説明

被覆植物活力剤

【課題】機械散布に適した形状、粒径等を具備し、簡易な方法でも効率よく製造できる粒子状の植物活力剤を提供する。
【解決手段】植物活力能を有する特定の化合物(A)、乳化・分散剤(B)、及び水溶性賦形剤(C)を含んで構成される被覆層が被被覆粒子(D)上に形成された粒子であって、化合物(A)が該被覆層内に油滴の状態で分散した構造を有する粒子からなる被覆植物活力剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に対して薬害がなく、水と接触すると速やかに乳化又は分散して植物活力能を発現させ効率的に植物体の活力を向上させ、更に貯蔵中の有効成分の染み出しを抑制し、取扱性、直接散布性に優れた被覆植物活力剤及びその製造法に関する。尚、ここで言う植物活力剤とは、植物全体を活性化させ、ひいては成長促進や収穫量の向上などの植物成長増強につながる効果をもたらすものである。
【背景技術】
【0002】
植物が成長するには種々の栄養要素が必要であるが、そのいくつかの要素が不足すると植物の生育に支障を来すことが知られている。例えば、肥料三大要素である窒素、リン、カリウムは、それらの不足により全般的に植物の生育が貧弱となる。
【0003】
これらの肥料は、植物の成長に必要不可欠なものであるが、ある程度の濃度以上に与えても、植物の成長性及び収穫量の向上にはそれ以上貢献できない。しかしながら、農作物の成長を促進し、単位面積当りの収穫量を増やして増収をはかることは、農業生産上重要な課題である。そこで、ジベレリンやオーキシンに代表される植物成長調整剤が、植物の伸張、開花、着果、発芽、発根、落果、落葉などの特定の生理機能に影響を与える物質あるいは薬剤として用いられているが、これらの物質の作用は複雑で、使用法によっては植物に害を与える可能性があり、用途が限定されている。
【0004】
かかる問題を解決すべく、例えば特許文献1には、炭素数12〜24の1価アルコールからなり、植物に薬害がなく、効率的に植物体の活力を向上させる疎水性有機化合物(以下、植物活力剤)が開示されている。この植物活力剤は、炭素数12〜24の1価アルコールをそのまま植物に供給するよりも、使用に際しては、水溶液、水性分散液あるいは乳化液として植物に供給することが、より高い機能を発揮するためには好ましいとされている。
【0005】
そこで、界面活性剤に可溶化させた植物活力能を有する化合物をデキストリン等の多孔性粉体に吸着担持させたものが知られているが、有効成分が染み出し易く、貯蔵、保存時にブロッキングを起こし溶解性が低下するという問題があった。また、一度水に溶解することなく植物に直接散布することが可能であれば作業性が大幅に向上するが、従来の粉末状では溶解性の課題に加え、有効成分の染み出しに起因するモサつきにより、均一に散布することが難しかった。更に、近年、農業従事者の高齢化に伴う省力化のニーズが高まっており、より省力・簡便な施用方法が要求されており、かかる要求に対して、肥料散布機を利用して散布できる様に粉末を成形加工により粒状化しようとしても、やはり染み出しが問題となり有効成分をロスすることなく製剤化することが困難であった。
【0006】
そこで、特許文献2、3では、有効成分を乳化・分散剤および水溶性糖類とともに、O/W乳化させ、乳化物を乾燥することで、植物活力剤の粉末状粒子が得られること、さらには、粉末状粒子を造粒して造粒体を得られることが示されており、これら粉末及び造粒体は、粒子内に有効成分が油滴の状態で分散した構造を有することから、有効成分の染み出しや、それに伴う二次加工性の困難さといった前述の課題を解決できることが示されている。
【特許文献1】特開2000−198703号公報
【特許文献2】特開2004−123540号公報
【特許文献3】特開2004−161549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の粉末粒子は、溶解性が改善されており、特許文献3の造粒体は肥料散布機を利用して散布できるような形状を有しているが、造粒体を得るためには、粉末粒子を得る工程の後、二次加工する必要があり、生産性の改善が望まれていた。
【0008】
従って、本発明の課題は、機械散布に適した形状、粒径等を具備し、簡易な方法でも効率よく製造できる粒子状の植物活力剤を提供することであり、更に、有効成分が染み出し難く、取扱性、利便性、貯蔵性、生産性に優れ、水と接触することにより容易に成分が分散する粒子状の植物活力剤、並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、植物活力能を有する下記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)、乳化・分散剤(B)、及び水溶性賦形剤(C)を含んで構成される被覆層が被被覆粒子(D)上に形成された粒子であって、化合物(A)が該被覆層内に油滴の状態で分散した構造を有する粒子からなる被覆植物活力剤に関する。
【0010】
(A1):下記一般式(1−1)で表される化合物
【0011】
【化2】

【0012】
〔式中、R11は炭素数10〜22の炭化水素基、R12は水素原子、水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基、R13は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、R11、R12、R13のいずれか2つが一緒になって環を形成していても良い。〕
【0013】
(A2):下記一般式(2−1)で表される化合物
21−O−(AO)m−R22 (2−1)
〔式中、R21は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数12〜24の炭化水素基、R22は水素原子又は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。但し、mが0の場合はR22は水素原子ではない。〕
【0014】
(A3):下記一般式(3−1)で表される化合物
31−COO−(AO)n−R32 (3−1)
