説明

補助器具

【課題】対象物の切断及び切断部分への粘着テープの貼り付けを簡易な作業で行う事。
【解決手段】補助器具100は、対象物20を切断するカッター200用の補助器具であって、カッター200を保持するバンド104(第1保持部)と、ロール状に巻かれた粘着テープ300を引き出し可能に保持する保持部106(第2保持部)と、バンド104に保持されたカッター200の刃先204Aが、保持部106の位置から引き出されて対象物20に貼られた粘着テープ300上を移動させられて、当該粘着テープ300とともに当該対象物20が切断されるときに、粘着テープ300が刃先204Aによって切断される位置よりも当該刃先204Aの移動方向下流側で当該粘着テープ300を当該対象物20に対して押さえ付けるローラ108(押さえ付け部材)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターによる対象物の切断を補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
布や綿等の繊維材料を切断すると、切断部分に繊維のほつれが生じる。このような繊維のほつれは、見た目に醜いうえ、繊維が周囲に散乱する等の問題が生じる。そこで、特許文献1には、このようなほつれが生じないように繊維材料を切断する事を目的として、繊維材料とともに熱可塑性合成樹脂のテープをローラと超音波振動体で挟み込み、超音波振動体の超音波振動させる事により、ローラーから突出している切断刃で繊維材料を切断するとともに、テープを溶融して繊維材料の切断部分の縁部に浸透させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、持ち運びや収納が困難な大型の装置が必要であり、手軽に繊維材料を切断する事ができない。また、上記特許文献1の技術では、対象物とともに熱可塑性合成樹脂のテープをローラと超音波振動体で挟み込む必要があるので、切断する事が可能な繊維材料の厚さが薄いものに限定されてしまう。さらに、上記特許文献1の技術では、繊維材料の切断部分が超音波振動によって加熱されるため、発火するおそれのある可燃性の繊維材料を切断する事ができない。そこで、本発明は、対象物の切断及び切断部分への粘着テープの貼り付けを簡易な作業で行う事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、対象物を切断するカッター用の補助器具であって、前記カッターを保持する第1保持部と、ロール状に巻かれた粘着テープを引き出し可能に保持する第2保持部と、前記第1保持部に保持された前記カッターの刃先が、前記第2の保持部の位置から引き出されて前記対象物に貼られた前記粘着テープ上を移動させられて、当該粘着テープとともに当該対象物が切断されるときに、前記粘着テープが前記刃先によって切断される位置よりも当該刃先の移動方向下流側で当該粘着テープを当該対象物に対して押さえ付ける押さえ付け部材とを備えることを特徴とする。また、本発明は、前記第1保持部に保持された前記カッターの刃先が前記対象物を切断するときに、前記対象物に向かう方向又はその逆方向に前記押さえ付け部材を移動可能にする移動機構と、前記対象物に向かう方向へ前記押さえ付け部材を付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする。また、本発明は、前記第2保持部は、前記刃先の移動方向である第1の方向とは異なる第2の方向に前記粘着テープが引き出し可能となるように、当該粘着テープを保持し、前記第2保持部の位置から前記第2の方向へと引き出された前記粘着テープが前記第2の方向から前記第1の方向へと延伸するよう、当該粘着テープを案内する案内部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、対象物の切断及び切断部分への粘着テープの貼り付けを簡易な作業で行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る切断器10の構成を示す。
【図2】第1実施形態に係る切断器10の側面を示す。
【図3】第1実施形態に係る切断器10の正面を示す。
【図4】切断器10による対象物20を切断する動作を示す。
【図5】第2実施形態に係る切断器10の構成を示す。
【図6】切断器10に傾きに応じたローラ108の状態を示す。
【図7】第3実施形態に係る切断器10の構成を示す。
【図8】第4実施形態に係る切断器10の構成を示す。
【図9】第4実施形態に係る切断器10の側面を示す。
