説明

補間フレーム生成装置及び方法

【課題】 補間フレームのオクルージョン領域に画素を適切に補間することができる補間フレーム生成方法を提供することにある。
【解決手段】 補間フレーム生成方法においては、第1参照フレームから第2参照フレームへの第1動きベクトルが動き推定部101によって推定される。補間フレーム生成部102は、第1動きベクトルに基づいて画素値及び第2動きベクトルを割り当てることで、補間フレームを生成する。補間フレームに生じたオクルージョン領域がオクルージョン検出部103によって検出される。オクルージョンフィルタリング部104は、オクルージョン領域と非オクルージョン領域との連続性を判定し、連続性を有する非オクルージョン領域に割り当てられている第2動きベクトルに基づいて、オクルージョン領域に対して第1及び第2参照フレームのいずれか一方から画素値を割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像のフレーム間に内挿する補間フレームを生成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及びエレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示装置は、動画像を滑らかに表示させるために、動画像のフレーム間に補間フレームを内挿して、単位時間当たりのフレーム数を増大させる補間フレーム生成装置を備えている。このような補間フレーム生成装置は、連続する2つのフレーム間の相関に主に基づいて、フレーム間に内挿する補間フレームを生成している。補間フレームの生成に関しては、補間フレームに発生するオクルージョン領域に画素を補間することは困難とされる。
【0003】
特許文献1には、動画像の複数のフレームから、静止している領域を背景領域と判定し、背景領域と判定した静止領域から背景画像を生成してこれを蓄積し、補間フレームのオクルージョン領域に蓄積してある背景画像を使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、静止している領域に発生するオクルージョン領域に対して、画素を補間することができるが、動いている領域に発生するオクルージョン領域に対して、適用することができない問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、補間フレームのオクルージョン領域に画素を適切に補間することができる補間フレーム生成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る、第1参照フレームと、前記第1参照フレームとは異なる時刻に表示すべき第2参照フレームとの間の時刻に内挿される補間フレームを生成する補間フレーム生成装置は、前記第1参照フレーム内の第1ブロックと、前記第2参照フレーム内のブロックとの相関値を求め、その中で最も前記相関値の高い第2ブロックを探索し、前記第1ブロックの位置と、前記第2ブロックの位置とをむすぶ第1動きベクトルを求める動き推定部と、前記第1動きベクトルで特定される前記補間フレーム内の第1画素位置に、前記第1参照フレーム及び/又は前記第2参照フレームの画素値から求まる第1の画素値を割り当て、さらに、前記第1画素位置に、この第1画素位置を始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる補間フレーム生成部と、前記補間フレーム上でオクルージョン領域を検出するオクルージョン領域検出部と、前記オクルージョン領域に画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部であって、前記オクルージョン領域の周辺に位置する非オクルージョン領域に割り当てられている第2動きベクトルを第3動きベクトルとして前記非オクルージョン領域に割り当て、前記第3動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第2の画素値と、前記非オクルージョン領域に割り当てられている前記第2動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第3の画素値との間の相異度に基づいて、前記第2動きベクトルを重み付け加算した第4動きベクトルを前記オクルージョン領域に割り当て、前記オクルージョン領域に、前記第4動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第4の画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部と、を具備する。
【0008】