〔式中、R31は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数11〜29の炭化水素基、R32は水素原子、水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、−COR33(R33は炭素数11〜23の炭化水素基)又は対イオン、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。〕
【0015】
(A4):少なくとも2つの官能基を有する有機酸の前記官能基の少なくとも1つに1〜30の炭素原子を含む基が結合した有機酸誘導体
【0016】
(A5):グリセリン誘導体
【0017】
また、本発明は、上記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)及び乳化分散機能を有する水溶性賦形剤(C’)を含んで構成される被覆層が被被覆粒子(D)上に形成された粒子であって、化合物(A)が該被覆層内に油滴の状態で分散した構造を有する粒子からなる被覆植物活力剤に関する。
【0018】
また、本発明は、上記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)〔以下、(A)成分という〕、乳化・分散剤(B)〔以下、(B)成分という〕、水溶性賦形剤(C)〔以下、(C)成分という〕及び水を含有するO/W型の乳化・分散液、又は、上記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)、乳化分散機能を有する水溶性賦形剤(C’)〔以下、(C’)成分という〕及び水を含有するO/W型の乳化・分散液を調製し、該乳化・分散物を被被覆粒子(D)〔以下、(D)成分という〕に被覆・乾燥させて被覆植物活力剤を得る工程を有する、上記本発明の被覆植物活力剤の製造法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機械散布に適した形状、粒径等を具備し、簡易な方法でも効率よく製造できる粒子状の被覆植物活力剤が提供される。また、本発明の被覆植物活力剤は、有効成分が染み出し難く、取扱性、利便性、貯蔵性、生産性に優れ、水と接触することにより容易に成分が分散する。すなわち、本発明の被覆植物活力剤は、(C)成分中に(A)成分を油滴状に保持した被覆層を持つため、水と接触すると容易に乳化・分散し、その乳化・分散液を植物に供給することで、効率的に植物の活力を向上させることができる。更には、有効成分の染み出しが無く、保存中にブロキンクを起こし難い。二次加工することなく一工程で顆粒化することが可能であり、機械散布等を用いた散布が可能となり、作業性が良い等の特徴を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[(A)成分]
(A)成分は植物活力能を有する化合物であり、下記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物である。
【0021】
(A1):下記一般式(1−1)で表される化合物〔以下、(A1)成分という〕
【0022】
【化3】

【0023】
〔式中、R11は炭素数10〜22の炭化水素基、R12は水素原子、水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基、R13は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、R11、R12、R13のいずれか2つが一緒になって環を形成していても良い。〕
【0024】
(A2):下記一般式(2−1)で表される化合物〔以下、(A2)成分という〕
21−O−(AO)m−R22 (2−1)
〔式中、R21は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数12〜24の炭化水素基、R22は水素原子又は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。但し、mが0の場合はR22は水素原子ではない。〕
【0025】
(A3):下記一般式(3−1)で表される化合物〔以下、(A3)成分という〕
31−COO−(AO)n−R32 (3−1)
〔式中、R31は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数11〜29の炭化水素基、R32は水素原子、水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、−COR33(R33は炭素数11〜23の炭化水素基)又は対イオン、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。〕
【0026】
(A4):少なくとも2つの官能基を有する有機酸の前記官能基の少なくとも1つに1〜30の炭素原子を含む基が結合した有機酸誘導体〔以下、(A4)成分という〕
【0027】
(A5):グリセリン誘導体〔以下、(A5)成分という〕
【0028】
以下、(A1)〜(A5)成分について詳述する。
【0029】
<(A1)成分>
一般式(1−1)において、R11、R12、R13の炭化水素基は、それぞれ飽和、不飽和の何れでも良く、好ましくは飽和であり、また直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖又は分岐鎖、特に好ましくは直鎖である。また、R11、R12、R13のいずれか2つが一緒になって環を形成していても良い。更に炭化水素基の総炭素数は奇数でも偶数でもよいが、偶数が好ましい。
【0030】
また、R11、R12、R13の炭素数の合計は、何れも50以下が好ましく、より好ましくは10〜48、更に好ましくは10〜44、特に好ましくは10〜22、最も好ましくは12〜20である。
【0031】
一般式(1−1)において、R11の炭素数は12〜22が好ましく、より好ましくは12〜20、更に好ましくは14〜18である。更に、総炭素数が12〜24で水酸基を1個有するものが好ましく、特に総炭素数が14〜22で水酸基を1個有するものが好ましく、総炭素数が16〜20で水酸基を1個有するものが最も好ましい。一般式(1−1)で表される化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0032】
(A1−1)
