説明

装置の正常性問題を予知するための方法

【課題】ジェットエンジンなどの電気、機械または電気機械装置の正常性問題を予知するための方法を提供する。
【解決手段】ジェットエンジン12などの電気、機械または電気機械装置の正常性問題を装置によって放出された放射に基づいて予知する方法であって、装置12が動作している間に、装置のプロファイルを確立するステップと、そのような装置12のプロファイルを保存するステップと、複数の装置12の履歴プロファイルのセットを形成するステップと、将来の障害を示す履歴プロファイルのセットの中の少なくとも1つの異常を識別するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の正常性問題を予知するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、電気製品などを含む様々な製品の中で、電気、機械または電気機械装置が使用され得る。そのような装置での現在の計装に伴う問題は、装置の正常性を監視または分析する際に使用するための物理的に取り付けられ、計装され得るセンサの数に制限があるということである。重量、ケーブル敷設、接合具、取り付け金具などのさらなる複雑さによって、装置に関してデータを収集することができるセンサの数は制限され得る。さらに、センサの数からのデータの相関は面倒な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,659,862号明細書
【発明の概要】
【0004】
一実施形態で、電気、機械また電気機械装置における正常性問題を装置によって放出された放射に基づいて予知する方法は、a)少なくとも部分的に装置をアンテナアセンブリに包むステップと、b)装置が動作している間に、アンテナアセンブリから受信された放射を検出することによって、装置のプロファイルを確立するステップと、c)装置のプロファイルを保存するステップと、d)多数の装置の履歴プロファイルのセットを形成するために、多数の回数、多数の装置の間でa〜cを繰り返すステップと、e)将来の障害を示す履歴プロファイルのセットの中の少なくとも1つの異常を識別するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ジェットエンジンを含む様々な装置を有する航空機の概略図である。
【図2】図1のジェットエンジンを含む本発明の実施形態による診断システムの概略図である。
【図3】本発明の実施形態による層状診断ツールの概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態による層状診断ツールの概略図である。
【図5】図2の診断システムの一部、および診断情報の分析を助けるための例示的なデータベースの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特定の設定における特定の装置の概要が役に立つ。図1は、本開示の実施形態のための環境を与える航空機10の一部を概略的に示す。航空機10には、胴体14に結合された1つまたは複数の推進力またはジェットエンジン12、胴体14に配置されたコックピット16、および胴体14から外側に延びる翼アセンブリ18が含まれてもよい。さらに、航空機10の適切な動作を可能にする複数のシステム20が含まれてもよく、通信ネットワーク22を通して飛行制御コンピュータ24に動作可能に結合されてもよい。ジェットエンジン12などの装置のライフサイクルの間、非限定的な例としてジェットエンジン12の正常性を含むジェットエンジン12に関する情報を判定することが所望される場合がある。
【0007】
図2は、非限定的な例として1つまたは複数の放射源を有し得るジェットエンジン12を含む任意の装置の正常性、診断と予知の両方を判定するために適した診断システム30を示す。ジェットエンジン12は、特には、とりわけ電磁放射を作り出すことができる、装置の中のコンポーネントを回転または往復運動させることによって生成される電気機械干渉からの源であってよい、全スペクトル放射の一部の源であってもよい。システム30は、本発明の実施形態による診断ツール32と信号モジュール34とプロセッサ36とディスプレイ38とを有する。以下の説明はジェットエンジン12のうちの1つである特定の装置に焦点を当てているが、本発明の概念が任意の対応する環境において使用され得る任意の適切な電気、機械または電気機械装置に適用されてもよいことが理解されよう。診断システム30は例示的な目的のためにのみ示されており、ジェットエンジン12などの装置を回転させるための典型的なシステムを表してもよい。診断システム30の構成は、代替装置とともに使用するために変更されてもよいことが理解されよう。
【0008】
