説明

補助吸収性物品

【課題】使い捨ておむつ等の吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加させる補助吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4が介在して構成されるとともに、吸収性物品の表面に重ねて使用される補助吸収性物品1において、前記表面シート3及び裏面シート2は、それぞれ親水性を有する不織布によって構成されるとともに、前記吸収体4には、表面側から裏面側に貫通する吸収体貫通部6を形成し、この吸収体貫通部6では、前記表面シート3と前記裏面シート2とが直接又は前記吸収体の包材5を介して接合される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面側に重ねて使用される尿取りパッド、失禁パッドなどの補助吸収性物品であって、吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加させる機能を備えた補助吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、尿取りパッド、失禁パッドなどの補助パッドとして使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面に重ねて使用される補助吸収性物品は、軽失禁などにより体液を吸収した補助吸収性物品のみを交換し、経済的な負担の軽減などを目的とした簡易吸収用としての機能と、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収能を補うことを目的とした吸収能補強用としての機能とを有する。
【0003】
身体障害者や夜尿症の児童などの場合、ベビー用おむつと大人用おむつの中間サイズのおむつが使用され、近年この中間サイズのおむつに対しても、大人用おむつと同様に、おむつの表面に補助吸収性物品を重ねて装着する使用態様が増えてきた。ここで、大人用のおむつの場合、身体が大きくおむつ交換が難しいので、前記補助吸収性物品を前述の簡易吸収用として機能させる使用態様が多いが、中間サイズのおむつの場合、大人用に比べおむつ交換が容易なので、前記補助吸収性物品によって純粋に吸収量を増加させる吸収能補強用として機能させる使用態様が多い。
【0004】
このような補助吸収性物品としては従来より種々開発が行われ、例えば、下記特許文献1では、表面シート及び裏面シートがそれぞれ、一方の面が疎水性を有し、他方の面が親水性を有し、親水性を有する他方の面を吸収体と対向させて配された不織布から形成されたものが開示され、下記特許文献2では、吸収コアを通過した液を透過させる液透過領域が形成されたものが開示され、下記特許文献3では、吸収体の上側に積層された透液性のトップシートと、吸収体の下側に積層された排泄液の一部を透過し得る素材からなるバックシートとを備えたものが開示され、下記特許文献4では、液吸収体を液透過性の表面シート及び液透過性の裏面シートの間に挟み込んだものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135790号公報
【特許文献2】特許第3519267号公報
【特許文献3】特開2001−70341号公報
【特許文献4】特開昭63−309601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の補助吸収性物品では、排泄される体液が少量の場合には、使い捨ておむつ等へ体液を透過させず、排泄される体液が多量の場合には、使い捨ておむつ等へ体液を透過させるとの考え方であるが、同文献の実施例(表2)では、150g(50g×3回)の生理食塩水の滴下に対して、補助吸収性物品を通過した通液量が3.40gと極めて少なく、そのほとんどが補助吸収性物品に吸収されたままとなっている。このように、上記特許文献1記載の補助吸収性物品では、使い捨ておむつ等に体液を移行させる機能を有しているものの、一度補助吸収性物品の吸収体(パルプやポリマー)に吸収した体液を、重力や滲み出しなどの作用によって使い捨ておむつ側に移行させるものであるため、体液が速やかに移行せず、使い捨ておむつの体液吸収能が十分活用できていないばかりか、補助吸収性物品の吸収量が飽和状態に達すると、補助吸収性物品から体液がこぼれ出て漏れが生じ、補助吸収性物品としての機能が十分に果たせない結果となっている。
【0007】
また、上記特許文献1記載の補助吸収性物品では、不織布の一方の面が疎水性を有するため、親水性を有する不織布より通液時間が約4.3倍(34秒/8秒)〜34.5倍(138秒/4秒)も長くなり(同文献実施例の表1参照)、補助吸収性物品から使い捨ておむつへの体液の移行速度が悪化する原因となっていた。これにより、体液が補助吸収性物品に滞留しやすくなり、前述の通り体液がこぼれ出て漏れが生じ、補助吸収性物品としての機能が十分に果たせない結果となる。
【0008】
