説明

裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュール

【課題】太陽電池モジュールの信頼性をより長く確保することが可能な裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含み、第1導電型用電極および第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、導電性粒子分散層は絶縁性基材と絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含む裏面電極型太陽電池セル、それを含む配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギ資源の枯渇の問題や大気中のCO2の増加のような地球環境問題などからクリーンなエネルギの開発が望まれており、半導体装置の中でも特に太陽電池セルを用いた太陽光発電が新しいエネルギ源として開発、実用化され、発展の道を歩んでいる。
【0003】
太陽電池セルは、従来から、たとえば単結晶または多結晶のシリコン基板の受光面にシリコン基板の導電型と反対の導電型となる不純物を拡散することによってpn接合を形成し、シリコン基板の受光面と受光面の反対側の裏面にそれぞれ電極を形成して製造された両面電極型太陽電池セルが主流となっている。また、両面電極型太陽電池セルにおいては、シリコン基板の裏面にシリコン基板と同じ導電型の不純物を高濃度で拡散することによって、裏面電界効果による高出力化を図ることも一般的となっている。
【0004】
また、シリコン基板の受光面に電極を形成せず、シリコン基板の裏面のみに電極を形成した裏面電極型太陽電池セルを配線シート上に設置した配線シート付きの太陽電池セル(配線シート付き太陽電池セル)についても研究開発が進められている(たとえば特許文献1等参照)。
【0005】
以下、図10(a)および図10(b)の模式的断面図を参照して、従来の配線シート付き太陽電池セルの製造方法について説明する。
【0006】
まず、図10(a)に示すように、配線シート100上に裏面電極型太陽電池セル80を設置する。
【0007】
ここで、裏面電極型太陽電池セル80のn型シリコン基板101の裏面のp+層102に接するp型用銀電極106の表面に形成された半田119が配線シート100のガラエポ基板111上に形成されたp配線112の表面に形成された半田119上に設置されるとともに、裏面電極型太陽電池セル80のn型シリコン基板101の裏面のn+層103に接するn型用銀電極107の表面に形成された半田119が配線シート100のガラエポ基板111上に形成されたn配線113の表面に形成された半田119上に設置される。
【0008】
そして、裏面電極型太陽電池セル80側から熱風を吹きつけて双方の半田119を溶解させた後に冷却することによって、図10(b)に示すように、裏面電極型太陽電池セル80のp型用銀電極106と配線シート100のp配線112とが半田119によって接続されるとともに、裏面電極型太陽電池セル80のn型用銀電極107と配線シート100のn配線113とが半田119によって接続されることによって、裏面電極型太陽電池セル80と配線シート100とが一体化されて配線シート付き太陽電池セルが作製される。
【0009】
上記のようにして作製された配線シート付き太陽電池セルは、EVA(エチレンビニルアセテート)などの透明樹脂中に封止されることにより太陽電池モジュールとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−340362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、半田119としてSn−Bi系半田などの錫を含有する半田を用いた場合には、太陽電池モジュールの駆動時に発生する熱や太陽熱による太陽電池モジュールの温度上昇などによって、半田119から錫がp型用銀電極106およびn型用銀電極107に拡散して、たとえば図11の模式的拡大断面図に示すように、p型用銀電極106およびn型用銀電極107の表面に銀と錫の合金層121が形成される。
【0012】
そして、さらに錫の拡散が進行することによって、銀と錫の合金層121が、p型用銀電極106とn型シリコン基板101の裏面のp+層102とが接触するコンタクト、またはn型用銀電極107とn型シリコン基板101の裏面のn+層103とが接触するコンタクトに到達した場合には、p型用銀電極106とp+層102との接触抵抗またはn型用銀電極107とn+層103との接触抵抗が増加して、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの特性が低下するという問題があった。
【0013】
上記のような錫の拡散に起因する銀と錫の合金層121は早期に拡大していくため、太陽電池モジュールの信頼性をより長く確保することが求められていた。
【0014】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、太陽電池モジュールの信頼性をより長く確保することが可能な裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、半導体基板と、半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含み、第1導電型用電極および第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含む、裏面電極型太陽電池セルである。
【0016】
ここで、本発明の裏面電極型太陽電池セルにおいて、絶縁性基材を樹脂とすることができる。
【0017】
また、本発明の裏面電極型太陽電池セルにおいて、導電性粒子を金属粒子とすることができる。
【0018】