診断ツール32は、ジェットエンジン12に巻きつけることができ、ジェットエンジン12の正常性データを感知するための1つまたは複数のセンサを有する診断ブランケットまたはラッパ40を含んでもよい。ラッパ40は装置を少なくとも部分的に包むことができるシートを含んでもよく、センサは装置からの全スペクトル放射のうちのユーザが選択した部分を受信するために1つまたは複数のアンテナを含んでもよいということが考えられる。ラッパ40のシートは柔軟なもの、硬いもの、柔軟なものと硬いものとの組合せであってもよい。アンテナアセンブリ42はラッパ40上に配置されるか、またはラッパ40に含まれてもよい。ラッパ40の形状は、ジェットエンジン12が沿って挿入され得る中心線44を有する円筒を定義し得る。図示する実施形態では、ラッパ40は円筒形の形状をしているので、ジェットエンジン12の周りを囲むことができ、円周ゾーンが同様のアンテナアセンブリ42を有して同種または異種の円周放射エリアを識別することを可能にする。ラッパ40は代替として完全にジェットエンジン12を包むことができてもよく、ジェットエンジン12を受け取るための大きさの内部を定義する形状で構成されてもよいことが考えられる。ラッパは、説明の便宜のために円筒として示しているが、様々な異なる形状に構成されてもよい。ラッパはジェットエンジンの輪郭に従ってもよく、ラッパのすべてまたは部分はジェットエンジンと接触してもよい。
【0009】
アンテナアセンブリ42を円筒構成において説明してきたが、この構成は、いくつかのアプリケーションにとっては様々な機械的障害のために実際的ではない場合があるということが理解されよう。したがって、アンテナアセンブリ42は識別可能な領域に分割されてもよく、そのような領域は同等の結果を与えてもよいということが考えられる。領域の数に関わらず、これらの領域のそれぞれは、ジェットエンジン12の中心線44から同じ径方向の距離であり得ることを理解されたい。これもまた実際的ではない場合、信号モジュール34および/またはプロセッサ36は、距離の変化による任意の信号強度の損失を補正してもよい。
【0010】
アンテナアセンブリ42は、動作の間にジェットエンジン12によって放出され得る全スペクトル放射のうちの少なくともある部分を示す少なくとも1つの放出信号を出力するように構成され得る。アンテナアセンブリ42は単に明快さを目的としてラッパ40の部分上で示しており、受け取られる所望の放射の要件に基づいて任意の幾何学的形状をとってもよい。アンテナアセンブリ42は、ジェットエンジン12によって放出される周波数を有する信号を受信するように設計および調整されてもよいことが考えられる。たとえば、アンテナアセンブリ42は、ジェットエンジン12の中の知られている放出源と同じ周波数に設計および調整されてもよい。
【0011】
また、アンテナアセンブリ42は多数の周波数を受信するように構成されてもよく、信号モジュール34の使用を通して選択的に所望の周波数または周波数帯域に調整する能力を備えたジェットエンジン12によって放出された異なる周波数の多数の信号を受信するように設計されてもよいということが考えられる。アンテナアセンブリ42はフラクタルアンテナを含み得ることが考えられる。そのようなフラクタルアンテナアセンブリ42は非常にコンパクトであってよく、多帯域または広帯域であるとみなされ得るので、電磁放射を含む全放射スペクトルのうちの所望の部分の多数の周波数を受信するように構成されてもよい。アンテナアセンブリ42は、ラッパ40上の位置と、ジェットエンジン12からの知られている放出源への周波数との両方でマッチする多数のフラクタルアンテナアセンブリを含んでもよい。
【0012】
アンテナアセンブリ42のタイプに関わりなく、アンテナアセンブリ42は、様々な方法および方法の組合せで構成されてもよい多数のアンテナアセンブリ42のアンテナ配列を含んでもよいことが考えられる。たとえば、1つまたは複数の周波数を受信するように構成されているアンテナのそれぞれは同一、類似または異なる周波数を受信するように構成されてもよく、アンテナは、アンテナが受信するように構成されている1つまたは複数の周波数に対応する周波数で放出する全スペクトル放射源のうちのユーザが選択した部分の隣など、ラッパの異なる位置に配置されてもよい。
【0013】
