説明

裁断機構を貫通して誘導される印刷製品の天および/または地の縁部を裁断する装置

【課題】表紙に破損が生じない程度まで天および地の裁断中の裁断圧力による印刷製品の背部領域への負荷を低減する。
【解決手段】互いに距離をおいて前後し平坦面(2)を下にして寝かせた状態にして綴じ付けられる側の縁部(3)が搬送方向(F)に対して直角に延在するようにされるとともに好適にはその縁部を前方にして搬送装置(5)の搬送手段(4)内に保持され、搬送サイクルと連動する裁断機構(6)を通って誘導される印刷製品(7)の天(19)および/または地の縁部(20)を裁断するための装置(1)において、裁断機構(6)に対してその裁断機構とタイミング連動し綴じ付けられた縁部(3)に対して垂直な裁断を実施する裁断装置(8)を前置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに距離をおいて前後し平坦面を下にして寝かせた状態にして綴じ付けられる側の縁部が搬送方向に対して直角に延在するようにされるとともに好適にはその縁部を前方にして搬送装置の搬送手段内に保持され、搬送サイクル(タイミング)と連動する裁断機構を通って誘導される印刷製品の天および/または地の縁部を裁断するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述した種類の装置は接着綴じあるいは糸綴じされたパンフレット、雑誌、カタログ、文庫本等の印刷製品の三方縁部裁断のために使用される。縁部裁断は、同封物の挿入、アドレッシング、積み込み等の完成した印刷製品に対する追加的な作業を除いて、個別印刷物に対して実施される最後の作業を構成するものである。完成した印刷製品の外観は裁断品質によって大きく左右される。印刷製品の特性に従って多様な裁断装置の実施形態が知られており、三方裁断機、三枚刃具自動装置、あるいはトリマとも呼ばれている。既知の全ての裁断装置において共通であることは、印刷製品を個別あるいは積重ね体とし直列の搬送流で通常は高いサイクル数をもって裁断装置を介して搬送してそこで処理、すなわち裁断することである。裁断工程の間印刷物を少なくとも裁断部の直近部分で2本の実質的に平行なレール状部材の間に締め付けるかあるいはそれによって圧接することができる。刃具は平面内を移動し少なくとも裁断開始に際して刃が印刷製品の平坦面との間で鋭角を形成し、それが切り込み作業を容易にする。刃具の裁断動作は印刷製品の平坦面に対して殆ど垂直に指向する。しかしながら、平坦面に対して平行な速度成分を重ね合わせそれによって引き方向の裁断を実行することも知られている。刃具と逆側の印刷製品の面上には裁断圧力を受容するために固定刃あるいはカッターバーが配置される。天および地の裁断は通常同時に実施され、前端部裁断は天および地の裁断に対して時間的に先行あるいは遅延して実施される。
【0003】
前述した種類の装置は例えば欧州特許第0698451号B1明細書(特許文献1)によって開示されている。印刷製品は周回動作する牽引手段上に規則的な間隔で取り付けられた把持具により一定の速度で裁断装置を介して搬送され、その搬送中に部分的に追従移動する裁断ユニットによって裁断される。また、印刷製品が周期的に加速および減速され、固定式の裁断ユニットによって静止状態で裁断が行われる装置も知られている。刃具の刃先は印刷製品の平坦面に対して略平行に延在し刃具がその平坦面に対して直角に動作する。裁断に際しては、裁断部に隣接する領域内の本の背部上で表紙が破損あるいは破断するほど大きな負荷が印刷製品内に生じる可能性がある。
【0004】
従ってスイス国特許第565632号明細書(特許文献2)により、天および地の裁断の間にパンフレット背部の裁断用に設定された側方刃具の刃先がパンフレットの載置面との間で60ないし90°の角度を成すようにすることが提案されている。図1に示された実施形態によって表紙の背部領域の損傷を防止するものとされている。この装置の問題点は、印刷製品の両方の外側領域への同時の切り込みによって不規則な切断面が生じ得ることである。
【0005】
図3の実施形態においては、裁断圧力の一成分が背部から離れるように指向しており従って印刷製品の載置面あるいは平坦面に対して垂直で大きな刃具行程が必要となるため、角度α′を略90°としなければならない。
【0006】
独国特許出願公開第10325378号A1明細書(特許文献3)により、第1の部分とその第1の部分に対して角度を付けた第2の部分を有する裁断刃先を裁断刃具が備えるようにすることが提案されている。この装置も同様に、印刷製品の平坦面に対して垂直で大きな刃具行程が必要となるという問題点を有する。
【0007】
欧州特許出願公開第1410925号A2明細書(特許文献4)により、本の背部が載置面に対して鋭角を形成し裁断圧力の一成分が背部に対して指向するように印刷製品を変形することが提案されている。この方式の問題点は、印刷製品の強度の変形によって結合部に過大な負荷がかかるか、および/または恒久的な本の背部の変形が印刷製品に残留し得ることである。
【0008】
