説明

補正値取得装置及び補正値取得方法とジッタ発生装置及びジッタ発生方法

【課題】サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値をより高速に取得する。
【解決手段】直交変調器11は、キャリア周波数毎に可変設定される変調量により基準クロックを変調する。位相比較器13は、基準クロックの変調前後の信号の位相を比較する。A/D変換部14は、位相比較器13の位相差に応じた電圧を出力する。制御部16は、基準クロックの変調前後の位相差が360°となるA/D変換部14の2点の電圧値から理想直線を算出し、変調量をキャリア周波数毎に所定ステップずつ可変設定したときのA/D変換部14から出力される電圧と理想直線上の対応する電圧との差に基づいて補正値を取得する。記憶部15は、制御部16が取得した補正値を保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値をより高速に取得することができる補正値取得装置及び補正値取得方法と、この補正値取得装置及び補正値取得方法を用いて所望のサイン波ジッタを発生させることができるジッタ発生装置及びジッタ発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル伝送システムにおいて、データ信号の位相のジッタ(位相揺らぎ)や信号の時間的ズレが大きくなると、正常にデータ信号を伝達できなくなる。このため、この種のシステムで使用される電子機器やそれらに使用される部品は、ITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)で規定されたジッタトレランス(耐力)規格を満足する必要がある。このジッタトレランス規格とは、所定量のジッタを有する信号を被測定装置に入力したときに、その装置が入力信号のジッタをどの程度抑圧して出力するかを表すものである。
【0003】
ここで、ジッタ耐力を測定するためのジッタ変調された信号であるジッタ信号について図6を用いて説明する。図6に示すように、ジッタ信号bは、送信すべき基準信号としての基準矩形波信号aに対して、位相が所定の変動速度で、且つ所定の変動範囲で変化する信号を示し、この位相変動の範囲、すなわち位相変動量をジッタ量と定義し、位相の変動速度を変調周波数と定義する。
【0004】
また、ジッタ量(以下、「位相変調量」ともいう)の単位は、基準矩形波信号aの周期(unit interval :UI)の倍数で示す。例えば、90°の位相変調量は0.25UIとなり、1周期のジッタ量は1UIとなる。
【0005】
ところで、上述したジッタトレランス規格を満足するジッタ量が得られるか否かを試験するためには、決まったジッタを発生することができるジッタ発生装置が必要不可欠になる。ジッタ発生装置は、基準となるクロックに所望のディレーをかけてデータに電気的なノイズを印加するものである。
【0006】
この種のジッタ発生装置の一例として、直交変調器を用いたものが下記特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されるジッタ発生装置51は、図7に示すように、周波数ωのキャリア信号を出力するキャリア信号発生器52と、変調信号P=m・sin(pt)を出力する変調信号発生器53と、直交変調器54と、直交変調器54に直流電圧を与える直流電源55と、直交変調器54の出力信号を増幅するとともに、その振幅を一定に揃えるリミッタアンプ56とを備え、キャリア信号発生器52からのキャリア信号が直交変調器54のRF入力端子に入力され、変調信号発生器53からの変調信号が直交変調器54のQ端子に入力され、直流電源55からの直流電圧が直交変調器54のI端子に入力される。
【0007】
ところが、上述した直交変調器を用いたジッタ発生装置では、使用する直交変調器自体の感度や経年変化に伴い、発生するジッタにも変化が生じる。このため、所定周波数のキャリア信号(基準クロック信号)に対して正確にサイン波ジッタを印加するには、設定パラメータである変調周波数や変調量に加え、キャリア信号のキャリア周波数に応じた補正が必要になる。
【0008】
そこで、従来は、ジッタ発生に必要なパラメータであるキャリア周波数、変調周波数、変調量を設定し、スペクトラムアナライザを用いて直交変調器の出力のスペクトラム成分を抽出し、この抽出したスペクトラム成分に基づき、設定されたキャリア周波数、変調周波数、変調量に対して必要なQ端子及びI端子への印加電圧を補正値として算出していた。この補正値の算出は、1つのキャリア周波数を固定し、1つの変調周波数に対して変調量を所定ステップで可変し、全ての変調周波数に対してキャリア周波数毎に行い、これによって得られる補正値をテーブル化して装置内部に保存していた。
【0009】
