説明

被記録媒体の供給機構及び当該供給機構を備えた記録装置

【課題】被記録媒体の上方への浮き上がりを確実に抑制し、印字動作中に発生する騒音を極めて効果的に抑制することが可能な被記録媒体の供給機構及び当該供給機構を備えた記録装置を提供する。
【解決手段】被記録媒体を収容する収容室3と、収容室内に収容された被記録媒体の上面に接し、当該被記録媒体を搬送経路下流側に送り出す送出ローラー41と、収容室に形成され、搬送経路下流側に送り出された当該被記録媒体を上方に誘導する傾斜面と、送出ローラーよりも上方に位置し、傾斜面により誘導された被記録媒体を搬送経路下流側に搬送する搬送ローラー5と、送出ローラーと搬送ローラーとの接線よりも下方に位置するガイドローラー25とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体の供給機構に関し、より詳細には記録装置の内部に格納された供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターやレーザープリンター、ファクシミリ等の記録装置においては、収納室内に単一又は積層して載置された複数枚の紙やフィルム等の被記録媒体を被記録媒体の表面と接する送出ローラーにより1枚ずつ送り出し、搬送経路の下流側に設けられた記録機構まで搬送するものが知られている。
送出ローラーにより送り出された被記録媒体は、収容室内等に形成された傾斜面に沿って上方に向かって引き上げられる。引き上げられた被記録媒体の一端は、送出ローラーよりも上方に位置する中間ローラーにより挟み込まれて表裏が反転し、略水平な姿勢を保ったまま液体噴射ヘッドや、感光体、トナー及び定着ローラー等からなる記録部を通過することにより表面に文字や図形などが印字される。
【0003】
しかしながら、送出ローラーにより送り出された被記録媒体が、中間ローラーに到達すると、被記録媒体の表面と接する送出ローラーと中間ローラーとの回転速度差により、傾斜面に沿うように搬送されていた被記録媒体が傾斜面から上方に浮き上がる現象が起こる。このような現象が起こると、被記録媒体はやがて送出ローラーと中間ローラーとの間で直線的に傾斜した状態で下流側に搬送されることとなり、被記録媒体の表面と接する送出ローラーも被記録媒体の傾斜によって上方に持ち上げられた状態となる。この状態で被記録媒体の搬送が継続すると、搬送中の被記録媒体に発生する上下振動により、送出ローラーがバタつき、被記録媒体の表面を繰り返し叩いて、搬送・印字動作中の騒音発生を助長する要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−241535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべく、送出ローラーと中間ローラーとの回転速度差によって生じる被記録媒体の上方への浮き上がりを確実に抑制し、印字動作中に発生する騒音を極めて効果的に抑制することが可能な被記録媒体の供給機構及び当該供給機構を備えた記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための供給機構の態様として、被記録媒体を収容する収容室と、収容室内に収容された被記録媒体の上面に接し、当該被記録媒体を搬送経路下流側に送り出す送出ローラーと、収容室に形成され、搬送経路下流側に送り出された当該被記録媒体を上方に誘導する傾斜面と、送出ローラーよりも上方に位置し、傾斜面により誘導された被記録媒体を搬送経路下流側に搬送する搬送ローラーと、送出ローラーと搬送ローラーとの接線よりも下方に位置するガイドローラーとを備える構成とした。
本構成によれば、ガイドローラーが送出ローラーと搬送ローラーとの接線よりも下方に位置することにより、送出ローラー及び搬送ローラー間において浮き上がろうとする被記録媒体を抑えることができ、送出ローラーが持ち上げられることを防止することができる。よって、印字動作中に発生する騒音を極めて効果的に抑制することができる。
また、他の態様として、ガイドローラーの位置を当該ガイドローラー及び送出ローラー間における被記録媒体の搬送方向長さよりも、ガイドローラー及び搬送ローラー間における被記録媒体の搬送方向長さが短くなる位置とした。
本構成によれば、上記構成から生じる効果に加え、ガイドローラー及び搬送ローラー間の被記録媒体の搬送方向長さを短くできるので、当該区間における被記録媒体自体のバタつきにより発生する騒音を限りなく抑制することが可能となる。
