、且つ、実質的に乾燥している状態であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項5】
上記第1段階の処理では、上記目的被覆剤の上記希釈剤と適合性のある媒体を用いて処理前の上記金属水酸化物を洗浄することによって、上記金属水酸化物に含まれる上記水分を上記媒体に置換することを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項6】
上記洗浄は、強く攪拌することによっておこなうことを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項7】
上記攪拌は、周速度が5m/秒から30m/秒である攪拌装置を用いておこなうことを特徴とする請求項6に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項8】
上記攪拌は、5分から30分の間、継続することを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項9】
上記攪拌の後、相の分離および液相の除去を行うことができることを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項10】
残留する水分が5%である固体の状態になるまで上記洗浄を繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項11】
上記洗浄に用いる上記媒体は、上記目的被覆剤に含まれる上記溶媒または上記希釈剤に対して適合性のある、従来の被覆剤に用いる溶媒または希釈剤から選択されることを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項12】
上記洗浄に用いる上記媒体は、上記目的被覆剤に含まれる上記溶媒または上記希釈剤と同一であることを特徴とする請求項11に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項13】
上記金属水酸化物自体が、上記洗浄に用いる上記媒体または上記被覆剤に含まれる樹脂に対して易反応性がある場合は、上記洗浄をおこなう前に、上記金属水酸化物に対して界面活性剤を用いた表面処理を施すことを特徴とする請求項5に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項14】
上記目的被覆剤が許容できる上記残留する水分がゼロに近い場合、上記置換を終えて得られた生成物を更に乾燥処理することを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項15】
上記乾燥処理の温度を、上記媒体の沸点よりも低いものとすることを特徴とする請求項14に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項16】
上記乾燥処理は、上記得られた生成物が上記目的被覆剤が許容される上記残留する水分になるまで継続されることを特徴とする請求項15に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項17】
上記第1段階の処理において得られた上記金属水酸化物は水分を0%から5%含み、上記目的被覆剤に対して適合する樹脂中で分散することができることを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項18】
上記金属水酸化物は、上記難燃性添加剤の形成のための上記分散をおこなう必要が生じるまで、長期間保存しておくことができることを特徴とする請求項17に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項19】
上記第2段階の処理は、水分の少ない金属水酸化物と、樹脂および分散剤とを拡散することであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項20】
上記第2段階の処理において添加されるものは、上記目的被覆剤に含まれる上記樹脂中で分散させることができる、水分含有量が0%から、上記目的被覆剤に許容される最大含有量である5%までの金属水酸化物であることを特徴とする請求項19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項21】
上記樹脂が上記目的被覆剤に対して適合性のある樹脂であることを特徴とする請求項19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項22】
上記分散剤が上記目的被覆剤に含まれる分散剤に対して適合性があることを特徴とする請求項1および19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項23】
上記拡散は、周速度15m/秒から30m/秒までの範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項24】
上記混合物中の上記分散剤の割合は、乾燥状態の上記金属水酸化物に対して0.5%から10%までの間で維持されることを特徴とする請求項19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項25】
得られる生成物は、難燃性添加剤の5〜99%重量の金属水酸化物を含んだ難燃性添加剤であることを特徴とする請求項19に記載の難燃性添加剤の調製方法。
【請求項26】
難燃剤および防煙剤としての金属水酸化物と、媒体と、分散剤と、樹脂とを含有する、燃焼しやすい面を保護するために従来の被覆剤と組み合わせる難燃性添加剤であって、
a. 上記金属水酸化物は、その平均粒度が1nmから10μmまでの範囲内に含まれ、
b. 上記媒体は、調製される上記難燃性添加剤の添加対象である被覆剤に対して適合性があり、
c. 上記樹脂は、調製される上記難燃性添加剤の添加対象である上記被覆剤に対して適合性があり、
d. 上記分散剤は、目的とする上記被覆剤に対して適合性がある
ことを特徴とする難燃性添加剤。
【請求項27】
難燃性添加剤の5〜99%重量の上記金属水酸化物が含まれていることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項28】
上記分散剤は、乾燥状態の上記金属水酸化物の0.5〜10%量含まれることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項29】
上記難燃性添加剤の水分含有量が、上記目的被覆剤によって許容される水分含有量以下であることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項30】
上記金属水酸化物は、好ましくは水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項31】
上記難燃性添加剤は、上記目的被覆剤に混和させた場合に均質に分散することを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項32】
上記難燃性添加剤は、添加先である上記被覆剤の光沢、透明性、被覆力または機械抵抗等の好ましい特性を悪化させることがないことを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項33】
上記難燃性添加剤は、上記被覆剤の粒子品質に近い粒子品質を示すことを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項34】
仕上がりに透明性を要求される被覆剤の場合は、水酸化マグネシウムの粒子の大きさを、上記平均粒度の上記範囲の下限に当たる大きさとすることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。
【請求項35】
不透明な被覆剤または質感のある被覆剤の場合は、水酸化マグネシウムの粒子の大きさを、上記平均粒度の上記範囲の上限に当たる大きさとすることを特徴とする請求項26に記載の難燃性添加剤。

【図1】
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【公表番号】特表2010−509430(P2010−509430A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536174(P2009−536174)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/MX2007/000046
【国際公開番号】WO2008/056966
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509094089)セルヴィシオス インダストリアレス ペニョーレス,ソシエダッド アノニマ デ キャピタル ヴァリアブル (4)
【Fターム(参考)】