説明

製品収蔵供出用器具

【課題】製品、特に相互に混ざらない二つの相からなる製品を収蔵しかつそれを供出するのに用いられる器具であって、この製品を、その供出前に容易に混ぜ合わせることができる器具を提供する。
【解決手段】本発明は、化粧品のような製品を収蔵しかつそれを供出するのに用いられる器具に関し、このものは、製品用の入れ物を形成する容器(10)と、この容器の上に設けた供出要素(20)と、この供出要素に製品を供給するための浸液チューブ(40)であって第1の端部(41)によって供給要素に対して接合された浸液チューブ(40)と、この浸液チューブに沿ってスライド可能な運動体(50)とを具備してなり、浸液チューブ(40)は、その第1の端部(41)から離れた位置に、浸液チューブに沿った運動体の移動を制限するよう、この運動体用のストッパ部材(60)を形成している要素を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供出前に振り混ぜることを前提とした、特に相互に混ざらない少なくとも二つの相からなる製品を収蔵し供出できるようにした器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特に化粧品の分野において、ある製品は、異なる密度を有する互いに混ざらない少なくとも二つの相からなる。例としては、ある種の香水、ヘアケア製品、スキンケア製品などが挙げられる。そうした製品は、供出前に、可能な限り均一に両者を混合させるために振り混ぜられることが好ましい。両者を混合させるために使用者は器具をあらゆる方向に振り動かすが、この方法のみによって常に均一な混合状態が簡単に得られるとは限らない。
【0003】
従来技術(証拠文献:特許文献1)としては、供出に先立って容器内に収容された製品をかき混ぜるために容器内でボールを使用するものがある。このボールは容器内で自由に動けるようになっており、したがって容器を振り動かした際にボールが容器の壁に激しく衝突する。
【0004】
また、特許文献2には、浸液チューブを有する製品供出部材を具備してなる製品収蔵供出アセンブリが開示されている。磁力部材が、可能な限り供出孔に近接して供出部材に設けられており、供出前に製品を磁界にさらすようになっている。磁力部材はたとえば、チューブを取り囲む円筒あるいは球の形態であってもよく、それはこのチューブに沿って自由にスライドすることができる。磁力部材は液体の表面に浮遊し、供出部材に可能な限り近接した位置に留まるようになっている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1005915号明細書
【特許文献2】米国特許第6,170,711号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、製品、特に相互に混ざらない二つの相からなる製品を収蔵しかつそれを供出するのに使用される器具であって、上記製品をその供出前に容易に混ぜ合わせることができる器具が求められている。
【0006】
また、容易に組み立てられる、上記のような器具が求められている。
【0007】
また、美観的品質が改善された、上記のような器具が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために、たとえば化粧品などの製品を収蔵しかつそれを供出するのに使用される器具を提供し、この器具は、以下の構成要素、
・上記製品の入れ物となる容器と、
・この容器の上に配設された供出要素と、
・この供出要素に製品を供給するための浸液チューブであって、第1の端部において上記供出要素に接続されている浸液チューブと、
・この浸液チューブに沿ってスライド可能な運動体と、を具備してなり、
上記浸液チューブが、その第1の端部から離間した位置に、浸液チューブ自身に沿った上記運動体の移動を制限するように上記運動体用のストッパ部材を形成している要素を備えることを特徴とする。
【0009】
上記浸液チューブに沿って動く運動体を設けたことにより、製品を供出する前に器具を振り動かすことで、製品を混ぜ合わせることができるようになる。この運動体は浸液チューブによって保持されるので、たとえ運動体を構成する素材がかなり硬いものであり、しかも容器を構成する素材がより壊れやすいものであったとしても、容器を振り動かすときに運動体が容器を損傷させる恐れはない。
【0010】
これに加えて、ストッパ部材を形成している要素は、器具が振り動かされる際、浸液チューブに沿った運動体の移動を制限する。しかも、器具の組立て時、浸液チューブを供出要素に取り付けるのに先立ち、上記ストッパ部材を形成する要素によって、運動体(これは浸液チューブに組み付けられてしまっている)を適所に保持することが可能となる。浸液チューブおよび運動体が組み付けられた供出要素は、特にそれを容器充填ラインへ搬送する以前に、運動体を紛失するリスクを伴わずに簡単に取り扱うことができる。