本発明の他の態様に係る、第1参照フレームと、前記第1参照フレームとは異なる時刻に表示すべき第2参照フレームとの間の時刻に内挿される補間フレームを生成する補間フレーム生成方法は、前記第1参照フレーム内の第1ブロックと、前記第2参照フレーム内のブロックとの相関値を求め、その中で最も前記相関値の高い第2ブロックを探索し、前記第1ブロックの位置と、前記第2ブロックの位置とをむすぶ第1動きベクトルを求める算出ステップと、前記第1動きベクトルで特定される前記補間フレーム内の第1画素位置に、前記第1参照フレーム及び/又は前記第2参照フレームの画素値から求まる第1の画素値を割り当てる第1割当ステップと、前記第1画素位置に、この第1画素位置を始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる第2割当ステップと、前記補間フレーム上でオクルージョン領域を検出する検出ステップと、前記オクルージョン領域に画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部であって、前記オクルージョン領域の周辺に位置する非オクルージョン領域に割り当てられている第2動きベクトルを第3動きベクトルとして前記非オクルージョン領域に割り当て、前記第3動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第2の画素値と、前記非オクルージョン領域に割り当てられている前記第2動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第3の画素値との間の相異度に基づいて、前記第2動きベクトルを重み付け加算した第4動きベクトルを前記オクルージョン領域に割り当てる第3割当ステップと、前記オクルージョン領域に、前記第4動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第4の画素値を割り当てる第4割当ステップと、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補間フレームに発生するオクルージョン領域に適切な画素値を割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る補間フレーム生成装置の構成を示す概略図である。
【図2】補間フレームと参照フレームの関係を示す図である。
【図3】補間フレーム生成装置が補間フレームを生成する手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1動きベクトルを推定する他の方法を説明するための図である。
【図5】Coveredオクルージョン領域を検出する方法を説明するための図である。
【図6】オクルージョンフィルタリング処理を説明するための図である。
【図7】オクルージョンフィルタリング処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る補間フレーム生成装置及び方法を説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る補間フレーム生成装置100の構成を概略的に示している。動画像の画像信号(動画像信号)は、動き推定部101及びフレームメモリ105に入力される。フレームメモリ105は、入力された画像信号を、フレーム毎に一時的に記憶する。これにより、補間フレーム生成装置100内に設けられた動き推定部101、補間フレーム生成部102、オクルージョン領域検出部103、及びオクルージョンフィルタリング部104の各々は、同時に複数のフレームを参照することができる。
【0013】
図1の補間フレーム生成装置100は、連続する(即ち、時間的に隣接する)2つの参照フレーム間に内挿する補間フレームを生成し、それを2つの参照フレーム間に内挿補間する。補間フレーム生成装置100から出力される画像信号は、単位時間当たりのフレーム数が入力画像信号より増加した信号となる。例えば、入力画像信号が60Hzのノンインタレース信号(プログレッシブ信号)である場合、補間フレーム生成装置100は、生成した補間フレームを参照フレーム間の時間的中央位置に内挿して、120Hzのノンインタレース信号に変換する。
【0014】
本実施形態では、連続する2つの参照フレーム間に1つの補間フレームを内挿する例を説明する。参照フレーム間に内挿する補間フレームの数は、2以上であってもよい。また、本実施形態は、入力される動画像の解像度、大きさ及びフレームレートに限定されることなく、適用されることができる。さらに、第1及び第2参照フレームは、連続するフレームである例に限定されず、互いに異なる時間に表示されるフレームであればよい。
【0015】
本実施形態では、図2に示されるように、補間フレームqを内挿する2つのフレームを参照フレームp1及びp2とする。なお、各フレームは2次元画像であるが、図2、図4及び図5においては、説明を簡単にするために、各フレームが1次元画像であるように模式的に示されている。参照フレームp1(第1参照フレームともいう)は、時刻tのフレームであり、また、参照フレームp2(第2参照フレームともいう)は、参照フレームp1に連続する時刻t+1のフレームである。また、補間フレームqを内挿する時間位置をΔtとする。ただし、時間位置Δtは、参照フレームp1、p2間の時間間隔を1として、参照フレームp1及び補間フレームq間の時間間隔を示す。従って、0≦Δt≦1を満たす。
【0016】
また、フレーム内の画素の位置を位置(x,y)で表わす。参照フレームp1内の位置(x,y)の画素が有する画素値をI(x,y)とし、参照フレームp2内の位置(x,y)の画素が有する画素値をIt+1(x,y)とする。さらに、補間フレーム内の画素位置(x,y)に割り当てられる画素値をImc(x,y)とする。本実施形態では、画素値が輝度値であるとして、即ち、スカラー量として、以下の各式に示されているが、画素値として、例えば赤、緑及び青に関する色の情報を持ったベクトル量が使用されてもよい。