また、本発明は、裏面電極型太陽電池セルと、配線シートと、を備え、裏面電極型太陽電池セルは、半導体基板と、半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含むとともに、第1導電型用電極および第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含んでおり、配線シートは、絶縁性シートと、絶縁性シートの一方の面側に設置された第1導電型用配線と第2導電型用配線とを含み、第1導電型用電極と第1導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されているとともに第2導電型用電極と第2導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されている配線シート付き太陽電池セルである。
【0019】
さらに、本発明は、配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールであって、配線シート付き太陽電池セルは、裏面電極型太陽電池セルと、配線シートと、を備え、裏面電極型太陽電池セルは、半導体基板と、半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含むとともに、第1導電型用電極および第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含んでおり、配線シートは、絶縁性シートと、絶縁性シートの一方の面側に設置された第1導電型用配線と第2導電型用配線とを含み、配線シート付き太陽電池セルにおいては、第1導電型用電極と第1導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されているとともに第2導電型用電極と第2導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されている太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、太陽電池モジュールの信頼性をより長く確保することが可能な裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図2】図1に示す太陽電池モジュールの裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの接続部近傍の模式的な拡大断面図である。
【図3】(a)〜(g)は、図1に示す太陽電池モジュールの裏面電極型太陽電池セルの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図4】図3(a)〜図3(g)に図解される方法により作製した裏面電極型太陽電池セルの裏面の一例の模式的な平面図である。
【図5】(a)〜(d)は、図1に示す太陽電池モジュールの配線シートの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図6】図5(a)〜図5(d)に図解される方法により作製した配線シートの表面の一例の模式的な平面図である。
【図7】(a)〜(c)は、図1に示す太陽電池モジュールの配線シート付き太陽電池セルの製造方法の一例について図解する模式的な断面図である。
【図8】実施例の裏面電極型太陽電池セルを用いて作製したサンプルにおけるSnの拡散距離(μm)とサンプルの設置時間の1/2乗(hour)との関係を示す図である。
【図9】実施例の裏面電極型太陽電池セルを用いて作製したサンプルの寿命lnL(hour)と1000/T(K)との関係を示す図である。
【図10】(a)および(b)は、従来の配線シート付き太陽電池セルの製造方法について図解する模式的な断面図である。
【図11】従来の配線シート付き太陽電池セルのp型用銀電極近傍およびn型用銀電極近傍の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0023】
図1に、本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図を示す。図1に示す構成の太陽電池モジュールは、裏面電極型太陽電池セル8が配線シート10上に設置された構成の配線シート付き太陽電池セルがガラス基板などの透明基板17とポリエステルフィルムなどの裏面フィルム19との間のエチレンビニルアセテートなどの封止材18中に封止された構成を有している。
【0024】
ここで、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の受光面にはテクスチャ構造などの凹凸構造が形成されており、その凹凸構造を覆うようにして反射防止膜5が形成されている。また、裏面電極型太陽電池セル8の半導体基板1の受光面と反対側の裏面にはパッシベーション膜4が形成されている。
【0025】
また、裏面電極型太陽電池セル8は、半導体基板1と、半導体基板1の裏面に形成された第1導電型不純物拡散領域2および第2導電型不純物拡散領域3と、第1導電型不純物拡散領域2に接するようにして形成された第1導電型用銀電極6と、第2導電型不純物拡散領域3に接するようにして形成された第2導電型用銀電極7と、第1導電型用銀電極6の表面の少なくとも一部および第2導電型用銀電極7の表面の少なくとも一部をそれぞれ被覆する導電性粒子分散層21とを含んでいる。
【0026】
ここで、裏面電極型太陽電池セル8の裏面側の第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7はそれぞれ半導体基板1とは反対側に突出する形状となっており、第1導電型用銀電極6の電極幅および第2導電型用銀電極7の電極幅はそれぞれ半導体基板1から離れるにしたがって連続的に減少し、第1導電型用銀電極6の外表面および第2導電型用銀電極7の外表面はそれぞれ円柱の側面のように湾曲した曲面となっている。また、第1導電型用銀電極6の形状および第2導電型用銀電極7の形状はそれぞれこの形状に限定されるものではなく、たとえば、第1導電型用銀電極6の先端および/または第2導電型用銀電極7の先端は平坦状であってもよく、二こぶの山形状であってもよい。
【0027】
また、第1導電型不純物拡散領域2および第2導電型不純物拡散領域3はそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、第1導電型不純物拡散領域2と第2導電型不純物拡散領域3とは半導体基板1の裏面において交互に所定の間隔をあけて配置されている。