独国特許出願公開第10357815号A1明細書(特許文献5)により、印刷製品の背部上の裁断領域をレーザ光線によって予め刻み付けすることが提案されている。この方式は、表紙の表面の燃焼によって健康に有害であり吸引処理する必要がある煙が発生し得るという問題点を有する。加えて、この方式の実施のために必要な性能を有する装置は極めて高コストかつ制御が難しいものとなる。さらに、レーザによる人体への被害と火災の危険性を防止するための処置を施す必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0698451号B1明細書
【特許文献2】スイス国特許第565632号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10325378号A1明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1410925号A2明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10357815号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、表紙に破損が生じない程度まで天および地の裁断中の裁断圧力による印刷製品の背部領域への負荷を低減することである。同時に本発明は従来の技術によって知られている装置の問題点を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により前記の課題は、裁断機構に対してその裁断機構とタイミング連動して綴じ付けられた縁部に対して垂直な裁断を実施する裁断装置を前置することによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る裁断装置を備えた裁断設備を概略的に示した側面図である。
【図2】図1の裁断設備を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明によって提案される装置の実施例について添付図面を参照しながら説明する。図中には説明中に記述されていない構成要素も含まれている。
【0014】
図1および図2には、本の背部領域10内で結合されたあるいは綴じ付けられた印刷製品7の前端部25、ならびに天19および/または地の縁部20を裁断するための裁断設備1が示されている。ここで印刷製品7は、規則的な間隔で前後に配置された搬送装置5の搬送手段4によって平坦面2を下にして綴じら付けられた縁部が搬送方向Fに対して直角かつ好適には前方になるように保持され、搬送サイクルと連動する裁断機構6を介して誘導される。
【0015】
前記の搬送手段4は周回動作する牽引手段14上に間隔をおいて取り付けられた把持具15によって形成することが好適であり、その中で印刷製品7が綴じ付けられた縁部3の領域で把持される。図示されていない手段によって印刷製品7がその背部10に従って位置合せされ搬送装置5の搬送手段4の中に移転される。裁断機構6は実質的に天/地の裁断ユニット21と前端部裁断ユニット22、および裁断装置8によって構成される。図示されている裁断機構6の実施例において天/地の裁断ユニット21は前端部裁断ユニット22に対して上流側に配置されている。しかしながら本発明はこのような裁断順序を有する裁断設備1に限定されるものではなく、それとは逆の裁断順序を有する裁断設備1を含むものとすることもできる。
【0016】
図1および図2に示されている裁断ユニット21,22の裁断刃具先端部は、裁断機構6がクランク式裁断機として形成され裁断刃具がいずれもクランク機構9によって駆動されることによって生じる円軌道上で動作する。各クランク機構は等しい半径を有することが好適であるが、それぞれ異なった半径とすることもできる。全てのクランク18が図示されていないギアを介して連動するように結合され、従って角度同期して駆動可能である。
【0017】
好適な実施形態によれば、裁断機構6および/または搬送装置5が制御装置13に結合されていて回転角制御可能な電気モータ16によって駆動される。
【0018】
従って本の背部10に対する刃先11の距離または本の背部10内への裁断刃具12の切り込み深度は、裁断機構6と搬送装置5を結合する制御装置13によって調節可能である。例えば制御装置13によって搬送装置5の位置をある分量で搬送方向Fに変化させた場合、それに応じて裁断刃具の切り込み深度が同じ分量増加する。
【0019】
さらに、搬送装置5に対する裁断機構6のタイミングを変化させることによって切り込み深度を変化させることもできる。例えば刃先11が早めに本の背部に作用すると切り込み深度が減少する。
【0020】
裁断される本の幅を調節するために搬送装置5の駆動機構に対して前端部裁断ユニット22の駆動機構が調節可能に形成される。それに代えて、制御装置13と結合された回転角制御可能な(図示されていない)専用の電気モータによって前端部裁断ユニット22を駆動することができる。この場合、搬送装置5に対する前端部裁断ユニット22のタイミングの調節、または本の幅の調節は、電気駆動機構の同期の調節によって直接的に達成することができる。