一方、上記特許文献2〜4記載の補助吸収性物品では、排泄量が多い場合に使い捨ておむつ等へ積極的に体液を透過させることを目的として、液透過領域を形成したり(特許文献2)、バックシートに開口を設けたり(特許文献3)、液吸収体を液透過性のシートで挟み込んだり(特許文献4)する構成が採用されているが、いずれも、一度補助吸収性物品の吸収体に吸収された体液を使い捨ておむつ側に移行させるものであるため、上記特許文献1と同様に、補助吸収性物品の体液吸収量が飽和状態に達すると、補助吸収性物品から体液がこぼれ出て漏れが生じ、補助吸収性物品としての機能が十分に果たせていない。
【0009】
ところで、前述の中間サイズのおむつは、これを着用して学校に登校する児童も多いため、他の人から気付かれにくいように薄型の商品が望まれている。このため、薄型のおむつ(吸収性物品)でも、その吸収量を効果的に増加できる補助吸収性物品が望まれていた。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加させる補助吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在して構成されるとともに、吸収性物品の表面に重ねて使用される補助吸収性物品において、
前記表面シート及び裏面シートは、それぞれ親水性を有する不織布によって構成されるとともに、前記吸収体には、表面側から裏面側に貫通する吸収体貫通部が形成されていることを特徴とする補助吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、前記表面シート及び裏面シートがそれぞれ親水性を有する不織布によって構成されるとともに、前記吸収体には、表面側から裏面側に貫通する吸収体貫通部が形成されているため、補助吸収性物品の表面に排泄された体液は、補助吸収性物品の吸収体に吸収されるとともに、一部が前記吸収体貫通部を通過して、下層の吸収性物品にも速やかに吸収される。このように、本発明に係る補助吸収性物品を積層することによって、排泄された体液が補助吸収性物品とその下層の吸収性物品との両方に同時に吸収されるため、補助吸収性物品の吸収体に吸収された体液を下層の吸収性物品に移行させるより、吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加させることができる。
【0013】
また、補助吸収性物品の体液吸収量が飽和状態となっても、その後の排泄に対しては、前記吸収体貫通部を透過して下層の吸収性物品に吸収させることができるため、補助吸収性物品からこぼれ出て漏れが生じるようなことが無くなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記吸収体貫通部では、前記表面シートと前記裏面シートとが直接又は前記吸収体の包材を介して接合されている請求項1記載の補助吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記吸収体貫通部の表面シートと裏面シートとを直接又は前記吸収体の包材を介して接合することにより、体液が吸収体貫通部を速やかに通過できるようにしたものである。
【0016】
請求項3に係る本発明として、平面視で、前記吸収体貫通部の面積が、前記吸収体貫通部がないとした場合の吸収体全面積の20〜60%である請求項1、2いずれかに記載の補助吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明は、吸収体貫通部の面積割合を規定したものであり、この割合で吸収体貫通部を形成することにより、補助吸収性物品と下層の吸収性物品との両方に効果的に体液が吸収されるようになる。すなわち、吸収体貫通部の面積が20%未満では吸収体貫通部の効果が得られにくく、60%を超える場合には吸収性能が必ずしも問題となることはないが補助吸収性物品の形態保持性が損なわれるようになる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記表面シート及び裏面シートを構成する不織布が、連続する1枚の不織布からなり、この不織布に前記吸収体が被包されている請求項1〜3いずれかに記載の補助吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、製造工程を簡略化するため、表面シート及び裏面シートを構成する不織布を連続する1枚の不織布から構成し、この不織布に前記吸収体を包むようにしたものである。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記吸収体貫通部に対応する部分には、前記補助吸収性物品の表面シート及び裏面シートを貫通する開口部が形成されている請求項1〜4いずれかに記載の補助吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、吸収体貫通部での体液通過がより速やかに行われるようにするため、吸収体貫通部に対応する部分に、前記補助吸収性物品の表面シート及び裏面シートを貫通する開口部を形成するようにしたものである。
【0022】
