説明

装軌式車両のリコイル装置

【課題】スプリングカバーの内部に土砂などの異物が入り込むことを確実に防止して、ストロークの安定確保、リコイルロッドの長寿命化を可能にした装軌式車両のリコイル装置を提供する。
【解決手段】リコイル装置Cの衝撃緩和機構10が、アイドラブラケット5の後端に繋がるサポート13と、サポート13に一端側を保持させて設置されるスプリング12と、スプリング12の中心部に挿通配置され、先端部側がサポート13に相対的に進退可能に支持されたリコイルロッド15と、スプリング12を被覆して内包し、内面16cがサポート13の外面13aに摺動するように設けられたスプリングカバー16とを備えている。そして、スプリングカバー16の内面16cとサポート13の外面13aが摺動する摺動部20に生じる隙間を、スプリング12を内包したスプリングカバー16の内部空間Mあるいは外部空間Nと不連続にする遮蔽部材31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルやブルドーザ等の装軌式車両のリコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図7から図9に示すように、油圧ショベルなどの装軌式車両1の走行装置(足回り装置)2は、走行フレーム3の後端側に軸支されたスプロケット4と、走行フレーム3の前端側にアイドラブラケット5を介して軸支されたアイドラプーリ6と、スプロケット4とアイドラプーリ6の間に配設された上転輪7及び下転輪8と、スプロケット4、アイドラプーリ6、上転輪7、下転輪8に巻き掛けられた無端状の履帯9とを備えて構成されている。
【0003】
また、走行フレーム3の内部には、図7及び図9から図11に示すように、アイドラプーリ6が受ける衝撃を吸収して緩和するための衝撃緩和機構10と、アイドラプーリ6を付勢して履帯9の張力を調整するための履帯張り調整機構11とを備えるリコイル装置Aが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図10及び図11に示すリコイル装置Aは、衝撃緩和機構10と履帯張り調整機構11を直列に配置した直列型リコイル装置であり、衝撃緩和機構10は、付勢体としてのスプリング12と、アイドラブラケット5の後端に繋げて設けられ、スプリング12の先端(一端)側を保持するサポート13と、スプリング12の後端(他端)側を保持する環状のプレート14と、スプリング12の中心部に挿通配置され、先端部側がサポート13に相対的に進退可能に支持されたリコイルロッド15と、スプリング12を被覆して内包するように設けられたスプリングカバー16とを備えて構成されている。また、履帯張り調整機構11は、シリンダ17と、ピストン18と、シリンダ17のピストン室(グリース室)17aに対してグリースを給排するための給排脂部19とを備えて構成されている。
【0005】
そして、衝撃緩和機構10は、装軌式車両1の走行時にアイドラプーリ6が衝撃を受けると、スプリング12で付勢されたサポート13とリコイルロッド15が軸線O1方向(前後方向)に相対的に進退し、これとともにスプリング12が伸縮して衝撃を吸収緩和する。このとき、スプリングカバー16は、その後端16a側をプレート14に固定して支持され、スプリング12のストロークSに応じて軸線O1方向に進退する。また、スプリングカバー16は、軸線O1方向に進退する際にその先端16b側の内面16cがサポート13の外面13aに摺動するように設けられている。
【0006】
一方、履帯張り調整機構11は、リコイルロッド15の後端に取り付けたヘッド15aがピストン18と対向するようにシリンダ17のピストン室17a内に配設され、このリコイルロッド15を介して衝撃緩和機構10と繋げられている。そして、給排脂部19(給脂口19aと排脂口19b)からグリースを給排してピストン室17a内のグリース量を調整すると、ピストン18ひいてはプレート14の位置、さらにスプリング12で付勢してサポート13の位置を調整することができ、サポート13にアイドラブラケット5を介して繋がるアイドラプーリ6の位置を調整することができる。これにより、ピストン室17a内のグリース量を調整することで履帯9の張力を調整することが可能とされている。