【0017】
フレーム補間に関しては、以下に説明するようなオクルージョン(隠面:occlusion)問題がある。図2では、参照フレームp1から参照フレームp2にかけて、オブジェクトが上に移動し、背景が下に移動する例を示している。このように、参照フレームp1、p2間でオブジェクト及び背景領域が移動する場合、オクルージョン領域が発生する。ここでいうオクルージョン領域とは、補間フレームqに発生する領域であって、補間フレームqを内挿する2つの参照フレームp1、p2のいずれか一方にしか対応する領域が見つからない領域を指す。オクルージョン領域は、図2に示されるように、例えば、移動するオブジェクト周囲に発生する。
【0018】
オクルージョン領域は、Coveredオクルージョン領域及びUncoveredオクルージョン領域を含む。Coveredオクルージョン領域(第1オクルージョン領域ともいう)は、参照フレームp1には対応する画素(領域)が存在するが、参照フレームp2には対応する領域画素(領域)が存在しない画素位置を指す。一例として、参照フレームp1に存在する背景領域が、オブジェクト及び背景領域の少なくとも一方の移動によって、参照フレームp2においてオブジェクトにより隠される場合に、Coveredオクルージョン領域が発生する。
【0019】
Uncoveredオクルージョン領域は、参照フレームp2には対応する画素(領域)が存在するが、参照フレームp1には対応する画素(領域)が存在しない画素位置を指す。一例として、参照フレームp1においてオブジェクトの後方に隠れている背景領域が、オブジェクト及び背景領域の少なくとも一方の移動によって、参照フレームp2において現れる場合に、Uncoveredオクルージョン領域が発生する。
【0020】
補間フレームq上の領域であって、オクルージョン領域を除く領域を非オクルージョン領域と称す。また、参照フレームp1上の領域であって、参照フレームp2に対応する領域が存在しない領域を同様にCoveredオクルージョン領域と称し、参照フレームp2上の領域であって、参照フレームp1に対応する領域が存在しない領域を同様にUncoveredオクルージョン領域と称す。
【0021】
フレーム補間では、参照フレームp1、p2間の相関を使用して参照フレームp1からp2への第1動きベクトルが推定され、推定された第1動きベクトルに基づいて補間フレームqに画素値が割り当てられる。しかしながら、オクルージョン領域に関しては、参照フレームp1、p2のいずれか一方にしか対応する領域が存在しないため、参照フレームp1、p2間の相関に基づいて画素を適切に補間することは困難とされる。本実施形態では、補間フレームq上のオクルージョン領域に対して適切な画素値を補間することにより、高品質の補間フレームを生成する方法を提供する。
【0022】
図1において、入力画像信号は、動き推定部101及びフレームメモリ105に入力される。動き推定部101は、基準となる参照フレームp1から参照フレームp2への第1動きベクトルを推定する。補間フレーム生成部102は、動き推定部101で推定された第1動きベクトルに応じて、補間フレームq内の画素位置に画素値を割り当て、また、第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てて、補間フレームqを生成する。
【0023】
オクルージョン領域検出部103は、補間フレーム生成部102で生成された補間フレームqに発生するオクルージョン領域を検出する。オクルージョンフィルタリング部104は、オクルージョン領域検出部103で検出されたオクルージョン領域に対して、フィルタリングによって動きベクトル(後に説明する第4動きベクトル)及び画素値を割り当てる。
【0024】
図3は、補間フレーム生成装置100が参照フレームp1、p2間に内挿する補間フレームqを生成する手順の一例を示している。
【0025】
まず、図3のステップS301に示されるように、動き推定部101が参照フレームp1から参照フレームp2への第1動きベクトルを求める。動き推定部101は、例えば以下に説明するようなブロックマッチングによって第1動きベクトルを求める。本実施形態では、ブロックマッチングによって第1動きベクトルを推定しているが、これに限定されず、勾配法等の手法を利用して第1動きベクトルを推定してもよい。
【0026】
ブロックマッチングでは、参照フレームp1は、予め設定されたサイズのブロックに分割される。参照フレームp1を分割するブロックは、M画素×M画素からなる矩形の小領域に設定される。動き推定部101は、参照フレームp1を分割した第1ブロックの各々に対して、参照フレームp2内の所定範囲から、第1ブロックと最も相関値の高い第2ブロックを探索する。動き推定部101は、第1ブロックの位置を始点とし、探索した第2ブロックの位置を終点とするベクトルを、参照フレームp1からp2への第1動きベクトルとして求める。さらに、動き推定部101は、第1ブロックに割り当てられた第1動きベクトルを、その第1ブロック内の各画素に割り当てる。
【0027】
位置(i,j)の第1ブロックに割り当てられる動きベクトルu(i,j)は、例えば下記式1に示されるブロックマッチングアルゴリズムに従って求められる。
【数1】