CH3(CH2o-1OH(oは12〜24、好ましくは14〜24、更に好ましくは14〜22、特に好ましくは16〜20の整数)で表される1−アルカノールが挙げられる。すなわち、一般式(1−1)で表される化合物として、炭素数12〜24の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール、1−ヘンエイコサノール、1−ドコサノール、1−トリコサノール、1−テトラコサノールが挙げられる。
【0033】
(A1−2)
CH3CH(OH)(CH2p-3CH3(pは12〜24、好ましくは16〜24、更に好ましくは16〜20の整数)で表される2−アルカノールが挙げられる。具体的には、2−ドデカノール、2−トリデカノール、2−テトラデカノール、2−ペンタデカノール、2−ヘキサデカノール、2−ヘプタデカノール、2−オクタデカノール、2−ノナデカノール、2−イコサノール等が挙げられる。
【0034】
(A1−3)
CH2=CH(CH2q-2OH(qは12〜24、好ましくは16〜24、更に好ましくは16〜20の整数)で表される末端不飽和アルコールが挙げられる。具体的には、11−ドデセン−1−オール、12−トリデセン−1−オール、15−ヘキサデセン−1−オール等が挙げられる。
【0035】
(A1−4)
その他の不飽和長鎖アルコールとして、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコール(α又はβ)、リシノイルアルコール、フィトール等が挙げられる。
【0036】
(A1−5)
HOCH2CH(OH)(CH2r-2H(rは12〜24、好ましくは16〜24、更に好ましくは16〜20の整数)で表される1,2−ジオールが挙げられる。具体的には、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール等が挙げられる。
【0037】
上記(A1−1)〜(A1−5)のうち、(A1−1)、(A1−2)、(A1−4)、(A1−5)が好ましく、(A1−1)、(A1−2)、(A1−4)がより好ましく、(A1−1)、(A1−4)が更に好ましく、(A1−1)が特に好ましい。
【0038】
<(A2)成分>
一般式(2−1)において、R21、R22の炭化水素基は、それぞれ飽和、不飽和の何れでも良く、好ましくは飽和であり、また直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖又は分岐鎖、特に好ましくは直鎖である。また、R21、R22の炭化水素基は、水酸基を1つ以上有していてもよい。また、R21、R22の炭素数の合計は、50以下が好ましく、より好ましくは12〜48、更に好ましくは16〜44である。また、一般式(2−1)で表される化合物は、総炭素数が12〜48、更に24〜48、特に32〜40であることが好ましい。一般式(2−1)中のAOは、オキシエチレン基、オキシプロプレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1つ以上の基が好ましく、m個のAOは同一でも異なっていても良く、ランダム、ブロックいずれでも良い。一般式(2−1)で表される化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。中でも、(A2−1)の化合物が好ましい。
【0039】
(A2−1)
CH3(CH2s-1−O−(CH2s-1CH3(sは12〜24、好ましくは16〜24、更に好ましくは16〜20の整数)で表されるジ−n−アルキルエーテルが挙げられる。具体的には、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル等が挙げられる。
【0040】
(A2−2)
CH2=CH−OR3a(R3aは炭素数12〜24、好ましくは16〜24のアルキル基又はアルケニル基)で表されるビニルエーテルが挙げられる。具体的には、ビニルラウリルエーテル、ビニルミリスチルエーテル、ビニルセチルエーテル、ビニルステアリルエーテル、ビニルオレイルエーテル、ビニルリノレイルエーテル等が挙げられる。
【0041】
また、一般式(2−1)の化合物が親水基と疎水基を持つ場合、グリフィンのHLBが10未満、さらに8以下、より更に7以下、特に5以下が好ましい。このグリフィンの式は、HLB=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)ラ(100/5)で表されるものである(「新・界面活性剤入門」三洋化成工業株式会社、昭和60年11月1日発行、第128頁)。
【0042】
<(A3)成分>
一般式(3−1)において、R31、R32の炭化水素基は、それぞれ飽和、不飽和の何れでも良く、好ましくは飽和であり、また直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖又は分岐鎖、特に好ましくは直鎖である。また、R31、R32の炭素数の合計は、50以下が好ましく、より好ましくは12〜48、更に好ましくは16〜44である。
【0043】
一般式(3−1)中のR31の炭化水素基は、水酸基を1つ以上有していてもよく、好ましくは炭素数11〜29、より好ましくは炭素数13〜21、更に好ましくは炭素数15〜19である。また、飽和、不飽和何れでも良く、好ましくは飽和であり、直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖、分岐鎖、さらに好ましくは直鎖である。R31の具体例は、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、ヘンイコシル基などのアルキル基;ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、ノナデセニル基などのアルケニル基である。好ましくは、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基などのアルキル基;ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、ノナデセニル基などのアルケニル基である。特に好ましくは、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基などのアルキル基である。
【0044】
