説明

製パン用発芽玄米ミックス粉

【課題】発芽玄米粉を配合したアレルゲンフリーの製パン用ミックスを提供する。
【解決手段】発芽玄米粉100重量部に対し、グルコマンナン又はこんにゃく粉を1重量部以下になるように含有させる。コンニャクイモ抽出物がグルコマンナンであり、小麦粉、卵、乳を含まないことを特徴とする。小麦粉、グルテンを使用しなくても、食感、食味に優れるとともに、老化の進行が遅い製パン用の発芽玄米粉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製パンに適したミックス粉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、小麦アレルギーがある者でもパンが食べられるように、製パン用原料として米を原料とした粉の開発及びパンの製造方法の開発が行われている。
例えば、特許文献1(特開2006−136257号公報)には、焙焼された玄米粉100重量部、タピオカ澱粉又は葛澱粉などの澱粉1〜20重量部を水と混合して加熱した糊状体、酵母及び水を混合し、発酵させた後に焼成する米粉パンの製造方法が開示されている。
例えば、特許文献2(特開2004−267144号公報)には、(1)うるち米から得られた米粉の全量を100質量部とした場合、そのうちの4〜8質量部をその10〜15倍量の水と混合し、加熱して、米粉中のデンプンをα化して、粘稠なスラリー状物を得て、(2)該スラリー状物を、残りの米粉、残りの米粉の0.1〜0.2倍量の水及び酵母と混合して、流動性を有するパン生地を調製し、(3)該パン生地を成形容器に流し込み、(4)該成形容器を加熱して、パン生地を発酵させ、(5)該発酵物をオーブンで焼成することを含み、得られるパンが、実質的にグルテンを含まないうるち米を主原料とするパンの製造方法が開示されている。
例えば、特許文献3(特許第3611802号号公報)には、粘性と粘弾性の両者とも優れている団子や餅菓子等のみならず、パン類や洋菓子、麺類のような非常に弾力のある加工食品も製造に適した、発芽後の発芽玄米を湿熱加熱し発芽玄米中の澱粉を部分的にα化させた後、乾燥を行い、ついで粉砕して得られる発芽玄米粉であって、水分量が5〜10%、α化度が10〜60%、一般生菌数が1,000CFU/g以下である発芽玄米粉が開示されている。
【0003】
さらに、本出願人は、通常の玄米に比して消化吸収性が良く、γ−アミノ酪酸、フェルラ酸等の栄養成分を高含有していることから、機能性食品として評価されている発芽玄米に関する研究開発を続けている。特許文献3(特許第3611802号号公報)には、粘性と粘弾性の両者とも優れている団子や餅菓子等のみならず、パン類や洋菓子、麺類のような非常に弾力のある加工食品も製造に適した、発芽後の発芽玄米を湿熱加熱し発芽玄米中の澱粉を部分的にα化させた後、乾燥を行い、ついで粉砕して得られる発芽玄米粉であって、水分量が5〜10%、α化度が10〜60%、一般生菌数が1,000CFU/g以下である発芽玄米粉などを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−136257号公報
【特許文献2】特開2004−267144号公報
【特許文献3】特許第3611802号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉として発芽玄米粉のみを原料にしてパンを製造すると、外観は通常と変らないものの、白米粉を原料にした場合と比較して、焼き上がり時に中身が落ちて餅のようになり、また、食味も劣ってしまう。そのため、粉として発芽玄米粉を原料にする場合、小麦粉に10〜30%の発芽玄米粉を加えてパンを作ることが主流で、小麦粉を使用せず発芽玄米粉のみで作ろうとするとグルテンを利用しなければならず、小麦アレルギーの問題を解決することが困難であった。
したがって、本発明は、小麦粉、グルテンを使用しなくても、食感、食味に優れるとともに、老化の進行が遅い製パン用の発芽玄米粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.発芽玄米粉、コンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を含む発芽玄米ミックス粉。
2.前記コンニャクイモ抽出物がグルコマンナンであることを特徴とする1記載の発芽玄米ミックス粉。
