補正値の決定方法
【課題】変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易且つ精度よく決定するための技術を提供する。
【解決手段】本発明の補正値の決定方法は、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する第3工程と、を含む。
【解決手段】本発明の補正値の決定方法は、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する第3工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置における輝度むらを補正するための補正値の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型表示装置(FPD)として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)等が知られている。
このような平面型表示装置では、基板上に多数の表示素子を形成する必要がある。これらの表示素子の特性は、製造条件等のわずかな違いにより影響を受ける。そのため、一般に、平面型表示装置に含まれる全ての表示素子の特性を完全に均一にすることは困難である。この表示特性の不均一さが表示装置の輝度ばらつき(輝度むら)の原因となり、画質の劣化の原因となる。
【0003】
例えば、電界放出型表示装置の場合、電子放出素子として、表面伝導型、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型等の電子放出素子が用いられている。電子放出素子の製造条件等の違いにより電子放出素子の形状等が異なると、電子放出素子の電子放出特性も異なることとなる。その結果、電界放出型表示装置において輝度むらが生じ、画質が劣化してしまう。
【0004】
かかる課題に対し、各表示素子の発光特性に応じて画像信号(輝度データ)を補正する構成が提案されている。
例えば、各表示素子の全階調に対して、補正値テーブルを設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この構成を採用した場合、表示素子数や階調数が増加すると必要となる補正値テーブルの容量が大きくなってしまう。また、補正値テーブルを決定するための測定に要する時間や計算に要する時間が極めて長くなってしまう。そのため、補正値テーブルの容量が小さく(コストが低く;簡易に)、短時間で正確な補正値を決定できる方法が望まれていた。
そのような問題に鑑みた従来技術は、例えば、特許文献2に開示されている。具体的には、特許文献2に開示の構成では、全階調に対して補正値テーブルを設けるのではなく、特定の階調に対してのみ補正値テーブルが設けられる。そして、補正値テーブルの設けられていない階調に対しては、補正値テーブルを線形関数やより高次の関数を用いて補間して補正値が得られる。
また、走査配線や変調配線の抵抗や静電容量の相違を補正する補正データを設けることで、走査配線や変調配線の抵抗や静電容量の相違に起因する輝度むらを低減する構成が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−122598号公報
【特許文献2】米国特許第6097356号明細書
【特許文献3】特開2006−047510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成では、有機EL素子や電子放出素子のように表示素子特性のばらつきが大きい素子を用いた画像表示装置において、必ずしも十分に輝度むらを補正す
ることが出来なかった。
例として、パルス幅変調(PWM)方式で単純マトリクス駆動する電界放出型表示装置において、特許文献2に開示されている構成で輝度むらを補正した場合について説明する。この場合、補正値テーブルが設けられた階調近傍での輝度むらや電子放出特性のばらつきに起因した輝度むらは比較的良好に低減できる。しかしながら、低階調側で且つ補間によって得られた補正値が用いられる階調(補正値を求める為の輝度計測を行っていない階
調)で筋状(縦筋または横筋)の輝度むらが発生するという課題があった。
【0007】
また、特許文献3に開示されている構成の場合、走査配線や変調配線の電気抵抗や静電容量に起因したパネル面内でなだらかに変化する(低周波な)輝度むらは比較的良好に低減できる。しかしながら、パネル面内の電気特性分布に起因した輝度むら以外の高周波な輝度むらがランダムにある場合、その輝度むらを補正するための補正値の決定が困難であり、輝度むらを十分に低減することができないという課題があった。
【0008】
このような課題について、本発明者が鋭意検討した結果、上記の低階調側で発生する筋状の輝度むらやランダムに発生する高周波な輝度むらは、各表示素子に変調信号を印加する変調回路の特性のばらつき(特性差)が主な原因であることを見出した。具体的には、複数の変調回路を構成する複数のIC(或いはIC内の複数のチャンネル)の特性が均一ではないことが上記輝度むらの主な原因であることを見出した。
【0009】
図1に、複数の変調回路(PWM変調回路)が4つの駆動IC(1つの駆動ICは80個の出力チャンネルを有する)で構成される場合の、各出力チャンネルのパルス電圧の立下りタイミングの計測結果(基準値からのずれ)の一例を示す。図1から、立下りタイミングは、出力チャンネルによっては25%程度ばらつくことがわかる。表示された画像において、立下りタイミングが遅い出力チャンネルを用いて駆動される表示素子に対応する位置(ライン)は明るくなり、立下りタイミングが早い出力チャンネルを用いて駆動される表示素子に対応する位置(ライン)は暗くなる。そのため、立下りタイミングのばらつきによって、筋状の輝度むら(筋むら)が発生し、画質が低下してしまう。また、立下りタイミングのばらつきは出力チャンネルによって異なるが、IC間では同様のばらつきの傾向を示している。つまり、立下りタイミングのばらつきは、IC間でのばらつきである第1のモード(オフセット)と、IC内の固有のばらつきである第2のモード(IC内分布)と、チャンネル毎のランダムなばらつきである第3のモード(個別ばらつき)にわけることができる。
【0010】
しかしながら、チャンネル毎(変調回路毎)の立下りタイミングのばらつきを計測する際には、以下のことが必要とされ、現実的ではない。
(1)ナノ秒以下の誤差で計測すること
(2)短時間に計測すること
(3)専用のテスタを開発すること
(4)変調回路を画像表示装置に実装する際の製造条件のばらつきによる輝度むらを考慮すること
また、画像表示装置に駆動回路(走査回路、変調回路)を実装した状態でチャンネル毎の立下りタイミングのばらつきを計測する方法として、各チャンネルからの信号を電気的に計測する方法が考えられる。しかしながら、そのような方法は計測精度的にも時間的にも現実的ではない。
そのため、補正値を簡易且つ精度よく決定する方法が望まれている。
【0011】
本発明は、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易且つ精度よく決定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の補正値の決定方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、補正回路で用いられる補正値の決定方法であって、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する第3工程と、を含む。
【0013】
本発明の補正方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、補正回路による補正方法であって、上記補正値の決定方法により決定された補正値を用いて、入力された輝度データを補正する工程と、補正された輝度データに基づいて変調信号を生成する工程と、を含む。
【0014】
本発明の画像表示装置は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有し、補正回路は、変調回路毎の補正値を記憶しており、補正値は、上記補正値の決定方法により決定された補正値である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易且つ精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】変調回路のパルス電圧の立下りタイミングの一例を示す図。
【図2】変調信号の一例を示す図。
【図3】第1工程及び第2工程で印加する変調信号の一例を示す図。
【図4】第1工程及び第2工程で印加する変調信号の一例を示す図。
【図5】第1〜3の輝度値及び補正値の算出方法の一例を示す図。
【図6】画像表示装置の概略図。
【図7】第1〜3の輝度値及び図5(D)の演算結果の一例を示す図。
【図8】本実施例における変調信号補正部の構成の一例を示す図。
【図9】本実施例の効果を示す図。
【図10】補正値の決定方法の流れの一例を示す図。
【図11】補正値の決定方法の流れの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る補正値の決定方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子、複数の走査配線、複数の変調配線、走査回路、複数の変調回路、補正回路を有する画像表示装置における、補正回路で用いられる補正値の決定方法である。なお、走査回路は、走査
配線を介して表示素子に走査信号を印加する。複数の変調回路は、変調配線毎に設けられ、変調回路を介して表示素子に変調信号を印加する。補正回路は、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する。
【0018】
また、本実施形態に係る補正値の決定方法によれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を高精度に決定できる。そのため、本発明は、変調回路の特性差に起因した輝度むらが画像に顕著に現れる画像表示装置において、好適に適用できる。
具体的には、PWMを含む変調回路(変調信号の少なくともパルス幅を変調する変調回路)で単純マトリクス(インパルス)駆動をする場合、アクティブマトリクス駆動をする場合に比べて、パルス幅は極端に小さい(走査線数分、デューティーが小さくなる)。そのため、変調回路の特性差に起因する輝度むら(筋むら)がより顕著に発生する。例えば、走査配線数が1080本、フレーム周波数が120Hz、階調が10bit(1024階調)の画像表示装置をPWM駆動する場合、1水平走査期間は約8μs(≒1/120/1080s)となる。そして、1階調分の期間は約8ns(≒8/1024μs)に相当することになる。そのため、パルス幅が8nsばらつくと、階調値が1024の場合に約0.1%(≒8ns/8μs)、10の場合に約10%、1の場合に約100%、輝度値が変化してしまう。したがって、本発明は、PWMを含む変調回路を用いて、表示素子を単純マトリクス(インパルス)駆動をする画像表示装置に好適に適用できる。なお、本実施形態に係る補正値の決定方法では、PHM(パルス振幅変調)やPWM(パルス幅変調)などの変調方式(変調回路)によらず補正値を決定することができる。
【0019】
