説明

補聴器並びに補聴器に用いられる補聴処理方法及び集積回路

【課題】ユーザ個人の意思を身体的及び心理的に負担の少ない方法で補聴器に伝達する。
【解決手段】装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器10であって、音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホン11、12と、入力信号から出力信号を生成する補聴信号処理部15と、補聴信号処理部15によって生成された出力信号を音として出力するレシーバ16と、装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御部14とを備え、補聴信号処理部15は、補聴処理制御部14によって制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって、出力信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の補聴器には指向性制御、雑音抑圧、ボリューム自動調節など、多くの機能が搭載されている。例えば、補聴器は、補聴器自体が周囲の雑音状況などの装用者(以下、ユーザと称する。)の周囲の環境を判断し、判断した環境に応じて信号処理(以下、補聴処理という。)を制御する。このように、補聴器が周囲の環境に応じて自動的に補聴処理を制御することにより、補聴器は、ユーザによりよい「聞こえ」を提供することが可能となる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、ユーザの聞きたい音は周囲の環境によって一意に決まるものではない。ユーザの聞きたい音は、個々のユーザが置かれた状況あるいはユーザの心理によって変化する。そのため、補聴器が周囲の環境を自動的に判断し、判断した環境に応じて補聴処理を制御する上記の方法では、すべてのユーザにとって必ずしも最適な「聞こえ」が提供されているとは限らない。したがって、補聴器が出力する音とユーザが聞きたい音との間に相違がある場合、何らかの形でユーザの意思を補聴器へ伝えることが求められる。
【0004】
そこで、従来、補聴器は、一般的に、本体又は付属リモコンに、ユーザ自身の意思を補聴器に伝えるためのスイッチ等を有する。図8は、従来の補聴器100の機能構成を示すブロック図である。補聴信号処理部115は、気導マイクロホン111によって生成された入力信号から出力信号を生成する。そして、レシーバ116は、補聴信号処理部115によって生成された出力信号を音として出力する。補聴処理制御部114は、入力信号に基づいて周囲の環境を判断し、判断した環境に応じて補聴信号処理部115が行う信号処理を制御するための制御情報を出力する。また、ユーザは、補聴器リモコン200又は補聴器100の本体に設けられたスイッチ等を用いて、補聴処理制御部114へ制御信号を入力することができる。
【0005】
その他、ユーザ自身が補聴器を調整する方法として、テスト音響データを予め補聴器の遠隔装置に記憶しておき、記憶されたテスト音響データを再生可能な仕組みを補聴器に設けることで、ユーザ自身による補聴器の調整を支援する例がある(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、補聴器以外の分野において、手動操作を行わない入力インターフェースの1つとして、音声を用いた入力インターフェースが提案されている。音声を用いた入力インターフェースは、ユーザが手を使わずに気軽に利用することができるので、コンピュータ、カーナビ又は携帯電話などの様々な機器に適用されている。なお、音声を用いた入力インターフェースが実際に搭載された補聴器は、まだ実用化されていない。しかし、補聴器は、ユーザが扱うことの難しい小さな機器であるため、音声を用いた入力インターフェースは、スイッチ等による手入力インターフェースの代替手段として有用であると考えられる。
【0007】
また、一般的に、マイクロホンには、空気の振動を検出することによって音を検出する気導マイクロホン、及び骨又は皮膚などのユーザの体の振動を検出することによって音を検出する接触型マイクロホンなどがある。接触型マイクロホンには、ユーザの骨の振動を検出する骨伝導マイクロホン、及びユーザの皮膚の振動を検出する肉伝導マイクロホンなどがある。接触型マイクロホンは、音の振動を検出する振動板を、外部遮音壁(ケース)で覆う構造を有するのが一般的である(例えば、特許文献3、4及び5を参照)。また、接触型マイクロホンは、雑音が混入しにくく、通常の気導マイクロホンに比べて小さな発声を検出することができることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3865600号公報
【特許文献2】特開2007−028609号公報
【特許文献3】特許第3760173号公報
【特許文献4】特開2007−101305号公報
【特許文献5】特開2007−259008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、一般的に、ユーザは、自分の聞きたい音を得るために、補聴器本体又は遠隔リモコンに設けられたスイッチ等を用いて補聴器を制御する。
【0010】
しかしながら、ユーザがスイッチ等を用いて、補聴器が有するプログラム又はボリュームを切り替えるだけでは、その場その場に応じたユーザの細かな要望を補聴器に反映させることが難しい。例えば、補聴器本体のスイッチで調整を行う補聴器で、ユーザが補聴処理を切り替えたいと思った場合、ユーザは、手探りで、又は鏡などを用いて、スイッチの位置を確認しなければならない。付属リモコンで調整を行う補聴器で補聴処理を切り替える場合には、付属リモコンを常に携帯し、ポケットなどから取り出して操作する必要がある。したがって、従来のような構成では、ユーザは、スムーズに補聴処理の切り替えを行うことが難しい。
