説明

被覆II

本発明は、埋込み型医療用デバイス用の被覆組成物、医療用デバイスを被覆する方法及び該組成物で被覆されたデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体を本明細書に組み込む2008年10月21日に出願された「被覆II」と題する英国仮出願第0819296.5号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、埋込み型医療用デバイス用の被覆組成物、医療用デバイスを被覆する方法及び該組成物で被覆されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ステントは、西欧諸国における最も多い死因である冠動脈疾患によって、その血管が狭窄している患者において、動脈を開いた状態に保つために動脈に埋め込まれる小さな拡張型金属管である。裸の金属ステントは、時には再び狭窄を来たし(再狭窄)、それらを再開するための再介入処置が必要になる。
【0004】
薬剤溶出ステントは、「被覆された」又は「薬剤添加した」ステントと時には称されるが、再狭窄(再狭小化)の過程を妨げることが知られている薬物(薬剤)を含有するポリマーが被覆された通常の裸の金属ステントである。再狭窄は、多くの原因があり、それは、非常に複雑な過程であり、その予防のための解決策は同様に複雑である。しかし、これまで収集されたデータにおいて、薬剤溶出ステントは、再狭窄を20〜30%の範囲から1桁まで低減するという非常に好ましい結果をおさめている。
【0005】
ステントの埋込み後、アスピリンに加えて、患者は、血液が新しいデバイスと反応して新しく拡張された動脈を肥厚化及び閉塞(血栓症)するのを防ぐために、ステント埋込み術後6カ月以上、クロピドグレル又はチクロピジン(商標名Plavix及びTiclid)などの抗凝固薬又は血小板凝集阻害薬を摂取しなければならない。理想的には、内皮細胞の平滑な薄い層(血管の内層)が、この期間にステント上に成長し、デバイスが動脈中に組み込まれ、凝固の傾向が低減される。
【0006】
薬剤溶出ステントの臨床的及び商業的成功にも関わらず、最近の証拠は、それらは、症例の50%超において、急性心臓発作又は死のいずれかをもたらす、より高い割合の後期血栓症、ステント端部における血栓形成をもたらすことを示唆している。多くの医師は、血栓形成は、ステントを被覆している細胞毒性薬によって、又は薬剤を送達するために使用されるいくつかの生体安定性ポリマーによって引き起こされる血管の治癒の遅延によるものであると考えている。これらの懸念に反応して、後期ステント血栓症があまり問題視されない場合には、裸の金属ステントを使用することにしている医師もいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近、業界は、第1世代の薬剤溶出ステントに使用されている生体安定性ポリマー被覆を、生体吸収生ポリマーで置き換えることに取り組んでいる。薬剤溶出ステントに使用されている現在の生体吸収性被覆の大部分は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)又はこれら2種のコポリマーである(ポリ(ラクチド-co-グリコリド))に基づいている。これらのポリマーで薬剤溶出プロファイルを制御することは難しく、1つの問題は、薬剤の高い初期放出をもたらす薬剤の「バースト放出(burst release)」及びこれに続く緩慢な放出であるが、求められるのは、より安定な持続放出である。
【0008】
ステント上の被覆についての別の問題は、金属表面へのポリマーの接着である。大部分のポリマー被覆は、通常の金属表面に強く接着することはなく、被覆は、ステントが血管の中に配置された時に離層することがある。
【0009】
結果として、現行の安定性(非吸収性)被覆の代わりに生体吸収性被覆を有する新世代の薬剤溶出ステントに対する要求が存在する。
【0010】
このように、ステントは、被覆からの薬剤のそのペイロードを送達することができるが、薬剤が送達された後、ステントが、裸の金属ステントに有効に戻り、後期ステント血栓症がより低くなるように、被覆は再吸収する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の被覆組成物は、薬剤溶出生体吸収性被覆である。この被覆の組成物は、薬剤の溶出プロファイルの制御を可能にし、同様に金属表面への被覆の強い接着及び損傷に対する耐性を可能にする。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、埋込み型医療用デバイスのための生体吸収性被覆組成物が提供され、ここで、該組成物は、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトン並びに少なくとも1種の薬剤及び/又は生物活性剤のコポリマーを含む。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物で被覆された埋込み型医療用デバイスが提供される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、
i.埋込み型医療用デバイスを提供する工程、
ii.本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物の被覆を上記デバイスの表面の少なくとも一部に塗布する工程
を含む、生体吸収性被覆組成物を埋込み型医療用デバイスに塗布する方法が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物で被覆されたデバイスの使用方法が提供され、ここで、該方法は、ヒト以外の動物体又は人体に該デバイスを埋め込む工程を含む。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、薬剤を担持するビヒクルが提供され、ここで、該ビヒクルは、本発明の組成物として定義される。
【0017】
本発明の一層さらなる態様によれば、添付の実施例及び図面を参照して実質的に本明細書に記載されているように、生体吸収性被覆組成物、埋込み型医療インプラント、薬剤を担持するためのビヒクル及びこれらを製造する方法及びこれらの使用方法が提供される。
【0018】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の30〜45重量%の間のグリコリドを含む。
【0019】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の5〜15重量%の間のグリコリドを含む。
【0020】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の約10重量%のグリコリドを含む。
【0021】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の約10〜20重量%の間のε-カプロラクトンを含む。