また、他の態様として、収容室が外部から着脱可能なカセットであって、ガイドローラーがカセットに設けられる構成とした。
本構成によれば、上記構成から生じる効果に加え、収容室に別途ガイドローラーを設けなくても被記録媒体の浮き上がりを抑制できる。
また、他の態様として、前記いずれかの態様の供給機構を備える記録装置を構成した。
本構成によれば、搬送、印字動作中に発生する騒音を抑制可能な記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】供給機構を有する記録装置の概略図。
【図2】供給機構の部分斜視図。
【図3】ガイドローラーの位置を示す模式図。
【図4】ガイドローラーの他の形態を示す斜視図。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
図1は、本発明にかかる供給機構を有する記録装置1を側断面視した時の概略図である。図1に示す記録装置1は、記録装置の一例としての液体噴射装置である。図2は、供給機構の部分斜視図である。以下、図1及び図2を用いて供給機構について説明する。
同図において記録装置1は、装置本体2の底部に設けられて被記録媒体を収容する収容室3を備える。また、記録装置1は、収容室3に収容された被記録媒体を下流側に送り出す送出手段4と、送出手段4により送り出された被記録媒体を記録部6側に搬送する搬送ローラー5を有する供給機構を備える。収容室3内に収容された被記録媒体は、送出手段4及び搬送ローラー5により矢印で示す搬送経路に沿って下流側に位置する記録部6まで搬送され、表面に文字や図形などが印字される。なお、本明細書において、収容室3内に収容された被記録媒体が搬送される方向を下流側とし、下流側と反対方向を上流側とする。
【0010】
以下、被記録媒体の搬送経路に沿って記録装置1の詳細について説明する。
収容室3は、例えば上方開放の箱型のカセット11により構成される。カセット11は、装置本体2に設けられた挿入空間内に装着可能であって、被記録媒体の一例としての用紙10を単一又は重畳した状態で収容する。
【0011】
図2に示すように、カセット11は、収容される用紙10の周囲を取り囲む壁部を有し、壁部には分離斜面13及び逃げ部20が形成される。分離斜面13は、カセット底面11Aから上方に向かうに従って、下流側に傾斜する斜面である。分離斜面13は、収容室3内に収容された複数の用紙10同士が重なった状態で下流側に搬送されることを防ぐ。
具体的には、図1の仮想線10Pに示すように、最上位に位置する用紙10の端部10Aは、後述の送出ローラー41の駆動によって、分離斜面13に摺接しつつ上方に立ち上がった状態となる。また、最上位に位置する用紙10の下流側への搬送に伴って、これに重なって送り出されようとする下位の用紙10は、分離斜面13に突き当たり、上位の用紙10と分離される。つまり、分離斜面13は、用紙10の重送を防止する斜面である。
逃げ部20は、互いに対向する長手方向の壁部に形成される。逃げ部20は、長手方向の壁部の上流側に設けられた段差により形成されており、カセット11が挿入空間内にセットされた状態において、上方に後述のガイドローラー25が位置する。
なお、カセット11の壁部を予めガイドローラー25の高さよりも低く形成しておいてもよいが、用紙10の収容数の減少を防ぐため、上記構成とすることが望ましい。
【0012】
カセット11を装置本体2の挿入空間内にセットした場合、カセット11の長手方向の壁部は、カセット挿入空間を形成するフレーム45,46に形成されたガイド7によって保持される。また、カセット11を取り出す際には、ガイド7に沿って上流側に引き抜くことにより装置本体2の挿入空間内から取り出すことができる。
つまり、本実施形態におけるカセット11は、装置本体2に対して着脱可能であり、毎回挿入空間内における同一位置にセットされる。このように、用紙10を着脱可能なカセット11内に収容する構成とすれば、後述の送出ローラー41に対する用紙の位置が毎回略一定となるため、用紙10を安定して送り出すことが可能となる。
【0013】
次に、特に図2を参照して送出手段4について説明する。
送出手段4は、カセット11内に収容された用紙10を下流側に送り出す機構である。送出手段4は、カセット11に収容された最上位の用紙10の表面に当接する送出ローラー41を有する揺動体42と、揺動体42を下方に存在する用紙10の方向に附勢する附勢手段43、及び、送出ローラー41を回転させる回転軸55を備える。
