説明

製品品質予測および制御方法

【課題】高精度の予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能な製品品質の制御方法、及び、当該制御方法を実施することが可能な製品品質の制御装置を提供する。
【解決手段】製品の品質を制御する方法であって、製造条件に応じた製品の品質を、線形回帰式で定義する、第1工程と、制御される製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する、第2工程と、製品製造工程中における実際の製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する、第3工程と、第1工程で定義した線形回帰式、第2工程で特定された数式、および、第3工程で特定された製造条件のばらつきの確率モデル式を用いて、製品製造工程中の任意の時点で製品の品質を予測する、第4工程と、を備えることを特徴とする、製品品質の制御方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼条鋼製品等に代表される製品の品質を制御する方法、及び、当該製品品質の制御に用いられる製品品質の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の表面疵や内部欠陥の欠点数、及び、製品の不良品数は、離散確率変数で表される計数値である。そして、欠点数はポアソン分布に、不良品数は二項分布に各々従うものとしてモデル化することができる。従来、ポアソン分布に従う欠点数の管理にはc管理図やu管理図等が用いられ、二項分布に従う不良品個数の管理にはnp管理図やp管理図等が用いられており、管理限界線を越えた場合や、グラフの時間的傾向から管理限界線を越えそうな場合には、製造条件の異常を調査するという方法がとられていた(JIS Z 9020:1999)。
【0003】
これらの管理図による製品品質管理によれば、品質が悪くなる傾向にあることは検出できるが、どの製造条件が悪いのか、また、どの方向に修正すれば改善するのかが不明である。そのため、品質悪化の原因となる製造条件を特定して品質改善を図るべく、製造条件データから製品品質指標を予測する方法や、予測結果に基づき製造条件を制御する方法が、これまでに提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、上工程の製造実績と材質推定値とその推定誤差から、要求仕様を満足する製品を製造することが可能な下工程操業条件指示値を出力する製品品質制御装置が開示されている。また、品質予測に適用可能な、一般化線形モデルとよばれる方法が、非特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−268428号公報
【非特許文献1】P.McCullagh、J.A.Nelder著、「Generalized Linear Models」、第2版、Chapman & Hall、1989年8月1日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、制御対象の製品材質を、機械試験特性値等の物理的連続値と仮定している。その仮定ゆえに、推定対象の操業条件に類似した過去の操業条件実績値に対応する材質実績値の平均を用いて、推定対象の操業条件での材質を推定できる。ところが、製品の欠点数や不良品率などの品質指標は、離散分布する計数値に基づいており、その確率分布はポアソン分布や二項分布に代表される離散確率分布で近似され、連続値の確率分布である正規分布とは異なる。すなわち、特許文献1に開示されている技術のように、推定ばらつき算出のために実績値の標準偏差を計算しても、推定対象操業条件でのばらつきを正しく推定できない。このため、特許文献1に開示されている技術を用いて製品品質の制御を行うと品質の推定精度が低く、特に下流工程において要求される品質範囲を逸脱する虞があるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に開示されている技術では、過去の操業条件や材質実績値を蓄積しておき、予測対象操業条件に類似した操業条件を検索する必要がある。そのため、特許文献1に開示されている技術を実現するためには、計算機装置だけではなく、大規模かつ高性能なオンラインデータベース検索システムが必要となり、多大なコストが必要になるという問題があった。
【0007】
非特許文献1には、製品品質の制御に適用する方法については開示されていない。非特許文献1に開示されている方法を製品品質の制御に適用することには、通常は目的変数の製品品質一項目に対する説明変数は数倍から数十倍の項目数があるため、品質制御のために説明変数の最適な値を決定することが困難であるという技術的阻害要因があった。
【0008】
そこで、本発明は、高精度の予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能な製品品質の制御方法、及び、当該制御方法を実施することが可能な製品品質の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記することがあるが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