アンテナアセンブリ42のタイプに関わらず、アンテナは信号モジュール34に動作可能に結合されてもよく、ジェットエンジン12によって放出される全スペクトル放射のうちの少なくともある部分を示す少なくとも1つの放出信号を信号モジュール34に出力してもよい。信号モジュール34は、アンテナアセンブリ42から送信された放出信号の特定のフィルタリングを提供するように構成されてもよい。信号モジュール34は、特定のフィルタリングを、アンテナアセンブリ42の局特有またはシステム領域特有の入力信号に提供するように構成されてもよい。信号モジュール34は、フィルタリング、および求める周波数に調整した正確性を提供するための任意の適切なモジュールを含んでもよい。そのような信号モジュール34は、フィルターのカットオフまたはノッチ周波数をプログラミングすることができてもよいことが考えられる。信号モジュール34はまた、フィルタリングされた放出信号とフィルタリングされていない放出信号の両方を記憶するためのメモリデバイス(不図示)を含んでもよい。プロセッサ36は、そのようなメモリデバイスから放出信号を受信してもよい。プロセッサ36は放出信号を受信し、それを人間が読み取ることができる形式に変換するように構成されてもよい。プロセッサ36は、人間が読み取ることができる形式を表示するために構成されてもよいディスプレイ38に動作可能に結合されてもよい。プロセッサ36およびディスプレイ38をラップトップコンピュータに含まれたものとして示しているが、任意の適切なプロセッサ36およびディルプレイ38が使用されてもよく、プロセッサ36とディスプレイ38とは物理的に別々の装置の中にあってもよい。ディスプレイ38は、人間が読み取ることができる形式の放出信号を表示するように構成されてもよいことが考えられる。そのような人間が読み取ることができる形式の放出信号50は図2に概略的に示されており、任意の適切な形式をとってもよい。このことはシステムの動作に必要でなくてもよいが、ディスプレイ38はリアルタイムの表示およびデータ記憶が可能であってもよく、そのようなリアルタイムのデータ処理は、データのグラフィック表示を通してオペレータが異常を通知する際に役立つ。このことは、特にジェットエンジン12の開発段階で重要な場合がある。
【0014】
図3に示すように、ラッパ40は多数の層で形成されてもよい。たとえば、ラッパ40はポリエステルフィルムなどのラミネート層60を含んでもよい。ラミネート層60などの上にアンテナアセンブリ42を印刷するために、柔軟な印刷プロセスが使用されてもよい。この方法では、ラッパ40は多層シートを含んでもよく、アンテナアセンブリ42が1つの層に設けられてアンテナ層62を定める。アンテナ層62上のアンテナの設計は、意図する装置の物理的サイズおよび所望の帯域幅に基づいて簡単に更新または変更され得る。アプリケーションに応じて、アンテナアセンブリ42の任意のアンテナまたはその組合せは、ラッパ40のラミネート層60に簡単に適合され、テストされ、適用され得る。望ましくない外部信号からのシールドを作成するため、極端な温度から遮断するため、および可聴周波音のバリアを作成するために、ラッパ40にさらなるラミネートが追加されてもよい。非限定的な例として、電気シールド層64はアンテナ層62の隣に含まれてもよい。さらなる非限定的な例として、第1の保護層66は、アンテナ層62と電気シールド層64のうちの1つの隣に含まれてもよい。さらに、第2の保護層68は、アンテナ層62と電気シールド層64のうちの他のものの隣に含まれてもよい。第1の保護層66および第2の保護層68はポリエステルフィルムを含んでもよく、電気シールド層64は導電性フィルムまたはアルミニウムシートを含んでもよいことが考えられる。
【0015】
図4は、代替の診断ツールを作成するための代替のラッパ40を示す。図示する代替のラッパ40は代替のアンテナアセンブリ42と同様に波型構成を含む。より具体的には、多層ラッパ40を作るために、ポリエステルフィルム層61、電気シールド層65および遮断層67だけが含まれるのではなく、アンテナアセンブリ42は多数の層も含む。より具体的には、アンテナアセンブリ42は、ポリエステルフィルム層61によって互いに間隔をあけて配置された多数のアンテナ層63によって形成されるものとして示されている。そのようなアンテナアセンブリ42は、設計において容量性であってもよく、上述の誘導性の設計からより低い周波数の放射を検出し得るピエゾアンテナアセンブリとして考えられてもよい。この説明のために、アンテナアセンブリ42は誘導性または容量性のいずれかであってよく、従来のアンテナからフラクタル設計まで異なってもよいように任意の形状に限定されることはない。
【0016】
アンテナアセンブリ42が誘導性の設計であるか、容量性の設計であるかどうかには関わりなく、一般に動作の間、診断システム30の診断ツール32はジェットエンジン12から電気機械的放射を受け取ってもよい。そのような放射は信号モジュール34によってフィルタリングされるか、またはそれ以外に調整されてもよく、記録または表示されてもよい。たとえば、位置に依存した周波数情報は、サンプリングされたデータの統計的平均値、最小値、最大値および標準偏差を含む人間が読み取ることができる形式で表示されてもよい。放出信号は、ジェットエンジンの寿命のうちのある時点で、またはジェットエンジン12の寿命を通じて評価および比較のためにプロセッサ36に送信されてもよい。データの統計的処理は、プロセッサ36または他のプロセッサのいずれかで行われてもよいことが考えられる。そのような処理によって、エンジン対エンジン、航空機一団対航空機一団、工場対工場の傾向表示、診断および予知アプリケーションを適用することができる。そのような後処理ソフトウェア、ならびに放出信号を人間が読み取ることができる形式へ変換することおよびそれを表示することは、学習とともに拡張されてもよいことが考えられる。
