説明

被覆粒状肥料を含有する培土組成物の保存方法

【課題】被覆粒状肥料における肥料成分の溶出抑制性の劣化が小さな、培土と伴に被覆粒状肥料を保存する方法を提供する。
【解決手段】粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料10〜35容量部(見掛け)を、含水率5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分30重量%以上である培土90〜65容量部と混合して、0〜20℃の条件で保存することを特徴とする被覆粒状肥料の保存方法、並びに、粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料10〜35容量部、及び含水率が5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分が30重量%以上である培土90〜65容量部とからなる培土組成物が、水非透過性の袋に充填されてなる培土包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒状肥料を含有する培土組成物を保存する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器中にて作物苗を育苗したり、家庭園芸で作物や花卉を栽培する場面において、作物や花卉の発芽に適した苗床を市販の培土を用いて調製することが多く行われている。一般に育苗用として用いられている培土は、作物等の種や幼苗に対する塩障害を考慮して、培土中に含まれる肥料成分の量が少なく、その肥料成分の量では育苗の全期間、更には植物生育の全期間の肥料成分の必要量に対しては不十分である。この為、一般に物理的に肥料の溶出を抑制した被覆粒状肥料を培土に混ぜ込んで苗床を調製している(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、作物の種の播種や潅水の作業を伴う苗床の調製作業において、更に培土と被覆肥料とを混合する作業は煩雑であり、予め被覆粒状肥料が培土と混合された培土組成物を用いることが望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平07−147819号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被覆粒状肥料は、硫黄等の無機物、硬化油等の油脂類、ポリオレフィン、アルキド樹脂等の樹脂等の被覆材料により、粒状肥料の表面を被覆することにより、水溶性の肥料成分の溶出を抑制された粒状肥料である。一般に被覆粒状肥料は、周囲に十分な量の水分が存在していた場合、溶解や分解により被覆層に欠陥が生じるか、被覆内に水が浸透することによって、実際に施肥を行った後の肥料成分の溶出抑制が不十分となることが回避できなかった。このため播種作業に備えて、予め被覆粒状肥料を培土に混ぜ込んだ培土組成物を調製しておくことは、苗床調製作業手順上の制約があった。
本発明は、被覆粒状肥料における肥料成分の溶出抑制性能の劣化が小さな、被覆粒状肥料を含有する培土組成物を保存する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討を行った結果、粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料を、含水率5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分30重量%以上である培土とを特定の比率で混合して、実質的に0〜20℃の条件で保存した場合に、該被覆粒状肥料の肥料成分の溶出抑制性能の劣化が小く、実用上において問題無いことを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下のものである。
[発明1]
粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料 10〜35容量部(見掛け)を、
含水率5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分30重量%以上である培土 90〜65容量部と混合して、実質的に0〜20℃の条件で保存することを特徴とする被覆粒状肥料の保存方法。
[発明2]
保存条件が5〜15℃であることを特徴とする発明1に記載された保存方法。
[発明3]
下記の条件で保存することを特徴とする発明1又は2に記載された保存方法。
保存日数(日)×{保存時の一日の平均温度(℃)−5} ≦ 1000(日℃)
[発明4]
被覆粒状肥料が、粒状肥料の表面を粒状肥料に対して5〜20重量%の疎水性樹脂で被覆されてなる粒径1〜5mmの被覆粒状肥料である発明1、2又は3に記載された保存方法。
