説明

被記録材置き具、記録装置

【課題】被記録材の載置スペースを調整することができる伸縮可能な被記録材置き具において、伸長時に発生するセット面の段差を防止する。
【解決手段】記録装置本体2に対して固定状態で設けられ、或いは着脱可能に装着される第1カセット11と、第1カセット11に対して伸縮方向に摺動可能に組み付けられる第2カセット13と、第2カセット13に設けられ、該第2カセットを伸長位置Dに移動させたときに前記第1カセットの底板18の上面位置Fまで上昇する上昇位置Jと、前記第2カセットを収縮位置Eに移動させたときに前記第1カセットの底板18の下面よりも下方の位置に下降する下降位置Kを採る支え部41と、前記支え部41の前記上昇位置と下降位置の切り換えを実行する昇降機構39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材のサイズに応じて被記録材の載置スペースの大きさを調整することができる伸縮可能な被記録材置き具及び該被記録材置き具を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター、レーザープリンター、複写機等の記録装置では、多数枚の被記録材(以下、「用紙」ともいう)を平置き状態で収容できる給送用カセットを備えた機種が多く存在している。
前記給送用カセットには、下記の特許文献1に示すように、用紙のサイズに応じて用紙の載置スペースの大きさを調整することができる伸縮構造が採用されている。この伸縮構造としては、記録装置本体(以下、「プリンター本体」ともいう)側に固定状態で設けられる第1カセットと、該第1カセットに組み付けられて前後方向に摺動可能に設けられる第2カセットとを備えることによって構成されている。
【0003】
そして、A3サイズ等の大きな用紙を給送用カセットにセットする場合には、第2カセットの前板部に設けられている取っ手に手をかけて第2カセットを手前に引き出して給送用カセットの載置スペースを大きくするようになっている。
一方、A4サイズ以下の小さな用紙を給送用カセットにセットする場合には、前記取っ手を掴んで第2カセットを第1カセット側に押し込んで給送用カセットの載置スペースを小さくするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−219271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記第2カセットを手前に引き出して給送用カセットの載置スペースを大きくすると、用紙のセット面に段差が発生してしまう。具体的には、第1カセットの底板の下面が第2カセットの底板部の上面と摺接する構造が多く採用されているため、第2カセットを手前に引き出した時に、用紙のセット面の奥部側と手前側とで第1カセットの底板の厚さ分の段差が必然的に発生してしまう。
このようなセット面の段差は、当該載置スペースにセットされた用紙の姿勢を不安定にし、用紙に撓み癖を付けたり、用紙の給送不良及び搬送不良を発生させる要因になる。
【0006】
本発明の課題は、被記録材のサイズに応じて第2カセットを伸縮方向に移動させて載置スペースの大きさを調整することができる被記録材置き具において、第2カセットを伸長させたときにおいても、被記録材のセット面を平担にすることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために本発明に係る被記録材置き具の第1の態様は、記録装置本体に対して固定状態で設けられ、或いは着脱可能に装着される第1カセットと、前記第1カセットに対して伸縮方向に摺動可能に組み付けられる第2カセットと、前記第2カセットに設けられ、該第2カセットを伸長位置に移動させたときに前記第1カセットの底板の上面位置まで上昇する上昇位置と、前記第2カセットを収縮位置に移動させたときに前記第1カセットの底板の下面よりも下方の位置に下降する下降位置を採る支え部と、前記支え部の前記上昇位置と下降位置の切り換えを実行する昇降機構と、を備えることを特徴とするものである。
本態様においては、第1カセットは、記録装置本体内に一体に組み込まれて着脱できない「固定状態」のものと、記録装置本体に第1カセットが着脱可能に装着される構造の両方が含まれている。
【0008】
本態様によれば、第2カセットを収縮位置に移動させた状態ではセットすることができない大きなサイズの被記録材をセットするとき、第2カセットを伸長位置に移動させることによって支え部が自動的に第1カセットの底板の上面位置まで上昇するため、第1カセットと第2カセットの連絡部で従来発生していたセット面の段差は生じない。
従って、第2カセットを伸長位置に移動させた状態でセットする大きなサイズの被記録材を使用するときにも、当該被記録材の一端側を下方に撓ませた不安定な姿勢を招くことなく、被記録材の安定した平坦姿勢を保って円滑な給送及び搬送を実現することができる。
