説明

被覆微粒子およびその製造方法、ならびに、導電性微粒子

【課題】柔軟で弾力性に優れると共に、金属との密着性も良好な被覆微粒子およびその製造方法、並びに、当該被覆微粒子をコア微粒子とする導電性微粒子を提供する。
【解決手段】有機材料または有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成された重合体被覆層を有する被覆微粒子、および当該被覆微粒子の製造方法であって、上記コア粒子を分散させた水系媒体中、界面活性剤の存在下で、上記重合体被覆層を開環および/または重縮合反応により形成する被覆微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属との密着性の良好な被覆微粒子およびその製造方法、ならびに、この被覆微粒子を用いた導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示ディスプレイやタッチパネルなどのセル間隙(またはパネル間隙)用のスペーサーや、マイクロ素子実装用の導電性接着剤、異方導電性接着剤などの導電間隙部材などには、重合体粒子が広く用いられている。これらの用途においては、粒子形状が略均一であること、柔軟で弾力性に優れることなどが求められており、かかる観点から、重合体粒子の材料として、有機材料や、有機成分と無機成分とを併用した有機無機複合材料が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アミノ樹脂(たとえば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)からなる有機樹脂微粒子が開示されている。これらのアミノ樹脂微粒子は、当該微粒子表面に多数の官能基を有するため、金属との密着性がよく金属被覆層の形成が容易であることから、導電性微粒子の基材粒子として広く利用されている。
【0004】
一方、特許文献2には、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機無機複合微粒子が開示されている。当該技術によれば、微粒子構成材料の種類や量をコントロールすることで、所望の特性を有する微粒子が得られる旨記載されている。
【特許文献1】特公平7‐17723号公報
【特許文献2】特開2003‐183337号公報
【特許文献3】特開2001‐126532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記アミノ樹脂微粒子は緻密な架橋構造を有するため、粒子が硬すぎて圧縮変形させ難く、例えば、導電性微粒子として電極間に用いても電極表面との接触面積を広げられず、接触抵抗を低減することが困難であった。また、接触面積を広げるべく圧縮変形量を大きくすると、粒子の歪が大きくなった時点で粒子が破壊してしまうため、接続信頼性に劣るという問題もあった。一方、上記有機無機複合微粒子は、柔軟性は有するものの、上記アミノ樹脂微粒子に比べて金属との密着性に劣るため、有機無機複合微粒子表面に施した金属被覆層が当該微粒子の変形に追随できず剥離してしまうといった問題があった。尚、特許文献3では、かかる問題を解決すべく、シリコーン微粒子へのメッキ密着性を向上させる技術が提案されている。しかしながら、メッキ工程に先立って行われるエッチング工程におけるシリコーン樹脂の溶融や凝集といった問題は完全には解決されておらず、更なる改善の余地が有った。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、柔軟で弾力性に優れると共に、金属との密着性も良好な被覆微粒子およびその製造方法、並びに、当該被覆微粒子をコア微粒子とする導電性微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明の被覆微粒子とは、有機材料または有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成された重合体被覆層を有するところに要旨を有するものである。
【0008】
本発明者らは、柔軟性や弾力性に優れ、かつ、金属との密着性も良好な微粒子を得るべく検討を進め、上記特性をそれぞれ異なる材料により確保し、これらを一体化すれば上記課題を満足し得るのではないかとの着想の下、試行錯誤を重ねた。もちろん、単に材料を一体化するだけでは上記特性を十分に発現させることはできず、本発明のポイントは、微粒子の柔軟性や弾力性は粒子の中心部を構成するコア微粒子で、金属との密着性はコア微粒子を被覆する重合体被覆層でそれぞれ確保する構成とし、さらに、この重合体被覆層を、コア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成させた点にある。すなわち、コア微粒子の表面に均一な重合体被覆層が存在するため、柔軟性や弾力性を有するのは勿論のこと、金属との密着性にも優れた被覆微粒子が得られたのである。
【0009】
本発明の被覆微粒子の製造方法とは、有機材料、または、有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に重合体被覆層を有する被覆微粒子の製造方法であって、上記コア粒子を分散させた水系媒体中、界面活性剤の存在下で、上記重合体被覆層を開環および/または重縮合反応により形成するところに要旨を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、柔軟性や弾力性といった微粒子特性の制御が可能で、かつ、金属との密着性も良好な被覆微粒子を得ることができる。また、本発明にかかる導電性微粒子は、前記被覆微粒子を基材とするものであるため、金属との密着性も良好で、例えば、異方導電性材料などに用いられる導電性微粒子として用いた場合にも導体層の剥離が生じ難いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の被覆微粒子とは、有機材料または有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成された重合体被覆層を有することを特徴とするものである。
【0012】
上述のように、本発明のポイントは、コア微粒子に求められる物性(例えば、柔軟性や弾力性)を備えると共に、コア微粒子表面に金属との密着性に優れた重合体被覆層が均一に形成されている点にある。そこで、まず、上記重合体被覆層について説明する。
【0013】
本発明にかかる重合体被覆層とは、本発明の被覆微粒子に金属との良好な密着性を付与するものであり、上記コア粒子を分散させた水系媒体中、界面活性剤(後述する一般式(1)で表される化合物)の存在下で、上記重合体被覆層の原料となる化合物を、開環および/または重縮合反応させることにより、コア微粒子の表面に形成されるものである。
【0014】
上記重合体被覆層の原料としては、化合物(A)と化合物(B)(後述する)が挙げられる。上記化合物(A)は、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群(以下、アミノ化合物)より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドとの混合物か、あるいは、これらのアミノ化合物より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドを反応させて得られる初期縮合化合物を含むものであるのが好ましい。尚、水に対する親和性が高いこと、重合体被覆層の形成が速やかであるという点からは、化合物(A)として、初期縮合化合物を用いるのが好ましい。
【0015】
ここで、上記アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られる化合物とは、いわゆるアミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂)であり、初期縮合化合物とは、アミノ樹脂の前駆体たる化合物である。すなわち、上記化合物(A)を用いることにより、アミノ樹脂構造を必須的に含む重合体被覆層が形成される。
【0016】
なお、上記初期縮合化合物は、化合物(A)として(i)尿素およびチオ尿素(以下、尿素系化合物)のうちの少なくとも1種とホルムアルデヒドとを用いた場合には、尿素樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となり、(ii)メラミンとホルムアルデヒドとを用いた場合は、メラミン樹脂、(iii)ベンゾグアナミン、アセトグアナミンおよびシクロヘキシルグアナミンからなる群(以下、グアナミン系化合物)より選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドとを用いた場合には、グアナミン系樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となる。また、(iv)尿素系化合物、メラミンおよびグアナミン系化合物の内の2種以上とホルムアルデヒドとを反応させて得られたものである場合は、尿素系樹脂、メラミン樹脂およびグアナミン系樹脂の内の2種以上が混在してなる樹脂の構成成分となり得る初期縮合化合物となる。上記初期縮合化合物としては、これら初期縮合化合物のうちのいずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記初期縮合化合物を合成する際の好適なアミノ化合物としては、尿素系化合物、メラミン、尿素系化合物とメラミンとの共縮合物、および、メラミンとグアナミン系化合物との共縮合物が好ましく、より好ましくは尿素系化合物、メラミン、および、尿素系化合物とメラミン化合物との共縮合物、さらに好ましくは、メラミン、および、尿素系化合物とメラミンとの共縮合物である。
【0018】
また、上記以外の他のアミノ化合物を併用してもよく、かかる他のアミノ化合物としては、例えば、カプリグアナミン、アメリン、アメリド、エチレン尿素、プロピレン尿素、およびアセチレン尿素などが挙げられる。他のアミノ化合物を用いる場合は、上述のアミノ化合物と他のアミノ化合物とを併せて、上記初期縮合化合物の原料となる(あるいは重合体複合層に含まれる)アミノ化合物として扱うものとする。
【0019】
上述のアミノ化合物と反応させるホルムアルデヒドは、反応系内においてホルムアルデヒドを生じるものであればよく、特に限定はされない。なお、上記初期縮合化合物を得る反応では、一般に、溶媒として水を用いるため、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)の他、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加して水中でホルムアルデヒドが発生し得るようにしてもよい。
【0020】
上記初期縮合化合物を得る具体的な反応形態としては、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)にアミノ化合物を添加して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加した水溶液に、上述のアミノ化合物を添加して反応させる方法などが好ましく挙げられる。これらの中でも、前者の方法はホルムアルデヒド水溶液の調整槽が不要であり、また、ホルマリンは入手が容易であるため好ましい。なお、上記反応は、アミノ化合物とホルムアルデヒドが混合状態で反応する形態であればよく、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液にアミノ化合物を添加する形態以外に、アミノ化合物にホルムアルデヒドの水溶液を添加する形態であってもよい。上記反応は、公知の攪拌装置などによる攪拌下で行うことが好ましい。
【0021】
上記初期縮合化合物を得る反応において、アミノ化合物とホルムアルデヒドとのモル比「アミノ化合物(モル)/ホルムアルデヒド(モル)」は、1/0.5〜1/10であるのが好ましく、より好ましくは1/1〜1/8以下であり、さらに好ましくは1/1〜1/6以下である。アミノ化合物とホルムアルデヒドの配合割合(モル比)が上記範囲を外れる場合には、いずれかの化合物が未反応のまま多量に反応系内に残留してしまう。
【0022】
なお、溶媒として水を用いる場合、水に対するアミノ化合物およびホルムアルデヒドの添加量、すなわち、仕込み時点におけるアミノ化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に支障のない限りにおいて、より高濃度であることが望ましい。
【0023】
