説明

補強用ネット入り板状部材成型用金型及び補強用ネット入り板状部材並びに補強用ネット入り板状部材の製造方法。

【課題】強度が高く、耐久性に優れた板状部材を簡単に制動することができるようにした板状部材と、この板状部材を成型する金型の提供と、板状部材の製造方法を提供できるようにする。
【解決手段】
原料を成型するために対峙させた少なくとも一方の成型用金型に形成された補強用ネットの支持部に補強用ネットを当接させた状態に設置し、成型用金型間に原料を投入した状態で、成型用金型を閉じて原料を成形し、原料を補強用ネットの目から成型用金型の成型面側に漏出させることにより、板状部材の成型された表面の近傍部分に補強用ネットを埋設するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩道や塀等に敷設される補強用ネット入り板状部材や、屋根に葺設されるかわら等、セメント乃至モルタルを金型で成型して形成する補強用ネット入り板状部材及びその成型金型並びに補強用ネット入り板状部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に補強用繊維で補強された板状部材は、例えば特許文献1や特許文献2等に記載されているように、セメント原料に繊維を入れて混練し、この繊維入りセメント原料を金型でプレスすることにより成型するようにしている。
ところが、繊維をいれたセメント原料で成型された板状部材では繊維同士が独立していることから、十分な高度得ることができないという問題があった。
【0003】
そこで、補強用繊維を編織したシートを上下の金型の下金型に載せ、その上方にセメント原料を載せた後、上下の金型を閉じることにより板状部材の下面に補強用繊維を編織したシートを押し付けて設けるようにしたものも提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2005−125629号公報
【特許文献2】特開2003−146731号公報
【特許文献3】特開2001−249942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記補強用繊維を編織したシートを板状部材の下面に押し付けて設けるようにしたものでは、シートが簡単に剥がれやすく、耐久性に問題があった。
このシートが簡単に剥がれるという問題は、特にシートがガラス繊維のように表面が平滑なものの場合に顕著となる。
そこで、板状部材の下面に補強用繊維を編織したシートを設けた後、さらにセメント原料をスプレー等で塗布することも考えられるが、手間がかかるだけでなく、シート側部分と後からスプレー等で塗布された部分とでは水分率や収縮度合いが異なるので、馴染み難く、十分な剛性を得ることができないという問題もある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、強度が高く、耐久性に優れた板状部材を簡単に制動することができるようにした板状部材と、この板状部材を成型する金型の提供と、板状部材の製造方法を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は補強にネットを用いたもので、補強用ネット入り板状部材成型用金型では、原料を少なくとも1対の成型用金型に挟んで板状部材を成型する板状部材成型用金型であって、少なくとも一方の成型用金型の成型面に補強用ネットの支持部を形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の補強用ネット入り板状部材は、金型に挟んで成型された板状部材であって、成型された表面の近傍の内方に補強用ネットが埋設されていることを特徴とするものである。
また、補強用ネット入り板状部材では、補強用ネットがガラス繊維束で形成すようにしたことも特徴とするものである。
【0008】
本発明にかかる補強用ネット入り板状部材の製造方法は、原料を成型するために対峙させた少なくとも一方の成型用金型に形成された補強用ネットの支持部に補強用ネットを当接させた状態に設置し、成型用金型間に原料を投入した状態で、成型用金型を閉じて原料を成形し、原料を補強用ネットの目から成型用金型の成型面側に漏出させることにより、板状部材の成型された表面の近傍部分に補強用ネットを埋設するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対峙させた成型用金型の少なくとも一方の成型用金型の補強用ネットの支持部に補強用ネットを当接させ、補強用ネットと他方の成型用金型間に投入した原料を成形することにより、原料を補強用ネットの目から成型用金型の成型面側に漏出させて補強用ネットを板状部材の表面の近傍部分に埋設するようにしてあるので、上記の板状部材は確りと補強される。
これにより板状部材は従来の繊維を混練したものに比べて、その強度が大幅に向上する。
しかも、補強用ネットがガラス繊維のように表面が平滑なもので形成されてものでも、剥離することがない。
【0010】
また、本発明では、対峙させた金型の少なくとも一方の成型用金型の補強用ネットの支持部に補強用ネットを当接させ、補強用ネットと他方の成型用金型間に投入した原料を成形するだけの簡単な工程で済み、手間がかからず簡単に製造できながらも、前述したもののように、シート側部分に後からスプレー等で塗布された部分とが水分率や収縮度合いの違いによる分離もなく安定した高度を永く維持することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は補強用ネット入り板状部材の1部を切り欠いた斜視図、図2は補強用ネット入り板状部材の断面図であって、図中符号1は補強用ネット入り板状部材を全体的に示す。
この補強用ネット入り板状部材1は、セメント若しくはモルタルを原料として図3以降に示すように上下一対の成型用金型で成型されたもので、下面寄り部分には補強用ネット2が埋設されている。
