説明

被記録媒体及びその製造方法

【課題】 高速吸収性に優れ、かつ、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れ、さらには優れた表面光沢性を有する被記録媒体及び製造方法を提供することにある。
【解決手段】 透気性支持体の一方の面の少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を設け、他方の面の表面を少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクを使用した記録に適する被記録媒体及びその製造方法を提供するものである。とりわけ高速吸収性に優れ、かつ、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れ、さらには優れた表面光沢性を有する被記録媒体と、この特性を確実に実現できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きく、プリンター単体への展開をはじめとして、複写機、ワープロ、ファクシミリ、プロッター等の情報機器における出力部への展開がさらに行なわれ、急速に普及している。また、近年、高性能のデジタルカメラ、スキャナー等が安価に提供されつつあり、パーソナルコンピューターの普及と相まって、これらから得た画像情報の出力にインクジェット記録方式を採用したプリンターが極めて好適に用いられるようになってきている。このような背景において、銀塩系写真や製版方式の多色印刷と比較して遜色のない画像を、手軽にインクジェット記録方式で出力する事が求められるようになってきた。
【0003】
銀塩系写真に匹敵する被記録媒体には、優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像性を有する画像形成が必要とされる。また、印字したプリント物を銀塩系写真のようにアルバムにして長期間保存して鑑賞するケースも増えてきている。こうした印字後のプリント物をアルバムに貼ったり、その後、剥がして再度貼りなおしたり、あるいはレイアウトを変更したりといった際に、アルバムの粘着面から容易に剥離するような易ハンドリング性なども必要とされる。更には、最近のプリンター自体の性能向上によりプリント速度が高速化するに伴い、一度に多数枚の被記録媒体をプリンターにセットして連続印字するケースが増えてきている。この多数枚積載時の連続印字の場合は、被記録媒体の搬送時に被記録媒体の印字面と裏面とがこすり合わせられることによる搬送擦過キズを生じやすく、記録物としての印字品位が低下する場合があるため、耐搬送擦過キズ性も求められるようになってきている。
【0004】
このような要求を満たす為に、記録の高速化、高精細化、フルカラー化などプリンター自体の構造や記録方式に関する改良が行なわれてきており、被記録媒体の構造や特性に関する改良も盛んに検討されている。
【0005】
インクジェット記録等に用いられる被記録媒体については、支持体として紙などの透気性支持体を用いたものや、樹脂被覆された非吸水性支持体を用いたもの、また親水性樹脂からなるインク受容層を有するものや、無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性インク受容層を有するものなど従来から多様多種の形態のものが提案されてきた。
【0006】
中でも、紙などの透気性支持体上に無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性インク受容層を設け、さらに、光沢処理を施すことにより、インク吸収性に優れ、プリント速度の高速化が可能であり、かつ、銀塩系写真と遜色の無い、優れた染料の発色性、高い表面光沢性、高い解像性を有する画像を提供可能な被記録媒体として、例えば、特許第3368101号公報(特許文献1)、特開2004−209651号公報(特許文献2)に記載がある。
【0007】
こうした多孔質性インク受容層を設けた被記録媒体における搬送擦過キズに対する改良も種々の検討が行われており、例えば、特開2004−209653号公報(特許文献3)、特開2004−209654号公報(特許文献4)、特開2002−200845号公報(特許文献5)等に記載がある。
【0008】
これらのような被記録媒体は、易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性にある程度の効果を示す。しかしながら、高速吸収性に優れ、かつ、銀塩系写真と遜色ない画像を提供可能な解像度及び光沢性にも優れる被記録媒体に対する易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性については、まだ満足できるレベルにない場合が多い。
【特許文献1】特許第3368101号公報
【特許文献2】特開2004−209651号公報
【特許文献3】特開2004−209653号公報
【特許文献4】特開2004−209654号公報
【特許文献5】特開2002−200845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高速吸収性に優れ、かつ、銀塩系写真と遜色ない画像を提供可能な解像度及び光沢性にも優れる被記録媒体に対する易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性を求めるためには以下の課題を解決する必要がある。樹脂被覆紙を支持体として用い、支持体上に親水性樹脂からなるインク受容層を設けた、いわゆる膨潤タイプの被記録媒体の場合は、易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性に優れるが、印字の際のインク液滴を被記録媒体表面の親水性樹脂層が膨潤して吸収するタイプであるため高速吸収性に劣ってしまうことがある。
【0010】
また、樹脂被覆紙を支持体として用い、支持体上に無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性のインク受容層を設けた、いわゆる隙間吸収タイプの被記録媒体の場合は、易ハンドリング性や高速吸収性に優れる。しかしながら、表面光沢性は樹脂被覆された支持体表面の平滑性に依存するため、銀塩系写真のようなヘイズが小さく、かつ、光沢度の高い表面光沢性を達成することは容易ではない。また、インク受容層が多孔質性である場合は、インクの高速吸収性や表面光沢性に優れる特長を有する反面、その多孔質性ゆえに表面が傷付きやすく、多数枚積載での連続印字時の耐擦過搬送キズ性に劣る場合があった。
【0011】
さらに、紙などの透気性を有する支持体を用い、支持体上に無機顔料およびバインダーなどからなる多孔質性のインク受容層を設けた、いわゆる隙間吸収タイプの被記録媒体の場合は、高速吸収性に優れるとともに、リウェットキャストなどの光沢処理を施すことにより、銀塩系写真に匹敵するような表面光沢性を得ることが可能であるものの、易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性に劣る場合があった。易ハンドリング性や耐搬送擦過キズ性に劣る場合がある原因としては、リウェットキャストなどの光沢処理を行なうには透気性が必要であるため、樹脂被覆紙のように裏面を樹脂で完全被覆することができず、裏面は原紙や原紙上に設けた下塗り層、あるいは多孔質性の顔料層などとせざるを得ないことが考えられる。すなわち、原紙や下塗り層、あるいは顔料層などは、その表面に存在する微細な隙間に粘着剤が一部しみ込んでしまうため、粘着剤に対する粘着性が強く、記録物をアルバムなどの粘着面から剥がす際に、紙繊維、下塗り層あるいは顔料層が部分的に剥ぎ取られてしまい記録物やアルバムの品位を損なう場合があった。また、裏面が原紙や原紙上に設けた下塗り層、あるいは多孔質性の無機顔料層などであるため、多数枚積載での連続印字の際など多孔質性のインク受容層表面とこすりあわされた場合には、インク受容層表面に擦過キズを生じやすい場合があった。
【0012】