第1の本発明は、製品の品質を制御する方法であって、製造条件に応じた製品の品質を、線形回帰式で定義する、第1工程と、制御される製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する、第2工程と、製品製造工程中における実際の製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する、第3工程と、第1工程で定義された線形回帰式、第2工程で特定された数式、及び、第3工程で特定された製造条件のばらつきの確率モデル式を用いて、製品製造工程中の任意の時点で製品の品質を予測する第4工程と、を備えることを特徴とする、製品品質の制御方法により、上記課題を解決する。
【0011】
第1の本発明及び以下に示す本発明(以下において、単に「本発明」という。)において、「製品の品質」は、品質不良の発生確率が小さいものであれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、鋼材の表面疵や内部欠陥等に代表される欠点数や、製品の不良品数等を挙げることができる。また、「製造条件」の具体例としては、製造装置の設定値、鋼材に代表される製品又は中間製品の物理量(温度、形状、組成等)、及び、製品を製造する各工程の時間等を挙げることができる。さらに、「製品製造工程中における実際の製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する」とは、製品の製造中において必ずしも目標値(設定値)とはならない製造条件のばらつきを任意の確率モデルで数式化することによって、その製造条件のばらつきの確率モデル式を特定することを意味する。
【0012】
上記第1の本発明において、製品の全数の製造が終了する前に、第4工程によって品質が予測され、第4工程で予測された品質が予め定めた目標範囲に属しない場合には、該品質が目標範囲に属することとなるように、後続製造工程の製造条件を変更する第5工程が備えられることが好ましい。
【0013】
また、第5工程が備えられる上記第1の本発明において、第5工程で変更される製造条件は、第1工程で定義された線形回帰式における該製造条件に対する係数を用いた1次式を目的関数とするとともに、第5工程で変更される製造条件に関する数式を制約条件とする、最適化問題を解くことにより特定されることが好ましい。
【0014】
本発明において、最適化問題を解く際に用いられる方法は特に限定されるものではない。当該方法の具体例としては、線形計画法等を挙げることができる。
【0015】
また、上記第1の本発明(変形例も含む。以下同じ。)において、第1工程で定義される線形回帰式の係数を、品質の測定結果、及び/又は、製造条件の実績データに基づいて算出する算出工程が、第1工程の前工程として備えられることが好ましい。
【0016】
また、上記第1の本発明において、制御される製品の品質が欠点数である場合には、第2工程で用いる確率モデルとしてポアソン分布が用いられることが好ましい。
【0017】
また、上記第1の本発明において、制御される製品の品質が不良品数又は不良品率である場合には、第2工程で用いる確率モデルとして二項分布が用いられることが好ましい。
【0018】
また、上記第1の本発明において、製品が鋼材であることが好ましい。
【0019】
本発明において、鋼材製品の具体例としては、鉄鋼条鋼製品等を挙げることができる。
【0020】
第2の本発明は、製品の品質を制御するために用いられる制御装置であって、製造条件に応じた製品の品質を線形回帰式で定義する、回帰式定義部(1)と、制御される製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する、数式化部(2)と、製品製造工程中における実際の製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する、ばらつき定式化部(3)と、回帰式定義部で定義された線形回帰式、数式化部で特定された数式、及び、ばらつき定式化部で特定された前記製造条件のばらつきの確率モデル式を用いて、製品製造工程中の任意の時点で製品の品質を予測する、品質予測部(4)と、を備えることを特徴とする、製品品質の制御装置により、上記課題を解決する。
【0021】
上記第2の本発明において、製品の全数の製造が終了する前に、品質予測部(4)によって品質が予測され、品質予測部で予測された品質が予め定めた目標範囲に属しない場合には、該品質が目標範囲に属することとなるように後続製造工程の製造条件を変更する、製造条件変更部(7)が、さらに備えられることが好ましい。
【0022】
ここに、「後続製造工程」とは、製品の製造ラインに第1製造工程及び第2製造工程が備えられる場合において、第1製造工程後に予測された結果に基づいて第2製造工程の製造条件が変更される場合には、当該第2製造工程を意味する。
【0023】
また、製造条件変更部が備えられる上記第2の本発明において、製造条件変更部で特定される製造条件は、回帰式定義部で定義された線形回帰式における該製造条件に対する係数を用いた1次式を目的関数とするとともに、製造条件変更部で変更される製造条件に関する数式を制約条件とする、最適化問題を解くことにより特定されることが好ましい。
【0024】
また、上記第2の本発明(変形例も含む。以下同じ。)において、さらに、回帰式定義部(1)で定義される線形回帰式の係数を、品質の測定結果、及び/又は、製造条件の実績データに基づいて算出する算出部(5)が備えられることが好ましい。
【0025】