【0009】
本発明に係る被記録材置き具の第2の態様は、前記第1の態様において、前記第2カセットの組み付け側となる前記第1カセットの端縁部には、前記第2カセットを伸長位置に移動させたときに前記支え部と昇降機構のいずれか一方または双方に当接して、前記支え部の上昇位置における姿勢を保持する度当て部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、第2カセットが備える前記支え部の上昇位置における姿勢は、前記第1カセットの前記端縁部に設けられる度当て部によって保持される。従って、支え部にかかる被記録材の荷重を昇降機構のみで支える不安定な構造に比べて、当該支え部の上昇位置における姿勢の保持力が向上し、安定した上昇姿勢が保たれるようになる。
【0011】
本発明に係る被記録材置き具の第3の態様は、前記第2の態様において、前記昇降機構は、前記第2カセットの底板部と前記支え部に対して回動自在に接続される揺動アームを備える4節平行リンク機構と、前記支え部を上昇する方向に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、比較的簡単な構造で昇降機構を構成でき、支え部を常時、上昇方向に付勢する付勢部材を設けることで、支え部を下降させる時にのみ力をかければよく、昇降機構の操作も簡単になる。また、4節平行リンク機構の採用により、支え部は常に平行姿勢を保って緩やかに上昇及び下降するため安全性にも優れている。
【0013】
本発明に係る被記録材置き具の第4の態様は、前記第3の態様において、前記支え部は、前記上昇位置に達した状態において前記揺動アームが前記第1カセット側に傾斜した姿勢で保持されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、支え部にかかる負荷は揺動アームを下降させる方向に作用するのではなく、上昇させる方向と同一方向に作用する。従って、支え部にかかる負荷は、前記支え部と昇降機構のいずれか一方または双方を前記度当て部に押し付ける方向に作用するため支え部の上昇位置における姿勢が安定する。
【0015】
本発明に係る被記録材置き具の第5の態様は、前記第3の態様または第4の態様において、前記第2カセットを伸長位置から収縮位置に向けて移動させるとき、前記第1カセットの前記端縁部と前記支え部との接触を起点にして前記揺動アームが下降方向への揺動を開始し、前記揺動アームが所定角度揺動すると、前記第1カセットの前記端縁部が当該揺動アームの基端部に接するようになって、当該揺動アームの下降方向への揺動が継続されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、前記第2カセットを伸長位置から収縮位置に向けて移動させるとき、前記第1カセットの前記端縁部と前記支え部との接触を起点にして前記揺動アームが下降方向への揺動を開始する。すなわち揺動アームが下降方向に揺動を開始する時、揺動アームには、支え部を介して該支え部と接続されている上端の回動支点に力が作用する。従って、下端の揺動支点から最も距離の離れた前記回動支点に力が作用することによって、より小さな力で揺動アームの下降方向への揺動を開始することができる。
一方、前記揺動アームが所定角度揺動した後は、揺動アームには下端の揺動支点に近い基端部に力が作用する。従って、揺動アームを揺動させる揺動速度は、当該第2カセットを前記縮位置に向けて移動する速度が同一速度であっても漸次速くなり、それでいて支え部は揺動アームを下降させる方向に移動中であるので、移動開始時と違ってそれほど大きな力をかけなくても揺動アームは円滑に揺動して下降位置に達することができる。
【0017】
ここで、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記第2カセットを収縮位置に移動させた状態では、A4サイズ以下の被記録材がセット可能であり、前記第2カセットを伸長位置に移動させた状態では、A3サイズ以下の被記録材がセット可能である構成とすることで以下の効果が得られる。
【0018】
一般に使用頻度が高いと思われるA4サイズ以下の被記録材を使用する場合には、第2カセットを収縮位置に移動させて被記録材置き具の専有スペースをコンパクトにして作業をやり易くすることができる。そして、A4サイズより大きな被記録材を使用する必要が生じた場合に第2カセットを伸長位置に移動させてA3サイズまでの被記録材に対応するという効率的な被記録材置き具の使用形態が可能になる。
【0019】