【図10】第4実施形態に係る切断器10の正面を示す。
【図11】第4実施形態に係る切断器10の底面を示す。
【図12】第5実施形態に係る切断器10の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態では、切断器10によって、繊維材料の対象物20を直線状に切断する例を説明する。まず、図1〜図3を用いて、第1実施形態に係る切断器10の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る切断器10の構成を示す。図2は、第1実施形態に係る切断器10の側面を示す。図3は、第1実施形態に係る切断器10の正面を示す。切断器10は、補助器具100と、カッター200と、粘着テープ300とを備える。以降の説明では、対象物20の切断対象面20Aと平行であって、カッター200による切断方向(第1の方向)を「X方向」及び「前後方向」とする。このうち、刃先204Aのある方向を「前方」とし、その反対方向を「後方」とする。また、対象物20の切断対象面20Aと平行であって、X方向と直交する方向(第2の方向)を「Y方向」及び「左右方向」とする。また、対象物20の切断対象面20Aと直交する方向を「Z方向」及び「上下方向」とする。このうち、対象物20のある方向を「下方」とし、その反対方向を「上方」とする。
【0009】
カッター200は、対象物20を切断するものである。カッター200は、本体202及び刃204を有する。刃204は本体202の先端から突き出ている。カッター200は、その刃先204Aを対象物20の切断対象面20Aに押し付けながら、切断対象面20A上を移動させる事で、対象物20を切断する。
【0010】
粘着テープ300は、対象物20の切断部分に貼り付けられる事によって、当該切断部分における繊維のほつれを抑止するものである。粘着テープ300はロール状に巻かれており、ここから引き出されて、対象物20の切断部分に貼り付けられる。以下、粘着テープ300のロール状に巻かれている部分を「ロール部分302」と示す。
【0011】
補助器具100は、カッター200用の補助器具である。補助器具100は、カッター200と粘着テープ300とを保持する事により、これらの部材とともに切断器10を構成するものである。このように構成された切断器10は、カッター200で対象物20を切断すると同時に、対象物20の切断部分に粘着テープ300を貼り付けていく事ができるというものである。
【0012】
ここで、補助器具100の構成について説明する。補助器具100は、基板102、バンド104、保持部106、及びローラ108を備える。基板102は、板状の部材である。この実施形態では、基板102、保持部106、及びローラ108には、樹脂、プラスチック、金属、木等、比較的硬質な材料が用いられている。
【0013】
バンド104は、カッター200を保持する第1保持部として機能する。この実施形態では、バンド104には、ゴム等の伸縮性を有する材料が用いられている。バンド104は、伸縮する事で、カッター200の本体202を基板102に対して押さえ付けて固定する。
【0014】
保持部106は、基板102の後方部分に設けられている。保持部106は、ロール部分302を引き出し可能に保持する第2保持部として機能する。この第1実施形態では、保持部106は、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300が、刃先204Aによる切断経路上に直線状に延伸して配置されるように、ロール部分302を刃先204Aによる切断経路上(以下、単に「切断経路上」と示す。)で保持する。第1実施形態で用いる「切断経路上」とは、刃先204Aから、切断器10の後方に向かって直線状に伸びる経路上を示す。保持部106は、切断経路上において、当該切断経路と直交する方向(Y方向)に延伸する板状の支持軸を有している。この支持軸は、基板102と一体に形成されている。この支持軸には、円筒状のロール部分302の筒内部が差し込まれる。これにより、保持部106は、切断経路上において、支持軸がロール部分302の回転軸となって、粘着テープ300を回転可能に(すなわち、粘着テープ300を引き出し可能に)保持する。このように保持部106がロール部分302を保持する事で、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300は、切断経路上に直線状に延伸して配置される。
【0015】