また、上記第2の本発明において、制御される製品の品質が欠点数である場合には、数式化部で用いる確率モデルとしてポアソン分布が用いられることが好ましい。
【0026】
また、上記第2の本発明において、制御される製品の品質が不良品数又は不良品率である場合には、数式化部で用いる確率モデルとして二項分布が用いられることが好ましい。
【0027】
また、上記第2の本発明において、製品が鋼材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
第1の本発明によれば、離散確率分布に基づく確率モデルで特定された数式と、後続製造工程における実際の製造条件のばらつきの確率モデル式と、を用いて、製品の品質が予測されるので、製品の欠点数や不良品数等に代表される製品品質を、後続製造工程の製造条件制御精度も考慮して、高精度に予測することが可能になる。したがって、第1の本発明によれば、高精度の予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能な、製品品質の制御方法を提供することができる。さらに、第1の本発明において、予測された製品品質に基づいて後続製造工程の製造条件を変更する第5工程が備えられることにより、上流工程で製品の品質が悪化するような不具合が生じても、後続製造工程の製造条件を変更することにより、最終的な製品品質の悪化を防止することが可能な、製品品質の制御方法を提供することができる。
【0029】
第2の本発明によれば、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて製品の品質を数式化する数式化部と、後続製造工程における実際の製造条件のばらつきを任意の確率モデルで数式化するばらつき定式化部と、が備えられるので、製品の欠点数や不良品数等に代表される製品品質を、後続製造工程の製造条件制御精度も考慮して、高精度に予測することが可能になる。したがって、第2の本発明によれば、高精度の予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能な、製品品質の制御装置を提供することができる。さらに、第2の本発明において、予測された製品品質に基づいて後続製造工程の製造条件を変更する製造条件変更部が備えられることにより、上流工程で製品の品質が悪化するような不具合が生じても、後続製造工程の製造条件を変更することにより、最終的な製品品質の悪化を防止することが可能な、製品品質の制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
1.製品品質の制御方法
工業製品製造過程における製品製造条件は、製造工程における製品又は中間製品に関する物理量(温度、形状、組成等)の測定結果、製造装置に関する物理量(温度、圧力等)の測定結果、これらの物理量の制御目標値、運転条件設定値、及び、製造装置間において測定・設定される値等によって構成される群から選択される一又は複数の製造条件によって構成される。以下の本発明の説明において、製造条件はxで表し、ある一の製品nに対する製造条件を指す場合はx(ただし、nは1以上の整数。)で表す。また、製品nに対する製造条件xが複数ある場合で、それらを区別する必要がある場合には、一の製造条件をxnk(ただし、kは1以上の整数。)で表す。さらに、製造条件xがK個ある場合にそれら全体を組み合わせたベクトルをxnv=[xn1n2 … xnK]とする。
【0032】
また、欠点数や不良品数等に代表される品質に関する測定データをyで表す。本発明では、品質に関する測定データyを目的変数とし、製造条件xを説明変数とする回帰モデルによって、品質モデルを構成する。本発明では、品質モデルを構成するにあたり、目的変数の確率モデルとして二項分布やポアソン分布等の離散確率分布を仮定し、製造条件に対する品質の期待値を単調増加関数で変換し、線形回帰式でモデル化する一般化線形モデルと呼ばれる方法を用いる。なお、本発明における品質モデルの構成では、線形回帰式の係数を最尤法で推定する。
【0033】
1.1.第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる本発明の製品品質の制御方法(以下、「第1実施形態にかかる制御方法」という。)に備えられる工程を示すフローチャートである。図1に示すように、第1実施形態にかかる制御方法は、データ集計工程(工程S11)と、第1工程(工程S12)と、第2工程(工程S13)と、第3工程(工程S14)と、第4工程(工程S15)と、を備える。
【0034】
<工程S11>
工程S11では、個々の製品と製造条件及び品質の実現値とを対応付けた製造条件データ又は品質データが作成されるとともに、製造条件データ又は品質データの集合が作成される。製品番号をn=1、2、…、Nとして、製造条件データはベクトルxnvと表す。製造条件データの集合は、一又は複数の製造条件データxnvを要素とする集合であり、ベクトルxnvを転置して行方向に並べた行列X=[x1v2v …xNv]で表す。また、着目する計数値で表される製品品質はyとし、製品品質データをyと表す。製品品質データの集合は、一又は複数の製品品質データyを要素とする集合であり、yを転置して行方向に並べたベクトルY=[y … y]で表す。
【0035】
<工程S12>
工程S12は、製造条件に応じた製品の品質を線形回帰式で定義する工程である。回帰係数ベクトル(以下、「回帰パラメータ」ということがある。)をc=[c … c]とするとき、線形回帰式は下記式1により表すことができる。
【0036】
【数1】