【0012】
上記補強用ネット2は複数の細いガラス繊維3を引き揃え若しくは緩やかな撚りをかけたものを等間隔で縦横に配設して格子状にし、各交点部分を接着剤で固定することにより、目の粗いネット状に形成してある。
一方、補強用ネット2を板状部材1の下面寄り部分に埋設した状態で成型する成型用金型は、上下1対の金型4・5であって、上方の成型用金型4が図外の油圧シリンダにより昇降可能に構成され、上方の成型用金型4が下降して上下の成型用金型4・5間のセメント若しくはモルタル等の原料6を成型するようになっている。
そして、下方の成型用金型5の成型面(表面)5aには補強用ネット2の支持部7が形成されている。
この補強用ネット2の支持部7は、図に示すように下方の成型用金型5の成型面5aから山形の突条8を等間隔に複数本形成したものである。
【0013】
上記のように形成された成型用金型4・5で補強用ネット2入り板状部材1を製造する手順を、図3乃至図5を用いて次に説明する。
図3に示すように上方の成型用金型4を上昇させて下方の成型用金型5との間に原料投入用空間Sを形成する。
尚、図3では上下の成型用金型4・5を同芯状に配設するようにしてあるが、上下何れか一方の成型用金型4・5を移動可能にすることにより、下方の成型用金型5の上部空間を開放し、開放された部分から原料6を定量自動供給して成型装置を自動化することができる。
【0014】
そして、下方の成型用金型5の上面の補強用ネット2の支持部7に補強用ネット2を載置した後、補強用ネット2の上方にセメント若しくはモルタル等の原料6を投入する。
しかる後、図4を経て図5に示すように上方の成型用金型4を下降させてセメント若しくはモルタル等の原料6を成型する。
このとき、下降する上方の成型用金型4で押圧されたセメント若しくはモルタル等の原料6は、補強用ネット2の目を潜って下方の成型用金型5の成型面5aにまで回り込み、回り込んだ原料6は下方の成型用金型5の成型面5aで板状部材1の下面として成型される。
これにより、補強用ネット2は上部材の原料6に抱持された状態になる。
こうして形成された板状部材1は養生・乾燥されて製品となる。
【0015】
尚、上記の例では、補強用ネット2の支持部7を下方の成型用金型5の成型面5aから山形の複数の突条8を等間隔に形成するようにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば図6の(A)で示すように断面円形の線状部材(ワイヤ)8にしたり、同図(B)に示すような断面が半円の線状部材8や同図(C)に示すような断面角形の線状部材8で補強用ネット2の支持部7を形成することもできる。
【0016】
加えて、上記の例では補強用ネット2の支持部7を下方の成型用金型5の成型面5aに形成するようにしてあるが、これに加えて、若しくはこれに代えて上方の成型用金型4の下面(成型面)に設けることができるのはいうまでもないことである。
【0017】
また、上記の例では補強用ネット2をガラス繊維3で形成するようにしてあるが、これに代えて例えばケブラー繊維等の合成製繊維はもとより、麻糸や綿糸等の天然繊維のネットにすることも可能であり、さらにはパンチングメタルやエキスパンドメタルのような金属製のネットで補強用ネット2を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる補強用ネット入り板状部材の1部を切り欠いた斜視図である。
【図2】本発明にかかる補強用ネット入り板状部材の断面図である。
【図3】本発明にかかる補強用ネット入り板状部材を成型する金型部分の分解斜視図 である。
【図4】本発明にかかる補強用ネット入り板状部材の製造工程の概略図である。
【図5】本発明にかかる補強用ネット入り板状部材の製造工程の概略図である。
【図6】本発に明かかる補強用ネット入り板状部材の製造工程における補強用ネット の支持部の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・板状部材
2・・・補強用ネット
3・・・ガラス繊維
4・・・上方の成型用金型
5・・・下方の成型用金型
5a・・・5の成型面
6・・・原料
7・・・支持部
8・・・突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を少なくとも1対の成型用金型に挟んで板状部材を成型する板状部材成型用金型であって、少なくとも一方の成型用金型の成型面に補強用ネットの支持部を形成したことを特徴とする補強用ネット入り板状部材成型用金型。
【請求項2】
成型用金型に挟んで成型された板状部材であって、成型された表面の近傍の内方に補強用ネットが埋設されている補強用ネット入り板状部材。
【請求項3】
補強用ネットがガラス繊維束で形成されてなる請求項2に記載の補強用ネット入り板状部材。
【請求項4】
原料を成型するために対峙させた少なくとも一方の成型用金型に形成された補強用ネットの支持部に補強用ネットを当接させた状態に設置し、成型用金型間に原料を投入した状態で、成型用金型を閉じて原料を成形し、原料を補強用ネットの目から成型用金型の成型面側に漏出させることにより、板状部材の成型された表面の近傍部分に補強用ネットを埋設するようにしたことを特徴とする補強用ネット入り板状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−346913(P2006−346913A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173301(P2005−173301)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(391063651)株式会社アルプス (3)
【Fターム(参考)】