また、細孔径の小さな顔料を用い、バインダー量を少なくして形成した多孔質性インク受容層は、優れた染料発色性と高い解像性を有するとともに高い表面光沢性を達成可能である一方で、インク受容層表面の耐搬送擦過キズ性については特に不利となる場合があった。こうした課題は、紙などの透気性・吸水性を有する支持体を用い、多孔質性インク受容層を形成後にリウェットキャストなどによる高光沢処理を行なった被記録媒体において、より顕著となる。
【0013】
そこで本発明の目的は、高速吸収性に優れ、かつ、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性、及び/または、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れ、さらには優れた表面光沢性を有する被記録媒体及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、透気性支持体上の一方の面(A面)は、少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を有し、かつ、他方の面(B面)が、少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆されている被記録媒体とすることで達成できることを見出した。
【0015】
即ち、透気性支持体上の一方の面(A面)の少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を設けることによりインクの高速吸収性を達成することが可能となる。また、他方の面(B面)を少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆した面とすることにより、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性を達成できると同時に、リウェットキャストなどの光沢処理を行なうことを可能とし、優れた表面光沢性を達成することができる。
【0016】
透気性を有する被記録媒体の裏面は、原紙自体であったり、あるいは原紙上に下塗り層などの塗工層を設けた面であったりするが、これらは、紙繊維が剥き出しの状態であったり、あるいは少なからず多孔性を有している面である。したがって、リウェットキャストなどの光沢処理による高光沢化が可能となる反面、アルバムなどの粘着面に貼り付けた場合は、微細な孔部に粘着剤の一部がしみ込みやすく、強く付着してしまうため、粘着面から剥離しにくくなる。そのため、無理に引き剥がそうとすると、紙繊維や塗工層の一部が粘着面に剥ぎ取られてしまう。
【0017】
本発明は、図1に示したような、樹脂組成物により部分被覆した状態の裏面を形成することで、リウェットキャストなどの光沢処理が可能な程度の透気性を有し、かつ、粘着剤のしみ込みによる強い付着を起こすことなく、易ハンドリング性と高光沢化とを両立するものである。
【0018】
さらに、本発明において樹脂組成物を、少なくとも樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを含む2種以上の樹脂組成物とすることにより、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れる被記録媒体を得ることができる。ここで、樹脂組成物Aはワックスであり、かつ、該樹脂組成物Bは該樹脂組成物Aと互いに相溶しない樹脂組成物であることが好ましい。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタンワックス、アルコールワックス、合成酸化ワックス、αオレフィン−無水マレイン酸共重合体、カルナバワックス、ラノリン、パラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド、カスターワックスなど使用可能である。
【0019】
互いに相溶しない2種の樹脂組成物A及びBを塗工して部分被覆した面を形成した場合は、図2に示したような、樹脂組成物Aが樹脂組成物Bの上に一部突出した形状の面を形成することができるため、リウェットキャストなどの光沢処理が可能な程度の透気性を有し、かつ、粘着面に対する易ハンドリング性を有するだけでなく、さらに、樹脂組成物Aの存在により、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れる裏面を形成することができる。
【0020】
上記の特徴にかかる本発明は以下の態様を含む。
(1)透気性支持体上の一方の面(A面)は、少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を有し、かつ、他方の面(B面)が、少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆されていることを特徴とする被記録媒体。
(2)前記被記録媒体の透気度が、6000秒以下であることを特徴とする前記(1)に記載の被記録媒体。
(3)前記樹脂組成物は、少なくとも樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを含む2種以上の樹脂組成物からなり、かつ、該樹脂組成物Aはワックスであり、さらに、該樹脂組成物Bは該樹脂組成物Aと互いに相溶しない樹脂組成物であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の被記録媒体。
(4)前記A面の20°光沢度が、15以上であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の被記録媒体。
(5)前記多孔質層が、少なくとも顔料とバインダーとからなり、かつ、少なくとも細孔半径が5〜20nmの範囲にピークを有することを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の被記録媒体。
(6)少なくとも顔料とバインダーとを含む多孔質層形成用塗工液を、透気性支持体上に塗工することにより前記インク受容層を形成する工程と、
互いに相溶しない樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを少なくとも含む2種以上の樹脂組成物を含む水系分散体を、該インク受容層と反対側の面に塗工することにより前記B面を形成する工程と、
該インク受容層を光沢処理する工程と、
を有することを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の被記録媒体の製造方法。
(7)前記光沢処理する工程がリウェットキャスト法によることを特徴とする前記(6)に記載の被記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高速吸収性に優れ、かつ、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れ、さらには優れた表面光沢性を有する被記録媒体を提供することができる。また、この特性を確実に実現できる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において被記録媒体は、透気性支持体上の一方の面(A面)は、少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を有し、かつ、他方の面(B面)が、少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆されている構成を有する。
【0023】
本構成の被記録媒体とすることにより、インクの高速吸収性を有するとともに、アルバムなどの粘着面に対する易ハンドリング性を達成でき、かつ、リウェットキャストなどの光沢処理により優れた表面光沢性を有する被記録媒体を得ることができる。
【0024】