【特許文献1】実用新案登録第2563419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10及び図11に示した従来のリコイル装置Aにおいては、図12に示すように、スプリングカバー16とサポート13がスプリング12のストロークSに応じて相対的に進退する際に、このスプリングカバー16の先端16b側の内面16cとサポート13の外面13aが摺動する摺動部20(摺動部20のスプリングカバー16の内面16cとサポート13の外面13aの間)に隙間Hが生じ、この摺動部20の隙間Hから土砂などの異物が、スプリング12を内包したスプリングカバー16の内部(内部空間M)に入り込む場合があった。
【0008】
そして、スプリングカバー16の内部Mに土砂などの異物が入り込むと、スプリング12やリコイルロッド15に異物が付着し、さらにスプリング12の伸縮、リコイルロッド15の進退によって異物が締め固められて硬化し、この異物の堆積によってストローク不良が発生するという問題があった。また、このようにストローク不良が発生すると、走行装置2への過大荷重の発生を招き、さらにリコイルロッド15への偏荷重の発生を招いて、リコイルロッド15の寿命が短期化するおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、スプリングカバーの内部に土砂などの異物が入り込むことを確実に防止して、ストロークの安定確保、リコイルロッドの長寿命化を可能にした装軌式車両のリコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置は、アイドラブラケットの先端側に回動自在に軸支されたアイドラプーリが受ける衝撃を緩和するための衝撃緩和機構を備える装軌式車両のリコイル装置であって、衝撃緩和機構は、アイドラブラケットの後端に繋がるサポートと、サポートに一端側を保持させて設置されるスプリングと、スプリングの中心部に挿通配置され、先端部側がサポートに相対的に進退可能に支持されたリコイルロッドと、スプリングを被覆して内包し、内面がサポートの外面に摺動するように設けられたスプリングカバーとを備え、スプリングカバーの内面とサポートの外面が摺動する摺動部に生じる隙間を、スプリングを内包したスプリングカバーの内部空間あるいは外部空間と不連続にする遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の装軌式車両のリコイル装置は、請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置において、遮蔽部材が、環状に形成され、外周縁側をサポートの摺動部の外面よりも径方向外側に突出させ、この外周縁側がスプリングカバーの内面に摺接するように、サポートの後端側に一体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の装軌式車両のリコイル装置は、請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置において、遮蔽部材が、筒状の弾性体で構成されており、摺動部を外側から被覆して内包するように、一端側をサポートの外面に、他端側をスプリングカバーの外面にそれぞれ固着して設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の装軌式車両のリコイル装置は、請求項3記載の装軌式車両のリコイル装置において、遮蔽部材が蛇腹状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置においては、遮蔽部材を設けることにより、摺動部に生じる隙間がスプリングカバーの内部空間あるいは外部空間と不連続になるため、この隙間を通じてリコイル装置の外部(外部空間)からスプリングカバーの内部(内部空間)に土砂などの異物が入り込むことを防止することが可能になる。これにより、異物の堆積によるストローク不良の発生を防止でき、走行装置への過大荷重の発生、リコイルロッドへの偏荷重の発生を防止できる。よって、ストロークを安定確保することが可能になるとともに、リコイルロッドの長寿命化を図ることが可能になる。
【0016】
請求項2記載の装軌式車両のリコイル装置においては、環状に形成した遮蔽部材を、その外周縁側がスプリングカバーの内面に摺接するようにサポートの後端側に設けることによって、摺動部に生じる隙間とスプリングを内包するスプリングカバーの内部空間とを不連続にすることが可能になる。これにより、リコイル装置の外部から摺動部に生じる隙間に土砂などの異物が入り込んだ場合においても、遮蔽部材によってこの異物がスプリングカバーの内部に入り込むことを確実に防止することが可能になる。
【0017】