3.小麦粉、卵、乳を含まないことを特徴とする1又は2記載の発芽玄米ミックス粉。
4.アレルゲンフリーの製パン用粉であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の発芽玄米ミックス粉。
5.発芽玄米粉100重量部に対し、グルコマンナン又はこんにゃく粉を1重量部以下になるように含有させることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の発芽玄米ミックス粉。
【発明の効果】
【0007】
発芽玄米粉にコンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を加えることにより、米粉100%のパンを作ることが可能であることがわかった。また、コンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を添加すると、機能性食品として評価されている発芽玄米粉を原料として作ったパンの方が、白米粉で作ったパンより、外観・食味・食感に優れていること、並びに3日後の食味・食感に関しても老化が進みにくいという顕著な効果を有することが確認できた。そして、小麦粉、グルテンを含まなくても外観・食味・食感に優れ、かつ老化が進みにくいことから、アレルゲンフリーであるパンを実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来例1の状態を示す図。(a)外観図、(b)断面図
【図2】従来例2の状態を示す図。(a)外観図、(b)断面図
【図3】実施例1の状態を示す図。(a)長手方向断面図、(b)短手方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、発芽玄米粉を主体とした製パン用発芽玄米ミックス粉であり、発芽玄米粉にコンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を配合することを特徴とする。
【0010】
本発明に用いる発芽玄米粉は、本出願人が開示した発芽玄米を原料として用いることができる。例えば、特許第3738025号公報に開示した直接還元糖が発芽玄米乾燥重量100グラム中0.15g以上であり、α化澱粉が総澱粉含量の9〜40%、蔗糖が0.5g以上である発芽玄米を使用することができる。この先行発明で提案した発芽玄米は、水分が10〜20%である乾燥発芽玄米である。この乾燥発芽玄米を製粉機にて製粉した発芽玄米粉を用いることができる。
【0011】
また、本発明に用いるコンニャクイモ抽出物は、グルコマンナンやこんにゃく粉である。これらは、市販品を原料として使用することができる。グルコマンナンはこんにゃく粉よりも食物繊維成分が多い。例えば、本実施例で使用するグルコマンナンは、規格が食物繊維として95%以上であるのに対し、こんにゃく粉は80%ほどである。
【0012】
その他の原料としては、パンを製造する際に一般的に用いられる、ドライイースト、塩、砂糖、の他、醗酵促進用の麦芽糖や添加剤等を添加することもできる。本発明の発芽玄米ミックス粉は、発芽玄米粉とコンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を配合することにより得られるが、ドライイースト以外の砂糖、塩、麦芽糖等を最初から配合しておくことも可能である。
【0013】
本発明の発芽玄米ミックス粉は、通常のパン製造用粉と同様に使用することができる。例えば、ドライイーストと水を混ぜ合わせたボールに、発芽玄米ミックス粉及びその他各粉体原料を量り合わせてミックスしたものを加え、良く混ぜ合わせて型に流し込む。そして所定時間発酵させた後、オーブンで焼き上げてパンを作ることができる。
【0014】
以下に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【実施例】
【0015】
まず、本発明の実施例の説明の前に、コンニャクイモ抽出物を配合していない白米粉及び発芽玄米粉を用い、従来の製造方法に従ってパンを試作した例を示す。
原料配合組成は表1、試作手順は次の通りである。
【0016】
パンの試作手順
1.原料を混合し、ミキサーで10分程度攪拌する。
2.食型に生地を流し込み、3度程、型ごと台の上でたたく。
3.発酵は常温30分程度発酵させる。
4.オーブン(ガス)180℃35分程度焼き上げる。
【0017】
【表1】