本発明に係る被記録材置き具の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記第1カセットには、セットされた被記録材の左右の側端位置をセンター合わせで規定する側端エッジガイドが被記録材の幅方向に接近離反可能に設けられており、前記第1カセットと第2カセットには、セットされた被記録材の後端位置を規定する後端エッジガイドが前記第1カセットと第2カセットを跨いで前後方向に摺動可能に設けられており、前記昇降機構と支え部は、前記第2カセットの中心を通り前後方向に延びている前記後端エッジガイド用のガイドレールを挟んで左右に配設されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、第2カセットを収縮位置に移動させた状態と伸長位置に移動させた状態との両方で、被記録材の左右の側端位置と後端位置が規定できるようになり、第2カセットを伸長位置に移動させた時にセットできる最大サイズ以下の定形、不定形の種々のサイズの被記録材に対応できるようになる。
また、昇降機構と支え部を前記側端エッジガイドと後端エッジガイドの移動の邪魔にならない部位において左右に配設することによって、前記側端エッジガイドと後端エッジガイドによる被記録材の位置決め作用を維持しつつ、昇降機構と支え部の有する被記録材の水平支持作用を発揮して左右バランス良く被記録材を支持できるようになる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る記録装置は、被記録材置き具の第1カセットが固定状態で設けられ、或いは着脱可能に装着される記録装置本体を備える記録装置であって、前記被記録材置き具は、前記第1の態様から第6の態様のいずれか1つの態様に係る被記録材置き具であることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、前記被記録材置き具の有する被記録材の平坦支持作用によって、第2カセットを伸長位置に移動させた時に使用する大きな被記録材の平担姿勢が保たれるようになる。
従って、前記大きな被記録材を使用する時に従来発生していたセット面の段差が解消されて、記録装置による円滑な給送と搬送が実行されるから高精度の記録の実行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を装着した記録装置を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す第2カセットを収縮位置に移動させたときの斜視図。
【図3】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す第2カセットを伸長位置に移動させたときの斜視図。
【図4】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す分解斜視図。
【図5】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す第2カセットを収縮位置に移動させた時の側断面図。
【図6】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す第2カセットを伸長位置に移動させた時の側断面図。
【図7】本発明の実施例1に係る被記録材置き具を示す揺動アームが最高到達点に到達した時の側断面図。
【図8】本発明の実施例2に係る被記録材置き具を示す第2カセットを収縮位置に移動させた時の側断面図。
【図9】本発明の実施例2に係る被記録材置き具を示す第2カセットを伸長位置に移動させた時の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1から図7に示す実施例1と、図8及び図9に示す実施例2を例にとって、本発明に係る被記録材置き具と該被記録材置き具を備えた記録装置の構成及び被記録材置き具の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、被記録材置き具の一例として、記録装置の記録装置本体に対して着脱可能に設けられる給送用カセット(「被記録材置き具」と同じ符号を使用する)を例にとって説明する。最初に図1に基づいて前記給送用カセット3が着脱可能に装着される記録装置の基本的構成について説明する。
【0025】
図示の記録装置1は、一例としてA3サイズまでの用紙Pに対応できるインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)であって、該インクジェットプリンター1のプリンター本体2(「記録装置本体」と同じ符号を使用する)の一例として下部に着脱可能な給送用カセット3が装着されている。
インクジェットプリンター1のプリンター本体2の内部には、前記給送用カセット3に積畳状態でセットされた用紙Pを最上位のものから1枚ずつ繰り出す図示しない給送部と、該給送部によって繰り出された用紙Pを記録実行領域に導き、記録実行後の用紙Pを外部に排出する図示しない搬送部と、該搬送部によって記録実行領域に導かれた用紙Pの被記録面に各色のインクを吐出して所望の記録を実行する図示しない記録実行部と、が設けられている。