【0028】
また、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7もそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されている。そして、第1導電型用銀電極6は、パッシベーション膜4に設けられた開口部を通して、半導体基板1の裏面の第1導電型不純物拡散領域2と接することによってコンタクト2aを形成している。また、第2導電型用銀電極7は、パッシベーション膜4に設けられた開口部を通して、半導体基板1の裏面の第2導電型不純物拡散領域3と接することによってコンタクト3aを形成している。
【0029】
なお、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7の幅(図1の紙面の左右方向の最長の長さ)はそれぞれたとえば50μm以上400μm以下とすることができ、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7の厚さ(図1の紙面の上下方向の最長の長さ)はそれぞれたとえば5μm以上20μm以下とすることができる。
【0030】
また、コンタクト2aおよびコンタクト3aの幅(図1の紙面の左右方向の長さ)はそれぞれたとえば50μm以上100μm以下とすることができ、パッシベーション膜4の厚さはたとえば0.25μm以上0.75μm以下とすることができる。
【0031】
一方、配線シート10は、絶縁性シート11と、絶縁性シート11の表面上に形成された第1導電型用配線12と第2導電型用配線13とを含んでいる。
【0032】
ここで、第1導電型用配線12は、裏面電極型太陽電池セル8の裏面の第1導電型用銀電極6と互いに1本ずつ向かい合う位置に配置されており、第2導電型用配線13は、裏面電極型太陽電池セル8の裏面の第2導電型用銀電極7と互いに1本ずつ向かい合う位置に配置されている。
【0033】
また、配線シート10の第1導電型用配線12および第2導電型用配線13はそれぞれ図1の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されている。
【0034】
また、第1導電型用配線12および第2導電型用配線13の幅(図1の紙面の左右方向の長さ)はそれぞれたとえば300μm以上600μm以下とすることができ、第1導電型用配線12および第2導電型用配線13の厚さはそれぞれたとえば10μm以上50μm以下とすることができる。
【0035】
また、第1導電型用配線12とそれに隣り合う第2導電型用配線13との間の距離(図1の紙面の左右方向の長さ)は、たとえば150μm以上300μm以下とすることができる。
【0036】
そして、裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用銀電極6と配線シート10の第1導電型用配線12とは導電性接合材20および導電性粒子分散層21を介して電気的かつ機械的に接続されているとともに、裏面電極型太陽電池セル8の第2導電型用銀電極7と配線シート10の第2導電型用配線13とも導電性接合材20および導電性粒子分散層21を介して電気的かつ機械的に接続されている。
【0037】
ここで、導電性接合材20としては、錫などの金属を含有する導電性物質を用いることができ、たとえばSn−Bi−Ag半田、Sn−Ag−Cu半田、Sn−Zn半田、Sn−In半田またはSn−Bi半田などの錫含有半田を用いることができる。
【0038】
図2に、図1に示す太陽電池モジュールの裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との接続部近傍の模式的な拡大断面図を示す。
【0039】
図2に示すように、導電性粒子分散層21は、裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7のそれぞれの外表面を被覆するようにして設けられている。そして、導電性粒子分散層21の外表面には導電性接合材20が接するようにして設けられている。
【0040】
ここで、導電性粒子分散層21は、絶縁性基材22と、絶縁性基材22中に分散される導電性粒子23とを含む構成を有している。
【0041】
絶縁性基材22としては、たとえば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコーン系樹脂などの少なくとも1種の樹脂を用いることができる。なお、絶縁性基材22に用いられる樹脂中にはたとえば硬化剤などの従来から公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0042】
導電性粒子23としては、たとえば銀粒子、銅粒子およびニッケル粒子などの金属粒子を用いることができる。また、個々の導電性粒子23は、複数種類の物質から構成されていてもよく、この場合には導電性粒子23の表面の少なくとも一部に導電性物質が露出していればよい。
【0043】
導電性粒子23の形状は特に限定されないが、裏面電極型太陽電池セル8の電極(第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7)への錫などの金属の拡散を遅延させることと、裏面電極型太陽電池セル8の電極または導電性接合材20との接続抵抗を低減するまたは濡れ性を向上させることとの両立のために、たとえばフレーク状、円盤状および球状などの異なる形状の導電性粒子23を複数組み合わせて用いることが好ましい。
【0044】
また、導電性粒子23の大きさも特に限定されず、導電性粒子23の粒径は、たとえば2μm以上3μm以下とすることができる。
【0045】
また、導電性粒子分散層21の厚さも特に限定されないが、導電性粒子分散層21の厚さは20μm以上30μm以下とすることが好ましい。導電性粒子分散層21の厚さが20μm以上30μm以下である場合には、裏面電極型太陽電池セル8の電極への錫などの金属の拡散を遅延させて所望の信頼性を確保するとともに導電性粒子分散層21における導電性粒子23の接触による導電性をより確実に担保することができる傾向にある。
