説明

装飾表示体

【課題】集光素パターンおよび画素パターンを高速に形成することができ、ひいては装飾表示体の製造コストを低減することが可能な装飾表示体を提供する。
【解決手段】装飾表示体10は、透明な可撓性素材からなる厚みtの透明素材11が折り曲げ部11aによって二つ折りに重ね合わせられた状態となされ、該透明素材11は集光素パターン12Aが形成された集光素側素材111と、画素パターン13Aが形成された画素側素材112とを備える。装飾表示体10は、集光素側素材111と画素側素材112の一方側部の間の折り曲げ部11aで折り曲げられて、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさることで、集光素パターン12Aの集光素12と画素パターン13Aの画素13が重ね合わさった集光素側素材111と画素側素材112の透明な部分を介して同じ方向に2次元的に配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機やゲーム機の外層パネル、包装箱、広告体、飾り品、ディスプレイ装置、文房具、土産品、教材等の各種商品の装飾に用いられる装飾表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、遊技機やゲーム機の外層パネル、包装箱、広告体、飾り品、ディスプレイ装置、文房具、土産品、教材等の各種商品の装飾として、図柄の拡大虚像を各種商品の表面から上方または下方に現出させる装飾表示体を適用することが知られており、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示される装飾表示体は、シート状または板状の透明素材の表面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターンが形成されるとともに、透明素材の裏面に、着色された複数の画素を各画素の並びに集光素パターンと同じ方向性を持たせて2次元的に配列して画素パターンが形成され、各集光素と各画素の配列ピッチが異なるように集光素パターンと画素パターンとが形成されることにより、画素の拡大虚像が透明素材の上方または下方に現出するものである。
【0004】
この装飾表示体の製造に際しては、透明素材を所定の印刷機に通して、透明素材の表面および裏面にそれぞれ集光素パターンおよび画素パターンをスクリーン印刷等の印刷により形成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3488179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装飾表示体は、画素の拡大虚像を明確に現出させるために透明素材が所定の厚み(例えば、1.0mm以上)を有していることが多い。そして、この所定の厚みを有する透明素材に集光素パターンおよび画素パターンをスクリーン印刷等の印刷によって形成する場合、印刷機の構成上、高速印刷機を用いることは難しかった。
【0007】
もとより、透明素材の厚みを高速印刷機にも印刷可能な厚みに限定すればよいが、これだと画素の拡大虚像を十分現出できなかったり、仮に現出できたとしても所定の厚み以下の透明素材ばかりとなって商品展開に制限を受けることとなる。
【0008】
このため、所定の厚みを有する透明素材に集光素パターンおよび画素パターンを印刷によって形成するには、通常速度の印刷機を用いなければならなかった。特に、装飾表示体を構成する透明素材や各種インクは汎用的なものを使用するため、装飾表示体の製造コストは印刷機の印刷速度への依存度が高く、この印刷機の印刷速度の問題は無視できるものではなかった。
【0009】
このような問題は集光素パターンや画素パターンを印刷により形成する場合に限定されるものではなく、その他の方法により形成する場合にも同様に生じる場合があった。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、装飾表示体における集光素パターンおよび画素パターンを高速に形成することができ、ひいては装飾表示体の製造コストを低減することが可能な装飾表示体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装飾表示体は、シート状または板状の透明な素材の表面または裏面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて所定の配列ピッチで2次元的に配列して集光素パターンが形成された集光素側素材と、シート状または板状の透明な素材の表面または裏面あるいは不透明な素材の裏面に、着色された複数の画素を各画素の並びに集光素パターンと同じ方向性を持たせて各集光素パターンと異なる配列ピッチで2次元的に配列して画素パターンが形成された画素側素材とを備え、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられて、集光素側素材と画素側素材が厚み方向に重ね合わさることによって、集光素パターンの集光素と画素パターンの画素が該重ね合わさった集光素側素材および画素側素材の透明な部分を介して同じ方向に2次元的に配列することを特徴とする。
【0012】