【0011】
また、補聴器が周囲の環境を自動的に判断することにより、環境に応じた「聞こえ」をユーザに提供する場合には、補聴器の誤認識によってユーザが不快な思いをする場合がある。
【0012】
また、ユーザが補聴器の制御を行うために声を出した場合、周囲に聞こえてしまうので、ユーザの心理的抵抗が大きいという課題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、ユーザ個人の意思を身体的及び心理的に負担の少ない方法で補聴器に伝達し、伝達した意思に応じて補聴処理を適切に制御することによって、ユーザの求める「聞こえ」を実現する補聴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る補聴器は、装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器であって、音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、前記入力信号から出力信号を生成する補聴信号処理部と、前記補聴信号処理部によって生成された出力信号を音として出力する出力部と、前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御部とを備え、前記補聴信号処理部は、前記補聴処理制御部によって制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する。
【0015】
これにより、ユーザの周囲にいる他人が聞き取ることが難しい非可聴音に基づいて補聴処理を制御することができるので、ユーザは心理的な抵抗もなく意思を補聴器に伝達することができる。さらに、音により補聴処理を制御することができるので、ユーザが意思を補聴器に伝達する際に、補聴器リモコンをポケットから取り出す、あるいはスイッチの位置を確認する必要がない。つまり、ユーザの身体的な負担を軽減することが可能となる。
【0016】
また、前記マイクロホンは、空気を介して伝わる音を第1入力信号に変換する第1マイクロホンと、前記装用者の体を介して伝わる音を第2入力信号に変換する第2マイクロホンとを含み、前記補聴信号処理部は、前記第1入力信号から出力信号を生成し、前記補聴処理制御部は、前記第2入力信号を用いて非可聴音を検出し、検出した非可聴音に基づいて前記制御情報を生成することが好ましい。
【0017】
これにより、装用者の体を介して伝わる音から非可聴音を検出することができるので、周囲の雑音の大きさに関わりなく非可聴音を検出することが可能となる。
【0018】
また、前記補聴処理制御部は、前記第1入力信号と前記第2入力信号との相関値を算出する相関算出部を備え、前記相関算出部によって算出された相関値が閾値より小さい場合、前記第2入力信号を用いて前記非可聴音を検出することが好ましい。
【0019】
これにより、第1マイクロホンに検出された音と第2マイクロホンに検出された音との相関が低い場合に非可聴音を検出することができるので、非可聴音ではない音を非可聴音として検出する可能性を低減することが可能となる。
【0020】
また、前記相関算出部は、前記第1入力信号のパワーが第1閾値を超えるか否かと、前記第2入力信号のパワーが第2閾値を超えるか否かとを、時間区間ごとに判定し、前記第1入力信号のパワーが第1閾値を超えない、かつ、前記第2入力信号のパワーが第2閾値を超えると判定された時間区間が多いほど値が小さくなるように前記相関値を算出することが好ましい。
【0021】
これにより、第1マイクロホンに検出された音が小さく、第2マイクロホンに検出された音が大きい場合に、第2入力信号を用いて非可聴音を検出することができるので、非可聴音ではない音を非可聴音として検出する可能性を低減することが可能となる。
【0022】
また、前記補聴処理制御部は、第2入力信号から第1入力信号を減算するノイズ抑圧部を備え、前記ノイズ抑圧部によって減算された後の第2入力信号を用いて、前記非可聴音を検出することが好ましい。
【0023】
これにより、第2マイクロホンが検出する音の中に空気を介して伝わる音が雑音として混入していた場合であってもその雑音を除去することができるので、より高精度に非可聴音を検出することが可能となる。また、雑音の混入を抑制するために第2マイクロホンが備える遮音壁などの部材を小型化することができるので、補聴器本体の小型化も可能となる。
【0024】
また、本発明に係る集積回路は、装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器に用いられる集積回路であって、前記補聴器は、音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、出力信号を音として出力する出力部とを備え、前記集積回路は、前記入力信号から前記出力信号を生成する補聴信号処理部と、前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御部とを備え、前記補聴処理制御部は、前記補聴処理制御部によって制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する。
【0025】
また、本発明に係る補聴処理方法は、装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器に用いられる補聴処理方法であって、前記補聴器は、音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、出力信号を音として出力する出力部とを備え、前記補聴処理方法は、前記入力信号から前記出力信号を生成する補聴信号処理ステップと、前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御ステップとを含み、前記補聴信号処理ステップでは、前記補聴処理制御ステップにおいて制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する。