揺動体42は、用紙10の搬送方向と直交する方向に延長する円筒状の回転軸48と、回転軸48と接続され、回転軸48の回転動作によって上下方向に移動するケーシング49とを備える。回転軸48は、一端部がフレーム46に設けられた軸受け47により回転可能に支持され、他端側にケーシング49が接続される。
【0014】
ケーシング49は、下方が開口した箱型である。ケーシング49は、天板から垂下する矩形状の折曲片51,51を有する。一方の折曲片51の上流側には、前述した回転軸48の他端部が接続される。よって、ケーシング49の傾斜角度は、回転軸48の回転により自在に変位する。ケーシング49の内部には、長手方向に沿って配置される複数の歯車により歯車輪列50が設けられる。歯車輪列50は、折曲片51に形成された複数の孔54に挿通された軸によって回転可能に支承され、回転軸55の回転力を送出ローラー41に伝達する。
【0015】
回転軸55は、回転軸48の内部において独立して回転する軸体である。回転軸55は、回転軸48の延長長さよりも長く、一端部には、図外の駆動モーターからの回転力が入力される歯車62が取り付けられる。他端部は、ケーシング49の一方の折曲片51を貫通しており、歯車63が設けられる。よって、図外の駆動モーターから歯車62に入力された回転力は、回転軸48内において回転する回転軸55を介して歯車63と噛み合う歯車輪列50、及び、歯車輪列50を構成する末列の歯車と噛み合う歯車57に伝達される。
【0016】
送出ローラー41は、例えば表面がゴム等の滑り止め部材により覆われた回転体であって、一体に回転する歯車57の外径よりも大径な円筒体である。
送出ローラー41は、ケーシング49の下流側先端部において折曲片51,51によって回転可能に支承される。送出ローラー41は、揺動体42が附勢手段43により用紙10方向に附勢された状態において、カセット11内に収容された用紙10の桁方向中央の上面と当接する。そして、歯車57が図外の駆動モーターの駆動により回転すると、送出ローラー41が一方向に回転し、送出ローラー41と当接する用紙10が下流側に送り出される。
【0017】
揺動体42を用紙10方向に附勢する附勢手段43には、例えば、回転軸48の外周面を囲繞する寸法のコイル状の捻れバネが用いられる。捻れバネの一端が回転軸48の外周面に形成される突起48Aに係止され、他端がフレーム46の突起46Aに係止されることにより、揺動体42は、回転軸48を回転中心として下方に附勢された状態で傾斜する。よって、揺動体42を構成するケーシング49の先端部に設けられた送出ローラー41は、カセット11内に収容された用紙10の上面に対して一定の圧力を加えた状態で当接することとなる。
なお、フレーム45又はフレーム46のいずれかには、図外の揺動体42の戻しレバーが設けられており、カセット11を挿入空間内から引き抜く際には、揺動体42が水平となるまで引き上げられる。一方、カセット11を挿入空間内に挿入する際には、揺動体42の引き上げが解除され、用紙10の枚数に応じた角度まで傾斜する。つまり、揺動体42がカセット11の着脱動作を阻害することはない。
【0018】
揺動体42の送出ローラー41よりも搬送方向下流側には、搬送される用紙10の浮き上がりを抑制するガイドローラー25が設けられる。
ガイドローラー25は、フレーム45,46間に架設される回転軸26によって回転可能に支持される。ガイドローラー25は、例えば円筒状のゴムローラーにより構成される。ガイドローラー25は、送出ローラー41により送出された用紙10が分離斜面13を経て、後述の搬送ローラー5に到達した時に浮き上がる用紙10と接触することにより従動回転する。なお、ガイドローラー25が奏する具体的効果、及び用紙10の浮き上がりについては後述する。
【0019】
図1に示すように、送出ローラー41の回転によりカセット11から下流側に送り出される用紙10は、分離斜面13及びガイド通路70を経て下流側に位置する記録部6側に搬送される。
ガイド通路70は、装置本体2内に設けられたガイド77;78との間に形成された間隙である。ガイド通路70は、搬送方向と直交する方向に沿って形成され、用紙10の桁方向(幅方向)全域がガイド通路70内に進入する。また、用紙10は、上流側から下流側に緩やかに湾曲して形成されたガイド通路70を経ることにより表裏が反転し、略水平な状態で記録部6側に搬送される。
【0020】