【0028】
式1では、誤差関数Eとしては、下記式2に示されるように、画素値に関する平均絶対値差分(Mean Absolute Difference:MAD)が使用されている。
【数2】

【0029】
このように、動き推定部101は、誤差関数を最小にするu、uの組を求め、即ち、第1ブロックとの相関値が最も大きくなる第2ブロックを指し示すu、uの組を求め、これを第1ブロックに第1動きベクトルとして割り当てる。
【0030】
なお、式1の誤差関数としては、式2に示される平均絶対値差分に限定されず、第1及び第2ブロック間の相関の大きさを評価することができればよく、平均二乗誤差(Mean Squared Error)等を用いてもよい。
【0031】
本実施形態では、第1ブロック内の各画素の動きベクトルは、その第1ブロックの動きベクトルと同一とし、即ち、第1ブロック内の各画素には、下記式3のように、その第1ブロックに割り当てられた第1動きベクトルが割り当てられる。
u(x,y)←u(i,j) 式3
ここで、矢印「←」は、割り当てることを意味する。従って、式3は、位置(i,j)の第1ブロックに割り当てられた第1動きベクトルがそのブロック内の位置(x,y)の画素に割り当てられることを示す。
【0032】
なお、図1の補間フレーム生成装置100は、動き推定部101で第1動きベクトルを検出することなく、例えばMPEG2のような動画像符号化における圧縮のために用いられる動きベクトルを利用してもよい。この場合、補間フレーム生成装置100は、図示しないデコーダで入力画像信号をデコードして、第1動きベクトルを得ることができる。
【0033】
このようにして、動き推定部101は、参照フレームp1から参照フレームp2への動きベクトルを推定する。しかしながら、参照フレームp1上のCoveredオクルージョン領域では、対応する領域が参照フレームp2上に存在しないことから、動きベクトルの推定結果が歪み、その結果、Coveredオクルージョン領域に誤った動きベクトルが割り当てられることがある。これを回避するために、参照フレームp1のCoveredオクルージョン領域には、参照フレームp2と異なる参照フレームとのブロックマッチングによって、動きベクトルが割り当てられてもよい。例えば、図4に示されるように、参照フレームp1上のCoveredオクルージョン領域は、参照フレームp2には対応する領域がないが、連続する時刻t+1の参照フレームp3には対応する領域が存在する。動き推定部101は、ブロックマッチングによって、参照フレームp1から参照フレームp3への動きベクトルmv1を推定し、推定した動きベクトルmv1の逆ベクトルを、参照フレームp1から参照フレームp2への動きベクトルmv2として求める。これにより、参照フレームp1のCoveredオクルージョン領域に正しい動きベクトルを割り当てることができる。
【0034】
図3のステップS302では、補間フレーム生成部102は、第1動きベクトルで特定される補間フレームq内の第1画素位置に、第1及び第2参照フレームp1、p2の少なくとも一方の画素値から求まる画素値を割り当て、さらに、この第1画素位置に、第1画素位置を始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる。補間フレームq内の画素位置には、下記式4のように、第1動きベクトルに従って、参照フレームp1の画素値Iが割り当てられる。
【数3】

【0035】
参照フレームp1、p2では、位置(x,y)の各成分x、yが整数値となる位置に画素が配置されており、補間フレームq内の位置(x,y)の各成分x、yが整数値となる位置に画素値及び動きベクトルが割り当てられるものとする。従って、下記式5に示される位置は、第1動きベクトルu=(u,u)で特定される補間フレームq内の位置から最も近い画素位置を示している。
【数4】

