説明

被記録媒体カセット、記録装置

【課題】縦置き型記録装置に対して着脱可能に構成される用紙カセット、特に用紙を鉛直姿勢又は傾斜姿勢にして収容する用紙カセットが記録装置から取り外された状態で、用紙カセットから用紙が雪崩れ落ちることを確実に防止する。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、用紙カセット11から用紙Pを装置下側に向けて給送し、給装ローラー17によって形成された反転経路部によって送り方向を反転させて装置上側に向けて搬送する略U字状の用紙搬送経路を有している。用紙カセット11の下端はホッパーアップ/ダウンの為に可動トレイ23として構成されているとともに、用紙カセット11がインクジェットプリンター1から取り外された状態において可動トレイ23を閉状態にロックするロック手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に記録を行う記録装置に対して着脱可能に構成されるとともに、前記記録装置に装着された状態において被記録媒体を鉛直姿勢又は傾斜姿勢に収容する被記録媒体カセット、およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置は、例えば設置時の省スペース化(特に、平面方向の省スペース化)を目的として、或いはその他の理由により、所謂「縦置き型」に構成されることがある。即ち、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大きくなる様に構成されることがあり、この様な記録装置は、例えば特許文献1〜5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205630号公報
【特許文献2】特開2002−127751号公報
【特許文献3】特開2002−205859号公報
【特許文献4】特開平06−79935号公報
【特許文献5】特開平05−325729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録装置においては用紙を収容する用紙カセット(用紙トレイと呼ばれる場合もある)が記録装置本体に対し着脱自在に設けられる場合があり、特許文献2には、縦長な状態で使用に供されるプリンターにおいて給紙トレイが着脱可能に構成された装置が開示されている。
【0005】
一方、用紙カセットに収容された用紙を送り出す構造としては、用紙カセットに収容された用紙に対して進退可能なピックアップローラーを利用する構造のほか、用紙カセットに収容された用紙を給送ローラーに向けてホッパーアップさせる構造を採用することができる。
【0006】
ここで、用紙を水平に収容する非縦置き型の記録装置であれば、カセット先端側は用紙を給送ローラーに接触させるために大きく開放する構造を採用すればよいが、縦置き型の記録装置の場合、カセット先端側を大きく開放する構造にすると、カセットを立てた際に用紙が雪崩れ落ちてしまう。従って縦置き型の記録装置の場合には、カセット先端側を基本的には閉塞構造としながら、給送ローラーと接触する部位のみ開口構造とする必要がある。
【0007】
そしてこの様な構成においてホッパーアップ型の給送構造を採用する場合には、更にカセット先端側の閉塞部位(カバー部)を可動構造(開閉可能)とする必要があるが、用紙カセットを装置本体から取り外した状態で前記カバー部が容易に開いてしまうと、用紙カセットから用紙が雪崩れ落ちてしまうことになる。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑み成されたものであり、その目的は、記録装置に対して着脱可能に構成される用紙カセット、特に用紙を鉛直姿勢又は傾斜姿勢にして収容する用紙カセットが記録装置から取り外された状態で、用紙カセットから用紙が雪崩れ落ちることを確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の態様は、被記録媒体に記録を行う記録装置に対して着脱可能に構成されるとともに、前記記録装置に装着された状態において被記録媒体を鉛直姿勢又は傾斜姿勢に収容する被記録媒体カセットであって、被記録媒体送り出し方向の下流側は、少なくとも被記録媒体収容空間を覆うカバー部が、被記録媒体をカセット内に保持する閉状態と、被記録媒体を送り出し可能な開状態と、を切り換え可能に構成され、前記被記録媒体カセットが前記記録装置から取り外された状態において、前記カバー部を前記閉状態にロックするロック手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、被記録媒体送り