また、最大電圧振幅が10V、階調が10bitの画像表示装置をPHM駆動する場合、電圧振幅が10mVばらつくと、階調値が1024の場合に約0.1%(≒10mV/10V)、10の場合に約10%、1の場合に約100%、電圧が変化してしまう。電圧−輝度特性がリニアの場合には、そのような電圧のむらがそのまま輝度むらになってしまう。また、EL素子や電子放出素子では、印加する電圧に対して輝度値が指数関数的に変化するため、そのような輝度むらがより顕著に発生する。したがって、本発明は、PHMを含む変調回路を用いて、EL素子や電界放出素子(電子放出素子)を駆動する画像表示装置に好適に適用できる。なお、本実施形態に係る補正値の決定方法では、表示素子の種類によらず補正値を決定することができる。
また、本実施形態に係る補正値の決定方法で決定された補正値を用いれば、表示素子の特性差に起因した輝度むらの大きさによらず、変調回路の特性差に起因した輝度むらを精度良く補正できる。
【0020】
<第1の決定方法>
以下に、本実施形態に係る補正値の決定方法の一例(第1の決定方法)について説明する。
まず、1つの階調値に対応する補正値の決定方法の例について説明する。
第1の決定方法では、図10に示すように、第1〜3工程を経て補正値を決定する。第1工程では、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む画像(第1の画像)を表示する。そして、各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する。第2工程では、第1工程で駆動した複数の表示素子を駆動して第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない画像(第2の画像)を表示する。そして、各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な値である第2の輝度値を算出する。第3工程では、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する。
【0021】
第1の画像は、複数の変調回路から複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加すること
により表示される画像である。第1の画像を表示するために各変調配線に印加される変調信号は、例えばPWM方式の場合、低階調側の波形(パルス幅の小さい波形)を有する信号であることが好ましい。パルス幅の小さい波形には、変調回路の特性差(立下りタイミングのばらつき)が大きく影響するため、そのような信号を用いることにより、変調回路の特性差が顕著に輝度むらとして現れる第1の画像を表示することができる。
【0022】
第2の画像は、例えば、1つの変調回路から複数の変調配線に共通の変調信号を印加することにより表示される画像である。具体的には、全ての変調配線に共通の電位が印加されるように、全ての変調配線を導体冶具で接続する。それにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらが抑制された第2の画像を表示することが可能となる。このような方法は、図2(B)のようなPHM方式の場合に好適に利用できる。PHM方式は、PWM方式に比べて低階調側を表現し易い方式であるが、高精度の電圧が要求されるため変調回路の特性差が輝度むらとして現れ易い方式である。
【0023】
また、第1の画像と第2の画像とで、表示素子の特性差に起因した輝度むらは等しいことが望ましい。具体的には、表示素子が電子放出素子である場合、特開2008−145494号公報などに開示されているように、表示素子の特性差に起因した輝度むらは、表示素子の電圧−放出電流特性のばらつきに起因する。即ち、表示素子の特性差は印加電圧に依存する。そのため、第2工程では、走査信号と変調信号の電位差が第1工程での電位差と等しくなるように走査信号及び変調信号(駆動信号)を印加することが望ましい。具体的には、第1工程で図4(A)に示すような駆動信号を用いた場合、第2工程では図4(B)に示すように図4(A)と同じ駆動信号を1つの変調回路から各変調配線へ印加すればよい。走査信号と変調信号の電位差が第1工程での電位差と等しくなれば、図4(C)に示すように走査信号と変調信号の比を第1の工程での比と異ならせてもよい。
【0024】
また、複数の変調回路から複数の変調配線にそれぞれ、第1の画像を表示する際に印加した変調信号よりも大きいパルス幅を持つ変調信号を印加することにより表示される画像を第2の画像としてもよい。この方法は、変調回路が、例えば、図2(A)に示すような変調信号を出力する回路、図2(C)に示すようなPWM方式の回路などである場合に適用できる。パルス幅を大きくすれば、変調回路の特性差(立下りタイミングのばらつき)がほぼ無視できるため、上述した導体冶具を用いずに(より簡易な構成で)、変調回路の特性差に起因した輝度むらが抑制された第2の画像を表示することができる。
【0025】
また、第1,2工程では、輝度むらの補正を行わずに表示素子を駆動して、各表示素子の輝度値を測定する。その際、測定精度を高めるため(精度よい補正値を得るため)に、上記測定はR、G、B別に(表示素子の色毎に)行うことが好ましい。
例えば、Rに対応する表示素子に対して上記測定を行う場合には、Rに対応する表示素子(変調配線)にのみ上述した変調信号を印加して、走査方向に線順次駆動すればよい。そのとき、G、Bに対応する表示素子(変調配線)にはGnd電圧を印加すればよい。それにより、選択された行と列に接続されている表示素子が駆動され、Rに対応する表示素子の特性差に起因した輝度むらを含む(第1工程の場合には、Rに対応する変調回路の特性差に起因した輝度むらを更に含む)画像が表示される。そして、CMOSカメラやCCDカメラ等を用いて、各表示素子の輝度値が測定される。
【0026】
また、第1,2工程では、1配線につき1つ以上の表示素子を駆動すればよい。例えば、フルHD(列×行=1920×1080画素)の画像表示装置において、1画素を構成する3つの表示素子(R、B、Gの表示素子)が行方向に配列されており、変調配線が列配線(列方向に並ぶ表示素子に共通の配線)であるものとする。その場合には、少なくとも、5760(=1920×3)本の変調配線にそれぞれ対応する5760個の表示素子を駆動すればよい。そして、各表示素子の輝度値をその表示素子に接続される変調回路の第
1の輝度値とすればよい。また、変調回路の特性差がIC単位で発生する場合には、1つのICにつき1つ以上の表示素子を駆動すればよい。
なお、1配線につき複数(例えば100個)の表示素子を駆動し、それらの表示素子の輝度値の平均値を第1の輝度値としてもよい。それにより、輝度値の測定誤差を低減することができる。また、第1の輝度値、第2の輝度値は、図5(A),(B)に示すように全表示素子の輝度値の平均値で規格化された値であってもよい。それにより、第1の輝度値、第2の輝度値に含まれる表示素子の特性差に起因した成分の基準(単位)を統一することができる。
【0027】
第1の輝度値は、表示素子の特性差と変調回路の特性差に起因した成分を含んでいる。第2の輝度値は、第1の輝度値に比べ変調回路の特性差に起因した成分の少ない値(望ましくは表示素子の特性差に起因した成分が第1の輝度値のそれと等しく、変調回路の特性差に起因した成分が0)である。そして、第1の輝度値を第2の輝度値で除算することにより、変調回路の特性差に起因した成分を表す輝度比を得ることができる。また、該輝度比の逆数を入力される映像信号(輝度データ)に乗算すれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。第3工程では、第2の輝度値を第1の輝度値で除算した値を補正値とする。なお、補正値は、この値に限らない。補正値の算出方法は、補正方式や回路構成の違いに応じて適宜決定すればよい。
以上のようにして、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易に決定することができる。
【0028】
なお、変調回路の構成や補正回路の構成により、1つの階調値について補正値を決定すればよい場合もあれば、階調値毎に補正値が必要な場合もある。
具体的には、一般的なPWM方式の場合、階調値毎の変調信号は変調回路内の共通の部位(クロックパルスを伝達する配線やバッファなど)で発生されるため、変調回路の特性差は階調値によらず一定となる。そのため、1つの階調値について補正値を決定すれば、全階調値に対してその補正値を適用できる。
一方、PHM方式の場合、階調値毎の変調信号は、それぞれ、変調回路内の独立の部位(ラダー抵抗、出力抵抗、出力アンプなど)を用いて発生されるため、それらの部位のばらつきにより、変調回路の特性差は階調値毎に異なることとなる。そのため、階調値毎に補正値が必要となる。
階調値毎に補正値が必要となる場合には、第1,2工程で1つの変調配線に接続された複数の表示素子にそれぞれ異なる階調値に対応する変調信号を印加すればよい。例えば、階調値1〜100にそれぞれ対応する100個の補正値を決定する場合、1行目の表示素子を階調値1、2行目の表示素子を階調値2、・・・、100行目の表示素子を階調値100に対応する変調信号で駆動して各表示素子の輝度値を測定すればよい。それにより、複数の階調値にそれぞれ対応する複数の補正値を一括で決定することができる。なお、表示素子の電圧−放出電流特性は定型であるため、第2の工程では、各表示素子の輝度値を数階調値分測定し、他の階調値に対応する輝度値は測定値を適当な関数で補間することにより決定してもよい。そのような方法を用いれば、第2の工程をより簡略化することができる。
【0029】
<第2の決定方法>
以下に、本実施形態に係る補正値の決定方法の別の例(第2の決定方法)について説明する。なお、第1の決定方法と同じ部分については説明を省略する。
第2の決定方法では、図11に示すように、図10の第2工程と第3工程の間に第4工程を更に行う。
【0030】
第4工程では、第1の画像と輝度が異なる第3の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、図5(C)に示すように(第1,2の輝度値と同様に)、該測定結果から変調回
路毎に表示素子の代表的な輝度値である第3の輝度値を算出する。具体的には、第3の画像は、複数の変調回路から複数の変調配線に、それぞれ、第1工程で印加した変調信号の階調値より1つ大きい階調値に対応する変調信号を印加することにより表示される画像である。なお、第3の画像を表示するための変調信号はこれに限らない(第1工程で印加した変調信号の階調値より1つ小さい階調値に対応する変調信号であってもよいし、3つ、5つ大きい(小さい)階調値に対応する変調信号であってもよい)。一般的に、表示素子の電圧−放出電流特性がばらつくと、輝度と変調信号(階調値)の関係も表示素子毎に異なることとなるため、表示素子毎に第3の輝度値を算出することが好ましい。但し、表示素子のばらつきが十分小さい場合には、輝度値の階調依存性は表示素子間でほぼ同一となるため、一部の表示素子について第3の輝度値を算出し、それを全ての変調回路に適用してもよい。
【0031】
第2の決定方法の第3工程では、図5(D)のように、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値と1との差を算出する。図5(D)の例では、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値から1を減算する(1から第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を減算してもよい)。そして、該差を、輝度値の階調依存性で規格化する。具体的には、第1の輝度値と第3の輝度値との間の変化率((第3の輝度値−第1の輝度値)/第1の輝度値)で規格化する。それにより、変調信号(階調値相当)のばらつきを算出することができる。そのような値を補正値とすれば、映像信号(輝度データ)から補正値を加減算することにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。