【0026】
また、プリンター本体2のハウジングの前面寄りの一例として上面には、操作ボタンとモニターとを備える操作部5が設けられており、プリンター本体2のハウジングの前面には、記録が実行された用紙Pを排出する図示しない排出口と、インクジェットプリンター1を使用する場合に該排出口を開口させ、インクジェットプリンター1を使用しない場合に該排出口を閉塞する開閉可能な排出用スタッカー7が配設されている。
そして、前記排出用スタッカー7の下部には、以下詳述する給送用カセット3を着脱可能に装着するためのカセット用開口9がプリンター本体2のハウジングの前面下部に設けられている。
【0027】
次に、前記カセット用開口9に対して装着される給送用カセット3の基本的な構成について図2から図4に基づいて具体的に説明する。この給送用カセット3は、プリンタ本体2に対して固定状態で装着される奥部側に配置される第1カセット11と、該第1カセット11に組み付けられて伸縮方向である前後方向Aに摺動可能に設けられる手前側に配置される第2カセット13と、を備えることによって構成されている。
このうち、第1カセット11は、前面と上面が開放された浅底の矩形トレイ状の部材で、該第1カセット11の奥端には、セットされた用紙Pの先端に当接して当該用紙Pの先端位置を規制すると共に当該用紙Pの給送を案内する給送方向に傾斜した先端案内規制板15が設けられている。
【0028】
また、第1カセット11の底板18には、幅方向Bに延びるガイド溝19が一例として左右に2本ずつ前後に間隔を空けて設けられている。
そして、これらのガイド溝19には、セットされた用紙Pの左右の側端位置を一例としてセンター合わせで規定する側端エッジガイド21、23が用紙Pの幅方向Bに接近離反可能に設けられている。
【0029】
一方、第2カセット13は、後面と上面が開放された浅底の矩形トレイ状の部材であり、第2カセット13の左右の側板部25、27の内側面が前記第1カセット11の左右の側板16、17の外側面に摺接し、第2カセット13の底板部29の上面が収縮時に前記第1カセット11の底板18の下方に位置するように設けられている。
また、前記第1カセット11と第2カセット13の幅方向Bの中心には、前後方向Aに延びるガイドレール31が形成されており、セットされた用紙Pの後端位置を規定する後端エッジガイド33が該ガイドレール31に沿って前後方向Aに摺動可能に設けられている。
【0030】
また、前記第2カセット13の前板部35の幅方向Bの中心には、第2カセット13の伸長時及び収縮時に手をかけて取っ手として使用する凹陥部37が形成されている。
そして、第2カセット13に対して形成されているガイドレール31を挟んで左右対称に本発明の被記録材置き具3の特徴的構成である昇降機構39と支え部41とが設けられている。
【0031】
このうち昇降機構39は、前記第2カセット13の引き出し操作及び押し込み操作を動力として作動する機構である。具体的には、前記第2カセット13を伸長位置Dに移動させたときに前記支え部41の上面を前記第1カセット11の底板18の上面位置F(図5、図6参照)まで上昇させ、前記第2カセット13を収縮位置Eに移動させた時に前記支え部41の上面を前記第1カセット11の底板18の下面よりも下方の位置に下降させる動作を実行する機構として、昇降機構39は設けられている。
【0032】
また、前記支え部41は、前記昇降機構39の出力端に設けられる矩形平板状の部材で、図2、図3に示すように、前記ガイドレール31の左右の前記第2カセット13における底板部29の一部のスペースを利用して設けられている。
【0033】
また、図示の給送用カセット3では、前記第2カセット13を収縮位置Eに移動させた状態でセットする用紙PのサイズはA4サイズ以下に設定されており、前記第2カセット13を伸長位置Dに移動させた状態でセットする用紙Pのサイズは一例としてA4サイズより大きくA3サイズ以下に設定されている。
そして、前記範囲内のサイズの違う用紙Pの位置決めを前述した左右の側端エッジガイド21、23と後端エッジガイド33とを使用して行い、A3サイズ以下の種々のサイズの用紙Pに対応できるように構成されている。
【0034】
[実施例1](図1から図7参照)
本実施例では、前記第1カセット11の前縁部に前記第2カセット13を伸長位置Dに移動させたときに一例として前記支え部41の後端部43に当接して、該支え部41の上昇位置における姿勢を保持する度当て部45が設けられている。
該度当て部45は、第2カセット13の伸長方向に下り傾斜の度当て面47と、該度当て面47の下端部に設けられる押圧片49とを備えることによって構成されている。
【0035】
