説明

被覆電線

【課題】 被覆材を巻き付けてあっても段差を生じず、かつ大径化を最小限にとどめた被覆電線を提供する。
【解決手段】 線状の導体1の外周にテープ状の絶縁フィルム2がラップ巻きされており、前記絶縁フィルム2の幅方向断面形状が、表面側に凸な曲線と裏面側に凸な曲線とで構成されており、中央部から両端側へ向けて先細に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材を巻き付けて被覆した被覆電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁のためにエナメルを塗布した電線がある。このような電線は主にモータのコイル巻線などに使用されているが、直角に近い角度で屈曲させると塗布したエナメルがはがれてしまうという問題があった。これに対し、特許文献1の図2に示すように、絶縁テープからなる被覆材を、幅方向に一部重なり合うラップ部を形成しながら螺旋状に巻いた電線があり(このような巻き方をラップ巻きという)、このような電線は、屈曲部においても被覆材がはがれることはない。しかし、被覆材の幅方向断面形状が矩形であるから、ラップ部には段差を生じ、電線の直径が均一でなくなってしまう。そこで特許文献1の発明は、ラップ部以外の部分に絶縁塗料層を形成してラップ部と略同一の外径としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−116311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁塗料層は、屈曲部においてはがれてしまうおそれがあるし、電線全体の直径が太くなるので、とくにコイル巻線に使用する場合には占積率が低くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、被覆材を巻き付けてあっても段差を生じず、かつ大径化を最小限にとどめた被覆電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、線状の導体の外周にテープ状の絶縁フィルムがラップ巻きされており、前記絶縁フィルムの幅方向断面形状が、中央部から両端側へ向けて先細に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、前記絶縁フィルムの幅方向断面形状が、表面側に凸な曲線と裏面側に凸な曲線とで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1の発明によれば、ラップ部においては絶縁フィルムの薄い部分同士が重なることになるから、ラップ部に段差を生じることがなく、電線の直径を均一にできる。また、絶縁フィルムの薄い部分は曲げやすいので、電線の屈曲にも柔軟に対応できる。
【0009】
本発明のうち請求項2の発明によれば、巻き付けた絶縁フィルムの表面(露出する面)および裏面(導体に接する面)のいずれも、角部のない平滑な形状となるので、とくにコイル巻線に使用する場合に、電線同士を密接させて占積率を高くすることができる。また、導体への密着度も高く、確実に絶縁できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の被覆電線の外観図および中心軸断面図。
【図2】絶縁フィルムの断面形状の他の実施例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の被覆電線の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。この被覆電線は、図1(a)に示すように、断面円形の銅線からなる導体1の外周に、テープ状の絶縁フィルム2をラップ巻きしてある。ここでラップ巻きとは、絶縁フィルム2の幅方向に一部重なり合うラップ部3を形成しながら螺旋状に巻く巻き方であり、このようにして巻いた絶縁フィルム2の露出する面を表面、導体1に接する面を裏面とする。そして、図1(b)に示すように、絶縁フィルム2の幅方向断面形状は、表面側に凸な曲線と裏面側に凸な曲線とで構成され、中央部から両端側へ向けて先細に形成されている。よって、ラップ部3においては絶縁フィルム2の薄い部分同士が重なることになる。なお、図面上は、導体1と絶縁フィルム2との間に空隙があるが、実際の絶縁フィルム2はある程度の伸縮性を有するものであり、これに張力をかけながら巻き付けることで、絶縁フィルム2が導体1に密着し、空隙はなくなる。
【0012】
このように構成した被覆電線は、ラップ部3に段差を生じることがなく、電線の直径を均一にできる。また、絶縁フィルム2の薄い部分は曲げやすいので、電線の屈曲にも柔軟に対応できる。さらに、巻き付けた絶縁フィルム2の表面および裏面のいずれも、角部のない平滑な形状となるので、とくにコイル巻線に使用する場合に、電線同士を密接させて占積率を高くすることができる。また、導体1への密着度も高く、確実に絶縁できる。
【0013】
また、本発明の別実施形態として、図2に示すように、絶縁フィルム2の幅方向断面形状が、菱形のもの(図2(a))や、六角形のもの(図2(b))が挙げられる。これらの実施形態においても、ラップ部3においては絶縁フィルム2の薄い部分同士が重なることになり、ラップ部3に段差を生じることがない。なお、図面上は、絶縁フィルム2の表面に角部があるが、実際には、伸縮性を有する絶縁フィルム2を、張力をかけながら巻き付けることで、角部が丸みを帯び、図1(b)に示すような曲線形状に近い形状になると考えられる。
【0014】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、導体は、線状のものであれば、断面形状は矩形であってもよい。また、絶縁フィルムには、従来使用されている種々の材質のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 導体
2 絶縁フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体の外周にテープ状の絶縁フィルムがラップ巻きされており、前記絶縁フィルムの幅方向断面形状が、中央部から両端側へ向けて先細に形成されていることを特徴とする被覆電線。
【請求項2】
前記絶縁フィルムの幅方向断面形状が、表面側に凸な曲線と裏面側に凸な曲線とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の被覆電線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−216223(P2011−216223A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80920(P2010−80920)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】