【0036】
補間フレーム生成部102は、補間フレームqに対して、参照フレームp2から、或いは参照フレームp1及びp2の両方から画素値を割り当ててもよい。例えば、下記式6のように、参照フレームp1及びp2に関して、補間フレームqを内挿する時間位置Δtに応じた重み平均を取って算出した画素値が補間フレームq内の画素位置に割り当てられてもよい。
【数5】

【0037】
ステップS303では、補間フレーム生成部102は、下記式7のように、補間フレームqに対して、参照フレームp1に割り当てられている第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる。即ち、補間フレーム生成部102は、補間フレームqを始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる。
【数6】

【0038】
ただし、補間フレームqの各動きベクトルumc(x,y)は、下記式8のように、予め初期化しておく。
【数7】

【0039】
ここで、NULLは、値がまだ割り当てられていないことを意味する。
【0040】
式7に代えて、補間フレーム生成部102は、参照フレームp1内の位置(x,y)の画素に割り当てられた第1動きベクトルの終点を参照フレームp2内の位置(x+u(x,y),y+u(x,y))に固定したまま、始点を補間フレームq内の式5の位置に移動させることで、補間フレームqから参照フレームp2への動きベクトルを第2動きベクトルとして生成してもよい。即ち、補間フレーム生成部102は、第2動きベクトルを、補間フレームqと参照フレームp2との間の時間間隔(1−Δt)に応じた大きさの動きベクトルとして生成してもよい。
【0041】
なお、ステップS302で補間フレームqに画素値を割り当てるより前に、ステップS303において、補間フレームqに第2動きベクトルが割り当てられてもよい。この場合、補間フレームqに割り当てられた第2動きベクトルによって特定される参照フレームp1、p2の少なくとも一方の画素値から求められる画素値が補間フレームq内の画素位置に割り当てられる。
【0042】
図3のステップS304では、オクルージョン領域検出部103は、補間フレーム生成部102が生成した補間フレームqからオクルージョン領域を検出する。補間フレームq上のUncoveredオクルージョン領域は、第2動きベクトルが割り当てられていない画素位置に一致する。オクルージョン領域検出部103は、下記式9を満たす位置(x、y)を、即ち、第2動きベクトルが割り当てられていない位置(x、y)をUncoveredオクルージョン領域として検出する。
【数8】

【0043】
次に、補間フレームqのCoveredオクルージョン領域を検出する方法を説明する。補間フレームqのCoveredオクルージョン領域の検出では、まず、下記式10を満たすような、補間フレームq内の画素位置(x,y)、(x,y)が検出される。即ち、図5に示されるように、補間フレームq内の画素位置(x,y)に割り当てられている第2動きベクトルが指し示す第2参照フレームp2内の画素と、補間フレームq内の他の画素位置(x,y)に割り当てられている第2動きベクトルが指し示す第2参照フレームp2内の画素とが一致するような、補間フレームq内の画素位置(x,y)、(x,y)が検出される。
【数9】

【0044】
次に、下記式10のように、第2動きベクトルによって特定される参照フレームp1の画素と参照フレームp2の画素との間の画素差分値(相違度ともいう)d1、d2が算出される。
【数10】