【0022】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の約12.5重量%のε-カプロラクトンを含む。
【0023】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物のポリマー成分の約10重量%の間のグリコリド及び上記組成物のポリマー成分の約12.5重量%のε-カプロラクトンを含む。
【0024】
本発明の実施形態において、上記ラクチドは、D,L-ラクチドである。
【0025】
本発明の実施形態において、上記組成物は、コポリマーのブレンドを含む。例えば、上記ブレンドの第2のコポリマーも、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマーである。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態において、生体吸収性被覆組成物は、47.5%のD,L-ラクチド、40%のグリコリド及び12.5%のε-カプロラクトンを含む第1のコポリマー並びに57.5%のD,L-ラクチド、30%のグリコリド及び12.5%のε-カプロラクトンを含む第2のコポリマーのブレンドを含む。
【0027】
「生物活性剤」又は「薬剤」は、本明細書で、疾患の治療、治癒、予防、若しくは診断に使用される又は肉体的若しくは精神的健康を別な方法で強化するために使用される任意の生物学的及び/又は化学的物質として定義される。本発明の被覆組成物への組み込みに適する薬剤タイプの例には、抗炎症剤、細胞毒性剤、血管形成剤、骨形成剤、免疫抑制剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗菌剤又は抗生剤が含まれる。
【0028】
好適な抗血小板剤には、Bristol Myers- SquibbによってPlavix(商標)として販売されているクロピドグレル及びSanofi-AventisによってTiclid(商標)として販売されているチクロピジンが含まれる。好適な抗凝固剤にはヘパリンが含まれる。
【0029】
好適な免疫抑制剤には、A.G Scientific Inc.から市販されているSirolimusとして知られてもいるラパマイシンが含まれる。
【0030】
好適な抗生剤には、ゲンタマイシン及びバンコマイシンが含まれる。
【0031】
本発明の実施形態において、上記組成物は、上記組成物の5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%又は50重量%のラパマイシンを含む。
【0032】
本発明の1つの特定の実施形態において、上記組成物は、上記組成物の約20〜30重量%の間のラパマイシンを含む。
【0033】
本発明の1つのさらなる特定の実施形態において、上記組成物は、上記組成物の約25重量%のラパマイシンを含む。
【0034】
生物活性剤は、生体組織への効果、生体組織との相互作用、又は生体組織からの反応を有する任意の薬剤として本明細書で定義される。例えば、抗体又は細胞(例えば、幹細胞)。
【0035】
上記組成物は、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、クロトン酸、4-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、ウンデシレン酸、ペトロセレン酸、オレイン酸、エルカ酸、2,4-ヘキサジエン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、ヒドロケイ皮酸、4-イソプロピル安息香酸、イブプロフェン、リシノール酸、アジピン酸、スベリン酸、フタル酸、2-ブロモラウリン酸、2,4-ヒドロキシドデカン酸、酪酸、モノブチリン、2-ヘキシルデカン酸、2-ブチルオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチル吉草酸、3-メチル吉草酸、4-メチル吉草酸、2-エチル酪酸、トランス-ベータ-ヒドロムコン酸、イソ吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、4-ペンテン酸無水物、オレイン酸無水物、リノール酸無水物、安息香酸無水物、ポリ(アゼライン酸無水物)、2-オクテン-1-イルコハク酸無水物及びフタル酸無水物からなる群から選択される酸又はその誘導体である少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0036】
適切に、上記組成物は、上記組成物の10重量%を超えない、一般的に5重量%を超えない、さらにより一般的に2重量%を超えない量の添加剤を含有する。
【0037】
選択される添加剤の量は、望まれる分解の速度によっても決まる。インビボ分解は、第一に、ポリマー鎖の加水分解による切断によって起こり、実質的にモノマーだけが残るまで、徐々に小さくなる分子量の単位の形成がもたらされる。その後、モノマーは代謝され、体内に吸収される。質量損失が起こるのは、やっと分解の最終段階においてである。
【0038】
本発明における使用に特に適する添加剤は、ラウリン酸であることが見出されている。これは、酸自体として又は、必要に応じて誘導体、例えば無水物として使用することができる。
【0039】
有利には、組成物は、組成物の10重量%を超えない量で、より一般的には5重量%を超えない量で、さらにより一般的には2重量%を超えない量でラウリン酸又はその誘導体を含有する。
【0040】
本発明の生体吸収性被覆組成物は、埋込み型医療用デバイスに直接塗布することができる。しかし、大部分のポリマー被覆は、通常の金属表面に強く接着せず、被覆は離層する傾向を有する。本発明の実施形態において、本発明の生体吸収性被覆は、デバイスの表面に化学的及び/又は物理的に結合されている。
【0041】
本発明の実施形態において、金属表面の「官能化」は、ポリマー被覆の医療用デバイスの表面に対する接着を改善し、離層の危険性を最小化する。この官能化は、金属表面及びポリマー被覆の間の「化学架橋」を提供する。
【0042】
官能化プロセスの第1段階において、金属表面の固有の官能基とよく反応する化学物質が選択される。上記化学物質は、好ましくは、分子の残りを自由に他の種と反応できるようにしたまま、金属表面上の酸化物、水酸化物、エポキシド又は任意の他の表面酸化物と反応して強い結合を形成する。
【0043】