【0046】
なお、絶縁性基材22と導電性粒子23の材質や所望の信頼性を確保する環境や期間によっては導電性粒子分散層21の厚さは20μm未満とすることも可能であるが、この場合には、裏面電極型太陽電池セル8の電極の表面上に導電性粒子分散層21を均一の厚みで設置する観点からは、導電性粒子分散層21の厚さは10μm以上とすることが好ましい。
【0047】
また、導電性粒子分散層21中における絶縁性基材22と導電性粒子23との体積比率((導電性粒子分散層21中の絶縁性基材22の体積)/(導電性粒子分散層21中の導電性粒子23の体積))は特に限定されず、たとえば50/50程度とすることができる。
【0048】
また、導電性粒子分散層21中における絶縁性基材22と導電性粒子23との重量比率((導電性粒子分散層21中の絶縁性基材22の重量)/(導電性粒子分散層21中の導電性粒子23の重量))も特に限定されず、たとえば10/90程度とすることができる。
【0049】
以上のような構成を有する導電性粒子分散層21を裏面電極型太陽電池セル8の電極の外表面に設けることによって、導電性粒子分散層21の外表面に接する導電性接合材20から導電性粒子分散層21の内部に侵入してきた錫などの金属が裏面電極型太陽電池セル8の電極の内部に拡散するのを遅延させることができる。
【0050】
たとえば、導電性粒子分散層21中の導電性粒子23は、他の導電性粒子23、裏面電極型太陽電池セル8の電極および導電性接合材20のそれぞれと点状に接触し得る。そして、導電性接合材20から導電性粒子分散層21の内部に侵入してきた錫などの金属が裏面電極型太陽電池セル8の電極に向かって拡散するためには、その点状の接触部を通過せざるを得ないため、その拡散速度が格段に遅くなる。また、仮に、導電性粒子分散層21中の導電性粒子23が導電性接合材20中の金属と合金化した場合でも、それに隣接する導電性粒子23との接触もたとえば点状となり得ることから、上記と同様の理由により、錫などの金属の拡散速度が格段に遅くなる。
【0051】
したがって、図1に示す構成の太陽電池モジュールにおいては、たとえば従来のように銀と錫の合金層が裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型不純物拡散領域2と第1導電型用銀電極6とのコンタクト2a、および第2導電型不純物拡散領域3と第2導電型用銀電極7とのコンタクト3aに到達することによる電極の接触抵抗の増加に起因する太陽電池モジュールの特性の低下の発生時期を遅らせることができる。そのため、太陽電池モジュールの信頼性をより長く確保することができる。
【0052】
なお、裏面電極型太陽電池セル8の電極(第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7)と配線シート10の配線(第1導電型用配線12および第2導電型用配線13)との電気的な接続は、第1導電型用銀電極6または第2導電型用銀電極7、導電性粒子分散層21中の導電性粒子23、および導電性接合材20の接触によって担保される。
【0053】
以下、図3(a)〜図3(g)の模式的断面図を参照して、図1に示す太陽電池モジュールの裏面電極型太陽電池セル8の製造方法の一例について説明する。
【0054】
まず、図3(a)に示すように、たとえばインゴットからスライスすることなどによって、半導体基板1の表面にスライスダメージ1aが形成された半導体基板1を用意する。ここで、半導体基板1としては、たとえば、n型またはp型のいずれかの導電型を有する多結晶シリコンまたは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板を用いることができる。
【0055】
次に、図3(b)に示すように、半導体基板1の表面のスライスダメージ1aを除去する。ここで、スライスダメージ1aの除去は、たとえば半導体基板1が上記のシリコン基板からなる場合には、上記のスライス後のシリコン基板の表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることなどによって行なうことができる。
【0056】
ここで、スライスダメージ1aの除去後の半導体基板1の大きさおよび形状も特に限定されないが、半導体基板1の厚さをたとえば100μm以上500μm以下とすることができ、特に200μm程度とすることが好ましい。
【0057】
次に、図3(c)に示すように、半導体基板1の裏面に、第1導電型不純物拡散領域2および第2導電型不純物拡散領域3をそれぞれ形成する。ここで、第1導電型不純物拡散領域2は、たとえば、第1導電型不純物を含むガスを用いた気相拡散または第1導電型不純物を含むペーストを塗布した後に熱処理する塗布拡散などの方法により形成することができる。また、第2導電型不純物拡散領域3は、たとえば、第2導電型不純物を含むガスを用いた気相拡散または第2導電型不純物を含むペーストを塗布した後に熱処理する塗布拡散などの方法により形成することができる。
【0058】
ここで、第1導電型不純物拡散領域2は、第1導電型不純物を含み、n型またはp型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、第1導電型不純物としては、第1導電型がn型である場合にはたとえばリンなどのn型不純物を用いることができ、第1導電型がp型である場合にはたとえばボロンまたはアルミニウムなどのp型不純物を用いることができる。
【0059】
また、第2導電型不純物拡散領域3は、第2導電型不純物を含み、第1導電型不純物拡散領域2とは逆の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、第2導電型不純物としては、第2導電型がn型である場合にはたとえばリンなどのn型不純物を用いることができ、第2導電型がp型である場合にはたとえばボロンまたはアルミニウムなどのp型不純物を用いることができる。
【0060】
なお、第1導電型はn型またはp型のいずれの導電型であってもよく、第2導電型は第1導電型と反対の導電型であればよい。すなわち、第1導電型がn型のときは第2導電型がp型となり、第1導電型がp型のときは第2導電型がn型となる。
【0061】