【0011】
ストッパ部材を形成する要素は、第1の端部から離間した、浸液チューブの第2の端部に配設可能である。これによって運動体の移動距離が最大となり、したがって製品の撹拌が最適になされるようになる。
【0012】
上記運動体は、円筒形、球形あるいはオリーブ形とすることができる。もちろん、それ以外の形状を採用してもよい。
【0013】
上記運動体は一体部材であっても、あるいはこれに代えて、浸液チューブの周りで一つに組み立てられた複数の部材からできていてもよい。
【0014】
上記運動体は、プラスチック、押し型ガラス、ステンレススチール、および(特にプラスチックで被覆された)ザマック(zamak)の中から選ばれた素材を用いて形成することができる。
【0015】
上記供出要素はポンプとすることができ、しかもこのポンプは、容器の上に、特にスナップ式嵌合、ねじ込み、あるいはかしめによって配設することが可能である。
【0016】
上記供出要素の上には、特にノズルの形態の放出手段を具備してなるものであってもよいプッシュボタンを配置できる。あるいは、プッシュボタンは単純な製品吐出孔を有するものであってもよい。これは、たとえばスパウト(spout)の形態とすることができ、その端部には吐出孔が形成される。
【0017】
上記容器は透明な素材から形成でき、これによって容器に収蔵された製品を外部から見ることが可能となる。容器は、たとえばガラスから形成できる。製品の色を選択することで、特に異なる相を備えるのであれば個々の相の色を選択することで、そして運動体の色を選択することで、人目をひく美的外観を呈する供出器具を、透明容器を用いて得ることができる。
【0018】
上記容器には、異なる密度を有する互いに混ざらない少なくとも二つの相(これらの相の少なくとも一方は液体である)からなる製品を収蔵してもよい。この製品は、液相と、その密度がこの液相の密度とは異なる微粒子相とからなるものであってもよい。この微粒子相は、粉末、マイクロカプセルあるいはナノカプセル、顔料、添加剤あるいはナクレ(真珠光沢剤)の形態であってもよい。これに代えて上記製品は、水性液相および油性液相からなるものであってもよい。
【0019】
本器具は、香水のような化粧品を収蔵し、それを供出するのに特に役立つものである。
【0020】
本発明は、上記特徴部に加えて、添付図面を参照して説明する非限定的な例証的実施形態に関連する、以下で説明することになる数多くのそれ以外の特徴部からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に示す器具はボトルの形態の容器10(これはガラス製であってもよい)を具備してなり、このボトルの上方には、供出要素20と、供出孔32から製品が供出されるよう、この供出要素20を作動させるためのプッシュボタン30とが設けられている。
【0022】
容器10は、供出されることになる流動性のある製品、たとえば幾分粘性のある液状製品を収容する。その例としては、香水のような化粧品、日焼け止め剤、ヘアケア製品、あるいは肌に潤いを与える製品が挙げられるであろう。
【0023】
上記製品は、好ましくは、恒久的に互いに混ざらない、少なくとも二つの相を具備してなる。
【0024】
それらは、たとえば、異なる密度を有する混ざらない二つの油性相、油性相および水性相、あるいは油性相および水性アルコール相であってもよい。二つの混ざらない相の間には密度差があるので、それゆえ、重い相は容器の底に沈み、一方、軽い相は重い相の上に浮かぶことになる。相の分離速度は、二つの相の間の密度差に依存する。容器内容物を振ったとき、二つの相の大体において均質な「混合物」は、ディスパージョン、懸濁液あるいはエマルジョンをなす。容器を立てて放置した場合、上記相は、両者間の密度差のために「非混合」状態となる。つまり分離する。
【0025】
これ以外にも、液相および微粒子(たとえば固形物)相とすることが可能である。この微粒子は液相よりも重いものであっても軽いものであってもよい。そうした微粒子は、粉末、マイクロカプセルあるいはナノカプセル、顔料、添加剤あるいはナクレ(真珠光沢剤)の形態であってもよい。
【0026】
上記二つの相は、美観的理由(2種類の異なる色)から、あるいは相それぞれの化合物の不相容性に関する理由から、分離状態であってもよい。
【0027】
製品を収容する容器は、軸線Xに沿って細長く延びたものである。この容器は側壁11を有し、その一端は底部12によって閉塞され、かつ他端13は開放ネックをなしており、この開放ネックに対して供出要素20が取り付けられる。容器の断面は円形(その軸方向高さにわたって概ね一定)であり、しかも肩部が形成されるよう上端部13において縮寸して上記ネックをなしている。図示した実施形態では、容器断面は、その軸方向高さに比べて小さな直径を有するものであり、それゆえ容器形状はチューブ状となっている。もちろん、容器はそれ以外の形状、特にそれ以外の断面を有していてもよい。