【0026】
なお、本発明は、このような補聴処理方法として実現することができるだけでなく、補聴処理方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体又はインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのはいうまでもない。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る補聴器は、ユーザの周囲にいる他人が聞き取ることが難しい非可聴音に基づいて補聴処理を制御するため、ユーザは心理的な抵抗もなく意思を補聴器に伝達することができる。さらに、本発明に係る補聴器は、音により補聴処理を制御するため、ユーザが意思を補聴器に伝達する際に、補聴器リモコンをポケットから取り出す、あるいはスイッチの位置を確認する必要がない。つまり、本発明に係る補聴器は、ユーザの身体的な負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係る補聴器の一例を示す外観図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る補聴器の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る補聴器の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る補聴器の機能構成を示すブロック図である。
【図5】意図情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】制御情報テーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る補聴器の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の補聴器の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について、以下に説明する。
【0031】
本実施の形態に係る補聴器10は、本体又は補聴器リモコンに備えられたスイッチからの入力信号にしたがって補聴処理を制御するのではなく、非可聴音に基づいて信号処理を制御する点に特徴を有する。また、本実施の形態に係る補聴器10は、ユーザの体を介して伝わる音を示す第2入力信号を用いて非可聴音を検出する点にも特徴を有する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態1に係る補聴器10の一例を示す外観図である。図1に示すように、本実施の形態では、一例として、耳掛け型の補聴器10について説明する。補聴器10は、気導マイクロホン11と、接触型マイクロホン12と、レシーバ16と、筐体19とから構成される。
【0033】
気導マイクロホン11は、空気中を伝わる振動を検出することにより、音を電気信号に変換する。なお、図1では、補聴器10は、気導マイクロホン11を2つ備えているが、本発明に係る補聴器は、1つあるいは3つ以上の気導マイクロホンを備えてもよい。
【0034】
接触型マイクロホン12は、ユーザの体内又は体表を伝わる振動を検出することにより、音を電気信号に変換する。したがって、ユーザの皮膚と接触型マイクロホン12とが隙間なく密着するように、ユーザは補聴器10を装着する必要がある。そこで、接触型マイクロホン12とユーザの皮膚との接触面、又は筐体19とユーザの皮膚との接触面には、粘着性を有する素材が用いられることが望ましい。この構成により、補聴器10は、従来のように耳に掛けることによって固定されるだけではなく、皮膚と粘着性のある素材との接着によって固定される。つまり、ユーザは、従来よりも自由な位置に補聴器10を装着することが可能となる。
【0035】
なお、本発明に係る補聴器は、必ずしも接触面に粘着性のある素材を用いる必要はない。例えば、ユーザが補聴器を装着するときに皮膚と接触型マイクロホン12との間に空気の層が生じなければ、小型の専用器具などを用いて補聴器をユーザに固定しても構わない。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態1に係る補聴器10の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、補聴器10は、気導マイクロホン11と、接触型マイクロホン12と、補聴処理制御部14と、補聴信号処理部15と、レシーバ16とを備える。
【0037】
気導マイクロホン11は、第1マイクロホンの一例であり、空気を介して伝わる音を第1入力信号に変換する。
【0038】
接触型マイクロホン12は、第2マイクロホンの一例であり、ユーザの体を介して伝わる音を第2入力信号に変換する。接触型マイクロホン12は、例えば、ユーザの骨の振動を検出する骨伝導マイクロホン、あるいはユーザの皮膚の振動を検出する肉伝導マイクロホンである。
【0039】
補聴処理制御部14は、ユーザが発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音を、第2入力信号を用いて検出し、検出した非可聴音に基づいて信号処理を制御するための制御情報を生成する。ここで、外部とは、ユーザの周囲にいるユーザ以外の者を意味する。したがって、非可聴音とは、ユーザが発した小さな音であって、ユーザの周囲にいる者が聞き取ることが難しい音を意味する。具体的には、非可聴音は、例えば、ユーザが意識的若しくは無意識に発するつぶやき声、ユーザが口腔内で意識的に発した音(歯をカチカチとさせる音、舌打ちなど)、又はユーザの頭髪若しくは皮膚と、補聴器との摩擦音などである。
