説明

被覆粒状水溶性物質の製造方法

【課題】本発明は初期溶出を抑制し、かつ被覆膜の薄膜化を同時に実現した被覆粒状水溶性物質を得ることを目的とする。
【解決手段】粒状水溶性物質上に被覆膜が形成された被覆粒状水溶性物質の製造方法であって、少なくともポリオール化合物を含むポリオール液と芳香族イソシアネート化合物を含むイソシアネート液とを前記粒状水溶性物質上に供給してウレタン樹脂を含む被覆膜を形成する工程を有し、
前記イソシアネート液の被覆温度における粘度が前記ポリオール液の被覆温度における粘度の1/3以下であることを特徴とする被覆粒状水溶性物質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にウレタン樹脂が被覆された水溶性粒状物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粒状肥料や粒状農薬等の溶出成分の流亡による環境への影響、農業就労者の高年齢化に伴う省力化等の面から、より省力型で効率の高い肥料及び農薬、並びにその使用法が要求されている。このような背景のもとに、種々の溶出調整型の肥料や農薬が提案され、実用化されている。
【0003】
前記の溶出調整型の肥料や農薬は、粒状肥料や粒状農薬の表面を有機系あるいは無機系の水透過性の被覆資材を用いて被覆することにより内部成分の溶出を制御した被覆粒状物である。中でも樹脂等の有機系の被覆資材を用いた被覆粒状物は溶出制御機能がより優れており、この様な型が被覆肥料や被覆農薬の主流を占めている。
【0004】
前記被覆資材として用いられる樹脂は、各種様々なものが使用されているが、ウレタン樹脂などの熱硬化樹脂は被覆膜の強度、良好な耐水性、溶出特性の制御の容易さ、溶剤を使用しないで塗布することができる、などの理由から広く用いられており、本出願人も特許文献1において、粒状肥料であってその表面が、(A)芳香族ポリイソシアネートとひまし油またはひまし油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーを、(B)ひまし油またはひまし油誘導体ポリオールと(C)アミンポリオールで、硬化させて得られるポリウレタン樹脂からなる被膜で被覆されてなる被覆粒状肥料を開示している。
【0005】
一般的に、前記のような被覆粒状肥料は、その製造工程において、粒状肥料表面を被覆資材で塗装(被覆)する工程を有するが、一方で、被覆不良やピンホール欠陥などの被覆欠陥が発生し易く、前記のような欠陥を抑制するために、被覆資材の被覆方法について様々な検討がなされている。
【0006】
例えば、熱硬化性樹脂で被覆した被覆粒状肥料の製造方法において、(1)粒状肥料を転動状態にする工程、(2)転動状態にある粒状肥料に層厚が1乃至10μmになる量の液状の未硬化熱硬化性樹脂を添加する工程、(3)該粒状肥料の転動状態を維持し、各肥料粒子表面を該未硬化熱硬化性樹脂で被覆する工程、(4)該粒状肥料の転動状態を維持し、該未硬化熱硬化性樹脂を熱硬化させる工程、(5)上記(1)乃至(4)の工程をさらに1回またはそれ以上繰り返す工程、を(1)〜(5)の順に行うことで塗装欠陥のない粒状肥料を製造する方法が開示されている(特許文献2)。
【0007】
また、ポリウレタンでカプセル化された徐放性肥料粒子の製造方法において、(1)ポリエステルエーテルポリオールを含むイソシアナート反応性成分を肥料粒子に適用して、被覆された肥料粒子を生成させる工程、(2)ポリイソシアナート成分を工程(1)の被覆された肥料粒子に適用して、ポリウレタンでカプセル化された肥料粒子を生成させる工程を含み、所望によりこれらの工程を、工程(2)のポリウレタンカプセル化肥料粒子を工程(1)の肥料粒子の代わりに用いて、必要な多回数(連続して)繰り返して、カプセル化された肥料組成物の総重量に基づいて約2〜約20重量%のポリウレタンを含有するポリウレタンカプセル化肥料粒子を形成する方法が開示されている(特許文献3)。
【0008】
また、被覆粒状肥料を製造する際の操作性を向上させる方法として、粒状肥料に被覆する前に、ポリオール化合物とアミン系触媒とを混合し、次いでポリイソシアネート化合物を加えることで、粒状肥料被覆用プレポリマーを得る方法が開示されている(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−265288号公報
【特許文献2】特開平9−202683号公報
【特許文献3】特開2001−213685号公報
【特許文献4】特開2004−307736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被覆粒状水溶性物質の溶出特性として、施肥後、初期の成分溶出を抑えることが要求されている。初期の成分溶出を抑えるためのひとつの方法として、前述したような被覆欠陥を抑制することが挙げられ、被覆欠陥を少なくするために、膜厚が薄い被覆膜を何層も形成する方法が広く検討、実施されていた(特許文献2)。
【0011】
しかし、被覆膜を何層も形成することで必然的に膜厚は厚くならざるを得ず、それによって、被覆粒状水溶性物質の内部成分が全量溶出せずに被覆膜内に残留してしまうという問題があった。
【0012】
また、被覆膜を何層も形成することで、被覆工程と加熱工程を繰り返し行わなくてはならず、製造時間が長くなり生産性が悪いといった問題があり、被覆膜の薄膜化や層数を減少させる方法が求められている。