また、例えば、第3工程で算出される値の最大値が0となるように更に規格化してもよい。即ち、「最大値からの差分」を補正値としてもよい。そのような補正値を映像信号に加算すれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。具体的には、立下りタイミングが遅く、無補正の場合に明るくなる表示素子はそのままの信号(補正
値=0)で駆動し、遅延時間が小さく無補正の場合に暗くなる素子は明るくなる信号(補正値がプラス)で駆動するような補正を行うことができる。また、第3工程で算出される値
の最小値が0となるように更に規格化してもよいし、正と負の補正値が混在していてもよい。
【0032】
第2の決定方法によれば、階調値相当のばらつきが補正値とされる。そのため、そのような補正値を用いれば、第1の決定方法で決定された補正値を用いるのに比べより簡易且つ精度よく変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。具体的には、第2の決定方法で決定された補正値を用いれば、映像信号から補正値を加減算することにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。そのため、映像信号に補正値を乗算するのに比べ、少ない処理負荷且つ簡易(低コスト)な回路構成で補正を行うことができる。また、第1の決定方法で決定された補正値を用いた場合、映像信号(線形データ)を変調信号(非線形データ)に変換する際に、多少の補正誤差が発生する可能性がある。具体的には、表示素子の電圧−放出電流特性のばらつきに起因する輝度値と変調信号(階調値)の関係のばらつきによって、多少の補正誤差が発生する可能性がある。第2の決定方法では、第1の輝度値と第3の輝度値との間の変化率で規格化することにより、そのような誤差をキャンセルすることができるため(輝度むらの計測誤差以外の誤差要因が入らないため)、第1の決定方法に比べてより正確な補正値を決定できる。
【0033】
<補正方法>
本実施形態に係る補正方法は、本実施形態に係る決定方法で決定された補正値を用いて変調信号を補正することができればよい。具体的には、入力された輝度データを補正し、補正された輝度データに基づいて変調信号を生成できればよい。本実施形態に係る補正方法は、補正値の形式、補正の対象となる信号の種類、補正回路の具体的な構成は特に限定されない。即ち、採用する補正方式の違いに応じて補正方法を適宜設計すればよい。
【0034】
<画像表示装置>
以下に、本実施形態に係る画像表示装置(とりわけ補正回路)について説明する。
本実施形態の補正回路は、輝度むらを補正するための補正値(本実施形態に係る決定方法で決定された補正値)を記憶しておく記憶回路と補正値を演算する演算回路を有する。
例えば、変調回路の特性差がIC毎に発生する場合は、各ICに対応したIC数分の補正値(オフセット補正値)を記憶回路に格納すればよい。変調回路の特性差がIC内で固有の分布をもつ場合には、IC毎の補正値と当該固有の分布に対応したIC内のチャンネル数分の補正値(IC内分布補正値)を記憶回路に格納すればよい。変調回路の特性差が各変調回路毎にランダムで発生する場合には、全変調回路(全チャンネル)分の補正値(チャンネル補正値)を記憶回路に格納すればよい。
【0035】
また、各階調毎に補正値が必要な場合は、各変調回路と各階調に対応した補正値テーブルを記憶回路に格納すればよい。そのような補正値テーブルを作成したとしても、補正値テーブルの容量は、特許文献1に開示されているような全表示素子分の補正値テーブルの容量よりも桁違いに少ない。例えば、フルHDで256階調を表示できる画像表示装置について特許文献1の構成で8bit精度の補正値テーブルを作成した場合、その容量は、1920(列)×3(RGB)×1080(行)×256(階調)×8bit(量子化精度)≒1.
6Gとなる。一方、本構成の場合は1920(列)×3(RGB)×256(階調)×8bit(量子化精度)≒1.5Mの容量となる。
【0036】
補正演算回路は、変調回路の特性差に対応した補正値に基づいて変調信号が補正される構成であればよい。また、変調回路の特性差は一般に変調信号の最小刻み(1階調分の変調信号の刻み)よりも小さいため、補正値の精度は変調信号の最小刻みに制約されてしまう。よって、FRCなどのディザ回路を設けることにより変調回路の最小刻みを擬似的に細かくすることが好ましい。また、変調信号を補正すると、値が変調信号の最小値以下や最大値以上となってしまうため、適当なリミッタ回路を有することが好ましい。
【0037】
以上のような構成により、変調回路の特性差に起因した輝度むら(筋むら)のない表示を行うことができる。
また、本実施形態に係る補正処理を実施して変調回路の特性差に起因した輝度むらを抑制した状態で、特許文献2に開示のような補正処理を更に実施すれば、特許文献2に開示の処理だけでは補正しきれなかった筋むらのない良好な画像が表示できる。なお、本実施形態に係る補正方法は、変調回路の特性差に起因した輝度むらの補正方法であって、表示素子の特性差に起因した輝度むらの補正方法は特許文献2に開示の方法に限定されない。
【0038】
<実施例>
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例の画像表示装置は、表示素子として(表面伝導型)電子放出素子を図2(A)のようなスルーレート制御付PWM方式で単純マトリクス駆動する。表面伝導型電子放出素子の製造方法及び特性は、例えば特開平2−56822号公報などに開示されている。
【0039】
(画像表示装置の概要)
図6(A)は、画像表示装置の全体構成を示す図である。符号1はマトリクス配線を持つマトリクスパネル(表示パネル)を示している。1001は変調配線、1002は走査配線、1003は高電圧が印加されているフェースプレート、2は表示素子のばらつきに起因した輝度むらを補正するためのIVむら補正部を示す。901はディジタル画像信号を受信するRGB入力部、902は画像信号に逆ガンマ補正を行う階調補正部を示す。903はRGBパラレルに入力される画像データをマトリクスパネルのRGB蛍光体の配列に対応して並び替えるデータ並び替え部、904は変調ドライバの非線形性や蛍光体の飽和特性を補正するためのリニアリティ補正回路を示す。905は、変調回路の特性差を補正
するための変調信号補正部を示す。906は変調ドライバ、907は走査ドライバ、908は高圧電源を示す。RGB入力部901、階調補正部902、データ並び替え部903、IVむら補正部2、リニアリティ補正回路904、変調信号補正部905、変調ドライバ906、走査ドライバ907、高圧電源908が本実施例における駆動回路を構成している。また、変調ドライバ906は、240出力(チャンネル数が240)の駆動ICを24個有する(チャンネル数(変調回路数)が5760)。図6(B)は、マトリクスパネル1のリアプレートを模式的に示した図である。マトリクスパネル1は、リアプレート、枠、フェースプレートから構成され、その内部が真空に保持されている。図6(B)において1001は変調配線、1002は走査配線、1004は、電子放出素子である。本実施例のマトリクスパネル1は、1080行の走査配線1002と、1920×3(=5760)列の変調配線1001とを有する。
【0040】
(信号の流れ)
RGB入力部901は、入力されたディジタルコンポーネント信号S1を、表示解像度に応じた画像信号S2に変換する。この画像信号S2が、CRTの特性にあわせたガンマ補正が施された信号である場合、階調補正部902は画像信号S2に対して逆ガンマ補正を行い、出力信号S3を出力する。階調補正部902は逆ガンマ補正のための補正値テーブルが記憶されたメモリで構成するとよい。データ並び替え部903は、階調補正部902の出力信号S3を並び替え、マトリクスパネルの蛍光体配列に対応したRGB画像データS4を出力する。この画像データS4は、階調補正部902で逆ガンマ補正されているので、輝度に比例した値をもつデータ(以降、「輝度データ」と呼ぶ)であり、本実施例では14bit(16383階調)のデータとした。IVむら補正部2は、輝度データS4に対して表示素子のばらつきに起因した輝度むらの補正を行い、第1補正データS5を出力する。第1補正データS5は低階調側での補正精度を向上させるために16bit(65535階調)にbit拡張されたデータである。リニアリティ補正回路904は、最終的な輝度データと表示素子の輝度値が比例するように、第1補正データS5に対して蛍光体の飽和特性および変調ドライバ906の非線形性の補正を行い、第2補正データS6を出力する。R、G、B各色の蛍光体の飽和特性が異なる場合、リニアリティ補正回路904はR、G、B各色で異なった補正値テーブルを持つと良い。第2補正データS6は、本実施例では変調回路の階調数と同じ9bit(511階調)とし、変調信号補正部905に入力される。そして、変調信号補正部905が、第2補正データS6に対し変調回路の特性差に起因した輝度むらの補正を行い、第3補正データS7(最終的な輝度データ)を変調ドライバ906へ出力する。走査ドライバ907が、駆動するラインの走査配線1002に選択電位(走査パルス)S9を出力するとともに、変調ドライバ906が輝度データ(第3補正データS7)に基づき生成した変調信号S8を変調配線1001に出力する。この走査パルスと変調信号の電位差により形成される電圧波形が、電子放出素子1004を駆動するための駆動信号である。選択電位が供給された走査配線1002に接続されている電子放出素子1004では、駆動信号の電圧が所定値を超えた素子から、電子が放出される。放出された電子は、高圧電源908からフェースプレート1003のメタルバック(不図示)に印加された電圧により加速され、蛍光体に衝突する。これにより蛍光体が発光し、画像が形成される。
【0041】
(変調信号)
次に変調ドライバ906の変調信号について説明する。本実施例では図2(A)に示すような、パルス幅とパルス振幅を変化させて変調する方式でマトリクスパネルを駆動した。図2(A)において、縦軸が電圧値で横軸が時間であり、各階調値(図2(A)のS7)での駆動波形(図2(A)のS8)を横に並べて示している。ここで階調値とは変調信号のとりうる信号レベルを小さいものから順に番号を付けたものであり変調信号補正部の出力(図6(A)のS7)に相当する。変調信号は階調値n=100までが三角波形であり、階調値101から511階調までが台形波形であり、階調が1つ増えると25[ns]
ずつ立下りタイミングが遅延していく波形になっている。駆動電圧はVx=10[V]、Vy=−8[V]、Vus=5[V]である。ここでS4、S5は輝度に比例した値をもつデータであるが、S6、S7は輝度に対して非線形なデータである。
【0042】
(補正値の決定方法)
次に補正値の決定方法について説明する。はじめに、すべての補正を行わずに図3(A)に示すような変調信号(ここでは階調値S7=50に対応する変調信号)で第1の画像を表示する。このときの変調信号の最大波高値は約5.0[V](=10[V]×50階調
/100階調)である。第1の画像はR、G、Bで分けて表示する。具体的には、Rの画像の輝度むらを計測する時は、Rの変調配線には階調値S7の変調信号を印加し、G、Bの変調配線には階調値0の変調信号を印加する。また、各走査線は線順次に駆動する。同様にして、G、Bの画像の輝度むらも計測できる。それにより、表示素子の特性(電子放