出し方向の下流側に開閉可能なカバー部を備えた被記録媒体カセットは、記録装置から取り外された状態において前記カバー部を閉状態にロックするロック手段を備えるので、被記録媒体カセットが記録装置から取り外された状態においても、前記カバー部が容易に開いてしまうことがなく、被記録媒体カセットからの被記録媒体の雪崩落ちを確実に防止することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ロック手段が、前記被記録媒体カセットの前記記録装置への装着操作に応じて前記ロックを解除し、前記被記録媒体カセットの前記記録装置からの取り外し操作に応じて前記ロックを行う構成を備えていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記ロック手段が、被記録媒体カセットの記録装置への着脱操作に応じて前記ロック/ロック解除を行うよう構成されているので、前記ロック/ロック解除をユーザー自らが行う必要がなく、操作が容易となるとともに、被記録媒体カセットが記録装置から取り外されると確実に前記ロック状態となるので、上記第1の態様の作用効果を確実に得ることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記ロック手段が、前記カバー部に設けられたボス部と係合することで前記カバー部をロックするロック位置と、前記ボス部との係合を解除することで前記ロックを解除するロック解除位置と、を変位するロック部材と、前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢手段と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記ロック手段が、ロック部材と付勢手段とで構成されていることから、構造簡単にして且つ低コストに前記ロック手段を構成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、被記録媒体に記録を行う記録装置であって、上記第1から第3の態様のいずれかに係る被記録媒体カセットを着脱自在に備えたことを特徴とする。本態様によれば、記録装置において、上記第1から第3の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型に構成されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、記録装置は設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型に構成されている、即ち「縦置き型」に構成されているので、この様な設置時の省スペース化を図ることが可能な縦置き型記録装置において、上述した第1から第3の態様のいずれかの作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの、全体の外観斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの、用紙カセットを取り外した状態の外観斜視図。
【図3】本発明に係るインクジェットプリンターの、上部の外観斜視図。
【図4】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図5】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図6】用紙カセット(上部カバーを閉じた状態)の外観斜視図。
【図7】用紙カセット(上部カバーを開いた状態)の外観斜視図。
【図8】位置決めダンパーの取り付け部位の斜視図。
【図9】位置決めダンパーの取り付け部位の斜視図。
【図10】(A)ロック手段(ロック状態)の斜視図、(B)はロック手段(ロック解除状態)の斜視図。
【図11】復帰ローラーの機能を示す図。
【図12】復帰ローラーの機能を示す図。
【図13】(A)、(B)は可動トレイの他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1から図13を参照しながら本発明に係る記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンターについて説明する。図1は本実施形態に係るインクジェットプリンター1の、全体の外観斜視図、図2は用紙カセット11を取り外した状態の外観斜視図、図3はインクジェトプリンター1の上部外観斜視図、図4、図5は同側断面、図6及び図7は用紙カセット11の外観斜視図(図6は上部カバーを閉じた状態、図7は上部カバーを開いた状態)である。
【0020】