上記初期縮合化合物は、水混和度(重縮合率の度合いの指標)が100%以上であるのが好ましく、より好ましくは200%以上であり、5000%以下であるのが好ましく、より好ましくは3000%以下である。水混和度が上記範囲を超える場合は、初期縮合化合物の親水性が高いことを意味しており、かかる場合には重合体被覆層の形成に長時間を要する傾向がある。一方、水混和度が上記範囲に満たない場合には、重合体複合層形成時の反応制御が困難となり、重合体被覆層の特性(柔軟性、機械的強度およびメッキ性など)が得られ難くなることがある。なお、水混和度とは、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られた初期縮合化合物の重合率の程度を指標するものであり、初期縮合化合物(5g,15℃)に水を滴下した場合に、白濁を生じさせるのに要した水の質量と初期縮合化合物との質量比「水(g)/初期縮合化合物(g)」に100を乗じて得られる値である。
水混和度=[水(g)/初期縮合化合物(g)]×100
【0024】
上記初期縮合化合物の重縮合率の度合いは、水混和度以外の方法、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)、LC(液体クロマトグラフィー)などでも管理することができるが、容易に実施でき、再現性も良好である点から水混和度を採用するのが好ましい。
【0025】
初期縮合化合物の反応は65〜75℃の範囲内で行うのが好ましい。かかる温度範囲であれば、上述の水混和度により、反応の進行状態を経時的かつ即時的に把握し所望の反応終点(目標点)を正確に見極めることができ、また、その時点で反応液の冷却などにより容易に反応を終了することができるからである。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況を確認しながら、適宜決定すればよい。
【0026】
また、上記重合体被覆層の原料として、上述の化合物(A)の代わりに、または、上記化合物(A)に加えて、化合物(B)としてエポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)を用いることもできる。よって、エポキシ化合物が開環・重縮合して形成されたエポキシ樹脂を含む重合体被覆層も本発明に含まれる。エポキシ樹脂を含むことにより、金属との密着性は勿論のこと、一層柔軟性に富み機械的強度の高い被覆微粒子が得られる。
【0027】
上記エポキシ樹脂の原料となるエポキシ化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有し、かつ水溶性を示すエポキシ化合物が好ましく、例えば、ソルビトールポリグリシジルエステル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエステル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエステル、グリシジルトリス(2‐ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエステル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエステルおよびアジピン酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記エポキシ化合物は、水に対する溶解率が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは100質量%である。溶解率が上記範囲内である場合には、エポキシ樹脂層(重合体被覆層)の形成が均一かつ速やかに進行し、また、該エポキシ樹脂層の厚みの制御が容易となるなどの優れた効果が得られる。なお、本発明で規定するエポキシ化合物の水に対する溶解率とは、以下の測定方法により求められる値を意味する。300mLのビーカーに、試料化合物(エポキシ化合物)25.0gを精秤し、ここに水225gを添加し、マグネチックスターラーで1時間強く攪拌して試料化合物を溶解させた後1時間静置する。ついで、ビーカー底部に沈降した未溶解の試料化合物(油状物)を抜き取り、10mL(もしくは、5mL)のメスシリンダーに入れ、さらに30分間載置した後、試料化合物(油状物)の液量(mL)を少数点以下第1位まで読み取る。得られた値を下記式に代入して、試料化合物(エポキシ化合物)の水に対する溶解率(%)を算出する。
水に対する溶解率 (%) =100−(A/21)×100
(ただし、上記式中Aは、読み取った試料化合物の液量(mL)を表す。)
【0029】
上記エポキシ化合物は、その重量平均分子量が300以上、10,000以下であるのが好ましく、より好ましくは300以上5,000以下である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂層(重合体被覆層)の厚みの制御が容易となるなどの優れた効果が得られる。一方、重量平均分子量が上記範囲に満たない場合は、エポキシ樹脂層の形成による柔軟性向上の効果が得られ難く、また、均一なエポキシ樹脂層の形成が困難となる場合があり、重量平均分子量が上述の範囲を超えると、重合体被覆層形成時の反応液の粘度が急激に上昇し、攪拌が困難となるおそれがあり、このとき強制攪拌すると、被覆微粒子が損傷を受けたり、破壊されるおそれがある。
【0030】
上記エポキシ樹脂層を形成する場合には、エポキシ化合物以外に架橋剤を添加してもよい。架橋剤を使用することで、形成されるエポキシ樹脂層の強度、ひいては、被覆微粒子の強度を一層高めることができ、被覆微粒子の単離や洗浄工程における損傷や破壊を効果的に抑制できる。上記架橋剤の添加のタイミングは特に限定されず、エポキシ化合物と共に添加してもよいし、エポキシ化合物の添加前や添加後に添加してもよいが、好ましくはエポキシ化合物の添加後に添加することである。
【0031】
上記架橋剤は、特に限定されないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(水和物を含む)、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム(水和物を含む)、ジチオ蓚酸およびジチオ炭酸などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、上記架橋剤の使用量は、限定されないが、例えば、エポキシ化合物100質量部に対して1〜100質量部とするのが好ましく、より好ましくは5〜80質量部である。上記架橋剤の使用量が上記範囲に満たない場合には、エポキシ樹脂層の厚みの制御などが困難となるおそれがあり、上記範囲を超えると、エポキシ化合物におけるエポキシ基との反応が過剰となり、柔軟性や金属との密着性に富むエポキシ樹脂層を形成できないおそれがある。
【0032】
上記重合体被覆層を形成する際に、反応系内に共存させる界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物や、後述するコア微粒子の説明で例示する乳化剤、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤が挙げられる。
‐(CH‐CH‐O‐)‐X‐R (1)
【0033】
上記界面活性剤は、反応系内において、コア微粒子の分散状態を保つと共に(分散剤)、コア微粒子の表面に重合体被覆層を均一に形成させるために用いるものであり、また、上記式(1)で表される界面活性剤は、重合体被覆層の構成成分にもなる。すなわち、本発明にかかる重合体被覆層は、コア微粒子と界面活性剤、および、界面活性剤と上記化合物(A)および/または化合物(B)との間に働く疎水性相互作用などの分子間力を利用して形成されるものである。上述のような界面活性剤の非存在下で重合体被覆層の形成を行った場合には、コア微粒子表面のみならずいたるところで上記化合物(A)および/または化合物(B)の開環反応や重縮合反応が進行し、本発明にかかる被覆微粒子以外に、コア微粒子を含まない化合物(A)および化合物(B)に由来する重合体成分が生成してしまう。このような不具合を防ぐためには、界面活性剤を用いるのが好ましい。なお、コア微粒子の表面に均一な重合体被覆層を形成する観点からは、上記例示の界面活性剤の中でも、上記式(1)で表される界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0034】
上記式(1)中、Rは、脂肪族または芳香族を含む疎水性の基を表しており、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、ステアリル基、ベヘニル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。当該疎水性基の炭素数は、5以上25以下であるのが好ましい(より好ましくは18以下である)。炭素数が少なすぎる場合には、エチレンオキサイド鎖に由来する親水性により、コア微粒子の分散が不十分となる傾向があり、一方、炭素数が多すぎる場合には、疎水性が高くなりすぎて、該界面活性剤が水(反応溶媒)に溶解し難くなるからである。
【0035】
上記式(1)中、[‐(CH‐CH‐O‐)]はポリエーテル構造(ポリエチレンオキシド構造)を有するポリマー鎖であり、上記ポリエーテル構造の数nは、3以上であるのが好ましく、より好ましくは5以上であり、85以下であるのが好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下である。ポリエーテル構造が少なすぎると(上述の疎水性基Rとのバランスにもよるが)、上記化合物が水系媒体に対して溶解し難くなるおそれがあり、一方、多すぎる場合には、水系媒体に対する溶解性が高くなりすぎて、重合体被覆層中に取り込まれ難くなる傾向がある。尚、nが上記範囲内であれば、重合体被覆層の形成時に、界面活性剤の一部が上記化合物(A)および化合物(B)と反応して、当該重合体被覆層に取り込まれるため、被覆微粒子に適度な柔軟性を付与することができ、ひいては被覆微粒子の機械的強度の向上にも寄与することになる。
【0036】
上記一般式(1)中、Xは、アミノ基、イミノ基、およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応(結合反応)し得る基に由来し、該反応(結合反応)後に形成される基を表す。尚、式(1)中、mは1または0を表す。ここで、上記アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基とは、後述するRのポリアミン構造を有するポリマー中に存在し得るアミノ基およびイミノ基、あるいは、ポリカルボン酸構造を有するポリマー中に存在し得るカルボキシル基のことを意味する。
【0037】
上記Xで表される基は、例えば、R由来の官能基と、下記一般式(3)中のXで表される基との反応により生成する基であり、具体的には、下記構造式(b)で表される基に由来する「−CH−CH−S−」、イソシアネート基に由来する「−CO−」、オキサゾリン基に由来する「−CO−NH−CH−CH−」、アルデヒド基に由来する「−CH(OH)−」、カルボキシル基に由来する「−CO−」、アミノ基に由来する「−NH−」、あるいは、イミノ基に由来する「=N−」が例示できる。
【0038】
式(1)中、Rは、重量平均分子量が300〜100,000(より好ましくは300〜50,000)のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー基を表す。重量平均分子量が小さすぎると、不溶物として析出されにくく、重合体被覆層の形成に長時間を要するおそれがある他、重合体被覆層の強度が不十分となる場合があり、重量平均分子量が大きすぎると、反応系全体の粘度が急激に上昇し、攪拌が困難となるおそれがある。
【0039】
上記ポリアミン構造を有するポリマー基としては、限定はされないが、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を含むポリアミンの構造を有するポリマー基、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリビニルアミン、変性ポリビニルアミン、ポリアルキルアミン、ポリアミド、ポリアミンエピクロルヒドリン、ポリジアルキルアミノアルキルビニルエーテル、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミングラフトポリアミドアミンおよびプロトン化ポリアミドアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリマー基などが挙げられる。
【0040】
上記ポリカルボン酸構造を有するポリマー基としては、限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、α‐ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、および酢酸ビニルなどの不飽和カルボン酸を30モル%以上含むモノマー成分の重合により得られる水溶性ポリカルボン酸の構造を有するポリマー基が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)で表される界面活性剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、ポリアミンまたはポリカルボン酸の水溶液に、攪拌下で、下記一般式(2)や下記一般式(3)で表される化合物を滴下し、反応させる方法などを採用するのが好ましい。