【0017】
診断システムが使用されてもよい場合の例は、たとえば、各ジェットエンジン12の全スペクトル放射のプロファイルのうちの少なくとも一部のためにベースラインまたは青写真を確立するための生産の間である。診断システム30はまた、ジェットエンジン12のライフサイクルの中の1つまたは複数の後の方の時間で点検放射プロファイルを確立するために使用されてもよい。ベースラインおよび点検プロファイルは、診断および予知の利益のための、様々な方法で互いに比較されてもよい。
【0018】
また、診断システム30の一部はジェットエンジン12と一体化されてもよく、定期検査のために診断システム30の残りの部分に接続されてもよいことが考えられる。さらに診断システム30のインサービス版が提供されてもよく、そのようなインサービス版は、ジェットエンジン12の異常が悪化する前に、傾向の変化を航空機10の保守管理者に通知することができるように、リアルタイムのプロファイルを比較し、ワイヤレスシステム(不図示)を通して障害レポートを送信することができる。
【0019】
したがって、本発明の1つの実施形態によって、上述の診断システム30は、そのようなジェットエンジン12での製造のばらつきを診断する方法を実施するために使用されてもよい。そのような方法は、アンテナ配列の形式でアンテナアセンブリ42を含んでもよい。そのような方法の実施形態は、a)製造後、およびジェットエンジン12が就航する前に、少なくとも部分的にジェットエンジン12をアンテナアセンブリ42に包むステップと、b)ジェットエンジン12が動作している間にアンテナアセンブリ42から受信される放射を検出することによって、ジェットエンジン12のためのベースラインプロファイルを確立するステップと、c)ジェットエンジン12のためのベースラインプロファイルを保存するステップと、d)多数のジェットエンジン12のためのベースラインプロファイルのセットを形成するために多数のジェットエンジン12についてa〜cを繰り返すステップと、e)ジェットエンジン12の製造におけるばらつきを示す差異を判定するために、ベースラインプロファイルのセットを比較するステップとを含んでもよい。ジェットエンジン12において例外的な、または異なっている技術的効果は、差異に基づいて判定されてもよい。
【0020】
ジェットエンジン12を操作することは、テストプロトコルに従ってジェットエンジン12を操作することを含んでもよいことが考えられる。多数のジェットエンジン12は、少なくとも1つの共通構成要素を共有してもよいことが考えられる。多数のジェットエンジン12は、同じタイプのジェットエンジンであってもよい。ベースラインプロファイルのセットを比較することは、ベースラインプロファイルのうちの少なくともサブセットを比較することを含んでもよい。ベースラインプロファイルのセットを比較することは、ベースラインプロファイルのうちのすべてを比較することを含んでもよいことが考えられる。少なくとも1つの識別された差異は、製造のばらつきを示す基準値と比較されてもよい。そのような製造のばらつきは、製造過程の変化または製造の欠点を示してもよいことが考えられる。
【0021】
この方法では、診断システム30は、多数のジェットエンジン12の中でベースラインプロファイルを比較することに基づいて、製造のばらつきに対処してもよい。比較されたベースラインプロファイルの中の変化または傾向は、テスト中にジェットエンジンに影響を及ぼす生産の異常を発見する際に使用されてもよい。テストされ、除外されるシステムにつながる傾向は、生産の問題を示していてもよい。テストされ、除外されるシステムにつながるデータを比較することによって、変化の根本原因を分離することができる。
【0022】
上述の診断システム30はまた、ジェットエンジン12の正常性を診断する方法を実施するために使用されてもよい。そのような方法は、アンテナ配列の形式でアンテナアセンブリ42を含んでもよい。そのような方法の実施形態は、少なくとも部分的にジェットエンジン12をアンテナアセンブリ42に包むステップと、第1の時間で、アンテナアセンブリ42から受信された放射を検出することによってベースラインプロファイルを確立し、それを記録するステップと、第1の時間の後の第2の時間で、アンテナアセンブリから受信された放射を検出することによって検査プロファイルを確立するステップと、ジェットエンジン12の正常性を示す差異を判定するために、検査プロファイルとベースラインプロファイルを比較するステップとを含んでもよい。ベースラインプロファイルは、ジェットエンジン12の知られている正常状態の間に確立されてもよい。非限定的な例として、知られている正常状態は、ジェットエンジン12の製造の完了を含んでもよい。