【0028】
上記容器は透明であり、それゆえその中に収蔵された製品、特に静止状態で分離した二つの相を見ることができる。別個の相の色を、そして運動部材の色を選択することにより、普通の透明容器を用いて魅力的な美観的効果を得ることができる。
【0029】
容器の上に配設された供出要素20はポンプの形態のものである。ポンプを作動させるよう設計されたプッシュボタン30は、供出孔32を形成しているノズル31の形態の放出手段を具備してなる。他の放出手段を使用することも可能である。その例としては、グリル、フリット(frit)、塗布具端部材などを挙げることができる。
【0030】
ポンプ20は、容器10に、あるいは中間取付け部に、かしめ、ねじ込みあるいは圧入嵌めによって取り付けることができる。ポンプ20(詳しくは図示していない)はポンプ本体部を具備してなり、この中に、容器からポンプへ製品を送り込むための浸液チューブ40の第1の端部41が差し込まれる。
【0031】
図1からわかるように、浸液チューブ40はポンプ20から概ね軸線Xに沿って延びている。この浸液チューブ40は、供出ヘッドに対して固定された端部41から遠く離れた位置に、開放された自由端部42を備える。この自由端部42を経て、容器内に収蔵された製品を、ポンプ本体内に吸い上げることができる。
【0032】
運動体50は、製品をかき混ぜ、そして製品の相が混じり合うのを促進するために、滑り嵌め状態で上記浸液チューブの周囲に配されている。運動体50は、供出すべき製品Pよりも著しく密度の高い素材からなることが有利である。その理由は、運動体の密度と製品の密度との間の差が大きくなればなるほど、運動体は、異なる相を混ぜ合わせるよう、製品をかき分けて、ますます素早く動くからである。
【0033】
運動体50は、たとえば、それが浸液チューブの周囲に位置することを可能にする中央開口部を備えた回転円筒体であってもよい。この運動体は一体部材であるが、それに代えて、一つに接合された二つ以上の部材からなっていてもよい。
【0034】
他の形状の運動体を使用することが、本発明の範囲から逸脱するものでないことは明白である。運動体は、たとえば球形、オリーブ形、らせん形、星形等のさまざまな形状とすることができる。容器の形状は、さらにまた上記運動体の形状に適合するよう選定可能である。それゆえ、たとえば、運動体の断面と同じ形状の断面を備えた容器を選んでもよい。中央孔もまた円形以外のものであってもよい。好ましくは、所望の美観的効果に寄与する形状が選択されることになる。
【0035】
滑動体(運動体)を浸液チューブに対して保持するために、ストッパ部材60が、容器底部に向かって位置させられた上記浸液チューブの端部42に配設される。
【0036】
図示した実施形態では、ストッパ部材60は、浸液チューブに対してその端部42において圧入嵌めされた別体要素である。
【0037】
これに代えて、ストッパ部材を浸液チューブと一体化させてもよい。特に、ストッパ部材は、浸液チューブの壁の厚みを増大させることによって形成可能である。
【0038】
図示した実施形態では、ストッパ部材60は、容器底部に向けて位置させられた浸液チューブの端部に配設されている。このストッパ部材はまた、浸液チューブのこの端部から離れた位置に設けられてもよい。だが、滑動体には、可能な限り最も大きな移動距離を付与することが好ましい。
【0039】
ある特定の例証的な実施形態においては、容器の軸方向高さは約13cmであり、そして直径は約2cmである。浸液チューブの外径は約1.6mmである。ストッパ部材60は約4mmの外径を有する。運動体の外径は約7mmであり、その軸方向高さは約12mmである。運動体はPCTAからなる。
【0040】
供出されることになる製品は、密度が異なる二つの混ざらない相を含む香水である。重い方の相は無色であり、一方、軽い方の相には色がついている。浸液チューブならびにストッパ部材は、ほとんど気付かれないように、やはり透明であり、一方、運動体は着色されている。ゆえに、静止状態で二つの相が分離しているとき、色の付いた製品は容器の上部に存在し、一方、無色の製品は底の方に存在する。この状態では、運動体は、容器の底部近くで、ストッパ部材上に着座しており、したがって無色の製品の真ん中に存在する、着色された運動体が目に映る。浸液チューブならびにストッパ部材は無色であるので、運動体が容器内で浮遊しているかのような印象を受ける。なぜなら、ストッパ部材は容器の底部から、ある程度高い位置にあるからである。
【0041】
本器具を組み立てる際、運動体50が配されたチューブ40は、ポンプ体(これはプッシュボタンを備える)に圧入嵌合され、一方、運動体はストッパ部材60によって保持される。
【0042】