また、一般式(3−1)中のR32は、水素原子、水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜22の炭化水素基(好ましくはアルキル基又はアルケニル基)、−COR33(R33は炭素数11〜23の炭化水素基)又は対イオンである。R32の具体例は、ラウリル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基、ベヘニル基などのアルキル基;ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アラキドイル基、ベヘノイル基などのアシル基;テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、コドイル基、ドコセニル基などのアルケニル基である。好ましくは、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基などのアルキル基;パルミトイル基、ステアロイル基、アラキドイル基などのアシル基;ヘキサデセニル基、オレイル基、コドイル基などのアルケニル基である。特に好ましくは、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基などのアルキル基である。対イオンとしての具体例は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩、エタノールアミンなどのアルカノールアミン塩の何れでも良く、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である。
【0045】
一般式(3−1)中のAOは、オキシエチレン基、オキシプロプレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1つ以上の基が好ましく、n個のAOは同一でも異なっていても良く、ランダム、ブロックいずれでも良い。
【0046】
本発明の(A3)成分の中では、一般式(3−1)のnが0〜5で、R31が炭素数13〜21のアルキル基又はアルケニル基で、R32が水素原子、炭素数1〜22のアルキル基もしくはアシル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は対イオンのもの(但し、nが0でない場合は対イオンを除く)が特に好ましい。
【0047】
また、一般式(3−1)の化合物が親水基と疎水基を持つ場合、前記したグリフィンのHLBが10未満、さらに8以下、より更に7以下、特に5以下が好ましい。
【0048】
<(A4)成分>
(A4)成分の官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、有機酸は、少なくとも1つの水酸基を有することが好ましい。また、官能基に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキルアミノ基、オキシアルキレン基等が挙げられる。(A4)成分としては、下記一般式(4−1)で表される化合物が好ましい。
【0049】
A−(B)a−C (4−1)
【0050】
【化4】

【0051】
X、Y、Z:それぞれ独立して、水素原子又は対イオン
41、R44、R49:それぞれ独立して、炭素数1〜30の炭化水素基
【0052】
【化5】

【0053】
42、R43、R46、R47、R48、R4a、R4b、R4c、R4d、R4e、R4f:それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基
a:0又は1以上の数
l、m、n、o、p、q、r、s、t:それぞれ独立して、0〜10の数
u、v:それぞれ独立して、1〜50の数
を示し、これらは分子中の官能基の少なくとも1つに1〜30の炭素原子を含む基が結合するように選択され、また、A、Cの両方が、−R44、−OH及び−OR45から選ばれる基である場合は、
【0054】
【化6】

【0055】
一般式(4−1)中のR41、R44、R49は、それぞれ炭素数1〜30の炭化水素基であり、R41とR49は、好ましくは炭素数12〜26、更に好ましくは炭素数14〜22の炭化水素基である。また、R44は好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。R41、R44、R49は、好ましくはアルキル基及びアルケニル基である。また、R41、R44、R49の炭化水素基、好ましくはアルキル基やアルケニル基は、飽和、不飽和の何れでも良く、好ましくは飽和であり、また、直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖、分岐鎖、さらに好ましくは直鎖である。R41、R44、R49の具体例としてはラウリル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基(炭素数20のアルキル基)、ベヘニル基(炭素数22のアルキル基)などのアルキル基;C14F1基(Cの次の数字は炭素数を、Fの次の数字は不飽和結合の数を意味する。以下同様。)、C16F1基、C18F1基、C20F1基、C22F1基などのアルケニル基が挙げられる。
【0056】
また、一般式(4−1)中のR42、R43、R46、R47、R48、R4a、R4b、R4c、R4d、R4e、R4fは、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜30、好ましくは12〜26、更に好ましくは14〜22の炭化水素基であり、好ましくは炭化水素基である。炭化水素基は好ましくはアルキル基及びアルケニル基である。炭化水素基、好ましくはアルキル基やアルケニル基は、飽和、不飽和の何れでも良く、好ましくは飽和であり、また、直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖、分岐鎖、さらに好ましくは直鎖である。
【0057】
また、一般式(4−1)中のX、Y、Zは、それぞれ、水素原子又は対イオンであり、対イオンの具体例としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩、エタノールアミンなどのアルカノールアミン塩などが挙げられる。好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である。
【0058】