請求項6に係る本発明として、前記吸収体貫通部及び開口部が補助吸収性物品の前側に偏倚して設けられるか、前記吸収体貫通部が補助吸収性物品の中央部分に設けられるとともに前記開口部が補助吸収性物品の長手方向に沿って設けられている請求項5記載の補助吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明は、男女別に作られた使い捨ておむつを使用する場合などに好適に用いられるものであり、それぞれ排尿口に近い部分に前記吸収体貫通部及び開口部を設けるようにしたものである。
【0024】
請求項7に係る本発明として、前記裏面シートを構成する不織布の親水度は、前記表面シートを構成する不織布の親水度と同等以上とされている請求項1〜6いずれかに記載の補助吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項7記載の発明では、前記裏面シートを構成する不織布の親水度を、前記表面シートを構成する不織布の親水度と同等以上とすることにより、吸収体貫通部において表面シートから裏面シートに向けて体液が加速的に透過できるようになる。さらに、補助吸収性物品の吸収体に吸収された体液も、前記裏面シートを透過して下層の吸収性物品に移行しやすくなる。
【0026】
請求項8に係る本発明として、前記裏面シート側の外面に、前記吸収性物品の表面に対して相対的なズレを防止するズレ止め防止機能が備えられている請求項1〜7いずれかに記載の補助吸収性物品が提供される。
【0027】
上記請求項8記載の発明では、着用中の補助吸収性物品の位置ズレを防止するため、前記裏面シート側の外面に、前記吸収性物品の表面に対して相対的なズレを防止するズレ止め防止機能を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0028】
以上詳説のとおり本発明によれば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加し得る補助吸収性物品が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る補助吸収性物品1の第1形態例を示す一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】第2形態例に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図4】第3形態例に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図5】第4形態例に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図6】第5形態例に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図7】第5形態例に係る補助吸収性物品1の他の形態例(その1)である。
【図8】第5形態例に係る補助吸収性物品1の他の形態例(その2)である。
【図9】第6形態例に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図10】第1の供試体に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【図11】第2の供試体に係る補助吸収性物品1の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、補助吸収性物品1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(補助吸収性物品展開時の左右方向)を意味する。なお、図面の所要部位において接着部位を×印で表示している。
【0031】
本発明に係る補助吸収性物品1は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面に重ねて使用することにより、前記吸収性物品の吸収量を増加させるものである。
【0032】
図1及び図2において、前記補助吸収性物品1は、綿状パルプ等からなり、たとえば長方形状(または砂時計形状)等の平面形状で、ある程度の剛性を有するとともに、被包シート5によって囲繞された吸収体4と、該吸収体4の表面側(肌当接面側)を覆うように配設された有孔または無孔の親水性を有する不織布からなる透液性表面シート3と、前記吸収体4の外面側(非肌当接面側)を覆うように配設された有孔または無孔の親水性を有する不織布からなる透液性裏面シート2とから主に構成されている。
【0033】
特に、本発明では、前記吸収体4には、表面側から裏面側に貫通する吸収体貫通部6、6…が形成されている。この吸収体貫通部6では、表面シート3と裏面シート2とが前記被包シート5を介してそれぞれ接合されている。すなわち、排泄された体液は、前記吸収体貫通部6では、吸収体4に吸収されずに、表面シート3から裏面シート2へ直接通液されるようになっている。
【0034】
以下、更に各構成について具体的に詳述すると、