また、別の手法として、直交変調器の出力のスペクトラム成分に基づくジッタの分布を解析する解析ソフトを実装したデジタルオシロスコープを使用し、設定されたキャリア周波数、変調周波数、変調量に対して必要なQ端子及びI端子への印加電圧を解析し、この解析によって得られる補正値をテーブル化して装置内部に保存していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−98892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来は、補正値を取得するために、スペクトラムアナライザやデジタルオシロスコープ等の専用の外部測定器が必要不可欠であった。しかも、ジッタの発生に必要なパラメータであるキャリア周波数、変調周波数、変調量の分解能が増す分だけテーブル化される補正値の情報量も増し、コストが嵩むだけでなく、補正値の取得に手間と時間を要するという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値をより高速に取得することができる補正値取得装置及び補正値取得方法と、この補正値取得装置及び補正値取得方法を用いて所望のサイン波ジッタを発生させることができるジッタ発生装置及びジッタ発生方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された補正値取得装置は、基準クロックを変調する直交変調器11と、
前記基準クロックの変調前後の信号の位相を比較する位相比較器13と、
前記基準クロックの変調前後の位相差が360°となる2点の電圧値から位相が1周期変化した時の理想直線を算出し、前記変調量を前記キャリア周波数毎に所定ステップずつ可変設定したときの電圧と前記理想直線上の対応する電圧との差に基づいて補正値を取得する制御部16とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載された補正値取得方法は、基準クロックの変調前後の信号の位相を比較し、位相差が360°となる2点の電圧値から位相が1周期変化した時の理想直線を算出するステップと、
変調量をキャリア周波数毎に所定ステップずつ可変設定したときの電圧と前記理想直線上の対応する電圧との差に基づいて補正値を取得するステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載されたジッタ発生装置は、請求項1の補正値取得装置を用いたジッタ発生装置であって、
前記基準クロックを発生する基準クロック発生部2と、
ジッタ信号の発生を指示する操作部3とを備え、
前記制御部16は、前記操作部によりジッタ信号の発生が指示されたときに、前記補正値取得装置で取得した補正値により変調量を補正してジッタ信号を発生することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載されたジッタ発生方法は、請求項2の補正値取得方法を用いたジッタ発生方法であって、
前記補正値取得方法で取得した補正値により変調量を補正してジッタ信号を発生するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値を従来よりも高速に取得することができる。しかも、スペクトラムアナライザやデジタルオシロスコープ等の専用の外部測定器が不要となり、補正値の取得にかかるコストを削減でき、手間と時間をかけずに補正値の取得を行うことができる。
【0018】
また、補正値取得装置を用いたジッタ発生装置によれば、ジッタ信号の発生を指示することにより、補正値を取得しつつ、この取得した補正値により補正しながらジッタ発生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る補正値取得装置を含むジッタ発生装置のブロック図である。
【図2】補正値取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】ジッタトレランス規格で規定されるパラメータグラフの一例を示す図である。
【図4】比率による補正値の算出方法に関する説明図である。
【図5】比率による補正値の算出方法に関する具体例を示す説明図である。
【図6】基準矩形波とジッタ信号との関係を示す図である。
【図7】従来のジッタ発生装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る補正値取得装置を含むジッタ発生装置のブロック図、図2は補正値取得処理の手順を示すフローチャート、図3はジッタトレランス規格で規定されるパラメータグラフの一例を示す図、図4は比率による補正値の算出方法に関する説明図、図5は比率による補正値の算出方法に関する具体例を示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、ジッタ発生装置1は、例えば被試験デバイス(Device Under Test :DUT)の性能試験を行うべく、ジッタトレランス規格に基づく所望のサイン波ジッタを発生させるもので、基準クロック発生部2、操作部3、表示部4、補正値取得装置5を備えて概略構成される。
【0022】
基準クロック発生部2は、ジッタトレランス規格に基づいて操作部3からの入力により設定された所定周波数のキャリア信号として、基準クロックCLK(ジッタがかかっていないサイン波)を発生している。