【0037】
<工程S13>
工程S13は、制御される製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する工程である。制御される製品の品質が、一の条鋼製品当たりの表面疵や内部欠陥の数などのように、ゼロ以上の離散値であり、かつ、上限が不明なものである場合、一の条鋼製品当たりの欠点数の平均をλとすると、対象量W(W個の製品からなる1ロット)における欠点数yは、平均λWのポアソン分布に従う確率変数であり、その確率は下記式2により表すことができる。
【0038】
【数2】

【0039】
しかし、欠点数は一の製品当たりの個数で比較されるものなので、一の製品当たり欠点数の平均λを下記式3のように定義する。
λ(x,c)=expS(x,c) …(式3)
【0040】
上記式2および式3を用いると、製造条件xに対する対象量Wにおける欠点数yの確率分布は下記式4で表すことができる。ここで、変数x(製造条件)は、製品製造工程中においてばらつく確率変数なので、欠点数yの確率分布はxを条件とする条件付き確率で表される。
【0041】
【数3】

【0042】
次に、回帰パラメータcの推定を行う。回帰パラメータcの推定は、最尤法によって行うことができる。具体的には、対数尤度Lを、製品品質データ集合Y及び製造条件データ集合Xを用いて下記式5で定義し、これを最大化する回帰パラメータcを求めることにより行う。
【0043】
【数4】

【0044】
上記式5において、W=[W … W]である。
【0045】
上記式3〜式5より、対数尤度Lは下記式6で表すことができる。
【0046】
【数5】

【0047】
式6で表される対数尤度Lを最大にする回帰パラメータcは、下記式7で表される必要条件を満たす解を、ニュートン法等により求め、その解の中から対数尤度Lを最大にするものを選択する方法や、遂次二次計画法のような非線形最適化法により求めることができる。
【0048】
【数6】

【0049】
これに対し、制御される製品の品質が、一ロット中の不良品数などのように、ゼロ以上の離散値であり、かつ、上限が有限であるものである場合、対象製品個数Mに対する不良品数y(この場合、0≦y≦M)は、一回試行した場合に発生する確率がρの事象をM回試行する場合における、発生回数に関する二項分布に従う確率変数であり、その確率分布は、一つの製品が不良品になる確率をρとして、下記式8により表すことができる。
【0050】
【数7】

上記式8において、
【0051】
【数8】

は、相異なるM個の中からy個を抽出する組合せの数である。
【0052】
ここで、不良品の発生確率ρは下記式9により表すことができる。
【0053】
【数9】

【0054】
また、上記式8および式9を用いて、製造条件xに対する対象個数Mにおける不良品数yの確率分布は、下記式10により表すことができる。
【0055】
【数10】

【0056】
制御される製品の品質が不良品数の場合、最尤法による回帰パラメータcの推定は、対数尤度Lを、製品品質データ集合及び製造条件データ集合を用いて下記式11で定義し、これを最大化する回帰パラメータcを求めることにより行う。
【0057】
【数11】

上記式11において、M=[M … M]である。
【0058】
上記式9〜式11より、対数尤度Lは下記式12で表すことができる。
【0059】
【数12】

【0060】
上記式12で表される対数尤度Lを最大にする回帰パラメータcは、制御される製品の品質が欠点数である場合と同様の方法により、求めることができる。
【0061】
<工程S14>
工程S14は、上記工程S12で定義した線形回帰式中の変数xで表されている製造条件の製品製造工程中における実際の値の確率密度分布を特定する工程である。ある製造条件xが目標値tに一致するように制御されている場合、xは必ずしもtとは一致せず、未知の外乱や制御装置の状況によりばらつきが生じる。この場合に、そのばらつきの確率分布をp(x,t)で表す。この確率分布は、例えば制御偏差実績値のヒストグラムなどから、正規分布などの確率密度関数で近似することができる。
【0062】
<工程S15>
工程S15は、上記工程S12で定義した線形回帰式、上記工程S13で特定した数式、及び、上記工程S14で特定した確率モデル式を用いて、製品の品質を予測する工程である。製品の品質を、製造工程の途中に定められた特定の時点で予測する場合には、後続製造工程(下流工程)のうち変更可能な製造条件の予測段階における予定値を並べたベクトルをx、上流工程の製造条件実績値又は下流工程の製造条件のうち変更できない製造条件の予定値を並べたベクトルをxとする。線形回帰式は特にxおよびxを明示してS(x,x,c)として表す。
【0063】
製造工程途中において、製品欠点数または不良品数の確率分布は、(y,x)の同時確率分布のxに関する周辺分布なので、xの値およびxの確率分布を用いて、
【0064】
【数13】

と表される。さらに、条件付確率の公式から確率分布p(x)を用いて、
【0065】
【数14】

に基づき、製造工程上の品質予測時点における製品品質を予測することができる。ただし、式4および式10に共通に現れる変数xに関係するx、xおよび定数ベクトルcだけを用いて表現している。
【0066】
上記式14の積分はxがベクトルの場合は多次元になるため、解析的に求めることは難しい。このような場合には、確率分布p(x,t)から発生した十分多数のN個のサンプルxc1、…、xcNをもちいたモンテカルロ法により、
【0067】
【数15】