これによれば、装飾表示体における集光素パターンおよび画素パターンを形成する過程では集光素側素材と画素側素材が折り曲げられる前の薄い状態であるため、集光素パターンと画素パターンを高速に形成することができる。しかも、集光素パターンと画素パターンが形成されたあとは、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられて、集光素側素材と画素側素材が厚み方向に重ね合わさることによって、完成品たる装飾表示体を簡単に構成することができる。
【0013】
また、集光素側素材と前記画素側素材は一枚の透明素材から構成され、該透明素材における集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられるものであってもよい。これによれば、一枚の透明素材において集光素パターンと画素パターンが同時または順次形成されたあと、そのまま集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられて、集光素側素材と画素側素材が厚み方向に重なり合わさる。このため、装飾表示体をより一層簡単かつ高速に製造することができるとともに、製造ラインの簡素化も図ることができる。
【0014】
また、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間に可撓性の連結部材が設けられ、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で該連結部材を介して折り曲げられるものであってもよい。これによれば、可撓性の連結部材が折り曲げられた状態となるため、集光素側素材と画素側素材を密着状態に簡単かつ確実に重ね合わせることができる。また、集光素側素材および画素側素材そのものは折り曲げられないため、集光素側素材および画素側素材として様々な材質のものを用いることができる。
【0015】
また、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間の折り曲げ部を軸として、集光素側素材と画素側素材が互いに開閉自在に構成されているものであってもよい。これによれば、集光素側素材と画素側素材を閉じた場合には画素の拡大虚像を現出させる一方、集光素側素材と画素側素材を開いた場合には画素の拡大虚像を消失させることができ、使用者等において画素の拡大虚像の現出および消失を自由に操作することが可能となる。
【0016】
また、集光素側素材と画素側素材の一方側端部の間で平面方向に交互に複数回折り曲げられるものであってもよい。これによれば、集光素パターンおよび画素パターンを形成する過程では集光素側素材と画素側素材が折り曲げられる前のより一層薄い状態となるため、完成品たる装飾表示体が非常に厚い場合でも集光素パターンと画素パターンを高速で形成することができる。
【0017】
また、本発明に係る装飾表示体の製造方法は、シート状または板状の透明な集光素側素材の表面または裏面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて所定の配列ピッチで2次元的に配列して集光素パターンを形成するともに、シート状または板状の透明な画素側素材の表面または裏面あるいは不透明な画素側素材の裏面に、着色された複数の画素を各画素の並びに集光素パターンと同じ方向性を持たせて各集光素パターンと異なる配列ピッチで2次元的に配列して画素パターンを形成し、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げて、集光素側素材と画素側素材を厚み方向に重ね合わせることによって、集光素パターンの集光素と画素パターンの画素を該重ね合わせた集光素側素材および画素側素材を介して同じ方向に2次元的に配列させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装飾表示体における集光素パターンおよび画素パターンを形成する過程では集光素側素材と画素側素材が折り曲げられる前の薄い状態であるため、装飾表示体における集光素パターンと画素パターンを高速に形成することができる。しかも、集光素パターンと画素パターンが形成されたあとは、集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられて、集光素側素材と画素側素材が厚み方向に重ね合わさることによって、完成品たる装飾表示体を簡単に構成することができる。このため、多数の装飾表示体を簡単かつ高速に順次製造していくことができ、装飾表示体の製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る装飾表示体の斜視図である。
【図2】図1の装飾表示体の拡大正面断面図である。
【図3】図1の装飾表示体における透明素材の折り曲げ前の状態における(a)平面図と、(b)正面図である。
【図4】図1の装飾表示体の集光素と画素の位置関係を示す拡大模式平面図である。
【図5】図1の装飾表示体の製造方法を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る装飾表示体の平面図である。
【図7】図6の装飾表示体の拡大正面断面図である。
【図8】第3の実施形態に係る装飾表示体の斜視図である。
【図9】図8の装飾表示体の(a)開いた状態の拡大正面断面図と、(b)閉じた状態の拡大正面断面図である。