【0040】
具体的には、補聴処理制御部14は、例えば、第2入力信号に対してケプストラム分析などを行うことにより、第2入力信号に言語情報が含まれているか否かを判定する。ここで、補聴処理制御部14は、言語情報が含まれていると判定した場合、ユーザが発した言語を認識し、認識した言語に応じた制御情報を生成する。一方、言語情報が含まれていないと判定した場合、補聴処理制御部14は、特定の周波数帯域のスペクトルを分析することにより、歯をカチカチとさせる音などの非可聴音を検出し、検出した音に応じた制御情報を生成する。なお、言語情報の有無を判定する処理と、舌打ちや歯を合わせる音などの特徴音を検出する処理は、どちらが先に行われてもよいし、同時並行で行われてもよい。また、補聴処理のプログラムモードに応じて、処理の順序や、どちらかの処理だけを行うかなどを決定させる構成であってもよい。
【0041】
補聴信号処理部15は、第1入力信号から出力信号を生成する。また、補聴処理制御部14によって制御情報が生成された場合は、補聴信号処理部15は、生成された制御情報にしたがって、第1入力信号から出力信号を生成する。具体的には、補聴信号処理部15は、指向性機能又は雑音抑圧機能などによって実現される信号処理を第1入力信号に施すとともに、所定の音圧レベルで音が出力されるように第1入力信号を増幅する。ここで指向性機能とは、複数の気導マイクロホン11のそれぞれから出力される第1入力信号に生じる時間差が音の伝わる方向によって異なることを利用して、特定の方向から伝わる音の感度を高める機能である。また、雑音抑圧機能とは、第1入力信号に含まれる特定のパターンの信号を雑音としてカットし、出力信号のSN比を向上させる機能である。
【0042】
レシーバ16は、出力部の一例であり、出力信号を音として出力する。具体的には、レシーバ16は、例えば、イヤホンであり、ユーザの耳へ音を出力する。また、例えば、レシーバ16は、ユーザの体を振動させることによって音をユーザへ出力する骨伝導スピーカーであってもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された本実施の形態に係る補聴器10の各種動作について説明する。
【0044】
図3は、本発明の実施の形態1に係る補聴器10の動作を示すフローチャートである。
まず、気導マイクロホン11は、ユーザ以外の者が発する声又はユーザの周囲にある音である環境音(静かな室内音、屋外の騒音など)などを含む、空気中を伝わる音を、第1入力信号に変換する(ステップS101)。
【0045】
また、接触型マイクロホン12は、非可聴音などを含む、ユーザの体内又は体表を伝わる音を、第2入力信号に変換する(ステップS102)。この非可聴音は、ユーザ以外の者が聞き取ることが難しいほど小さな音であるため、気導マイクロホン11には非常に検出されにくい音である。また、接触型マイクロホン12では、音を検出するマイクロホンユニットが外部遮音壁で覆われているため、外部からの雑音は遮断されている。したがって、接触型マイクロホン12で検出される音にのみ非可聴音が含まれる。
【0046】
次に、補聴処理制御部14は、非可聴音に基づいて、補聴信号処理部15が行う補聴処理を制御するための制御情報を生成する。そして、補聴処理制御部14は、生成した制御情報を補聴信号処理部15へ送信する(ステップS103)。
【0047】
具体的には、補聴処理制御部14は、接触型マイクロホン12によって生成された第2入力信号を用いて非可聴音を検出し、検出した非可聴音に基づいて制御情報を生成する。例えば、補聴処理制御部14は、プログラムモードの名称をユーザがつぶやいたときの声を非可聴音として検出した場合、検出した非可聴音に含まれる言語が示すプログラムモードへ変更することを指示する制御情報を生成する。また、例えば、補聴処理制御部14は、ユーザが歯をカチカチと2度合わせる音を非可聴音として検出した場合、出力信号の生成の中断を指示する制御情報を生成する。
【0048】
また、例えば、補聴処理制御部14は、頭髪又は皮膚と補聴器10との摩擦音を頻繁に検出した場合、指向性機能を無効にする制御情報を補聴信号処理部15へ送信する。このように頭髪又は皮膚と補聴器10との摩擦音が頻繁に検出されるときは、ユーザの頭部が頻繁に動いていることを意味する。つまり、ユーザが周囲の音を探すために無意識で頭部を頻繁に動かしている可能性が高い。このような場合に、補聴処理制御部14が指向性機能を無効にする制御情報を生成することで、ユーザの置かれた状況やユーザの心理に合う「聞こえ」を提供することができる。
【0049】
次に、補聴信号処理部15は、補聴処理制御部14から受信した制御情報にしたがって、気導マイクロホン11から入力された第1入力信号から出力信号を生成する。そして、補聴信号処理部15は、生成した出力信号をレシーバ16へ出力する(ステップS104)。例えば、補聴信号処理部15は、ボリュームを下げる指示を示す制御情報を受信した場合、レシーバ16から出力される音の音圧レベルが所定値下がるように、入力信号を増幅する際の増幅率を小さくする。
【0050】
最後に、レシーバ16は、出力信号を音として出力する(ステップS105)。
以上のように、本実施の形態に係る補聴器10は、ユーザの周囲にいる他人が聞き取ることが難しい非可聴音に基づいて補聴処理を制御することができるので、ユーザは心理的な抵抗もなく自らの意思を補聴器に伝達することができる。さらに補聴器10は、音により補聴処理を制御することで、ユーザが意思を補聴器に伝達する際に、補聴器リモコンをポケットから取り出す、あるいはスイッチの位置を確認するなどの必要がないので、ユーザの身体的な負担を軽減できる。