として近似する。
【0068】
このように、第1実施形態にかかる制御方法では、離散確率分布に基づく確率モデルで特定された数式と、後続製造工程における製造条件のばらつきの確率モデル式と、を用いて、欠点数や不良品数等の製品品質を、後続製造工程の製造条件制御精度も考慮して予測する。欠点数や不良品数等に代表される、発生確率の小さい対象の確率分布は、正規分布から大きく異なり、ポアソン分布や二項分布等の離散確率分布によって高精度に近似することができるので、第1実施形態にかかる制御方法によれば、製品の品質を高精度に予測することができ、当該予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能になる。
【0069】
1.2.第2実施形態
図2は、第2実施形態にかかる本発明の製品品質の制御方法(以下、「第2実施形態にかかる制御方法」という。)に備えられる工程を示すフローチャートである。図2に示すように、第2実施形態にかかる制御方法は、データ集計工程(工程S21)と、第1工程(工程S22)と、第2工程(工程S23)と、第3工程(工程S24)と、第4工程(工程S25)と、を備え、さらに、第5工程(工程S26)を備える。
【0070】
<工程S21>
工程S21では、個々の製品と製造条件及び品質の実現値とを対応付けた製造条件データ又は品質データが作成されるとともに、製造条件データ又は品質データの集合が作成される。工程S21は上記工程S11と同様の工程であるため、説明は省略する。
【0071】
<工程S22>
工程S22は、製造条件に応じた製品の品質を線形回帰式で定義する工程である。工程S22は上記工程S12と同様の工程であるため、説明は省略する。
【0072】
<工程S23>
工程S23は、制御される製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する工程である。工程S23は上記工程S13と同様の工程であるため、説明は省略する。
【0073】
<工程S24>
工程S24は、上記工程S22で定義した線形回帰式中の変数であらわされる製造条件の製品製造工程中における実際の値の確率密度分布を特定する工程である。工程S24は上記工程S14と同様の工程であるため、説明は省略する。
【0074】
<工程S25>
工程S25は、上記工程S22で定義した線形回帰式、上記工程S23で特定した数式、及び、上記工程S24で特定した確率モデル式を用いて、製品の品質を予測する工程である。工程S25は上記工程S15と同様の工程であるため、説明は省略する。
【0075】
<工程S26>
工程S26は、上記工程S25で予測された品質が所定の範囲に属する確率を算出する工程である。製品品質が所定の上限値を上回る確率は、欠点数や不良品数についての上記確率分布により、算出できる。例えば、制御される品質が欠点数である場合、対象量Wにおける欠点数の予測値yが上限値yを上回る確率p(y>y)は、式3、式4、式14及び下記式16によって表すことができる。
【0076】
【数16】

ただし、
【0077】
【数17】

【0078】
また、制御される品質が不良品数である場合、対象製造個数Mにおける不良品数の予測値yが不良品数の上限値yを上回る確率p(y>y)は、式8、式9、式14及び下記式17によって表すことができる。
【0079】
【数18】