【図10】第4の実施形態に係る装飾表示体の拡大正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る装飾表示体の第1の実施形態について図1〜図5を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態の装飾表示体10は、図1および図2に示すように、透明な可撓性素材からなる一定の厚みt(本実施形態ではt=0.5mm)を有した透明素材11が二つ折りに重ね合わせられた状態となされており、該透明素材11は表面に集光素パターン12Aが形成された集光素側素材111と、表面に画素パターン13Aが形成された画素側素材112とを備えている。
【0022】
前記透明素材11は、図2に示すように、集光素側素材111を厚み方向上側に備えるとともに、画素側素材112を厚み方向下側に備えており、全体として2t(本実施形態では2t=1.0mm)の厚みを有している。本実施形態において、透明素材11の厚み2tは、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが画素13の拡大虚像Z1を現出させる焦点距離である。
【0023】
この透明素材11は、図3に示すように、二つ折りに重ね合わせられる前の状態では、一枚のシート状の部材である。このとき、集光素側素材111が右側に配置され、画素側素材112が左側に配置されており、これら集光素側素材111と画素側素材112の一方側部の間は折り曲げ部11aとなされている。
【0024】
前記集光素側素材111は、長さL、幅Wの矩形状に形成されており、表面に集光素パターン12Aが全面的に形成されている。なお、この集光素パターン13Aについての詳細は後述する。
【0025】
前記画素側素材112は、集光素側素材111と同様、長さL、幅Wの矩形状に形成されている。このため、図1および図2に示すように、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさると、両者は外縁が一致する態様で重ね合わさることが可能である。この画素側素材112は、集光素側素材111における集光素パターン12Aと同一側の表面に画素パターン13Aが全面的に形成されている。また、一方の裏面には接着層(図示略)が略全面的に設けられており、画素側素材112と集光素側素材111の裏面同士が重ね合わさることによって両者の裏面同士が接着する。なお、この画素パターン13Aについての詳細は後述する。
【0026】
前記折り曲げ部11aは、集光素側素材111の左側一方側部111aと画素側素材112の右側一方側部112bとの間で折り曲げるためになされた透明素材11の一部分である。この折り曲げ部11aは長さL、幅wを有しており、該幅wは少なくとも透明素材11の厚みtの2倍より広く設定されている(w>2t)。これにより、図2に示すように、折り曲げられた際、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさって全体として厚み2tとなっても、両者を密着する態様で重ね合わせることができる。また、これにより、集光素パターン12Aと画素パターン13Aとが集光素側素材111および画素側素材112の透明な部分を介して対向することが可能になる。
【0027】
前記集光素パターン12Aは、図4に示すように、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさった状態において、複数の凸レンズ状の集光素12を各集光素12の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して形成されている。本実施形態では、x方向とこれに直交するy方向とについて一定の配列ピッチpで各集光素12がマトリクス状に等配列している。なお、各集光素12の配列は、必ずしも直交するパターンである必要はなく、一方の配列方向に対する他方の配列方向が90度より小さい角度または90度より大きい角度をなすようにしてもよい。なお、本実施形態では、例えば集光素12Aの直径は1.0mmであり、配列ピッチpは1.10mmである。
【0028】
前記画素パターン13Aは、図4に示すように、複数の画素13を各画素13の並びに集光素パターン12と同じ方向性を持たせて2次元的に配列して形成されている。本実施形態では、x方向とこれに直交するy方向とについて前記集光素パターン12Aと異なる一定の配列ピッチqで各画素13がマトリクス状に等配列している。本実施形態各画素13の配列ピッチqは、各集光素12の配列ピッチpより狭い間隔で設定されている。なお、本実施形態では、例えば線状画素13Aの配列ピッチqは1.10mmである。
【0029】
以上の集光素パターン12Aおよび画素パターン13Aによれば、透明素材11が折り曲げ部11aで折り曲げられて、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさることによって、集光素パターン12Aの集光素12と画素パターン13Aの画素13が該重ね合わさった集光素側素材111および画素側素材112の透明な部分を介して同じ方向に2次元的に配列することとなる。この際、画素13の配列ピッチqが集光素12の配列ピッチpよりも狭い間隔で設定されているため、図2に示すように、画素13の拡大虚像Z1を透明素材11の下方に現出させることができる。