【0045】
≧dの場合、補間フレームq内の位置(x,y)がCoveredオクルージョン領域と判定され、d<dの場合、補間フレームq内の位置(x,y)がCoveredオクルージョン領域と判定される。Coveredオクルージョン領域と判定された領域からは、割り当てられている画素値及び第2動きベクトルが除去される。
【0046】
ステップS305では、オクルージョンフィルタリング部104は、オクルージョン領域検出部103によって検出されたオクルージョン領域に対して、フィルタリングにより画素を補間する。オクルージョン領域は、隣接するいずれかの領域、例えば、オブジェクト及び背景領域のいずれかの領域と連続する領域であると考えられる。そこで、Coveredオクルージョン領域に関しては、図6に示されるように、参照フレームp2内の画素間の画素差分値によって相関の高さを判定し、この判定結果に応じて補間フレームqのオクルージョン領域がオブジェクト及び背景領域のどちらと連続性が高いかを判定する。
【0047】
ステップS305のオクルージョンフィルタリングの概念を、図6を参照して具体的に説明する。図6において、補間フレームq内の画素位置i−1〜i+2は、Uncoveredオクルージョン領域であり、第2動きベクトルが割り当てられていない。補間フレームq上の非オクルージョン領域である位置i+3には、第2動きベクトルui+3が割り当てられており、この第2動きベクトルui+3が指し示す参照フレームp2内の位置は、位置i+2となっている。また、非オクルージョン領域の位置i−2には、第2動きベクトルui−2が割り当てられており、この第2動きベクトルui−2が指し示す参照フレームp2内の位置は、位置i−4となっている。
【0048】
補間フレームq内の位置iに第2動きベクトル及び画素値を割り当てる場合を例にとって考える。まず、補間フレームq内の位置iに第2動きベクトルui+3を第3動きベクトルとして割り当てると、第3動きベクトルui+3は、参照フレームp2内の位置i+2を指し示す。参照フレームp2内の位置i+2と位置i+5との間の画素差分値di+3は、di+3=|It+1(i+5)−It+1(i+2)|となる。また、補間フレームq内の位置iに第2動きベクトルui−2を第3動きベクトルとして割り当てると、第3動きベクトルui−2は、参照フレームp2内の位置i−2を指し示す。参照フレームp2内の位置i−2と位置i−4との間の画素差分値di−2は、di−2=|It+1(i−4)−It+1(i−2)|となる。これら画素差分値di+3及びdi−2を比較して、差分値di−2が小さい場合、補間フレームq内の位置iが補間フレームq内の位置i−2と高い連続性を有すると判断する。この連続性の判断に基づいて、オクルージョンフィルタリング部104は、補間フレームq内の位置iに、第2動きベクトルui−2を第4動きベクトルとして割り当て、さらに、画素値It+1(i−2)を割り当てる。
【0049】
本実施形態のオクルージョンフィルタリング部104は、後述するように、第2動きベクトルui+3、ui−2に画素差分値di+3及びdi−2の大きさに応じた重み付けをして加算したものを第4動きベクトルとして、補間フレームq内の画素位置iに割り当てる。重みは、画素差分値が大きいほど小さくなるように、例えば、下記式11の第4式に示される重みwのように設定される。
【0050】
図7に示されるように、補間フレームq内の画素位置(x,y)がuncoveredオクルージョン領域である場合、オクルージョンフィルタリング部104は、下記式12のように、uncoveredオクルージョン領域に割り当てる第4動きベクトルを求める。
【数11】

【0051】
ここで、umc(x,y)=(u(x,y),u(x,y))であり、Nはフィルタリングの幅(探索範囲)を示す。上付きのTは、転置を示す。また、σは画素の連続性を評価するためのパラメータであり、このパラメータの値を小さく設定すると、差分値が充分小さくないと連続とは判定されず、大きく設定すると差分値が大きくても連続と判定するようになる。式12の第4式が連続性を評価する項になっている。また式12の第3式は、フィルタリングの対象領域がオクルージョン領域か否かを判定しており、オクルージョン領域の動きベクトル(NULLが入っている)を計算に使用しないようにしている。
【0052】
式12に代えて、オクルージョンフィルタリング部104は、下記式13のように、所定範囲内に割り当てられた第2動きベクトルから重みwが最も大きくなるものを探索し、探索した第2動きベクトルを、補間フレームqを始点とする第4動きベクトルとして画素位置(x,y)に割り当ててもよい。
【数12】

【0053】
続いて、Uncoveredオクルージョン領域の画素には、下記式14のように、参照フレームp2内の画素値であって、式12で求められた第4動きベクトルが指し示す位置の画素値が割り当てられる。
【数13】

【0054】
Coveredオクルージョン領域では、第2動きベクトルの逆ベクトルで特定される参照フレームp1の画素値を使用して、Coveredオクルージョン領域とその周囲の領域との連続性を判定する。オクルージョンフィルタリング104は、下記式15のように、Coveredオクルージョン領域に対して、フィルタリングを実行し、Coveredオクルージョン領域に第4動きベクトルを割り当てる。
【数14】