ただし、
【0080】
【数19】

【0081】
さらに、工程S26におけるxの目標値tに対するp(y>y)の分布をもとめ、確率p(y>y)が品質管理基準pより小さくなるxの目標値tの範囲をあらわす、回帰パラメータcを用いた不等式18を求める。
【0082】
F(t)=f+c・t>0 (式18)
ただし、fは切片、ベクトルcは後続製造条件に対する回帰パラメータcである。
【0083】
工程S25において、確率p(y>y)を、式15を用いてモンテカルロ法で数値的にもとめている場合には、目標値tを繰り返し変更しながらp(y>y)を算出し、確率p(y>y)<pとなる場合の目標値tが満たす不等式として式18をもとめる。このとき、fは、下記式19および式20の連立方程式の数値解としてもとめられる。
【0084】
F(t)=f+c・t=0 (式19)
p(y>y)=p (式20)
【0085】
後続製造工程(下流工程)の製造条件は、欠点数や不良品数が基準より大きくなる確率が基準確率より小さくなり、かつ操業上の制約条件(温度上下限、搬送時間の物理的上下限)などを満たすものの中から選択する。後続製造工程における、操業上制約条件がtに関する1次式または1次不等式で表されている場合には、下記の線形計画問題の実行可能解の一つt=tcaを求めることに帰着できる。
【0086】
「後続製造工程の製造条件決定問題」
・変数:t
・目的関数:F(t)→最大化 −F(t)→最小化
・制約条件
≦xc,max (式21)
c,min≦t (式22)
dt+d≧0 (式23)
F(t)=f+c・t>0 (式24)
【0087】
ただし、上記式21におけるxc,maxは、後続製造工程における製造条件の上限値を並べたベクトルであり、上記式22におけるxc,minは、後続製造工程における製造条件の下限値を並べたベクトルである。また、上記式23は、製造スケジュールや製造条件相互の関係を表した式である。また、上記式24は欠点数または不良品数が所定の数を上回る確率が所定の品質基準を下回る条件を表した式である。
【0088】
この線形計画問題に実行可能解が存在しない場合には、確率p(y>y)<pとなる後続製造工程の製造条件がないことになるので、この場合には、後続製造工程に対し、品質が悪化する可能性が高いことに対して注意を促す属性情報等を付す(製品品質に要注意コード等を付す)ことができる。
【0089】
2.製品品質の制御装置
2.1.第1実施形態
図3は、第1実施形態にかかる本発明の製品品質の制御装置(以下、「第1実施形態にかかる制御装置」という。)の形態例を示す概念図である。図3に示すように、第1実施形態にかかる制御装置10は、回帰式定義部1と、数式化部2と、ばらつき定式化部3と、品質予測部4と、算出部5と、結果表示部6と、を備えている。
【0090】
算出部5には、作業者によって入力された製造条件データや品質データに関する情報が送られ、当該情報に基づいて、上記工程S11や工程S21の作業が行われる。さらに、算出部5では、線形回帰式の係数が計算される。算出部5で算出された数値等に関する情報は、回帰式定義部1へと送られ、当該回帰式定義部1において、上記工程S12や工程S22の作業、すなわち、線形回帰式が定義される。
【0091】
一方、ばらつき定式化部3は、算出部5で算出された後続製造工程の製造条件に関するデータにもとづき、そのばらつきの確率モデルを数式化する。すなわち、ばらつき定式化部3において、上記工程S14や工程S24の作業が行われる。
【0092】
数式化部2は、算出部5で算出された品質等に関するデータ等と、ばらつき定式化部3で算出された後続製造条件の実現時ばらつきに関する確率モデル、及び、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて、制御される製品品質を数式化する。すなわち、数式化部2において、上記工程S13や工程S23の作業が行われる。
【0093】
このようにして、回帰式定義部1で線形回帰式が定義され、数式化部2で数式が特定され、さらにばらつき定式化部3で製造条件のばらつきをあらわす確率分布が特定されたら、これらに関する情報が品質予測部4へと送られ、当該品質予測部4において、製品の品質が予測される。すなわち、品質予測部4において、上記工程S15や上記工程S25の作業が行われる。
【0094】
なお、結果表示部6は、品質予測部4で算出した品質の予測値等を表示する部分である。
【0095】