ローラ108は、下方に突出して設けられている。ローラ108は、刃先204Aが、保持部106の位置から引き出されて対象物20に貼られた粘着テープ300上を移動させられて、当該粘着テープ300とともに当該対象物20が切断されるときに、粘着テープ300が刃先204Aによって切断される位置よりも刃204の移動方向下流側で粘着テープ300を対象物20に対して押さえ付ける押さえ付け部材である。具体的には、ローラ108は、切断経路上において、基板102の前方部分から下方に突出して設けられている。ローラ108の下方には、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300が通される。これにより、ローラ108は、刃先204Aで対象物20を切断する際に、保持部106から引き出されて切断経路上に配置された粘着テープ300を、対象物20に対して押さえ付けて、貼り付ける事ができるのである。この押さえ付ける位置は、粘着テープ300が刃先204Aによって切断される位置よりも、その刃204の移動方向下流側に相当する。第1実施形態のローラ108は、粘着テープ300の幅方向(Y方向)に延伸する回転可能な円筒状の部材である。ローラ108は、円筒の外周部分で、粘着テープ300を、対象物20に対して押さえ付ける。また、第1実施形態のローラ108の長さは、粘着テープ300の幅よりも長くなっている。これにより、第1実施形態のローラ108は、粘着テープ300をその幅方向の全体に亘って、押さえ付ける事ができる。
【0016】
ここで、ローラ108は、保持部106から引き出されて刃先204Aまで延伸する粘着テープ300に対して、下方(対象物20の方向)にある程度の張力をかける事ができるように、少なくとも、保持部106から粘着テープ300が引き出される部分と刃先204Aとを結ぶ直線よりも下方となる位置まで、基板102から突出して設けられている。これにより、対象物20がカッター200の刃先204Aで切断される際に、切断器10をある程度傾けると、切断経路上において、ローラ108が粘着テープ300を対象物20に対して押さえ付ける事ができるのである。
【0017】
ロール部分302から粘着テープ300が引き出される位置は、ロール部分302の外径によって異なる。ロール部分302の外径は、粘着テープ300の残量によっても変化するし、元々の粘着テープ300の大きさによっても変化する。このように粘着テープ300が引き出される位置が変化すると、保持部106から引き出された粘着テープ300の経路が変わってくるから、ローラ108によってかけられる粘着テープ300への張力も変わってくる。よって、ローラ108のあまりにも突出量が少ないと、ロール部分302の外径が小さくなる等して、粘着テープ300の経路が下方に遷移したときに、ローラ108と粘着テープ300との隙間が生じてしまい、粘着テープ300へ張力がかけられなくなってしまう恐れがある。そこで、このような事態が生じないように、粘着テープ300の残量が最も少ない状態となった場合や、最も小さいサイズの粘着テープ300が用いられた場合であっても、粘着テープ300に対して、ある程度の張力をかける事ができるように、ローラ108の突出量が十分に設定されている事が好ましい。
【0018】
続いて、切断器10による対象物20を切断する動作を説明する。図4は、切断器10による対象物20を切断する動作を示す。ここでは、対象物20の切断対象面20Aの切断開始位置P1から切断終了位置P2までを直線状に切断する例を説明する。まず、対象物20を切断する前の準備として、粘着テープ300を、切断開始位置P1よりも前方の位置(図4に示す例では位置P0)にまで、保持部106から引き出し、ある程度の部分を対象物20に貼り付けておく。また、保持部106から引き出された粘着テープ300を、ローラ108の下方、すなわち、ローラ108と対象物20との間を通しておく。粘着テープ300を、切断開始位置P1よりも前方の位置にまで引き出しておくのは、切断開始位置P1から、粘着テープ300を貼り付けるためである。また、粘着テープ300をある程度貼り付けておくのは、切断器10を後方に移動させたときに、粘着テープ300が保持部106から自動的に引き出されるようにするためである。また、ローラ108の下方に粘着テープ300を通しておくのは、ローラ108により粘着テープ300を対象物20に押さえ付けるためである。
【0019】
準備が完了し、対象物20を切断する場合、刃先204Aを、切断開始位置P1において、対象物20に突き刺し、そのまま、切断器10とともに刃先204Aを後方(図4示す方向D1)に、切断終了位置P2まで移動させる。これにより、対象物20は、切断開始位置P1から切断終了位置P2までが切断され、対象物20において、切断部分402が形成される事となる。