また、本実施例では前記昇降機構39は、前記第2カセット13の底板部29と前記支え部41に対して回動自在に接続される揺動アーム51、53を備える4節平行リンク機構55と、前記支え部41を常時上昇する方向に付勢する付勢部材57とを備えている。前記揺動アーム51、53は、同一長さLであり、且つ同一角度θで揺動するように構成されている。
【0036】
即ち、前記第2カセット13の底板部29の上面と、前記支え部41の下面には軸受部59と、軸受部61とが設けられており、前記2本の揺動アーム51、53の下端には前記底板部29に設けられている軸受部59によって揺動可能に接続されている揺動軸60、60が一例として外方に張り出すように設けられている。
一方、前記2本の揺動アーム51、53の上端には前記支え部41に設けられている軸受部61によって回動可能に接続されている回動軸62、62が同じく一例として外方に張り出すように設けられている。
【0037】
また、前記2本の揺動アーム51、53の下端には、前記揺動軸60、60と同軸上に、一例として内方に張り出すようにバネ掛け用の軸部63、63が設けられており、本実施例では、このうち奥部側の揺動アーム51の軸部63を利用して付勢部材57が設けられている。
付勢部材57は、一例として捩りコイルバネ57aによって構成されており、図6に示すように、図中実線の矢印で示す時計方向となる上昇方向Uに付勢力を有するように配設されている。
【0038】
また、本実施例では前記支え部41が上昇位置Jに達した時、前記揺動アーム51、53が前記第1カセット11側に少し傾斜した姿勢で保持されるように構成されている。
従って、前記揺動アーム51、53が垂直姿勢になる図7に示す最高到達点Qが支え部41の上昇位置Jになるのではなく、該最高到達点Qを通過して支え部41の高さが幾分低くなった図6に示す位置が上昇位置Jになっている。
【0039】
また、前記揺動アーム51、53が上昇位置Jに達した状態では、前記支え部41の後端部43の少なくとも一部が前記第1カセット11の前縁部に形成されている度当て部45の度当て面47に接触するように構成されている。
この時、前記度当て部45の押圧片49は、図6に示すように前記揺動アーム51、53に接しておらず、両者の間に間隙部Sが形成されている。
【0040】
一方、揺動アーム51、53が下降方向Wに揺動を開始して、図7に示す最高到達点Qに到達したタイミングでは、前記支え部41の後端部43は前記度当て部45の度当て面47から離れ、前記度当て部45の押圧片49が揺動アーム51、53の基端部65に当接するように構成されている。
【0041】
次に、このようにして構成される給送用カセット3の作動態様を第2カセット13を(1)収縮位置から伸長位置に移動させる場合と、(2)伸長位置から収縮位置に移動させる場合と、に分けて説明する。
【0042】
(1)収縮位置から伸長位置に移動させる場合(図2、図3及び図5−図7参照)
第2カセット13が図2及び図5に示す収縮位置Eに位置している状態では、図示のように揺動アーム51、53が手前に倒れた下降位置Kに位置し、支え部41が第1カセット11の底板18の下方空間に収容された状態になっている。
【0043】
そして、この状態から第2カセット13を伸長位置Dに向けて移動させる場合には、第2カセット13の前板部35に形成されている凹陥部37に手をかけて第2カセット13を手前に引き出す。
【0044】
前記第2カセット13の移動に伴ない、支え部41と揺動アーム51、53は下降位置Kのまま前方に移動する。
【0045】
そして、支え部41の後端部43が度当て部45の押圧片49の下方を通過すると、該押圧片49が揺動アーム51の基端部65に当接するようになり、捩りコイルバネ57aの付勢力によって該揺動アーム51、53は上昇方向Uに揺動して行く。
揺動アーム51、53が、図7に示す最高到達点Qを過ぎると、支え部41の後端部43は、度当て部45の度当て面47に当接するようになり、度当て部45の押圧片49は揺動アーム51の基端部65から離れて両者の間に間隙部Sが形成されるようになる。
【0046】
また、支え部41は、図7に示す最高到達点Qを境に徐々に下降しながら第1カセット11側に移動し、第2カセット13が伸長位置Dに達した図6に示す状態で、支え部41の上面が第1カセット11の底板18の上面位置Fと面一になる上昇位置Jに到達する。
この状態では、用紙Pの荷重は支え部41を介してカセット本体11によって支持されているため、用紙Pは撓むことなく水平に支持される。すなわち、ユーザーは、セット面となる第1カセット11と支え部41の上面に用紙Pを載置し、左右の側端エッジガイド21、23と後端エッジガイド33を操作して、載置した用紙Pの側端位置と後端位置の位置決めを行えば、用紙Pのセットが完了し、インクジェットプリンター1による記録の実行が可能になる。
【0047】
(2)伸長位置から収縮位置に移動させる場合(図2、図3及び図5−図7参照)