請求項3記載の装軌式車両のリコイル装置においては、一端側をサポートの外面に、他端側をスプリングカバーの外面にそれぞれ固着して、摺動部を外側から被覆して内包するように筒状の遮蔽部材を設けることによって、リコイル装置の外部と摺動部に生じる隙間とを不連続にすることが可能になる。これにより、リコイル装置の外部から摺動部に生じる隙間に土砂などの異物が入り込むことを防止でき、スプリングカバーの内部に異物が入り込むことを確実に防止することが可能になる。
【0018】
また、遮蔽部材が弾性体であることによって、スプリングカバーとサポートがスプリングのストロークに応じて相対的に進退した場合においても、遮蔽部材を弾性変形させることが可能になる。これにより、遮蔽部材によってストロークに悪影響が生じることがなく、適正なストロークを維持しつつ確実にスプリングカバーの内部に異物が入り込むことを防止することが可能になる。
【0019】
請求項4記載の装軌式車両のリコイル装置においては、遮蔽部材が蛇腹状に形成されていることによって、スプリングカバーとサポートがスプリングのストロークに応じて相対的に進退するとともに、確実に遮蔽部材を弾性変形させることが可能になり、適正なストロークを維持しつつスプリングカバーの内部に異物が入り込むことを防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1から図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る装軌式車両のリコイル装置について説明する。ここで、本実施形態は、図7から図9に示した油圧ショベルなどの装軌式車両1の走行装置(足回り装置)2に具備されるリコイル装置に関し、図10から図12に示したものと同様、直列型リコイル装置に関するものである。よって、本実施形態では、図7から図12に示した走行装置2及びリコイル装置Aと同様の構成に対し同一符号を付して説明を行う。
【0021】
本実施形態の装軌式車両1のリコイル装置Bは、図1及び図2に示すように、アイドラブラケット5の先端側に回動自在に軸支されたアイドラプーリ6が受ける衝撃を吸収して緩和するための衝撃緩和機構10と、アイドラプーリ6を付勢して履帯9の張力を調整するための履帯張り調整機構11とを備えて構成されている。ここで、履帯張り調整機構11は、図10から図12に示したリコイル装置Aと同様に、シリンダ17と、ピストン18と、シリンダ17のピストン室(グリース室)17aに対してグリースを給排するための給排脂部19とを備えて構成されている。
【0022】
衝撃緩和機構10は、付勢体としてのスプリング12と、アイドラブラケット5の後端に繋げて設けられ、スプリング12の先端(一端)側を保持するサポート13と、スプリング12の後端(他端)側を保持する環状のプレート14と、スプリング12の中心部に挿通配置され、先端部側がサポート13に相対的に進退可能に支持されたリコイルロッド15と、スプリング12を内包するスプリングケース21とを備えて構成されている。
【0023】
サポート13は、後端側が縮径して小径部22aと大径部22bを備える略有底円筒状の収容部22と、収容部22の先端から径方向外側に延出し、周方向に延設されたフランジ部23とを備えて形成されている。このサポート13は、アイドラブラケット5の後端にフランジ部23を繋げ、先端側の開口をアイドラプーリ6側に向けて設けられている。また、サポート13は、スプリング12の先端側を大径部22bの後端面に当接させ、小径部22aをスプリング12の先端側の内部に挿入配置して係合させて、スプリング12の先端側を保持している。
【0024】
そして、スプリング12は、先端側がサポート13に、後端側がプレート14にそれぞれ保持されて軸線O1方向(前後方向)に伸縮可能に設置されている。また、リコイルロッド15は、サポート13の後端側から先端部側を挿通し、サポート13の収容部22内に配された先端部に抜止め用のナット24を取り付けて、サポート13に進退可能に支持されている。
【0025】
スプリングケース21は、スプリングカバー(外筒)16と内筒25を備えて構成されている。スプリングカバー16は、スプリング12を外側から被覆して内包するように設けられ、内筒25は、スプリング12を内側から被覆してスプリングカバー16との間で内包するように、且つリコイルロッド15を外側から被覆して内包するように設けられている。また、このスプリングケース21は、スプリングカバー16と内筒25がそれぞれ後端16a、25aをプレート14に固着して支持され、プレート14とともに軸線O1方向に進退可能に設置されている。
【0026】