前記吸収体4は、たとえば綿状パルプ等の繊維集合体と高吸収性ポリマー(SAP)、繊維状SAP等の高吸収材とにより構成され、図示例では長方形状のものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。吸収体4の平面形状としては、脚回りへの当たりを和らげるために両側部に夫々括れ部を有する略砂時計状とすることもできる。前記吸収体4は、積繊又はエアレイドなどにより加工され、坪量が50〜600g/m程度が好ましく、300〜500g/m程度がより好ましい。
【0035】
前記高吸収性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸収性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記吸収体4における高吸収性ポリマーの含有比率は、30〜70%程度が適当であるが、これに限るものではない。
【0036】
前記吸収体4は、被包シート5によって囲繞されている。被包シート5は、ティシュー等の紙材からなるクレープ紙を使用することに問題はないが、吸収速度を速めるため不織布を使用することが好ましい。厚みは0.05〜0.5mm程度が好ましく、0.05〜0.2mm程度がより好ましい。坪量は5〜25g/m程度が好ましく、5〜15g/m程度がより好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適である。一方、前記被包シート5は無くても良く、吸収体4を表面シート3及び裏面シート2で直接包む方が吸収速度、コストの面で好ましい。
【0037】
前記吸収体4の表面側(肌当接面側)を覆う透液性の表面シート3としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。特には、吸収体4を構成するパルプ及びSAPが抜け出ないように、SMS法により加工された不織布が好適である。これらは1層からなるシートが操業の点から最も好ましいが、2層以上(同一種類あるいは複数種類)からなるシートでもよいが、合計の坪量としては、10〜40g/mが好ましく、10〜22g/mがより好ましく、10〜15g/mが特に好ましい。厚みは1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下が特に好ましい。表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記表面シート3は、吸収体4の側縁部から側方まで延在している。
【0038】
前記吸収体4の裏面側(外面側)を覆う透液性の裏面シート2としては、上記表面シート3と同様に有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。前記裏面シート2も、吸収体4の側縁部から側方の前記表面シート3と同様の範囲まで延在している。図示例では、表面シート3と裏面シート2とが別体のシート材で構成したものをそれぞれ吸収体4の表裏面に覆っているが、前記表面シート3及び裏面シート2を構成する不織布が、連続する1枚の不織布からなり、この不織布によって前記吸収体4を額巻き又は被包するようにして包むようにしてもよい。
【0039】
前記裏面シート2を構成する不織布の親水度は、表面シート3を構成する不織布の親水度に対して同等以上とすることが好ましい。これにより、吸収体貫通部6において、表面シート3から裏面シート2に向けて親水度の勾配が形成され、体液が加速的に裏面シート2側に移行できるようになるとともに、表面シート3の親水度よりも高くすることにより逆戻りの低減にもなる。さらに、補助吸収性物品1の吸収体4に吸収され、吸収体4の裏面側まで到達した体液も、裏面シート2を透過して下層の吸収性物品に移行しやすくなる。
【0040】
前記裏面シート2及び表面シート3の親水度の調整は、界面活性剤の塗布量を調整することにより成すことができる。前記界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩、アシル化加水分解タンパク質、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ポリアルキレノキシドブロック共重合物、陽イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、イミダゾリニウム誘導体等が挙げられ、この他にも繊維に塗布される界面活性剤として公知の界面活性剤であればどのようなものを適用しても良い。
(吸収体貫通部6について)
以下、前記吸収体貫通部6についてさらに詳しく説明する。
【0041】
前記吸収体貫通部6は、前述の通り、吸収体4の表面側から裏面側にかけて吸収体4が存在せず貫通する部分であり、吸収体4の表面に対して1又は複数設けられている。前記吸収体貫通部6では、表面シート3と裏面シート2とが直接又は前記被包シート5を介してそれぞれ、ホットメルトなどの接着剤、ヒートシールなどの接合手段によって接合されている。
【0042】