【0055】
ここで、式13と同様に重みwが最も大きくなる第2動きベクトルを第4動きベクトルとして選択するようにしてもよい。
【0056】
Coveredオクルージョン領域の画素には、下記式16のように、参照フレームp1の画素値であって、式15で求められた第4動きベクトルの逆ベクトルで特定される位置の画素値が割り当てられる。
【数15】

【0057】
上記フィルタリングは、オクルージョン領域に含まれる画素に対して、Nを充分大きくして画素順に順次実行してよく、或いは、オクルージョン領域の端部から実行してもよい。
【0058】
以上のように、第1の実施形態に係る補間フレーム生成装置100は、補間フレームq上に発生するオクルージョン領域に対して、適切な画素値を割り当てることができ、高品質の補間フレームを生成することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る補間フレーム生成装置は、図1に示した第1の実施形態と同様の構成を有している。第2の実施形態は、第1実施形態と異なり、3以上の参照フレームを使用して、時刻tの第1参照フレームと時刻t+1の第2参照フレームとの間に内挿する補間フレームを生成する。
【0060】
本実施形態では、動き推定部101は、第1参照フレームと第2参照フレームとの相関、並びに第1参照フレームと、第1及び第2参照フレームとは異なる時刻の複数の第3参照フレームの各々との相関に基づいて、第1参照フレームの位置を始点とする第1動きベクトルを推定する。第3参照フレームとしては、時刻t−T及び時刻t+T間に含まれるフレームを使用する。ただし、Tは自然数である。また、時刻t−nの参照フレームの画素値をIt−n(x,y)とし、時刻t+nの参照フレームの画素値をIt+n(x,y)とする。ただし、n=1,2,・・・,Tである。
【0061】
第1参照フレームから第2参照フレームへの第1動きベクトルを基準とすると、第1参照フレームから時刻t+nの第3参照フレームへの第1動きベクトルは、n倍する必要があり、第1動きベクトルをそのように正規化する。
【0062】
本実施形態は、図3のステップS301及びS305で説明した式を、以下に示す式に置き換えることで実現することができる。
【0063】
図3のステップS301に関しては、時刻tの参照フレームを分割した第1ブロック毎に第1動きベクトルを求める式1及び2を、下記式17及び18に置き換える。
【数16】

【0064】
【数17】

【0065】
さらに、第1ブロックに割り当てられた第1動きベクトルは、式4に代えて下記式19のように、この第1ブロック内の各画素に割り当てられる。
【数18】

【0066】
また、ステップS305のオクルージョンフィルタリングに関しては、式11が下記式20に置き換えられ、Uncoveredオクルージョン領域に割り当てられる第4動きベクトルがこの式20に従って求められる。式20に示されるように、Uncoveredオクルージョン領域では、第2参照フレームと、時刻t+2から時刻t+Tに含まれる第3参照フレームとを使用して、Uncoveredオクルージョン領域の周囲の非オクルージョン領域との連続性が判定される。
【数19】