また、第1導電型不純物を含むガスとしては、第1導電型がn型である場合には、たとえばPOCl3のようなリンなどのn型不純物を含むガスを用いることができ、第1導電型がp型である場合には、たとえばBBr3のようなボロンなどのp型不純物を含むガスを用いることができる。
【0062】
また、第2導電型不純物を含むガスとしては、第2導電型がn型である場合には、たとえばPOCl3のようなリンなどのn型不純物を含むガスを用いることができ、第2導電型がp型である場合には、たとえばBBr3のようなボロンなどのp型不純物を含むガスを用いることができる。
【0063】
次に、図3(d)に示すように、半導体基板1の裏面にパッシベーション膜4を形成する。ここで、パッシベーション膜4は、たとえば、熱酸化法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法により形成することができる。
【0064】
ここで、パッシベーション膜4としては、たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
また、パッシベーション膜4の厚みは、たとえば0.05μm以上1μm以下とすることができ、特に0.2μm程度とすることが好ましい。
【0066】
次に、図3(e)に示すように、半導体基板1の受光面の全面にテクスチャ構造などの凹凸構造を形成した後に、その凹凸構造上に反射防止膜5を形成する。
【0067】
ここで、テクスチャ構造は、たとえば、半導体基板1の受光面をエッチングすることにより形成することができる。たとえば、半導体基板1がシリコン基板である場合には、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いて半導体基板1の受光面をエッチングすることによって形成することができる。
【0068】
また、反射防止膜5は、たとえばプラズマCVD法などにより形成することができる。なお、反射防止膜5としては、たとえば、窒化シリコン膜などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0069】
次に、図3(f)に示すように、半導体基板1の裏面のパッシベーション膜4の一部を除去することによってコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bを形成する。ここで、コンタクトホール4aは、第1導電型不純物拡散領域2の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成され、コンタクトホール4bは、第2導電型不純物拡散領域3の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成される。
【0070】
なお、コンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bはそれぞれ、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜4上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜4をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応するパッシベーション膜4の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜4をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
【0071】
次に、図3(g)に示すように、コンタクトホール4aを通して第1導電型不純物拡散領域2に接する第1導電型用銀電極6と、コンタクトホール4bを通して第2導電型不純物拡散領域3に接する第2導電型用銀電極7とを形成した後に、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7のそれぞれの外表面に導電性粒子分散層21を形成する。
【0072】
なお、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7はそれぞれ、たとえば、銀ペーストをコンタクトホール4aを通して第1導電型不純物拡散領域2に接するように塗布するとともにコンタクトホール4bを通して第2導電型不純物拡散領域3に接するように塗布した後に銀ペーストを焼成することによって形成することができる。
【0073】
また、導電性粒子分散層21は、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法によって第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7のそれぞれの外表面に形成することができる。
【0074】
図4に、上記のようにして作製した裏面電極型太陽電池セル8の裏面の一例の模式的な平面図を示す。ここで、裏面電極型太陽電池セル8の裏面においては、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7はそれぞれ帯状に形成されている。そして、第1導電型用銀電極6と第2導電型用銀電極7とはそれぞれ1本ずつ間隔をあけて配置されている。そして、帯状の第1導電型用銀電極6が接する半導体基板1の裏面部分に1本の帯状の第1導電型不純物拡散領域2が配置されており、帯状の第2導電型用銀電極7が接する半導体基板1の裏面部分に1本の帯状の第2導電型不純物拡散領域3が配置されている。
【0075】
以下、図5(a)〜図5(d)の模式的断面図を参照して、図1に示す太陽電池モジュールの配線シート10の製造方法の一例について説明する。
【0076】
まず、図5(a)に示すように、絶縁性シート11の表面上に導電層41を形成する。ここで、絶縁性シート11としては、たとえば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドなどの樹脂からなるシートを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