このように、制御装置10によれば、上記第1実施形態にかかる制御方法を実施することができるので、本発明によれば、高精度の予測結果に基づいて製品の品質を制御することが可能な、製品品質の制御装置10を提供することができる。なお、制御装置10における回帰式定義部1、数式化部2、ばらつき定式化部3、品質予測部4、及び、算出部6は、実際には、パーソナルコンピュータやプロセスコンピュータの中央処理装置(CPU)等に、その機能を担わせることができる。
【0096】
2.2.第2実施形態
図4は、第2実施形態にかかる本発明の製品品質の制御装置(以下、「第2実施形態にかかる制御装置」という。)の形態例を示す概念図である。図4において、図3と同様の構成を採るものには、図3で使用した符号と同符号を付し、その説明を適宜省略する。以下、図3及び図4を参照しつつ、第2実施形態にかかる制御装置について説明する。
【0097】
図4に示すように、第2実施形態にかかる制御装置20は、回帰式定義部1と、数式化部2と、ばらつき定式化部3と、品質予測部4と、製造条件変更部7と、算出部5と、結果表示部6と、を備えている。
【0098】
製造条件変更部7は、上記工程S26の作業を行う部位であり、品質予測部4で予測された品質が、予め定めた目標範囲内に入るように、後続製造工程の製造条件を変更すべく、例えば、上記線形計画問題を解くことにより、変更後の製造条件を特定する。なお、制御装置20における結果表示部6には、予測した品質に関する結果や、欠点数や不良品数が基準を上回る確率のほか、上記線形計画問題で得られた後続製造工程の製造条件に関する指示値や、実行可能解がない場合の要注意コード付与に関する情報等が表示される。
【0099】
このように、制御装置20によれば、上記第2実施形態にかかる制御方法を実施することができるので、本発明によれば、上流工程で製品の品質が悪化するような不具合が生じても、後続製造工程の製造条件を変更することにより、最終的な製品品質の悪化を防止することが可能な、製品品質の制御装置20を提供することができる。なお、制御装置20における回帰式定義部1、数式化部2、ばらつき定式化部3、品質予測部4、製造条件変更部7、及び、算出部5は、実際には、パーソナルコンピュータやプロセスコンピュータの中央処理装置(CPU)等に、その機能を担わせることができる。
【実施例】
【0100】
実施例の結果を参照しつつ、本発明についてさらに説明する。
【0101】
本実施例で取り上げる鉄鋼条鋼製品の製造プロセス例を図5に示す。二次精錬後に連続鋳造機で鋳造されたブルーム鋳片を加熱炉で加熱・分塊し、その後、分塊圧延工程及び条鋼圧延工程等を経て、棒鋼・線材等の鉄鋼条鋼製品が製造される。本実施例では、連続鋳造機での鋳造終了後に分塊圧延及び条鋼圧延を施した後、条鋼圧延よりも上流側の製造条件が原因で発生する製品表面疵による不良率を予測した。本実施例では、製造条件のうち変更可能なものが、分塊加熱炉までの運搬時間と加熱炉における在炉時間であると仮定した。この二つの変数の和には、分塊圧延スケジュールを守るため、上限値及び下限値が存在する。
【0102】
本実施例における制御装置では、品質指標として製品表面疵不良品率を選択し、製造条件として、溶鋼成分、連続鋳造における製造条件、及び、分塊圧延における製造条件等、合計14項目を選択した。また、算出部では、各製造条件を項目ごとに平均0、分散1となるように規準化し、過去の製造実績データを用いて、回帰パラメータcを算出した。表1に、算出した回帰パラメータcを示す。また、図6に、過去の製造実績データを用いた線形回帰式の係数計算における、線形回帰式の値と不良品率の推定値との関係を示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1において、xp1、xp2、…、xp12は、上流側工程の製造条件を意味する。
【0105】
また、本実施例における不良率の基準は、「不良率が5%以下」であり、品質予測の時点では「不良率が5%以下になる確率が基準値p*=0.999以上」である。本実施例に供した製造ロットの製造予定個数は1700個である。
【0106】
線形回帰式S(x,c)は、表1に示す係数、及び、選択した14の製造条件を上記式1へ適用することにより定義する。ここで、本実施例に供した製造ロットは1700個製造予定だったので、疵による不良品が85個以下である確率が0.999以上である必要がある。この製造ロットの連続鋳造終了時点における上流工程各製造条件の規準化した値は表2のとおりだった。
【0107】
【表2】