また、図8、図9は位置決めダンパー31の取り付け部位の斜視図、図10(A)はロック手段28(ロック状態)の斜視図、図10(B)はロック手段28(ロック解除状態)の斜視図、図11、図12は復帰ローラー35の機能を示す図、図13(A)、(B)は可動トレイ23の他の実施形態を示す図である。
【0021】
尚、図4、図5はインクジェットプリンター1の用紙搬送経路上に配置されるローラーを図示する為に、ほぼ全てのローラーを同一面上に描いているが、用紙幅方向(図4、図5の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。また、各図において示すx−y−z座標系は、x方向が装置の横幅方向及び用紙幅方向であり、y方向が装置の奥行き方向(以下、場合により「装置の厚み方向」と言う場合もある)、z方向が装置高さ方向(鉛直方向)を示している。
【0022】
〓〓〓1.インクジェットプリンターの全体構成〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
以下、インクジェットプリンター1の全体構成について概説する。インクジェットプリンター1は、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型のインクジェットプリンターであって、本実施形態では高さ方向寸法(図1において符号H)が、横幅方向寸法(図1において符号W)及び奥行き方向寸法(図1において符号D)のいずれよりも大なる様に構成されている。また、本実施形態では、横幅方向寸法Wが奥行き方向寸法Dよりも大きくなっている。
【0023】
尚、奥行き方向(y方向)や横幅方向(x方向)は、本明細書では便宜的な概念で用いるものとし、つまり装置の設置時には必ずしもユーザー(使用者)に対して面積の広い横幅方向(x方向)の面が対峙するとは限らず、面積の狭い奥行き方向(y方向)の面が対峙する場合もあるし、これらのいずれでもなく斜め方向に設置される場合もある。但し、どの様な方向に設置された場合であっても、高さ方向(z方向)は必ず鉛直(重力)方向に沿った方向となる。
【0024】
インクジェットプリンター1は、薄型の箱状体を成す筐体2によって装置外観が構成されており、装置上面には操作ボタン等が配置されて成る操作パネル3や、インターフェースケーブルを接続する為のインターフェースケーブル接続部8が設けられている。
【0025】
また、装置上面は複数の着脱可能なインクカートリッジ6を装着するインクカートリッジ装着部が設けられており、符号7は当該インクカートリッジ装着部を開閉する為のインクカートリッジカバーを示している。尚、このインクカートリッジカバー7は、インクカートリッジ6の交換時にユーザーにより開閉される。
【0026】
また、装置上面には記録の行われた用紙を排出する為の用紙排出口4が設けられており、符号5は当該用紙排出口4を開閉する用紙排出口カバーを示している。尚、この用紙排出口カバー5は、ユーザーによって開閉可能に構成されているとともに、仮に閉じた状態で記録が実行されようとすると、図示を省略する開閉機構によって自動的に開くように構成されている。
【0027】
図2において符号11は複数枚の記録用紙(単票紙:以下「用紙P」と言う)を堆積状態で収容(セット)可能な「被記録媒体収容部」としての用紙カセットを示しており、この用紙カセット11は図2に示す様に筐体2に対して着脱可能に構成されており、装着することで図1に示す様にインクジェットプリンター1の外観を構成し、取り外すことで装置内部の用紙搬送経路が露呈して紙ジャム処理等を行える様になっている。尚、用紙カセット11の着脱操作は、用紙カセット11がy方向において図4の位置にある状態で、z方向にスライドさせることで実行可能となっている。
【0028】
用紙カセット11は、大略的には、図6及び図7に示す様にトレイ状のカセット本体12に、開閉可能な上部外側カバー15と、揺動可能な可動トレイ23と、を備えて成る。上部外側カバー15は、カセット本体12の略中央部に設けられた回動支点15aを中心に回動することにより、図6に示す閉状態と、図7に示す開状態と、をとり得るようになっている。そして上部外側カバー15が開いた状態では、図7に示すようにカセット本体12の用紙収容空間が表れて、用紙Pを収容可能となる。
【0029】
用紙カセット11が装着された状態においてカセット上部(図6及び図7において左側)となる側は、用紙サイズに合わせて伸縮自在に構成されており、具体的にはカセット本体12に対して上部スライドトレイ18が用紙送り方向(カセット装着状態において鉛直方向)にスライド可能に設けられている。
【0030】