−(CH−CH−O−)n−1−X (2)
ただし、Xは、下記構造式(a)で表される基を表す:
【0042】
【化1】

−(CH−CH−O−)−X (3)
ただし、Xは、下記構造式(b)で表される基:
【0043】
【化2】

イソシアネート基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基及びイミノ基などよりなる群から選ばれるいずれか1種を表す。すなわち、Xは、アミノ基、イミノ基、およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と反応(結合反応)し得る基を表す。)
【0044】
上記一般式(2)で表される化合物を、上記式(1)で表される界面活性剤の調製に使用した場合は、上記一般式(1)においてXで表される基が存在しないことになる(すなわちm=0)。一方、上記一般式(3)で表される化合物を、上記式(1)で表される界面活性剤の調製に使用した場合は、上記一般式(1)においてXで表される基が存在することになる(すなわちm=1)。
【0045】
上述の界面活性剤調製時の反応温度は特に限定されないが、ポリアミンを使用する場合には10〜90℃とするのが好ましく、より好ましくは15〜80℃であり、ポリカルボン酸を使用する場合には20〜100℃とするのが好ましく、より好ましくは20〜90℃である。反応時間は限定されないが、0.5〜5時間とするのが好ましく、より好ましくは1〜5時間である。
【0046】
本発明においては、上記式(1)で表される界面活性剤と共に、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の化合物を用いてもよい。なお、重合体被覆層の形成反応を水系媒体中で行う都合上、上記その他の化合物も水溶性であることが望ましい。本発明で使用し得るその他の化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール類、上記式(1)以外の各種界面活性剤類、ゼラチンやアラビアゴムなどの天然高分子分散剤、スチレン・マレイン酸共重合体およびその塩などの合成高分子分散剤などが挙げられる。
【0047】
次に、本発明にかかるコア微粒子について説明する。本発明にかかる被覆微粒子の基材となるコア微粒子は、被覆微粒子の柔軟性、弾力性および機械的特性に大きく影響するものである。コア微粒子の材質は特に限定されず、有機材料、有機無機複合材料、あるいは無機材料のいずれも採用することができる。有機材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド等の線状重合体;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独又は他の重合性モノマーと重合させて得られる網状重合体;アミノ化合物(例えば、ベンゾグアナミン、メラミンあるいは尿素など)とホルムアルデヒドの重縮合反応により得られるアミノ樹脂、ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子などが挙げられる。有機無機複合材料としては、加水分解性シリル基を有するシリコン化合物を原料とするポリシロキサンと重合性基(例えばビニル基、(メタ)アクリロイル基など)を有する重合性単量体などと反応させて得られる有機質無機質複合粒子が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ等が挙げられる。尚、コア微粒子の特性の設計が比較的自由に行えると言う点からは、有機材料または有機無機複合材料からなるものが好ましい。
【0048】
上記有機無機複合微粒子としては、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とが3次元的なネットワーク構造を形成した重合体微粒子が特に好ましい。かかる重合体微粒子の製造法の一例を下記に示す。
【0049】
上記有機無機複合微粒子とは、無機質部分としてのポリシロキサン骨格と、有機質部分としての有機ポリマー骨格とを含んでなる重合体微粒子であり、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子が、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子と直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している(化学結合タイプ)。
【0050】
上記ポリシロキサンは、有機ポリマー骨格と結合し得る不飽和基を有しているのが好ましく、例えば、ビニル基を有するものであるのが好ましい。このビニル基を有するポリシロキサンとは、ビニル基を有するシリコン化合物を含む化合物原料を加水分解・縮合してなるポリシロキサン骨格構造を有するものであって、例えば、加水分解性のシリコン化合物を、水を含む溶媒中で加水分解・縮合させて得られるものである。尚、ビニル基の導入のタイミングは特に限定されず、例えば、加水分解性シリコン化合物としてビニル基を有するものを用いる態様、ビニル基を有さない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合させて種粒子(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作製した後、この種粒子(ビニル基を有さないポリシロキサン)と、ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて、ポリシロキサンにビニル基を導入する態様のいずれも採用できる。後者の場合は、種粒子とビニル基を有する加水分解性シリコン化合物との加水分解・縮合の際に同時に重合性成分とのラジカル重合反応を行わせてもよい。
【0051】
上記加水分解性シリコン化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(4)で表されるシラン化合物およびその誘導体を用いることができる。
SiX4−l (4)
(ここで、Rは置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基および不飽和脂肪族基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、lは0から3までの整数を示す。)
【0052】
上記一般式(4)で表されるシラン化合物としては、例えば以下のものが例示できる。l=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの4官能性シラン;l=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3‐(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3‐トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;l=2のものとしては、ジメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシランジオールなどの2官能性シラン;l=3のものとしては、トリメチル、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノールなどの1官能性シランなどが挙げられる。
【0053】
上記シラン化合物は、1種のみを用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。尚、上記一般式(4)において、l=3であるシラン化合物およびその誘導体のみを原料として使用する場合には、複合体粒子は得られない。
【0054】
上記ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物としては、例えば、例えば下記一般式(5),(6)及び(7)で表される重合性反応基を有するものが挙げられる。
CH=C(−R)−COOR− (5)
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH=C(−R)− (6)
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
CH=C(−R)−R− (7)
(ここで、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0055】
上記一般式(5)で表される重合性反応基としては、例えば、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(4)のシリコン化合物としては、例えば、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ‐メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ‐トリメトキシシリルプロピル‐β‐メタクリロキシエチルエーテルともいう)、11‐メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ‐アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0056】
上記一般式(6)で表される重合性反応基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基などが上げられ、該有機基を有する上記一般式(4)のシリコン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、4‐ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8‐ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3‐トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシランなどを挙げることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記一般式(7)で表される重合性反応基としては、例えば、1‐アルケニル基、もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(4)のシリコン化合物としては、例えば、1‐ヘキセニルトリメトキシシラン、1‐ヘキセニルトリエトキシシラン、1‐オクテニルトリメトキシシラン、1‐デセニルトリメトキシシラン、γ‐トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω‐トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p‐トリメトキシシリルスチレン、p‐トリエトキシシリルスチレン、p‐トリメトキシシリル‐α‐メチルスチレン、p‐トリエトキシシリル‐α‐メチルスチレン、N‐β‐(N‐ビニルベンジルアミノエチル‐γ‐アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩、1‐ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1‐ヘキセニルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。これらは1種のみを単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0058】
上述のポリシロキサンは、上記加水分解性シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で加水分解させ縮合させて得られるものである。加水分解および縮合については、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。また、加水分解および縮合をさせるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤が存在していてもよい。
【0059】
上記有機溶剤としては、特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などが好ましく挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