【0023】
尚、図1において、基準クロック発生部2は、ジッタ発生装置1に内蔵した構成として図示しているが、補正値取得装置5に内蔵した構成、ジッタ発生装置1に接続可能に外部に設ける構成とすることもできる。
【0024】
操作部3は、ユーザの入力により各種操作や設定を行うもので、例えばマウスなどのポインティングデバイス、スイッチやキーが配置された操作パネル、表示部4の表示画面上に配置されたソフトキー等の入力装置で構成される。操作部3の入力による各種操作や設定としては、後述する補正値取得処理の実行を指示する「補正モード」を選択する操作、補正値取得処理を実行してジッタの発生を指示する「ジッタ発生モード」を選択する操作、各種パラメータ(キャリア周波数、変調量)の設定、設定画面の切り換え操作などがある。
【0025】
表示部4は、例えば液晶表示器で構成され、操作部3の入力に基づく後述する制御部16の制御により、各種設定画面、入力画面、発生するサイン波ジッタのモニタ波形などの表示を行っている。
【0026】
補正値取得装置5は、サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値をより高速に取得するための補正値取得機能を実現するべく、図1に示すように、直交変調器11、分周器12、位相比較器13、A/D変換部14、記憶部15、制御部16、D/A変換部17を備えている。
【0027】
直交変調器11は、RF入力端子が基準クロック発生部2に接続され、Q端子及びI端子がD/A変換部14に接続される。直交変調器11は、ジッタトレランス規格に基づく範囲でキャリア周波数毎に可変設定される変調量により基準クロック発生部2からの基準クロックCLKを変調してサイン波ジッタ(ジッタ信号)を出力している。
【0028】
分周器12は、第1分周器12aと第2分周器12bで構成される。第1分周器12aは、直交変調器11からの変調後のサイン波ジッタ(ジッタ信号)を所定の分周比で分周している。第2分周器12bは、基準クロック発生部2からの変調前の基準クロックCLKを第1分周器12aと同一の分周比で分周している。
【0029】
位相比較器13は、直交変調器11の0deg点の原点位置が設定された状態で、第1分周器12aで分周された変調後のサイン波ジッタ(ジッタ信号)と、第2分周器12bで分周された変調前の基準クロックCLKとの排他的論理和を取り、両信号の位相差信号を出力している。また、位相比較器13は、直交変調器11の360deg点において、第1分周器12aで分周された変調後のサイン波ジッタ(ジッタ信号)と、第2分周器12bで分周された変調前の基準クロックCLKとの排他的論理和を取り、両信号の位相差信号を出力している。
【0030】
本例では、後述する0deg点の電圧値と360deg点の電圧値とを結ぶ理想直線を得るため、位相比較器13の前段に分周器12を設け、A/D変換部14の電圧値が所定電圧範囲内に収まる位置、すなわち直線性の良い位相(変調量)1UIに相当する箇所を直交変調器11の0deg点の原点位置として用いている。
【0031】
尚、位相(変調量)1UIに相当する箇所で直線性に優れた出力が得られる位相比較器13を使用できれば、分周器12の構成を省くことも可能である。
【0032】
A/D変換部14は、位相比較器13からの位相差信号に応じた電圧値(デジタル値)を出力している。
【0033】
記憶部15は、ジッタトレランス規格に基づいて所定ステップの分解能で可変される変調量(例えば0.1UIステップ)を、それぞれアドレスと対応付けした補正テーブルとして、キャリア周波数毎(例えば12.5GHz〜0.8GHz:100MHzステップ)に記憶している。この補正テーブルには、後述する補正値取得処理によって算出された補正値が対応するアドレスに書き込まれて保存される。また、記憶部15は、直交変調器11の0deg点及び360deg点のA/D変換部14の電圧値を保存している。
【0034】
制御部16は、操作部3の操作に基づき、ジッタ発生及び補正値取得に係わる各部を統括制御もので、後述する図2の補正値取得処理(0deg点の原点位置の決定、直交変調器11のIQ電圧制御、0deg点及び360deg点での電圧値の読み取り、位相(変調量)が1周期(1UI)変化した時の理想直線の算出、取得電圧と理想直線上の理想電圧との差に基づく補正値の演算、補正値を取得していない領域の補間計算処理、キャリア周波数、変調量の可変制御など)の実行、表示部4の表示制御などを行っている。
【0035】
D/A変換部17は、Q側D/A変換部17aとI側D/A変換部17bからなり、操作部3の設定入力に基づく制御部16の制御により、直交変調器11のQ端子に入力されるQ信号の電圧及びI端子に入力されるI信号の電圧、すなわちIQ電圧を0degから360degまで所定ステップ(例えば100mUI)で可変している。
【0036】
次に、上記のように構成されるジッタ発生装置1の補正値取得装置5が実行する補正値取得処理について図2を参照しながら説明する。