【0030】
次に、本装飾表示体10の製造方法を図5を参照しつつ説明する。
【0031】
まず、図5(a)に示すように、透明素材11における集光素側素材111(折り曲げ部11aより右側)の表面に、複数の凸レンズ状の集光素12を各集光素12の並びに方向性を持たせて配列ピッチpで2次元的に配列して集光素パターンを形成する。なお、ここでの集光素パターン12Aの形成は印刷により行う。
【0032】
次に、透明素材11における画素側素材112(折り曲げ部11aより左側)の表面に、着色された複数の画素13を各画素13の並びに集光素パターン12Aと同じ方向性を持たせて配列ピッチqで2次元的に配列して画素パターン13Aを形成する。なお、ここでの画素パターン13Aの形成は印刷により行う。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、折り曲げ部11aを軸として、集光素側素材111と画素側素材112を厚み方向に折り曲げる。なお、図5(b)では、集光素側素材111の位置が固定され、折り曲げ部11aを軸に画素側素材112が下方側に折り曲げられていくことが示されている。
【0034】
次に、図5(c)に示すように、集光素側素材111と画素側素材112を厚み方向に重ね合わせて、画素側素材112の裏面に設けられた接着層によって集光素側素材111と画素側素材112の裏面同士を接着する。
【0035】
これにより、集光素パターン12Aの集光素12と画素パターン13Aの画素13が該重ね合わさった集光素側素材111および画素側素材112の透明な部分を介して同じ方向に2次元的に配列する。このようにして、図1および図2に示した本装飾表示体10を構成する。
【0036】
以上によれば、集光素パターン12Aおよび画素パターン13Aを形成する過程では、集光素側素材111および画素側素材112は折り曲げ部11aで折り曲げられる前の状態の厚みtという薄い状態である。したがって、装飾表示体10における集光素パターン12Aと画素パターン13Aを高速に形成することができる。しかも、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが形成されたあとは、折り曲げ部11aで折り曲げられて、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさることによって厚み2t、すなわち画素13の拡大虚像Z1を現出させる厚みとなされるため、完成品たる装飾表示体10を簡単に構成することができる。
【0037】
また、一枚の透明素材11において集光素パターン12Aと画素パターン13Aが順次形成されたあと、そのまま集光素側素材111と画素側素材112の一方側部の間の折り曲げ部11aで折り曲げられて、集光素側素材111と画素側素材112が厚み方向に重ね合わさるため、装飾表示体10をより一層簡単かつ高速に製造することができるとともに、製造ラインの簡素化も図ることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、各画素13の配列ピッチqが各集光素12の配列ピッチpより狭い間隔で設定されている場合について説明したが、各集光素12の配列ピッチpより広い間隔で設定されてもよい。この場合、画素13の拡大虚像Zを透明素材11の上方に現出することができる。
【0039】
また、各集光素12の配列ピッチpおよび各画素13の配列ピッチqは、各々一定である場合について説明したが、いずれも間隔が変化するようにしてもよいし、一方が一定で他方が変化するようにしてもよい。これにより、現出させる画素13の拡大虚像Zあるいは拡大虚像群の形状を変化させることができる。
【0040】
また、集光素パターン12Aおよび画素パターン13Aが印刷により形成される場合について説明したが、その他の方法により形成してもよい。
【0041】
また、集光素パターン12Aが画素パターン13Aより先に形成される場合について説明したが、逆でもよい。
【0042】
また、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが順次形成される場合について説明したが、同時に形成されてもよい。
【0043】
また、集光素パターン12Aが集光素側素材の111の表面に形成される場合について説明したが、裏面でもよい。
【0044】
また、画素パターン13Aが画素側素材の112の表面に形成される場合について説明したが、裏面でもよい。
【0045】
また、画素側素材の112が透明である場合について説明したが、不透明であってもよい。この場合、画素パターン13Aは画素側素材の112の裏面に形成される。
【0046】
また、透明素材11がシート状である場合について説明したが、板状であってもよい。
【0047】
また、接着層が画素側素材112の裏面に設けられている場合について説明したが、集光素側素材112の裏面であってもよいし、集光素素材111および画素側素材112の両者の裏面に設けられてもよい。
【0048】
また、透明素材11の厚みtが0.5mmで、装飾表示体10としての厚み2tが1.0mmである場合について説明したが、これらの数値に限定されるものではなく、集光素12、画素13の大きさ、配列ピッチ、厚みや集光素パターン12Aと画素パターン13Aによる焦点距離などに応じて適宜変更されてもよい。