出特性)のばらつきと変調回路の特性差に応じた輝度むらを有する画像が表示される。こ
の状態で各表示素子の輝度値をCMOSカメラやCCDカメラ等を用いて計測する。そして、本実施例では1920×3×100ライン分の表示素子の輝度値を計測し、測定誤差が抑制された第1の輝度値を得る。具体的には、図5(A)のように得られた1920×3×100個の輝度値のうち、同一の変調回路Xで駆動した100素子分の計測値を平均することにより、各変調回路にそれぞれ対応する1920×3個の値を得る。その値を1920×3×100(=576000)個の輝度値の平均値で規格化したものを第1の輝度値とする。
そして、図3(B)に示すような変調信号で第2の画像を表示し、第2の画像を表示したときの各表示素子の輝度値から、第1の輝度値の算出方法と同様の方法で第2の輝度値を算出する。なお、本実施例において、第2の画像を表示するための変調信号の波形は、パルス幅が階調値511に対応する波形のパルス幅と等しく、最大波高値が約5.0[V]
(第1の画像を表示するときの変調信号の最大波高値と同じ値)の波形である。
同様に、階調値(S7=51)に対応する変調信号で第3の画像を表示し、第3の画像を表示したときの各表示素子の輝度値から、第1,2の輝度値の算出方法と同様の方法で第3の輝度値を算出する。本実施例において、第3の画像を表示するための変調信号は、第1の画像を表示するための変調信号の階調値よりも1つ大きい階調値に対応する変調信号である。
以上のようにして得られた第1〜3の輝度値を用いて、図5(D)のような演算を行うことにより、補正値を決定する。
【0043】
以上のようにして算出された第1〜3の輝度値、及び、図5(D)の演算を行った結果を図7(A)(B)(C)(D)に示す。図7(A)は第1の輝度値を示す。この値には表示素子の特性差と変調回路の特性差の両方に起因した成分が含まれている。図7(B)は第2の輝度値を示す。この値には表示素子の特性差に起因した成分が含まれている(図7(A)の値に比べ変調回路の特性差の両方に起因した成分が少ない)。図7(C)は第3の輝度値を示す。この値は、図7(A)の値に比べて、1階調分の輝度が更に含まれている。図7(D)は、図5(D)の演算を行った結果である。この値は、図5(D)からわかるとおり、「変調回路の特性差に起因した輝度比」を「階調値が1つ増えた場合の輝度値の上昇率」で規格化しているため、5760個ある変調回路の特性差を階調値の差に換算した値に相当する。図7(D)から、240列毎に類似形状のプロファイルが周期的に並んでいることがわかる。これは、駆動ICに固有の変調回路ばらつきで、PWM回路におけるクロックパルスを伝達する配線やバッファの構成に依存したばらつきに相当する。また、240列毎にランダムなオフセットが発生していることがわかる。このオフセットばらつきが、駆動IC毎の閾値電圧のばらつきに相当する。また、それ以外の高周波なばらつきは、駆動IC内の各チャンネルの特性ばらつき(個別ばらつき)に相当する。
【0044】
本実施例では、更に、図5(E)のように図5(D)の演算を行った結果の最大値を0と
することにより、補正値を決定した。また、階調値相当のばらつきが1階調以下で、殆どの階調値で1階調分の変調信号の刻みが15%程度であったため、1%以下の補正精度を得る為に補正値を1階調分の16分の1の精度(4bit)で量子化した。
【0045】
(補正回路)
次に、上述した補正値を用いて正確な補正をするための変調信号補正部について図8を用いて説明する。変調信号補正部は、補正値を記憶しておく記憶回路と補正値を変調信号に加算する加算器と、加算された階調から擬似階調を生成するディザ回路と、生成された信号が変調信号の最大値を超えた場合に最大値に制限するリミッタ回路とからなる。
補正値を記憶しておく記憶回路は、チャンネル毎にランダムにばらつく個別ばらつきを補正できるように、各変調回路に対応した5760個の4bitの補正値を記憶する構成を有する。
リニアリティ補正回路904の出力S6は9bitである。
加算器は、補正値に相当する4bitを出力S6にそのまま加算し13bitにbit拡張する。
ディザ回路では、加算器から出力された信号を階調値(9bit)+ディザ階調値(1b
it)の10bitの信号に変換する。また、変換後の信号は、ディザの4bit擬似階
調により13bit相当の分解能を得ることができる。
リミッタ回路は、最大信号の10bitフルデータが入力された場合に9bitフルデータを出力し、その他のデータが入力された場合にはそのままのデータが出力されるように動作する。ここで、10bitフルデータは最大階調値に対応する信号である。そのような階調値に対応する変調信号のパルス幅が十分長い場合には、変調回路の特性差(遅延
時間ばらつき)に起因した輝度むらは無視できるため、リミッタ回路で制限することによ
る影響は無視できる。
リミッタ回路の出力S7(9bitデータ)は変調ドライバに出力され、変調回路の特性差が補正された表示が行われる。
【0046】
(補正後の均一性)
次に、本実施例の効果を確認するために、変調信号補正処理を行った状態で、階調値50に対応する変調信号で画像を表示し、各表示素子の輝度値を計測した。その計測結果(第1〜3の輝度値と同様の算出方法で算出した代表値)を図9(A)に示す。補正が良好に機能していれば図9(A)には変調回路の特性差に起因した輝度値のばらつき(輝度むら(
筋むら))は存在せず表示素子の特性差に起因した輝度値のばらつきのみが現れることに
なる。それを確認するために、図9(A)に示す値を表示素子の特性差に起因した成分を主に含む第2の輝度値(図7(B))の値で除算した。その結果を図9(B)に示す。図9(
B)からわかるとおり、変調回路の特性差に起因した輝度むらは1%以下に抑えられてい
ることが確認できる。
また、変調信号補正処理を行った状態で特許文献2の構成でIVむら補正処理も行った。表示素子の特性差に起因した輝度むらの補正方法は、本願とは直接関係ないため、詳細な説明は省略するが、基本的な回路構成は、例えば特開2008−145494号公報に開示のような回路構成とした。即ち、高階調側と低階調側の2つの階調範囲で補正値を決定して、それらの階調値を最適な関数で補間する構成とした。本実施例の効果を確認するために、IVむら補正処理、及び、変調信号補正処理を行った状態でパネル全面を点灯させて均一性を目視で確認したが筋状の輝度むらは全く確認されなかった。また、表示素子の特性差に起因した輝度むらも殆ど確認されなかった。更に、低階調側において補正値を3つ以上の階調値について決定することにより、超低階調領域(例えば、全階調範囲の最低階調値から0〜25%の範囲)での表示素子の特性差に起因した輝度むらを抑制することができた。
【0047】
以上述べたように、本実施形態に係る補正値の決定方法によれば、表示素子の特性差に
起因した成分と変調回路の特性差に起因した成分とを含む第1の輝度値、第1の輝度値よりも変調回路の特性差に起因した成分の少ない第2の輝度値を算出する。そして、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する。それにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を精度よく決定することができる。また、第1,2の輝度値は、それぞれ異なる変調信号で画像を表示したときの各表示素子の輝度値から算出されるため、簡易な構成で実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
905 変調信号補正部
906 変調ドライバ
907 走査ドライバ
1001 変調配線
1002 走査配線
1004 電子放出素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置における輝度むらを補正するための補正値の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型表示装置(FPD)として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)等が知られている。
このような平面型表示装置では、基板上に多数の表示素子を形成する必要がある。これらの表示素子の特性は、製造条件等のわずかな違いにより影響を受ける。そのため、一般に、平面型表示装置に含まれる全ての表示素子の特性を完全に均一にすることは困難である。この表示特性の不均一さが表示装置の輝度ばらつき(輝度むら)の原因となり、画質の劣化の原因となる。
【0003】
例えば、電界放出型表示装置の場合、電子放出素子として、表面伝導型、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型等の電子放出素子が用いられている。電子放出素子の製造条件等の違いにより電子放出素子の形状等が異なると、電子放出素子の電子放出特性も異なることとなる。その結果、電界放出型表示装置において輝度むらが生じ、画質が劣化してしまう。
【0004】
かかる課題に対し、各表示素子の発光特性に応じて画像信号(輝度データ)を補正する構成が提案されている。
例えば、各表示素子の全階調に対して、補正値テーブルを設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この構成を採用した場合、表示素子数や階調数が増加すると必要となる補正値テーブルの容量が大きくなってしまう。また、補正値テーブルを決定するための測定に要する時間や計算に要する時間が極めて長くなってしまう。そのため、補正値テーブルの容量が小さく(コストが低く;簡易に)、短時間で正確な補正値を決定できる方法が望まれていた。
そのような問題に鑑みた従来技術は、例えば、特許文献2に開示されている。具体的には、特許文献2に開示の構成では、全階調に対して補正値テーブルを設けるのではなく、特定の階調に対してのみ補正値テーブルが設けられる。そして、補正値テーブルの設けられていない階調に対しては、補正値テーブルを線形関数やより高次の関数を用いて補間して補正値が得られる。
また、走査配線や変調配線の抵抗や静電容量の相違を補正する補正データを設けることで、走査配線や変調配線の抵抗や静電容量の相違に起因する輝度むらを低減する構成が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−122598号公報
【特許文献2】米国特許第6097356号明細書
【特許文献3】特開2006−047510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成では、有機EL素子や電子放出素子のように表示素子特性のばらつきが大きい素子を用いた画像表示装置において、必ずしも十分に輝度むらを補正す
ることが出来なかった。
例として、パルス幅変調(PWM)方式で単純マトリクス駆動する電界放出型表示装置において、特許文献2に開示されている構成で輝度むらを補正した場合について説明する。この場合、補正値テーブルが設けられた階調近傍での輝度むらや電子放出特性のばらつきに起因した輝度むらは比較的良好に低減できる。しかしながら、低階調側で且つ補間によって得られた補正値が用いられる階調(補正値を求める為の輝度計測を行っていない階
調)で筋状(縦筋または横筋)の輝度むらが発生するという課題があった。
【0007】