【0013】
また、特許文献3では、ポリエステルエーテルポリオールを含むイソシアナート反応性成分またはイソシアナート成分のどちらか一方を肥料粒子上に被覆し、被覆後に他方の成分を添加しポリウレタンを形成する技術を開示している。しかし、上記の2成分を添加する工程を別々に分けることで、製造時間が長くなり生産性が悪くなるばかりでなく、イソシアナート成分を先に被覆した場合にはイソシアナート成分と空気中の水分が反応してしまい均一な被覆膜を形成することが困難になるという問題があった。
【0014】
また、特許文献4では、粒状肥料に添加する前にプレポリマーを形成するものであるが、被覆工程自体は従来のものと同様であり、プレポリマーすることで被覆前に被覆剤の粘度が上昇するため被覆欠陥の改善には至っていなかった。
【0015】
以上より、本発明は初期溶出を抑制し、かつ被覆膜の薄膜化を同時に実現した被覆粒状水溶性物質を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が鋭意検討した結果、被覆膜を形成する被覆材として、低粘度の芳香族イソシアネート化合物を含む液を用いることで被覆欠陥が改善されることがわかった。
【0017】
また一方で、本発明において、高吸水性樹脂を含んだ被覆膜を形成すると、被覆膜の膜厚が薄くなるに従い初期溶出の溶出性能が低下してしまうという、新たな課題が生じることがわかった。
【0018】
従って、前述した新たな課題に対してさらなる検討を重ねた結果、前記高吸水性樹脂の粒径を好適なものとすることにより、初期溶出の溶出性能の低下を防ぐことが可能となることがわかった。
【0019】
すなわち本発明は、粒状水溶性物質上に被覆膜が形成された被覆粒状水溶性物質の製造方法であって、
少なくともポリオール化合物を含むポリオール液と芳香族イソシアネート化合物を含むイソシアネート液とを前記粒状水溶性物質上に供給してウレタン樹脂を含む被覆膜を形成する工程を有し、
前記イソシアネート液の前記粒状水溶性物質表面の温度(以下「被覆温度」と記載することもある)における粘度が前記ポリオール液の被覆温度における粘度の1/3以下であることを特徴とする被覆粒状水溶性物質の製造方法である。
【0020】
前記イソシアネート液の被覆温度における粘度が前記ポリオール液の被覆温度における粘度の1/3を超えると、該イソシアネート液が粒状水溶性物質全体を隙間なく被覆する前に該ポリオール液と混合されるため、被覆欠陥の抑制効果が減少してしまうことがある。また、下限は粒状水溶性物質表面に膜形成ができる程度であれば、特に限定する必要はない。
【0021】
本発明は粘度差のあるイソシアネート液とポリオール液とを用いて、粒状水溶性物質全体を隙間なく被覆し、被覆欠陥を抑制するものである。一般的に、肥料や農薬などの粒状水溶性物質には凹凸があり、粘度が低いイソシアネート液及びポリオール液をこれらの粒状水溶性物質に供給すると、形成される被覆膜は粒状水溶性物質全面を被覆できるが、凸部分に十分な膜厚で被覆することができない。一方、粘度が高いイソシアネート液とポリオール液をこれらの粒状水溶性物質に供給すると、形成される被覆膜は粒状水溶性物質表面の凸部分に十分な膜厚で被覆できるが、凹部分を完全に被覆することができない。また、プレポリマーしたイソシアネート液とポリオール液を粒状水溶性物質に供給した場合も被覆膜が粒状水溶性物質表面の凹部分を完全に被覆する前にウレタン樹脂の熱硬化反応が進行してしまい、その結果被覆欠陥が発生してしまう。
【0022】
しかし、本発明に示す通り、芳香族イソシアネート化合物を含む低粘度のイソシアネート液とポリオール化合物を含む高粘度のポリオール液とは直ぐに完全混合されず、さらに低粘度の該イソシアネート液は、ウレタン樹脂の熱硬化反応が進行する前に粒状水溶性物質の凹部分を容易に被覆することにより粒状水溶性物質の全面を被覆ができ、被覆欠陥を抑制することが可能となる。そのため、高粘度のポリオール液であっても粒状水溶性物質の全表面を被覆することができ、また、粘度が高いため粒状水溶性物質表面の凸部分にも十分な膜厚で被覆することができ、粒状水溶性物質の全表面を均一な膜厚で被覆できるようになる。
【0023】
前記ポリオール液とは、ポリオール化合物を含む液であり、前述した高吸水性樹脂やウレタン樹脂を形成する際の反応開始剤等、1種以上の任意の第三成分を含んでいてもよい。また、一方で前記イソシアネート液は、イソシアネート化合物を含む液であり、イソシアネート基の反応性の高さによっては、任意の第三成分を含まずイソシアネート成分を有する化合物だけを含んでいるのが好ましい。
【0024】
また、本発明は、前記イソシアネート液の被覆温度における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記イソシアネート液が、被覆温度において液状のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記ポリオール液が被覆温度における粘度が20〜500mPa・sであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記粒状水溶性物質の粒径が1〜10mmであることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記被覆膜に高吸水性樹脂を含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、前記高吸水性樹脂の粒度積算分布における95%径が被覆膜の平均膜厚以下であること特徴とする。