第1の反応工程における使用に適する化学物質には、式(RO)3Si(R1X) (式中、Rは、メチル又はエチルを表し、R1は、C2〜C10アルキル(ここで、1個若しくは複数のメチレン基は、-NH-若しくは-O-で置換されていてよい)、C2〜C10シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、C2〜C10アラルキル又は単環式若しくは二環式アリールを表し、Xは、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸又は酸無水物を表す)のアルコキシシランが含まれる。好ましくは、R1は、C2〜C10アルキル(ここで、1個若しくは複数のメチレン基は、-NH-によって場合によって置換されている)を表し、Xは、-NH2を表し、好適な下塗り剤の一例は、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンである。
【0044】
第2段階において、第1の化学物質の官能基/反応基と容易に反応し、ポリマー中の酸素含有基、例えば、ヒドロキシル、メトキシ及びエトキシ基と反応し得る官能基も有する別の化学物質が選択される。したがって、強い結合が、2つの分子間に形成され、ポリマーは、官能化された表面に結合している。このように、強い化学結合が、官能化された表面及びポリマーの間で得られ、ポリマーの金属表面への接着が改善される。1つの末端にアルコキシシリル基及び他の末端にイソシアネートを有する任意の化学物質が、第2の反応工程における使用に適する。適切な化学物質の一例は、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートである。
【0045】
図1及び2は、官能化プロセスを図解している。
【0046】
本発明の実施形態において、本発明の第1の態様の生体吸収性被覆組成物は、第2の官能化工程からのトリエトキシ基と反応する-OH基を含有する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態において、適切に被覆組成物を物理的に「結合(tie)」する中間被覆組成物が、デバイスの表面の少なくとも一部及び本発明の第1の態様の生体吸収性被覆組成物の間に提供される。この中間被覆組成物は、「プライマーコート」又は「タイコート(tie coat)」と称することができる。この組成物は、本発明の第1の態様の生体吸収性被覆組成物のポリマー成分と類似又は同一の化学組成のより低分子量のポリマーを含む。「タイコート」のポリマー組成物は、本発明の第1の態様の生体吸収性被覆組成物のポリマー成分と強い接着を形成し得る任意のポリマーであり得る。
【0048】
本発明の実施形態において、上記プライマーコートは、ラクチド及びグリコリドのコポリマー、例えば、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(特にここで、D,L-ラクチドのグリコリドとの比は、50:50である)を含み、このコポリマーの分子量は、約5〜15kの間である。
【0049】
上記プライマーコートは、デバイスの表面の少なくとも一部に直接塗布することができ、次いで、本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物が、プライマーコートの少なくとも一部を覆うように塗布される。
【0050】
本発明の代わりの実施形態において、デバイスの表面は、上記に記載のように化学的に官能化することができ、プライマーコートが、この官能化された表面に塗布され、次いで、本発明の第1の態様の生体吸収性被覆組成物が、プライマーコートの少なくとも一部を覆うように塗布される。薬剤の溶出プロファイルは、生物活性/薬剤含有層(即ち、本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物)を全体的又は部分的に覆う薬剤を含まないトップコートの使用によって、さらに制御することができる。この組成物は、本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物と類似又は同一の化学組成のポリマーを含むことができる。例えば、上記トップコートは、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマーであってよく、又はD,L-ラクチド及びグリコリドのコポリマーであってよい。
【0051】
上記トップコートは、総コーティング重量の約1%〜50%、又は約1%〜45%、又は約1%〜40%、又は約1%〜35%、又は約1%〜30%、又は約1%〜25%、又は約1%〜20%、又は約1%〜15%、又は約1%〜10%、又は約1%〜5%、又は約5%〜10%、又は約5%〜15%、又は約5%〜20%、又は約10%〜20%、又は約15%〜20%を構成し得る(例えば、(i)本発明の第1の態様による生体吸収被覆組成物+トップコート又は(ii)プライマーコート+本発明の第1の態様による生体吸収性被覆組成物+トップコート)。
【0052】
本発明のさらなる実施形態において、ポリマー被覆の全てのポリマー成分は、それら自体、例えば、上記に概略が記載された比で、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマーを含む2種以上のポリマーのブレンドを含むことができる。
【0053】
この被覆技術が有利であり得る医療用デバイスには、それだけには限らないが、ステント、整形外科インプラント、歯科インプラント及び顎顔面インプラントが含まれる。
【0054】
本発明の薬剤溶出生体吸収性被覆を塗布し得るステントの例には、冠状動脈ステント、頸動脈ステント、大動脈ステント、腎臓ステント及び静脈ステントが含まれる。ステントの他の例には、末梢ステントが含まれる。
【0055】
薬剤溶出生体吸収被覆を塗布し得る整形外科インプラントの例には、再建及び傷害用製品、例えば、人工股関節置換手術の部品、膝代替手術、骨折プレート、スクリュー、ピン、外部固定プレート、髄内釘、干渉スクリュー、縫合アンカーの部品が含まれる。
【0056】
本発明の薬剤溶出生体吸収被覆を塗布し得る顎顔面インプラントには、プレート、スクリュー及びメッシュが含まれる。
【0057】
本発明の適用性のさらなる分野は、以下に提供される詳細な説明から明らかになろう。詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、もっぱら例示の目的であり、本発明の範囲を制限するよう意図されていないことは理解されるべきである。
【0058】
添付図面は、本明細書に組み込まれ本明細書の部分を構成しているが、本発明の実施形態を例示し、記載された説明と共に本発明の原理、特性、及び特徴を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】例示的な化学反応を示す図である。
【図2】表面官能化の概略図である。