また、絶縁性シート11の厚みは、たとえば10μm以上200μm以下とすることができ、特に25μm程度とすることが好ましい。
【0078】
また、導電層41としては、たとえば、銅などの金属からなる層を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
次に、図5(b)に示すように、絶縁性シート11の表面の導電層41上にレジスト42を形成する。ここで、レジスト42は、第1導電型用配線12および第2導電型用配線13などの配線シート10の配線を残す箇所以外の箇所に開口部を有する形状に形成する。レジスト42としてはたとえば従来から公知のものを用いることができ、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法によって所定の位置に塗布された樹脂を硬化したものなどを用いることができる。
【0080】
次に、図5(c)に示すように、レジスト42から露出している箇所の導電層41を矢印43の方向に除去することによって導電層41のパターンニングを行ない、導電層41の残部から第1導電型用配線12および第2導電型用配線13などの配線シート10の配線を形成する。
【0081】
ここで、導電層41の除去は、たとえば、酸やアルカリの溶液を用いたウエットエッチングなどによって行なうことができる。
【0082】
次に、図5(d)に示すように、第1導電型用配線12の表面および第2導電型用配線13の表面からレジスト42をすべて除去することによって、配線シート10が作製される。
【0083】
図6に、上記のようにして作製した配線シート10の表面の一例の模式的な平面図を示す。ここで、配線シート10の絶縁性シート11の表面上において、第1導電型用配線12および第2導電型用配線13はそれぞれ帯状に形成されている。また、配線シート10の絶縁性シート11の表面上には帯状の接続用配線14が形成されており、接続用配線14によって第1導電型用配線12と第2導電型用配線13とが電気的に接続されている。なお、接続用配線14は、たとえば、第1導電型用配線12および第2導電型用配線13と同様に、導電層41の残部から形成することができる。
【0084】
このような構成とすることによって、配線シート10の終端にそれぞれ位置している櫛形状の第1導電型用配線12aおよび櫛形状の第2導電型用配線13a以外の隣り合う第1導電型用配線12と第2導電型用配線13とは、接続用配線14によって電気的に接続されていることから、配線シート10上で隣り合って設置された裏面電極型太陽電池セル8同士は互いに電気的に接続されることになる。したがって、配線シート10上に設置されたすべての裏面電極型太陽電池セル8は電気的に直列に接続されることになる。
【0085】
以下、図7(a)〜図7(c)の模式的断面図を参照して、図1に示す太陽電池モジュールの配線シート付き太陽電池セルの製造方法の一例について説明する。
【0086】
まず、図7(a)に示すように、上記のようにして作製した配線シート10の第1導電型用配線12および第2導電型用配線13のそれぞれの表面上に固体状の導電性接合材20を含むペースト状の導電性接合材前駆体20aを塗布する。
【0087】
ここで、導電性接合材前駆体20aとしては、たとえば、固体状の導電性接合材20がフラックスとともに溶剤中に含まれているものなどが用いられる。
【0088】
また、導電性接合材前駆体20aは、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法によって塗布することができる。
【0089】
次に、図7(b)に示すように、配線シート10上に裏面電極型太陽電池セル8を設置する。
【0090】
ここで、裏面電極型太陽電池セル8は、たとえば図7(c)に示すように、配線シート10の第1導電型用配線12上に裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用銀電極6が設置されるとともに、配線シート10の第2導電型用配線13上に裏面電極型太陽電池セル8の第2導電型用銀電極7が設置されるようにして、配線シート10上に設置される。
【0091】
その後、導電性接合材前駆体20aを加熱することによって導電性接合材前駆体20a中の導電性接合材20以外の溶剤などの成分を揮発させて除去するとともに固体状の導電性接合材20を溶融させる。
【0092】
そして、溶融した導電性接合材20を冷却して固化することによって、図7(c)に示すように、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とが導電性接合材20によって接合された配線シート付き太陽電池セルが作製される。
【0093】
なお、上記においては、図7(a)および図7(b)に示すように、配線シート10の第1導電型用配線12および第2導電型用配線13のそれぞれの表面上に固体状の導電性接合材20を含むペースト状の導電性接合材前駆体20aを塗布したが、裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用銀電極6と第2導電型用銀電極7のそれぞれの外表面に形成された導電性粒子分散層21の表面上に導電性接合材前駆体20aを塗布してもよい。この場合にも、導電性接合材前駆体20aは、たとえば、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布またはインクジェット塗布などの方法によって塗布することができる。
【0094】
また、導電性接合材前駆体20aの塗布後にはリフロー処理を施してもよい。リフロー処理によって導電性接合材前駆体20aを固化させることができるため、裏面電極型太陽電池セル8が配線シート10上に設置される際に、導電性接合材前駆体20aが流動することにより、配線シート10の第1導電型用配線12と第2導電型用配線13との間、および/または裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用電極6と第2導電型用電極7との間における短絡の発生を抑制することができる。
【0095】