【0037】
尚、以下の説明では、操作部3の初期設定により、「補正値取得モード」が選択され、直交変調器11のIQ電圧が0deg点の電圧値に設定され、キャリア周波数が上限値に設定され、変調周波数が0に設定されているものとする。また、A/D変換部14の電圧値が所定電圧範囲内に収まる位置、すなわち直線性の良い位相(変調量)1UIに相当する箇所が直交変調器11の0deg点の原点位置として設定されているものとする。
【0038】
この補正値取得処理では、直交変調器11の0deg点(設定された原点位置)の電圧値をA/D変換部14から読み取り、この読み取った0deg点の電圧値を記憶部15に保存する(ST1)。続いて、直交変調器11のIQ電圧を、0deg点から360deg点まで所定ステップ(例えば100mUI)ずつ可変する(ST2)。そして、直交変調器11の360deg点の電圧値をA/D変換部14から読み取り、この読み取った360deg点の電圧値を記憶部15に保存する(ST3)。そして、0deg点の電圧値と360deg点の電圧値との間を補間処理により直線で結び、位相(変調量)が1周期(1UI)変化した時の理想直線を算出する(ST4)。
【0039】
理想直線が算出されると、直交変調器11の位相(変調量)を0.1UIステップで0.1UI〜1UIまで可変してA/D変換部14から電圧値を取得し、取得した電圧値と、この取得した電圧値と対応する理想直線上の理想電圧との差分を補正値として算出する(ST5)。例えば100%を補正無しとすると、取得した電圧値/理想電圧×100%によって補正値Sが得られる。この算出した補正値は、記憶部15の補正テーブルの該当するアドレスに書き込まれて保存される。
【0040】
そして、直交変調器11の位相(変調量)を所定ステップ(例えば0.1UIステップ)で可変し、直交変調器11の位相(変調量)を1UIまで可変して全て測定したか否かを判別する(ST6)。直交変調器11の位相(変調量)を1UIまで可変して全て測定していないと判別すると、直交変調器11の位相(変調量)を所定ステップ(例えば0.1UIステップ)で可変する(ST7)。これに対し、直交変調器11の位相(変調量)を1UIまで可変して全て測定したと判別すると、全てのキャリア周波数について測定したか否かを判別する(ST8)。
【0041】
全てのキャリア周波数について測定していないと判別すると、次のキャリア周波数に切り換える(ST9)。本例では、補正値取得処理を開始する前の操作部3の入力に基づく設定により、キャリア周波数が上限に設定されており、分解能に応じて次のキャリア周波数に切り換えられる。
【0042】
そして、全てのキャリア周波数について測定したと判別すると、ジッタトレランス規格で規定されるパラメータ(キャリア周波数、変調量)による補正テーブルが完成して記憶部15に保存され、補正値取得処理を終了する。
【0043】
ここで、図3はジッタトレランス規格で規定されるパラメータグラフの一例を示している。この図3のパラメータグラフに基づく補正値取得処理を行う場合には、周波数10Hz〜1MHz、1MHz〜10MHz、10MHz〜250MHzの3つの領域に分けて上述した図2のフローチャートの手順に基づく補正値取得処理が実行される。
【0044】
ここで、図2のST5における補正値の算出方法について図4を参照しながら簡単に説明する。
【0045】
図4において、補正値Sは、操作部3の入力により設定された変調周波数と変調量に近い4つの補正値ポイントA,B,C,Dから算出される。
【0046】
(1)設定した変調周波数と補正値ポイントの変調周波数とが一致している場合は、補正値S=AC(AH−AS)/(AH−AL)+BD(AS−AL)/(AH−AL)によって算出される。
【0047】
(2)設定した変調量と補正値ポイントの変調量とが一致している場合は、補正値S=AB(FH−FS)/(FH−FL)+CD(FS−FL)/(FH−FL)によって算出される。
【0048】
(3)設定した変調周波数と補正値ポイントの変調周波数とが一致し、かつ設定した変調量と補正値ポイントの変調量とが一致している場合は、補正値S=0となる。
【0049】
(4)設定した変調周波数と補正値ポイントの変調周波数とが一致せず、かつ設定した変調量と補正値ポイントの変調量とが一致しない場合は、以下の手順によって補正値Sを算出する。
【0050】
まず、ACとBDを下記の式(イ),(ロ)から算出する。
AC=A(FH−FS)/(FH−FL)+C(FS−FL)/(FH−FL)…式(イ)
BD=B(FH−FS)/(FH−FL)+D(FS−FL)/(FH−FL)…式(ロ)
そして、補正値Sは上記ACとBDを用いて下記の式(ハ)から算出する。
補正値S=AC(AH−AS)/(AH−AL)+BD(AS−AL)/(AH−AL)…(ハ)
【0051】
さらに、上記(4)の場合の補正値の算出方法の具体例について図5を参照しながら説明する。
【0052】
まず、ACとBDを上記式(イ),(ロ)から算出する。
AC=900(100k−15k)/(100k−1k)+1050(15k−1k)/(100k−1k)=921