また、一般式(4−1)中のaは、Bの総数であり、一般式(4−1)中のBが2つ以上存在する場合、すなわちa≧2の場合は、Bは、上記に定義される基のうち、同一又は異なる種類であってもよい。
【0059】
(A4)成分を形成する有機酸は、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくはクエン酸である。
【0060】
(A4)成分が親水基と疎水基を持つ場合、前記したグリフィンのHLBが10未満のものが好ましく、さらに8以下が好ましく、特に5以下が好ましい。
【0061】
<(A5)成分>
グリセリン誘導体としては、グリセリンと酸とのエステル(以下、グリセリンエステルという)、グリセリンと水酸基含有化合物とのエーテル(以下、グリセリンエーテルという)、グリセリンの縮合物もしくはその誘導体及びグリセリン酸もしくはその誘導体からなる群から選ばれるものが好ましい。
【0062】
グリセリンエステルを構成する酸は有機酸、無機酸のいずれでもよい。有機酸としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数4〜30、より好ましくは炭素数12〜24の有機酸が挙げられる。また、無機酸としてはリン酸、硫酸、炭酸等が挙げられ、無機酸エステルでは塩となっていてもよい。グリセリンエステルとしては、グリセリンと有機酸とのエステル、すなわち、グリセリンと有機酸とのモノエステル、ジエステル、トリエステルが好ましい。グリセリン有機酸トリエステルとしては、合成されたトリエステルや、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、ヤシ油、パーム油、パームステアリン油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物性油脂のような油脂を用いることができ、油脂が好ましい。
【0063】
グリセリンエーテルを構成する水酸基含有化合物としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数4〜30、より好ましくは炭素数12〜24のアルコールが挙げられる。グリセリンエーテルとしては、バチルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル、ベヘニルグリセリルエーテル等のグリセリンモノアルキルエーテルが挙げられる。なお、ジエーテル、トリエーテルであってもよい。また、本発明のグリセリンエーテルには、グリセリンのアルキレンオキサイド(以下AOと表記する)付加物が含まれる。ここで、該付加物のAO平均付加モル数は1〜30、更に1〜10、特に1〜5が好ましい。更に、油脂とグリセリンの混合物のAO付加物を用いることもでき、該付加物のAO平均付加モル数は1〜30、更に1〜10、特に1〜5が好ましい。
【0064】
グリセリンの縮合物もしくはその誘導体としては、下記一般式(5−1)で表されるポリグリセリンもしくはその誘導体が挙げられる。
【0065】
【化7】

【0066】
〔式中、nは2〜50の数を示し、Rは水素原子又は炭素数2〜31のアシル基であり、Xは炭素数2〜4のアルキレン基であり、m1、m2及びm3は各々0〜30の数である。〕
【0067】
グリセリン酸は、グリセリンやグリセルアルデヒドの酸化等により得られる。本発明では、グリセリン酸エステル、グリセリン酸アミド等のグリセリン酸誘導体も使用できる。
【0068】
なお、本発明のグリセリン誘導体が親水基と疎水基を持つ場合、前記したグリフィンのHLBが10未満のものが好ましく、さらに8以下が好ましく、特に5以下が好ましい。
【0069】
上記(A1)〜(A5)で表される植物活力能を有する化合物は、アルコール、アルコール誘導体が主に用いられる。更に、その中では、炭素数12〜24、更に炭素数14〜22、特に炭素数16〜20の1価アルコールが最も好ましい。該1価アルコールの炭化水素基は、飽和、不飽和の何れでも良く、直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良い。好ましくは直鎖又は分岐鎖、特に好ましくは直鎖のアルキル基である。該1価アルコールの具体例としては、1−ドデカノール(ラウリルアルコール)、1−ヘキサデカノール(セチルアルコール)、1−オクタデカノール(ステアリルアルコール)、1−エイコサノール、1−ドコサノール(ベヘニルアルコール)、フィトール、オレイルアルコール等や天然油脂由来のアルコール等が挙げられる。これらの(A)成分は必要に応じて2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0070】
被覆植物活力剤中の(A)成分の含有量は、特に限定しないが、経済性の観点から、被覆植物活力剤の0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、溶解性及び効果発現の観点から、被覆植物活力剤の30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。従って、経済性、溶解性及び効果発現の観点から、該含有量は被覆植物活力剤の0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。
【0071】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分を油滴として安定に乳化・分散させる機能を持ち、且つ被覆層を形成させる段階、及び植物成長に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。例えば、カゼインナトリウム、ゼラチン、乳蛋白、大豆蛋白等の水溶性蛋白質、アラビアガム、キサンタンガム等のガム類、ショ糖脂肪酸エステル、エステル化化工澱粉、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート等の非イオン界面活性剤、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系の陰イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、効果発現、乳化・分散能力、粒子形成性の観点から、常温で固体状を呈する乳化・分散剤を少なくとも1種使用することが好ましい。具体的には、水溶性蛋白質、エステル化化工澱粉が好ましく、カゼインナトリウム、オクテニルコハク酸澱粉が特に好ましい。