【0020】
この移動の際には、粘着テープ300が、相対的に切断器10の前方(図4に示す方向D2)に保持部106から引き出されていき、刃先204Aよりも先に、切断経路上に配置されていく。このとき、切断器10をある程度下方に傾け、ローラ108で粘着テープ300を、その下方(図4に示す方向D3)にある対象物20に押し当てながら、切断器10を後方に移動させる事で、粘着テープ300を切断経路上に確実に貼り付けていく事ができるのである。
【0021】
このようにして、刃先204Aで対象物20を切断する際には、その切断経路上において、既に粘着テープ300が貼り付けられているので、粘着テープ300とともに対象物20を切断する事ができるのである。特に、切断経路上に貼り付けられた粘着テープ300は、ローラ108によって押さえ付けられているので、切断の前後において、粘着テープ300の浮き上がりや、剥がれが生じたりする事を防止する事ができるのである。また、対象物20を切断させるための切断器10を後方に移動させる、といった動作に伴って、粘着テープ300が自動的に引き出されて、切断経路上に配置され、ローラ108によって押さえ付けられるので、ユーザは、対象物20を切断するための動作を行いさえすれば良く、粘着テープ300を引き出したり貼り付けたりするといった動作を意識して行う必要が無いので、対象物20の切断を集中して行う事ができ、同時に切断部分のほつれの抑止策を手軽に行う事ができる。また、粘着テープ300と対象物20とを同時に切断するので、粘着テープ300の切断部分の形状と、対象物20の切断部分の形状とを、容易に合わせる事ができるので、粘着テープ300が切断部分からはみ出したり、切断部分まで届かなかったりといった不具合も生じない。
【0022】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る切断器10の構成を示す。第2実施形態の切断器10は、ローラ108の突出量が調整可能な構成を有している点で、第1実施形態の切断器10と相違する。具体的には、第2実施形態の補助器具100は、基板102の前方部分かつ下方部分において、回転軸109、アーム110、及びトーションばね112を備える。回転軸109及びアーム110は、刃先204Aが対象物20を切断するときに、対象物20に向かう方向又はその逆方向に押さえ付け部材であるローラ108を移動可能にする移動機構である。アーム110は、基板102に設けられた回転軸109によって支持され、前後方向に回転可能である。アーム110の先端には、ローラ108が設けられている。アーム110が回転する事により、ローラ108は前後の方向に回転運動をして、その突出量が変化する。また、第2実施形態の補助器具100は、トーションばね112を備える。トーションばね112は、対象物20に向かう方向へローラ108を付勢する付勢部材である。トーションばね112は、前方にアーム110の回転を付勢する。アーム110が後方に折り畳まれた状態から、アーム110が前方に回転する事で、ローラ108は前方に回転運動し、ローラ108の突出量が増加する。ある位置から、それ以上アーム110が前方に回転すると、ローラ108の突出量が減少する方向に転じて、粘着テープ300を押さえ付ける効果が薄まったり、刃204に接触して切断の妨げとなったりしてしまう。このため、補助器具100には、アーム110がある位置以上前方に回転しないようにするための、ストッパー等を設けると良い。
【0023】
図6は、切断器10に傾きに応じたローラ108の状態を示す。ここで、切断器10の傾きは、ユーザの好みや、対象物等によって様々である。すなわち、切断器10の傾きが増える事もあれば、減る事もある。第2実施形態の切断器10は、カッター200の傾きの増減に応じて、ローラ108の突出量を調整して、粘着テープ300を対象物20に押さえ付ける事ができるのである。
【0024】
例えば、第1実施形態の切断器10のように、ローラ108の位置が固定されている場合、下方への切断器10の傾きが減少すると、ローラ108と対象物20とが離間してしまい、粘着テープ300を対象物20に押さえつける事ができなくなってしまう。これに対し、第2実施形態の切断器10は、ローラ108の突出量が増加する方向に付勢されているので、例えば図6(b)に示すように、対象物20を切断している最中に、下方への切断器10の傾きが減少し、ローラ108と対象物20との間隔が増加した場合であっても、トーションばね112の付勢力によってアーム110が前方(図6(b)に示す方向D5)に回転し、ローラ108の突出量が増加して、ローラ108が対象物20に追従して、粘着テープ300を押さえ続ける事ができる。