また、特許文献3に開示されている構成の場合、走査配線や変調配線の電気抵抗や静電容量に起因したパネル面内でなだらかに変化する(低周波な)輝度むらは比較的良好に低減できる。しかしながら、パネル面内の電気特性分布に起因した輝度むら以外の高周波な輝度むらがランダムにある場合、その輝度むらを補正するための補正値の決定が困難であり、輝度むらを十分に低減することができないという課題があった。
【0008】
このような課題について、本発明者が鋭意検討した結果、上記の低階調側で発生する筋状の輝度むらやランダムに発生する高周波な輝度むらは、各表示素子に変調信号を印加する変調回路の特性のばらつき(特性差)が主な原因であることを見出した。具体的には、複数の変調回路を構成する複数のIC(或いはIC内の複数のチャンネル)の特性が均一ではないことが上記輝度むらの主な原因であることを見出した。
【0009】
図1に、複数の変調回路(PWM変調回路)が4つの駆動IC(1つの駆動ICは80個の出力チャンネルを有する)で構成される場合の、各出力チャンネルのパルス電圧の立下りタイミングの計測結果(基準値からのずれ)の一例を示す。図1から、立下りタイミングは、出力チャンネルによっては25%程度ばらつくことがわかる。表示された画像において、立下りタイミングが遅い出力チャンネルを用いて駆動される表示素子に対応する位置(ライン)は明るくなり、立下りタイミングが早い出力チャンネルを用いて駆動される表示素子に対応する位置(ライン)は暗くなる。そのため、立下りタイミングのばらつきによって、筋状の輝度むら(筋むら)が発生し、画質が低下してしまう。また、立下りタイミングのばらつきは出力チャンネルによって異なるが、IC間では同様のばらつきの傾向を示している。つまり、立下りタイミングのばらつきは、IC間でのばらつきである第1のモード(オフセット)と、IC内の固有のばらつきである第2のモード(IC内分布)と、チャンネル毎のランダムなばらつきである第3のモード(個別ばらつき)にわけることができる。
【0010】
しかしながら、チャンネル毎(変調回路毎)の立下りタイミングのばらつきを計測する際には、以下のことが必要とされ、現実的ではない。
(1)ナノ秒以下の誤差で計測すること
(2)短時間に計測すること
(3)専用のテスタを開発すること
(4)変調回路を画像表示装置に実装する際の製造条件のばらつきによる輝度むらを考慮すること
また、画像表示装置に駆動回路(走査回路、変調回路)を実装した状態でチャンネル毎の立下りタイミングのばらつきを計測する方法として、各チャンネルからの信号を電気的に計測する方法が考えられる。しかしながら、そのような方法は計測精度的にも時間的にも現実的ではない。
そのため、補正値を簡易且つ精度よく決定する方法が望まれている。
【0011】
本発明は、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易且つ精度よく決定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の補正値の決定方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、補正回路で用いられる補正値の決定方法であって、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する第3工程と、を含む。
【0013】
本発明の補正方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、補正回路による補正方法であって、上記補正値の決定方法により決定された補正値を用いて、入力された輝度データを補正する工程と、補正された輝度データに基づいて変調信号を生成する工程と、を含む。
【0014】
本発明の画像表示装置は、マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、走査配線を介して表示素子に走査信号を印加する走査回路と、変調配線毎に設けられ、変調配線を介して表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有し、補正回路は、変調回路毎の補正値を記憶しており、補正値は、上記補正値の決定方法により決定された補正値である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易且つ精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】変調回路のパルス電圧の立下りタイミングの一例を示す図。
【図2】変調信号の一例を示す図。
【図3】第1工程及び第2工程で印加する変調信号の一例を示す図。
【図4】第1工程及び第2工程で印加する変調信号の一例を示す図。
【図5】第1〜3の輝度値及び補正値の算出方法の一例を示す図。
【図6】画像表示装置の概略図。
【図7】第1〜3の輝度値及び図5(D)の演算結果の一例を示す図。
【図8】本実施例における変調信号補正部の構成の一例を示す図。
【図9】本実施例の効果を示す図。
【図10】補正値の決定方法の流れの一例を示す図。
【図11】補正値の決定方法の流れの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る補正値の決定方法は、マトリクス状に配置された複数の表示素子、複数の走査配線、複数の変調配線、走査回路、複数の変調回路、補正回路を有する画像表示装置における、補正回路で用いられる補正値の決定方法である。なお、走査回路は、走査
配線を介して表示素子に走査信号を印加する。複数の変調回路は、変調配線毎に設けられ、変調回路を介して表示素子に変調信号を印加する。補正回路は、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する。
【0018】
また、本実施形態に係る補正値の決定方法によれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を高精度に決定できる。そのため、本発明は、変調回路の特性差に起因した輝度むらが画像に顕著に現れる画像表示装置において、好適に適用できる。
具体的には、PWMを含む変調回路(変調信号の少なくともパルス幅を変調する変調回路)で単純マトリクス(インパルス)駆動をする場合、アクティブマトリクス駆動をする場合に比べて、パルス幅は極端に小さい(走査線数分、デューティーが小さくなる)。そのため、変調回路の特性差に起因する輝度むら(筋むら)がより顕著に発生する。例えば、走査配線数が1080本、フレーム周波数が120Hz、階調が10bit(1024階調)の画像表示装置をPWM駆動する場合、1水平走査期間は約8μs(≒1/120/1080s)となる。そして、1階調分の期間は約8ns(≒8/1024μs)に相当することになる。そのため、パルス幅が8nsばらつくと、階調値が1024の場合に約0.1%(≒8ns/8μs)、10の場合に約10%、1の場合に約100%、輝度値が変化してしまう。したがって、本発明は、PWMを含む変調回路を用いて、表示素子を単純マトリクス(インパルス)駆動をする画像表示装置に好適に適用できる。なお、本実施形態に係る補正値の決定方法では、PHM(パルス振幅変調)やPWM(パルス幅変調)などの変調方式(変調回路)によらず補正値を決定することができる。
【0019】
また、最大電圧振幅が10V、階調が10bitの画像表示装置をPHM駆動する場合、電圧振幅が10mVばらつくと、階調値が1024の場合に約0.1%(≒10mV/10V)、10の場合に約10%、1の場合に約100%、電圧が変化してしまう。電圧−輝度特性がリニアの場合には、そのような電圧のむらがそのまま輝度むらになってしまう。また、EL素子や電子放出素子では、印加する電圧に対して輝度値が指数関数的に変化するため、そのような輝度むらがより顕著に発生する。したがって、本発明は、PHMを含む変調回路を用いて、EL素子や電界放出素子(電子放出素子)を駆動する画像表示装置に好適に適用できる。なお、本実施形態に係る補正値の決定方法では、表示素子の種類によらず補正値を決定することができる。
また、本実施形態に係る補正値の決定方法で決定された補正値を用いれば、表示素子の特性差に起因した輝度むらの大きさによらず、変調回路の特性差に起因した輝度むらを精度良く補正できる。
【0020】
<第1の決定方法>
以下に、本実施形態に係る補正値の決定方法の一例(第1の決定方法)について説明する。
まず、1つの階調値に対応する補正値の決定方法の例について説明する。
第1の決定方法では、図10に示すように、第1〜3工程を経て補正値を決定する。第1工程では、表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む画像(第1の画像)を表示する。そして、各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する。第2工程では、第1工程で駆動した複数の表示素子を駆動して第1工程で表示した第1の画像よりも変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない画像(第2の画像)を表示する。そして、各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な値である第2の輝度値を算出する。第3工程では、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する。
【0021】
第1の画像は、複数の変調回路から複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加すること
により表示される画像である。第1の画像を表示するために各変調配線に印加される変調信号は、例えばPWM方式の場合、低階調側の波形(パルス幅の小さい波形)を有する信号であることが好ましい。パルス幅の小さい波形には、変調回路の特性差(立下りタイミングのばらつき)が大きく影響するため、そのような信号を用いることにより、変調回路の特性差が顕著に輝度むらとして現れる第1の画像を表示することができる。
【0022】
第2の画像は、例えば、1つの変調回路から複数の変調配線に共通の変調信号を印加することにより表示される画像である。具体的には、全ての変調配線に共通の電位が印加されるように、全ての変調配線を導体冶具で接続する。それにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらが抑制された第2の画像を表示することが可能となる。このような方法は、図2(B)のようなPHM方式の場合に好適に利用できる。PHM方式は、PWM方式に比べて低階調側を表現し易い方式であるが、高精度の電圧が要求されるため変調回路の特性差が輝度むらとして現れ易い方式である。
【0023】
また、第1の画像と第2の画像とで、表示素子の特性差に起因した輝度むらは等しいことが望ましい。具体的には、表示素子が電子放出素子である場合、特開2008−145494号公報などに開示されているように、表示素子の特性差に起因した輝度むらは、表示素子の電圧−放出電流特性のばらつきに起因する。即ち、表示素子の特性差は印加電圧に依存する。そのため、第2工程では、走査信号と変調信号の電位差が第1工程での電位差と等しくなるように走査信号及び変調信号(駆動信号)を印加することが望ましい。具体的には、第1工程で図4(A)に示すような駆動信号を用いた場合、第2工程では図4(B)に示すように図4(A)と同じ駆動信号を1つの変調回路から各変調配線へ印加すればよい。走査信号と変調信号の電位差が第1工程での電位差と等しくなれば、図4(C)に示すように走査信号と変調信号の比を第1の工程での比と異ならせてもよい。
【0024】