【0023】
検査プロファイルは、いつか後で確立されてもよいことが考えられる。これは、非限定的な例として、少なくともジェットエンジン12の動作の異常な状態、定期間隔、および定期保守管理スケジュールの一部においての少なくとも1つを含んでもよい。検査プロファイルとベースラインプロファイルを比較するステップは、検査プロファイルとベースラインプロファイルとの間の放射の差異を識別するステップを含んでもよい。識別された差異は、ジェットエンジン12の故障を示す基準値と比較されてもよいことが考えられる。
【0024】
非限定的な例として、ジェットエンジン12は7000サイクルの使用後、分解点検工場に送られていると仮定してもよい。通常の工場の手順は、エンジンを分解して、摩耗または損傷した部品を検査し、それらの部品を取り換えて、エンジンを組み立て直すことを規定している。エンジンを運転に戻す前の最終品質検査の一部として、エンジンの本番運転の間に本来実行されていたものと同じテスト手順をエンジンに循環的に行うテストルーチンが実行されてもよい。理想的には、検査プロファイルのものと比較されるエンジンの本来のベースラインプロファイルの比較は同一のものになる。これらがマッチしない場合、点検修理されたエンジンには本来のエンジンから何らかの変化があったという表示がある。この時点で、ジェットエンジンが統計的制限内にあるかどうかを調べるために、検査プロファイルを以前の航空機一団全体にわたる統計値と比較するステップと、検査プロファイルを同様の特徴を備える他のエンジンと比較するステップと、ベースラインプロファイルからの大きな変化を示さなかったジェットエンジンの保守管理手順および/または結果を比較するステップとを含む複数の行為の工程が生じ得る。
【0025】
上述の実施形態はまた、ジェットエンジン12の正常性の問題を予知する方法を実施するために使用されてもよい。そのような方法は、アンテナ配列の形式でアンテナアセンブリ42を含んでもよい。そのような方法の実施形態は、a)少なくとも部分的にジェットエンジン12をアンテナアセンブリ42に包むステップと、b)ジェットエンジン12が動作している間にアンテナアセンブリから受信される放射を検出することによって、ジェットエンジン12のためのベースラインプロファイルを確立するステップと、c)ジェットエンジン12のためのベースラインプロファイルを保存するステップと、d)多数のジェットエンジン12のための履歴プロファイルのセットを形成するために、多数の回数、多数のジェットエンジン12の間でa〜cを繰り返すステップと、e)将来の障害を示す履歴プロファイルのセットの中の少なくとも1つの異常を識別するステップとを含んでもよい。プロファイルを確立するステップは、全スペクトル放射のうちのユーザが定める部分を確立することに限定されてもよいことが考えられる。非限定的な例として、ジェットエンジン12のための電磁プロファイルが確立されてもよい。
【0026】
多数のジェットエンジン12は、少なくとも1つの共通構成要素を共有することが考えられる。多数のジェットエンジン12は、同じタイプのジェットエンジン12であってもよい。障害はジェットエンジン12の中で識別されてもよく、その障害は識別された異常に関連していてもよいこともまた考えられる。識別された障害は、関連した異常を識別するために使用されてもよい。この方法はまた、異常について他のジェットエンジン12のそれぞれの履歴プロファイル(ベースラインおよび検査プロファイル)を分析するステップを含んでもよい。履歴プロファイルの中で異常が検出される場合、潜在的障害の警告が送られてもよい。このプロファイルは、ジェットエンジン12の製造が完了したとき、ジェットエンジン12が就航する前に、記録されるベースラインプロファイルを含んでもよい。プロファイルは、対応するベースプロファイルの後に記録される検査プロファイルを含む。
【0027】
プロファイルは、アクセスすることができるコンピュータ検索可能な記憶媒体に記憶されてもよく、正常性診断および予知を目的として様々な方法で分析されてもよいことが考えられる。非限定的な例として、図5は、(ベースライン、検査などの)プロファイルが、コンピュータ検索可能であってよいプロファイルデータベース70の中に記憶されてもよいことを示す。保守管理データベース72はプロファイルデータベース70に動作可能に結合されてもよく、ジェットエンジン、それらの保守管理、それらの点検修理の利用状況などに関連したさらなるデータまたは情報を含んでもよい。保守管理データベース72の中のデータは、プロファイルについての情報が、そのプロファイルを作成したジェットエンジンについての情報とリンクされてもよいように、プロファイルデータベース70の中のプロファイルとリンクされてもよい。プロファイルデータベース70の中の情報と保守管理データベース72の中の情報を結び付けることによって、ジェットエンジンの修繕、点検修理の利用状況、ならびにジェットエンジンおよびプロファイルの変化に関連した他のフライト情報の間で、推論が導き出されることが可能になってもよい。