また、上部外側カバー15に対しても同様に上部内側カバー16が用紙送り方向にスライド可能に設けられており、これら上部スライドトレイ18及び上部内側カバー16を用紙サイズに合わせてスライドさせることにより、用紙サイズに適した用紙収容空間を形成できる様になっている(図5の状態)。
【0031】
次に、カセット本体12にはエッジガイド21が用紙幅方向にスライド可能に設けられており、このエッジガイド21により、用紙サイズに応じた適切な位置で、セットされた用紙Pのエッジがガイドされる。尚、上部外側カバー15には、長穴15bがエッジガイド21の変位方向に延びるように形成されており、この長穴15bから、エッジガイド21の一部が上部外側カバー15の外側に突出できる様になっている(図6)。
【0032】
上部外側カバー15の外側に突出したエッジガイド21の一部には、つまみ部21bが接続されており、このつまみ部21bにより、上部外側カバー15を閉じた状態であっても、エッジガイド21をスライド操作できる様になっている。即ち、上部外側カバー15を閉じた後に、用紙エッジを適切にガイドする位置でないことが判明した場合には、上部外側カバー15を開けることなく、エッジガイド21が操作可能となっている。
【0033】
次に、用紙カセット11が装着された状態において用紙送り方向下流側となるカセット下部(図6及び図7において右側)、即ち用紙先端となる側には、可動トレイ23が設けられている。可動トレイ23は、所謂ホッパーとして機能するものであり、具体的には揺動支点23aを中心に揺動可能に設けられており、図示を省略する駆動機構の動力により揺動することにより、収容された用紙Pの先端を給送ローラー37(後述)に圧接させる状態(図5)と、離間させる状態(図4)と、をとり得る様になっている。
【0034】
可動トレイ23は、用紙先端に対応する位置に、用紙幅方向に沿って適宜の間隔で複数の開口部24aが形成されており、この開口部24aにより、収容された用紙Pに対して給送ローラー37が圧接できる様になっている。尚、符号12cはカセット本体12により構成された、用紙先端を支持する為の用紙先端支持壁である。用紙カセット11が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁12cに当接した状態で支持される。
【0035】
続いて、図4、図5を参照しながらインクジェットプリンター1の内部構成、具体的には用紙搬送経路について、説明する。上述の様に構成された用紙カセット11が鉛直に装着された状態において、用紙カセット11の先端と対向する位置には「反転ローラー」としての給送ローラー37が設けられている。給送ローラー37は、用紙幅方向に延びる駆動軸37aに、用紙幅方向に適宜の間隔を開けて複数配置されており(図2)、図示を省略するモーターにより駆動され、用紙先端と接した状態で回転することにより用紙Pを下流側へと送り出す。
【0036】
給送ローラー37によって下方へ送り出された用紙Pは、当該給送ローラー37及び当該給送ローラー37の外周面と対向配置されたガイド部材40、41によって上向きに反転させられ、「搬送ローラー」としての搬送駆動ローラー46、及び搬送従動ローラー47(用紙搬送手段を構成する)の間へと送られる。即ち、給送ローラー37およびガイド部材40、41を備えて構成された「用紙反転部」により、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路が形成されている。尚、符号38は、給送ローラー37による用紙Pの給送をアシストする従動ローラーである。
【0037】
搬送駆動ローラー46は図示しないモーターにより回転駆動されるローラーであり、本実施形態では用紙幅方向に延びる金属軸の表面に耐摩耗粒子が付着されて成り、インクジェットプリンター1の構成要素のうち重量物に属している。
【0038】
搬送従動ローラー47は本実施形態では樹脂材料によって形成されたローラーであり、搬送駆動ローラー46の軸線方向に沿って適宜の間隔を開けて複数配置され、搬送駆動ローラー46に向けて図示しない付勢手段の付勢力により付勢された状態で設けられる。そして搬送駆動ローラー46との間で用紙Pを挟圧することで、従動回転する。
【0039】
搬送駆動ローラー46の下流側には、インクジェット記録ヘッド59と、案内部材48とが対向する様に設けられている。インクジェット記録ヘッド59は、キャリッジ58に設けられており、キャリッジ58は、用紙幅方向に延びるキャリッジガイド軸55にガイドされながら、図示しないモーターの動力を受けることにより用紙幅方向に往復動する様に構成されている。
【0040】