ガイド通路70の経路内には、搬送ローラー5が設けられる。搬送ローラー5は、中間ローラーと呼ばれるローラー群であって、例えば駆動ローラー75と従動ローラー76との一対のローラーにより構成される。駆動ローラー75及び従動ローラー76は、例えば、円筒状のゴムローラーにより構成され、一対のフレーム45,46のフレームに架設される回転軸により支持される。駆動ローラー75及び従動ローラー76は、外表面が互いに接触するように配置される。駆動ローラー75は、例えば、送出ローラー41を回転させる図外のモーターを駆動源として複数の歯車を経由して回転する。
図1に示すように、上記構成からなる搬送ローラー5が回転している状態において、送出ローラー41により送り出された用紙10の端部10Aが分離斜面13に沿って上方に引き上げられた後に(仮想線10P)、ガイド通路70内に進入すると、用紙10の端部10Aが駆動ローラー75と従動ローラー76との間に挟み込まれる。挟み込まれた用紙10は、搬送ローラー5の回転が継続することにより、ガイド通路70の経路に沿って反転し、記録部6側に向かって徐々に搬送される。
【0021】
また、搬送ローラー5の回転速度は、送出ローラー41の回転速度に比べて速くなるように設定される。これは、搬送ローラー5と送出ローラー41との間に回転速度差を生じさせることで用紙10に一定の張力を付加し、用紙10にたるみや皺を生じさせることなく記録部6に搬送するためである。以下、搬送ローラー5に到達した用紙10の挙動について説明する。
【0022】
分離斜面13により引き上げられた用紙10がガイド通路70に進入し、端部10Aが駆動ローラー75と従動ローラー76との間に挟み込まれると、用紙10は徐々にカセット11のカセット底面11A及び分離斜面13から浮き上がった状態となる。
図1の仮想線Tは、ガイドローラー25が存在しない場合に想定される用紙10の状態を示す。用紙10は、搬送ローラー5による搬送が継続することにより、搬送ローラー5と送出ローラー41との間で、直線的に傾斜した状態となる。
より詳細には、仮想線Tに示すように、搬送ローラー5において下流側に位置する従動ローラー76と送出ローラー41との接線に一致した状態で用紙10の搬送が継続される。このような状態で搬送が継続すると、用紙10の表面に当接する送出ローラー41が揺動体42の附勢力に抗して上方に持ち上げられることとなる。
【0023】
本実施形態においては、仮想線Tよりも下方の領域にガイドローラー25が設けられているため、用紙10は、ガイドローラー25よりも上方に浮き上がることはない。そして、浮き上がりが抑制された用紙10のガイドローラー25と送出ローラー41間の傾斜角度は、仮想線Tの傾斜角度よりも小さい角度となるため、用紙10と当接する送出ローラー41が上方に持ち上げられることを極めて効果的に防止できる。
即ち、ガイドローラー25の位置を少なくとも送出ローラー41と搬送ローラー5における下流側に配置された従動ローラー76との接線よりも下方に配置したので、用紙10と当接する送出ローラー41が必要以上に持ち上げられることを効果的に防止できる。
よって、送出ローラー41が持ち上げられた状態において、搬送中の用紙10に発生する上下振動により送出ローラー41がバタつくことに起因する印字動作中の騒音を極めて効果的に抑制することができる。
【0024】
図3(a)は、ガイドローラー25のより詳細な位置を示す模式図である。
ガイドローラー25は、同図における仮想線T、仮想線L及び仮想線Kにより囲まれた範囲内に設けられるのが好適である。以下、各仮想線の意義について説明する。仮想線Tは、図1における送出ローラー41と従動ローラー76との接線である。ガイドローラー25の高さは、仮想線Tよりも下方であって、仮想線Lで示す用紙10を収容室3内に複数枚収容した時の最大高さ(厚さ)以上の高さ範囲に設定される。
より詳細には、ガイドローラー25の外周面が、収容室3内に用紙10を最大収容枚数分収容した時に、最も上位に位置する用紙10の表面と当接する位置以上の高さに設定される。
ガイドローラー25の高さを仮想線Tよりも下方であって、仮想線Lで示す最も上位に位置する用紙10の表面と当接する位置以上の範囲に設定することにより、収容室3内の用紙10は、常にガイドローラー25の下方に位置することとなり、浮き上がろうとする用紙10がガイドローラー25により確実に抑制される。また、ガイドローラー25は、送出ローラー41と搬送ローラー5との間の搬送経路上に設けられるものであるが、その範囲は、送出ローラー41よりも下流側であって、分離斜面13の傾斜角度に対応する仮想線Kよりも上流側の範囲に設定される。