【0049】
また、図1〜図5に示す集光素12および画素13の大きさ、配列ピッチ、厚みなどは、説明の便宜上、強調的に大きく図示したものである。実際には各領域には非常に小さい集光素12および画素13が2次元的に数多く配列されている。なお、以下の説明に用いる図においても同様とする。
【0050】
また、集光素側素材111の左側一方側部111aおよび画素側素材112の右側一方側部112bは、図面上は一点鎖線で示されているが、該一点鎖線は仮想線である。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る装飾表示体について図6および図7を参照しつつ説明する。
【0052】
本実施形態では、装飾表示体20が第1の実施形態とは異なる態様によって集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられる場合について説明する。なお、以下では、第1の実施形態と異なる構成についてのみ説明するものとし、同一の構成については説明を省略して、同一の符号を付すこととする。
【0053】
本実施形態の装飾表示体20は、図6および図7に示すように、表面に集光素パターン12Aが形成されたシート状の透明な集光素側素材211と、表面に画素パターン13Aが形成されたシート状の透明な画素側素材212と、集光素側素材211と画素側素材212の一方側部(図中では左側端部)の間に設けられた可撓性の連結部材22とを備えている。なお、本実施形態において、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが画素13の拡大虚像Z2を現出させる焦点距離は2tであるものとする。
【0054】
前記集光素側素材211と画素側素材212は、図7に示すように、いずれも厚みtを有する別個の透明な素材の表面に集光素パターン12Aと画素パターン13Aとが個別に形成されており、互いの裏面同士が重ね合わさっている。このため、装飾表示体20としては全体として厚み2tとなり、集光素パターン12Aと画素パターン13Aとは、集光素側素材211および画素側素材212の透明な部分を介して対向している。なお、集光素側素材211および画素側素材212の両者あるいはいずれか一方の裏面には接着層が設けられており、該接着層によって接着されている。
【0055】
前記連結部材22は、図6および図7に示すように、重なり合う集光素側素材211と画素側素材212の一方側部の外側を覆う態様で該一方側部に沿って長さ方向に設けられている。この連結部材22は、幅が少なくとも集光素側素材211と画素側素材212が重ね合わさった厚み2tより広く設定されている。これにより、図7に示すように、連結部材22が集光素側素材211と画素側素材212の一方側部の間で折り曲げられた状態となされることで、集光素側素材211と画素側素材212を密着する態様で重ね合わせることができる。また、このことによって、集光素パターン12Aと画素パターン13Aとが集光素側素材211および画素側素材212の透明な部分を介して対向するため、画素13の拡大虚像Z2を現出することができる。
【0056】
以上によれば、可撓性の連結部材22が折り曲げられた状態となるため、集光素側素材211と画素側素材212を密着状態に簡単かつ確実に重ね合わせることができる。また、集光素側素材211および画素側素材212そのものは折り曲げられないため、集光素側素材211および画素側素材212として硬さなどの制限を受けないため様々な材質のものを用いることができる。
【0057】
なお、本実施形態において、連結部材22が集光素側素材211と画素側素材212の一方側部の外側を覆う態様で設けられる場合について説明したが、集光素側素材211と画素側素材212の一方側部の内側を挟持される態様で設けられてれもよい。さらに、連結部材が集光素側素材211と画素側素材212の一方側部の外側および内側の両方が設けられてもよい。
【0058】
また、連結部材22とは、集光素側素材と画素側素材を一方側部を連結するとともに、集光素側素材と画素側素材を一方側部の間で折り曲げ可能であるため、折り曲げ部の概念に含まれるものである。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る装飾表示体について図8および図9を参照しつつ説明する。
【0060】
本実施形態では、使用者が画素の拡大虚像の現出および消失を自由に操作でき、写真や絵はがき等を装飾的に保持する装飾表示体30について説明する。なお、以下では、上記の各実施形態と異なる構成についてのみ説明するものとし、同一の構成については説明を省略して、同一の符号を付すこととする。
【0061】
本実施形態の装飾表示体30は、図8および図9に示すように、表面の一部に集光素パターン12Aが形成されたシート状の透明な集光素側素材311と、裏面の一部に画素パターン13Aが形成されたシート状の不透明な画素側素材312と、集光素側素材311と画素側素材312の一方側部の間に設けられた連結部材22とを備えており、画素側素材312の裏面側に写真Rを保持している。なお、本実施形態において、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが画素13の拡大虚像Z3を現出させる焦点距離はtであるものとする。
【0062】