このように事前組立てがなされたアセンブリは、浸液チューブ上の適所に保持された運動体を紛失するといったリスクを伴わずに、容器充填ラインへと簡単に輸送できる。いったん容器に製品が充填されてしまうと、事前組立てされたアセンブリは、まず浸液チューブを容器内に差し込んだ後、容器の首に対して固定できる。
【0043】
製品を供給するには、使用者は、二つの相が混じり合うまで、たとえばヘッドを数回引っ繰り返すようにして器具を振る。製品は、従来方法で、すなわちプッシュボタンを用いてポンプを作動させることで供出できる。
【0044】
以上の詳細な説明では、本発明の好ましい実施形態について言及したが、明らかに、本発明の範囲から逸脱することなく、これに対して変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による収蔵供出アセンブリの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示す器具の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 容器
11 側壁
12 底部
13 上端部
20 供出要素
30 プッシュボタン
31 ノズル
32 供出孔
40 浸液チューブ
41 第1の端部
42 自由端部(第2の端部)
50 運動体
60 ストッパ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品などの製品の収蔵ならびに供出のための器具であって、
前記製品用の入れ物を形成している容器(10)と、
前記容器の上方に配設された供出要素(20)と、
前記製品を前記供出要素へ供給するための浸液チューブ(40)であって、第1の端部(41)において前記供出要素に対して接続されている浸液チューブ(40)と、
前記浸液チューブに沿ってスライド可能な運動体(50)と、を具備してなり、
前記浸液チューブ(40)は、前記第1の端部(41)から離間した位置に、前記浸液チューブに沿った前記運動体の移動を制限するように前記運動体用のストッパ部材(60)を形成している要素を備えることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記ストッパ部材(60)を形成している前記要素が、前記浸液チューブの第2の端部(42)に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記運動体(50)は、円筒形、球形およびオリーブ形の中から選ばれた一つの形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記運動体(50)は一体部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
前記運動体(50)は、プラスチック、押し型ガラス、ステンレススチール、および(特にプラスチックで被覆された)ザマック(zamak)の中から選ばれた一つの材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記供出要素(20)はポンプであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記容器(10)は透明なものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の器具。
【請求項8】
前記容器(10)は、相互に混ざらない、異なる密度を有する少なくとも二つの相からなる製品を収容し、前記相のうちの少なくとも一方は液体であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記製品は、液相と、密度が前記液相の密度とは異なるものである微粒子相とを具備してなるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の器具。
【請求項10】
前記微粒子相は、粉末、マイクロカプセル、ナノカプセル、顔料、添加剤およびナクレ(真珠光沢剤)の中から選ばれた形態のものであることを特徴とする請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記製品は、水性液相および油性液相を具備してなるものであることを特徴とする請求項8に記載の器具。
【請求項12】
化粧品、特に香水を収蔵しかつ供出するための請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の器具の使用法。

【図1】
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【図2】
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