加水分解および縮合反応は、上記シリコン化合物群および有機溶剤等を、水を含む溶媒に添加し、0〜100℃、好ましくは0〜70℃の温度範囲で、30分〜100時間攪拌することによって行えばよい。また、この際、反応混合液の総量に対する水濃度は10〜99.99質量%、触媒濃度は0.01〜10質量%、有機溶剤濃度は0〜90質量%、上記シリコン化合物群の濃度は0.1〜30質量%とするのが好ましい。さらに、上記シリコン化合物群の添加時間は0.001〜500時間、反応温度は0〜100℃とするのが好ましい。なお、予め加水分解・縮合反応させて得られた粒子を種粒子として用いる場合には、種粒子の濃度は、反応混合液の総量に対して0.1〜30質量%に設定することが好ましい。
【0061】
また、加水分解および縮合反応により得られた粒子を、種粒子として予め合成系に仕込んでおき、そこに上述のシリコン化合物群を添加して上記種粒子を成長させることにより、ポリシロキサン粒子を得ることもできる。このようにして、上記シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で、適切な条件下で、加水分解および縮合させることにより、粒子が析出しスラリーが生成する。析出した粒子は、上述のビニル基を有するシリコン化合物を必須成分として用いて得られたものであるため、ビニル基を有するポリシロキサン粒子となる。ここで、適切な条件とは、特に限定はされないが、例えば、予め加水分解および縮合反応により得られた種粒子(好ましくは、濃度0.1〜20質量%)を含むスラリーは、上述の加水分解性シリコン化合物の濃度が、反応混合液の総量に対して20質量%以下、水濃度が50質量%以上、触媒濃度が10質量%以下となるような条件が好ましい。
【0062】
上記ポリシロキサン粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0063】
上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜700μmであるのが好ましく、より好ましくは0.5〜70μm、最も好ましくは1〜50μmである。上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径が上記範囲内である場合は、後述する重合性成分の吸収が効率よく進行するといった有利な効果を発揮することができる。一方、上記ポリシロキサン粒子の平均粒子径が小さすぎると、後述する重合性成分の吸収が十分に行えない場合があり、大きすぎる場合には、粒子の質量が大きくなって反応器中で重合体微粒子の沈降が起こり、粒子同士が凝集しやすくなる。
【0064】
上述のようにして得られるポリシロキサン粒子は、該粒子を構成するポリシロキサン骨格中に、後述する重合性成分を容易に吸収し、かつ、保持しておくことのできる粒子である。これは、上記ポリシロキサン粒子が後述の重合性成分を吸収するのに好適な縮合度となっているからであるともいえる。
【0065】
次に、上記ポリシロキサン粒子と重合させる重合性成分について説明する。上記重合性成分としては特に限定されないが、上記ポリシロキサン粒子との相溶性を考慮すれば、ラジカル重合性ビニルモノマーや、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能オリゴマーを使用するのが好ましい。
【0066】
ラジカル重合性ビニルモノマーとしては、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であるのが好ましく、重合体微粒子が所望の物性を発揮できるよう適宜選択すればよい。具体的には、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、α‐クロロスチレン、o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、p‐エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0067】
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能オリゴマーとしては、25℃の水に対する溶解度が、水と2官能オリゴマーの総量に対して10質量%以下であり、かつ、重量平均分子量300以上であるものが好ましい。かかる成分は、上記ポリシロキサン粒子内に吸収されやすく、重合体微粒子の特性(例えば柔軟性や弾力性など)の向上に大きく寄与する。
【0068】
上記2官能オリゴマーは、上記特性を満足するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;1,3‐ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2‐ビス[4‐(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどの2,2‐ビス[4‐(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート;2,2‐水添ビス[4‐(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどのビスフェノールAのEO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0069】
上記構造を有する2官能オリゴマーとしては、例えば、新中村化学(株)製のNKエステルシリーズ「9PG」,「APG‐200」,「APG‐400」,「APG‐700」,「BPE‐100」,「BPE‐200」,「BPE‐500」など、日本化薬(株)製の「KAYARAD HX‐220」,「KAYARAD HX‐620」など、共栄社化学(株)製の「ライトアクリレート PTMGA‐250」などが挙げられる。これらに加えて、日本化薬(株)製の「KAYARAD MANDA」,「KAYARAD R‐167」なども好ましく用いられる。
【0070】
これらの重合性成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。ポリシロキサン粒子に上記重合性成分を吸収させる際に、あらかじめ上記重合性成分を乳化分散させエマルションを生成させておくにあたり、安定なエマルションとするためには、疎水性のラジカル重合性ビニルモノマーを用いることが好ましい。
【0071】
また、上記重合性成分に加えて架橋性モノマーを用いてもよく、この場合、得られる重合体微粒子の機械的特性の調整が容易となる。上記架橋性モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、ジビニルベンゼン、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジアリルフタレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記重合性成分中には、前記した加水分解性シリコン化合物が含まれていてもよい。加水分解性シリコン化合物としては、ビニル基を有しているもの、有さないもののいずれも使用可能であるが、ビニル基を有していないポリシロキサン粒子を種粒子とする場合には、重合性成分にはビニル基を有する加水分解性シリコン化合物を加える必要がある。
【0073】
上記重合性成分の配合割合は特に限定されず、所望の特性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記2官能オリゴマーの配合量は、前記重合性成分100質量%中(すなわち、上記2官能オリゴマーと上述のラジカル重合性ビニルモノマーとの合計量)、20質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。2官能オリゴマー量が上記範囲に含まれる場合には、得られる重合体微粒子の圧縮変形回復率の調整が容易である。尚、重合性成分が全て上記2官能オリゴマーであってもよい。
【0074】
また、得られる重合体微粒子中における2官能オリゴマー由来の成分は、10質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、99質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。
【0075】
上記ポリシロキサン粒子の製法としては、〔A〕上記ビニル基を有する加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して、種粒子(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法、〔B〕ビニル基を有しない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して種粒子(1)(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作製し、ついで、この種粒子(1)とビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて種粒子(2)(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法、また、〔C〕ビニル基を有しない加水分解性シリコン化合物を加水分解・縮合して種粒子(1)(ビニル基を有さないポリシロキサン)を作成し、この種粒子(1)にビニル基を有する加水分解性シリコン化合物と後述の重合性成分とを吸収させ、このとき上記種粒子(1)中のポリシロキサンとビニル基を有する加水分解性シリコン化合物とを加水分解・縮合させて、種粒子(2)(ビニル基を有するポリシロキサン)を製造する方法のいずれも採用することができる。
【0076】
上記重合体微粒子は、ビニル基を有するポリシロキサン粒子に、上述の重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程、あるいは、ビニル基を有さないポリシロキサン粒子に、上記重合性成分と、ビニル基および加水分解性シリル基を有する重合性モノマーとを必須とする重合性成分を水に乳化分散させた状態で前記ポリシロキサン粒子に加えて吸収させる吸収工程と、前記吸収工程でポリシロキサン粒子内に吸収させた前記重合性成分をラジカル重合させる重合工程を経て得られる。
【0077】
上記吸収工程は、上記ポリシロキサン粒子の存在下に上記重合性成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。なお、吸収工程においては、上記ポリシロキサン粒子の構造中に上記重合性成分を吸収させるが、この吸収工程が速やかに進行するように、上記ポリシロキサン粒子および重合性成分のそれぞれの濃度や、上記ポリシロキサン粒子と重合性成分との混合比、混合の処理方法・手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法・手段などを設定し、その条件の下で行うのが好ましい。
【0078】
上記吸収工程における、上記重合性成分の添加量は、ポリシロキサン粒子の原料として使用したシリコン化合物の質量に対して、質量で0.01倍〜100倍とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜30倍であり、さらに好ましくは1〜15倍である。添加量が上記範囲に満たない場合は、ポリシロキサン粒子の重合性成分の吸収量が少なくなり、上述の機械的特性を有する重合体微粒子が得られ難くなる場合があり、上記範囲を超える場合は、添加した重合性成分をポリシロキサン粒子内に完全に吸収させることが困難となる傾向があり、未吸収の重合性成分が残存するため後の重合段階において粒子間の凝集が発生しやすくなる場合がある。
【0079】
重合性成分とポリシロキサン粒子の混合は、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に上記重合性成分を加えてもよいし、上記重合性成分を含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、重合性成分を加えることが好ましく、さらにはポリシロキサン粒子を合成して得られたポリシロキサン粒子分散液からポリシロキサン粒子を取り出すことなく該分散液に重合性成分を加えれば、工程が複雑とならず、生産性に優れるため好ましい。
【0080】
上記吸収工程において、重合性成分の添加のタイミングは特に限定されず、該重合性成分を一括で加えておいてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、重合性成分を加えるにあたっては、重合性成分のみで添加しても、重合性成分の溶液を添加してもよいが、重合性成分を予め乳化剤で乳化分散させた状態でポリシロキサン粒子に加えておくことが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0081】