前記集光素側素材311は、図8に示すように、表面の外縁に沿った所定幅の領域に集光素パターン12Aが形成されている集光素領域311aと、集光素領域311aの内側の領域において集光素パターン12Aが形成されていない透明窓領域311bとを備えている。集光素領域311aは、集光素パターン12Aが形成されている領域であるため、集光素側素材311の裏面側に画素パターン13Aが配置されることによって画素13の拡大虚像を現出させることができる。一方、透明窓領域311bは透明な素材のみの領域であるため、裏面に配置されたもの(本実施形態では写真R)をそのままの色、大きさ、形状で表面側に表示する。
【0063】
前記画素側素材312は、裏面の外縁に沿った所定幅の領域(集光素側素材311の集光素領域311aに対応する領域)に画素パターン13Aが形成されている画素領域312aと、画素領域312aの内側の領域(集光素側素材311の透明窓領域311bに対応する領域)である写真保持領域312bと、写真保持領域312bの四隅近傍に写真Rの各角部を挿入させて写真Rを保持するスリット部312cとを備えている。
【0064】
本実施形態において、集光素側素材311および画素側素材312の裏面には接着層が形成されていない。このため、集光素側素材311と画素側素材312は、連結部材22を軸にして開閉自在に構成されている。
【0065】
したがって、図9(a)に示すように、まず、連結部材22を軸にして集光素側素材311と画素側素材312を開いた状態にする。
【0066】
次に、各スリット部312cに写真Rの各角部を画素側素材312の裏面側から挿入し、写真Rを写真保持領域312bに保持させる。
【0067】
次に、図9(b)に示すように、連結部材22を軸にして集光素側素材311と画素側素材312を閉じた状態にする。
【0068】
すると、集光素側素材311と画素側素材312が厚み方向に重ね合わさることで、透明窓領域311aでは写真Rをそのまま表示される。また、集光素領域311aおよび画素領域312aにおいては、画素13の拡大虚像Z3を表面側に現出させることができる。
【0069】
以上によれば、集光素側素材311と画素側素材312を閉じた場合には画素13の拡大虚像Z3を現出させる一方、集光素側素材311と画素側素材312を開いた場合には画素13の拡大虚Z3像を消失させることができ、使用者等において画素13の拡大虚像Z3の現出および消失を自由に操作することが可能となる。また、画素13の拡大虚像Z3によって、写真Rを装飾的に保持することが可能になる。
【0070】
なお、本実施形態において、画素側素材312が不透明である場合について説明したが、透明であってもよい。この場合、画素側素材312の表面に画素パターン13Aを形成してもよい。
【0071】
また、集光素側素材311と画素側素材312が連結部材22によって折り曲げられる場合について説明したが、集光素側素材311と画素側素材312が一枚のシート状の透明素材から構成され、該透明素材における集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられるようにしてもよい。
【0072】
また、連結部材22が集光素側素材311と画素側素材312の間に設けられる場合について説明したが、集光素側素材311と画素側素材312の一方側部の間において、集光素側素材311および画素側素材312の両方あるいはいずれか一方から可撓性の連結片を突設させて、該連結片によって集光素側素材311と画素側素材312の一方側部の間を接着などにより連結するとともに、折り曲げ可能に構成するようにしてもよい。
【0073】
また、図9(b)において、集光素側素材311と画素側素材312が閉じられた際に、画素13および写真Rの厚み分だけ集光素側素材311と画素側素材312の間に隙間があるように図示したが、この隙間は極めて小さいものであり、拡大虚像Z3の現出を妨げるではない。
【0074】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る装飾表示体40について図10を参照しつつ説明する。
【0075】
本実施形態では、装飾表示体40が上記各実施形態の装飾表示体10〜30より厚い場合について説明する。なお、以下では、上記の各実施形態と異なる構成についてのみ説明するものとし、同一の構成については説明を省略して、同一の符号を付すこととする。
【0076】
本実施形態の装飾表示体40は、図10に示すように、可撓性素材からなる厚みtを有した一枚のシート状の透明素材41が平面方向に交互に2回折り曲げられて三つ折りの状態となされている。なお、本実施形態において、集光素パターン12Aと画素パターン13Aが画素13の拡大虚像Z4を現出させる焦点距離は3tであるものとする。
【0077】
前記透明素材41は、最上層には集光素パターン12Aが形成された集光素側素材411を備えるとともに、最下層には画素パターン13Aが形成された画素側素材412を備えている。また、これら集光素側素材411と画素側素材412の一方側部の間には、装飾表示体40としての厚みを持たせる厚み用透明素材部分413が集光素側素材411と画素側素材412の折り返し部分として備えられており、これにより装飾表示体40は全体として厚み3tとなされている。
【0078】