尚、キャリッジ58において符号58aは用紙幅方向に延びる形状を成すキャリッジガイド板56を挟み込む被ガイド部を示している。即ち、キャリッジ58はキャリッジガイド軸55を挿通させる軸受部を有しているが、キャリッジ58は図示する様に傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸55を中心として回動しようとする傾向が生じるが、被ガイド部58aがキャリッジガイド板56を挟み込むように構成されている為、上記回動傾向が止められ、キャリッジ58の姿勢が定まる様に構成されている。
【0041】
尚、上述した様に本実施形態ではインクカートリッジ6が装置本体の側に設けられ、即ちインクカートリッジ6がキャリッジ58から独立して設けられた所謂オフキャリッジタイプに構成されている。しかしこれに限られず、インクカートリッジ6がキャリッジ58に搭載された、所謂オンキャリッジタイプであっても構わない。また本実施形態では、キャリッジ58が用紙幅方向に移動しながら記録を行う構成(シリアルプリンター)であるが、キャリッジ58が用紙幅方向に移動しない、用紙幅をカバ−する固定式の記録ヘッドを用いても良い。更に、インクジェット記録方式に限らず、その他の記録方式であっても良い。
【0042】
次いでインクジェット記録ヘッド59と対向配置された案内部材48は、樹脂材料により形成され、用紙Pを支持することで用紙Pの記録面とインクジェット記録ヘッド59との間のギャップを規定する。また、案内部材48は、インクジェット記録ヘッド59と対向する面には縁無し印刷時に用紙端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部(不図示)が形成されており、更にこの凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(不図示)が設けられている。そして更に、案内部材48の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(不図示)が配置されている。
【0043】
次に、インクジェット記録ヘッド59の下流に設けられた案内ローラー49は、用紙Pの案内部材48からの浮き上がりを防止し、案内ローラー49の下流に設けられた、排出駆動ローラー51及び排出従動ローラー52を備えてなる用紙排出手段は、記録の行われた用紙Pを装置外部に排出する。尚、本実施形態では、排出駆動ローラー51はゴムローラーにより構成され、用紙幅方向に伸びる金属軸の軸線方向に沿って適宜の間隔を空けて複数設けられ、そして図示しないモーターにより回転駆動される。また、案内ローラー49及び排出従動ローラー52は、外周に沿って歯を有する歯付きローラーにより構成され、用紙Pと接して従動回転する。
【0044】
次に、排出駆動ローラー51及び排出従動ローラー52による用紙Pの排出方向は、本実施形態では用紙カセット11に向かう様に斜め上方に設定されており、これにより排出される用紙Pは、図5に示す様に用紙カセット11を構成する上部外側カバー15に摺接しながら、装置上方に排出される。尚、図5における破線は、用紙搬送経路を搬送される用紙Pの通過軌跡を示している。
【0045】
〓〓〓2.可動トレイのロック手段〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次いで、用紙カセット11、特に可動トレイ23及びこれをロックするロック手段28について詳説する。上述の通り、可動トレイ23はホッパーとして機能するものであり、揺動支点23aを中心に揺動可能することにより、収容された用紙束を給送ローラー37に圧接させる状態(ホッパーアップ状態(以下、可動トレイ23の「開状態」とも言う):図5の状態)と、離間させる状態(ホッパーダウン状態(以下、可動トレイ23の「閉状態」とも言う):図4の状態)と、をとり得る様になっている。
【0046】
この可動トレイ23は、図4、図6に示す様に底板としての支持板25と、用紙収容空間を覆うカバー部24とが一体に構成されており、ホッパーアップ時(図5)には支持板25が、収容された用紙束を給送ローラー37に向けて押し付ける機能を果たす。また、ホッパーダウン時(図4→図4)には、カバー部24が、用紙束を用紙カセット12内に戻す機能を果たす。
【0047】
可動トレイ23は、インクジェットプリンター1の装置本体に装着された際、支持板25が図示を省略する付勢手段と係合可能となっており、カセット装着状態ではこの付勢手段により、可動トレイ23が常に給送ローラー37に向けて付勢された状態となっている。一方、カバー部24には図示を省略するカムが係合可能となっており、このカムの回転により、上記付勢手段に抗してホッパーダウン状態となり、或いは上記付勢手段の付勢力によってホッパーアップ状態となるよう構成されている。