また、スプリングカバー16は、軸線O1方向に進退する際にその先端16b側の内面16cがサポート13の大径部22の後端側の外面13aに摺動するように設けられている。そして、スプリングカバー16の先端16b側の内面16cとサポート13の大径部22の後端側の外面13aとの互いに摺動する部分が摺動部20とされている。一方、内筒25は、先端25bとサポート13の後端との間にスプリング12のストロークSに応じた所定の間隔をあけて設けられている。
【0027】
そして、本実施形態のリコイル装置B(衝撃緩和機構10)においては、図1から図3に示すように、摺動部20(スプリングカバー16の内面16cとサポート13の外面13aの間)に生じる隙間Hを、スプリング12を内包したスプリングカバー16の内部(内部空間M)と不連続にするための遮蔽部材30が設けられている。
【0028】
遮蔽部材30は、例えばゴムなどの弾性体を用いて環状に形成されている。そして、この遮蔽部材30は、サポート13の大径部22bの後端側に一体に設けられており、図3に示すように、外周縁30a側をサポート13の摺動部20の外面13aよりも径方向外側に突出させ、この外周縁30a側がスプリングカバー16の摺動部20の内面16cに摺接するように設けられている。これにより、摺動部20に生じる隙間Hの後端側が遮蔽部材30によって閉塞され、摺動部20に生じる隙間Hとスプリングカバー16のスプリング12を内包する内部Mが不連続になる。
【0029】
このように構成したリコイル装置Bにおいては、装軌式車両1の走行時にアイドラプーリ6が衝撃を受け、サポート13とリコイルロッド15が相対的に進退し、スプリングカバー16とサポート13が相対的に進退した際に、遮蔽部材30の外周縁30a側が弾性変形しながらスプリングカバー16の内面16cに摺接する。このため、スプリングカバー16の内面16cとサポート13の外面13aの間に生じる隙間Hが遮蔽部材30によって常時閉塞され、この摺動部20に生じる隙間Hとスプリングカバー16の内部Mの不連続状態が維持される。
【0030】
これにより、リコイル装置Bの外部(外部空間N)から摺動部20に生じる隙間Hに土砂などの異物が入り込んだ場合においても、遮蔽部材30によって異物がスプリングカバー16のスプリング12を内包した内部Mに入り込むことが確実に防止される。
【0031】
したがって、本実施形態の装軌式車両のリコイル装置Bにおいては、環状に形成した遮蔽部材30を、その外周縁30a側がスプリングカバー16の内面16cに摺接するようにサポート13の後端側に設けることによって、摺動部20に生じる隙間Hとスプリング12を内包するスプリングカバー16の内部空間Mとを不連続にすることが可能になる。
【0032】
これにより、摺動部20に生じる隙間Hを通じてリコイル装置Bの外部(外部空間N)からスプリングカバーの内部Mに土砂などの異物が入り込むことを防止することが可能になる。よって、異物の堆積によるストローク不良の発生を防止でき、走行装置2への過大荷重の発生、リコイルロッド15への偏荷重の発生を防止でき、ストロークSを安定確保することが可能になるとともにリコイルロッド15の長寿命化を図ることが可能になる。
【0033】
以上、本発明に係る装軌式車両のリコイル装置の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、サポート13が小径部22aと大径部22bを備えて形成され、遮蔽部材30が、スプリングカバー16の内面16cが摺動する大径部22bの外面13aよりも外周縁30a側を径方向外側に突出させ、スプリングカバー16の内面16cにこの外周縁30a側が摺接するように、サポート13の大径部22bの後端に一体に設けられているものとした。これに対し、本発明に係る環状に形成した遮蔽部材30は、サポート13の摺動部20の後端側に一体に設けて摺動部20に生じる隙間Hとスプリングカバー16の内部空間Mを不連続にすれば、本実施形態と同様にスプリングカバー16の内部空間Mに土砂などの異物が入り込むことを防止することが可能である。このため、サポート13が小径部22aと大径部22bを備えて形成されている必要はなく、サポート13の大径部22bの後端に遮蔽部材30を設けることに限定する必要はない。
【0034】
ついで、以下に、図4から図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る装軌式車両のリコイル装置について説明する。ここで、本実施形態のリコイル装置は、油圧ショベルなどの装軌式車両1の走行装置(足回り装置)2が具備する直列型リコイル装置であり、第1実施形態のリコイル装置Bに対し遮蔽部材の構成のみが異なる。よって、第1実施形態のリコイル装置Bと同様の構成に対して同一符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