本発明において、樹脂組成物としては、水に分散してなる熱可塑性樹脂が好ましい。水に分散してなる熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリエチルアクリル酸、スチレンーブタジエン共重合体、ブタジエン共重合体、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ベンゾグアナミン樹脂、フエノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーメタアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレンーアクリルアミド共重合体、nーイソブチルアクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル、マイクロジェル、マイクロエマルジョン、等のほか、低分子量の熱可塑性樹脂を用いることも可能であり、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタンワックス、アルコールワックス、合成酸化ワックス、αオレフィン−無水マレイン酸共重合体、カルナバワックス、ラノリン、パラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド、カスターワックス等、が使用可能であるがこれに限定されるものではない。また、これらは一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明において樹脂組成物は、樹脂組成物が微粒子として裏面形成用塗工液に分散された形、水の中に安定化分散された樹脂エマルジョン粒子の形等で使用されることが好ましい。ここで樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が上記のような樹脂成分であるエマルジョンを意味する。
【0026】
さらに、本発明においては、樹脂組成物を、少なくとも樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを含む2種以上の樹脂組成物とすることにより、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れる被記録媒体を得ることができる。ここで、樹脂組成物Aはワックスであり、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタンワックス、アルコールワックス、合成酸化ワックス、αオレフィン−無水マレイン酸共重合体、カルナバワックス、ラノリン、パラフィンワックス、酸化パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド、カスターワックス等が挙げられる。これらを一種または二種以上混合して用いることができる。
【0027】
また、樹脂組成物Bは樹脂組成物Aとは互いに相溶しない樹脂組成物であることが好ましく、こうした構成とした場合、上述のように、リウェットキャストなどの光沢処理が可能な程度の透気性を有し、かつ、粘着面に対する易ハンドリング性を有するだけでなく、さらに、樹脂組成物Aの存在により、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過キズ性に優れる裏面を形成することができる。
【0028】
樹脂組成物Bは、熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的には、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリエチルアクリル酸、スチレンーブタジエン共重合体、ブタジエン共重合体、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ベンゾグアナミン樹脂、フエノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーメタアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレンーアクリルアミド共重合体、nーイソブチルアクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル、マイクロジェル、マイクロエマルジョン、等から選ばれる樹脂組成物である。これらを一種または二種以上混合して用いることができる。
【0029】
さらに、樹脂組成物A及び樹脂組成物Bとして、互いに相溶しない樹脂組成物の組合せを選択した場合には、図2に示したような被覆状態となり、耐搬送擦過キズ性に優れた裏面を形成することができる。
【0030】
本発明において、樹脂組成物A及び樹脂組成物Bとが、「互いに相溶しない」状態とは、以下のような状態である。即ち、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを混合溶融した後、室温まで自然冷却した場合に、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとが一体とならずに、樹脂組成物Aまたは樹脂組成物Bのいずれかもしくは両方の一部が粒状や塊状などの形状で分離して析出する状態のことである。
【0031】
樹脂組成物Aの樹脂組成物Bに対する含有比率としては、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとが互いに相溶しない場合には、2/100〜50/100の範囲であることが好ましく、この範囲を超える場合には、樹脂組成物Aの剥離が起こることがあり、また、この範囲よりも小さい場合には、樹脂組成物Aの添加による耐搬送擦過キズ性向上の効果が得られにくい。
【0032】
また、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとが相溶する場合における樹脂組成物Aの樹脂組成物Bに対する含有比率としては、10/100〜80/100の範囲であることが好ましく、この範囲を超えて樹脂組成物Aを添加しても、耐搬送擦過キズ性はそれ以上向上しない場合があるだけでなく、物流保存時などにおける印字品位の低下を生ずる恐れがある。また、この範囲よりも小さい場合には、樹脂組成物Aの添加による耐搬送擦過キズ性向上の効果が得られにくい。
【0033】
この耐搬送擦過キズ性に対する効果は、光沢処理後の印字面の20°光沢度が、15以上である場合、または/及び、最表面に設けた多孔質性インク受容層に用いられる顔料の細孔半径が5〜20nmの範囲である場合により顕著に現れる。
【0034】
また、本発明における被記録媒体は、少なくとも顔料とバインダーとを含む多孔質層形成用塗工液を、透気性支持体上に塗工することにより前記インク受容層を形成する工程と、
互いに相溶しない樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを少なくとも含む2種以上の樹脂組成物を含む水系分散体を、該インク受容層と反対側の面に塗工することにより前記B面を形成する工程と、
該インク受容層を光沢処理する工程と、
を有する製造方法により製造される。
【0035】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
本発明の被記録媒体は、順次以下の工程を経て製造される。
【0037】
(1)支持体の表面処理工程
まず始めに、支持体上に表面処理液を塗布する。
【0038】
支持体の表面処理工程は、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含むプレコート液を塗工する工程であり、必要に応じて行なわれる。この架橋剤の付与は、インク受容層における多孔質層の所望とするインク受容層としての構造をより強固なものとする上で、この架橋剤の使用が好ましい。また、表面処理工程は、バインダーと架橋反応を起こして硬化する架橋剤を含む表面処理液を塗工する工程であり、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上を含有する塗工液である表面処理液を支持体に塗工する工程である。
【0039】
表面処理工程では、透気性支持体に表面処理液を塗工後に基材表面を乾燥せず、基材表面がある程度の湿潤状態(塗布液状態や増粘状態でも良い)を保った状態で、次のインク受容層形成用塗工液を塗工する工程を行なうことが好ましい。
【0040】