また、複数の変調回路から複数の変調配線にそれぞれ、第1の画像を表示する際に印加した変調信号よりも大きいパルス幅を持つ変調信号を印加することにより表示される画像を第2の画像としてもよい。この方法は、変調回路が、例えば、図2(A)に示すような変調信号を出力する回路、図2(C)に示すようなPWM方式の回路などである場合に適用できる。パルス幅を大きくすれば、変調回路の特性差(立下りタイミングのばらつき)がほぼ無視できるため、上述した導体冶具を用いずに(より簡易な構成で)、変調回路の特性差に起因した輝度むらが抑制された第2の画像を表示することができる。
【0025】
また、第1,2工程では、輝度むらの補正を行わずに表示素子を駆動して、各表示素子の輝度値を測定する。その際、測定精度を高めるため(精度よい補正値を得るため)に、上記測定はR、G、B別に(表示素子の色毎に)行うことが好ましい。
例えば、Rに対応する表示素子に対して上記測定を行う場合には、Rに対応する表示素子(変調配線)にのみ上述した変調信号を印加して、走査方向に線順次駆動すればよい。そのとき、G、Bに対応する表示素子(変調配線)にはGnd電圧を印加すればよい。それにより、選択された行と列に接続されている表示素子が駆動され、Rに対応する表示素子の特性差に起因した輝度むらを含む(第1工程の場合には、Rに対応する変調回路の特性差に起因した輝度むらを更に含む)画像が表示される。そして、CMOSカメラやCCDカメラ等を用いて、各表示素子の輝度値が測定される。
【0026】
また、第1,2工程では、1配線につき1つ以上の表示素子を駆動すればよい。例えば、フルHD(列×行=1920×1080画素)の画像表示装置において、1画素を構成する3つの表示素子(R、B、Gの表示素子)が行方向に配列されており、変調配線が列配線(列方向に並ぶ表示素子に共通の配線)であるものとする。その場合には、少なくとも、5760(=1920×3)本の変調配線にそれぞれ対応する5760個の表示素子を駆動すればよい。そして、各表示素子の輝度値をその表示素子に接続される変調回路の第
1の輝度値とすればよい。また、変調回路の特性差がIC単位で発生する場合には、1つのICにつき1つ以上の表示素子を駆動すればよい。
なお、1配線につき複数(例えば100個)の表示素子を駆動し、それらの表示素子の輝度値の平均値を第1の輝度値としてもよい。それにより、輝度値の測定誤差を低減することができる。また、第1の輝度値、第2の輝度値は、図5(A),(B)に示すように全表示素子の輝度値の平均値で規格化された値であってもよい。それにより、第1の輝度値、第2の輝度値に含まれる表示素子の特性差に起因した成分の基準(単位)を統一することができる。
【0027】
第1の輝度値は、表示素子の特性差と変調回路の特性差に起因した成分を含んでいる。第2の輝度値は、第1の輝度値に比べ変調回路の特性差に起因した成分の少ない値(望ましくは表示素子の特性差に起因した成分が第1の輝度値のそれと等しく、変調回路の特性差に起因した成分が0)である。そして、第1の輝度値を第2の輝度値で除算することにより、変調回路の特性差に起因した成分を表す輝度比を得ることができる。また、該輝度比の逆数を入力される映像信号(輝度データ)に乗算すれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。第3工程では、第2の輝度値を第1の輝度値で除算した値を補正値とする。なお、補正値は、この値に限らない。補正値の算出方法は、補正方式や回路構成の違いに応じて適宜決定すればよい。
以上のようにして、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を簡易に決定することができる。
【0028】
なお、変調回路の構成や補正回路の構成により、1つの階調値について補正値を決定すればよい場合もあれば、階調値毎に補正値が必要な場合もある。
具体的には、一般的なPWM方式の場合、階調値毎の変調信号は変調回路内の共通の部位(クロックパルスを伝達する配線やバッファなど)で発生されるため、変調回路の特性差は階調値によらず一定となる。そのため、1つの階調値について補正値を決定すれば、全階調値に対してその補正値を適用できる。
一方、PHM方式の場合、階調値毎の変調信号は、それぞれ、変調回路内の独立の部位(ラダー抵抗、出力抵抗、出力アンプなど)を用いて発生されるため、それらの部位のばらつきにより、変調回路の特性差は階調値毎に異なることとなる。そのため、階調値毎に補正値が必要となる。
階調値毎に補正値が必要となる場合には、第1,2工程で1つの変調配線に接続された複数の表示素子にそれぞれ異なる階調値に対応する変調信号を印加すればよい。例えば、階調値1〜100にそれぞれ対応する100個の補正値を決定する場合、1行目の表示素子を階調値1、2行目の表示素子を階調値2、・・・、100行目の表示素子を階調値100に対応する変調信号で駆動して各表示素子の輝度値を測定すればよい。それにより、複数の階調値にそれぞれ対応する複数の補正値を一括で決定することができる。なお、表示素子の電圧−放出電流特性は定型であるため、第2の工程では、各表示素子の輝度値を数階調値分測定し、他の階調値に対応する輝度値は測定値を適当な関数で補間することにより決定してもよい。そのような方法を用いれば、第2の工程をより簡略化することができる。
【0029】
<第2の決定方法>
以下に、本実施形態に係る補正値の決定方法の別の例(第2の決定方法)について説明する。なお、第1の決定方法と同じ部分については説明を省略する。
第2の決定方法では、図11に示すように、図10の第2工程と第3工程の間に第4工程を更に行う。
【0030】
第4工程では、第1の画像と輝度が異なる第3の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、図5(C)に示すように(第1,2の輝度値と同様に)、該測定結果から変調回
路毎に表示素子の代表的な輝度値である第3の輝度値を算出する。具体的には、第3の画像は、複数の変調回路から複数の変調配線に、それぞれ、第1工程で印加した変調信号の階調値より1つ大きい階調値に対応する変調信号を印加することにより表示される画像である。なお、第3の画像を表示するための変調信号はこれに限らない(第1工程で印加した変調信号の階調値より1つ小さい階調値に対応する変調信号であってもよいし、3つ、5つ大きい(小さい)階調値に対応する変調信号であってもよい)。一般的に、表示素子の電圧−放出電流特性がばらつくと、輝度と変調信号(階調値)の関係も表示素子毎に異なることとなるため、表示素子毎に第3の輝度値を算出することが好ましい。但し、表示素子のばらつきが十分小さい場合には、輝度値の階調依存性は表示素子間でほぼ同一となるため、一部の表示素子について第3の輝度値を算出し、それを全ての変調回路に適用してもよい。
【0031】
第2の決定方法の第3工程では、図5(D)のように、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値と1との差を算出する。図5(D)の例では、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値から1を減算する(1から第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を減算してもよい)。そして、該差を、輝度値の階調依存性で規格化する。具体的には、第1の輝度値と第3の輝度値との間の変化率((第3の輝度値−第1の輝度値)/第1の輝度値)で規格化する。それにより、変調信号(階調値相当)のばらつきを算出することができる。そのような値を補正値とすれば、映像信号(輝度データ)から補正値を加減算することにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。
また、例えば、第3工程で算出される値の最大値が0となるように更に規格化してもよい。即ち、「最大値からの差分」を補正値としてもよい。そのような補正値を映像信号に加算すれば、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。具体的には、立下りタイミングが遅く、無補正の場合に明るくなる表示素子はそのままの信号(補正
値=0)で駆動し、遅延時間が小さく無補正の場合に暗くなる素子は明るくなる信号(補正値がプラス)で駆動するような補正を行うことができる。また、第3工程で算出される値
の最小値が0となるように更に規格化してもよいし、正と負の補正値が混在していてもよい。
【0032】
第2の決定方法によれば、階調値相当のばらつきが補正値とされる。そのため、そのような補正値を用いれば、第1の決定方法で決定された補正値を用いるのに比べより簡易且つ精度よく変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。具体的には、第2の決定方法で決定された補正値を用いれば、映像信号から補正値を加減算することにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正することができる。そのため、映像信号に補正値を乗算するのに比べ、少ない処理負荷且つ簡易(低コスト)な回路構成で補正を行うことができる。また、第1の決定方法で決定された補正値を用いた場合、映像信号(線形データ)を変調信号(非線形データ)に変換する際に、多少の補正誤差が発生する可能性がある。具体的には、表示素子の電圧−放出電流特性のばらつきに起因する輝度値と変調信号(階調値)の関係のばらつきによって、多少の補正誤差が発生する可能性がある。第2の決定方法では、第1の輝度値と第3の輝度値との間の変化率で規格化することにより、そのような誤差をキャンセルすることができるため(輝度むらの計測誤差以外の誤差要因が入らないため)、第1の決定方法に比べてより正確な補正値を決定できる。
【0033】
<補正方法>
本実施形態に係る補正方法は、本実施形態に係る決定方法で決定された補正値を用いて変調信号を補正することができればよい。具体的には、入力された輝度データを補正し、補正された輝度データに基づいて変調信号を生成できればよい。本実施形態に係る補正方法は、補正値の形式、補正の対象となる信号の種類、補正回路の具体的な構成は特に限定されない。即ち、採用する補正方式の違いに応じて補正方法を適宜設計すればよい。
【0034】
<画像表示装置>
以下に、本実施形態に係る画像表示装置(とりわけ補正回路)について説明する。
本実施形態の補正回路は、輝度むらを補正するための補正値(本実施形態に係る決定方法で決定された補正値)を記憶しておく記憶回路と補正値を演算する演算回路を有する。
例えば、変調回路の特性差がIC毎に発生する場合は、各ICに対応したIC数分の補正値(オフセット補正値)を記憶回路に格納すればよい。変調回路の特性差がIC内で固有の分布をもつ場合には、IC毎の補正値と当該固有の分布に対応したIC内のチャンネル数分の補正値(IC内分布補正値)を記憶回路に格納すればよい。変調回路の特性差が各変調回路毎にランダムで発生する場合には、全変調回路(全チャンネル)分の補正値(チャンネル補正値)を記憶回路に格納すればよい。
【0035】
また、各階調毎に補正値が必要な場合は、各変調回路と各階調に対応した補正値テーブルを記憶回路に格納すればよい。そのような補正値テーブルを作成したとしても、補正値テーブルの容量は、特許文献1に開示されているような全表示素子分の補正値テーブルの容量よりも桁違いに少ない。例えば、フルHDで256階調を表示できる画像表示装置について特許文献1の構成で8bit精度の補正値テーブルを作成した場合、その容量は、1920(列)×3(RGB)×1080(行)×256(階調)×8bit(量子化精度)≒1.