[発明5]
疎水性樹脂が熱硬化性ポリウレタン樹脂である請求項4に記載された保存方法。
[発明6]
粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料 10〜35容量部、及び
含水率が5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分が30重量%以上である培土 90〜65容量部とからなる培土組成物が、水非透過性の袋に充填されてなる培土包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の保存方法によると、被覆粒状肥料における肥料成分の溶出抑制性能の劣化が小さいので、作物の種の播種や潅水の作業で忙しい苗床の調製作業時期の前に、予め被覆粒状肥料と培土とを混合して培土組成物を調製することができるので、作業時間の均等配分が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、更に詳細に本発明を説明する。
本発明で用いられる被覆粒状肥料は、粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料(以下、本被覆粒状肥料と記す)である。
本被覆粒状肥料の中心核である粒状肥料は、肥料成分を含有する粒状物である。肥料成分とは、水稲などの植物栽培において養分を与えるために土壌に施される窒素、リン、カリウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素等の種々の元素を含有する成分であり、具体例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質肥料;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等の加里質肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の苦土肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等の石灰質肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料等を挙げることができる。本発明において、該粒状肥料は、少なくとも窒素を含有する粒状肥料であることが好ましく、例えば尿素、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の窒素質肥料を含有する粒状肥料が好ましい。
【0009】
本被覆粒状肥料の被覆における疎水性樹脂としては、エチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・一酸化炭素共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
本発明において、疎水性樹脂としては熱硬化性ポリウレタン樹脂が好ましい。熱硬化性ポリウレタン樹脂としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びそれらのオリゴマー等の芳香族系ポリイソシアネートと、ポリオール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン等)のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)付加物等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油等の天然ポリオールとを反応させることにより得られる熱硬化性ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0010】
本発明において、本被覆粒状肥料の被覆における疎水性樹脂の量が、粒状肥料に対して5〜20重量%の範囲であることが好ましい。疎水性樹脂は単独で該粒状肥料の表面を被覆してもよく、小麦粉、タルク等の非水溶性粉状物、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤、顔料等の着色剤等を疎水性樹脂と混合して、粒状肥料を被覆してもよい。
本被覆粒状肥料は、例えば特公昭40−28927号公報、特公昭44−28457公報、特公昭37−15382公報及び特公昭42−13681号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
本被覆粒状肥料は、通常粒径が1〜5mmの被覆粒状肥料である。
【0011】