【0025】
また、第1実施形態の切断器10のように、ローラ108の位置が固定されている場合、ローラ108が対象物20に接している状態からは、ローラ108が支えとなってしまうので、それ以上は下方への切断器10の傾きを増やす事ができない。これに対し、第2実施形態の切断器10は、既に説明したとおり後方にも回転する事ができる構成を有しているので、例えば図6(a)に示すように、対象物20を切断している最中に、下方への切断器10の傾きが増加し、ローラ108と対象物20との間隔が減少した場合であっても、アーム110が後方(図6(a)に示す方向D4)に回転して折りたたまれる事で、ローラ108の突出量が減少するので、この妨げとならない。この場合であっても、ローラ108が対象物20に追従して、粘着テープ300を押さえ続ける事ができる。
【0026】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る切断器10の構成を示す。ローラ108の突出量が調整可能な構成としては、どの様な構成であっても良く、第2実施形態で説明したようにアーム110を回転させるものに限らない。また、突出量が増加する方向にローラ108を付勢するための付勢部材としては、どの様なものを用いても良く、第2実施形態で説明したトーションばね112に限らない。この第3実施形態では、ローラ108の突出量が調整可能な他の構成例を説明する。図7に示すように、この第3実施形態では、ローラ108の突出量が調整可能な構成として、先端にローラ108が設けられたアーム110を上下方向に往復移動させる構成を用いている。また、突出量が増加する方向(すなわち、下方)にローラ108を付勢するための付勢部材として、コイルばね114を用いている。
【0027】
この第3実施形態によっても、例えば対象物20を切断している最中に、下方への切断器10の傾きが減少し、ローラ108と対象物20との間隔が増加した場合であっても、コイルばね114の付勢力によってアーム110が下方に移動し、その先端に設けられたローラ108の突出量が増加して、ローラ108が対象物20に追従して、粘着テープ300を押さえ続ける事ができる。また、例えば、対象物20を切断している最中に、下方への切断器10の傾きが増加し、ローラ108と対象物20との間隔が減少した場合であっても、アーム110が上方に移動する事で、ローラ108の突出量が減少するので、この妨げとならない。この場合であっても、ローラ108が対象物20に追従して、粘着テープ300を押さえ付ける事ができる。
【0028】
(第4実施形態)
第1実施形態では、保持部106を補助器具100の後方部分に設け、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300が、刃先204Aによる切断経路上に直線状に延伸して配置される構成とした。この第4実施形態では、保持部106を補助器具100の側方部分に設けながらも、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300が、刃先204Aによる切断経路上に直線状に延伸して配置される構成例を説明する。
【0029】
図8は、第4実施形態に係る切断器10の構成を示す。図9は、第4実施形態に係る切断器10の側面を示す。図10は、第4実施形態に係る切断器10の正面を示す。図11は、第4実施形態に係る切断器10の底面を示す。この第4実施形態では、保持部106は、切断経路上に設けられておらず、基板102の前方部分かつ側方部分に設けられている。これにより、保持部106は、当該保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300が、一旦、切断経路と直交する方向に直線状に延伸するように、ロール部分302を保持する。これを実現するため、保持部106は、基板102の前方部分かつ側方部分において、切断経路が延伸する方向と平行する方向(X方向)に延伸する円柱状の支持軸を有している。この支持軸は、基板102と一体に形成されている。この支持軸には、円筒状のロール部分302の筒内部が差し込まれる。これにより、保持部106は、基板102の前方部分かつ側方部分において、支持軸がロール部分302の回転軸となって、粘着テープ300を回転可能に保持する。このように保持部106がロール部分302を保持する事で、保持部106から直線状に引き出された粘着テープ300は、一旦、切断経路の方向(第1の方向)と直交する方向(第2の方向)に直線状に延伸する。