【0025】
即ち、ガイドローラー25の位置を送出ローラー41よりも下流側であって、分離斜面13よりも上流側の範囲に設定することにより、送出ローラー25により送り出される用紙10の端部10Aは、ガイドローラー25の下方を通過して分離斜面13により引き上げられる。そして、
搬送ローラー5によって挟み込まれることにより浮き上がろうとする用紙10は、ガイドローラー25によって確実に抑制されることとなる。
【0026】
以上のとおり、ガイドローラー25の位置は、少なくとも仮想線Tよりも下方であればよく、より好ましくは、仮想線Tよりも下方であって、収容室3内に用紙10を最大枚数分を収容した時の高さ以上の範囲にあればよい。さらに望ましくは、ガイドローラー25の位置は、送出ローラー41よりも下流側であって、分離斜面13よりも上流側の範囲にあればよい。なお、本実施形態においては、収容室3をカセット11により構成したので、ガイドローラー25の高さを仮想線Tよりも下方であってカセット11に形成された逃げ部20よりも上方の位置に設定することにより、ガイドローラー25によってカセット11の着脱が阻害されない構成としている。なお、上述の実施形態においては、収容室3をカセット11により構成したが、挿入空間内に用紙10を直接収容する構成や、板状のトレーに用紙10を載置し、挿入空間内に挿入する構成としてもよい。当該構成を採用した場合、分離斜面13は、装置本体2における挿入空間の下流側に形成される。
【0027】
図3(b)は、最も好ましいガイドローラー25の位置を模式的に示す図である。同図において10は、搬送ローラー5に到達し、ガイドローラー25により浮き上がりが抑制された状態で搬送される用紙である。同図におけるガイドローラー25は、分離斜面13の近傍に設けられる。
より詳細には、前述のとおりガイドローラー25は、送出ローラー41よりも下流側であって分離斜面13よりも上流側の範囲に位置し、さらにガイドローラー25及び送出ローラー41間の搬送方向長さ(接線L1)よりも、ガイドローラー25及び従動ローラー76間の搬送方向長さ(接線L2)が短くなる位置に設けられる。
このように、ガイドローラー25の位置を上述の接線L1と接線L2との関係を満たす位置に設定すれば、搬送ローラー5によって徐々に浮き上がる接線L2の範囲を短くすることが可能となるため、搬送中の浮き上がり動作に伴って、用紙10自体のバタつきにより発生する騒音を限りなく抑制することが可能となる。
【0028】
実施形態2
図4は、ガイドローラー25の他の形態を示す斜視図である。
上述の実施形態においては、ガイドローラー25を装置本体2のフレーム45及び46間に架設したが、本実施形態におけるガイドローラー25は、カセット11自体に設けられた点で相違する。本実施形態におけるカセット11は、用紙10を取り囲む周囲の壁部が同一高さに設定されており、互いに対向する長手方向の壁部の搬送方向下流側にガイドローラー25が架設されている。ガイドローラー25をカセット11に取り付けた本構成によっても、カセット11内に収容された用紙10の浮き上がりを確実に抑制しながら用紙10を下流側に搬送することが可能である。また、ガイドローラー25をカセット11自体に取り付けたことにより、当該カセット11をガイドローラー25を有さない既存の液体噴射装置に附属するカセットと交換すれば、既存の液体噴射装置に用紙10の浮き上がりを抑制する機能を容易に持たせることが可能となる。よって、本実施形態によれば、既存の液体噴射装置から発生する騒音を効果的に抑制することができる。
【0029】
以下、図1を参照して搬送ローラー5よりも下流側の機構について説明する。搬送ローラー5の駆動により、ガイド通路70を経て表裏が反転した用紙10は、図外の複数のローラーを有する搬送面82に沿って略水平を保ったまま記録部6に向かって搬送される。
記録部6は、搬送される用紙10上において桁方向に移動可能に配置される記録ヘッド81と、桁方向の一側部に配置され、記録ヘッド81と上下に対向するキャッピング機構85とを備える。