【図3】37℃においてPLGCポリマー(PLGC1、4、7、10、18)からPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図4】37℃においてPLGCポリマー(PLGC12、13、14、15)からPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図5】37℃において薬剤を含まないPLGAトップコート(総被覆重量の10%)を有するPLGCポリマーからPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図6】変化した厚みの60/40 (PLGC4/8)薬剤を含まないトップコートを有する60/40 (PLGC4/8)ポリマーから放出されたラパマイシンの百分率である。
【図7】37℃においてトップコートを有するブレンドされたPLGCポリマーからPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図8】37℃においてPLGC4トップコートを有するブレンドされたPLGCポリマー(PLGC4/ PLGC8)からPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図9】37℃においてラウリン酸を含有するブレンドされたPLGCポリマーからPBS中に放出されたラパマイシンの百分率である。
【図10】官能化された金属表面及び官能化されていない金属表面に対する生体吸収性ポリマーの接着強度である。
【図11】ポリマー被覆ステントを、適切な大きさの市販のPTCAカテーテルのバルーン部分に置き、手でクリンピングした。カテーテルをPBS溶液中の曲がりくねった経路に供給し、ヒトの動脈におけるステント及びカテーテルの通過を模倣した。
【図12】37℃におけるPBS中のグリコリドが被覆のポリマー組成物の約10%を構成するPLGC被覆ステントからのインビトロでのラパマイシン放出である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0060】
重合
i)原料
DL-ラクチド(Purac)
グリコリド(Purac)
ε-カプロラクトン(Aldrich)
塩化錫(II)二水和物(Aldrich)
ジエチレングリコール(Aldrich)
ジクロロメタン(Fisher)
【0061】
ii)開始剤-触媒系
塩化錫(II)二水和物(0.5g)をジエチレングリコール(1.46g)に添加し、徐々に加熱して塩化錫を溶解した。
【0062】
iii)ポリマー生成
D,L-ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンを、Wheatonバイアル中に計り入れ、40gの総重量であった。ジエチレングリコール中の10マイクロリットルの塩化錫を、100マイクロリットルのジエチレングリコールと一緒に各バイアルに添加した。これらのバイアルを150℃に設定した油浴中に置き、磁力回転子(magnetic follower)が回らなくなるほど粘性が大きくなるまで撹拌し、その後、バイアルを150℃における乾燥器中に置き、約16時間放置した。バイアルからポリマーを取り出すために、ジクロロメタンを添加し、ポリマーが溶解されるまでバイアルを回転させた。ポリマー溶液をシリコン処理紙(siliconised paper)上に注ぎ、ジクロロメタンを蒸発させた。残りのモノマーを除去するため、ポリマーを真空下で溶融してモノマーを沸騰させて除いた。
【0063】
ポリマーの特徴づけ
(i)分子量
クロロホルム中の従来のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって、分子量分布を求めた。カラムの較正を狭域分散されたポリスチレン標準を使用して達成した。
【0064】
流量標識としての0.1%体積/体積のトルエンを含むGPCグレードのクロロホルム中に、サンプルを溶解した。
カラム: PLgel MIXED-D 300×7.5mm
移動相: クロロホルム(GPCグレード)
流量: 1mL/分
カラム温度: 30℃
サンプル濃度: 約2mg/mL
注入量: 100μL
【0065】
結果はTable 1(表1)に示されている。
【0066】
ii)ガラス転移温度
ポリマーのガラス転移温度を、Perkin Elmer DSC7を使用する示差走査熱量測定法によって測定した。加熱速度は10℃/分であった。結果はTable 1(表1)に示されている。
【0067】
ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンの種々の比が、Table 1(表1)に示されている。
【0068】
【表1】

【実施例2】
【0069】
i)原料
炭酸水素ナトリウム: Sigma Aldrich
N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(TMSPEA): Sigma Aldrich
氷酢酸: Sigma Aldrich
3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(TESPI): Sigma Aldrich
ポリ(D, L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA1) 50:50、Mw 5〜15k: Sigma Aldrich
ポリ(D, L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA2) 50:50、Mw 10k: Durect
ラウリン酸(LA): Sigma Aldrich
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS): Sigma Aldrich
ラパマイシン: LC laboratories
リン酸緩衝生理食塩水(PBS): Sigma Aldrich
溶媒: Sigma Aldrich
【0070】
ii)ポリマー組成物によるステントの被覆
段階1: 清浄化
市販されているステンレス鋼製ステントを、水性炭酸水素ナトリウムの7.5%重量/重量溶液中における15分間の超音波処理、脱イオン水中におけるすすぎ、2-プロパノール中における15分間の超音波処理及び脱イオン水中における15分間の超音波処理によって清浄化した。次いで、サンプルを100℃において16時間乾燥し、次いで50℃において30分間乾燥した。
【0071】
段階2: 官能化
トルエン中の2.5ml氷酢酸溶液(1.0%重量/重量、0.4mmol)を200mlトルエンに添加し、次いで1.6 mlのTMSPEAを添加し混合した。サンプルを50℃の乾燥器から取り出し、上記溶液に5分間浸した。サンプルを取り出し50℃に20時間保った。
【0072】
サンプルを、トルエン、メタノール、脱イオン水、メタノール及び脱イオン水の各々において15分間逐次的に交代させることによって一連の溶媒中ですすいだ。最終的に、サンプルを、メタノール中で5分間すすぎ、次いで50℃において2時間乾燥した。
【0073】
無水トルエンを、窒素でパージしたメスシリンダー中に窒素下で添加した。トルエン中の4%体積/体積溶液を得るのに十分なTESPIを添加した。(50℃において15分間乾燥し使用前2分間冷却した)サンプルを、保持具を用いて溶液に浸し窒素下で15分間回転した。次いで、サンプルを窒素下で無水トルエン中においてすすぎ、真空下で16時間乾燥した。