【0048】
ここで、可動トレイ23は揺動することにより収容された用紙Pを送り出し可能な開状態と、用紙カセット11内に留める閉状態と、を切り換える為、用紙カセット11がインクジェットプリンター1から取り外された状態において開状態に切り換わってしまうと、収容された用紙Pがカセット開口部から雪崩落ちてしまうことになる。
【0049】
このため、用紙カセット11には、インクジェットプリンター1から取り外された状態において可動トレイ23を閉状態にロックするロック手段28が設けられている。このロック手段28は、カセット本体12の両側面に設けられた「ロック部材」としてのストッパー29と、図示を省略する付勢手段と、を備えて構成されている。
【0050】
ストッパー29は、図10に示すようにその先端に凹部29aを有しており、この凹部29aが、可動トレイ23の先端部側面に形成されたボス部26と係合し、即ちボス部26が凹部29aに入り込むことで、可動トレイ23が閉状態から開状態に向けて揺動しないよう、ロックされるようになっている(図10(A)の状態)。
【0051】
尚、ロック手段28のロック/ロック解除は、ユーザーが何らかの操作を行うことなく、用紙カセット11の着脱操作に応じて自動的に行われる様になっている。具体的には、用紙カセット11を装着する空間を形成する、インクジェットプリンター1本体側のフレーム9には、図9に示す様にリブ9aが形成されている。
【0052】
このリブ9aは、ストッパー29と係合可能に設けられており、用紙カセット11をインクジェットプリンター1にセットする際に(鉛直方向に沿って下方にスライドさせながら突き当て限界まで突き当てる途中で)ストッパー29がリブ9aに引っ掛かり、そしてその後用紙カセット11本体のみが、突き当て位置に向けて更に進むことで、ストッパー29が図10(B)に示す状態、即ちロック解除位置に切り換わるようになっている。
【0053】
尚、用紙カセット11が取り外されると、リブ9aとストッパー29との係合状態が解除されるので、ストッパー29は再び図10(A)に示すロック位置に戻る。以上の様に、ロック手段28のロック/ロック解除は、ユーザーが何らかの操作を行うことなく、用紙カセット11の着脱操作に応じて自動的に行われる様になっている。
【0054】
以上の様に、用紙カセット11はロック手段28を備えているので、用紙カセット11が装置から取り外された状態においても、カバー部23が容易に開状態に切り換わってしまうことがなく、用紙カセット11からの用紙Pの雪崩落ちを確実に防止することができる。
【0055】
尚、ロック手段28の構成としては上記実施形態に限られず、プリンタ装置本体から用紙カセット11を取り外した状態において可動トレイ23を閉状態にロックするものであればどの様なものであっても構わない。また、本実施形態では可動トレイ23は支持板25とカバー部24とが一体的に構成されているが、別体に構成されたものであれば、少なくとも(用紙カセットの取り外し状態において)カバー部24を閉状態にロックするものであれば良い。
【0056】
〓〓〓3.用紙カセット11の位置決め手段〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次に、用紙カセット11の突き当て位置を規定する手段について説明する。図8、図9に示すように、用紙カセット11の収容空間を形成するフレーム9において用紙カセット11の装着方向奥には、位置決めダンパー31が設けられている。尚、位置決めダンパー31はインクジェットプリンター1本体において用紙カセット11の両側面と対向する位置に設けられているが、同一の構成である為、以下では一方側の位置決めダンパー31について説明する。
【0057】
位置決めダンパー31は、円盤形状を成し、回動軸31cを中心に回動可能に設けられている。そしてその外周部には、凹部31a、31bと、規制突起31d、31eが形成されている。尚、図9は、規制突起31dを図示する為に、図8に示す状態から用紙カセット11を取り除いたものである。
【0058】
位置決めダンパー31の外周と対向する位置には、板ばね32が固定的に設けられており、この板ばね32に形成された凸部32aが、位置決めダンパー31に形成された凹部31a、31bに嵌合可能となっている。
【0059】
用紙カセット11がインクジェットプリンター1から取り外された状態では、位置決めダンパー31の凹部31aと、凸部32とが嵌合した状態となっている(図示省略)。この状態から用紙カセット11が装着されると、用紙カセット11の先端角部12d(図10も参照)が位置決めダンパー31の規制突起31eを押し、これにより位置決めダンパー31を回転させる。その結果、板ばね32の凸部32aは、位置決めダンパー31の凹部31aとの嵌合状態を解除し、図8に示す様に凹部31bと嵌合する。