上記乳化剤は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤は、ポリシロキサン粒子や、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子、重合体微粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記アニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を挙げることができる。
【0083】
上記カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩酸塩などが挙げられ、具体的には、トリメチルアルキルアンモニウム塩酸塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩酸塩、モノアルキルアミン酢酸塩、アルキルメチルジポリオキシエチレンアンモニウム塩酸塩などが例示できる。これらのカチオン性界面活性剤に含まれるアルキル基としては、炭素数4〜26の飽和脂肪族炭化水素基または不飽和脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、例えば、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベヘニル基、オレイル基、ステアリル基などが挙げられる。
【0084】
上記非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を挙げることができる。
【0085】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤などが挙げられ、例えば、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2‐アルキル‐N‐カルボキシエチル‐N‐ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N‐テトラデシル‐N,N‐ベタイン型の両性界面活性剤(例えば、第一工業製薬(株)製の「アモーゲンK」など)が挙げられる。
【0086】
上記高分子界面活性剤としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドンおよびこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類の相関移動触媒等が挙げられる。
【0087】
上記重合性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロペニル‐2‐エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性の重合性界面活性剤等が挙げられる。
【0088】
上記乳化剤の使用量は特に限定されるものではなく、具体的には、上記重合性成分の総質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。上記乳化剤の使用量が、0.01質量%未満の場合は、安定な重合性成分の乳化分散物が得られないことがあり、10質量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。上記乳化分散については通常、上記重合性成分を乳化剤とともにホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
【0089】
また、重合性成分を乳化剤で乳化分散させる際には、重合性成分の質量に対して0.3〜10倍の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類などが挙げられる。
【0090】
上記吸収工程は、0〜60℃の温度範囲で、5分〜720分間、攪拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性成分の種類などによって、適宜設定すればよく、これら条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
【0091】
上記吸収工程において、重合性成分が吸収されたかどうかの判断については、重合性成分を加える前および吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、重合性成分の吸収により粒子径が大きくなっていること等で容易に判断することができる。
【0092】
吸収工程終了後には、重合性成分を吸収したポリシロキサン粒子の分散液中の粒子濃度が、分散液全量に対して40質量%以下となるように、水を添加して希釈するのが好ましい。より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、続く重合工程において、重合反応に伴う発熱により温度のコントロールが困難となるおそれがあるからである。また、この際、粒子に分散安定性を向上させるために、上述の界面活性剤を追添加してもよい。
【0093】
重合工程において、ラジカル重合する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いた方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法などが挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、t‐ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’‐アゾビス(4‐シアノペンタン酸)、2,2’‐アゾビス‐(2‐メチルブチロニトリル)、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0094】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記重合性成分の総質量に対して、0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜10質量%、さらにより好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%未満の場合は、重合性成分の重合度が上がらない場合がある。上記ラジカル重合開始剤の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込む方法(ラジカル重合開始剤を重合性成分と共に乳化分散させておく態様、重合性成分が吸収された後にラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する方法、または、断続的にパルス添加する方法、あるいは、これらを組み合わせた手法など、従来公知の手法はいずれも採用することができる。
【0095】
上記ラジカル重合する際の反応温度は40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃がより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず重合体微粒子の機械的特性が得られ難くなる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。尚、上記ラジカル重合する際の反応時間は用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5〜600分であることが好ましく、10〜300分がより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0096】
次に、本発明にかかる被覆微粒子の製造方法について説明する。本発明にかかる製造方法とは、有機材料、または、有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に重合体被覆層を有する被覆微粒子の製造方法であって、上記コア粒子を分散させた水系媒体中、界面活性剤の存在下で、上記重合体被覆層を開環および/または重縮合反応により形成するところに特徴を有するものである。
【0097】
かかる製造方法を採用することによって、コア微粒子の周囲に均一な重合体被覆層を形成させることができる。また、界面活性剤として、上記式(1)で表される化合物を使用した場合には、上記化合物(A)および/または化合物(B)に由来する不溶性の反応生成物中に界面活性剤が含まれてなる重合体被覆層を、コア微粒子の表面に形成することができる。すなわち、本発明の製造方法とは、コア微粒子と界面活性剤、さらには、界面活性剤と上記化合物(A)および/または化合物(B)との間に働く疎水性相互作用などの分子間力を利用して、コア微粒子を被覆する重合体被覆層の形成を行うものである。すなわち、水系媒体中に添加された界面活性剤は、コア微粒子表面に凝集し、これにより、コア微粒子同士の凝集が抑制され、水系媒体中にコア微粒子が分散した状態となる。次いで、ここに、上記化合物(A)(初期縮合化合物)および/または化合物(B)(エポキシ化合物)が添加され、これらが、界面活性剤周囲、すなわち、コア微粒子を取り囲んだ状態で開環および/または重縮合反応が進行する。その結果、コア微粒子の表面に均一な重合体被覆層が形成されるのである。
【0098】
なお、上記開環および/または重縮合反応によって化合物(A)あるいはエポキシ化合物と界面活性剤との間には化学的な結合が形成され重合体被覆層が生成するが(上記式(1)で表される界面活性剤を使用する場合)、コア微粒子と重合体被覆層の間には、疎水性相互作用や水素結合などの分子間力が働くのみで、上記反応の進行によっても、コア微粒子と重合体被覆層との間に化学的な結合は形成されない。
【0099】
本発明にかかる重合体被覆層の形成は水系媒体中で行うものであり、前記水系媒体とは、水のみを反応溶媒とする場合に加えて、水と有機溶媒との混合溶媒も含まれる。有機溶媒としては、親水性のものが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、上述の初期縮合化合物が水に溶解し難い場合には、上述の混合溶媒を用いるのが好ましい。この場合、水に対する有機溶媒の配合量は50質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは40質量%以下である。
【0100】
さらに、上記親水性の有機溶媒以外の有機溶媒(他の有機溶媒)を用いてもよく、具体的には、ジオキサン、ヘキサン、シクロペンタン、ペンタン、イソペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、石油エーテル、テルペン、ひまし油、大豆油、パラフィン、ケロシンなどが例示できる。これら他の有機溶媒を用いる場合、その使用量は、上記水‐親水性の有機溶媒からなる混合溶媒中30質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0101】
水系媒体中におけるコア微粒子の濃度は、1質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、60質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは50質量%以下である。コア微粒子量が多すぎると、被覆工程でコア微粒子の凝集が生じるおそれがあり、少なすぎると、媒体中にコア微粒子を含まない化合物(A)および化合物(B)に由来する重合体成分が析出するおそれがある。
【0102】
上記界面活性剤の添加量は、コア微粒子に対して1質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。界面活性剤の配合量が少なすぎると、コア微粒子の分散状態を十分に安定に保持することができず、コア微粒子同士が凝集してしまうおそれがある。一方、配合量が多すぎる場合には、反応系全体の粘度が急激に上昇し、攪拌が困難となるおそれがある。また、得られる被覆微粒子の物性面からは、界面活性剤の配合量が上記範囲内であれば、重合体被覆層に適度な柔軟性を付与することができ、ひいては、重合体被覆層の機械的強度を向上させることができる。
【0103】
本発明の製造方法において、水系媒体中にコア微粒子を分散させる方法に限定はなく、従来公知の分散方法を採用することができる。例えば、水系媒体、コア微粒子および界面活性剤を含む混合物を、超音波分散機、ディスパー、ホモミキサー(特殊機械工業(株)製)、およびホモジナイザー(日本精機(株)製)などで機械的に強く攪拌して分散させる方法などが好ましく挙げられる。
【0104】
なお、上記界面活性剤は、水系媒体中にコア微粒子を分散させる前から該水系媒体中に溶解させておいてもよいし、分散と同時、または分散させた後に溶解させてもよく、その添加のタイミングは特に限定されない。
【0105】