6Gとなる。一方、本構成の場合は1920(列)×3(RGB)×256(階調)×8bit(量子化精度)≒1.5Mの容量となる。
【0036】
補正演算回路は、変調回路の特性差に対応した補正値に基づいて変調信号が補正される構成であればよい。また、変調回路の特性差は一般に変調信号の最小刻み(1階調分の変調信号の刻み)よりも小さいため、補正値の精度は変調信号の最小刻みに制約されてしまう。よって、FRCなどのディザ回路を設けることにより変調回路の最小刻みを擬似的に細かくすることが好ましい。また、変調信号を補正すると、値が変調信号の最小値以下や最大値以上となってしまうため、適当なリミッタ回路を有することが好ましい。
【0037】
以上のような構成により、変調回路の特性差に起因した輝度むら(筋むら)のない表示を行うことができる。
また、本実施形態に係る補正処理を実施して変調回路の特性差に起因した輝度むらを抑制した状態で、特許文献2に開示のような補正処理を更に実施すれば、特許文献2に開示の処理だけでは補正しきれなかった筋むらのない良好な画像が表示できる。なお、本実施形態に係る補正方法は、変調回路の特性差に起因した輝度むらの補正方法であって、表示素子の特性差に起因した輝度むらの補正方法は特許文献2に開示の方法に限定されない。
【0038】
<実施例>
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例の画像表示装置は、表示素子として(表面伝導型)電子放出素子を図2(A)のようなスルーレート制御付PWM方式で単純マトリクス駆動する。表面伝導型電子放出素子の製造方法及び特性は、例えば特開平2−56822号公報などに開示されている。
【0039】
(画像表示装置の概要)
図6(A)は、画像表示装置の全体構成を示す図である。符号1はマトリクス配線を持つマトリクスパネル(表示パネル)を示している。1001は変調配線、1002は走査配線、1003は高電圧が印加されているフェースプレート、2は表示素子のばらつきに起因した輝度むらを補正するためのIVむら補正部を示す。901はディジタル画像信号を受信するRGB入力部、902は画像信号に逆ガンマ補正を行う階調補正部を示す。903はRGBパラレルに入力される画像データをマトリクスパネルのRGB蛍光体の配列に対応して並び替えるデータ並び替え部、904は変調ドライバの非線形性や蛍光体の飽和特性を補正するためのリニアリティ補正回路を示す。905は、変調回路の特性差を補正
するための変調信号補正部を示す。906は変調ドライバ、907は走査ドライバ、908は高圧電源を示す。RGB入力部901、階調補正部902、データ並び替え部903、IVむら補正部2、リニアリティ補正回路904、変調信号補正部905、変調ドライバ906、走査ドライバ907、高圧電源908が本実施例における駆動回路を構成している。また、変調ドライバ906は、240出力(チャンネル数が240)の駆動ICを24個有する(チャンネル数(変調回路数)が5760)。図6(B)は、マトリクスパネル1のリアプレートを模式的に示した図である。マトリクスパネル1は、リアプレート、枠、フェースプレートから構成され、その内部が真空に保持されている。図6(B)において1001は変調配線、1002は走査配線、1004は、電子放出素子である。本実施例のマトリクスパネル1は、1080行の走査配線1002と、1920×3(=5760)列の変調配線1001とを有する。
【0040】
(信号の流れ)
RGB入力部901は、入力されたディジタルコンポーネント信号S1を、表示解像度に応じた画像信号S2に変換する。この画像信号S2が、CRTの特性にあわせたガンマ補正が施された信号である場合、階調補正部902は画像信号S2に対して逆ガンマ補正を行い、出力信号S3を出力する。階調補正部902は逆ガンマ補正のための補正値テーブルが記憶されたメモリで構成するとよい。データ並び替え部903は、階調補正部902の出力信号S3を並び替え、マトリクスパネルの蛍光体配列に対応したRGB画像データS4を出力する。この画像データS4は、階調補正部902で逆ガンマ補正されているので、輝度に比例した値をもつデータ(以降、「輝度データ」と呼ぶ)であり、本実施例では14bit(16383階調)のデータとした。IVむら補正部2は、輝度データS4に対して表示素子のばらつきに起因した輝度むらの補正を行い、第1補正データS5を出力する。第1補正データS5は低階調側での補正精度を向上させるために16bit(65535階調)にbit拡張されたデータである。リニアリティ補正回路904は、最終的な輝度データと表示素子の輝度値が比例するように、第1補正データS5に対して蛍光体の飽和特性および変調ドライバ906の非線形性の補正を行い、第2補正データS6を出力する。R、G、B各色の蛍光体の飽和特性が異なる場合、リニアリティ補正回路904はR、G、B各色で異なった補正値テーブルを持つと良い。第2補正データS6は、本実施例では変調回路の階調数と同じ9bit(511階調)とし、変調信号補正部905に入力される。そして、変調信号補正部905が、第2補正データS6に対し変調回路の特性差に起因した輝度むらの補正を行い、第3補正データS7(最終的な輝度データ)を変調ドライバ906へ出力する。走査ドライバ907が、駆動するラインの走査配線1002に選択電位(走査パルス)S9を出力するとともに、変調ドライバ906が輝度データ(第3補正データS7)に基づき生成した変調信号S8を変調配線1001に出力する。この走査パルスと変調信号の電位差により形成される電圧波形が、電子放出素子1004を駆動するための駆動信号である。選択電位が供給された走査配線1002に接続されている電子放出素子1004では、駆動信号の電圧が所定値を超えた素子から、電子が放出される。放出された電子は、高圧電源908からフェースプレート1003のメタルバック(不図示)に印加された電圧により加速され、蛍光体に衝突する。これにより蛍光体が発光し、画像が形成される。
【0041】
(変調信号)
次に変調ドライバ906の変調信号について説明する。本実施例では図2(A)に示すような、パルス幅とパルス振幅を変化させて変調する方式でマトリクスパネルを駆動した。図2(A)において、縦軸が電圧値で横軸が時間であり、各階調値(図2(A)のS7)での駆動波形(図2(A)のS8)を横に並べて示している。ここで階調値とは変調信号のとりうる信号レベルを小さいものから順に番号を付けたものであり変調信号補正部の出力(図6(A)のS7)に相当する。変調信号は階調値n=100までが三角波形であり、階調値101から511階調までが台形波形であり、階調が1つ増えると25[ns]
ずつ立下りタイミングが遅延していく波形になっている。駆動電圧はVx=10[V]、Vy=−8[V]、Vus=5[V]である。ここでS4、S5は輝度に比例した値をもつデータであるが、S6、S7は輝度に対して非線形なデータである。
【0042】
(補正値の決定方法)
次に補正値の決定方法について説明する。はじめに、すべての補正を行わずに図3(A)に示すような変調信号(ここでは階調値S7=50に対応する変調信号)で第1の画像を表示する。このときの変調信号の最大波高値は約5.0[V](=10[V]×50階調
/100階調)である。第1の画像はR、G、Bで分けて表示する。具体的には、Rの画像の輝度むらを計測する時は、Rの変調配線には階調値S7の変調信号を印加し、G、Bの変調配線には階調値0の変調信号を印加する。また、各走査線は線順次に駆動する。同様にして、G、Bの画像の輝度むらも計測できる。それにより、表示素子の特性(電子放
出特性)のばらつきと変調回路の特性差に応じた輝度むらを有する画像が表示される。こ
の状態で各表示素子の輝度値をCMOSカメラやCCDカメラ等を用いて計測する。そして、本実施例では1920×3×100ライン分の表示素子の輝度値を計測し、測定誤差が抑制された第1の輝度値を得る。具体的には、図5(A)のように得られた1920×3×100個の輝度値のうち、同一の変調回路Xで駆動した100素子分の計測値を平均することにより、各変調回路にそれぞれ対応する1920×3個の値を得る。その値を1920×3×100(=576000)個の輝度値の平均値で規格化したものを第1の輝度値とする。
そして、図3(B)に示すような変調信号で第2の画像を表示し、第2の画像を表示したときの各表示素子の輝度値から、第1の輝度値の算出方法と同様の方法で第2の輝度値を算出する。なお、本実施例において、第2の画像を表示するための変調信号の波形は、パルス幅が階調値511に対応する波形のパルス幅と等しく、最大波高値が約5.0[V]
(第1の画像を表示するときの変調信号の最大波高値と同じ値)の波形である。
同様に、階調値(S7=51)に対応する変調信号で第3の画像を表示し、第3の画像を表示したときの各表示素子の輝度値から、第1,2の輝度値の算出方法と同様の方法で第3の輝度値を算出する。本実施例において、第3の画像を表示するための変調信号は、第1の画像を表示するための変調信号の階調値よりも1つ大きい階調値に対応する変調信号である。
以上のようにして得られた第1〜3の輝度値を用いて、図5(D)のような演算を行うことにより、補正値を決定する。
【0043】
以上のようにして算出された第1〜3の輝度値、及び、図5(D)の演算を行った結果を図7(A)(B)(C)(D)に示す。図7(A)は第1の輝度値を示す。この値には表示素子の特性差と変調回路の特性差の両方に起因した成分が含まれている。図7(B)は第2の輝度値を示す。この値には表示素子の特性差に起因した成分が含まれている(図7(A)の値に比べ変調回路の特性差の両方に起因した成分が少ない)。図7(C)は第3の輝度値を示す。この値は、図7(A)の値に比べて、1階調分の輝度が更に含まれている。図7(D)は、図5(D)の演算を行った結果である。この値は、図5(D)からわかるとおり、「変調回路の特性差に起因した輝度比」を「階調値が1つ増えた場合の輝度値の上昇率」で規格化しているため、5760個ある変調回路の特性差を階調値の差に換算した値に相当する。図7(D)から、240列毎に類似形状のプロファイルが周期的に並んでいることがわかる。これは、駆動ICに固有の変調回路ばらつきで、PWM回路におけるクロックパルスを伝達する配線やバッファの構成に依存したばらつきに相当する。また、240列毎にランダムなオフセットが発生していることがわかる。このオフセットばらつきが、駆動IC毎の閾値電圧のばらつきに相当する。また、それ以外の高周波なばらつきは、駆動IC内の各チャンネルの特性ばらつき(個別ばらつき)に相当する。
【0044】
本実施例では、更に、図5(E)のように図5(D)の演算を行った結果の最大値を0と
することにより、補正値を決定した。また、階調値相当のばらつきが1階調以下で、殆どの階調値で1階調分の変調信号の刻みが15%程度であったため、1%以下の補正精度を得る為に補正値を1階調分の16分の1の精度(4bit)で量子化した。
【0045】
(補正回路)
次に、上述した補正値を用いて正確な補正をするための変調信号補正部について図8を用いて説明する。変調信号補正部は、補正値を記憶しておく記憶回路と補正値を変調信号に加算する加算器と、加算された階調から擬似階調を生成するディザ回路と、生成された信号が変調信号の最大値を超えた場合に最大値に制限するリミッタ回路とからなる。
補正値を記憶しておく記憶回路は、チャンネル毎にランダムにばらつく個別ばらつきを補正できるように、各変調回路に対応した5760個の4bitの補正値を記憶する構成を有する。
リニアリティ補正回路904の出力S6は9bitである。
加算器は、補正値に相当する4bitを出力S6にそのまま加算し13bitにbit拡張する。
ディザ回路では、加算器から出力された信号を階調値(9bit)+ディザ階調値(1b