本実施形態の装軌式車両のリコイル装置Cでは、図4から図6に示すように、遮蔽部材31が例えばゴムなどの弾性体を筒状且つ蛇腹状に形成して構成されている。
【0036】
そして、この遮蔽部材31が、スプリングカバー16の先端16b側の内面16cとサポート13の大径部22bの後端側の外面13aとが摺動する摺動部20を被覆して内包するように設けられている。具体的に、この遮蔽部材31は、図6に示すように、軸線O1方向一端31a側をサポート13の大径部22bの摺動部20よりも先端側の外面13aに固着し、他端31b側をスプリングカバー16の先端16b側の外面16dに固着して、摺動部20を外側から被覆して内包するように設けられている。これにより、摺動部20の先端側が遮蔽部材31によって覆われ、リコイル装置Cの外部(外部空間N)と摺動部20に生じる隙間Hとが遮蔽部材31によって不連続とされている。
【0037】
そして、このように遮蔽部材31を設けることによって、リコイル装置Cの外部Nから摺動部20に生じる隙間Hに土砂などの異物が入り込むことが防止され、この隙間Hを通じて異物がスプリングカバー16の内部空間Mに入り込むことが防止される。
【0038】
また、遮蔽部材31が例えばゴムなどの弾性体を用いて形成され、且つ蛇腹状に形成されているため、装軌式車両1の走行時にアイドラプーリ6が衝撃を受け、サポート13とリコイルロッド15が相対的に進退し、スプリングカバー16とサポート13が相対的に進退した場合においても、遮蔽部材31がこの相対的な進退に応じて弾性変形する。このため、摺動部20に生じる隙間Hが遮蔽部材31によって常時閉塞され、摺動部20に生じる隙間Hとスプリングカバー16の内部空間Mの不連続状態が常時維持される。
【0039】
また、遮蔽部材31をスプリングカバー16とサポート13に連架して設け、スプリングカバー16とサポート13の相対的な進退に従動させるようにした場合においても、この遮蔽部材31が弾性変形するため、スプリング12のストロークSに悪影響が生じることがない。よって、遮蔽部材31により、適正なストロークSを維持した状態でスプリングカバー16の内部空間Mに異物が入り込むことが防止される。
【0040】
したがって、本実施形態の装軌式車両のリコイル装置Cにおいては、一端31a側をサポート13の外面13aに、他端31b側をスプリングカバー16の外面16dにそれぞれ固着して、摺動部20を外側から被覆して内包するように遮蔽部材31を設けることで、摺動部20に生じる隙間Hをリコイル装置Cの外部Nと不連続にすることが可能になる。
【0041】
これにより、摺動部20の隙間Hを通じて外部Nからスプリングカバー16の内部Mに土砂などの異物が入り込むことを防止することが可能になる。よって、第1実施形態と同様に、異物の堆積によるストローク不良の発生を防止でき、走行装置2への過大荷重の発生、リコイルロッド15への偏荷重の発生を防止でき、ストロークSを安定確保することが可能になるとともにリコイルロッド15の長寿命化を図ることが可能になる。
【0042】
また、このとき、遮蔽部材31が弾性体を用いて形成されていることにより、スプリングカバー16とサポート13がスプリング12のストロークSに応じて相対的に進退した場合においても、遮蔽部材31をスプリングカバー16とサポート13の相対的な進退に従動するように弾性変形させることが可能になる。これにより、遮蔽部材31がスプリングカバー16とサポート13に連架して設けられていても、ストロークSに悪影響が生じることがなく、適正なストロークSを維持しつつ確実にスプリングカバー16の内部空間Mに異物が入り込むことを防止することが可能になる。
【0043】
さらに、遮蔽部材31が蛇腹状に形成されていることによって、確実に遮蔽部材31を弾性変形させることが可能になり、より確実に、適正なストロークSを維持しつつスプリングカバー16の内部空間Mに異物が入り込むことを防止できる。
【0044】