本発明における被覆粒状肥料は、作物の種が播種され、潅水されて、被覆粒状肥料周辺の水分が十分に高くなった後から一定期間の間は肥料成分の溶出を抑制し、その後速やかに肥料成分を溶出する、所謂シグモイド型の溶出特性を有する被覆粒状肥料であることが好ましい。シグモイド型の溶出を示す被覆粒状肥料を用いることにより、育苗期間中における作物の種や幼苗に対して濃度障害を回避でき、作物、品種、圃場の土性、栽培条件等に応じて育苗の全期間、さらに全栽培期間に必要となる全量あるいはほぼ全量の肥料成分を培土組成物中に配合することができる。
被覆粒状肥料の肥料成分の溶出抑制性能が劣化した場合は、育苗の初期段階で被覆粒状肥料に含有される肥料成分が溶出し、種や幼苗に対して濃度障害が生じる場合がある。
【0012】
本発明で用いられる培土は、含水率が5〜20重量%であり、且つ2mmの目開きの篩を用いた際の篩残分(篩上に残る量)が30重量%以上である培土(以下、本培土と記す。)である。本培土は、好ましくは含水率が5〜15重量%であり、且つ2mmの目開きの篩を用いた際の篩残分が40重量%以上で、3.35mmの目開きの篩を用いた際の篩残分が10重量%以下である。
本培土は、育苗容器や栽培ベッドに充填され、作物の根を安定化し、作物の生育に必要な水分を保持することのできる組成物であって、通常は粒状の物質か、粉状の物質を造粒した粒状物からなる。培土として用いることのできる物質の原料としては、例えば水田土、畑土、黒土、赤土、川砂等の天然土壌資材、腐葉土、ピートモス、籾殻籾殻燻炭、籾殻、堆肥、ヤシガラ、バーク等の有機質資材、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト等の人工用土資材を挙げることができる。本発明に用いられる培土は、見掛け比重が通常0.4〜1.2、好ましくは0.7〜1.0である。
本培土は本培土中に5〜20重量%の水分を含有している。本培土中の含水率は、その組成に応じて好ましい水分分析法、例えば土壌標準分析・測定法や肥料の水分量測定に用いられる公定法を用いることができる。公定法としては、具体的には乾熱法や加熱減量法が挙げられる。本培土において、含水率が20重量%を超えると、保存時において本粒状被覆肥料における肥料成分の溶出抑制性能の劣化が無視できなくなる。また、本培土において、含水率が5重量%未満であると、培土と水との馴染みが悪く、育苗開始時の潅水が片流れを生じて、育苗に悪影響を与える可能性があり、好ましくない。
【0013】
本培土は、2mmの目開きの篩を用いた篩残分が30重量%以上、好ましくは2mmの目開きの篩を用いた際の篩残分が40重量%以上で、3.35mmの目開きの篩を用いた際の篩残分が10重量%以下である。本発明において、2mmの目開きの篩とはメッシュNo.9(Tyler)の篩を意味し、3.35mmの目開きの篩とはメッシュNo.6(Tyler)の篩を意味する。本培土において、2mmの目開きの篩を用いた篩残分が30重量%未満である場合は、保存時において本粒状被覆肥料の肥料成分溶出の抑制性能の劣化が無視できなくなる。
【0014】
本被覆粒状肥料と本培土との混合は、従来知られているような方法及び機械を用いて、混合することができる。但し、本被覆粒状肥料の表面の被覆を損傷し、肥料成分溶出の抑制機能を変化させる危険性の高い方法を用いることは好ましくない。
本被覆粒状肥料と本培土との混合比は、見掛け容量で通常10:90〜35:65の範囲である。
【0015】
本被覆粒状肥料及び本培土からなる培土組成物(以下、本培土組成物と記す。)は、「実質的に0〜20℃」の条件(好ましくは「5〜15℃」の条件)で保存する。本発明において実質的に0〜20℃の条件とは、全保存期間における保存場所の温度が一時的に0〜20℃の範囲を超えることがあっても、その一時的な保存条件の逸脱が被覆粒状肥料における肥料成分の溶出抑制性能に影響を与えない程度であり、例えば全保存期間のうち少なくとも95%の期間が0〜20℃の条件であり、多くとも全保存期間の5%が−10℃〜−1℃又は21〜30℃であることを意味する。
本培土組成物は、更に下記の示す条件を満たす条件にて保存されることが好ましい。
保存日数(日)×{保存時の一日の平均温度(℃)−5} ≦ 1000(日℃)
【0016】
また、本培土組成物は、保存する際には本培土の含水率の大幅な変化が生じないように、水非透過性の袋に充填した状態で保存することが好ましい。水非透過性の袋としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、6,6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、及びそれらの共重合物を混合又は積層したフィルム製の袋が例示される。
【0017】