【0074】
段階3: プライマーコート塗布
ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop CoaterでCHCl3中の0.5%重量/重量のPLGA1を含有するプライマー溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.075ml/分の流速、0.8Wの超音波出力、2回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。プライマー処理後、ステントを100℃で16時間保った。
【0075】
段階4: 薬剤含有生体吸収性被覆の調製
(固体ポリマーの重量で)25%のラパマイシンを含むCHCl3中にTable 1(表1)に記載されたポリマーを溶解することによって、溶液を調製した。
【0076】
段階5: 被覆
5分間冷却後、ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop Coaterでポリマー/薬剤(75/25)のCHCl3中の0.5%重量/重量溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.09ml/分の流速、1.0Wの超音波出力、16回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。被覆後、ステントを真空下で40℃において16時間乾燥した。
【0077】
段階6: 溶出試験
ステントを37℃におけるリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)中に放ち、溶出をUV/vis分光分析でモニターした。新鮮な緩衝溶液を各々の読み取り後に添加し、279nmにおける累積吸光度を記録した。
【0078】
結果
図3は、ラパマイシンの放出に対する、ポリマー中のε-カプロラクトンの割合を変えることの効果を示しており、ε-カプロラクトンの率を増加することが、ラパマイシンが放出される速度を増加する。
【0079】
図4は、ラパマイシンの放出に対する、固定量のε-カプロラクトン(12.5%)でD,L-ラクチド:グリコリドの比を変えることの効果を示しており、グリコリドの量を増加することが、ラパマイシンが放出される速度を増加する。
【実施例3】
【0080】
市販のステンレス綱製ステントを、実施例2の段階1〜5と同じように、官能化し、プライマーコートを塗布し、25%ラパマイシンを含有するポリマーPLGC1で覆う。次いで、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) 50:50 (PLGA2)の「薬剤を含まないトップコート」を次のように塗布した。
【0081】
ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop CoaterでPLGA2のCHCl3中の0.5%重量/重量の溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.09ml/分の流速、1.0W超音波出力、2回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。被覆後、ステントを真空下で40℃において16時間乾燥した。トップコートは、総被覆重量の10%を構成した。
【0082】
ステントからのラパマイシンの溶出は、実施例2の段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0083】
結果は、図5に示されているが、薬剤を含まないトップコートの使用は、被覆からのラパマイシンの放出を制御し遅くすることができることを示している。
【実施例4】
【0084】
ポリマーPLGC4及びPLGC8を、60%のPLGC4: 40%のPLGC8 (60/40 PLGC4/8)の割合でCHCl3中において一緒にブレンドした。このブレンドに、25%のラパマイシン(ポリマーの乾燥重量に基づいて、即ち、75%ポリマー: 25%ラパマイシン)を添加した。
【0085】
実施例2の段階1〜5と同じように、市販のステンレス鋼製ステントを官能化し、25%のラパマイシンを含有するポリマー60/40 PLGC4/8をプライマー処理し被覆した。
【0086】
60/40 PLGC4/8の薬剤を含まないトップコートを、実施例3に記載されたものと同じように塗布した。トップコートは、総被覆重量のゼロ、10又は20%を構成した。
【0087】
ステントからのラパマイシンの溶出は、実施例2の段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0088】
結果は、図6に示されているが、いかに異なる重量のトップコートが、薬剤放出をさらに制御することができるかを示し、より大きな被覆重量がラパマイシンの溶出の速度を低減することを示している。
【実施例5】
【0089】
ポリマーPLGC4及びPLGC8を、PLGC4: PLGC8の比を次の通り、即ち、100:0、80:20、70:30、60:40、50:50に変えながらCHCl3中で一緒にブレンドした。これらのブレンドに、25%のラパマイシン(ポリマーの乾燥重量に基づいて、即ち、75%ポリマー:25%ラパマイシン)を添加した。
【0090】
実施例2の段階1〜5と同じように、市販のステンレス鋼製ステントを官能化し、25%のラパマイシンを含有するポリマーブレンドをプライマー処理し被覆した。
【0091】
それらの各々のメインコートと同じ比でブレンドされたPLGC4及びPLGC8の薬剤を含まないトップコートを、実施例3に記載されたものと同じように塗布した。トップコートは、総被覆重量の10%を構成した。
【0092】
ステントからのラパマイシンの溶出を、実施例2の段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0093】
結果は、図7に示されているが、いかにポリマーのブレンディングは、薬剤の溶出プロファイルを制御するために使用することができるかを示している。特に、この場合、ブレンド中のPLGC4の比を増加することは、ラパマイシンの溶出の速度を増加する。
【実施例6】
【0094】
ポリマーPLGC4及びPLGC8を、PLGC4: PLGC8の比を次の通り、即ち、90:0、80:20に変えながらCHCl3中で一緒にブレンドした。これらのブレンドに、25%のラパマイシン(ポリマーの乾燥重量に基づいて、即ち、75%ポリマー:25%ラパマイシン)を添加した。
【0095】
実施例2の段階1〜5と同じように、市販のステンレス鋼製ステントを官能化し、25%のラパマイシンを含有するポリマーブレンドをプライマー処理し被覆した。
【0096】