【0030】
また本発明は、前記ポリオール液は、前記イソシアネート液の供給を開始してから終了するまでの間に、供給を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の被覆粒状水溶性物質は、被覆膜の膜厚が均一で、初期の成分溶出を抑えたものである。さらに、本発明の被覆粒状水溶性物質の好適な製造方法は、生産性の良い方法であり、また、粒状水溶性物質表面を均一に被覆し易く、被覆欠陥を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の3日、7日〜49日までの7日毎の尿素の溶出率を示した図である。
【図2】実施例4及び比較例2の3日、7日〜84日までの7日毎の尿素の溶出率を示した図である。
【図3】実施例5、実施例6及び実施例7の7日〜84日までの7日毎の尿素の溶出率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、粒状水溶性物質を流動状態又は転動状態に保ち、流動状態又は転動状態の粒状水溶性物質の表面に、少なくともポリオール化合物を含むポリオール液と芳香族イソシアネート化合物を含むイソシアネート液とを供給してウレタン樹脂を含む被覆膜を形成し、形成した被覆膜を熱硬化させることにより被覆粒状水溶性物質を得る。
【0034】
粒状水溶性物質を流動状態又は転動状態にする際、該粒状水溶性物質はあらかじめ熱風等によって一定時間予熱される。この時予熱時間及び予熱温度は、粒状水溶性物質が粒状物の水分がイソシアネート液及びポリオール液等に大きな影響を及ぼさない程度の水分量、また、粒状物表面の温度が被覆温度となるように適宜調整されればよい。
【0035】
粒状水溶性物質の流動化には流動層または噴流層等の装置が使用でき、転動化には回転パンまたは回転ドラム等の装置が使用できる。粒状水溶性物質を流動状態又は転動状態にすることによって、粒状水溶性物質を連続的に被覆することが可能となり、また、表面に形成する被覆膜を均一なものとすることが可能となる。
【0036】
イソシアネート液及びポリオール液の添加方法としては、効率よく分散添加できるものであればよく、例えば噴霧、滴下等が挙げられ、特に、圧縮空気を用いた二流体ノズルによって噴霧添加する方法は良好な被覆膜を形成させることが可能であるため好適に利用される。また、イソシアネート液とポリオール液をあらかじめ混合したものを噴霧する方法はイソシアネート液とポリオール液の粘度差がなくなってしまうため、本発明には適さない。
【0037】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等、あるいはこれらの変性体、例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、ポリマー、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ビュレット変性体、などが挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、また、工業的に使用されるいわゆる「粗製」ポリイソシアネートであってもよい。前記のうちMDI、カルボジイミド化MDI、ポリメリックMDI、TDIなどが特に好適に用いられる。
【0038】
前記芳香族イソシアネート化合物として、液状MDIは粘度が低く蒸気圧が低いため安定した被覆ができるため、液状MDIのみを用いてもよく、また、被覆温度における粘度が50mPa・s以下で、かつMDIを20質量%以上有するものであれば、他の芳香族イソシアネート化合物が1種以上混合していてもよい。
【0039】
また、前記イソシアネート化合物を含むイソシアネート液は、被覆温度における粘度が50mPa・s以下とすることが好ましい。前記イソシアネート液の被覆温度における粘度が50mPa・sを越えると、粒状水溶性物質表面を被覆するのに時間がかかり、被覆欠陥を抑制できないことがある。また、より効果的に被覆欠陥を抑制するためには、30mPa・s以下とするのが好ましい。
【0040】
ポリオール化合物としては、例えば、ひまし油およびその誘導体(たとえばひまし油、ひまし油のアルキレンオキサイド付加体、ひまし油脂肪酸の多価アルコール変性体等)、低分子多官能アルコールのアルキレンオキサイド付加体(たとえば、ジオール類、トリオール類、ヘキサオール類、グリセリン、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、低分子多官能カルボン酸のアルキレンオキサイド付加体(たとえばドデカン二酸のプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、 低分子多官能ポリエステルのアルキレンオキサイド付加体(たとえばグリセリンとドデカン二酸とのポリエステルのプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの単独付加体、共付加体等)、およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。前記の中で、ひまし油、ひまし油をエチレングリコールまたはプロピレングリコールでエステル交換した誘導体、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオールが好適に使用されるとしてもよい。