ついで、コア微粒子を分散させた水系媒体へ初期縮合化合物を添加する。上記初期縮合化合物の添加量は限定されないが、前記界面活性剤1質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。初期縮合化合物の添加量を調整することで、重合体被覆層の厚みを容易にコントロールできる。上記初期縮合化合物の添加量が少なすぎると、十分な厚みを有する重合体被覆層が形成され難く、添加量が多すぎると、重合体被覆層の成分組成に大きな偏りが生じ、重合体被覆層の強度が低下したり、金属との密着性に劣る場合がある。
【0106】
上記初期縮合化合物の水系媒体への添加方法は限定されず、一括添加であってもよいし逐次添加(連続的添加および/または間欠的添加)であってもよい。
【0107】
本発明の製造方法において、重合体被覆層を形成時の温度(コア微粒子を分散させ水溶性化合物を添加した水系媒体の温度)は、25〜85℃であるのが好ましく、より好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは35〜60℃である。
【0108】
また、重合体被覆層形成時の反応液のpHは2〜13であるのが好ましく、より好ましくは3〜12であり、さらに好ましくは4〜11である。反応液のpHが上記範囲内であれば、コア微粒子の凝集が生じ難く、また反応速度の制御も容易となる。反応時間は、10〜480分であるのが好ましく、より好ましくは30〜360分、さらに好ましくは60〜300分である。
【0109】
上記重合体被覆層の形成後に熟成期間を設けてもよい。熟成時の温度は特に限定されないが、例えば200℃以下とするのが好ましい。熟成時間にも限定はなく、好ましくは1〜5時間であり、より好ましくは1〜3時間である。熟成時における溶液のpHは、2〜13の範囲であるのが好ましい。また、熟成は加圧下で行ってもよい。この場合、圧力は特に限定されないが、例えば常圧〜20気圧の範囲とするのが好ましい。
【0110】
尚、重合体被覆層にエポキシ樹脂が含まれる場合、エポキシ化合物の添加量は特に限定されないが、コア微粒子1質量部に対して、0.5質量部以上、10質量部以下とするのが好ましい。エポキシ化合物の添加量を調整することで、形成されるエポキシ樹脂層(重合体被覆層)の厚みのコントロールが容易となる。なお、添加量が少なすぎると、エポキシ樹脂層の形成による金属との密着性向上の効果が得られ難い場合がある。添加量は10質量部を超えても特に差し支えは無いが、添加量に見合う金属との密着性の向上は認められず、経済性に劣る。したがって、より好ましい上限は5質量部であり、さらに好ましくは3質量部である。
【0111】
上記エポキシ樹脂層を形成する際の温度は、化合物(A)を採用する場合の上記重合体被覆層形成温度と同様であることが好ましい。
【0112】
本発明の製造方法においては、上述の重合体被覆層形成および必要に応じて行う熟成により水系媒体中に被覆微粒子が分散した調整液が得られる。
【0113】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、上記調整液に、さらに界面活性剤および上記化合物(A)および/または化合物(B)を添加し、開環および/または重縮合反応を行ってもよい。これにより、先に形成された重合体被覆層の表面に同様の重合体被覆層が形成され、結果として、層状の重合体被覆層を有する被覆微粒子が得られる。重合体被覆層が複数設けられた被覆重合体は、例えば、単層の重合体被覆層で得られていた物性をさらに向上させることができる他、重合体被覆層の内側の層と外側の層とで、構成成分の組成を変化させれば、異なる物性を発現させることもできる。具体的には、重合体被覆層本来の性能を有しつつ、さらに機械的特性や親水性などの物性を容易に導入できるといった効果が得られる。
【0114】
重合体被覆層の形成後、必要に応じて被覆微粒子を単離してもよい。例えば、被覆微粒子の調整後、吸引濾過や、自然濾過によって該被覆微粒子を水系媒体などと分離すればよい。
【0115】
また、粒度分布のシャープな被覆微粒子を得るために、単離後の被覆微粒子を分級してもよい。分級は、例えば、湿式による分級方式(湿式分級)を採用することが好ましい。湿式分級とは、被覆微粒子が分散した調整液に対して、被覆微粒子の分級を行う方式である。上記調整液に対して分級を行うため湿式分級となる。湿式分級とは、上記調整液をそのまま、もしくは任意の水系媒体などで希釈して分級処理し、調整液中の被覆微粒子を所望の粒径や粒度分布を有するものとなるように分級する方式である。湿式分級は、例えば、ふるい式(フィルター式)、遠心沈降式および自然沈降式などの方式を用いた方法や装置により行うことができる。比較的粒子径の大きい被覆微粒子に対しては、ふるい式が有効に使用できる。
【0116】
また、不純物を除去し、製品品質を向上させるため、得られた被覆微粒子を洗浄するのも好ましい。
【0117】
以下、本発明の被覆微粒子の特徴および各種物性について説明する。
【0118】
本発明の被覆微粒子には、コア微粒子の表面全体が重合体被覆層で覆われているものに加えて、被覆微粒子の一部にコア微粒子表面が露出しているものも含まれる。しかしながら、コア微粒子の露出部が多すぎると、金属との密着性が低下して、微粒子の表面に一様な導体層(後述する)を形成するのが困難になる場合がある。かかる不良は、導電性微粒子として使用する場合に導通不良を生じたり、導通の信頼性を低下させる原因となる。したがって、重合体被覆層によるコア微粒子表面の被覆率は40%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは55%以上である。もちろん、最も好ましいのは100%である。
【0119】
本発明の被覆微粒子において言う、上記界面活性剤に由来する構成成分の形態としては、界面活性剤1分子からなるものであってもよいし、2量体や3量体など2分子以上集まったものでもよく、限定はされない。これらのうち、1種のみが重合体被覆層に含まれていてもよいし、2種以上が重合体被覆層に含まれていてもよい。
【0120】
上記界面活性剤に由来する構成成分の含有割合は、限定はされないが、重合体被覆層全体に対し、5質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、80質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは70質量%である。含有割合が少ない場合には、柔軟性が低下し、機械的強度の低い重合体被覆層となる場合があり、含有割合が多すぎると、金属との密着性が低下する場合がある。
【0121】
同様に、本発明の被覆微粒子における重合体被覆層の構成成分である、初期縮合化合物(化合物(A))に由来する構成成分の形態としては、各種アミノ樹脂(尿素系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン系樹脂)が挙げられる、これらの内、1種のみが重合体被覆層に含まれていてもよいし、2種以上が重合体被覆層に含まれていてもよい。
【0122】
化合物(A)および/または化合物(B)に由来する構成成分の含有割合は、重合体被覆層全体に対して20質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、95質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。含有割合が上記範囲に満たない場合には、金属との密着性に劣る場合が有り、上記範囲を超えると、柔軟性に乏しく、機械的強度の低い被覆微粒子となるおそれがある。
【0123】
本発明の被覆微粒子における重合体被覆層には、上記成分以外の他の成分を本発明の効果が損なわれない範囲で含んでいてもよい。他の構成成分としては、例えば、上記界面活性剤と併用し得る、前述したその他の化合物に由来する構成成分が挙げられ、具体的には、ポリビニルアルコール類に由来する構成成分、上記以外の各種界面活性剤類に由来する構成成分、ゼラチンやアラビアゴムなどの天然高分子分散剤に由来する構成成分、スチレン・マレイン酸共重合体およびその塩などの合成高分子分散剤に由来する成分、などが挙げられる。
【0124】
本発明の被覆微粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、偏状、まゆ状、金平糖状などの形状を挙げることができる。
【0125】
上記構成を有する本発明の被覆微粒子は、当該被覆微粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が50N/mm以上であり、圧縮変形回復率が5%以上であるのが好ましい。好ましくは、圧縮弾性率が1000N/mm以上、さらに好ましくは2450N/mm以上であり、圧縮変形回復率は10%以上、さらに好ましくは15%以上である。ここで、上記圧縮弾性率(10%K値)とは、被覆微粒子の柔軟性を、圧縮変形回復率とは、被覆微粒子の弾力性をそれぞれ指標するものである。上限は特に限定されないが、圧縮弾性率は20000N/mm以下であるのが好ましく、より好ましくは15000N/mm以下、さらに好ましくは10000N/mm以下である。圧縮弾性率が小さすぎる場合には、被覆微粒子が柔軟すぎて、各種基板間の隙間保持材として用いた場合、隙間距離を均一に保持し難くなるおそれがあり、一方、大きすぎる場合は、被覆微粒子が硬すぎて、隙間保持材として用いた場合に、基板表面に損傷を与えるおそれがある。
【0126】
上記圧縮変形回復率とは、被覆微粒子の弾力性を指標するものであり、被覆微粒子に一定の荷重を負荷し、これを取り除いた場合の、荷重負荷前後における被覆微粒子の粒子径の変位量により求められる。本発明の被覆微粒子の圧縮変形回復率は、5%以上であるのが好ましく、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは15%以上である。圧縮変形回復率の上限は特に限定されず、勿論100%、すなわち、荷重負荷前後において被覆微粒子の粒子径が変化しないことが好ましいのは言うまでもない。
【0127】
また、本発明の被覆微粒子は、1g荷重時の変位量が該被覆微粒子の直径に対して5%以上であるのが好ましい。上記1g荷重時の変位量とは、本発明の被覆微粒子の変形のし易さ、特に低荷重負荷時における変形し易さを指標するものである。上記1g荷重時の変位量は5%以上であるのが好ましく、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、85%以下であるのが好ましく、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは75%以下である。圧縮変形回復率と同様に、1g荷重時の変位量が上記範囲に含まれない場合は、各種基板間の隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離を均一に保持し難くなる傾向がある。
【0128】
本発明の被覆微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1.0μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2.0μm以上であり、100μm以下であるのが好ましく、より好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。被覆微粒子の粒子径が小さすぎる場合には、コア微粒子を内包しない初期縮合物などのみからなる重合体微粒子であるおそれがあり、粒子径が大きすぎる場合には、通常被覆微粒子として要求される物性を保持することができなくなる場合がある。
【0129】
本発明の被覆微粒子の粒度分布のシャープさは特に限定されないが、例えば粒子径の変動係数(Cv値)が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらにより好ましくは4%以下である。変動係数(Cv値)が上記範囲内である場合は、各種基板間の隙間を均一にする隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離を均一に保つといった有利な効果を発揮することができる。一方、変動係数(Cv値)が上記範囲を超えるときには、隙間保持材としての用途に用いた場合、隙間距離の均一性を十分に保つことができない場合がある。
【0130】
なお、本発明の被覆微粒子の上記特性(弾力性や圧縮弾性率)や粒子径、およびその変動係数(すなわち粒度分布のシャープさ)は、コア微粒子の特性(粒子径や粒度分布)に大きく依存する。よって、該コア微粒子製造時の条件を適宜調整することによって、所望の特性を有する被覆微粒子を得ることができる。
【0131】
本発明の重合体被膜の厚みは、限定はされないが、0.001μm以上であるのが好ましく、より好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.008μm以上であり、10μm以下であるのが好ましい。重合体被膜の厚みが薄すぎる場合には、金属との密着性が低下する虞がある他、被覆微粒子の強度も低下する場合が有り、一方、厚すぎると、被覆微粒子に占めるコア微粒子の割合が少なくなるため、柔軟性や弾力性が不十分となる場合がある。