PLGC4の薬剤を含まないトップコートを、実施例3に記載されたものと同じように塗布した。トップコートは総被覆重量の10%を構成した。
【0097】
ステントからのラパマイシンの溶出を、実施例2の段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0098】
結果は、図8に示されているが、いかに薬剤放出はポリマーのブレンディングによって制御され得るかを再び示している。
【実施例7】
【0099】
ポリマーPLGC1及びPLGC4を、25%のラパマイシン及び0、0.75、1.5又は3%のいずれかのラウリン酸(LA)とブレンドして以下の組成物を生成した。
【0100】
【表2】

【0101】
実施例2の段階1〜5と同じように、市販のステンレス鋼製ステントを官能化し、上記のポリマーブレンドをプライマー処理し被覆した。
【0102】
ステントからのラパマイシンの溶出を、実施例2の段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0103】
結果は、図9に示されているが、ラウリン酸は、分解促進剤としてポリマー被覆に添加することができるが、ラパマイシンの放出の速度に最低限の影響を及ぼすことを示している。
【実施例8】
【0104】
段階1: 清浄化
ステンレス鋼製サンプル(50mm×50mm×0.25mm焼き鈍し仕上げ)を、水性炭酸水素ナトリウムの7.5%重量/重量溶液中の15分間の超音波処理、脱イオン水中のすすぎ、2-プロパノール中の15分間の超音波処理及び脱イオン水中の15分間の超音波処理によって清浄化した。次いで、サンプルを100℃で16時間乾燥し、次いで50℃で30分間乾燥した。
【0105】
段階2: 官能化
トルエン中の2.5 ml氷酢酸溶液(1.0%重量/重量、0.4mmol)を、200mlのトルエンに添加し、次いで1.6 mlのTMSPEAを添加し混合した。サンプルを50℃の乾燥器から取り出し、上記溶液に5分間浸した。サンプルを取り出し50℃で20時間保った。
【0106】
サンプルを、トルエン、メタノール、脱イオン水、メタノール及び脱イオン水の各々において15分間逐次的に交代させることによって一連の溶媒中ですすいだ。最終的に、サンプルをメタノール中で5分間すすぎ、次いで50℃で2時間乾燥した。
【0107】
無水トルエンを、窒素下で、窒素でパージしたメスシリンダー中に添加した。トルエン中の4%体積/体積溶液を得るのに十分なTESPIを添加した。(50℃で15分間乾燥し使用前に2分間冷却した)サンプルを、保持具を用いて溶液に浸し窒素下で15分間回転した。次いで、サンプルを窒素下で無水トルエン中においてすすぎ、真空下で16時間乾燥した。
【0108】
比較のための官能化されていない対照サンプルを作るために、この段階をサンプルの半数において省略した。
【0109】
段階3: プライマーコート塗布
サンプルを約45°の角度に置き、CHCl3中の0.5%重量/重量のPLGA1溶液でプライマー処理した。約15cmの距離から10psiで作動する手持ち式のスプレーガンを使用してプライマー処理を実施した。cm2当たり50及び100μgの間のプライマーコート重量を得るために、移動の速度に応じて、4及び8回の間の通過が必要であった。次いで、サンプルを100℃で16時間硬化した。
【0110】
段階4: 被覆
100℃での硬化の後、サンプルを5分間冷却し、次いで、約45°の角度に置き、CHCl3中の0.5%重量/重量のPLGC4溶液を被覆した。約15cmの距離から、10psiで作動する手持ち式スプレーガンを使用して、被覆を実施した。cm2当たり600〜700μgの被覆重量を得るために、移動の速度に応じて、30及び60回の間の通過が必要であった。次いで、サンプルを真空下で50℃において16時間乾燥した。
【0111】
段階5: 試験
Elcometer 110 PATTI (Pneumatic Adhesion Tensile Test Instrument)を使用して、接着試験を実施した。試験の前に、操作中に動くのを防ぐために、全てのサンプルを固定表面に接着した。アクリルベースの強力接着剤を使用して、アルミニウムプルスタブ(pull stub)を試験表面に接着する。接着剤をスタブに塗布し、次いでサンプル上に直ちに置く。スタブを静かに保つよう注意しつつ、同時にスタブに圧力を維持しながら、活性剤を界面上に直接噴霧する。プリングピストン(pulling piston)を取り付け、それが試験表面から引き離されるまで、加圧制御モジュールによってプルスタブに漸増する圧力が適用される。制御モジュールは、到達される最大圧力(psig)を記録し、この最大圧力はMPa又は接着強さ(POTS)に変換され得る。
【0112】
結果は、図10に示されているが、表面を官能化することは、PLGCのプレートに対する接着を著しく改善することを示している。
【実施例9】
【0113】
清浄化
市販のステンレス鋼製ステントを、水性炭酸水素ナトリウムの7.5%重量/重量溶液中の15分間の超音波処理、脱イオン水中のすすぎ、2-プロパノール中の15分間の超音波処理及び脱イオン水中の15分間の超音波処理によって清浄化した。次いで、ステントを100℃で16時間乾燥し、次いで50℃で30分間乾燥した。
【0114】
官能化
トルエン中の2.5ml氷酢酸溶液(1.0%重量/重量、0.4mmol)を、200mlのトルエンに添加し、次いで1.6 mlのTMSPEAを添加し混合した。ステントを50℃の乾燥器から取り出し、上記溶液に5分間浸した。ステントを取り出し50℃で20時間保った。
【0115】
ステントを、トルエン、メタノール、脱イオン水、メタノール及び脱イオン水の各々において15分間逐次的に交代させることによって一連の溶媒中ですすいだ。最終的に、ステントをメタノール中で5分間すすぎ、次いで50℃において2時間乾燥した。
【0116】
無水トルエンを、窒素下で、窒素でパージしたメスシリンダー中に添加した。トルエン中の4%体積/体積溶液を得るのに十分なTESPIを添加した。(50℃で15分間乾燥し使用前に2分間冷却した)ステントを、保持具を用いて溶液に浸し窒素下で15分間回転した。次いで、ステントを窒素下で無水トルエン中においてすすぎ、真空下で16時間乾燥した。
【0117】
PLGA結合
ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop CoaterでCHCl3中の0.5%重量/重量のPLGA1を含有するプライマー溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.075ml/分の流速、0.8Wの超音波出力、4回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。プライマー処理後、ステントを100℃で16時間保った。
【0118】
被覆