【0041】
前記ポリオール化合物を含むポリオール液の被覆温度における粘度は20〜500mPa・sとするのが好ましい。該ポリオール液の被覆温度における粘度が500mPa・sを越えると、粒状水溶性物質表面を被覆するのに時間がかかり、粒状水溶性物質全表面を被覆できなくなることがある。また、粘度が20mPa・s以下だと粒状水溶性物質全表面を均一な膜厚で被覆することができなくなる。より効果的に被覆欠陥を抑制し均一な膜厚で被覆するためには、30mPa・s〜300mPa・sとするのが好ましい。
【0042】
前記イソシアネート液と前記ポリオール液とは、イソシアネート基と水酸基とのイソシアネート基/水酸基で表されるモル比が、0.5〜2.0となるように混合されるものであり、好ましくは0.5〜1.5であるとしてもよく、積層膜の場合、層毎にモル比を変更するものであってもよい。該モル比が0.5未満およびの2.0を超える場合、イソシアネート基と水酸基との架橋が不十分となり初期溶出の抑制ができないことがある。さらに、被覆膜に使用する被覆材全量のモル比を、より好ましくは0.6〜1.3としてもよい。
【0043】
また、前記イソシアネート液及び前記ポリオール液を供給する際、反応開始剤を添加するのが望ましい。該反応開始剤はアミン化合物を用いるのがよく、形成されるウレタン樹脂に上記のアミン化合物が含まれていても差し支えない。
【0044】
アミン化合物としては、アルキルアミン類またはアミン系ポリオールが用いられる。アルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミンなどが挙げられる。
【0045】
また、アミン化合物としてはアミン系ポリオールが好ましく、その様なアミン系ポリオールとしては、ジ−、トリ−、エタノ−ルアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等の低分子アミン系ポリオ−ル、あるいはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンのようなアミノ化合物にプロピレンオキサイド(PO)またはエチレンオキサイド(EO)等のアルキレンオキサイドを付加したアミン系ポリオール等が挙げられる。付加の比率はとくに限定されないが、窒素原子1個に対しアルキレンオキサイド1〜200、好ましくは1〜50であるが、2〜2.4程度のものが被覆膜の親水性に関する物性の調節のためには特に好ましい。その様なものとして、例えば、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。特に好ましいものは、反応性と物性が良好となることから、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン,及び、N,N,N′,N′−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミンまたはそれらを主成分とするオキシプロピレン化エチレンジアミン、オキシエチレン化エチレンジアミンである。
【0046】
また、本発明においてポリオール化合物として前述したアミン系ポリオールを用いた場合には、樹脂組成物との良好な相溶性が得られ、均一な被覆膜が容易に形成されることから好適に用いることができる。また、アミン系ポリオールは反応を促進すると共に架橋剤および鎖延長剤としても働き、良好な硬化性と強靭な被覆膜が得られるため、好ましい。
【0047】
前記アミン系ポリオールの使用量は、通常ウレタン樹脂質量の0.1〜50%の範囲で用いることでウレタン樹脂の硬化速度を調整することが可能である。
【0048】
また、ウレタン樹脂の形成を促進するために、さらに触媒を添加してもよく、例えば、ジブチルスズラウレート、オクテン酸鉛などの有機金属触媒が使用できる。
【0049】
粒状水溶性物質の表面に形成される被覆膜は、粒状水溶性物質が露出しないように形成されるものであり、膜厚が均一になっているものが望ましい。また、被覆膜は目的に応じて単層膜でも2層以上の積層膜でもよい。
【0050】
また前記被覆膜は、被覆粒状水溶性物質の質量に対する被覆膜の質量で表される被覆率が0.5〜15質量%であることを特徴とする。被覆率は、被覆膜の質量/被覆粒状水溶性物質の質量×100で表される値であり、この値が大きいほど、粒状水溶性物質表面が被覆膜で覆われていることを示すものである。前記被覆膜の被覆率は、好ましくは1質量%以上としてもよく、被覆膜の被覆率が0.5質量%未満では、膜厚が薄くなり過ぎるため被覆欠陥を抑制することが困難となり、また、15質量%を超えると被覆粒状水溶性物質の成分溶出パターンを損なう場合がある。
【0051】