【0028】
プロファイルデータベース70および保守管理データベース72は、多数のデータセットを有する単一のデータベース、ともにリンクされた多数の個別のデータベース、さらには単にデータテーブルであってもよいことが理解されよう。データベースのタイプに関わらず、プロファイルデータベース70および保守管理データベース72はコンピュータ(不図示)上の記憶媒体に与えられてもよく、またはデータベースサーバなどのコンピュータ可読媒体に与えられてもよい。プロファイルデータベース70および保守管理データベース72は、同じコンピュータまたはデータベースサーバ(74として概略的に示す)に与えられてもよいことが考えられる。代替的に、プロファイルデータベース70と保守管理データベース72は、別個のコンピュータまたは別個のデータベースサーバに配置されてもよい。
【0029】
プロファイルデータベース70および保守管理データベース72の中の情報は、正常性診断および予知を目的として様々な方法で分析されてもよい。プロファイルデータベース70および保守管理データベース72がコンピュータに記憶されている場合、コンピュータ自体のプロセッサは、そのような診断および予知を目的として使用されてもよく、分析結果をディスプレイを介して通信してもよく、またはその結果を局所または遠隔のユーザに送信してもよい。代替的に、別個のコンピュータはプロファイルデータベース70および保守管理データベース72にアクセスしてもよい。非限定的な例として、プロセッサ36は、プロファイルデータベース70および保守管理データベース72に動作可能に結合され、それらの中にあるデータを分析し、そのような分析の結果をディスプレイ38に通信し得るものとして示されている。さらに、プロセッサ76およびディスプレイ78を有する遠隔コンピュータはプロファイルデータベース70および保守管理データベース72に動作可能に結合されてもよく、それらの中にあるデータを分析し、そのような分析の結果を遠隔のユーザに通信してもよい。コンピュータは、プロファイルデータベース70および保守管理データベース72を分析コンピュータと結合する通信ネットワークまたはコンピュータネットワークを介して、プロファイルデータベース70および保守管理データベース72にアクセスしてもよいことが理解されよう。非限定的な例として、そのようなコンピュータネットワークはローカルエリアネットワーク、またはインターネットなどのより大きなネットワークであってもよい。また、そのような結合はワイヤレスで、または有線接続を介して行われてもよいことが考えられる。
【0030】
プロファイルデータベース70および保守管理データベース72の中のデータの分析の間、データは、エンジンごとの基準、航空機一団ごとの基準などを含む任意の適切な方法でフィルタリングされてもよい。分析は、生産モデル間の比較、点検修理中のシステムからのデータと生産当初のデータとの間の比較、潜在的な将来の障害を識別するための点検修理中のシステム間の比較を含む比較を行うためになされてもよい。そのような比較は、非限定的な例として、航空機一団全体にわたる比較、サイクル数の比較、ならびに事前および事後の保守管理の比較を含んでもよい。技術的効果は、ジェットエンジン全体の正常性に関連した診断システムからの情報が様々な方法で比較されてもよく、様々な分析が行われ得るようなエンジンに関連した様々な他の情報と関連付けられてもよい、ということである。
【0031】
上述の実施形態は、アンテナ配列を含むアンテナアセンブリに関して説明しているが、単一または多数のアンテナアセンブリが使用され得ることが理解されよう。また、アンテナアセンブリは誘導および/または容量特性を有し得ることが理解されよう。さらに、全スペクトル放射のうちの任意の部分を検出することは、アンテナアセンブリ42を形成する多数の周波数アンテナから全スペクトル放射の一部を受信することを含んでもよい。さらに、非限定的な例として、多周波数アンテナはフラクタルアンテナを含んでもよい。上述の方法の全体において、ジェットエンジン12はアンテナアセンブリ42に完全に包まれてもよいことが考えられる。
【0032】
さらに、アンテナアセンブリ42は、ジェットエンジン12によって放出される全スペクトル周波数のうちの少なくとも一部に合わせて設計および調整されてもよい。アンテナアセンブリ42は、ジェットエンジン12の各部分のために選択的に調整されてもよいことが考えられる。アンテナアセンブリは、知られている周波数を受信するように構成されたアンテナが選択されてもよいということを含めて、様々な方法で調整されてもよい。アンテナアセンブリを調整することはまた、知られている周波数が放出されるジェットエンジン12の隣に選択されたアンテナを配置することを含んでもよい。