第2カセット13を図3及び図6に示す伸長位置Dから図2及び図5に示す収縮位置Eに向けて移動させる場合には、第2カセット13の前板部35に形成されている凹陥部37に手をかけて第2カセット13を奥部側に押し込む。
前記第2カセット13の移動に伴ない、支え部41の後端部43は度当て部45の度当て面47を滑りながら上昇し、揺動アーム51、53は捩りコイルバネ57aの付勢力に抗して徐々に下降方向Wに向けて揺動して行く。
【0048】
揺動アーム51、53が所定角度揺動すると、図7に示す最高到達点Qに達し、支え部41は、上昇から下降に転じ、引き続き揺動アーム51、53は捩りコイルバネ57aの付勢力に抗して下降方向Wに向けての揺動を継続する。
また、揺動アーム51、53が最高到達点Qに達すると、度当て部45の押圧片49が揺動アーム51の基端部65に当接するようになり、逆に支え部41の後端部43は度当て部45の度当て面47から離れる。
【0049】
また、揺動アーム51、53が下降位置Kに達する直前まで前記度当て部45の押圧片49と、揺動アーム51の基端部65と、の当接状態は続き、揺動アーム51、53が下降位置Kに達した状態では、前記支え部41の後端部43が度当て部45の押圧片49の下方に回り込んだ状態になる。
そして、揺動アーム52、53は下降位置Kのままで支え部41が第1カセット11の底板18の下方空間内に進入し、図5に示す収縮位置Eまで第2カセット13は移動する。
以後は前記第2カセット13を伸長位置Dまで移動させた状態と同様に用紙Pをセットして左右の側端エッジガイド21、23と後端エッジガイド33により用紙Pの側端位置と後端位置の位置決めを行えば、用紙Pのセットが完了し、インクジェットプリンター1による記録の実行が可能になる。
【0050】
このようにして構成される本実施例に係る給送用カセット3によれば、第2カセット13を収縮位置Eに移動させた状態ではセットすることができない大きなサイズの用紙Pをセットするとき、第2カセット13を伸長位置Dに移動させることによって支え部41が自動的に第1カセット11の底板18の上面位置Fまで上昇するため、第1カセット11と第2カセット13の連絡部で従来生じてきたセット面の段差は生じない。
従って、第2カセット13を伸長位置Dに移動させた状態でセットする大きなサイズの用紙Pを使用するときにも、当該用紙Pの後端部を下方に撓ませた不安定な姿勢を招くことなく、用紙Pの安定した水平姿勢を保って円滑な給送及び搬送を実現することができる。
【0051】
[実施例2](図8、図9参照)
実施例2に係る被記録材置き具である給送用カセット3は、図8、図9に示すように、第2カセット13に固定されている揺動軸67を中心に揺動する板状の支え部41Aを使用し、コイルバネ57bより成る付勢部材57を使用して常時、前記支え部41Aの自由端側を上方に付勢する構成の昇降機構39Aが採用されている。
【0052】
本実施例の支え部41Aは、その前端部において関節部69を介して揺動軸67と接続された中折れ式構造に構成されている。昇降機構39Aは、前記支え部41Aを上方に付勢する圧縮コイルバネ57bが前後に2組離間して配置した構成である。
【0053】
支え部41Aの後端部(奥側端部)は下方に傾斜した傾斜部42となっている。また、第1カセット11の前縁部には、前記支え部41Aの前記傾斜部42に上側から接触して支え部41Aを下方に移動させる凹面ガイド44が設けられている。
【0054】
第2カセット13が収縮位置にある図8の状態から、第2カセット13を引き出すと第1カセット11による押えが外れた段階で支え部41Aは上昇位置に移動して図9に示した状態になる。
逆に、図9に示した状態から第2カセット13を押し込むと、支え部41Aの前記傾斜部42が第1カセット11の前記凹面ガイド44の当接し、更に押し込むと当該凹面ガイド44にガイドされて支え部41Aは下方に移動し始める。その際、支え部41Aは関節部69を介して揺動軸67と接続されているので、下方へ無理なく移動し、図8に示した状態になる。
【0055】
〔その他の実施例〕
本発明に係る記録装置1は以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0056】
例えば、本発明の被記録材置き具3は、前述した実施例のようにプリンター本体2と別体に設けられる着脱式の構造に限らず、プリンター本体2に固定状態で設けられた一体構造の被記録材置き具であってもよい。
【0057】
また、昇降機構39としては、前述した実施例で採用した4節平行リンク機構に限らず、支え部41を上昇位置Jと下降位置Kとに移動できる種々の昇降機構が採用可能である。
例えば、前記実施例で採用した揺動アーム51、53による回動軸62の動き(移動軌跡)をカム溝等によって形成することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、2 プリンター本体(記録装置本体)、