【0051】
また、補聴器10は、接触型マイクロホン12を備えることにより、装用者の体を介して伝わる音から非可聴音を検出することができるので、周囲の雑音の大きさに関わりなく非可聴音を検出することが可能となる。
【0052】
ところで、非可聴音には、人間が無意識的に発する声であり、主に他人に聞かれたくない場合に発する声であるつぶやき声などが含まれる。他人に発信する目的ではないのに思わず声に出してしまう、といった場合に生じることが多いつぶやき声には、ユーザの感情が強く反映されている場合が多い。したがって、ユーザが意図的に発する音に加えて、ユーザが無意識に発する音が多く含まれる非可聴音を用いて補聴処理を制御することにより、補聴器10は、ユーザの感情あるいは意思を補聴処理に反映することができる。つまり、補聴器10は、非可聴音を検出することによってユーザの感情あるいは意思を検出することが可能となるので、ユーザが求める「聞こえ」を実現することが可能となる。
【0053】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、以下に説明する。
【0054】
図4は、本発明の実施の形態2に係る補聴器20の機能構成を示すブロック図である。図4において、図2に示す実施の形態1の補聴器10と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0055】
図4に示すように、補聴処理制御部21は、相関算出部22と、ノイズ抑圧部23と、意図認識部24と、意図情報記憶部25と、環境認識部26と、音声認識部27と、制御情報生成部28と、制御情報記憶部29とを備える。
【0056】
相関算出部22は、気導マイクロホン11から出力された第1入力信号と接触型マイクロホン12から出力された第2入力信号との相関値を算出する。具体的には、相関算出部22は、第1入力信号のパワーが第1閾値を超えるか否かと、第2入力信号のパワーが第2閾値を超えるか否かとを、時間区間ごとに判定する。そして、相関算出部22は、第1入力信号のパワーが第1閾値を超えない、かつ、第2入力信号のパワーが第2閾値を超えると判定された時間区間が多いほど値が小さくなるように相関値を算出する。
【0057】
ノイズ抑圧部23は、第2入力信号から第1入力信号を減算する。すなわち、ノイズ抑圧部23は、第2入力信号から第1入力信号を減算することにより、第2入力信号に混入した空気を介して伝わった音の成分を除去する。なお、異なる種類のマイクロホンから入力される第1入力信号と第2入力信号の伝達特性には差があるため、この減算は、その差に基づいてどちらか一方又は両方の信号に適切なゲインをかけてから行うとよい。
【0058】
意図認識部24は、相関算出部22によって算出された相関値が閾値より小さい場合、第2入力信号を用いて非可聴音を検出する。そして、意図認識部24は、検出された非可聴音が示す特徴から装用者の意図を推定する。具体的には、意図認識部24は、例えば、第2入力信号に対してケプストラム分析などを行うことにより、第2入力信号に言語情報が含まれているか否かを判定する。ここで、意図認識部24は、言語情報が含まれていると判定した場合、ユーザが発した言語を認識し、認識した言語を非可聴音として検出する。一方、言語情報が含まれていないと判定した場合、意図認識部24は、特定の周波数帯域のスペクトルを分析することにより、歯をカチカチとさせる音などを非可聴音として検出する。そして、意図認識部24は、意図情報記憶部25に記憶された意図情報テーブル25aを参照することにより、検出した非可聴音の特徴(言語、音の種類など)に対応する意図情報を取得する。
【0059】
意図情報記憶部25は、非可聴音の特徴を示す非可聴音情報とユーザの意図を示す意図情報との対応関係を記憶している。具体的には、意図情報記憶部25には、例えば、意図情報テーブル25aが記憶されている。意図情報テーブル25aの詳細は、図5を用いて後述する。
【0060】
環境認識部26は、第1入力信号における騒音の大きさを判定する。具体的には、環境認識部26は、第1入力信号のパワースペクトルを全帯域について加算した総パワーを算出する。そして、環境認識部26は、算出した総パワーが閾値を超えるか否かを判定することにより、騒音の大小を判定する。なお、環境認識部26は、平滑化フィルタを用いて第1入力信号に含まれるノイズ成分を除去した後に、総パワーを算出してもよい。また、環境認識部26は、複数の閾値を用いて、騒音の大きさを「大」、「中」及び「小」などの複数段階のレベルで判定してもよい。
【0061】
音声認識部27は、第1入力信号における言語情報の有無を判定する。具体的には、音声認識部27は、例えば、第1入力信号に対してケプストラム分析を行うことにより、気導マイクロホン11が検出した音の中に人の会話が含まれているか否かを判定する。
【0062】
制御情報生成部28は、意図認識部24によって推定されたユーザの意図と、環境認識部26によって判定された騒音の大きさと、音声認識部27によって判定された言語情報の有無とに応じて制御情報を生成する。具体的には、制御情報生成部28は、制御情報記憶部29に記憶された制御情報テーブル29aを参照し、意図認識部24によって推定されたユーザの意図と、環境認識部26によって判定された騒音の大きさと、音声認識部27によって判定された言語情報の有無とに対応する制御情報を取得する。
【0063】
制御情報記憶部29は、ユーザの意図を示す意図情報、騒音の大きさを示す騒音情報、及び言語情報の有無を示す音声情報と、制御情報との対応関係を記憶している。具体的には、制御情報記憶部29には、例えば、制御情報テーブル29aが記憶されている。制御情報テーブル29aの詳細は、図6を用いて後述する。
【0064】