【0033】
上述の実施形態では、ジェットエンジン12に関する診断システム30およびその使用法に焦点を当ててきたが、上述の診断システム30は任意の電気、機械または電気機械装置を診断するように構成されてもよいということが理解されよう。そのような場合、ラッパのサイズおよび形状は、テストまたは監視される装置に容易に適合させることができる。たとえば、より大きな装置では、一部の周波数はより低い傾向にあり、対応するアンテナ42はより大きい場合がある。ラッパは不規則および/または非対称のシステムに容易に適合させることができる。さらに、内燃機関、ターボ機械などの動流体である装置については、制御された環境条件は圧力および温度の影響を受けるシステムのための生産テストの中で維持されないと、その装置のために収集されたデータは、適用可能な圧力および温度のために修正され得るということが理解されよう。流体を移動させない機械装置などの圧力および温度の変動の影響を受けないシステムについては、圧力および温度の変動のためのデータ修正は適用されなくてもよい。
【0034】
上述の実施形態は、ひいては継続的な保守管理コストを減らす可能性のある、装置の正常性を検証するために必要な時間および労力の削減を含む様々な利益を提供する。診断システム30は、装置の知られている物理的関係に合わせて特に作られてもよく、圧倒的に数が多く、扱いにくい、大量の個々のセンサのセットの代わりに用いられてもよい。アンテナアセンブリは、典型的なセンサ一式の重量のうちのほんの一部で、センサの強度スケーリングを組み込んでもよい。さらに、そのような多数のセンサから関連ケーブルが減少し、ケーブルコネクタが減少し、関連のルーティングハードウェアが減少する。これらの減少は、航空機アプリケーションを含む重量の影響を受けるシステムのための相当な運用費の節約となる場合がある。さらに、上述の項目の減少はまた、穴あけ、ねじ立て、ブラケット取り付け、固定などの必要な機械加工作業の量の減少につながる可能性があり、これもまたコスト節約につながり得る。信頼性の問題はセンサ、ケーブルおよびケーブルのタイプ、複雑なケーブルコネクタ、関連のルーティングハードウェアの減少によって最小化され得るので、上述の実施形態はまた信頼性の利益も提供することができる。さらに、システムが単一の調節モジュールを使用し得ることは、入力配線方式を単純化することができる。単一の分離した個別の位置しか持たない場合のある典型的なセンサ一式とは対照的に、上述の実施形態はまた、装置全体を表す表現を達成することができるので、より信頼性の高い診断を提供することができる。
【0035】
この書面による説明では、最良の方式を含めて本発明を開示するため、また任意のデバイスもしくはデバイスを作成および使用すること、ならびに任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、任意の当業者が本発明を実施することを可能にするために例が使用されている。特許性のある本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含んでもよい。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と差異のない構造的要素を持つ場合、または特許請求の範囲の文言から実質的に差異のない同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内に入るものとする。
【符号の説明】
【0036】
10 航空機
12 ジェットエンジン
14 胴体
16 コックピット
18 翼アセンブリ
20 システム
22 通信ネットワーク
24 飛行制御コンピュータ
30 診断システム
32 診断ツール
34 信号モジュール
36 プロセッサ
38 ディスプレイ
40 ラッパ
42 アンテナアセンブリ
44 中心線
50 放出信号
60 ラミネート層
61 ポリエステルフィルム層
62 アンテナ層
63 アンテナ層
64 シールド層
65 シールド層
66 第1の保護層
67 遮断層
68 第2の保護層
70 プロファイルデータベース
72 保守管理データベース
74 データベースサーバ
76 プロセッサ
78 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気、機械または電気機械装置における正常性問題を前記装置によって放出された放射のうちの少なくとも一部に基づいて予知する方法であって、
a)少なくとも部分的に前記装置をアンテナアセンブリに包むステップと、