なお、導電性接合材前駆体20aを用いることなく、配線シート10の第1導電型用配線12および第2導電型用配線13のそれぞれの表面上、および/または裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用電極6および第2導電型用電極7のそれぞれの外表面に形成された導電性粒子分散層21の表面上に固体状の導電性接合材20を直接形成する場合には、たとえば、めっき、溶着、ディップまたはスパッタなどの方法を用いて導電性接合材20を形成することができる。
【0096】
以上のようにして作製された配線シート付き太陽電池セルにおいては、溶融後に固化した導電性接合材20によって、裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用電極6と配線シート10の第1導電型用配線12とが電気的かつ機械的に接続されるとともに、裏面電極型太陽電池セル8の第2導電型用電極7と配線シート10の第2導電型用配線13とが電気的かつ機械的に接続される。
【0097】
上記のようにして作製された配線シート付き太陽電池セルは、たとえば図1に示すように、エチレンビニルアセテートなどの封止材18を備えたガラス基板などの透明基板17と、封止材18を備えたポリエステルフィルムなどの裏面フィルム19との間に挟み込まれ、配線シート付き太陽電池セルを構成する裏面電極型太陽電池セル8を封止材18中に封止することによって図1に示す太陽電池モジュールが作製されることになる。
【0098】
なお、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した半導体基板の一方の表面側(裏面側)のみに第1導電型用銀電極および第2導電型用銀電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
【0099】
また、本発明における配線シート付き太陽電池セルの概念には、複数の裏面電極型太陽電池セルが配線シート上に設置されている構成のみならず、1つの裏面電極型太陽電池セルが配線シート上に設置されている構成も含まれる。
【0100】
また、上記においては、裏面電極型太陽電池セル8の電極として、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7を用いた場合について説明したが、これらの電極に銀電極を用いることに限定されるものではない。
【0101】
また、導電性粒子分散層21は、裏面電極型太陽電池セル8の第1導電型用銀電極6の外表面の少なくとも一部および/または第2導電型用銀電極7の外表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0102】
また、上記においては、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7のそれぞれの外表面に導電性粒子分散層21を形成した場合について説明したが、本発明においては、第1導電型用銀電極6および第2導電型用銀電極7の少なくとも1つの外表面に導電性粒子分散層21が形成されていればよい。
【実施例】
【0103】
まず、1辺がそれぞれ126mmの擬似正方形状の受光面および裏面を有し、厚さが200μmのn型シリコン基板を用意した。そして、n型シリコン基板の裏面にリンを選択的に拡散して帯状のn+層を形成するとともに、n型シリコン基板の裏面にボロンを選択的に拡散して帯状のp+層を形成した。ここで、帯状のn+層と帯状のp+層とはそれぞれ所定の間隔をあけてn型シリコン基板の裏面に交互に配列するように形成された。
【0104】
次に、n型シリコン基板の裏面のn+層上およびp+層上にそれぞれ銀ペーストをスクリーン印刷した後に空気中において300〜900℃の温度で焼成することによって、帯状に伸長して外表面が円柱の側面のように湾曲した曲面を有する厚さ10μmの焼成銀電極(n電極)をn+層上に形成するとともに、帯状に伸長して外表面が円柱の側面のように湾曲した曲面を有する厚さ10μmの焼成銀電極(p電極)をp+層上に形成した。
【0105】
次に、上記のようにして作製したn電極およびp電極のそれぞれの外表面上に、多数の銀粒子がエポキシ樹脂中に含有された樹脂Agペーストを厚さ20μmに塗布した後に加熱することによって硬化させ、樹脂Ag層を形成した。
【0106】
次に、n電極およびp電極のそれぞれの外表面上の樹脂Ag層の外表面上にSn−Bi−Ag半田(Snの重量:Biの重量:Agの重量=42:57:1)とフラックスと溶剤とを含む半田ペーストを塗布した。
【0107】
次に、上記の半田ペーストの塗布後のn型シリコン基板を静止型リフロー炉において加熱することによって実施例の裏面電極型太陽電池セルを作製した。
【0108】
その後、実施例の裏面電極型太陽電池セルを複数の小片に切断した後に、これらの小片をオーブンにおいて配線シートとの接合時に行なわれる加熱に相当する加熱を行なうことによって、複数のサンプルを作製した。
【0109】
そして、これらのサンプルのそれぞれについて、SEM(Scanning Electron Microscopy)/EDX(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)装置を用いて、樹脂Ag層中における銀と錫との合金層(AgSn層)の厚みを測定した(この厚みをX0とする)。
【0110】
その後、上記のサンプルを3つずつそれぞれA〜Dの4組に分けて、A〜Dの組をそれぞれ70℃、85℃、100℃および120℃の温度雰囲気下に設置した。そして、サンプルの設置開始から、48時間後、120時間後、250時間後および500時間後にそれぞれSEM/EDX装置を用いて樹脂Ag層中におけるAgSn層の厚みを測定し(この厚みをX1とする)、樹脂Ag層中におけるSnの拡散距離(X1−X0)を算出した。その結果を図8に示す。図8の縦軸はSnの拡散距離(X1−X0)(μm)を示し、図8の横軸は上記の各温度雰囲気下におけるサンプルの設置時間の1/2乗(hour)を示している。なお、AgSn層の厚みは、各条件ごとに1サンプル当たり4点ずつ測定し、その平均値をそれぞれ上記のX0およびX1の値としている。
【0111】