本発明の保存方法では、本被覆粒状肥料における肥料成分の溶出抑制性能の劣化が小さいので、実際に育苗を開始する1週間〜2ヶ月前に、本被覆粒状肥料を本培土とを予め混合しておくことができる。この為、作物の種の播種や潅水の作業で忙しい苗床の調製作業時期をずらして、本被覆粒状肥料の混合作業を行うことができるので好ましい。また、本被覆粒状肥料と本培土との混合作業を育苗場所とは別の場所にて行い、本培土組成物を水非透過性の袋に充填されてなる培土包装体として、運搬および流通させることも可能である。
【0018】
本培土組成物は、水稲の苗育苗用の苗床用として好ましく用いることができる。本培土組成物を水稲の苗床に用いる場合、水稲の育苗用にしばしば用いられる育苗箱(縦280mm×横580mm×深さ30mm)当たり、本被覆粒状肥料として50〜1000gとなるように、苗床を調製することが好ましい。また、苗床においては、必要により育苗期間中に必要な肥料成分を供給するために、本被覆粒状肥料由来の肥料成分の他に速効性化成肥料や緩効性肥料由来の肥料成分を含有していても良い。
本発明の保存方法により、保存された被覆粒状肥料は、肥料成分の溶出抑制性能の劣化がほとんど無いので、育苗箱用として市販されている被覆粒状肥料を用いて、通常水稲の育苗において要求されるような、育苗期間中(5週間程度)における被覆粒状肥料からの肥料成分の溶出を7%以下に抑制することが可能である。
【実施例】
【0019】
以下に実施例にて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
参考例1(被覆粒状肥料の調製)
粒状尿素(粒径2.0〜4.0mm)を、熱風発生機を付設した温度制御可能な転動型攪拌装置に仕込み、転動させながら、約70℃に加熱した。
次いで、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、NCO重量百分率31%、住化バイエルウレタン株式会社製)、C3−C6のトリオールのプロピレンオキサイド付加物(水酸基価372mgKOH/g)、約90%含量リシノール酸トリグリセリド(水酸基価161mgKOH/g)及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ルの混合物である未硬化ポリウレタン樹脂(各々の重量比は38.62:29.83:29.83:1.72)を、転動状態にある粒状尿素に数回に分割して添加して、粒状尿素に対して12重量%相当の熱硬化性ポリウレタン樹脂の被膜を、粒状尿素の粒子の表面に形成させた。次いで、粒状尿素に対して0.02重量%相当の界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、花王株式会社製)と0.08重量%相当の珪藻土を添加し、被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料1と記す。)を製造した。
【0020】
参考例2(被覆粒状肥料の調整)
粒状尿素(粒径2.0〜4.0mm)を、熱風発生機を付設した温度制御可能な転動型攪拌装置に仕込み、転動させながら、約70℃に加熱した。
次いで、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、NCO重量百分率31%、住化バイエルウレタン製)、C3−C6のトリオールのプロピレンオキサイド付加物(水酸基価372mgKOH/g)、約90%含量リシノール酸トリグリセリド(水酸基価161mgKOH/g)及び2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ルの混合物である未硬化ポリウレタン樹脂(各々の重量比は38.62:29.83:29.83:1.72)を、転動状態にある粒状尿素に数回に分割して添加して、粒状尿素に対して12重量%相当の熱硬化性ポリウレタン樹脂の被膜を、粒状尿素の粒子の表面に形成させた。(但し、未硬化ポリウレタン樹脂の分割添加の後半において、粒状尿素に対して0.02重量%相当の酸化第二鉄粉末を伴に添加した。)次いで、粒状尿素に対して0.02重量%相当の界面活性剤(東邦化学株式会社製)と0.08重量%相当のクレイを添加し、被覆粒状肥料(以下、被覆粒状肥料2と記す。)を製造した。
【0021】
参考例3(培土の調整)
市販の培土(スミリン農産販売、商品名 スミリン水稲培土)を、乾熱機で乾燥させるか、所定量の水を添加して混合することにより、含水率が7.4重量%の培土(以下、本培土1と記す。)及び含水率が15.0重量%の培土(以下、本培土2と記す。)を調製した。
同様に市販の培土(加西粘土販売、商品名 ほうさく)を用いて、含水率が7.0重量%の培土(以下、比較培土1と記す。)及び含水率が15.0重量%(比較培土2と記す。)の培土を調製した。
尚、本培土1及び2は、2mmの目開きの篩を用いた篩残分が42.5重量%、3.35mmの目開きの篩を用いた篩残分が6.1重量%であった。また、比較培土1及び比較培土2は、2mmの目開きの篩を用いた篩残分が10.0重量%、3.35mmの目開きの篩を用いた篩残分が0.00重量%であった。