図5は、意図情報テーブル25aの一例を示す図である。図5に示すように、意図情報テーブル25aには、非可聴音情報と意図情報とが格納される。
【0065】
非可聴音情報は、非可聴音の特徴を示す情報である。意図情報は、ユーザの意図を示す情報である。図5に示す意図情報テーブル25aは、例えば、非可聴音が「うるさいなぁ」あるいは「小さく」という言語である場合、ユーザの意図は、「騒音が大きすぎる」であることを示す。また、意図情報テーブル25aは、非可聴音が歯をカチカチと合わせた音である場合、ユーザの意図は、「すべての機能を無効にしたい」であることを示す。
【0066】
図6は、制御情報テーブル29aの一例を示す図である。図6に示すように、制御情報テーブル29aには、意図情報、騒音情報、音声情報及び制御情報が格納される。
【0067】
意図情報は、図5に示した意図情報と同様であり、ユーザの意図を示す情報である。騒音情報は、周囲の騒音の大きさを示す情報である。音声情報は、言語情報の有無を示す情報である。制御情報は、補聴処理を制御するための情報である。図6に示す制御情報テーブル29aは、例えば、ユーザの意図が「会話を聞き取れない」であり、かつ周囲の騒音の大きさが「大」であり、かつ周囲の音声が「有り」である場合、補聴処理を制御するための情報が「雑音抑圧機能の最大化」であることを示す。
【0068】
以上のように構成された本実施の形態に係る補聴器20の各種動作について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る補聴器20の動作を示すフローチャートである。図7において、図3と同じ処理については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0069】
ステップS102の処理に続いて、相関算出部22は、気導マイクロホン11から出力された第1入力信号と接触型マイクロホン12から出力された第2入力信号との相関値を算出する(ステップS201)。
【0070】
具体的には、相関算出部22は、第1入力信号の総パワーを時間区間ごとに算出し、算出した各総パワーが第1閾値を超えるか否かを判定する。さらに、相関算出部22は、第2入力信号の総パワーを時間区間ごとに算出し、算出した各総パワーが第2閾値を超えるか否かを判定する。ここで、相関算出部22は、第1入力信号の総パワーが第1閾値を超えない、かつ第2入力信号の総パワーが第2閾値を超える場合、当該時間区間の個別相関値を「0」と算出し、その他の場合、当該時間区間の個別相関値を「1」と算出する。相関算出部22は、このように算出された個別相関値を加算した値を、時間区間の数で除した値を相関値として算出する。
【0071】
次に、ノイズ抑圧部23は、第2入力信号から第1入力信号を減算する(ステップS202)。続いて、意図認識部24は、相関値が予め定められた閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS203)。ここで、相関値が閾値以上であると判定された場合(ステップS203のNo)、ステップS104の処理を実行する。
【0072】
一方、相関値が閾値より小さいと判定された場合(ステップS203のYes)、意図認識部24は、ステップS202において減算された後の第2入力信号を用いてユーザの意図を推定する(ステップS204)。具体的には、意図認識部24は、例えば、接触型マイクロホン12が検出した音に含まれる言語情報を検出することにより、非可聴音であるつぶやき声が示す言語を認識する。そして、意図認識部24は、意図情報テーブル25aを参照することにより、認識した言語に対応する意図情報を取得する。例えば、認識した言語が「聞こえない」である場合、意図認識部24は、図5に示す意図情報テーブルを参照することにより、ユーザの意図として「会話が聞き取れない」を推定する。
【0073】
次に、環境認識部26は、第1入力信号における騒音の大きさを判定する(ステップS205)。具体的には、環境認識部26は、第1入力信号の総パワーが予め定められた閾値を超えるか否かを判定することにより、騒音の大きさを判定する。例えば、環境認識部26は、第1入力信号の総パワーが予め定められた閾値を超えると判定した場合、騒音が「大」であると判定する。
【0074】
続いて、音声認識部27は、第1入力信号における言語情報の有無を判定する(ステップS206)。具体的には、音声認識部27は、第1入力信号に対してケプストラム分析を行うことにより、第1入力信号に言語情報が含まれるか否かを判定する。
【0075】
次に、制御情報生成部28は、制御情報テーブル29aを参照することにより、ユーザの意図、騒音の大きさ、及び言語情報の有無に対応する制御情報を生成する(ステップS207)。例えば、ユーザの意図が「会話が聞き取れない」であり、かつ騒音の大きさが「大」であり、かつ言語情報が「有り」である場合、制御情報生成部28は、図6に示す制御情報テーブル29aを参照し、「雑音抑圧機能の最大化」を制御情報として生成する。
【0076】
以上のように、本実施の形態に係る補聴器20は、気導マイクロホン11が検出した音と、接触型マイクロホン12が検出した音との両方を用いて非可聴音を検出する。気導マイクロホン11は、ユーザ以外の者が発した声又はユーザの周囲の環境音などに加えて、ユーザが発する通常の大きさの声である通常音声及び小声を検出するが、つぶやき声などの非可聴音はパワーが小さいため検出することができない。一方、接触型マイクロホン12は、体表を振動として伝わる、通常音声から非可聴音までのユーザが発したすべての声を検出する。したがって、第1入力信号と第2入力信号との相関値が大きい場合は、ユーザが通常音声などの非可聴音ではない音声を発している可能性が高い。一方、相関値が小さい場合は、接触型マイクロホン12のみに検出される非可聴音をユーザが発している可能性が高い。そこで、補聴器20は、相関値が小さい場合のみ、接触型マイクロホン12から出力された第2入力信号を分析することにより、ユーザが発した非可聴音のみに基づいて補聴処理の制御を行うことができる。つまり、本実施の形態に係る補聴器20は、第1入力信号と第2入力信号との相関値が小さい場合にのみ非可聴音を検出するので、他人にも聞こえる音を非可聴音として検出する可能性を低減することが可能となる。