【0060】
このとき、即ち板ばね32の凸部32aが位置決めダンパー31の凹部31aとの嵌合状態を解除するときは、板ばね32のばね力が発揮されるため、用紙カセット11を勢いよく装着しようとしても、その勢いが減衰される。これにより、用紙カセット11のセット時に部材の破損を招くことがなく、また衝突音の発生も防止され、更に収容された用紙が衝撃で飛び出ることも防止される。
【0061】
また、用紙カセット11の装着状態では、規制突起31d、31eの間に用紙カセット11の先端角部12dが挟まれた状態となるので、用紙カセット11が装着位置から容易に動いてしまうことも防止される。尚、用紙カセット11を取り外す場合は、用紙カセット11の先端角部12dが規制突起31dと当接し、位置決めダンパー31を回転させることで、凹部31bと凸部32a(板ばね32)とが嵌合した状態から、凹部31aと凸部32aが嵌合する状態に切り換わる。
【0062】
尚、用紙カセット11の装着状態では、位置決めダンパー31の規制突起31eが、用紙カセット11の突き当て位置を規定することとなるので、即ち位置決めダンパー31を、用紙カセット装着時の衝撃減衰手段と装着後の位置決め手段とで兼用することができ、構成部材の低減を図ることができる。
【0063】
〓〓〓4.可動トレイの閉塞手段、その他〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
次いで、可動トレイ23を閉塞させる手段について説明する。用紙カセット11が装着された状態においては、図4、図5を参照しつつ説明した様に、図示を省略する駆動機構によってホッパーアップ/ダウンの動作が行われる。
【0064】
ここで、仮にホッパーアップした状態(図5)のまま用紙カセット11が引き抜かれると、収容された用紙が雪崩落ちてしまう等の不具合が生じる虞がある。そこで、インクジェットプリンター1には、可動トレイ23の上部カバー24と対向する位置に、復帰ローラー35が設けられている。
【0065】
復帰ローラー35は、x方向では上部カバー24の両側端位置近傍に設けられており、z方向では用紙カセット11の装着状態において可動トレイ23の揺動支点23a付近に設けられている。そして、仮に可動トレイ23が開状態のまま(図5の状態)で上方向に引き抜かれようとすると、図11から図12への変化に示すように可動トレイ23が復帰ローラー35により閉状態に押し下げられる。以上により、可動トレイ23が開状態のままで引き抜かれることがなく、収容された用紙が雪崩落ちてしまう等の不具合を防止できる。
【0066】
尚、上述したロック手段28との関係では、用紙カセット11が装置本体に装着された状態から取り外される際、可動トレイ23が完全に閉状態に戻る前に、ストッパー29がロック解除位置(図10(B))からロック位置(図10(A))の位置に切り換わってしまうと、ロック手段28が正常に機能せず、可動トレイ23を閉状態にロックできなくなる。従って、ストッパー29が変位するタイミング(本実施形態では、リブ9a(図9)のz方向位置に依存する)を、上記不具合が生じないように設定することが好ましい。
【0067】
次いで、図13を参照しながら可動トレイ23の他の実施形態について説明する。図13(A)はホッパーアップ状態からホッパーダウンする際の給紙状態を示しており、符号P1は給送されている用紙を示している。ホッパーダウンは、給送されている用紙P1の後端が用紙カセット11から抜け出た後に行われるが、給送されている用紙P1に連れられて、次位以降の用紙が所定量用紙カセット11から送り出されていると、この状態でホッパーダウンを実行すると用紙を可動トレイ先端(カバー部24の先端)とガイド部材40とで挟み込んでしまい(矢印Qで示す位置)、用紙先端を折り曲げてしまう虞がある。
【0068】
そこで、可動トレイ23の他の実施形態として、カバー部24の先端を可動構造にすることが考えられる。図13において符号24’は、他の実施形態に係るカバー部を示しており、このカバー部24’は、その先端部24cが揺動支点24bを中心にフリーな状態で揺動可能に構成されている。尚、この先端部24cの長さ(z方向長さ)は、ホッパーダウン時に用紙を用紙カセット内に戻すことに支障のない長さに設定することが好ましい。
【0069】
カバー部先端をこの様に構成することで、図13(B)に示す様に用紙カセット11から用紙が所定量送り出されている状態でホッパーダウンしても、先端部24cが回動することで先端部24cとガイド部材40との間で用紙を挟み込んで折り曲げてしまうことを防止できる。
【0070】