【0030】
保持部106から引き出された粘着テープ300と切断経路とが重なる位置には、ガイドローラ116(案内部材)が設けられている。このガイドローラ116は、保持部106から切断経路の方向(第1の方向)と直交する方向(第2の方向)へと引き出された粘着テープ300が、その第2の方向から第1の方向へと延伸するよう、当該粘着テープ300を案内する案内部材である。
【0031】
ガイドローラ116は、切断経路に対して斜めに交差するように設けられている。この交差角度は、切断経路と、保持部106から引き出された粘着テープ300とが交わる角度に応じて、適切な角度に設定されている。例えば、この第4実施形態では、切断経路と、保持部106から引き出された粘着テープ300とが90度に交わる。このため、切断経路とガイドローラ116の軸方向とが、この交差角度の半分の斜め45度の角度で交差するように、ガイドローラ116が設けられている。
【0032】
このように、第4実施形態に係る切断器10は、補助器具100の前方部分かつ側方部分に保持部106を設ける構成とした事で、切断器10の後方部分が保持しやすくなり、切断器10による切断作業が行いやすくなっている。また、粘着テープ300をガイドローラ116で支持しつつ反転させる事によって、当該粘着テープ300を切断経路上に延伸して配置する構成としたので、保持部106とローラ108との間において、保持部106から引き出された粘着テープ300が、不要に捩れたりするような事もなく、その状態を安定させる事ができる。また、切断経路とガイドローラ116とが交差する角度を適切に設定する事で、粘着テープ300にしわやたわみを大きく生じさせる事なく、粘着テープ300をガイドローラ116で反転させて、粘着テープ300の延伸する方向を、切断経路が延伸する方向に方向転換する事ができる。
【0033】
(第5実施形態)
この第5実施形態では、粘着テープ300を切断器10から切り離す構成を用いる例を説明する。図12は、第5実施形態に係る切断器10の構成を示す。第5実施形態の切断器10は、補助器具100に切断部120が設けられている点で、第1実施形態の切断器10と相違する。具体的には、切断部120は、ローラ108と保持部106との間において、補助器具100の本体から下方に突出して、粘着テープ300の経路上となる位置に設けられている。切断部120は、保持部106から引き出された粘着テープ300を、ローラ108と保持部106との間で切断して、前後に切り離すものである。
【0034】
具体的には、切断部120の本体122には、前後方向に貫通する貫通孔122Aが形成されている。さらに、本体122には、貫通孔122Aから上方に延びる貫通孔122Bが形成されている。貫通孔122Bの内部には、刃124が設けられている。刃124は、貫通孔122Bの内部を、上下方向に移動可能となっている。刃124の下方側の先端には刃先124Aが形成されている。この刃先124Aは、貫通孔122Aの内壁と対向している。刃124が上方に位置していると、刃先124Aと貫通孔122Aと内壁との間に隙間が生じる。一方、刃124が、最も下方に位置すると、刃先124Aが貫通孔122Aの内壁に突き当たる。
【0035】
貫通孔122Bの内部において、刃124の上方には、弾性体126が設けられている。弾性体126は、上端が貫通孔122Bの内壁に固定されており、下端には刃124が固定されている。通常の状態では、弾性体126が収縮しているため、これに固定された刃124は、貫通孔122Bの内部において上方に位置している。これにより、上記したとおり、刃124の刃先124Aと、貫通孔122Aの内壁との間に隙間が生じるので、この隙間に粘着テープ300が通される事となる。
【0036】
粘着テープ300を切断する際には、刃124に固定されて本体122から突き出たレバー124Bをユーザが操作して、刃124を下方に押し下げ、刃先124Aを貫通孔122Aの内壁に突き当てる。これにより、粘着テープ300は、刃先124Aと貫通孔122Aの内壁とに挟み込まれて、切断される。このとき、弾性体126は伸張しているので、ユーザによる刃124を押し下げる力が解放されると、収縮して元の状態に戻る。これに伴って、刃124が上方に移動して通常の位置に戻るので、また刃先124Aと貫通孔122Aの内壁との間に隙間が生じて、粘着テープ300を通す事ができるようになる。