3 給送用カセット(被記録材置き具)、 5 操作部、7 排出用スタッカー、
9 カセット用開口、11 第1カセット、13 第2カセット、
15 先端案内規制版、16 側板(左)、17 側板(右)、18 底板、
19 ガイド溝、21 側端エッジガイド(左)、23 側端エッジガイド(右)、
25 側板部(左)、27 側板部(右)、29 底板部、31 ガイドレール、
33 後端エッジガイド、35 前板部、 37 凹陥部、39 昇降機構、
41 支え部、43 後端部、45 度当て部、47 度当て面、49 押圧片、
51 揺動アーム、53 揺動アーム、55 4節平行リンク機構、57 付勢部材
57a 捩りコイルバネ、57b 圧縮コイルバネ、59 軸受部、60 揺動軸、
61 軸受部、62 回動軸、63 軸部、65 基端部、67 揺動軸、
69 間接部、P 用紙(被記録材)、A 前後方向、B 幅方向、C 上下方向、
D 伸長位置、E 収縮位置、F 上面位置、L 長さ、θ 角度、U 上昇方向、
W 下降方向、J 上昇位置、K 下降位置、Q 最高到達点、S 間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置本体に対して固定状態で設けられ、或いは着脱可能に装着される第1カセットと、
前記第1カセットに対して伸縮方向に摺動可能に組み付けられる第2カセットと、
前記第2カセットに設けられ、該第2カセットを伸長位置に移動させたときに前記第1カセットの底板の上面位置まで上昇する上昇位置と、前記第2カセットを収縮位置に移動させたときに前記第1カセットの底板の下面よりも下方の位置に下降する下降位置を採る支え部と、
前記支え部の前記上昇位置と下降位置の切り換えを実行する昇降機構と、を備えることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項2】
請求項1に記載された被記録材置き具において、
前記第2カセットの組み付け側となる前記第1カセットの端縁部には、前記第2カセットを伸長位置に移動させたときに前記支え部と昇降機構のいずれか一方または双方に当接して、前記支え部の上昇位置における姿勢を保持する度当て部が設けられていることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項3】
請求項2に記載された被記録材置き具において、
前記昇降機構は、
前記第2カセットの底板部と前記支え部に対して回動自在に接続される揺動アームを備える4節平行リンク機構と、
前記支え部を上昇する方向に付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項4】
請求項3に記載された被記録材置き具において、
前記支え部は、前記上昇位置に達した状態において前記揺動アームが前記第1カセット側に傾斜した姿勢で保持されるように構成されていることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項5】
請求項3または4に記載された被記録材置き具において、
前記第2カセットを伸長位置から収縮位置に向けて移動させるとき、前記第1カセットの前記端縁部と前記支え部との接触を起点にして前記揺動アームが下降方向への揺動を開始し、
前記揺動アームが所定角度揺動すると、前記第1カセットの前記端縁部が当該揺動アームの基端部に接するようになって、当該揺動アームの下降方向への揺動が継続されるように構成されていることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された被記録材置き具において、
前記第1カセットには、セットされた被記録材の左右の側端位置をセンター合わせで規定する側端エッジガイドが被記録材の幅方向に接近離反可能に設けられており、
前記第1カセットと第2カセットには、セットされた被記録材の後端位置を規定する後端エッジガイドが前記第1カセットと第2カセットを跨いで前後方向に摺動可能に設けられており、
前記昇降機構と支え部は、前記第2カセットの中心を通り前後方向に延びている前記後端エッジガイド用のガイドレールを挟んで左右に配設されていることを特徴とする被記録材置き具。
【請求項7】
被記録材置き具の第1カセットが固定状態で設けられ、或いは着脱可能に装着される記録装置本体を備える記録装置であって、
前記被記録材置き具は、請求項1から6のいずれか1項に記載された被記録材置き具であることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171702(P2012−171702A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31855(P2011−31855)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】