本発明に用いる支持体としては、紙等の不透明材料からなる透気性支持体を用いる。特に、繊維状支持体、即ち、紙からなる透気性支持体を用いた場合には、支持体上に、後述する多孔質性インク受容層を形成後、キャストなどの光沢処理を施すことにより、銀塩系写真に匹敵する高い表面光沢性を得ることができるため好ましい。
【0041】
紙からなる透気性支持体には、澱粉、ポリビニルアルコール等でのサイズプレスを原紙上に施したものや、原紙上にコート層を設けた、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙等も含まれる。
【0042】
透気性支持体として紙を用いた場合は、紙(原紙)のセルロースパルプ繊維や地合いが完全に覆われるような厚みのコート層がインク受容層の下塗り層として設けられていることが好ましい。覆われていない場合、インク受容層の塗工時に、その繊維や地合いに起因する塗りムラが生じ易く、インク受容層中、若しくはインク受容層表面近傍や表面にセルロースパルプ繊維が存在していることになるので、被記録媒体の表面にキャスト処理を施したとしても、良好且つ均質なキャスト面、即ち、写真調の高光沢面を得ることが困難となる場合がある。紙からなる透気性支持体のセルロースパルプを覆うためには、コート層の乾燥塗工量が10g/m以上、更には13g/m以上であることが好ましい。
【0043】
紙からなる透気性支持体の透気度としては、透気度が6000秒以下であることが好ましく、後述する光沢処理工程における光沢処理適性の観点から、5500秒以下であることがより好ましい。
【0044】
紙からなる透気性支持体を用いる場合には、ステキヒトサイズ度100〜400秒、ベック平滑度100〜500秒、水中伸度は、1.2〜2.5%とすることが好適である。また銀塩写真同様の質感、高級感のある被記録媒体を得るためには、紙からなる透気性支持体の坪量としては160〜230g/m、ガーレー剛度(J.Tappi No.40、縦目)が7〜15mNになるようにすることが好ましい。
【0045】
本発明において表面処理液は、前記架橋剤を含む水溶液であり、架橋剤を1質量%以上10質量%含むことが好ましい。また、表面処理液のぬれ性向上のため、表面処理液に界面活性剤,アルコール等を添加して、表面張力及び吸水度の調整を行っても良い。
【0046】
表面処理工程での表面処理液の塗工量は硼酸及び硼酸塩の固形分換算で0.05g/m以上3.0g/m以下である。
【0047】
(2)多孔質性インク受容層形成工程
次に、表面処理された支持体上に、少なくとも顔料とバインダーとからなるインク受容層形成用塗工液を塗工し、乾燥することにより、多孔質性インク受容層を形成する。
【0048】
本発明で用いるインク受容層の形成材料について説明する。インク受容層は、顔料と、バインダーとを含む塗工液を塗工することで形成できる。顔料としては、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、及び光沢性の点で、特にアルミナ水和物を主成分として含有させることが好ましいが、下記顔料を使用することもできる。例えば、無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム等、有機顔料としては、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等である。これらから選択された1種を、あるいは必要に応じて選択された2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明で使用されるアルミナ水和物としては、例えば、下記一般式(X)により表されるものを好適に利用できる。
Al3−n(OH)2n・mHO ・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。)アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型の水酸化アルミニウムからγ、σ、η、θ、α型のアルミニウム酸化物に転移していくことが知られている。本発明に於いては、これらいずれの結晶構造のものも使用可能である。本発明において好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造若しくは非晶質を示すアルミナ水和物であって、特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が挙げられる。
【0050】
前記アルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整がなされるが、前記インク受容層のBET比表面積、細孔容積を満たすためには、細孔容積が0.3〜1.0ml/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは0.35〜0.9ml/gである。この範囲の細孔容積を有するアルミナ水和物はインク受容層の細孔容積を前記規定範囲内にする上でより好適である。また、BET比表面積については、50〜350m/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましく、より好ましくは100〜250m/gである。この範囲のBET比表面積のアルミナ水和物は、インク受容層の比表面積を前記規定範囲にする上でより好適である。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、比表面積が得られる。
【0051】
また、本発明において好適なアルミナ水和物の形状としては、平板状で、平均アスペクト比が3〜10、平板面の縦横比0.6〜1.0であるものが好ましい。アスペクト比の定義は、特公平5−16015号公報に記載されている方法で求めることができる。上記アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示す。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を示すものとする。上記平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察して平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比である。平均アスペクト比が上記範囲を満たさないアルミナ水和物を使用した場合は、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる恐れがある。又、上記範囲を超えるものを使用する場合は、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる恐れがある。縦横比が上記範囲を満たさないものを使用する場合も、同様にインク受容層の細孔径分布が狭くなる。
【0052】
文献(Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年)にも記載されているように、アルミナ水和物の中には、繊毛状とそうでない形状のものがあることが一般に知られている。本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のものよりも分散性がよい。又、繊毛状のアルミナ水和物の場合は、塗工時に下塗り層表面に対して平行に配向する傾向がみられ、形成される細孔が小さくなる場合があり、このためにインク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物を用いた場合は、塗工により配向する傾向は小さく、このため形成されるインク受容層の細孔の大きさや、インク吸収性への影響は少ない。
【0053】
インク受容層の顔料としてシリカ等の板状ではないものを用いてもよいが、光沢性を高くするということにおいては、上記のことから板状アルミナ水和物を用いるのが好ましい。
【0054】
本発明において、インク受容層形成用塗工液に使用するバインダーとしては、上記に挙げた顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限はなく利用することができる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー等を挙げることができる。上記は、単独、或いは複数を混合して用いることができる。