【0018】
従来例1のパンの外観及び内部状況を図1に、従来例2のパンの外観及び内部状況を図2に、発酵状態、焼き上がり状態、直後の食感及び食味と3日後の食感及び食味評価を表2に示す。
図1に示すように、発芽玄米粉を用いたパンは、外観は良いが中身は落ちて餅のようになってしまい、少しまずく、3日後は評価するに値しないものであった。
一方、白米粉を用いたパンは、外観も焼き上がり状態も良く、直後の食感及び食味は良いものの、3日後にはパサつき、食べても少しまずく、時間とともに老化が進むことが分かった。
【0019】
【表2】

【0020】
次に、コンニャクイモ抽出物を配合した本発明の実施例及び比較例について説明する。原料配合組成は表3、試作手順は次の通りである。
【0021】
パンの試作手順
1.所定量のドライイースト及び水をボールに取りかき混ぜる。
2.所定量の発芽玄米粉(白米粉)、塩、砂糖、麦芽糖、コンニャクイモ抽出物をよく混合する。
3.1.と2.をよく混ぜ、耐熱シリコン型に流し込む。
4.38〜40℃で40分発酵させる。
5.180℃で35分、オーブンで焼き上げる。
【0022】
【表3】

【0023】
実施例1のパンの長手方向断面図及び短手方向断面図を図3に、比較例1〜3のパンの発酵状態の生地の状態、焼き上がり状態、直後の食感及び食味と3日後の食感及び食味評価を表4に示す。
図3の短手方向断面図からもわかるように、発芽玄米粉を用いた実施例1は膨らみ状態が良く、また、焼き上がり状態、直後の食感及び食味も非常に良い結果が得られた。さらに、3日後であっても、しっとり、ふんわり、モチモチしており、食べてもおいしく、老化の進行が抑えられることが分かった。
一方、白米粉を用い水の添加量を変えた比較例1〜3では、水分の減少とともにふくらみが少なくなり、また、何れも焼き色がつきにくかった。また、直後であっても、比較例1以外はパサついてしまい、食べてみると少しまずかった。さらに、3日後では、何れもパサついて食べてみてもまずく、時間とともに老化が進むことが分かった。
【0024】
【表4】

【0025】
上記実施例1及び比較例1〜3から、発芽玄米粉にコンニャクイモ抽出物であるグルコマンナンを加えると、直後の食感及び食味に優れ、老化の進行も抑えられることがわかったので、次に、発芽玄米粉に添加するコンニャクイモ成分の種類及び添加量を変えてパンの試作を行った。
原料配合組成は表5、試作は実施例1と同様の手順で行った。
【0026】
【表5】

【0027】
発酵状態の生地の状態、焼き上がり状態、直後の食感及び食味と3日後の食感及び食味評価を表6に示す。
実施例2及び実施例5からわかるように、こんにゃく粉そのものでも、グルコマンナンでも、何れも良い結果が得られた。しかしながら、発芽玄米粉に対するグルコマンナンやこんにゃく粉の添加量が多すぎると、焼き色は良いものの、生地の膨らみが悪く、直後でもおもちの様な食感で、食味もよくないことが分かった。この結果から、発芽玄米粉に対して、添加するグルコマンナンやこんにゃく粉の重量は1%以下が好ましいことが分かった。
【0028】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽玄米粉、コンニャクイモ抽出物又はこんにゃく粉を含む発芽玄米ミックス粉。
【請求項2】
前記コンニャクイモ抽出物がグルコマンナンであることを特徴とする請求項1記載の発芽玄米ミックス粉。
【請求項3】
小麦粉、卵、乳を含まないことを特徴とする請求項1又は2記載の発芽玄米ミックス粉。
【請求項4】
アレルゲンフリーの製パン用粉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発芽玄米ミックス粉。
【請求項5】
発芽玄米粉100重量部に対し、グルコマンナン又はこんにゃく粉を1重量部以下になるように含有させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発芽玄米ミックス粉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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