【0073】
又、上記の乳化・分散剤は、必要に応じて2種以上組合せて使用しても良い。組合せにより、複合効果を期待することができる。
【0074】
被覆植物活力剤の被覆層中の(B)成分の含有量は、乳化・分散性の観点から被覆植物活力剤の被覆層の0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。又、効果発現、粒子の溶解性及びコストの観点から、被覆植物活力剤の被覆層中の60重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下が特に好ましく、30重量%以下が最も好ましい。従って、効果発現、乳化・分散性、溶解性及びコストの観点から、該含有量は被覆植物活力剤の被覆層の0.1〜60重量%が好ましく、1〜50重量%がより好ましく、5〜40重量%が特に好ましく、5〜30重量%が最も好ましい。
【0075】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分を油滴として固定化し被覆層を形成させる為のもので、水に接触した場合速やかに溶解する水溶性賦形剤である。例えば、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、トレハロース、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、プルラン、あるいはソルビトール、マンニトール等の糖アルコール等が挙げられる。この中でも、溶解性、吸湿性、粒子形成性の観点から、デキストリンが特に好ましい。又、上記の水溶性賦形剤は、必要に応じて2種以上組合わせて使用しても良い。
【0076】
尚、(C)成分に代えて、水中での(A)成分の乳化分散機能を有する水溶性賦形剤〔(C’)成分〕を使用することもできるが、その場合は、(B)成分を添加しなくてもかまわない。(C’)成分の具体例としては、アラビアガム、キサンタンガム等のガム類、エステル化化工澱粉等が挙げられる。
【0077】
被覆植物活力剤の被覆層中の(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の配合量により変動するので特に限定されないが、被覆層形成性の観点から、被覆植物活力剤の被覆層の5〜90重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。(C’)成分も同様である。
【0078】
[(D)成分]
(D)成分は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分又は(A)成分及び(C’)成分を含んで構成される被覆層を被覆させるための粒子である。(D)成分は、コア(核粒子)として機能でき、かかる被覆層が被覆可能な物質であれば、形状、大きさ、強度等は特に限定しない。(D)成分をコアとしてその上に被覆層を形成することで、最終的な植物活力剤の粒径、形状、被覆層の厚み等の調整が容易になる。
【0079】
(D)成分が肥料成分、その他の機能を担う成分を含むことは好適である。また、(D)成分は一次粒子でも造粒物等の二次粒子でもよく、例えば肥料成分である場合は、市販品に限らず、造粒物であってもよい。
【0080】
(D)成分は粒子としての形状には拘らないが、その平均粒径としては、機械散布性の観点から、0.1mm〜20mmが好ましく、0.5mm〜10mmがより好ましい。また、被覆植物活力剤中の(D)成分の含有率は、特に限定しないが、被覆層に対して1〜1000倍の重量であることが好ましい。被覆層中の活力成分の含有率や散布量の観点から、被覆層に対して1〜100倍の重量であることがより好ましい。
【0081】
本発明の被覆植物活力剤には、(A)成分、(B)成分、(C)成分もしくは(C’)成分、(D)成分以外にも、必要に応じ他の物質が含まれていても良い。例えば、酸化防止剤、防腐剤、帯電防止剤、キレート剤、可塑剤、色素、香料等が挙げられる。又、使用する原料及び製造プロセス由来の水分を含有しても良い。これらは被覆層に存在しても被被覆粒子として存在してもよく、後者の場合、(D)成分として算入される。
【0082】
[被覆植物活力剤]
本発明の被覆植物活力剤は、(D)成分上に、(A)成分、(B)成分及び(C)成分又は(A)成分及び(C’)成分を含んで構成される被覆層が形成されており、被覆層内部に、植物活力能を有する(A)成分が微粒化された油滴として分散している構造を有する。この様な構造を持つことにより、水と接触すると(B)成分及び(C)成分、又は(C’)成分が溶解し、内部の(A)成分が微細な粒子として植物に供給される為、植物に吸収されて活力を向上させることができる。又、このような粒子構造をとることで(A)成分が粒子から染み出すことが無く、保存中に製品がブロッキングを起こすことが無い。また、製品形態が粒子状のため、機械散布性に優れ、且つ、被被覆粒子の大きさ、重量を任意に選定できることから、水田など水の流れのあるところに施用した場合でも、流亡を防止する機能を併せ持つ。
【0083】
被覆植物活力剤の平均粒径は、溶解性、流動性の観点から20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。また、機械散布性の観点から0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
【0084】
被覆植物活力剤の被覆層中に分散・固定化されている(A)成分の平均粒径は、植物の活力向上効果の観点から、0.05〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましい。(A)成分の平均粒径は、被覆植物活力剤を水に溶解・分散させ、レーザー回折/散乱法等で測定できる。
【0085】
被覆層の厚みは、被覆植物活力剤の平均粒径や被覆植物活力剤の被覆層中の(A)成分の平均粒径などにもよるが、10〜1000μm、特に20〜500μmの範囲から選択できる。
【0086】
上記の様に、本発明の被覆植物活力剤は、保存中に有効分の染み出しが無く、機械散布性に優れ、水と接触すると速やかに溶解・分散し、それが植物に供給されると効率的に植物の活力を向上させることが可能な非常に有効な構造を有している。
【0087】
[製造方法]