b)前記装置が動作している間に、前記アンテナアセンブリから受信された前記放射を検出することによって、前記装置のプロファイルを確立するステップと、
c)前記装置の前記プロファイルを保存するステップと、
d)多数の装置の履歴プロファイルのセットを形成するために、多数の回数、前記多数の装置の間でa〜cを繰り返すステップと、
e)将来の障害を示す履歴プロファイルの前記セットの中の少なくとも1つの異常を識別するステップとを備える方法。
【請求項2】
前記装置は前記アンテナアセンブリに完全に包まれる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記装置によって放出された少なくともいくつかの放射周波数に前記アンテナアセンブリを調整するステップをさらに備える請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アンテナアセンブリを調整するステップは、前記装置の正常性を示すものとして知られる周波数に前記アンテナアセンブリを調整することを備える請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記アンテナアセンブリを調整するステップは、前記知られている周波数を受信するように構成されたアンテナを選択することを備える請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記アンテナアセンブリを調整するステップは、前記知られている周波数が放出される前記装置の隣に選択されたアンテナを配置することを備える請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記多数の装置は少なくとも1つの共通構成要素を共有する請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記多数の装置は同じ装置である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記装置はジェットエンジンである請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記アンテナアセンブリから受信された前記放射を検出する前記ステップは、前記アンテナアセンブリを形成する多重周波数アンテナから受信された前記放射を受信することを備える請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記多重周波数アンテナはフラクタルアンテナを備える請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記識別された異常に関連した前記少なくとも1つ装置の中で障害を識別するステップをさらに備える請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記識別された障害は、前記関連した異常を識別するために使用される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記異常について、前記他の装置の各々の前記履歴プロファイルを分析するステップをさらに備える請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記異常が前記履歴プロファイルの中で検出される場合、潜在的障害の警告を送るステップをさらに備える請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記プロファイルは、前記装置の製造が完了したとき、前記装置が就航する前に記録されるベースラインプロファイルを含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記プロファイルは、前記対応するベースラインプロファイルの後で記録される検査プロファイルを含む請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記アンテナアセンブリから受信された前記放射は電磁放射である請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記アンテナアセンブリは、容量特性を有するピエゾアンテナである請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109765(P2013−109765A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252815(P2012−252815)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【出願人】(506388923)ジーイー・アビエイション・システムズ・エルエルシー (46)
【Fターム(参考)】