【0055】
バインダー含有量としては、顔料に対して、5〜50質量%になるようにするのが好ましい。バインダーの含有量が上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなり、又、インク受容層の機械的強度が不十分となり、粉落ちが生じ易くなる。一方、上記範囲を超える場合は、インク吸収性の低下(例えば、インクが溢れ、画像に滲みの発生)や、インク染料の吸着性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。更に、高温高湿下においても十分なインク吸収性を得るためには、バインダーの含有量を5〜20質量%の範囲とすることが好ましい。
【0056】
上記のようにして形成するインク受容層の形成材料中に、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上を含有させることは、インク受容層の形成上、極めて有効である。この際に用いることのできるホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましい。具体的には、例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na・10HO、NaBO・4HO等)や、カリウム塩(K・5HO、KBO等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH・3HO、NHBO等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
【0057】
塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。又、その使用量としては、インク受容層中のポリビニルアルコールに対して、ホウ酸固形分1.0〜15.0質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲内でも製造条件等によっては、クラックが発生する場合があり選択を必要とする。又、上記範囲を超える場合は、塗工液の経時安定性が低下するため好ましくない。即ち、生産する場合においては、塗工液を長時間に渡って使用するので、ホウ酸の含有量が多いと、その間に塗工液の粘度の上昇や、又、ゲル化物の発生が起こし、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が頻繁に必要となり、生産性が著しく低下してしまう。更に、上記範囲を超える場合、工程において、点状の表面(キャスト面)が生じ易くなり、均質で良好な光沢面が得られない場合がある。
【0058】
アルミナ水和物を含む塗工液は、少なくともアルミナ水和物、バインダーおよび必要に応じて架橋剤を含む塗工液であることが好ましい。インク受容層用塗工液の調製においては、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上をアルミナ水和物分散液と混合し、得られた混合液と、ポリビニルアルコール水溶液とを塗工の直前で混合して塗工液とするミキシング装置を使用することが好ましい。このようにすれば、製造工程中に生じる塗工液粘度の経時的上昇やゲル化を低減することができるので、生産効率の向上を図ることができる。上記で使用するアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物にかかる固形分濃度は、10〜30質量%であることが好ましい。上記範囲を超える場合は、アルミナ水和物分散液の粘度が高くなり、インク受容層の粘度も高くなるので、塗工性に問題が生じる場合がある。
【0059】
本発明のインクジェット用被記録媒体に色材劣化防止剤を添加してもよい。色材劣化防止材とはインク受容層中に染料とともに存在した際、ガス及び光などの染料を劣化させる要因より染料を守り、染料の耐候性を向上させる化合物のことを言う。一般的な例を挙げると、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、チオウレア系化合物、チウラム系化合物、ホスファイト系化合物などが挙げられ、特にヒンダードアミン化合物が好ましくもちいられるが、これらのものに限定されるものではない。
【0060】
上記のインク受容層における、ヒンダードアミンの好ましい含有量としては、顔料固形分に対して0.5〜10質量%の範囲内が好ましい。上記の下限以上にすることで、十分な褪色抑制効果が得られる。また、上記の上限以下とすることで、インク吸収性の低下が起こるのを防ぐことができる。
【0061】
本発明において色材劣化防止剤は溶媒に溶解した調製液を、前記形成後の受容層にオーバーコートすることにより、受容層内に添加することが好ましい。前記色剤劣化防止剤を溶解する溶剤は、前記色剤劣化防止剤が溶解可能であれば良く、各種溶剤の使用出来る。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル類、イソプロパノール、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0062】
受容層に色材劣化防止剤含有液をオーバーコートする工程は、受容層形成の後であれば、いずれの工程でも良い。ただし、受容層面に塗工部材が接触する方式でのオーバーコートを行なう場合には、オーバーコート工程における受容層面の傷付きなどが懸念されるため、光沢処理工程の前にオーバーコートするのが好ましい。
【0063】
インク受容層形成用塗工液には、pH調整剤として、例えば蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、およびこれらの塩などを適宜添加することができる。
【0064】
また、その他の塗工液添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等を、必要に応じて適宜含有させることができる。
【0065】
以上のように形成される多孔質性インク受容層は、インクの高速吸収性、高発色性、高解像性等の目的及び効果を達成する上で、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。先ず、インク受容層の細孔径分布において、少なくとも細孔半径5〜20nmの範囲にピークを有することが好ましい。この範囲に満たない場合は、インクの高速吸収性に劣る場合があり、また、この範囲を超える場合には、発色性や解像性の点で十分な性能が得られない場合がある。また、インク受容層の細孔容積は、0.1〜1.0cm/gの範囲内にあることが好ましい。即ち、細孔容積が、上記範囲に満たない場合は、十分なインク吸収性能が得られず、インク吸収性の劣ったインク受容層となり、場合によっては、インクが溢れ、画像に滲みが発生する恐れがある。一方、上記範囲を超える場合は、インク受容層に、クラックや粉落ちが生じ易くなるという傾向がある。又、インク受容層のBET比表面積は、20〜450m/gであることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、十分な光沢性が得られないことがあり、又、ヘイズが増加するため(透明性が低下するため)、画像が、白もやがかかったようになる恐れがある。更に、この場合には、染料の発色性が低下するだけでなく、インク中の染料の吸着性の低下を生じる恐れもあるので好ましくない。一方、上記範囲を超えると、インク受容層にクラックが生じ易くなるので好ましくない。尚、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
【0066】