it)の10bitの信号に変換する。また、変換後の信号は、ディザの4bit擬似階
調により13bit相当の分解能を得ることができる。
リミッタ回路は、最大信号の10bitフルデータが入力された場合に9bitフルデータを出力し、その他のデータが入力された場合にはそのままのデータが出力されるように動作する。ここで、10bitフルデータは最大階調値に対応する信号である。そのような階調値に対応する変調信号のパルス幅が十分長い場合には、変調回路の特性差(遅延
時間ばらつき)に起因した輝度むらは無視できるため、リミッタ回路で制限することによ
る影響は無視できる。
リミッタ回路の出力S7(9bitデータ)は変調ドライバに出力され、変調回路の特性差が補正された表示が行われる。
【0046】
(補正後の均一性)
次に、本実施例の効果を確認するために、変調信号補正処理を行った状態で、階調値50に対応する変調信号で画像を表示し、各表示素子の輝度値を計測した。その計測結果(第1〜3の輝度値と同様の算出方法で算出した代表値)を図9(A)に示す。補正が良好に機能していれば図9(A)には変調回路の特性差に起因した輝度値のばらつき(輝度むら(
筋むら))は存在せず表示素子の特性差に起因した輝度値のばらつきのみが現れることに
なる。それを確認するために、図9(A)に示す値を表示素子の特性差に起因した成分を主に含む第2の輝度値(図7(B))の値で除算した。その結果を図9(B)に示す。図9(
B)からわかるとおり、変調回路の特性差に起因した輝度むらは1%以下に抑えられてい
ることが確認できる。
また、変調信号補正処理を行った状態で特許文献2の構成でIVむら補正処理も行った。表示素子の特性差に起因した輝度むらの補正方法は、本願とは直接関係ないため、詳細な説明は省略するが、基本的な回路構成は、例えば特開2008−145494号公報に開示のような回路構成とした。即ち、高階調側と低階調側の2つの階調範囲で補正値を決定して、それらの階調値を最適な関数で補間する構成とした。本実施例の効果を確認するために、IVむら補正処理、及び、変調信号補正処理を行った状態でパネル全面を点灯させて均一性を目視で確認したが筋状の輝度むらは全く確認されなかった。また、表示素子の特性差に起因した輝度むらも殆ど確認されなかった。更に、低階調側において補正値を3つ以上の階調値について決定することにより、超低階調領域(例えば、全階調範囲の最低階調値から0〜25%の範囲)での表示素子の特性差に起因した輝度むらを抑制することができた。
【0047】
以上述べたように、本実施形態に係る補正値の決定方法によれば、表示素子の特性差に
起因した成分と変調回路の特性差に起因した成分とを含む第1の輝度値、第1の輝度値よりも変調回路の特性差に起因した成分の少ない第2の輝度値を算出する。そして、第1の輝度値を第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する補正値を算出する。それにより、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正するための補正値を精度よく決定することができる。また、第1,2の輝度値は、それぞれ異なる変調信号で画像を表示したときの各表示素子の輝度値から算出されるため、簡易な構成で実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
905 変調信号補正部
906 変調ドライバ
907 走査ドライバ
1001 変調配線
1002 走査配線
1004 電子放出素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、前記補正回路で用いられる補正値の決定方法であって、
表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、
前記第1工程で表示した第1の画像よりも前記変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、
前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する前記補正値を算出する第3工程と、
を含むことを特徴とする補正値の決定方法。
【請求項2】
前記第1の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加することにより表示される画像であり、
前記第2の画像は、1つの変調回路から前記複数の変調配線に共通の変調信号を印加することにより表示される画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の補正値の決定方法。
【請求項3】
前記第1の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加することにより表示される画像であり、
前記第2の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ、前記第1の画像を表示する際に印加した変調信号よりも大きいパルス幅を持つ変調信号を印加することにより表示される画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の補正値の決定方法。
【請求項4】
前記補正値は、前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値の逆数である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補正値の決定方法。
【請求項5】
前記第1の画像と輝度が異なる第3の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第3の輝度値を算出する第4工程を更に含み、
前記補正値は、前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値と1との差を、前記第1の輝度値と前記第3の輝度値との間の変化率で規格化することにより得られる値である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補正値の決定方法。
【請求項6】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、前記補正回路による補正方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の補正値の決定方法により決定された補正値を用いて、入力された輝度データを補正する工程と、
補正された輝度データに基づいて前記変調信号を生成する工程と、
を含むことを特徴とする補正方法。
【請求項7】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有し、
前記補正回路は、変調回路毎の補正値を記憶しており、
前記補正値は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の補正値の決定方法により決定された補正値である
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、前記補正回路で用いられる補正値の決定方法であって、
表示素子の特性差に起因した輝度むらと変調回路の特性差に起因した輝度むらとを含む第1の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第1の輝度値を算出する第1工程と、
前記第1工程で表示した第1の画像よりも前記変調回路の特性差に起因した輝度むらの少ない第2の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第2の輝度値を算出する第2工程と、
前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値を用いて、各変調回路に対応する前記補正値を算出する第3工程と、
を含むことを特徴とする補正値の決定方法。
【請求項2】
前記第1の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加することにより表示される画像であり、
前記第2の画像は、1つの変調回路から前記複数の変調配線に共通の変調信号を印加することにより表示される画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の補正値の決定方法。
【請求項3】
前記第1の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ変調信号を印加することにより表示される画像であり、
前記第2の画像は、前記複数の変調回路から前記複数の変調配線にそれぞれ、前記第1の画像を表示する際に印加した変調信号よりも大きいパルス幅を持つ変調信号を印加することにより表示される画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の補正値の決定方法。
【請求項4】
前記補正値は、前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値の逆数である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補正値の決定方法。
【請求項5】
前記第1の画像と輝度が異なる第3の画像を表示して各表示素子の輝度値を測定し、該測定結果から変調回路毎に表示素子の代表的な輝度値である第3の輝度値を算出する第4工程を更に含み、
前記補正値は、前記第1の輝度値を前記第2の輝度値で除算した値と1との差を、前記第1の輝度値と前記第3の輝度値との間の変化率で規格化することにより得られる値である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の補正値の決定方法。
【請求項6】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有する画像表示装置における、前記補正回路による補正方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の補正値の決定方法により決定された補正値を用いて、入力された輝度データを補正する工程と、
補正された輝度データに基づいて前記変調信号を生成する工程と、
を含むことを特徴とする補正方法。
【請求項7】
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、複数の走査配線と、複数の変調配線と、前記走査配線を介して前記表示素子に走査信号を印加する走査回路と、前記変調配線毎に設けられ、前記変調配線を介して前記表示素子に変調信号を印加する複数の変調回路と、変調回路の特性差に起因した輝度むらを補正する補正回路と、を有し、
前記補正回路は、変調回路毎の補正値を記憶しており、
前記補正値は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の補正値の決定方法により決定された補正値である
ことを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−33877(P2011−33877A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180736(P2009−180736)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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