さらに、溶出性能を損なわない程度であれば、被覆膜の上にオーバーコート層を形成するものであってもよい。前記オーバーコート層としては、例えば被覆膜が損傷するのを防ぐ保護膜や、被覆粒状水溶性物質間相互の固着を防止する固着防止膜等が挙げられる。保護膜としては、例えばウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、パラフィンワックス、撥水性や親水性を有する微粒子などを主成分とするものが挙げられる。また、固着防止膜としては、例えばタルク、イオウ、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、ケイソウ土、クレー、金属酸化物などを主成分とするものが挙げられる。上記は単独又は混合して用いてもよく、また保護膜と固着防止膜とを両方用いてもよい。
【0052】
前記被覆膜を複数層形成する際、該被覆膜のウレタン樹脂の熱硬化が不十分な状態ときに、次層の被覆膜を形成するイソシアネート液とポリオール液とを供給することが好ましい。ウレタン樹脂の熱硬化が不十分な状態では、被覆膜同士が表面で付着し合うが、付着した被覆膜と被覆膜とは完全に一体となっていないことから、このとき次層のイソシアネート液とポリオール液とを添加すると、付着している被覆膜と被覆膜との間に該イソシアネート液と該ポリオール液が侵入し、両者を速やかに引き離し、被覆膜に生じる剥がれ等の損傷を抑制することが可能となる。
【0053】
前記被覆膜を2層以上形成する際、内側に形成された層に高吸水性樹脂が含まれていてもよい。該高吸水性樹脂は、被覆膜を透過した水を吸水することで膨張し、被覆膜が破壊されるのを助けるものであり、該高吸水性樹脂を用いることで成分の溶出時期をさらに細かくコントロールすることが可能である。
【0054】
前記高吸水性樹脂の添加は、イソシアネート液が粒状水溶性物質表面を被覆する妨げとならないのであれば、イソシアネート液やポリオール液と同時でも良いが、より好ましくは高粘度のポリオール化合物を添加する前がよく、高吸水性樹脂を高粘度のポリオール化合物と混合したものを添加してもよい。
【0055】
該高吸水性物質は、水を多量に吸収することで乾燥体積の5倍以上に膨潤する物質である。特に吸水時に溶解性が低くゲル状になるものが好ましい。具体的には例えば、アクリル酸塩系重合体(例えば、住友化学工業(株)製スミカゲルS、L、Rタイプ、住友精化(株)製のアクアキープ10SH、10SHP、10SH−NF(20)、SA60NTYPE2、積水化成品工業(株)製のアクアメイトAQ−200、AQ−200B−02、三洋化成工業(株)製のサンフレッシュST−250MPS、ST−500MPSA)、イソブチレン系重合体(例えば、(株)クラレ製のKIゲル−201K、KIゲル−201K−F2、KIゲル溶液システム、KIゲルコンパウンド)、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド変性樹脂、澱粉グラフト重合体、澱粉(例えば、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、可溶性澱粉)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMC金属塩およびベントナイトが挙げられる。これらの内、アクリル酸塩系重合体、イソブチレン系重合体、澱粉が好ましく、アクリル酸塩系重合体が特に好ましい。
【0056】
前記高吸水性物質の粒径は、粒度積算分布における95%径が被覆膜の平均膜厚以下であることが好ましく、高吸水性樹脂の粒径が被覆膜の膜厚より大きいと低粘度の被覆材で高吸水性樹脂全体を十分な膜厚で覆うことができず、被覆粒状水溶性物質の初期溶出を抑制することができなくなってしまう。より好ましくは該高吸水性物質の粒度積算分布における95%径が被覆膜の平均膜厚の1/2以下であり、さらに好ましくは平均膜厚の1/4以下である。
【0057】
前記高吸水性物質の添加量はその粒径により異なるが、通常ウレタン樹脂と高吸水性物質の合計質量の0.1〜30質量%であり、0.3〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。0.1質量%未満では無添加樹脂に比較して高吸水性物質を加えたことによる溶出時期、溶出速度への変化が小さく、これをもって溶出特性の調節を行うのは効果的でない。また、30質量%を超えると親水性が大きくなり溶出開始時期の調節が困難となることがある。。
【0058】
前記被覆膜は、通常常温(25℃程度)〜150℃、好ましくは40〜100℃程度の雰囲気下で熱硬化させることにより形成されるが、形成時間は使用するイソシアネート液とポリオール液との種類によって適宜選択されればよい。また、熱により分解ないし変質しやすい成分を含む粒状水溶性物質の場合は、比較的低温で形成することが必要であり、特に尿素を用いる場合は90℃以下の温度とすることが好ましい。
【0059】
本発明の被覆粒状水溶性物質は、溶出成分の溶出パターンが調節可能であることから、粒状肥料を被覆した被覆粒状肥料として好適に使用される。該被覆粒状肥料は、水溶性の粒状肥料であればよく、その例としては、尿素、塩安、硫安、硝安、塩化カリ、硫酸カリ、硝酸カリ、硝酸ソーダ、燐酸カリ、燐酸アンモニア、燐酸石灰、からなる群から選ばれる少なくとも1種の肥料又は複合肥料、および粒状の有機肥料等が挙げられる。
【0060】
また、本発明の被覆粒状水溶性物質は、粒状農薬を被覆した被覆粒状農薬として好適に使用される。該被覆粒状農薬は、水溶性の粒状農薬であればよく、その例としては、各種の殺虫剤、昆虫忌避剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物生長調整剤等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明の製造条件を表1に示した。
