説明

裏面入射型フォトダイオードモジュール

【課題】周波数特性を安定的に改善するためにキャパシタを集積したミラーを用いたフォトダイオードモジュールを提供する。
【解決手段】光源と、所定の角度を有するミラーと,該ミラーに固定された裏面入射型フォトダイオードと,キャパシタを備え、
前記光源からの光を前記ミラーに反射させて前記裏面入射型フォトダイオードの受光面に入射させるように構成した裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいて、前記キャパシタを前記ミラーに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面入射型フォトダイオードモジュールに関し、安定的に周波数特性を改善した裏面入射型フォトダイオードモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ADSL、FTTH等のブロードバンドアクセスが普及したことに伴い、アクセス系ネットワークとバックボーンネットワークを接続するメトロネットワークの高速、大容量化が求められている。
【0003】
このメトロネットワークにおいて光を伝達媒体とした通信が普及したことで、光電変換を行なうフォトダイオードモジュールは基幹部品のひとつとなっている。
光通信用高速フォトダイオードモジュールは、光信号を検出し電流信号とするフォトダイオードとその信号を信号処理可能なレベルまで増幅する増幅器で構成されている。
(0000)
高速フォトダイオードモジュールの広帯域化に対応するため構成部品であるフォトダイオードも高速動作が必要である。そのため、光信号を吸収する吸収層の厚さは光電変換後の移動時間を考慮し薄く設計され、また電気的容量を低減するため受光径が数10μm以下に設計されている。
(0000)
吸収層の厚さを薄く設計しているため、光信号を1回の通過では十分に吸収しきれないため、ミラーを用いてウェハ裏面から光を入射し、表面の電極で反射させる裏面入射型の構造が用いられることが多い。裏面入射型構造を用いることで吸収層上面の電極が鏡の役割を果たすことで吸収層への入射量を増やし、十分な変換効率を得ることを可能にしている。
(0000)
図2は従来の裏面型フォトダイオードモジュールの構成を示す側面図(a)及び平面図(b)である。これらの図において、1は正三角柱状のミラーである。このミラーには斜めに(例えば45度に)形成された箇所の一方に平坦部分1aが形成されており、その平坦部分1aにフォトダイオード2の端部の一面が接着等によりミラー1の直角の2辺に対して平行(又は垂直)に固定されている。2aはフォトダイオード2の受光部を構成する電極である。
【0004】
3はグランド3a上に形成されたキャパシタで、このキャパシタの一端は接続ワイヤ5aを介して電源4が接続され、他端は接続ワイヤ5bを介して電源バイアス電極7に接続され、その出力が受光部2aに接続されている。6は増幅器で、接続ワイヤ5cを介して受光部2aに接続されている。
【0005】
上述の構成において、ミラー1の斜面に光信号Hが入射するとその光は例えば90度の角度に反射してフォトダイオードの受光面2aに入射する。入射した光信号Hは電気信号に変換されて増幅器6により増幅されてワイヤ4dを介して後段の装置に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−253854号公報
【特許文献2】特開2000−036615号公報
【特許文献3】特開2004−119885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フォトダイオードモジュールに入力する光信号の伝送レートが高レートになるに従い、周波数特性が劣化する。この原因の1つとして、入力する光信号の周波数が高くなるほど、フォトダイオードと電源間を接続するワイヤーのインダクタンスの影響によりインピーダンスが増加し、フォトダイオードへの電位が変動することが挙げられる。この電位の変動を抑えるためには、フォトダイオードに並列にキャパシタを接続し、変動成分をカットする方法がある。
(0000)
この方法の問題点としてはキャパシタを極力フォトダイオードの近くに置かないとよい特性を得ることができない。またキャパシタの位置でワイヤーの長さが変わるため特性にバラツキが生じる。このため周波数特性が安定したフォトダイオードモジュールを量産できないという課題があった。
従って本発明は、周波数特性を安定的に改善するためにキャパシタを集積したミラーを用いた裏面入射型フォトダイオードモジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいては、
光源と、所定の角度を有するミラーと,該ミラーに固定された裏面入射型フォトダイオードと,キャパシタを備え、
前記光源からの光を前記ミラーに反射させて前記裏面入射型フォトダイオードの受光面に入射させるように構成したフォトダイオードモジュールにおいて、前記キャパシタを前記ミラーに形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載の裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいて、
前記ミラーをシリコンで形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3においては、請求項1に記載の裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいて、