被覆植物活力剤の製造法は、まず主成分である(A)成分を微細な油滴又は微粒子状に分散させる為、(A)成分、(B)成分及び(C)成分又は(C’)成分、並びに水を混合し、O/W型の乳化・分散液を調製する。この時、(A)成分が常温固体の油性成分の場合は、その融点以上に加熱して乳化分散を行う。得られた乳化・分散液を、(D)成分上にコーティングし、乾燥することにより、被覆層内に(A)成分が微細な油滴粒子として分散・固定化された被覆植物活力剤が得られる。
【0088】
O/W型の乳化・分散液を調製する場合の各成分の配合順序は特に限定されないが、例えば、水に(B)成分と(C)成分を溶解し、その水溶液に(A)成分を添加するのが好ましい。又、(A)成分に(B)成分を溶解し、水と(C)成分の水溶液に添加する方法もある。尚、この時用いられる水は、安定な乳化・分散液が形成できれば特に限定されないが、操作性の観点から、被覆植物活力剤被覆層の構成成分100重量部に対し20〜300重量部が好ましく、50〜200重量部がより好ましい。
【0089】
又、乳化・分散に際しては、(A)成分を安定かつ所望の径に乳化・分散させる為に、静止型乳化・分散機、ホモミキサー等の攪拌型乳化機、ホモジナイザー等の高圧乳化機を使用することが好ましい。特に、静止型乳化・分散機又は攪拌型乳化機で予備分散した後、高圧乳化機で処理すると、より均一で微細な乳化・分散液が得られ好ましい。
【0090】
得られたO/W型の乳化・分散液の(D)成分へのコーティング、乾燥の方法は、一般的な方法を用いることができ特に限定されないが、例えば、流動層コーティング法、転動コーティング法、パン型コーティング法等が挙げられる。尚、乳化・分散液のコーティングに際して、被膜内に植物活力成分が油滴のまま保持されれば、条件は特に限定しないが、水への再分散後の液滴径を小さくするためには、乾燥用熱風温度は60℃以上が好ましい。また、植物に与える影響を任意に調整するという観点から、調製した乳化・分散液の液滴径と、コーティングせしめた被覆粒子の水への再分散後の液滴径は、大きく異ならないのが好ましい。
【0091】
上記の乾燥法の中では、工業的な生産性及び、大粒径粒子が得られるといったことから、パン型コーティング法、及び転動コーティング法が好ましい。本製造法であれば、特許文献3のように粉末粒子を得る工程後、二次加工する工程を必要とすることなく、一工程で発明品を得ることが可能である。また、(D)成分の造粒(核粒子の形成)と被覆層の形成を一つの装置内で実施することも可能である。
【0092】
[被覆工程]
任意工程として、得られた被覆植物活力剤を更にコーティングすることで、(A)成分の放出タイミング、速度をコントロールすることも可能である。放出のタイミング、速度の制御により、散布頻度の低減等の作業性向上が期待できる。また、(A)成分を含む被覆層を形成する工程に、パン型コーティング法等のコーティング装置を用いる場合、付加工程であるコーティング操作を同一の装置内で行うことも可能である。
【実施例】
【0093】
実施例1
水45重量部に、エマルスター30(松谷化学工(株)製) 16.5重量部、デキストリン(松谷化学工業(株)製 パインデックス#2)22.0重量部を加え混合溶解しながら温水浴中で液温80℃に調製した。この水溶液に、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)の攪拌下(9500rpm)、ステアリルアルコール(花王(株)製 カルコール8098)16.5重量部を徐々に添加し、乳化液を85℃に維持したまま、60分間乳化し、1500gの乳化液を得た。得られた乳化液の乳化・分散粒子の平均粒径(平均乳化径)は1.1μmであった。得られた均質乳化液を、パン型コーティング装置(フロイント(株)製 ハイコーター HCT48型)を用い、乳化液供給量17g/min、送風温度80℃、回転数15rpmの条件で、4kgの高度化成肥料(日東エフシー(株)製、粒径2〜4mm)に対して、1050gの乳化液をスプレーコーティングし、同温度で乾燥した。得られた被覆植物活力剤20gを無攪拌で水200gに添加すると、すぐさま沈降し、被覆層が容易に溶解・分散し、3時間後には被覆層は完全に溶解・分散しており、そのときの分散粒子の平均粒径(平均分散径)は2.7μmであった。また、得られた被覆植物活力剤の断面写真を観察すると、図1のように、被覆層中に微細に保持された(A)成分(その一部が、写真中、被覆層に存在する白色粒子ないし黒色の窪みとして視認される)が確認できる。
【0094】
なお、上記の平均粒径は、以下の測定方法に従い測定したものである(以下同様)。
【0095】
<平均粒径の測定方法>
乳化液又は被覆植物活力剤の分散液について、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を使用して測定し、メジアン径を平均粒径とした。
【0096】
実施例2
実施例1と同様の乳化液組成のもと、ディスパー翼(特殊機化工業(株)製)の攪拌下(2500rpm)で、5分間乳化した。得られた乳化液の乳化・分散粒子の平均粒径(平均乳化径)は4.4μmであった。得られた均質乳化液を、パン型コーティング装置(フロイント(株)製 ハイコーター HCT48型)を用い、乳化液供給量17g/min、送風温度80℃、回転数15rpmの条件で、4kgの高度化成肥料(日東エフシー(株)製、粒径2〜4mm)に対して、1050gの乳化液をスプレーコーティングし、同温度で乾燥した。得られた被覆植物活力剤20gを無攪拌で水200gに添加すると、すぐさま沈降し、被覆層が容易に溶解・分散し、3時間後には被覆層は完全に溶解・分散しており、そのときの分散粒子の平均粒径(平均分散径)は4.6μmであった。
【0097】
実施例3
スプレーコーティング及び乾燥を60℃で行う以外、実施例1と同じとした。得られた被覆植物活力剤20gを無攪拌で水200gに添加すると、すぐさま沈殿し、被覆層が容易に溶解・分散し、3時間後には被覆層は完全に溶解・分散しており、そのときの分散粒子の平均粒径(平均分散径)は5.1μmとなった。
【0098】
比較例1