【0062】
[実施例1]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)10kgを直径600mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、15rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0063】
次に、第1層目のイソシアネート液として粘度2mPa・sのMDI40gを滴下投入し、該イソシアネート液の噴霧開始から5秒後に、ポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)とを水酸基のモル比が8:2となるように混合した液65g(粘度80mPa・s)とを噴霧し、第1層目の被覆膜を形成した。
【0064】
次に、第1層目のポリオール液の添加から3.5分後に第2層目の被覆膜として第1層目と同一成分、同一量のイソシアネート液及びポリオール液を同一タイミングで装置内に噴霧した。該被覆膜の熱硬化性樹脂をさらに硬化促進させるため第2層目のイソシアネート液及びポリオール液の噴霧後から30分間転動させ、粒状尿素上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。
【0065】
[良品率の評価]
被覆粒状肥料を取り出し、良品率の測定を行なった。縮分した被覆尿素のうち10gを採取して、予め希釈したインキ(S−1(赤),シヤチハタ社製)希釈液(2.5g/250ml純水)を、被覆粒状肥料が完全に浸漬するまで加え25℃で1時間静置し、該被覆粒状肥料をろ過回収した。続いて該被覆粒状肥料に付着したインキを水洗後、インキで着色された被覆粒状肥料および溶出が完了した被覆樹脂を取り除き、着色されなかった被覆粒状肥料の質量から良品率((非着色被覆粒状肥料の質量)g/10g×100)を算出し、その結果を表1に示した。
【0066】
[被覆率の測定]
得られた被覆粒状肥料を縮分して被覆率((被覆膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100)を算出した。
【0067】
その結果、被覆率は2.0質量%でこのときの膜厚は14.5μmであった。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例2]
第1層目及び第2層目の被覆膜を形成する際、イソシアネート液として粘度2mPa・sのMDI40gと、ポリオール液としてひまし油及びエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液65g(粘度80mPa・s)とを、同時に噴霧した以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0070】
表1から、実施例1には及ばないものの比較例1より被覆欠陥を大幅に抑制できたことがわかった。また、被覆率は2.0質量%で、このときの膜厚は14.5μmであった。
【0071】
[実施例3]
第1層目及び第2層目の被覆膜を形成する際、イソシアネート液として粘度2mPa・sのMDI32gと、ポリオール液としてひまし油とエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液とを52g(粘度80mPa・s)とした以外は、実施例1と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0072】
被覆率は1.6質量%でこのときの膜厚は11.6μmであり、表1から比較例1より被覆率が低いにもかかわらず比較例1より高い良品率であり被覆欠陥を大幅に抑制できたことがわかった。
【0073】
[実施例4]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)10kgを直径600mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、15rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0074】
次に、第1層目の被覆膜として、イソシアネート液として粘度25mPa・sのポリメリックMDI(MDI:40質量%)61gを噴霧し、該イソシアネート液の噴霧開始から5秒後にポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)とを水酸基のモル比が8:2となるように混合した液98g(粘度140mPa・s)と、高吸水性樹脂(粒度積算分布における95%径が20μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)6gとを噴霧し、これを2回繰り返した。
【0075】
次に、第1層目のポリオール液噴霧から3分後に、MDI63gを噴霧し、ポリメリックMDI(MDI:40質量%)の噴霧開始から5秒後にひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液102gを滴下投入し、これを3回繰り返すことで5層の被覆膜を形成した。
【0076】