5分間冷却後、ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop CoaterでPLGC4、PLGC8及びラパマイシン(45:30:25)のCHCl3中の0.5%重量/重量溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.09ml/分の流速、1.0Wの超音波出力、16回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。被覆の後、ステントを40℃で真空下で16時間保った。
【0119】
トップコート
5分間冷却後、ステントをマンドレルに取り付け、Sonotek MediCoat Benchtop CoaterでPLGC4及びPLGC8 (60:40)のCHCl3中の0.5%重量/重量溶液を被覆した。使用したパラメーターは、0.09ml/分の流速、1.0Wの超音波出力、2回通過、40rpmの回転、0.13cm/sの水平移動及びステントからスプレーヘッドまで25mmであった。被覆の後、ステントを真空下で40℃において16時間乾燥した。
【0120】
トラッキング及び展開
ステントを適切な大きさの市販のPTCAカテーテルのバルーン部分に置き、手でクリンピングした。カテーテルを37℃におけるPBS溶液中の曲がりくねった経路に供給し、ヒトの動脈におけるステント及びカテーテルの通過を模倣した。これを5度繰り返した。最終的に、ステントをデバイスの公称圧力において拡張した(10バール)。拡張されたステントを脱イオン水中ですすぎ、乾燥し、光学顕微鏡下で観察した。ステントストラットの拡張ポイントを含めて、被覆のピッティング、割れ又は離層は全く観察されなかった(図11参照)。
【実施例10】
【0121】
以下に示されたラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンの比を使用して、実施例1に記載されたのと同じ方法に従って、ポリマーを調製した。
【0122】
【表3】

【0123】
実施例2の段階1〜3に記載されたように、ステントを清浄化し、官能化し、PLGA1のプライマーコートを塗布した。次いで、実施例2、段階4及び5に記載のように、ステントに、25%のラパマイシンを含有するポリマーPLGC21、PLGC22及びPLGC23を被覆した。ステントからのラパマイシンの溶出を、実施例2、段階6に記載されたものと同じように試験した。
【0124】
結果は、図12に示されているが、分解の開始によって引き起こされる放出の上昇は、遅らせることができ、薬剤は、より低いグリコリド含有量で、より長い時間尺度にわたって放出され得ることを示している。さらに一定のグリコリド含有量について、薬剤放出は、カプロラクトン含有量を低減することによって延長され得る。本実施例において、薬剤放出は、約1000時間(42日)に延長され得る。
【0125】
全体的に、記載されたシステムは、適度に一定の薬剤放出速度で、約100及び1000時間の間で薬剤放出プロファイルを調整するよう設計することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み型医療用デバイス用の生体吸収性被覆組成物であって、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマー並びに少なくとも1種の薬剤及び/又は生物活性剤を含む生体吸収性被覆組成物。
【請求項2】
組成物のポリマー成分の約30重量%から約45重量%の間のグリコリドを含む、請求項1に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項3】
組成物のポリマー成分の約5重量%から約15重量%の間のグリコリドを含む、請求項1に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項4】
組成物のポリマー成分の約10重量%のグリコリドを含む、請求項3に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項5】
組成物のポリマー成分の約10重量%及び約20重量%の間のε-カプロラクトンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項6】
組成物のポリマー成分の約12.5重量%のε-カプロラクトンを含む、請求項5に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項7】
組成物のポリマー成分の約10重量%のグリコリド及び組成物のポリマー成分の約12.5重量%のε-カプロラクトンを含む、請求項4から6のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項8】
前記ラクチドがD,L-ラクチドである、請求項1から7のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項9】
コポリマーのブレンドを含む、請求項1から8のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項10】
前記ブレンドの第2のコポリマーが、ラクチド、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマーである、請求項9に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項11】
前記ブレンドが、47.5%のD,L-ラクチド、40%のグリコリド及び12.5%のε-カプロラクトンを含む第1のコポリマー並びに57.5%のD,L-ラクチド、30%のグリコリド及び12.5%のε-カプロラクトンを含む第2のコポリマーを含む、請求項10に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の薬剤及び/又は生物活性剤が、免疫抑制剤である、請求項1から11のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項13】
前記免疫抑制剤がラパマイシンである、請求項12に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の薬剤及び/又は生物活性剤が抗生剤である、請求項1から13のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項15】
前記抗生剤がバンコマイシンである、請求項14に記載の生体吸収性被覆組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆組成物で被覆された埋込み型医療用デバイス。
【請求項17】
生体吸収性被覆組成物が、前記埋込み型医療用デバイスの表面の少なくとも一部に化学的及び/又は物理的に結合している、請求項16に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項18】