以上によれば、透明素材41が集光素側素材411と画素側素材412の一方側部の間で平面方向に交互に折り曲げられて装飾表示体40を構成することによって、集光素パターン12Aおよび画素パターン13Aを形成する過程では、集光素側素材411と画素側素材412が折り曲げられる前の厚みtというより一層薄い状態であるため、完成品たる装飾表示体40が厚み3tという厚い場合でも集光素パターン12Aと画素パターン13Aを高速で形成することができる。
【0079】
なお、本実施形態において、透明素材41が2回折り曲げられる場合について説明したが、3回以上でもよい。
【0080】
また、集光素側素材411が最上層である場合について説明したが、集光素側素材411の上面に透明素材が積層されるようにしてもよい。また、画素素材412が最下層である場合について説明したが、画素側素材412の下面に透明素材または不透明素材が積層されてもよい。
【0081】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
10、20、30、40…本装飾表示体
11、41…透明素材
111、211、311、411…集光素側素材
112、212、312、412…画素側素材
12…集光素
12A…集光素パターン
13…画素
13A…画素パターン
22…連結部材
311a…集光素領域
311b…透明窓領域
312a…画素領域
312b…写真保持領域
312c…スリット部
413…厚み用透明素材部分
p…集光素の配列ピッチ
q…画素の配列ピッチ
Z1〜Z4…拡大虚像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状または板状の透明な素材の表面または裏面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて所定の配列ピッチで2次元的に配列して集光素パターンが形成された集光素側素材と、
シート状または板状の透明な素材の表面または裏面あるいは不透明な素材の裏面に、着色された複数の画素を各画素の並びに前記集光素パターンと同じ方向性を持たせて前記各集光素パターンと異なる配列ピッチで2次元的に配列して画素パターンが形成された画素側素材とを備え、
前記集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられて、前記集光素側素材と画素側素材が厚み方向に重ね合わさることによって、前記集光素パターンの集光素と前記画素パターンの画素が該重ね合わさった集光素側素材および画素側素材の透明な部分を介して同じ方向に2次元的に配列することを特徴とする装飾表示体。
【請求項2】
前記集光素側素材と前記画素側素材は一枚の透明素材から構成され、該透明素材における集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げられる請求項1に記載の装飾表示体。
【請求項3】
前記集光素側素材と画素側素材の一方側部の間に可撓性の連結部材が設けられ、前記集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で該連結部材を介して折り曲げられる請求項1に記載の装飾表示体。
【請求項4】
前記集光素側素材と画素側素材の一方側部の間の折り曲げ部を軸として、前記集光素側素材と画素側素材が互いに開閉自在に構成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の装飾表示体。
【請求項5】
前記集光素側素材と画素側素材の一方側端部の間で平面方向に交互に複数回折り曲げられる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の装飾表示体。
【請求項6】
シート状または板状の透明な集光素側素材の表面または裏面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて所定の配列ピッチで2次元的に配列して集光素パターンを形成するともに、
シート状または板状の透明な画素側素材の表面または裏面あるいは不透明な画素側素材の裏面に、着色された複数の画素を各画素の並びに前記集光素パターンと同じ方向性を持たせて前記各集光素パターンと異なる配列ピッチで2次元的に配列して画素パターンを形成し、
前記集光素側素材と画素側素材の一方側部の間で折り曲げて、前記集光素側素材と画素側素材を厚み方向に重ね合わせることによって、集光素パターンの集光素と画素パターンの画素を該重ね合わせた集光素側素材および画素側素材を介して同じ方向に2次元的に配列させることを特徴とする装飾表示体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86504(P2013−86504A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232491(P2011−232491)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【特許番号】特許第5100879号(P5100879)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(599144859)美濃商事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】