被覆膜の熱硬化性樹脂をさらに硬化促進させるため第5層目の被覆膜の形成後から30分間転動させ、粒状尿素上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0077】
表1より、比較例より被覆膜の欠陥が抑制できたことがわかった。なお、被覆率は7.5質量%でこのときの膜厚は58μmであった。
【0078】
[実施例5]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)10kgを直径600mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、15rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0079】
次に、第1層目の被覆膜として、イソシアネート液として粘度2mPa・sのポリメリックMDI(MDI:40質量%)57gを噴霧し、該イソシアネート液の添加開始から5秒後にポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)とを水酸基のモル比が8:2となるように混合した液101g(粘度140mPa・s)と、高吸水性樹脂(粒度積算分布における95%径が40μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)7gとを噴霧した。
【0080】
次に、第1層目のポリオール液噴霧から3分後に、MDI59gを噴霧し、ポリメリックMDI(MDI:40質量%)の添加開始から5秒後にひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液106gを滴下投入し、これを3回繰り返すことで4層の被覆膜を形成した。
【0081】
被覆膜の熱硬化性樹脂をさらに硬化促進させるため第4層目の被覆膜の形成後から30分間転動させ、粒状尿素上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0082】
表1より、比較例より被覆膜の欠陥が抑制できたことがわかった。なお、被覆率は6.0質量%でこのときの膜厚は43.5μmであった。
【0083】
[実施例6]
第1層目の被覆膜を形成する際、高吸水性樹脂の粒度積算分布における95%径が20μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSAとした以外は、実施例5と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0084】
表1より、比較例より被覆膜の欠陥が抑制できたことがわかった。なお、被覆率は6.0質量%でこのときの膜厚は43.5μmであった。
【0085】
[実施例7]
第1層目の被覆膜を形成する際、高吸水性樹脂の粒度積算分布における95%径が10μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSAとした以外は、実施例5と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率の測定を行った。
【0086】
表1より、比較例より被覆膜の欠陥が抑制できたことがわかった。なお、被覆率は6.0質量%でこのときの膜厚は43.5μmであった。
【0087】
[比較例1]
粒状尿素(粒径2.5〜4.0mm)10kgを直径600mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、15rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状尿素温度を70℃に保持した。
【0088】
次に、第1層目のイソシアネート液としてMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19質量%としたイソシアネート基末端プレポリマー)55g(粘度150mPa・s)と、ポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液50g(粘度80mPa・s)とを10秒間混合して合計105gの被覆材とし、該被覆材を噴霧した。
【0089】
次に、第1層目の被覆材添加から3.5分後に第2層目の被覆膜として第1層目と同一成分、同一量の被覆材を同一タイミングで装置内に噴霧した。被覆膜の熱硬化性樹脂をさらに硬化促進させるため第2層目の被覆材の噴霧後から30分間転動させ、粒状尿素上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の被覆粒状肥料を得た。
【0090】
得られた被覆粒状肥料について、良品率、被覆率を測定し、その結果を表1に記載した。なお、このとき被覆率は2.0質量%でこのときの膜厚は14.5μmであった。
【0091】
[比較例2]
粒状尿素を70℃に保持し、第1層目のイソシアネート液としてMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19質量%としたイソシアネート基末端プレポリマー)83g(粘度150mPa・s)と、ポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液76g(粘度80mPa・s)と、高吸水性樹脂(粒度積算分布における95%径が20μmの架橋アクリル酸塩重合体;三洋化成工業製ST−500MPSA)6gとを10秒間混合して合計165gの被覆材とし、該被覆材を噴霧し、これを2回繰り返した。