【0021】
裁断機構6に対してそれとタイミング連動し綴じ付けられた縁部に対して垂直な裁断を実施する裁断装置8が前置され、その裁断装置が本の背部10の延長に対して垂直に延在する刃先11を有する裁断刃具12を備えている。好適な実施形態において裁断装置8は天/地の裁断ユニット21の刃具17と結合された刃具支持部材23上に配置される。この構成によって天/地の裁断と略同期して、または少なくともそれよりも1動作サイクル先行して本の背部10上で表紙が予備裁断される。この構成はさらに、刃具17を搬送方向に対して直角に移動させることによって背部の長さを調節する際に裁断装置8が自動的に同時調節されるという利点を有する。前端部裁断ユニット22が天/地の裁断ユニット21に対して上流に配置される場合、裁断装置8を代替的に前端部裁断ユニット22の刃具支持部材24と結合することができる。勿論その場合、多様なフォーマットへの調節を可能にするために、裁断装置8を前端部裁断用の刃具に対して搬送方向Fに直角の方向に調節可能に構成する必要がある。
【0022】
図示された実施例において裁断機構6は剪断による裁断を行う裁断機構として形成されている。しかしながら、本発明はその裁断原理によって作用する裁断設備1に限定されるものではなく、カッターバーに対して裁断する刃具10を備えた裁断機構6も含まれる。
【0023】
また、刃具17が平坦面2に対して垂直な動作に加えて平坦面2に対して平行な動作を複合する、またはいわゆるスイングカットを実施するような裁断機構6内における本発明に係る装置の適用も可能である。
【0024】
本発明はさらに、印刷製品7の搬送中に裁断工程を実施するもの、ならびに印刷製品7の静止中に裁断工程を実施する裁断設備の両方に関する。
【符号の説明】
【0025】
1 裁断設備
2 平坦面
3 縁部
4 搬送手段
5 搬送装置
6 裁断機構
7 印刷製品
8 裁断装置
9 クランク機構
10 本の背部
11 刃先
12 裁断刃具
13 制御装置
14 牽引手段
15 把持具
16 電気モータ
17 刃具
18 クランク
19 天の縁部
20 地の縁部
21 天/地の裁断ユニット
22 前端部裁断ユニット
23,24 刃具支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに距離をおいて前後し平坦面(2)を下にして寝かせた状態にして綴じ付けられる側の縁部(3)が搬送方向(F)に対して直角に延在するようにされるとともに好適にはその縁部を前方にして搬送装置(5)の搬送手段(4)内に保持され、搬送サイクルと連動する裁断機構(6)を通って誘導される印刷製品(7)の天(19)および/または地の縁部(20)を裁断するための装置(1)であり、裁断機構(6)に対してその裁断機構とタイミング連動し綴じ付けられた縁部(3)に対して垂直な裁断を実施する裁断装置(8)を前置することを特徴とする装置。
【請求項2】
剪断による裁断を行う裁断機構(6)を備えてなる請求項1記載の装置。
【請求項3】
カッターバーに対して裁断を行う刃具(17)を有する裁断機構(6)を備えてなる請求項1記載の装置。
【請求項4】
裁断工程が印刷製品(7)の静止中に実施されることを特徴とする請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
裁断工程が印刷製品(7)の搬送中に実施されることを特徴とする請求項2または3記載の装置。
【請求項6】
本の背部(10)の延長に対して垂直に延在する刃先(11)を備えた刃具(12)を有する裁断装置(8)を備えたものであり、刃先(11)から本の背部(10)への距離あるいは本の背部(10)内への刃具(12)の切り込み深度が裁断機構(6)と搬送装置(5)を結合させる制御装置(13)によって調節可能であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
制御装置(13)に接続されていて回転角制御可能な電気モータ(16)によって裁断機構(6)および/または搬送装置(5)が駆動されることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
周回動作する牽引手段(14)上に互いに距離をおいて取り付けられた把持具(15)を有する搬送装置(5)を備え、前記把持具内に印刷製品(7)がその綴じ付けられた縁部(3)の領域でそれぞれ把持される、請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
裁断刃具先端部がそれぞれクランク機構(9)によって駆動されるクランク式裁断機として形成された裁断機構(6)を備えてなる請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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