又、インク受容層の乾燥塗工量は30〜50g/mとなるようにすることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、特に、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクに、ブラックインクの他、複数の淡色インクが加えられているようなプリンターに用いた場合に、十分なインク吸収性が得られず、即ち、インク溢れが生じ、ブリーディングとなる場合が発生したり、基材にまでインク染料が拡散し、印字濃度が低下する場合がある。一方、上記範囲を超える場合には、クラックの発生を抑え切れないことが生じる恐れがある。更には、30g/mより多いと、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示すインク受容層が得られるので好ましく、乾燥塗工量を50g/m以下とすると、インク受容層の塗工ムラが生じにくくなり、安定した厚みのインク受容層を製造できる。
【0067】
(3)裏面形成工程
支持体上の多孔質インク受容層を形成する面の反対面に、少なくとも1種以上の樹脂組成物を含有する裏面形成用塗工液を塗工し、乾燥することにより、部分被覆された裏面を形成する工程である。
【0068】
裏面形成用塗工液としては、互いに相溶しない樹脂組成物を少なくとも含む2種以上の樹脂組成物を含む水系分散体を塗工することが好ましい。
【0069】
この裏面形成用塗工液の乾燥に際しては、樹脂組成物による部分被覆状態を形成する必要から、塗工液中の水分の乾燥に必要な適度な熱量と風量を与えるのが好ましい。過度な加熱乾燥を行なった場合は、エマルジョン粒子どうしの融着が徐々に起こり始め、樹脂組成物により部分被覆された状態から完全被覆された状態になってしまい、透気性を失うため、後述する光沢処理を十分に行なうことが困難になる。したがって、乾燥工程においては、乾燥後の樹脂組成物による被覆状態を確認した上で、部分被覆状態が形成されるように塗工液処方と乾燥条件(乾燥温度、風量、乾燥時間など)を適宜設定するのが良い。
【0070】
(4)光沢処理工程
支持体上にインク受容層を形成した後、キャスト法で、インク受容層の表面に光沢面を形成することができる。その製造方法について説明する。キャスト法とは、湿潤状態、又は可塑性を有している状態にあるインク受容層を、フィルムや加熱された鏡面状のドラム(キャストドラム)面に圧着し、圧着した状態で乾燥し、そのフィルム面や鏡面をインク受容層表面に写し取る方法であり、代表的な方法として、直接法、リウェット法(間接法)、凝固法の3つの方法がある。これらのキャスト法は、何れも、利用できるが、リウェットキャスト法がより好ましい。このリウェットキャスト法を用いることによってインク受容層表面に高光沢性が得られる。また、透気性の高い支持体を用いる場合には、フィルムキャスト法を用いることにより強光沢面が得られる。
【0071】
表面処理工程、インク受容層形成工程、裏面形成工程などにおける各塗工液の塗工は、適正塗工量が得られるように、例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を適宜選択して用い、オンマシン、オフマシンで塗工される。塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温してもよく、コーターヘッドを加温することも可能である。
【0072】
上記インク受容層形成工程における塗工液の塗工装置への供給方法としては、顔料とバインダーなどを、別々のラインからスタティックミキサーなどの連続混合装置を用いて混合し、混合された塗布液はオンライン化された塗工ヘッドに送られ、塗布されることが好ましく用いられる。この供給方法は、塗工・乾燥時にクラック発生を防止するとともに、インク受容層の結着強度を高くするために、塗工液に架橋剤などを添加する場合には、塗工液の調製/送液時に増粘しやすくなるため、特に好ましく用いることができる。ここで言うスタティックミキサーとは、中空円筒状をなすフレームの中にミキシングユニットが収納されて構成されたものである。上記ミキシングユニットは複数のエレメントが長手方向に連接されてなり、1エレメントは板状体を長手方向に進むにしたがって周方向に例えば180度捩ったような形状をなしている。そして、隣り合うエレメントの捩れ方向が互いに逆方向になっている。この場合前記必須の構成成分とする塗工液がフレームの中を流れる間に、各エレメントによって均一に混合されるものである。
【0073】
また、塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0075】
先ず、本発明において使用した各種の物性値の測定方法について説明する。
【0076】
<ステキヒトサイズ度>
被記録媒体をA4サイズに断裁し、その5枚をそれぞれ、気温23℃及び湿度50%の条件下に2時間以上放置し、その後、JIS P8122に準拠して、各1枚毎にステキヒトサイズ度の測定を行い、5枚の平均値として求めた。
【0077】
<透気度>
上記のステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8177に準じて各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
【0078】
<ベック平滑度>
上記のステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、JIS P8119に準じて各1枚毎に測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
【0079】
<ガーレー剛度>
上記ステキヒトサイズ度の測定の場合と同様の状態に放置した後、J.Tappi No.40に準じて各1枚毎に縦目方向の測定を行い、5枚の値の平均値として求めた。
【0080】
<水中伸度>
水中伸度の測定は、emco社DDPM動的変位測定モジュールを用いて行った。測定条件は、クランプ式を用いスプリングテンション20gでサンプル幅50mm、水温23℃、浸漬時間は10分間とした。
【0081】
<BET比表面積、細孔容積>
アルミナ水和物を十分に加熱脱気してから、窒素吸着脱離法を用いた装置(カンタクローム社製、オートソーブ1)で測定した。BET比表面積の計算は、Brunauerらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,60巻、309、1938年参照)。細孔容積の計算は、Barrettらの方法を用いた(J.Am.Chem.Soc.,73巻、373、1951年参照)。
【0082】
<光沢度>
JIS Z8741に準じて、光沢度計(商品名:VG2000、日本電色工業(株)製)を用いて、20度の鏡面光沢度を測定し、以下の基準に基づいてランク分けした。
【0083】
ランク基準
A:35以上
B:25以上35未満
C:15以上25未満
D:15未満
【0084】
[実施例1]
(支持体の作製例1)
先ず、下記のようにして支持体を作製した。濾水度450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)80重量部、濾水度480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)20重量部からなるパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.60重量部、重質炭酸カルシウム10重量部、軽質炭酸カルシウム15重量部、アルキルケテンダイマー0.10重量部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03重量部を外添して紙料を調整後、長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で、酸化澱粉水溶液を固形分で1.0g/mとなるように含浸し、乾燥後、マシンカレンダー仕上げをし、坪量155g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
【0085】