前記ミラーをセラミックスで形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1〜3によれば、光源と、所定の角度を有するミラーと,該ミラーに固定された裏面入射型フォトダイオードと,該裏面入射型フォトダイオードをキャパシタを介して駆動するための電源を備え、
前記光源からの光を前記ミラーに反射させて前記裏面入射型フォトダイオードの受光面に入射させるように構成した裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいて、前記キャパシタを前記ミラーに形成したので、周波数特性を安定的に改善したフォトダイオードモジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のフォトダイオードモジュールの構成を示す斜視図(a)及び平面図(b)である。
【図2】従来のフォトダイオードモジュールの構成を示す側面図(a)及び平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a,b)は本発明のフォトダイオードモジュールの構造を示すもので、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
これらの図において、1は斜面を有する(例えば正三角柱状)のミラーである。このミラーには斜め(例えば45度)に形成された箇所の一方に平坦部分1aが形成されており、その平坦部分1aにフォトダイオード2端部の一面が接着等によりミラー1の2辺に対して平行(又は垂直)に固定されている。2aはフォトダイオード2の受光部を構成する電極である。
【0014】
3はミラー1の平坦部分1a上に形成されたキャパシタで、このキャパシタの一端には接続ワイヤ5aを介して電源4が接続され、他端は接続ワイヤ5bを介して電源バイアス電極7に接続され、その出力が受光部2aに接続されている。6は増幅器で接続ワイヤ5cを介して受光部2aに接続されている。
【0015】
上述の構成において、ミラー1の斜面に光信号Hが入射するとその光は例えば90度の角度に反射してフォトダイオードの受光面2aに入射する。入射した光信号Hは電気信号に変換されて増幅器6により増幅されてワイヤ4dを介して後段の装置に伝送される。
【0016】
ここで、図2の従来例との違いはキャパシタ3aをミラー1の平坦部分1a上に形成した点のみが異なっている。本発明ではキャパシタを集積させたミラーを光裏面入射型のフォトダイオードモジュールに使用することにより、フォトダイオードの近くにキャパシタを置く必要がなくなる。
【0017】
その結果、フォトダイオード2とキャパシタ3を一定の位置関係にすることができるため、周波数特性を安定的に改善させることができる。
また、キャパシタ3をミラー1に集積することは化合物半導体を材料とするフォトダイオードに集積するより容易である。
【0018】
即ち、フォトダイオードの材料としては主に化合物半導体が使われているが、キャパシタを集積するのはシリコンプロセスと比べると化合物半導体プロセスの方が難しい。従って、、シリコンプロセスで製造できるシリコンミラーに集積するほうがよい。
また、機能が少ないミラー1に小さいキャパシタ3(数10pF程度)を集積したほうが半導体プロセス上も容易である。
【0019】
上述の構成によれば、プロセス上、キャパシタを容易に集積することができるミラーを光裏面入射型のフォトダイオードモジュールに使用することにより周波数特性を安定的に改善することができる。
【0020】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば、実施例ではミラーにキャパシタを集積した箇所は平坦部分としたが、どの部分に集積してもよい。
【0021】
また、ミラーの斜面は実施例では90度としたが、90度である必要はない。要は反射した光が受光面に入射する構造であればよく、また、ミラーの形状は正三角柱に限るものではない。
【0022】
ミラーの材料にはシリコン、セラミックスなどを用いることができる。シリコンとセラミックスはそれぞれ半導体製造プロセスやセラミックス集積プロセスにおいて容易にキャパシタを集積することができる。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0023】
1 ミラー
1a 平坦部分
2 フォトダイオード
3 キャパシタ
4 電源
5 ワイヤー
6 増幅器
7 電源バイアス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、所定の角度を有するミラーと,該ミラーに固定された裏面入射型フォトダイオードと,キャパシタを備え、
前記光源からの光を前記ミラーに反射させて前記裏面入射型フォトダイオードの受光面に入射させるように構成した裏面入射型フォトダイオードモジュールにおいて、前記キャパシタを前記ミラーに形成したことを特徴とする裏面入射型フォトダイオードモジュール。
【請求項2】
前記ミラーをシリコンで形成したことを特徴とする請求項1に記載の裏面入射型フォトダイオードモジュール。
【請求項3】
前記ミラーをセラミックスで形成したことを特徴とする請求項1に記載の裏面入射型フォトダイオードモジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−23093(P2012−23093A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157868(P2010−157868)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】