【0092】
次に、第1層目の被覆材の噴霧から3分後に、イソシアネート液としてMDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してNCO基の質量を全質量の19質量%としたイソシアネート基末端プレポリマー)86gと、ポリオール液としてひまし油(水酸基価160mgKOH/g)と、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)を水酸基のモル比が8:2となるように混合した液79gとを10秒間混合して合計165gの被覆材とし、該被覆材を噴霧し、これを3回繰り返すことで5層の被覆を行なった以外は、実施例4と同様の方法で被覆粒状肥料を得た。得られた被覆粒状肥料について、良品率の評価、被覆率を測定し、その結果を表1に記載した。被覆率は7.5質量%でこのときの膜厚は58μmであった。
【0093】
以上より、低粘度の芳香族イソシアネートを用いて、高粘度のポリオール化合物と混合される前に粒状物に被覆することで、全体の被覆率が同じであっても、良品率が高い被覆粒状肥料が得られることが明らかとなった。
【0094】
[溶出試験]
得られた被覆粒状肥料を縮分して溶出試験を行い、その結果を図1および図2に示した。溶出試験は縮分した被覆粒状尿素のうち10gを採取して200ccのイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存して所定時間経過後に取り出し、水中に溶出した尿素を定量して求めた。
【0095】
図1より、実施例1と比較例1とを比較すると、低粘度のイソシアネートを用いることで初期溶出および長期間溶出を抑制できることがわかった。また、実施例2と比較例1を比較すると、低粘度のイソシアネートを用いることで被覆率の高い比較例1よりも被覆率の低い実施例3の方が初期溶出と長期溶出を抑制できことがわかった。
【0096】
さらにまた、図2より、実施例4と比較例2とを比較すると、高吸水性樹脂を添加し被覆膜を厚くした場合においても低粘度のイソシアネートを用いることで初期溶出と長期溶出を抑制できことがわかった。
【0097】
さらにまた、図3より、実施例5と実施例6および実施例7とを比較すると、低粘度のイソシアネートを用いて高吸水性樹脂を添加した場合において、高吸水性樹脂の粒径を小さくすることで初期溶出と長期溶出を抑制できことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状水溶性物質上に被覆膜が形成された被覆粒状水溶性物質の製造方法であって、
少なくともポリオール化合物を含むポリオール液と芳香族イソシアネート化合物を含むイソシアネート液とを前記粒状水溶性物質上に供給してウレタン樹脂を含む被覆膜を形成する工程を有し、
前記イソシアネート液の前記粒状水溶性物質表面の温度(被覆温度)における粘度が前記ポリオール液の被覆温度における粘度の1/3以下であることを特徴とする被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項2】
前記イソシアネート液は、被覆温度における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項3】
前記イソシアネート液は、被覆温度において液状のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオール液は、被覆温度における粘度が20〜500mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項5】
前記粒状水溶性物質の粒径が1〜10mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項6】
前記被覆膜は、高吸水性樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項7】
前記高吸水性樹脂の粒度積算分布における95%径が被覆膜の平均膜厚以下であること特徴とする請求項6に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール液は、前記イソシアネート液の供給を開始してから終了するまでの間に、供給を開始することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の被覆粒状水溶性物質の製造方法を用いて製造された被覆粒状水溶性物質。
【請求項10】
前記粒状水溶性物質が水溶性肥料であることを特徴とする、請求項9に記載の被覆粒状肥料。
【請求項11】
前記粒状水溶性物質が水溶性農薬であることを特徴とする、請求項9に記載の被覆粒状農薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−178650(P2011−178650A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207332(P2010−207332)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】