BD=950(100k−15k)/(100k−1k)+1100(15k−1k)/(100k−1k)=971
そして、補正値Sは上記ACとBDを用いて上記式(ハ)から算出する。
補正値S=921(12.8ー8)/(12.8−6.4)+971(8−6.4)/(12.8−6.4)=934
【0053】
尚、操作部3の入力によりキャリア周波数が設定変更された場合には、上述した算出式より補正値取得しているキャリア周波数Fc1、Fc2での補正値S1、S2を求め、設定されたキャリア周波数Fcsでの補正値Sを下記の式(ニ)から算出する。
補正値S=S1ー(Fc1−Fcs)/(Fc1−Fc2)(S1−S2)…式(ニ)
【0054】
ところで、上述した説明では、理想電圧に対する比率として補正値Sを算出しているが、絶対量として補正値Sを算出したり、図2のST5で説明するような理想電圧に対する差分として補正値Sを算出するようにしても良い。
【0055】
また、直交変調器11を用いた構成なので、原理的に位相(変調量)1UI以上の補正は必要なく、1UI以上では1UIまでの補正値を流用することができる。
【0056】
このように、本例のジッタ発生装置1によれば、補正値取得装置5が備える補正値取得機能により、初期設定後に「補正値取得モード」が選択されると、サイン波ジッタを正確に印加するために必要な補正値を従来よりも高速に自動取得することができる。
【0057】
しかも、スペクトラムアナライザやデジタルオシロスコープ等の専用の外部測定器が不要となり、補正値の取得にかかるコストを削減でき、手間と時間をかけずに補正値の取得を行うことができる。
【0058】
さらに、補正値取得装置5の補正値取得機能を用いれば、業者による工場出荷時や定期的な保守・点検に限らず、本装置を使用するユーザよる校正も可能となる。
【0059】
ジッタ発生装置1に補正値取得装置5を内蔵した構成なので、操作部3のモード選択により、補正値取得処理を実行してジッタの発生を指示する「ジッタ発生モード」を選択すれば、補正値を取得しつつ、この取得した補正値により補正しながらジッタ発生を行うことができる。
【0060】
ところで、上述した実施の形態では、直交変調器11の0deg点と360deg点の2点の電圧値を取得して理想直線を算出しているが、これに限定されるものではない。すなわち、直交変調器11のIQ電圧が同一電圧で、基準クロックCLKの変調前と変調後の位相の差が360degになる2点の電圧値であれば良い。
【0061】
また、補正値取得装置5は、図1に示すようなジッタ発生装置1に内蔵される構成に限定されるものではなく、別体で構成することもでき、例えば直交変調器11のIQ電圧を制御して信号を遅延出力する際のスキュー設定を行う装置に利用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 ジッタ発生装置
2 基準クロック発生部
3 操作部
4 表示部
5 補正値取得装置
11 直交変調器
12 分周器
12a 第1分周器
12b 第2分周器
13 位相比較器
14 A/D変換部
15 記憶部
16 制御部
17 D/A変換部
17a Q側D/A変換部
17b I側D/A変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックを変調する直交変調器(11)と、
前記基準クロックの変調前後の信号の位相を比較する位相比較器(13)と、
前記基準クロックの変調前後の位相差が360°となる2点の電圧値から位相が1周期変化した時の理想直線を算出し、前記変調量を前記キャリア周波数毎に所定ステップずつ可変設定したときの電圧と前記理想直線上の対応する電圧との差に基づいて補正値を取得する制御部(16)とを備えたことを特徴とする補正値取得装置。
【請求項2】
基準クロックの変調前後の信号の位相を比較し、位相差が360°となる2点の電圧値から位相が1周期変化した時の理想直線を算出するステップと、
変調量をキャリア周波数毎に所定ステップずつ可変設定したときの電圧と前記理想直線上の対応する電圧との差に基づいて補正値を取得するステップとを含むことを特徴とする補正値取得方法。
【請求項3】
請求項1の補正値取得装置を用いたジッタ発生装置であって、
前記基準クロックを発生する基準クロック発生部(2)と、
ジッタ信号の発生を指示する操作部(3)とを備え、
前記制御部(16)は、前記操作部によりジッタ信号の発生が指示されたときに、前記補正値取得装置で取得した補正値により変調量を補正してジッタ信号を発生することを特徴とするジッタ発生装置。
【請求項4】
請求項2の補正値取得方法を用いたジッタ発生方法であって、
前記補正値取得方法で取得した補正値により変調量を補正してジッタ信号を発生するステップを含むことを特徴とするジッタ発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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