【0132】
次に、本発明にかかる導電性微粒子について説明する。
【0133】
本発明にかかる導電性微粒子とは、上記本発明にかかる被覆微粒子の表面に導体層が形成されてなるものである。上記導体層は、被覆微粒子表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0134】
上記導体層を構成する金属は特に限定されないが、例えば、ニッケル、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、ニッケル、金、インジウムは導電性が高いので好ましい。上記導体層の厚みは、十分な導通があれば特に限定はされないが、0.01μm以上であるのが好ましく、より好ましくは0.02μm以上であり、5.0μm以下であるのが好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。導体層の厚みが薄すぎると導電性が不十分となるおそれがあり、一方、厚すぎる場合には、導体層と重合体被覆層との熱膨張率の差により導体層が剥がれ落ちやすくなるおそれがある。導体層は、1層でも2層以上でもよく、2層以上の場合は異なる種類の金属を積層してもよい。
【0135】
本発明の被覆微粒子表面に導体層を形成する方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、無電解めっき(化学めっき)法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法などが挙げられ、なかでも、無電解めっき法は容易に導体層を形成することができるため好ましい。
【0136】
上記無電解めっき法とは、通常、エッチング工程、活性化工程および無電解めっき工程の各工程からなるものである。ここで、上記エッチング工程とは、被覆樹脂微粒子の表面に凹凸を形成し、無電解めっき層の密着性を向上させる工程であるが、本発明にかかる被覆微粒子は、金属との密着性の良好な重合体被覆層を備えているため、エッチング工程は必須の工程では無く、省略することができる。尚、エッチング工程を行う場合には、エッチング液として、例えば苛性ソーダ水溶液のようなアルカリ水溶液、塩酸、硫酸、無水クロム酸などのような酸の水溶液を用いればよい。尚、続く活性化工程および無電解めっき工程は、従来公知の方法に準じて行えばよい。
【0137】
本発明の導電性粒子は、上記本発明の被覆微粒子を基材粒子とするものであるので、電気的に接続される一対の電極基板間の隙間距離を一定に保持する為に必要な硬度と圧縮変形回復率とを有するとともに、電極に対して物理的ダメージを与えにくい。このため、一対の電極基板間の隙間距離を一定に保持しやすく、加圧による導体層の剥がれ落ち、電気的に接続されるべきではない電極間のショート、電気的に接続されるべき電極間の接触不良、などを防ぐことができる。
【0138】
このようにして得られる本発明の導電性粒子は、上記本発明の被覆微粒子と同様の機械的特性(硬度、破壊強度)を備えている。このため、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として特に有用である。
【実施例】
【0139】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。測定法は以下の通りである。
【0140】
〔重合体被覆層の膜厚測定〕
コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)により、被覆層付与前後の粒子径をそれぞれ測定し、被覆層付与前後の粒子径の差を2で割って被覆層の厚さを算出した。
【0141】
被覆微粒子の粒子径および粒子径の変動係数を表1に併せて示す。
【0142】
【数1】

【0143】
〔重合体被覆層の表面性状の評価〕
走査型電子顕微鏡(SEM,S3500N,日立製作所製)により、重合体被覆層形成前後の粒子の表面状態を観察し、下記基準に従って3段階で評価した。
[評価基準]
1:コア粒子表面の重合体被覆層が非常に薄い、もしくは、重合体被覆層が形成されておらず、単粒子で存在している。
2:コア粒子表面が均一な重合体被覆層で覆われており、単粒子で存在している。
3:コア粒子表面が多量の樹脂に覆われており、かつ、当該樹脂により粒子同士が付着している。
【0144】
〔めっき付着性〕
下記製造例により得られた被覆微粒子10gをに無電解ニッケルめっき処理を施し、処理後の粒子表面のメッキ状態を電子顕微鏡により観察し、下記基準に従って評価した。
[評価基準]
○(良好):粒子表面が一様にニッケル被覆層によって覆われている。
×(劣る):粒子表面にニッケル被覆層が形成されていない。
【0145】
〔平均粒子径と、粒子径の変動係数〕
ポリシロキサン粒子および重合体微粒子の平均粒子径は、コールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)により、30000個の粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を求めた。
【0146】
粒子径の変動係数は、下記式に従って求めた。
【0147】
【数2】

【0148】
〔10%圧縮弾性率(10%K値:硬度)〕
島津微小圧縮試験機(島津製作所社製,「MCTW‐500」)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.275mN/秒)で荷重をかけて、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの荷重と変位量(mm)を測定する。測定した圧縮荷重、粒子の圧縮変位、粒子の半径を、下記式:
【0149】
【数3】

【0150】
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)に代入し、値を算出する。この操作を、異なる3個の粒子について行い、その平均値を重合体微粒子の10%圧縮弾性率とする。
【0151】
〔圧縮変形回復率(回復率)〕
微小圧縮試験機(島津製作所製,「MCTW‐500」)を用いて、試料粒子を反転荷重9.8mNまで圧縮した後、荷重を減らしていくときの荷重値と圧縮変位との関係を測定して得られる値であり、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.098mNとし、負荷および除負荷における圧縮速度を1.486mN/秒として測定したときに、反転の点までの変位(L1)と、反転の点から原点荷重値をとる点までの変位(L2)との比(L1/L2)〔%〕として表した値である。
【0152】
〔1g荷重時の変位量(圧縮率)〕
微小圧縮試験機(島津製作所製,「MCTW‐500」)により、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS平板)上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度で荷重をかけ、0.098mN(1g荷重)負荷時点における粒子の変位量(L3)を、粒子径(D)との比(L3/D)〔%〕として表した値である。
【0153】
合成例(1) 初期縮合化合物の合成 (化合物(a))の合成
50mlのセパラブルフラスコに、尿素:3g、メラミン:7g、37質量%ホルマリン:20g、25質量%アンモニア水:1.5gを仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温させた。同温度で15分間保持した後、常温まで冷却し、メラミンおよび尿素とホルムアルデヒドとの初期縮合化合物である均一溶液の化合物(a)(化合物(a)の均一溶液全量に対する固形分濃度55質量%)を得た。
【0154】
合成例(2) 界面活性剤(化合物(b))の合成
300mlのセパラブルフラスコにポリエチレンイミン(「エポミンSP006」,重量平均分子量=600,(株)日本触媒製):14.5g、および、水:43.5gを初期仕込し、その後、攪拌下で、予め調整しておいたエポキシ化合物(ラウリルポリオキシエチレン(n=22)グリシジルエステル、水に対する溶解率:100%)の25質量%水溶液:97.2gを10分間かけて滴下した。
【0155】
滴下時の液温を25℃以下に保ちながら滴下し、滴下終了後30分間攪拌を続け、その後70℃まで昇温し、同温度で2時間保持した後に常温まで冷却し、分散性能を有する化合物(b)(混合物全量に対する固形分濃度25質量%)を得た。
【0156】
合成例(3) コア微粒子(有機無機複合微粒子)の合成
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、水250部と25%アンモニア水10部とを混合した溶液を入れ、攪拌しながらここにγ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30部とメタノール125部とを混合した溶液を滴下口から添加して、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合を行って、ポリシロキサン粒子(無機質粒子)を調整した。反応開始から1時間後、滴下口より水250部を添加し、ポリシロキサン粒子分散液を希釈した。反応開始から2時間攪拌を継続し、ポリシロキサン粒子分散液を得た(平均粒子径:1.83μm、変動係数:3.17%)。
【0157】
上記四つ口フラスコとは異なるフラスコで、アニオン性乳化剤(LA‐10,第一工業製薬製)0.7部、水70部、およびNKエステルAPG‐400(新中村化学(株)社製)を100部、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート20部、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチロバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、「V‐65」)0.5部を混合し、ホモジナイザーを用いて5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。
【0158】
上記有機無機複合粒子分散液を30分間攪拌した後、ここに、上述のモノマーエマルションを15秒で添加し、さらに30分間攪拌を行った。このとき、ポリシロキサン粒子を顕微鏡で観察し、粒子径の増大より、無機質粒子がモノマーを吸収していることを確認した。モノマーエマルションの添加から1時間後、モノマーを吸収した有機無機複合粒子分散液に水1000部を加え、さらに反応液を窒素雰囲気下75℃に昇温させて30分間保持し、ラジカル重合を行い、コア微粒子の乳濁液を得た(平均粒子径:3.8μm、変動係数は:2.9%)。
【0159】
得られたコア微粒子乳濁液をろ過し、エタノールで洗浄した後、100℃で4時間真空乾燥してコア微粒子を得た。得られたコア微粒子の特性を表1に示す。
【0160】
合成例(4) ポリスチレン粒子の合成
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)3万)2部、アゾビスメチルバレロニトリル1部を、イソプロパノール150部に溶解させた溶液を窒素気流下で攪拌しながら、ここにスチレン15部を投入した後、60℃に昇温して24時間重合反応を行い、ポリスチレン粒子分散液を得た(平均粒子径:5.1μm、変動係数:7.3%)。
【0161】
得られた分散液からポリスチレン粒子を分離し、洗浄、分級、乾燥してポリスチレン粒子を得た(平均粒子径5.1μm、変動係数4.8%)。得られたポリスチレン粒子の特性を表1に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
製造例1
合成例(2)で得られた化合物(b)の溶液10gと合成例(3)で得られたコア微粒子20gとを300mlのビーカーに入れ、スパチュラで混合し、ここに水50gを添加し超音波をあててコア微粒子を分散させた(分散液C1)。
【0164】
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに、上記分散液C1を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、40℃まで昇温させた。同温度で2時間保持した後(尚、このときの反応液のpHは10である)、水150ml添加し、常温まで冷却して、被覆微粒子D1を得た。被覆微粒子D1の重合体被覆層厚さ、粒子表面性状の評価結果を表2に示す。また、このとき用いたコア微粒子および被覆微粒子D1の電子顕微鏡(SEM)写真を図3、図4にそれぞれ示す。
【0165】
得られた被覆微粒子D1に、無電解メッキ法によりNiメッキを施し、メッキ性の評価を行った。結果を表2に併せて示す。