【0077】
また、補聴器20は、第2入力信号から第1入力信号を減算処理することにより、第2入力信号に混入した雑音を除去することが可能となる。一般的に、接触型マイクロホン12において、空気を介して伝わる音が雑音として混入することを防ぐために、振動センサは外部遮音壁で覆われることが多い。しかし、補聴器は非常に小さな機器であることから、マイクロホンの小型化を実現するために、外部遮音壁は小さいことが望ましい。ただし、外部遮音壁が小さい場合、雑音が混入する可能性が高まる。ここで、補聴器がノイズ抑圧部23を備える場合、ノイズ抑圧部23が、第2入力信号から第1入力信号を減算することにより、第2入力信号に含まれる雑音成分を除去することができる。したがって、補聴器がノイズ抑圧部23を備える場合、接触型マイクロホン12の外部遮音壁を小さくすることが可能となる。すなわち、本実施の形態に係る補聴器20は、ノイズ抑圧部23を備えることにより接触型マイクロホンを小型化することができるので、補聴器本体の小型化を実現することができる。
【0078】
以上、本発明に係る補聴器について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、又は異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0079】
例えば、実施の形態2において、ノイズ抑圧部23は、単に、第1入力信号と第2入力信号との減算処理を行うだけであったが、第1入力信号又は第2入力信号に対して伝達関数補正などの信号処理を施した後に減算処理を行ってもよい。
【0080】
また、実施の形態2において、相関算出部22は、第1入力信号及び第2入力信号の総パワーを用いて相関値を算出していたが、特定の周波数帯域のパワーを用いて相関値を算出してもよい。さらに、相関算出部22は、周波数帯域ごとのパワーを用いて相関値を算出してもよい。また、相関算出部22は、第1入力信号又は第2入力信号に対して伝達関数補正などの信号処理を施した後に相関値を算出してもよい。また、相関算出部22は、適応フィルタを利用し、適応フィルタ係数やエラー信号の収束・発散度合いを閾値等に基づいて判定してもよいし、統計的に用いられる相関係数を算出し、その相関係数を閾値判別してもよい。
【0081】
また、実施の形態2において、意図認識部24は、相関値が予め定められた閾値より小さい場合にユーザの意図を推定したが、第1入力信号又は第2入力信号が示す特徴に応じて閾値を変動させてもよい。例えば、意図認識部24は、第1入力信号から騒音の大きさを検出し、検出した騒音の大きさが大きいほど閾値が大きくなるように、閾値を決定してもよい。これにより、ロンバード効果と呼ばれる発話歪みが発生し、無意識的にユーザの発声音量が増加する高騒音下であっても、非可聴音を正確に検出することが可能となる。
【0082】
また、上記実施の形態において、補聴器は、非可聴音に基づいて補聴処理を制御したが、従来用いられる補聴器リモコンを併用してもよい。非可聴音と補聴器リモコンから出力される制御信号とを併用して補聴器の制御を行う場合、補聴処理制御部と補聴器リモコンとのそれぞれに、非可聴音モードとリモコンモードとを切り替えるための機能を備えることが好ましい。ここで、非可聴音モードとは、非可聴音に基づいて補聴処理を制御するモードである。一方、リモコンモードとは、補聴器リモコンから出力される制御信号に基づいて補聴処理を制御するモードである。例えば、非可聴音モードである場合、騒音が大きい又は小さいなどの周囲の環境に関わらず、ユーザが『切り替え』と非可聴な声でつぶやいたとき、補聴処理制御部は、非可聴音を検出し、リモコンモードへ切り替える。逆に、リモコンモードである場合、ユーザが補聴器リモコンに設けられた「操作切り替えスイッチ」を押下したとき、補聴処理制御部は、補聴器リモコンから出力される制御信号にしたがって、非可聴音モードに切り替える。なお、非可聴音モードでは、補聴処理制御部は、補聴器リモコンから出力される制御信号を受け付けない。一方、リモコンモードでは、補聴処理制御部は、非可聴音を検出しない。
【0083】
また、上記の補聴器を構成する構成要素の一部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。例えば、図2に示すように、補聴処理制御部14及び補聴信号処理部15は、1個のシステムLSI30から構成されてもよい。また、例えば、図4に示すように、補聴処理制御部21及び補聴信号処理部15は、1個のシステムLSI31から構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、ユーザの意思に応じて補聴処理を制御することができる補聴器として、特に、環境に応じて補聴処理を変更することによってユーザへよりよい「聞こえ」を提供することができる環境適応型補聴器に有用である。
【符号の説明】
【0085】
10、20、100 補聴器
11、111 気導マイクロホン
12 接触型マイクロホン
14、21、114 補聴処理制御部
15、115 補聴信号処理部
16、116 レシーバ
19 筐体
22 相関算出部
23 ノイズ抑圧部
24 意図認識部
25 意図情報記憶部
25a 意図情報テーブル
26 環境認識部
27 音声認識部
28 制御情報生成部
29 制御情報記憶部
29a 制御情報テーブル