吸収体貫通部6、6…の面積は、図1に示される平面視で、吸収体貫通部6、6…がないとした場合の吸収体全面積(吸収体4の外形寸法の縦×横から得られる面積)の20〜60%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。吸収体貫通部6の面積が20%未満では吸収体貫通部6の効果が得られにくく、60%を超える場合には吸収性能が必ずしも問題となることはないが補助吸収性物品1の形態保持性が損なわれるようになる。
【0043】
前記吸収体貫通部6は、直線、曲線、円形、四角形、三角形など任意の形状で、吸収体4の表面に1又は複数形成することができる。また吸収体貫通部6の吸収体4の表面に対する位置は任意であるが、平面視で吸収体4の略中央部を中心に形成することが好ましい。
【0044】
以下、前記吸収体貫通部6の具体的な形態例について、図1〜図6に基づいて詳述する。
【0045】
第1形態例では、図1及び図2に示されるように、円形状の吸収体貫通部6を吸収体4の略中央部に長手方向に沿って4つずつ2列に配列したものである。これにより、排泄された体液が各吸収体貫通部6に分散して下層の吸収性物品に移行できる。
【0046】
第2形態例では、図3に示されるように、吸収体4の略中央部に長手方向に長い楕円形状の吸収体貫通部6を1つ形成したものである。これにより、排泄された体液を速やかに吸収性物品に移行させることができる。
【0047】
第3形態例では、図4に示されるように、吸収体4の略中央部に、長手方向に長い溝状の前後両端を二股に分岐させた吸収体貫通部6を形成したものである。このときの平面形状は、例えば1列又は複数列の直線状(長方形状、図8及び図9参照)、前後両端を幅方向に直交させたI字状などとすることもできる。
【0048】
第4形態例では、図5に示されるように、吸収体4の略中央部に、外周が長手方向に長い楕円形のリング状に縁取られた吸収体貫通部6Aと、その内部に長手方向に長い楕円形状の吸収体貫通部6bとをそれぞれ1つずつ形成したものである。これにより、中央部に排泄された体液が前後左右の任意の方向に流れても、前記吸収体貫通部6a、6bで捕捉でき、下層の吸収性物品に移行させることができる。なお、内部の吸収体貫通部6bは無くても良い。
【0049】
第5形態例では、図6に示されるように、吸収体4の略中央部に、長手方向に長い楕円形状の吸収体貫通部6が形成されるとともに、その吸収体貫通部6に対応する部分の略中央部に、補助吸収性物品1の表面シート3及び裏面シート2を貫通する開口部7が形成されている。すなわち、前記開口部7では、表面シート3、裏面シート2及び被包シート5が介在せず、完全な貫通穴となっている。このため、排泄された体液は前記開口部7を通じて直接下層の吸収性物品に移行するので、体液通過がより速やかに行われるようになる。
【0050】
上記開口部7を設けることによる効果についてより詳細に説明すると、一般に使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面に補助吸収性物品を重ねて使用した場合、使用者に近い側の補助吸収性物品の方が早く飽和状態となりやすく、この飽和状態の補助吸収性物品に複数回の排尿がされた場合などには十分な吸収性能を発揮できず、逆に漏れや逆戻りを誘発する蓋然性が高かった。この対策として、補助吸収性物品自体を大型化、高吸収能化させることが考えられる。
【0051】
しかしながら、大型化、高吸収能化にも限度があり前記問題の根本的な解決には至っていないとともに、装着感の悪化やコスト高などの問題が生じる場合があった。
【0052】
そこで、本補助吸収性物品1では、主として使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収能力によって体液を吸収し、その一部を補助吸収性物品1に負担させるという考えの下で、前記吸収体貫通部6に対応する部分に前記開口部7を設けることによって、吸収性物品に積極的に体液を移行させ、使い捨ておむつ等の吸収性物品及び補助吸収性物品1のトータルの吸収量を増加させるとともに、複数回の排尿に対して補助吸収性物品1の吸収量を徐々に増やすことで補助吸収性物品1の体液吸収能力の低下、体液の漏れ及び逆戻りを図ったものである。
【0053】
具体的に体液吸収のメカニズムについて説明すると、1回目の排尿に対しては、その大部分が開口部7を通して外側の使い捨ておむつに吸収され(第1形態)、開口部7周縁の表面シート3及び裏面シート2が介在する吸収体貫通部6に一時滞留した体液が、吸収体貫通部6周縁の吸収体4に吸収される(第2形態)とともに、表面シート3及び裏面シート2を透過して使い捨ておむつに吸収される(第3形態)。このように1回目の排尿に対しては、3形態で使い捨ておむつ及び補助吸収性物品1にそれぞれ吸収される。
【0054】
2回目の排尿に対しても同様に、(1)開口部7を通して使い捨ておむつに吸収されるもの、(2)吸収体貫通部6周縁の吸収体4に吸収されるもの、(3)吸収体貫通部6を透過して使い捨ておむつに吸収されるものの3形態がある。
【0055】