次に、上記で得た基紙A上に、以下のようにして下塗り層を形成した。先ず、下塗り層の形成に使用する塗工液として、カオリン(ウルトラホワイト90、Engelhard社製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、重量比65/10/25からなる填量100重量部と、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1重量部とからなる固形分濃度70質量%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7重量部を添加して、固形分60質量%になるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を、乾燥塗工量が15g/mになるように、ブレードコーターで、基紙Aの両面に塗工し、乾燥した。その後、マシンカレンダー仕上げをし(線圧150kgf/cm)、坪量185g/m、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き支持体1を得た。
【0086】
(支持体の作製例2)
上記支持体の作製例1において得られた基紙A上に、低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)からなる樹脂組成物を25g/m塗布し、裏面に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を25g/m塗布してなる樹脂被覆した支持体2を得た。
【0087】
<被記録媒体の製造例1>
上記で得た支持体1の下塗り層に対して、下記の工程からなる表面処理を行なった。先ず、30℃に加温した下記組成の表面処理液を、エアーナイフコーターでウェット塗工量16g/m(乾燥させた場合の塗工量は0.8g/mである)になるよう、毎分30mで塗工した。
【0088】
(表面処理液)
四硼酸ナトリウム:5g
イソプロパノール:0.15g
イオン交換水を加えて総量100gに調整
次に、インク受容層を形成した。上記の表面処理工程での塗工後、即ち、塗工液が下塗り層に含浸されてすぐに、インク受容層形成用塗工液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成した。その際の、インク受容層形成用塗工液及び塗工方法等は、以下の通りである。
【0089】
アルミナ水和物AとしてDisperal HP13(サソール社製)を水(好ましくは、アルミナに対するゴミ対策としては純水)に固形分が5質量%になるように分散させ、次いで、これに塩酸を加え、pH値を4に調整してしばらく攪拌した。その後、この分散液を攪拌しながら95℃まで昇温し、その温度で4時間保持した。そして、この温度を保持したまま苛性ソーダによりpH値を10に調整し、10時間攪拌を行ない、その後、分散液の温度を室温に戻し、pH値を7〜8に調整した。更に脱塩処理を行い、続いて酢酸を添加して解膠処理して、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを乾燥して得られたアルミナ水和物BをX線回折により測定したところ、ベーマイト構造を示すもの(擬ベーマイト)であった。又、この時のBET比表面積は143g/m、細孔容積は0.8cm/gであり、電子顕微鏡での観察では、長さが約30nm×約15nmで、厚みが約5〜7nmの平板状であった。
【0090】
一方、ポリビニルアルコールPVA117(クラレ(株)製)をイオン交換水に溶解して、固形分9質量%の水溶液を得た。そして、上記で調製したアルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製し、そこに3%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物Bの固形分に対してホウ酸固形分換算で0.50質量%になるように添加した。その後、得られたホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、先に調製したポリビニルアルコール水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比が100:9になるように混合し、その直後に、これをインク受容層用の塗工液とし、これをダイコーターにて乾燥塗工量が35g/mになるように毎分30mで塗工した。そして、170℃で乾燥してインク受容層を形成した。形成した多孔質性のインク受容層の細孔径分布を測定したところ、細孔径分布のピークは、細孔半径で約9nmであった。
【0091】
次に、支持体1のインク受容層を設けた反対側の面の下塗り層上に、樹脂組成物分散体A−1をダイコータで乾燥塗工量が10g/mになるように毎分35mで塗工した。そして、160℃で乾燥し、樹脂組成物により部分被覆された裏面層を形成した。
【0092】
次に、リウェットキャストコーターにより、上記のように形成した多孔質性インク受容層の表面の光沢処理を行ない、被記録媒体1を得た。
【0093】
<被記録媒体の製造例2〜9>
被記録媒体の製造例1において、樹脂組成物分散体A−1を表1に示した樹脂組成物分散体に代えた以外は被記録媒体1と同様にして、被記録媒体2〜9を得た。
【0094】
【表1】

【0095】
<被記録媒体の製造例10>
上記で得られた支持体2上に、インク受容層形成用塗工液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成した。その際の、インク受容層形成用塗工液及び塗工方法等は、以下の通りである。
【0096】
被記録媒体の製造例1において調製したアルミナ水和物Bのコロイダルゾルを濃縮して22.5質量%の分散液を作製し、そこに3%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物Bの固形分に対してホウ酸固形分換算で2.5質量%になるように添加した。その後、得られたホウ酸含有アルミナ水和物分散液と、先に調製したポリビニルアルコールPVA117の固形分9質量%水溶液を、スタティックミキサーでアルミナ水和物固形分と、ポリビニルアルコール固形分の比が100:9になるように混合し、その直後に、これをインク受容層用の塗工液とし、これをダイコータ−にて乾燥塗工量が35g/mになるように毎分10mで塗工した。そして、140℃で乾燥してインク受容層を形成し、被記録媒体10を得た。
【0097】
[実施例1〜8、比較例1〜2]
上記のようにして得られた被記録媒体1〜10に対して後述の評価を行った結果を表2に示した。
【0098】
【表2】

【0099】
<被記録媒体の製造例11〜24>
被記録媒体の製造例1において、樹脂組成物A−1を表3に示した樹脂組成物A及び樹脂組成物Bとの併用に代え、また、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの混合比率を表3に示したようにした以外は被記録媒体1と同様にして、被記録媒体11〜24を得た。
【0100】
【表3】

【0101】
<被記録媒体の製造例25〜32>
被記録媒体の製造例1において、樹脂組成物A−1を表4に示した樹脂組成物A及び樹脂組成物Bとの組合せに代え、さらに、樹脂組成物の塗工量を代えた以外は被記録媒体1と同様にして、被記録媒体25〜32を得た。
【0102】
【表4】

【0103】
[実施例9〜30]
上記のようにして得られた被記録媒体11〜32に対して後述の評価を行った結果を表5に示した。
【0104】
【表5】

【0105】
<被記録媒体の製造例33〜34>
被記録媒体1において、アルミナ水和物Bの粒径を調整した以外は同様にして、被記録媒体33及び34を得た。得られた被記録媒体33及び34の多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定した結果、それぞれ細孔半径で約13〜15nm、約20nmにピークがあることを確認した。
【0106】
<被記録媒体の製造例35〜36>
被記録媒体5において、アルミナ水和物Bの粒径を調整した以外は同様にして、被記録媒体35及び36を得た。得られた被記録媒体35及び36の多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定した結果、それぞれ細孔半径で約13〜15nm、約20nmにピークがあることを確認した。
【0107】
<被記録媒体の製造例37〜38>