尚、図13の様に構成する形態のほか、例えば先端部24cに相当する部分を取り除いた上で(開口部とした上で)、付勢手段により用紙先端部を用紙カセット内に収める様に構成することでも、上述した用紙挟み込みを回避することができる。
【0071】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでも無い。例えば、本実施形態では本発明に係る用紙カセット11を縦置き型のインクジェットプリンターに適用したが、必ずしもこれに限られず、装置への装着時に用紙を縦方向或いは傾斜方向にセットする用紙カセットを備えた記録装置に適用可能である。また本実施形態では本発明を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、液体噴射装置一般に適用することも可能である。
【0072】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0073】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェットプリンター、2 筐体、3 操作パネル、4 用紙排出口、5 用紙排出口カバー、6 インクカートリッジ、7 インクカートリッジカバー、8 インターフェースケーブル接続部、9 フレーム、11 用紙カセット、12 カセット本体、
12c 用紙先端支持壁、15 上部外側カバー、15a 回動支点、15b 長穴、16 上部内側カバー、18 上部スライドトレイ、21 エッジガイド、21a 揺動支点、21b つまみ部、23 可動トレイ、23a 揺動支点、24 カバー部、24a 開口部、25 支持板、26 ボス部、28 ロック手段、29 ストッパー、29a 凹部、31 位置決めダンパー、31a、31b 凹部、31c 回動軸、31d、31e 規制突起、32 板ばね、32a 凸部、35 復帰ローラー、37 給送ローラー、38 従動ローラー、40、41 ガイド部材、46 搬送駆動ローラー、47 搬送従動ローラー、48 案内部材、49 案内ローラー、51 排出駆動ローラー、52 排出従動ローラー、55 キャリッジガイド軸、56 キャリッジガイド板、58 キャリッジ、59 インクジェット記録ヘッド、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録装置に対して着脱可能に構成されるとともに、前記記録装置に装着された状態において被記録媒体を鉛直姿勢又は傾斜姿勢に収容する被記録媒体カセットであって、
被記録媒体送り出し方向の下流側は、少なくとも被記録媒体収容空間を覆うカバー部が、被記録媒体をカセット内に保持する閉状態と、被記録媒体を送り出し可能な開状態と、を切り換え可能に構成され、
前記被記録媒体カセットが前記記録装置から取り外された状態において、前記カバー部を前記閉状態にロックするロック手段を備える、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記ロック手段が、前記被記録媒体カセットの前記記録装置への装着操作に応じて前記ロックを解除し、前記被記録媒体カセットの前記記録装置からの取り外し操作に応じて前記ロックを行う構成を備えている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の被記録媒体カセットにおいて、前記ロック手段が、前記カバー部に設けられたボス部と係合することで前記カバー部をロックするロック位置と、前記ボス部との係合を解除することで前記ロックを解除するロック解除位置と、を変位するロック部材と、
前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢手段と、を備えて構成されている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録装置であって、
請求項1から3のいずれか1項に記載の被記録媒体カセットを着脱自在に備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、設置時の装置の高さ方向寸法が、少なくとも横幅方向寸法及び奥行き方向寸法のいずれか一方より大なる縦置き型に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−76913(P2012−76913A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226382(P2010−226382)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】