排尿回数が増えるに従い、使い捨ておむつ自体の吸収余力が減少するため、補助吸収性物品1に吸収される割合が増加する。
【0056】
このように、本補助吸収性物品1は、使い捨ておむつの吸収能力を十分に生かしつつ補助吸収性物品1によって補強するものであり、排尿回数の増加による吸収性能の低下を防止するとともに、体液の漏れ及び逆戻りを防止したものである。
【0057】
前記開口部7を設けた補助吸収性物品1の他の形態例としては、図7に示されるように、吸収体貫通部6及び開口部7の数(図7(A)〜(C))及び大きさ(図7(C)、(D))を任意に調整したものとすることができる。従って、例えば吸収能力の高い使い捨ておむつを使用する場合、吸収体貫通部6及び開口部7の数又は大きさを大きくして、使い捨ておむつに移行させる体液量を増やし、使い捨ておむつ自体の吸収性能を十分に活用する。一方、吸収能力の低い外出用や薄型の使い捨ておむつを使用する場合、吸収体貫通部6及び開口部7の数又は大きさを小さくして、使い捨ておむつに移行させる体液量を少なくし、補助吸収性物品1の吸収性能を活用する。
【0058】
また、本補助吸収性物品1は、男女別に作られた使い捨ておむつを使用する場合などにおいて、図8に示されるように、男性用として吸収体貫通部6及び開口部7が補助吸収性物品1の前側に偏倚して設けられるようにしたもの(同図8(A))、女性用として吸収体貫通部6が補助吸収性物品1の中央部分に設けられるとともに、この吸収体貫通部6に形成される開口部7が補助吸収性物品1の長手方向に沿って設けられるようにしたもの(同図8(B))とすることができる。これにより、それぞれ排尿口に近い部分に吸収体貫通部6及び開口部7が設けられ、上述の吸収性能の低下防止、漏れ及び逆戻り防止などがより効果的となる。このとき、開口部7の大きさは、同図8(A)の男性用の場合、陰茎から直接集中的に排尿されるため比較的大きくし、同図8(B)の女性用の場合、排尿口が陰唇や大陰唇で隠れていることから排尿速度が比較的遅いとともに前後方向に拡がって排尿されるため小さな複数の、図示例では3つの開口部7、7…を補助吸収性物品1の長手方向に沿って配列するように設けることが好ましい。図8(B)において、開口部7は縦長の開口部7を1つ設けるようにしても良い。
【0059】
ところで、前記補助吸収性物品1には、図9に示されるように、前記裏面シート2の外面に、吸収性物品の表面に対して相対的なズレを防止するためのズレ止め防止機構8、8を備えるようにすることができる。前記ズレ止め防止機構8は、前記裏面シート2に対して1又は複数の線状、点状、円形状など任意の形状で設けることができ、図示例では長手方向に沿う線状のズレ止め防止機構8、8が幅方向に離間して2本設けられている。前記ズレ止め防止機構8は、図示例のように、吸収体貫通部6と重なる位置に設けると、吸収体貫通部6と吸収性物品の表面との密着性が向上し、速やかな体液の移行が可能となるため好ましい。ただし、その重なり代は、吸収体貫通部6の体液透過効果を阻害しないように、平面視で、吸収体貫通部6の総面積の70%より小さくなるようにする。前記ズレ止め防止機構8は、フック材などの機械的接合手段や粘着剤、発泡ウレタンなどのエラストマー等を使用することができる。
【実施例】
【0060】
前記補助吸収性物品1の吸収性能の効果を実証するため、図10及び図11に示されるように、補助吸収性物品1の供試体を作成し、吸収性能の評価試験を行った。実験では、図10及び図11に示されるように、SMS法により製作した親水性不織布(坪量13g/m)からなる表面シート3と裏面シート2との間に、長さ315mm×幅115mmの外形寸法(吸収体貫通部6がないとした場合の吸収体の面積は約362cm)を有し、パルプ6g及びポリマー6gを混合させた吸収体4が介在して構成され、前記吸収体4に1列(図10)又は2列(図11)で長方形状の吸収体貫通部6及び開口部7を各寸法で形成した補助吸収性物品1の供試体を作成した。この補助吸収性物品1に対して、1回分の排尿量に相当する100ccの人工尿を3回に亘って注入したときの吸収速度(吸収時間)、補助吸収性物品1の吸収量及び補助吸収性物品1の逆戻り量を夫々計測した。前記吸収速度(吸収時間)の測定は、注入筒へ100ccの人工尿を注ぎ始めてから人工尿が補助吸収性物品1の表面から吸収されてなくなるまでの時間をストップウォッチで計測した。なお、前記注入筒はポリアクリルで作成され、重量が2kgで、補助吸収性物品1と接する底面は平らで、寸法が600mm×250mmの長方形で、計測に当たり補助吸収性物品1は注入筒で完全に覆われる形で行なった。液体注入部の内径は25mmで注入部の高さは105mmである。なお、人工尿が補助吸収性物品1に完全に吸収された後、注入筒は補助吸収性物品1の上部から取り除いた。人工尿の注入位置は、補助吸収性物品1の中央部分、すなわち長手方向中心線と幅方向中心線が交わる部分に注入筒の注入部の中心がほぼ一致する位置とした。人工尿の注入は100ccを5分間隔で3回行い、各注入回毎に計測を行った。前記吸収量は、人工尿が補助吸収性物品1の表面から吸収されてなくなった後、20秒後の重量を計測し、予め計測していた人工尿注入前の補助吸収性物品1の重量を差し引くことにより得られた値である。前記逆戻り量は、100mm四方のろ紙を複数枚積層した約40g分の乾燥重量を0.0001gの単位まで測定しておき、人工尿注入3分後に補助吸収性物品1の表面中央部に前記ろ紙の積層物を敷くとともに、その上に5kgの錘(底面積100mm四方)を載置し、10秒後のろ紙の重量から前記乾燥重量を差し引くことにより得られた値である。