被記録媒体11において、アルミナ水和物Bの粒径を調整した以外は同様にして、被記録媒体37及び38を得た。得られた被記録媒体37及び38の多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定した結果、それぞれ細孔半径で約13〜15nm、約20nmにピークがあることを確認した。
【0108】
<被記録媒体の製造例39〜40>
被記録媒体17において、アルミナ水和物Bの粒径を調整した以外は同様にして、被記録媒体39及び40を得た。得られた被記録媒体39及び40の多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定した結果、それぞれ細孔半径で約13〜15nm、約20nmにピークがあることを確認した。
【0109】
<被記録媒体の製造例41〜42>
被記録媒体9において、アルミナ水和物Bの粒径を調整した以外は同様にして、被記録媒体41及び42を得た。得られた被記録媒体41及び42の多孔質性インク受容層の細孔径分布を測定した結果、それぞれ細孔半径で約13〜15nm、約20nmにピークがあることを確認した。
【0110】
[実施例31〜38、比較例3〜4]
上記のようにして得られた被記録媒体33〜42に対して後述の評価を行った結果を表6に示した。
【0111】
【表6】

【0112】
<被記録媒体の製造例43〜45>
被記録媒体1において、リウェットキャスト条件(搬送テンション、加熱温度、加熱時間、湿潤時間など)を適宜変更し光沢度を調整した以外は同様にして、被記録媒体43〜45を得た。
【0113】
<被記録媒体の製造例46〜48>
被記録媒体5において、リウェットキャスト条件(搬送テンション、加熱温度、加熱時間、湿潤時間など)を適宜変更し光沢度を調整した以外は同様にして、被記録媒体46〜48を得た。
【0114】
<被記録媒体の製造例49〜51>
被記録媒体11において、リウェットキャスト条件(搬送テンション、加熱温度、加熱時間、湿潤時間など)を適宜変更し光沢度を調整した以外は同様にして、被記録媒体49〜51を得た。
【0115】
<被記録媒体の製造例52〜54>
被記録媒体17において、リウェットキャスト条件(搬送テンション、加熱温度、加熱時間、湿潤時間など)を適宜変更し光沢度を調整した以外は同様にして、被記録媒体52〜54を得た。
【0116】
<被記録媒体の製造例55〜57>
被記録媒体9において、リウェットキャスト条件(搬送テンション、加熱温度、加熱時間、湿潤時間など)を適宜変更し光沢度を調整した以外は同様にして、被記録媒体55〜57を得た。
【0117】
[実施例39〜50、比較例5〜7]
上記のようにして得られた被記録媒体43〜57に対して後述の評価を行った結果を表7に示した。
【0118】
【表7】

【0119】
<評価方法>
1)アルバムの粘着面に対する易ハンドリング性(耐アルバム剥離性)
下記手順にて、粘着面からの剥離試験を行なった後、下記評価基準に基づいて目視評価した。
【0120】
評価用のアルバムとしては、フジカラーアニバーサリーフリーアルバム(NF−20L)を使用した。
(1)被記録媒体を2.5cm×8cmにカット評価用試験片を作製する。
(2)カットした評価用試験片をアルバムの粘着面に置き、人差し指で軽く1回擦る。
(3)アルバムのフィルムをかぶせ、空気が入らないように、上下左右の四方から各1回ずつ擦る。
(4)5秒間待つ。
(5)フィルムを剥がし、試験片を剥がす。
【0121】
評価基準
A:貼り付くことなく良好に剥離できた。
B:若干の貼り付きが見られたが良好に剥離できた。
C:試験片の一部が少し貼り付いてしまったが、貼り付いてしまった面積が試験片の四分の一未満であった。
D:試験片の四分の一以上の面積にわたって試験片の一部が貼り付いてしまった。
【0122】
2)耐搬送擦過キズ性
キヤノン(株)製のインクジェットプリンタ990iを用い、マニュアルに沿って、A4サイズに断裁した被記録媒体を10枚積載し、図3に示した搬送擦過キズ評価画像を、プロフェッショナルフォトペーパーモード(デフォルト設定)にて、10枚連続印字を行ない、画像先端部分の搬送擦過キズを下記の評価基準に基づき目視評価した。
評価基準
A:擦り跡が見られず良好。
B:若干もやがかかったような擦り跡が見られるが許容可能なレベル。
C:線状の擦過キズが若干見られるが許容可能なレベル。
D:もやがかかったような擦り跡が見られる。
E:線状の擦過キズが見られる。
【0123】
3)裏面の粉落ち
JIS−L0849に定められた学振型摩擦試験機II型(テスター産業社製)を用いて評価した。300gの重りをのせた試験機の摩擦子に黒のラシャ紙を装着し、振動台に試料片を印字面が上になるようにセットして20回こすり合わせた後、ラシャ紙のこすり合わせた部分とそれ以外の部分との黒の反射濃度をそれぞれX−Rite社製310TRで測定し、その濃度差から、黒の濃度残存率を下式に従って求め、下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準
A:残存率が95%以上
B:残存率が90%以上95%未満
C:残存率が80%以上90%未満
D:残存率が60%以上80%未満
E:残存率が60%未満
残存率(%)=[1−{(試験部以外の濃度−試験部の濃度)/試験部以外の濃度}]×100
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】樹脂組成物による部分被覆状態の一例
【図2】互いに相溶しない樹脂組成物A及び樹脂組成物Bによる部分被覆状態の一例
【図3】搬送擦過キズ評価画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性支持体上の一方の面(A面)は、少なくとも最表面に多孔質性のインク受容層を有し、かつ、他方の面(B面)が、少なくとも1種以上の樹脂組成物により部分被覆されていることを特徴とする被記録媒体。
【請求項2】
前記被記録媒体の透気度が、6000秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の被記録媒体。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、少なくとも樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを含む2種以上の樹脂組成物からなり、かつ、該樹脂組成物Aはワックスであり、さらに、該樹脂組成物Bは該樹脂組成物Aと互いに相溶しない樹脂組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被記録媒体。
【請求項4】
前記A面の20°光沢度が、15以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の被記録媒体。
【請求項5】
前記多孔質性のインク受容層が、少なくとも顔料とバインダーとからなり、かつ、細孔径分布において、少なくとも細孔半径が5〜20nmの範囲にピークを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の被記録媒体。
【請求項6】
少なくとも顔料とバインダーとを含む多孔質層形成用塗工液を、透気性支持体上に塗工することにより前記インク受容層を形成する工程と、
互いに相溶しない樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを少なくとも含む2種以上の樹脂組成物を含む水系分散体を、該インク受容層と反対側の面に塗工することにより前記B面を形成する工程と、
該インク受容層を光沢処理する工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記光沢処理する工程がリウェットキャスト法によることを特徴とする請求項6に記載の被記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234078(P2009−234078A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84104(P2008−84104)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】