【0037】
このように、第5実施形態の切断器10は、切断部120を設けたので、対象物20を切断し終えた後に、粘着テープ300を容易に切り離す事ができる。なお、刃124は、粘着テープ300の幅方向にある程度の幅を有している。具体的には、この幅は、少なくとも粘着テープ300の幅よりも長くなっている。これにより、刃124は、粘着テープ300をその幅方向の全体に亘って、容易に切り離す事ができる。
【0038】
(変形例)
上述の実施形態を以下のように変形しても良い。また、以下の各変形例を互いに組み合わせても良い。
【0039】
(変形例1)
各実施形態では、カッター200とは別体に形成されて、カッター200が固定される補助器具100を用いたが、補助器具100は、カッターの本体202に一体に形成されているものであっても良い。すなわち、補助器具100は、カッター200と一体となって提供されるものであっても良く、カッター200とは別に提供されるものであっても良い。
【0040】
(変形例2)
各実施形態において、補助器具100は、ある特定の種類のカッター200のみを固定する事ができるそのカッター200専用のものであっても良い。また、補助器具100は、複数種類のカッター200を固定する事ができる汎用的なものであっても良い。いずれの場合においても、補助器具100は、対象とするカッター200の本体202の形状に合わせた形状に形成されていたり、その形状を変更したりする事により、カッター200を確実に保持する事ができるよう構成されている事が好ましい。
【0041】
(変形例3)
各実施形態では、第1保持部の一例として、伸縮性を有するバンド104によってカッター200を基板102に固定する構成を用いたが、これに限らず、カッター200を基板102に固定する事ができるのであれば、どのような構成としても良い。
【0042】
(変形例4)
各実施形態において、保持部106が有する支持軸は、保持部106を回転可能に保持する事ができるものであれば、どの様な形状であっても良い。例えば、保持部106が有する支持軸は、第1実施形態のように板状であっても良く、第4実施形態のように、円筒状や、円柱状であっても良く、角筒状や、角柱状等、様々な形状であって良い。保持部106は、支持軸によらずにロール部分302を保持しても良い。例えば、保持部106は、ロール部分302の筒内部を貫通せずに、ロール部分302の筒内部の両端を支持するものや、ロール部分302全体を収容し、かつ粘着テープ300が引き出される開口部を有する容器状のもの等であっても良い。要するに、保持部106は、ロール部分302を回転可能に保持する事ができる構成であれば、どの様な構成であっても良い。
【0043】
(変形例5)
各実施形態では、押さえ付け部材の一例として、粘着テープ300が延伸する方向に回転する事ができるローラ構造を有するローラ108を用いたが、これに限らない。要するに、押さえ付け部材は、少なくとも粘着テープ300を対象物20へ押さえ付ける事ができれば良く、上記したようなローラ構造を有していなくても良い。例えば、押さえ付け部材は、円柱状、円筒状、角柱状、角筒状等の単なる棒状のものであっても良い。但し、押さえ付け部材は、実施形態で説明したローラ108のようにローラ構造を有している事が好ましく、この場合、押さえ付け部材は、粘着テープ300を押さえ付けながらの、粘着テープ300上の移動をスムーズに行う事ができる。
【0044】
(変形例6)
第2及び第3実施形態では、ローラ108の突出量が調整可能な構成について説明したが、この構成に加えて、ローラ108の突出量を調整後に固定できる固定手段を設けるようにしても良い。これにより、カッター200の傾き等、ユーザの好みに応じて、ローラ108の突出量を一定としておく事ができる。
【0045】
(変形例7)
第4実施形態では、保持部106を基板102の側方部分に設け、保持部106から引き出された粘着テープ300が切断経路と直交する構成について説明したが、保持部106から引き出された粘着テープ300と切断経路とが直交していなくても良い。一例を挙げると、保持部106から引き出された粘着テープ300と切断経路とが、斜め45度の角度で交わっていても良い。この場合、切断経路とガイドローラ116とが、上記交差角度の半分の斜め22.5度程度の角度で交差するように設けられている事が好ましいが、これに限定するものではない。
【0046】
(変形例8)