【0022】
実施例1
被覆粒状肥料1(見掛け33.2ml)と本培土1(見掛け95ml)とを、ポリエチレン製の袋に入れて膨らませた状態で十分に振り混ぜることにより混合し、培土組成物を調製した。ポリエチレン製の袋より空気を抜いた状態で、該培土組成物を平均温度約15℃の条件で、59日間保管した。
その後、該培土組成物中より被覆粒状肥料1を取り出し、約300粒を蒸留水100mlに入れ、25℃で静置した。43日後に、被覆粒状肥料1を入れた水の尿素濃度を測定した。水中に溶出した尿素の量を計算して、溶出率を算出した。また、乾燥条件下に被覆粒状肥料単独で保存されていた被覆粒状肥料1についても、同様に一定期間後の尿素の溶出率を算出したところ、溶出率は約5重量%であった。本発明の保存方法にて保存していた被覆粒状肥料1の溶出率は、ほぼ同様であった。
【0023】
実施例2
被覆粒状肥料1(見掛け33.2ml)と本培土2(見掛け95ml)とを、ポリエチレン製の袋に入れて膨らませた状態で十分に振り混ぜることにより混合し、培土組成物を調製した。ポリエチレン製の袋より空気を抜いた状態で、該培土組成物を平均温度約15℃の条件で、59日間保管した。
その後、該培土組成物中より被覆粒状肥料1を取り出し、約300粒を蒸留水100mlに入れ、25℃で静置した。43日後に、被覆粒状肥料1を入れた水の尿素濃度を測定した。水中に溶出した尿素の量を計算して、溶出率を算出した。本発明の保存方法にて保存していた被覆粒状肥料1の溶出率は、乾燥条件下に被覆粒状肥料単独で保存されていた被覆粒状肥料1と同様の溶出率であった。
【0024】
比較例1
被覆粒状肥料2(見掛け10.0ml)と比較培土1(見掛け28.5ml)とを、とを、ポリエチレン製の袋に入れて膨らませた状態で十分に振り混ぜることにより混合し、培土組成物を調製した。ポリエチレン製の袋より空気を抜いた状態で、該培土組成物を平均温度約15℃の条件で、59日間保管した。
その後、該培土組成物中より被覆粒状肥料2を取り出し、約300粒を蒸留水100mlに入れ、25℃で静置した。49日後に、被覆粒状肥料2を入れた水の尿素濃度を測定した。水中に溶出した尿素の量を計算して、溶出率を算出した。また、乾燥条件下に被覆粒状肥料単独で保存されていた被覆粒状肥料2についても、同様に一定期間後の尿素の溶出率を算出したところ、溶出率は約8重量%であった。上記の保存方法にて保存していた被覆粒状肥料2の溶出率は、約12重量%であった。
【0025】
比較例1
被覆粒状肥料2(見掛け10.0ml)と比較培土2(見掛け28.5ml)とを、とを、ポリエチレン製の袋に入れて膨らませた状態で十分に振り混ぜることにより混合し、培土組成物を調製した。ポリエチレン製の袋より空気を抜いた状態で、該培土組成物を平均温度約15℃の条件で、59日間保管した。
その後、該培土組成物中より被覆粒状肥料2を取り出し、約300粒を蒸留水100mlに入れ、25℃で静置した。49日後に、被覆粒状肥料2を入れた水の尿素濃度を測定した。水中に溶出した尿素の量を計算して、溶出率を算出した。上記の保存方法にて保存していた被覆粒状肥料2の溶出率は、約21重量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の保存方法によると、作物の種の播種や潅水の作業で忙しい苗床の調製作業時期の前に、時間を空けて、予め被覆粒状肥料と培土との混合作業を行うことができるので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料 10〜35容量部(見掛け)を、
含水率5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分30重量%以上である培土 90〜65容量部と混合して、実質的に0〜20℃の条件で保存することを特徴とする被覆粒状肥料の保存方法。
【請求項2】
保存条件が5〜15℃であることを特徴とする請求項1に記載された保存方法。
【請求項3】
下記の条件で保存することを特徴とする請求項1又は2に記載された保存方法。
保存日数(日)×{保存時の一日の平均温度(℃)−5} ≦ 1000(日℃)
【請求項4】
被覆粒状肥料が、粒状肥料の表面を粒状肥料に対して5〜20重量%の疎水性樹脂で被覆されてなる粒径1〜5mmの被覆粒状肥料である請求項1、2又は3に記載された保存方法。
【請求項5】
疎水性樹脂が熱硬化性ポリウレタン樹脂である請求項4に記載された保存方法。
【請求項6】
粒状肥料の表面を疎水性樹脂で被覆されてなる被覆粒状肥料 10〜35容量部、及び
含水率が5〜20重量%、且つ2mmの目開きの篩を用いた篩残分が30重量%以上である培土 90〜65容量部とからなる培土組成物が、水非透過性の袋に充填されてなる培土包装体。