【0166】
なお、Niメッキは、以下のようにして行った。被覆微粒子(D1)10gを1質量%の水酸化ナトリウム水溶液200gに分散させ、60℃で2時間攪拌しエッチング処理を行い、濾別・乾燥した後、常温の1g/l塩化第一錫水溶液に5分間浸漬して増感処理を行った。増感処理後の被覆微粒子を、0.1ml/l塩化パラジウム水溶液および0.1ml/lの塩酸からなる触媒化液に攪拌しながら添加し、さらに5分間攪拌して被覆微粒子にパラジウムイオンを捕捉させた後、これを濾別・洗浄し、さらに、常温の1g/l次亜リン酸ナトリウム水溶液に5分間浸漬して還元処理を施し、被覆微粒子表面にパラジウムを担持させた基材粒子を得た。
【0167】
ついで、65℃に加温したグリシン水溶液(20g/l)に、攪拌下で、基材粒子を添加・分散させてスラリーを調製した。このスラリーの攪拌下、硫酸ニッケル水溶液,次亜塩素酸ナトリウム水溶液,水酸化ナトリウム水溶液からなるニッケル無電解めっき液を、5ml/分の速度で添加した。ニッケル無電解めっき液を全量添加した後、水素の発泡が停止するまで液温を65℃に保持しながら攪拌を継続した。水素の発泡の停止後、系内の微粒子を濾別・洗浄し、真空乾燥機(100℃)で乾燥して、ニッケル被膜を有する導電性微粒子を得た。
【0168】
製造例2
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに分散液C1を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、40℃まで昇温させた。同温度で3時間保持した後、水150mlを添加し常温まで冷却し、被覆微粒子D2を得た。また、上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D2にNiメッキを施した。得られた被覆微粒子D2の特性(重合体被覆層厚さ、表面性状およびメッキ性)の評価結果を表2に示す。
【0169】
製造例3
合成例(2)で得られた化合物(b)の溶液5gと合成例(3)で得られた有機無機複合粒子20gとを300mlのビーカーに入れ、スパチュラで混合し、ここに水50gを添加し超音波をあててコア微粒子を分散させた(分散液C2)。
【0170】
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに分散液C2を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、40℃まで昇温させた。同温度で3時間保持した後、水150mlを添加し、常温まで冷却して、被覆微粒子D3を得た。また、上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D3にNiメッキを施した。得られたメラミン被覆粒子D3の特性を表2に示す。
【0171】
製造例4
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに分散液C1を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、50℃まで昇温させた。同温度で1時間保持した後、水150mlを添加し、常温まで冷却して、被覆微粒子D4を得た。また、上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D4にNiメッキを施した。得られた被覆微粒子D4の特性を表2に示す。
【0172】
製造例5
合成例(2)で得られた化合物(b)の溶液10gと、合成例(4)で得られたポリスチレン粒子20gとを300mlのビーカーに入れ、スパチュラで混合し、ここに水50gを添加し超音波をあててコア微粒子を分散させた(分散液C3)。
【0173】
攪拌機を備えた300mlの平底セパラブルフラスコに分散液C3を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、50℃まで昇温させた。同温度で1時間保持した後、水150mlを添加して常温まで冷却し、被覆微粒子D5を得た。また、上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D5にNiメッキを施した。得られた被覆微粒子D5の特性を表2に示す。
【0174】
製造例6 導体層の形成
製造例3で得られた被覆微粒子D3にエッチング処理を施すことなく無電解ニッケルめっきを行い、金置換反応によりニッケル‐金メッキ層を形成し、導電性微粒子を得た。
【0175】
金メッキ層は、次のようにして形成した。攪拌下、液温60℃の無電解メッキ液(エチレンジアミン四酢酸‐4Naが10g/l、クエン酸‐2Naが10g/l、シアン化カリウムが3.0g/l、さらにAuが2.1g/lの組成を有し、水酸化ナトリウム水溶液によりpH6に調製した水溶液)に、ニッケルメッキが施された微粒子を添加し、Auめっき処理を施した。処理後、Auメッキが施された微粒子を濾別、洗浄し、真空乾燥機(100℃)で乾燥して、Ni被膜上にAuめっきが施された導電性微粒子を得た。
【0176】
得られた導電性微粒子のメッキ性を、SEM(走査型電子顕微鏡)ならびにXMA(X線マイクロアナライザー)で観察したところ、被覆微粒子の表面がNiで覆われ、さらにその上に金メッキ層が形成されていることが確認できた。
【0177】
製造例7
合成例(2)で得られた化合物(b)の溶液10gと、合成例(3)で得られた有機無機複合粒子20gとを300mlのビーカーに入れ、スパチュラで混合し、ここに水30gおよびメタノール20gを添加し、超音波を当てて有機無機複合粒子を分散させた(分散液C4)。
【0178】
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに分散液C4を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、70℃まで昇温した後、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケミテックス(株)製,デナコールEX‐145)3gを添加した。同温度で1時間保持した後、水150mlを添加し、常温まで冷却して、エポキシ被覆粒子を得た。得られた粒子を洗浄、分級、乾燥し、エポキシ被覆微粒子D6を得た。また、上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D6にNiメッキを施した。得られた被覆微粒子D6の特性を表2に示す。
【0179】
製造例8
合成例(3)で得られたコア微粒子(有機無機複合粒子)を用いて、上記製造例6と同様の方法で無電解Niメッキ、金置換反応を行い、ニッケル‐金メッキ層が形成された導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子のメッキ性の評価結果を表2に示す。
【0180】
製造例9
合成例(4)で得られたポリスチレン粒子を用いて、上記製造例6と同様の方法で無電解Niメッキ、金置換反応を行い、ニッケル‐金メッキ層が形成された導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子のメッキ性の評価結果を表2に示す。
【0181】
製造例10
水50gを入れた300mlのビーカーに、合成例(3)で得られたコア微粒子20gを入れ、これに超音波を当ててコア微粒子を分散させた(分散液C5)。
【0182】
攪拌機を備えた300ml平底セパラブルフラスコに、上記分散液C5を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、化合物(a)の溶液6gを添加し、40℃まで昇温させたところ、反応開始から30分経過した時点で、凝集物および沈殿が生じた。沈殿物を光学顕微鏡で観察したところ、多数の鱗片状の析出物と共に、コア微粒子が凝集しているのが確認された。なお、沈殿物から単一粒子を取り出すことができなかったため、めっき性の評価は行わなかった。
【0183】
製造例11
合成例(3)で得られたコア微粒子(有機無機複合粒子)20gと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを300mlのビーカーに入れ、スパチュラで混合し、ここに水30gを添加し、超音波を当ててコア微粒子を分散させた(分散液C6)。
【0184】
撹拌機を備えた300mlの平底セパラブルフラスコに分散液C6を入れ、攪拌下(回転数200rpm)、90℃まで昇温した後、合成例(1)で得られた化合物(a)の溶液6gと10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液5gを添加した。同温度で8時間保持した後、水を150ml添加し、常温まで冷却して、メラミン被覆粒子を得た。得られた粒子は凝集していたため、洗浄、乾燥した後粉砕し、分級精製を行い、重合体被覆粒子D7を得た。
【0185】
上記製造例1と同様の方法で、被覆微粒子D7にNiメッキを施した。得られた被覆微粒子D7の特性を表2に示す。
【0186】
【表2】

【0187】
表2より、本発明にかかる重合体被覆層を有する被覆微粒子は、良好なめっき性を示すことが分かる。これに対して、重合体被覆層を有さない製造例8および9はメッキ性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の被覆微粒子の断面模式図である。
【図2】本発明の導電性微粒子の断面模式図である。
【図3】重合体被覆層形成前のコア微粒子を示す電子顕微鏡(SEM)写真である(合成例(3))。
【図4】重合体被覆層形成後のコア微粒子を示す電子顕微鏡(SEM)写真である(製造例1)。
【符号の説明】
【0189】
1 コア微粒子
2 重合体被覆層
3 導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料または有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成された重合体被覆層を有することを特徴とする被覆微粒子。
【請求項2】
平均粒子径が1.0〜100μm、粒子径の変動係数(Cv値)が10%以下である請求項1に記載の被覆微粒子。
【請求項3】
上記重合体被覆層が、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、スルホン酸基、アルデヒド基、およびリン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する重合体を含むものである請求項1または2に記載の被覆微粒子。
【請求項4】
有機材料、または、有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に重合体被覆層を有する被覆微粒子の製造方法であって、
上記コア粒子を分散させた水系媒体中、界面活性剤の存在下で、上記重合体被覆層を開環および/または重縮合反応により形成することを特徴とする被覆微粒子の製造方法。
【請求項5】
上記界面活性剤として、下記一般式で表される構造を有する化合物を用いる請求項4に記載の被覆微粒子の製造方法。
‐(CH‐CH‐O‐)‐X‐R
(ただし、式中、Rは、炭素数5〜25の脂肪族または芳香族の疎水性基、Rは、重量平均分子量300〜10,000のポリアミン構造またはポリカルボン酸構造を有するポリマー鎖、nは3〜85の整数をそれぞれ表し、且つ、Xは、アミノ基、イミノ基およびカルボキシル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基と反応し得る基に由来し、上記反応後に形成される基、mは1または0を表す。)
【請求項6】
前記重合体被覆層が、尿素、チオ尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、シクロヘキシルグアナミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種と、ホルムアルデヒドとの重縮合反応により得られる構造を有するものである請求項4または5に記載の被覆微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の被覆微粒子の表面に導体層が形成されていることを特徴とする導電性微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−533212(P2008−533212A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517887(P2006−517887)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/JP2006/306597
【国際公開番号】WO2006/101263
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】