【表1】

*1)対吸収体4比 *2)対吸収体貫通部6比 *3)対吸収体4比
この結果、吸収体4に吸収体貫通部6を形成した補助吸収性物品1(実施例1〜6)は、その吸収体貫通部6の形状・面積・開口部7の有無に関わらず、吸収体貫通部の無い補助吸収性物品(比較例1)と比べて吸収速度が速く(吸収時間が短く)、吸収速度が遅いために発生するもれを解消できる。また補助吸収性物品1の吸収量は少なく、吸収性物品に人工尿を多く移行させ、かつ補助吸収性物品1でも吸収することで効果的に事実上の吸収量を向上させることができる。また、補助吸収性物品1の表面の逆戻りも少なく、着用者への肌トラブル発生の確率が低下できる。従って、使い捨ておむつ等の吸収性物品の体液吸収量を効果的に増加させることができる。
【0061】
また、前記補助吸収性物品1は、実施例1と2との比較、実施例3と4との比較及び実施例5と6との比較から、いずれも開口部7を設けた方が少なくとも吸収速度が速く(吸収時間が短く)なる。このときの開口部7の面積率は、吸収体(吸収体貫通部6がないとした場合の吸収体)の面積約362cmに対して30%以下、具体的には10〜30%であることが好ましい。30%を越える面積で開口部7を形成すると、補助吸収性物品1の形態保持性が損なわれるおそれがある。
【0062】
前記開口部7を設けた補助吸収性物品1は、吸収速度が速くなるため、補助吸収性物品1に吸収される吸収量を少なくすることができ、補助吸収性物品1と使い捨ておむつ等の吸収性物品とにバランス良く体液が分散吸収されるようになる。
〔他の形態例〕
(1)上記補助吸収性物品1には、ビタミンEや消臭剤、芳香剤などを添加し、他の機能を具備するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…補助吸収性物品、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…吸収体貫通部、7…開口部、8…ズレ止め防止機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在して構成されるとともに、吸収性物品の表面に重ねて使用される補助吸収性物品において、
前記表面シート及び裏面シートは、それぞれ親水性を有する不織布によって構成されるとともに、前記吸収体には、表面側から裏面側に貫通する吸収体貫通部が形成されていることを特徴とする補助吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体貫通部では、前記表面シートと前記裏面シートとが直接又は前記吸収体の包材を介して接合されている請求項1記載の補助吸収性物品。
【請求項3】
平面視で、前記吸収体貫通部の面積が、前記吸収体貫通部がないとした場合の吸収体全面積の20〜60%である請求項1、2いずれかに記載の補助吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シート及び裏面シートを構成する不織布が、連続する1枚の不織布からなり、この不織布に前記吸収体が被包されている請求項1〜3いずれかに記載の補助吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体貫通部に対応する部分には、前記補助吸収性物品の表面シート及び裏面シートを貫通する開口部が形成されている請求項1〜4いずれかに記載の補助吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体貫通部及び開口部が補助吸収性物品の前側に偏倚して設けられるか、前記吸収体貫通部が補助吸収性物品の中央部分に設けられるとともに前記開口部が補助吸収性物品の長手方向に沿って設けられている請求項5記載の補助吸収性物品。
【請求項7】
前記裏面シートを構成する不織布の親水度は、前記表面シートを構成する不織布の親水度と同等以上とされている請求項1〜6いずれかに記載の補助吸収性物品。
【請求項8】
前記裏面シート側の外面に、前記吸収性物品の表面に対して相対的なズレを防止するズレ止め防止機能が備えられている請求項1〜7いずれかに記載の補助吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−246896(P2010−246896A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50169(P2010−50169)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】