以上、本発明に係る装軌式車両のリコイル装置の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、遮蔽部材31が蛇腹状に形成されているものとしたが、特に遮蔽部材31を蛇腹状に形成することに限定する必要はない。すなわち、ゴムなどの弾性体を用いて単に筒状に形成した遮蔽部材31を、摺動部20を外側から被覆して内包するように設けるようにしてもよい。このように遮蔽部材31を構成した場合においても、リコイル装置Cの外部Nとスプリングカバー16の内部Mを不連続にすることができ、土砂などの異物が摺動部20に生じる隙間Hを通じてスプリングカバー16の内部Mに入り込むことを防止できる。さらに、弾性体を用いて形成されているため、スプリングカバー16とサポート13が相対的に進退するとともに弾性変形することになり、本実施形態と同様、ストロークSに悪影響が生じることはなく、適正なストロークSを維持しつつスプリングカバー16の内部Mに異物が入り込むことを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係る装軌式車両のリコイル装置を示す図である。
【図2】図1のX1−X1線矢視図である。
【図3】図1及び図2のP2部を拡大した図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る装軌式車両のリコイル装置を示す図である。
【図5】図4のX1−X1線矢視図である。
【図6】図4及び図5のP3部を拡大した図である。
【図7】装軌式車両を示す図である。
【図8】装軌式車両の走行装置(足回り装置)を示す図である。
【図9】装軌式車両の走行装置のリコイル装置を示す図である。
【図10】従来のリコイル装置を示す図である。
【図11】図10のX1−X1線矢視図である。
【図12】図10及び図11のP1部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0046】
1 装軌式車両
2 走行装置(足回り装置)
3 走行フレーム
4 スプロケット
5 アイドラブラケット
6 アイドラプーリ
7 上転輪
8 下転輪
9 履帯
10 衝撃緩和機構
11 履帯張り調整機構
12 スプリング
13 サポート
13a 外面
14 プレート
15 リコイルロッド
16 スプリングカバー(外筒)
16a 後端
16b 先端
16c 内面
16d 外面
17 シリンダ
17a ピストン室(グリース室)
18 ピストン
19 給排脂部
19a 給脂口
19b 排脂口
20 摺動部
21 スプリングケース
22 収容部
22a 小径部
22b 大径部
23 フランジ部
24 抜止め用のナット
25 内筒
30 遮蔽部材
31 遮蔽部材
31a 一端
31b 他端
A 従来のリコイル装置
B リコイル装置
C リコイル装置
H 隙間
M スプリングカバーの内部(内部空間)
N リコイル装置の外部(外部空間)
O1 軸線(前後方向)
S ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドラブラケットの先端側に回動自在に軸支されたアイドラプーリが受ける衝撃を緩和するための衝撃緩和機構を備える装軌式車両のリコイル装置であって、
衝撃緩和機構は、アイドラブラケットの後端に繋がるサポートと、サポートに一端側を保持させて設置されるスプリングと、スプリングの中心部に挿通配置され、先端部側がサポートに相対的に進退可能に支持されたリコイルロッドと、スプリングを被覆して内包し、内面がサポートの外面に摺動するように設けられたスプリングカバーとを備え、
スプリングカバーの内面とサポートの外面が摺動する摺動部に生じる隙間を、スプリングを内包したスプリングカバーの内部空間あるいは外部空間と不連続にする遮蔽部材が設けられていることを特徴とする装軌式車両のリコイル装置。
【請求項2】
請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置において、
遮蔽部材が、環状に形成され、外周縁側をサポートの摺動部の外面よりも径方向外側に突出させ、この外周縁側がスプリングカバーの内面に摺接するように、サポートの後端側に一体に設けられていることを特徴とする装軌式車両のリコイル装置。
【請求項3】
請求項1記載の装軌式車両のリコイル装置において、
遮蔽部材が、筒状の弾性体で構成されており、摺動部を外側から被覆して内包するように、一端側をサポートの外面に、他端側をスプリングカバーの外面にそれぞれ固着して設けられていることを特徴とする装軌式車両のリコイル装置。
【請求項4】
請求項3記載の装軌式車両のリコイル装置において、
遮蔽部材が蛇腹状に形成されていることを特徴とする装軌式車両のリコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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