あらかじめポリオキシエチレン(エチレンオキシド平均付加モル数20)ソルビタンモノオレート(花王(株)製 レオドールTW O−120)5.4重量部にステアリルアルコール(花王(株)製 カルコール8098)1.8重量部を可溶化させ、肥料(実施例1と同じもの)30重量部、吸着剤1(セイコータルク)16.5重量部、吸着剤2(カープレックスXR)5.6重量部、増量剤(ベントナイト)1.7重量部、硬度調製剤(クレー)22.5重量部、崩壊剤(リグニンスルホン酸ナトリウム)1.5重量部、バインダー(ポリエチレングリコール)15重量部とともに65℃に保温されたハイスピードミキサー(三井・三池エンジニアリング製 HIGH SPEED MIXER UM2E型)で混合させ、1000gの混合物を得た。均一混合された粉末混合物をラボドームグラン(不二パウダル(株)製、スクリーン径2.0mm)で押出し、パワーミル(ダルトン(株)製、スクリーン径3.0mm)で整粒して、植物活力剤の押出し造粒物を得た。得られた造粒物を水に添加したが、3時間後も造粒物の形状を保持したままであった。
【0099】
試験例
上記の実施例、比較例で得られた植物活力剤を水に溶解、分散させた場合の化合物(A)(ステアリルアルコール)の溶出量を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0100】
<化合物(A)の溶出量の測定方法>
イオン交換水200gに植物活力剤20gを入れ、所定時間静置後、溶液を上下反転させて一度均一にさせた後、液分の約5gをサンプリングした。サンプリング液にジエチルエーテル30gと内標物質(炭素数15のアルコールのジエチルエーテル溶液、8.5重量%濃度)1gを混合させたのち、ガスクロマトグラフィーを用いて、油層成分中の化合物(A)(ステアリルアルコール)の定量を行い、溶出量を算出した。
【0101】
【表1】

【0102】
(注)
1):製造時に用いた乳化液中の乳化・分散粒子の平均粒径
2):植物活力剤を水に溶解、分散させた分散液中の分散粒子の平均粒径
【0103】
実施例、比較例より、本発明によって、被覆層中に(A)成分が微細に保持され、水と接触すると速やかに(A)成分を微細な状態で放出する任意の大きさの粒子を、一工程で得られることがわかる。しかも、(A)成分が被覆層中に微細に保持されている様子は、特許文献2で得られる粒子の構造に類することから、染み出しがない粒状の被覆植物活力剤が得られることがわかる。本発明の植物活力剤は任意の大きさに調整可能なことから、機械散布に適した粒子を得る技術として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施例1で得られた本発明の被覆植物活力剤の構造を示す電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物活力能を有する下記(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)、乳化・分散剤(B)、及び水溶性賦形剤(C)を含んで構成される被覆層が被被覆粒子(D)上に形成された粒子であって、化合物(A)が該被覆層内に油滴の状態で分散した構造を有する粒子からなる被覆植物活力剤。
(A1):下記一般式(1−1)で表される化合物
【化1】


〔式中、R11は炭素数10〜22の炭化水素基、R12は水素原子、水酸基又は炭素数1〜24の炭化水素基、R13は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し、R11、R12、R13のいずれか2つが一緒になって環を形成していても良い。〕
(A2):下記一般式(2−1)で表される化合物
21−O−(AO)m−R22 (2−1)
〔式中、R21は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数12〜24の炭化水素基、R22は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜24の炭化水素基又は水素原子、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。但し、mが0の場合はR22は水素原子ではない。〕
(A3):下記一般式(3−1)で表される化合物
31−COO−(AO)n−R32 (3−1)
〔式中、R31は水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数11〜29の炭化水素基、R32は水素原子、水酸基を1つ以上有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、−COR33(R33は炭素数11〜23の炭化水素基)又は対イオン、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、0〜5の数を表す。〕
(A4):少なくとも2つの官能基を有する有機酸の前記官能基の少なくとも1つに1〜30の炭素原子を含む基が結合した有機酸誘導体
(A5):グリセリン誘導体
【請求項2】
請求項1記載の(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)及び乳化分散機能を有する水溶性賦形剤(C’)を含んで構成される被覆層が被被覆粒子(D)上に形成された粒子であって、化合物(A)が該被覆層内に油滴の状態で分散した構造を有する粒子からなる被覆植物活力剤。
【請求項3】
化合物(A)が、炭素数12〜24の1価アルコールである請求項1又は2記載の被覆植物活力剤。
【請求項4】
被被覆粒子(D)が、肥料成分を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の被覆植物活力剤。
【請求項5】
請求項1記載の(A1)〜(A5)から選ばれる1種以上の化合物(A)、乳化・分散剤(B)、水溶性賦形剤(C)及び水を含有するO/W型の乳化・分散液、又は、請求項1記載の化合物(A)、乳化分散機能を有する水溶性賦形剤(C’)及び水を含有するO/W型の乳化・分散液を調製し、該乳化・分散物を被被覆粒子(D)に被覆・乾燥させて被覆植物活力剤を得る工程を有する請求項1〜4のいずれかに記載の被覆植物活力剤の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−169197(P2007−169197A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367450(P2005−367450)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】