30、31 システムLSI
200 補聴器リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器であって、
音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、
前記入力信号から出力信号を生成する補聴信号処理部と、
前記補聴信号処理部によって生成された出力信号を音として出力する出力部と、
前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御部とを備え、
前記補聴信号処理部は、前記補聴処理制御部によって制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する
補聴器。
【請求項2】
前記マイクロホンは、
空気を介して伝わる音を第1入力信号に変換する第1マイクロホンと、
前記装用者の体を介して伝わる音を第2入力信号に変換する第2マイクロホンとを含み、
前記補聴信号処理部は、前記第1入力信号から出力信号を生成し、
前記補聴処理制御部は、前記第2入力信号を用いて非可聴音を検出し、検出した非可聴音に基づいて前記制御情報を生成する
請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
前記補聴処理制御部は、
前記第1入力信号と前記第2入力信号との相関値を算出する相関算出部を備え、
前記相関算出部によって算出された相関値が閾値より小さい場合、前記第2入力信号を用いて前記非可聴音を検出する
請求項2に記載の補聴器。
【請求項4】
前記相関算出部は、前記第1入力信号のパワーが第1閾値を超えるか否かと、前記第2入力信号のパワーが第2閾値を超えるか否かとを、時間区間ごとに判定し、前記第1入力信号のパワーが第1閾値を超えない、かつ、前記第2入力信号のパワーが第2閾値を超えると判定された時間区間が多いほど値が小さくなるように前記相関値を算出する
請求項3に記載の補聴器。
【請求項5】
前記補聴処理制御部は、
第2入力信号から第1入力信号を減算するノイズ抑圧部を備え、
前記ノイズ抑圧部によって減算された後の第2入力信号を用いて、前記非可聴音を検出する
請求項2〜4のいずれか1項に記載の補聴器。
【請求項6】
前記補聴処理制御部は、
検出された前記非可聴音が示す特徴から装用者の意図を推定する意図認識部と、
前記意図認識部によって推定された装用者の意図に応じて前記制御情報を生成する制御情報生成部とを備える
請求項1〜5のいずれか1項に記載の補聴器。
【請求項7】
前記補聴処理制御部は、さらに、
前記第1入力信号における騒音の大きさを判定する環境認識部と、
前記第1入力信号における言語情報の有無を判定する音声認識部とを備え、
前記制御情報生成部は、前記意図認識部によって推定された前記装用者の意図と、前記環境認識部によって判定された騒音の大きさと、前記音声認識部によって判定された言語情報の有無とに応じて前記制御情報を生成する
請求項6に記載の補聴器。
【請求項8】
装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器に用いられる集積回路であって、
前記補聴器は、
音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、
出力信号を音として出力する出力部とを備え、
前記集積回路は、
前記入力信号から前記出力信号を生成する補聴信号処理部と、
前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御部とを備え、
前記補聴処理制御部は、前記補聴処理制御部によって制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する
集積回路。
【請求項9】
装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器に用いられる補聴処理方法であって、
前記補聴器は、
音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、
出力信号を音として出力する出力部とを備え、
前記補聴処理方法は、
前記入力信号から前記出力信号を生成する補聴信号処理ステップと、
前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御ステップとを含み、
前記補聴信号処理ステップでは、前記補聴処理制御ステップにおいて制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する
補聴処理方法。
【請求項10】
装用者に装着され、当該装用者の聴覚補償を行う補聴器が備えるコンピュータに処理を実行させるためのプログラムであって、
前記補聴器は、
音を入力信号に変換する少なくとも1つのマイクロホンと、
出力信号を音として出力する出力部とを備え、
前記プログラムは、
前記入力信号から前記出力信号を生成する補聴信号処理ステップと、
前記装用者が発する音であって外部から非可聴な音である非可聴音に基づいて、信号処理を制御するための制御情報を生成する補聴処理制御ステップとを前記コンピュータに実行させ、
前記補聴信号処理ステップでは、前記補聴処理制御ステップにおいて制御情報が生成された場合、生成された制御情報にしたがって前記出力信号を生成する
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11447(P2010−11447A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123100(P2009−123100)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)