第5実施形態では、切断部120として、刃先124Aと貫通孔122Aの内壁とで粘着テープ300を挟み込む事により、当該粘着テープ300を切断する構成を用いた。これに限らず、切断部120は、粘着テープ300を切断する事ができるものであれば、どの様な構成であっても良い。例えば、切断部120は、本体から粘着テープ300の経路上に突き出た状態で固定された刃が設けられ、この刃先を粘着テープ300に突き当てて力を加える事により、当該粘着テープ300を切断する構成としても良い。
【0047】
(変形例9)
各実施形態では、切断器10によって、繊維材料の対象物20の切断部分に対して、ほつれを防止するための粘着テープを貼り付ける事とした。これに限らず、切断器10による切断対象は、繊維質のものでなくても良く、切断部分に貼り付ける粘着テープはほつれを防止するためのものでなくても良い。要するに、切断器10は、対象物を切断するとともにその切断部分の縁部に沿って粘着テープを貼り付ける事を目的としたものであれば、どの様な用途に利用しても良い。例えば、切断器10を、紙を切断するとともにその切断部分の縁部に沿って補強用の粘着テープを貼り付ける等の用途に利用しても良い。
【0048】
(変形例10)
実施形態において、粘着テープ300の外径や残量によって粘着テープ300の経路が変化してしまう事について説明した。そこで、補助器具100は、粘着テープ300の外径や残量によらずに、保持部106から引き出された粘着テープ300の経路が常に一定となるように、保持部106から引き出された粘着テープ300を規定の位置を通過するように案内する案内部材等をさらに設けても良い。
【0049】
(変形例11)
各実施形態において、切断経路と粘着テープ300の中心線とが一致していても良く、異なっていても良い。すなわち、刃先204Aが粘着テープ300の中心線上を切断するように粘着テープ300の経路が設定されていても良く、意図的に中心線からずれた位置を切断するように粘着テープ300の経路が設定されていても良い。また、基板102に対して、ロール部分302の位置を横方向(Y方向)にずらしたり、カッター200の本体202の位置を横方向(Y方向)にずらしたりして、刃先204Aによる粘着テープ300の切断位置を調整できるように、切断器10を構成しても良い。
【符号の説明】
【0050】
10…切断器、20…対象物、100…補助器具、102基板、104…バンド、106…保持部、108…ローラ、200…カッター、202…本体、204…刃、204A…刃先、300…粘着テープ、302…ロール部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を切断するカッター用の補助器具であって、
前記カッターを保持する第1保持部と、
ロール状に巻かれた粘着テープを引き出し可能に保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持された前記カッターの刃先が、前記第2の保持部の位置から引き出されて前記対象物に貼られた前記粘着テープ上を移動させられて、当該粘着テープとともに当該対象物が切断されるときに、前記粘着テープが前記刃先によって切断される位置よりも当該刃先の移動方向下流側で当該粘着テープを当該対象物に対して押さえ付ける押さえ付け部材と
を備えることを特徴とする補助器具。
【請求項2】
前記第1保持部に保持された前記カッターの刃先が前記対象物を切断するときに、前記対象物に向かう方向又はその逆方向に前記押さえ付け部材を移動可能にする移動機構と、
前記対象物に向かう方向へ前記押さえ付け部材を付勢する付勢部材と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の補助器具。
【請求項3】
前記第2保持部は、前記刃先の移動方向である第1の方向とは異なる第2の方向に前記粘着テープが引き出し可能となるように、当該粘着テープを保持し、
前記第2保持部の位置から前記第2の方向へと引き出された前記粘着テープが前記第2の方向から前記第1の方向へと延伸するよう、当該粘着テープを案内する案内部材を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の補助器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−61099(P2012−61099A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207053(P2010−207053)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】