記録ヘッド81は、フレーム45,46間に掛け渡されるガイド軸83に沿って摺動するキャリッジ84の下面に設けられる。キャリッジ84は、内部に形成された液体収容室内に例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック等のインクカートリッジを備える。キャリッジ84は、図外のタイミングベルトと接続されており、図外の駆動モーターの駆動によりタイミングベルトが桁方向に動作することにより、用紙10の桁方向に沿って往復動作する。インクカートリッジ内のインクは、キャリッジ84及び記録ヘッド81内に形成されたインク流路を経由し、所定の制御により記録ヘッド81の下端面に形成されたノズル面から噴射される。なお、本実施形態においては、インクカートリッジをキャリッジ84内に搭載した例を示したが、インクカートリッジをキャリッジ84とは別の収容部に収容し、インクをインク供給チューブを介して記録ヘッド81に供給する構成としてもよい。キャッピング機構85は、記録ヘッド81の下端面に形成されたノズル面を封止するキャップを有し、ノズル面及びインク流路を湿潤状態に保つ機構である。
【0030】
分離斜面13により引き上げられ、さらに搬送ローラー5により下流側へ搬送される用紙10は、搬送面82に設けられた図外の複数のローラーにより記録部6へと搬送される。そして、記録部6の記録ヘッド81が搬送中の用紙10上を往復動作しながら液体を噴射することにより、用紙10には所望の文字や形状が印字される。
記録部6を通過した用紙10は、図外の排出ローラーの駆動により下流側にさらに搬送され、装置本体2に設けられた図外の排出口から排出されることにより印字動作が終了する。
【0031】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0032】
特に、記録装置を液体噴射装置として説明したが、本実施形態における供給機構は、レーザープリンター、ファクシミリ等、印字対象となる被記録媒体を収容する空間内に適用できる。また、液体噴射装置は液体を噴射する記録ヘッドを備えていればよく、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルター等の製造に採用される電極材や色材を分散又は溶解した状態で噴射する装置をも含む。また、被記録媒体は、所謂普通紙のみでなく、感熱紙、フィルム等、記録部に対して搬送可能なものであれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1 記録装置、2 装置本体、3 収容室、4 送出手段、5 搬送ローラー、
11 カセット、11A カセット底面、13 分離斜面、20 逃げ部、
25 ガイドローラー、26 回転軸、41 送出ローラー、42 揺動体、
43 附勢手段、45;46 フレーム、46A 突起、47 軸受け、
48 回転軸、49 ケーシング、50 歯車輪列、51 折曲片、54 孔、
55 回転軸、70 ガイド通路、75 駆動ローラー、76 従動ローラー、
81 記録ヘッド、82 搬送面、83 ガイド軸、84 キャリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を収容する収容室と、
前記収容室内に収容された被記録媒体の上面に接し、当該被記録媒体を搬送経路下流側に送り出す送出ローラーと、
前記収容室に形成され、前記搬送経路下流側に送り出された当該被記録媒体を上方に誘導する傾斜面と、
前記送出ローラーよりも上方に位置し、前記傾斜面により誘導された被記録媒体を搬送経路下流側に搬送する搬送ローラーと、
前記送出ローラーと前記搬送ローラーとの接線よりも下方に位置するガイドローラーとを備える被記録媒体の供給機構。
【請求項2】
前記ガイドローラーが、
当該ガイドローラー及び送出ローラー間における前記被記録媒体の搬送方向長さよりも、前記ガイドローラー及び搬送ローラー間における前記被記録媒体の搬送方向長さが短くなる位置に設けられた請求項1記載の被記録媒体の供給機構。
【請求項3】
前記収容室が外部から着脱可能なカセットであって、
前記ガイドローラーが前記カセットに設けられた請求項1又は請求項2記載の被記録媒体の供給機構。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3いずれかに記載の供給機構を備えた記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−162329(P2012−162329A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21453(P2011−21453)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】