そして、図8の結果に基づいて、樹脂Ag層中におけるAgSn層の初期の厚み2μmを含めた20μmの厚みの樹脂Ag層中のAgがAgSn層に変化するまでの時間(寿命)を以下の式(1)を用いて上記の各設置温度について算出した結果を図9に示す。
L=A・exp[Ea/kT] …(1)
なお、上記の式(1)において、Lは寿命を示し、Aは定数を示し、Eaは活性化エネルギ(eV)を示し、kはボルツマン定数(eV/K)を示し、Tは上記のサンプルが設置された雰囲気の温度の絶対温度(K)を示している。
【0112】
また、図9の縦軸は上記の寿命Lの自然対数を寿命lnL(hour)として示しており、横軸は1000/T(K)を示している。
【0113】
その後、図9に示す結果に基づいて、下記の表1に示す各設置温度における単位時間当たりのAgSn層の進行距離を算出し、その算出した値から、実施例の裏面電極型太陽電池セルを表1に示す設置温度で表1に示す設置時間だけ設置したときの寿命(20μmの厚みの樹脂Ag層中のAgがAgSn層に変化するまでの時間)を算出した。なお、下記の表1に示す各設置温度は、最高気温が約37℃程度の夏場における太陽電池セルの温度変化の実測値に基づき設定したものである。
【0114】
【表1】

【0115】
その結果、実施例の裏面電極型太陽電池セルは、最高気温が約37℃程度の夏場という過酷な条件において、上記の寿命は20年以上であることが確認された。
【0116】
したがって、実施例の裏面電極型太陽電池セルを実際の環境下に設置した場合には、上記の寿命はさらに長くなると考えられる。
【0117】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、裏面電極型太陽電池セル、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 半導体基板、1a スライスダメージ、2 第1導電型不純物拡散領域、2a,3a コンタクト、3 第2導電型不純物拡散領域、4 パッシベーション膜、4a,4b コンタクトホール、5 反射防止膜、6 第1導電型用銀電極、7 第2導電型用銀電極、8,80 裏面電極型太陽電池セル、10,100 配線シート、11 絶縁性シート、12,12a 第1導電型用配線、13,13a 第2導電型用配線、17 透明基板、18 封止材、19 裏面フィルム、20 導電性接合材、20a 導電性接合材前駆体、21 導電性粒子分散層、22 導電性粒子、23 絶縁性基材、41 導電層、42 レジスト、43 矢印、101 n型シリコン基板、102 p+層、103 n+層、106 p型用銀電極、107 n型用銀電極、111 ガラエポ基板、112 p配線、113 n配線、119 半田、121 合金層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含み、
前記第1導電型用電極および前記第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、
前記導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含む、裏面電極型太陽電池セル。
【請求項2】
前記絶縁性基材は樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の裏面電極型太陽電池セル。
【請求項3】
前記導電性粒子は金属粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の裏面電極型太陽電池セル。
【請求項4】
裏面電極型太陽電池セルと、
配線シートと、を備え、
前記裏面電極型太陽電池セルは、半導体基板と、前記半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含むとともに、前記第1導電型用電極および前記第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、前記導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含んでおり、
前記配線シートは、絶縁性シートと、前記絶縁性シートの一方の面側に設置された第1導電型用配線と第2導電型用配線とを含み、
前記第1導電型用電極と前記第1導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されているとともに前記第2導電型用電極と前記第2導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されている、配線シート付き太陽電池セル。
【請求項5】
配線シート付き太陽電池セルを含む太陽電池モジュールであって、
前記配線シート付き太陽電池セルは、裏面電極型太陽電池セルと、配線シートと、を備え、
前記裏面電極型太陽電池セルは、半導体基板と、前記半導体基板の一方の面側に設置された第1導電型用電極と第2導電型用電極とを含むとともに、前記第1導電型用電極および前記第2導電型用電極の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する導電性粒子分散層を備え、前記導電性粒子分散層は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材中に分散される導電性粒子とを含んでおり、
前記配線シートは、絶縁性シートと、前記絶縁性シートの一方の面側に設置された第1導電型用配線と第2導電型用配線とを含み、
前記配線シート付き太陽電池セルにおいては、前記第1導電型用電極と前記第1導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されているとともに前記第2導電型用電極と前記第2導電型用配線とが導電性接合材を介して電気的に接続されている、太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−66312(P2011−66312A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217433(P2009−217433)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】