プライマーコートが、前記デバイスの表面に近接して提供され、請求項1から14のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆ポリマー組成物が、前記プライマーコートを覆う、請求項17に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項19】
前記プライマーコートの分子量が、請求項1から15のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆ポリマー組成物の分子量を下回る、請求項18に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項20】
前記プライマーコートが、ラクチド及びグリコリドのコポリマーを含む、請求項18又は19に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項21】
前記コポリマーが、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である、請求項20に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項22】
D,L-ラクチドのグリコリドに対する比が、50:50である、請求項21に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項23】
前記コポリマーの分子量が、約5〜15kの間である、請求項22に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項24】
請求項1から15のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆組成物が、前記組成物のポリマー成分の約10重量%のグリコリド及び前記組成物のポリマー成分の約12.5重量%のε-カプロラクトンを含み、前記プライマーコートが、D,L-ラクチド:グリコリドの50:50の比のポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含み、約5〜15kの間の分子量を有する、請求項23に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項25】
トップコートが、前記生体吸収性被覆組成物に塗布される、請求項16から24のいずれかに記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項26】
前記トップコートが、少なくとも1種の薬剤及び/又は生物活性剤を含まない、請求項25に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項27】
前記トップコートが、ラクチド及びグリコリドのコポリマーを含む、請求項25又は26に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項28】
前記コポリマーがポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である、請求項27に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項29】
D,L-ラクチドのグリコリドに対する比が50:50である、請求項28に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項30】
前記コポリマーの分子量が約10kである、請求項29に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項31】
前記トップコートが、請求項1から15のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆組成物又はそのブレンドを含む、請求項26から29のいずれかに記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項32】
前記トップコートが、全被覆の50%未満である、請求項25から31のいずれかに記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項33】
前記トップコートが、全被覆の約10%〜20%の間である、請求項32に記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項34】
ステントである、請求項16から33のいずれかに記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項35】
整形外科用デバイスである、請求項16から33のいずれかに記載の埋込み型医療用デバイス。
【請求項36】
生体吸収性被覆組成物を埋込み型医療用デバイスに塗布する方法であって、
i.埋込み型医療用デバイスを提供する工程、
ii.請求項1から15のいずれかに記載の前記生体吸収性被覆組成物の被覆を前記デバイスの表面の少なくとも一部に塗布する工程
を含む方法。
【請求項37】
請求項18から24のいずれかに記載のプライマーコートを前記デバイスの表面の少なくとも一部に塗布する工程及びこの被覆を前記生体吸収性被覆組成物の被覆で覆う工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項25から33のいずれかに記載のトップコートを塗布する工程をさらに含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記デバイスをヒト以外の動物体又は人体に埋め込む工程を含む、請求項1から15のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物を含むデバイスを使用する方法。
【請求項40】
薬剤を担持するためのビヒクルであって、請求項1から15のいずれかに記載の生体吸収性被覆組成物として定義されるビヒクル。
【請求項41】
添付の実施例及び図面を参照して実質的に本明細書に記載されている、生体吸収性被覆、埋込み型デバイス又は方法。

【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−506278(P2012−506278A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532707(P2011−532707)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002501
【国際公開番号】WO2010/046637
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【出願人】(510308780)バイヤー・マテリアル・サイエンス・アーゲー (2)
【Fターム(参考)】