【0067】
さらに、Uncoveredオクルージョン領域内の画素位置に画素値を割り当てる式14を、下記式21に置き換える。
【数20】

【0068】
Coveredオクルージョン領域に関しては、第1の実施形態と同じ方法で、画素値及び第4動きベクトルが割り当てられる。
【0069】
以上のように、第2の実施形態に係る補間フレーム生成装置においては、第1参照フレームと第2参照フレームとの相関とともに、第1参照フレームと1以上の第3参照フレームとの相関を含めて補間フレームに画素値を割り当てることで、より高品質な補間フレームを生成することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100…補間フレーム生成装置、101…動き推定部、102…補間フレーム生成部、103…オクルージョン領域検出部、104…オクルージョンフィルタリング部、105…フレームメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1参照フレームと、前記第1参照フレームとは異なる時刻に表示すべき第2参照フレームとの間の時刻に内挿される補間フレームを生成する補間フレーム生成装置であって、
前記第1参照フレーム内の第1ブロックと、前記第2参照フレーム内のブロックとの相関値を求め、その中で最も前記相関値の高い第2ブロックを探索し、前記第1ブロックの位置と、前記第2ブロックの位置とをむすぶ第1動きベクトルを求める動き推定部と、
前記第1動きベクトルで特定される前記補間フレーム内の第1画素位置に、前記第1参照フレーム及び/又は前記第2参照フレームの画素値から求まる第1の画素値を割り当て、さらに、前記第1画素位置に、この第1画素位置を始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる補間フレーム生成部と、
前記補間フレーム上でオクルージョン領域を検出するオクルージョン領域検出部と、
前記オクルージョン領域に画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部であって、前記オクルージョン領域の周辺に位置する非オクルージョン領域に割り当てられている第2動きベクトルを第3動きベクトルとして前記非オクルージョン領域に割り当て、前記第3動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第2の画素値と、前記非オクルージョン領域に割り当てられている前記第2動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第3の画素値との間の相異度に基づいて、前記第2動きベクトルを重み付け加算した第4動きベクトルを前記オクルージョン領域に割り当て、前記オクルージョン領域に、前記第4動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第4の画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部と、
を具備することを特徴とする補間フレーム生成装置。
【請求項2】
前記オクルージョンフィルタリング部は、前記相異度が最も小さい前記第3動きベクトルを前記第4動きベクトルとして前記オクルージョン領域に割り当てることを特徴とする請求項1に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項3】
前記オクルージョンフィルタリング部は、前記相異度が大きいほど値の小さくなる重みを使用して重み付け加算することを特徴とする請求項1に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項4】
前記オクルージョン領域検出部は、画素値が割り当てられていない領域をオクルージョン領域として検出することを特徴とする請求項1に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項5】
前記オクルージョン領域検出部は、前記補間フレーム内の第2画素位置に割り当てられている第2動きベクトルが指し示す前記第2参照フレーム内の第1画素と、前記補間フレーム内の第3画素位置に割り当てられている第2動きベクトルが指し示す前記第2参照フレーム内の第2画素とが同一である場合に、前記第1画素が有する画素値と前記第2画素位置に割り当てられている画素値との画素差分値と、前記第1画素が有する画素値と前記第3画素位置に割り当てられている画素値との画素差分値とを比較して、前記第2及び第3画素位置のうちの、前記画素差分値が大きいほうをオクルージョン領域として検出することを特徴とする請求項4に記載の補間フレーム生成装置。
【請求項6】
第1参照フレームと、前記第1参照フレームとは異なる時刻に表示すべき第2参照フレームとの間の時刻に内挿される補間フレームを生成する補間フレーム生成方法であって、
前記第1参照フレーム内の第1ブロックと、前記第2参照フレーム内のブロックとの相関値を求め、その中で最も前記相関値の高い第2ブロックを探索し、前記第1ブロックの位置と、前記第2ブロックの位置とをむすぶ第1動きベクトルを求める算出ステップと、
前記第1動きベクトルで特定される前記補間フレーム内の第1画素位置に、前記第1参照フレーム及び/又は前記第2参照フレームの画素値から求まる第1の画素値を割り当てる第1割当ステップと、
前記第1画素位置に、この第1画素位置を始点とする第1動きベクトルを第2動きベクトルとして割り当てる第2割当ステップと、
前記補間フレーム上でオクルージョン領域を検出する検出ステップと、
前記オクルージョン領域に画素値を割り当てるオクルージョンフィルタリング部であって、前記オクルージョン領域の周辺に位置する非オクルージョン領域に割り当てられている第2動きベクトルを第3動きベクトルとして前記非オクルージョン領域に割り当て、前記第3動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第2の画素値と、前記非オクルージョン領域に割り当てられている前記第2動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第3の画素値との間の相異度に基づいて、前記第2動きベクトルを重み付け加算した第4動きベクトルを前記オクルージョン領域に割り当てる第3割当ステップと、
前記オクルージョン領域に、前記第4動きベクトルで特定される前記第1又は第2参照フレームの画素値から求まる第4の画素値を割り当てる第4割当ステップと、
を具備することを特徴とする補間フレーム生成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−182193(P2011−182193A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44435(P2010−44435)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】