【0108】
表2において、xp1、xp2、…、xp12は、上流工程における製造条件である。
【0109】
運搬時間と在炉時間の制御ばらつきを調べた結果、目標値に対して、運搬時間は標準偏差が5分、在炉時間は標準偏差が8分の正規分布にしたがうものとして近似できることがわかった。規準化した運搬時間の制御ばらつきの標準偏差は0.253、また規準化した在炉時間の制御ばらつきの標準偏差は0.347である。これらの規準化した標準偏差と平均0により定まる正規分布をもちいて、運搬時間と在炉時間の各々の値に対して、式17において、M=1700としてモンテカルロ法により、不良品が85個を越える確率を計算する。図7は運搬時間と在炉時間でできる平面での等高線図上に、不良品数が85個以下となる確率が0.001以下かつ、運搬時間と在炉時間の制約条件を満たす実行可能解の存在領域を示した図である。
【0110】
運搬時間をtc1、在炉時間をtc2とし、正規化した値で後続製造工程の製造条件決定問題を表すと、以下のようになる。
・変数:t=[tc1c2
・目的関数:fc1+fc2→最小化
・制約条件:
-3.98≦tc1≦3.25 (式25)
-4.26≦tc2≦3.39 (式26)
-7.7839≦19.7405tc1+23.0149tc2≦92.2161 (式27)
c1c1+cc2c2<-3.333256 (式28)
【0111】
式25は、運搬時間の制約条件を表した式である。下限値−3.98は運搬機器速度等物理的制約から特定される値であり、実際の時間に換算すると47分となる。これに対し、上限値3.25は過去の操業上の経験から設定した値であり、実際の時間に換算すると190分となる。
【0112】
また、式26は、在炉時間の制約条件を表した式である。下限値−4.26は加熱炉の搬送速度及び過去の操業上の経験から特定される値であり、実際の時間に換算すると34分となる。これに対し、上限値3.39は過去の操業上の経験から設定した値であり、実際の時間に換算すると210分となる。
【0113】
また、式27は、圧延スケジュールに合わせるための運搬時間と在炉時間の合計時間に関する制約条件を表した式である。実際の時間における下限制約条件は250分、及び、上限制約条件は350分だが、上記式23における下限値−7.7839は実際の時間における下限値250分と、運搬時間及び在炉時間各々の平均値の合計値との差であり、上限値92.2161は実際の時間における上限値350分と、運搬時間及び在炉時間各々の平均値の合計値との差である。一方、tc1の係数19.7405は運搬時間の規準化変数への変換スケールであり、tc2の係数23.0149は在炉時間の規準化変数への変換スケールである。
【0114】
また、上記式28は、不良品数が85個以上になる確率が0.001以下になる条件を表した式である。
【0115】
上記線形計画問題を解くと、目的関数の最小値は−0.5247となり、最適解は、tc1=0.7183、tc2=3.390となった。したがって、このときの不良品数<85となる確率は式15の値をモンテカルロ法により計算すると、0.000357であり、規準を下回った。また、上記tc1及びtc2の最適解を現実の値に変換すると、運搬時間=140分、在炉時間=210分となる。
【0116】
本実施例にかかる製造ロットでは、この製造条件を目標としたが、運搬時間147分、在炉時間153分の条件で1683個の製品を製造した。その結果、不良品数は45個となり、本発明の効果を確認できた。
【0117】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う製品品質の制御方法および制御装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】第1実施形態にかかる制御方法に備えられる工程を示すフローチャートである。
【図2】第2実施形態にかかる制御方法に備えられる工程を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態にかかる制御装置の形態例を示す概念図である。
【図4】第2実施形態にかかる制御装置の形態例を示す概念図である。
【図5】鉄鋼条鋼製品の製造プロセス例を示す図である。
【図6】最尤法で、表1の回帰式の係数を決定した結果、製造条件の線形回帰値Sと不良品発生率ρとの関係をプロットした図である。
【図7】モンテカルロ法で式15の確率を決定して運搬時間と在炉時間でできる平面での等高線図上に、不良品数が85個以下となる確率が0.001以下かつ、運搬時間と在炉時間の制約条件を満たす実行可能解の存在領域を示した図である。
【符号の説明】
【0119】
1…回帰式定義部
2…数式化部
3…ばらつき定式化部
4…品質予測部
5…算出部
6…結果表示部
7…製造条件変更部
10、20…製品品質の制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の品質を制御する方法であって、
製造条件に応じた前記製品の品質を、線形回帰式で定義する、第1工程と、
制御される前記製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する、第2工程と、
製品製造工程中における実際の前記製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する、第3工程と、
前記第1工程で定義された前記線形回帰式、前記第2工程で特定された数式、及び、前記第3工程で特定された前記製造条件のばらつきの確率モデル式を用いて、製品製造工程中の任意の時点で前記製品の品質を予測する、第4工程と、
を備えることを特徴とする、製品品質の制御方法。
【請求項2】
前記製品の全数の製造が終了する前に、前記第4工程によって前記品質が予測され、
前記第4工程で予測された前記品質が予め定めた目標範囲に属しない場合には、該品質が前記目標範囲に属することとなるように、後続製造工程の前記製造条件を変更する第5工程が備えられることを特徴とする、請求項1に記載の製品品質の制御方法。
【請求項3】
前記第5工程で変更される前記製造条件は、前記第1工程で定義された前記線形回帰式における該製造条件に対する係数を用いた1次式を目的関数とするとともに、前記第5工程で変更される前記製造条件に関する数式を制約条件とする、最適化問題を解くことにより特定されることを特徴とする、請求項2に記載の製品品質の制御方法。
【請求項4】
前記第1工程で定義される前記線形回帰式の係数を、前記品質の測定結果、及び/又は、前記製造条件の実績データに基づいて算出する、算出工程が、前記第1工程の前工程として備えられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製品品質の制御方法。
【請求項5】
制御される前記製品の品質が欠点数である場合には、前記第2工程で用いる前記確率モデルとしてポアソン分布が用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品品質の制御方法。
【請求項6】
制御される前記製品の品質が不良品数又は不良品率である場合には、前記第2工程で用いる前記確率モデルとして二項分布が用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品品質の制御方法。
【請求項7】
前記製品が鋼材であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品品質の制御方法。
【請求項8】
製品の品質を制御するために用いられる制御装置であって、
製造条件に応じた前記製品の品質を線形回帰式で定義する、回帰式定義部と、
制御される前記製品の品質を、離散確率分布に基づく確率モデルを用いて数式化する、数式化部と、
製品製造工程中における実際の前記製造条件のばらつきを、任意の確率モデルで数式化する、ばらつき定式化部と、
前記回帰式定義部で定義された前記線形回帰式、前記数式化部で特定された数式、及び、前記ばらつき定式化部で特定された前記製造条件のばらつきの確率モデル式を用いて、製品製造工程中の任意の時点で前記製品の品質を予測する、品質予測部と、
を備えることを特徴とする、製品品質の制御装置。
【請求項9】
前記製品の全数の製造が終了する前に、前記品質予測部によって前記品質が予測され、
前記品質予測部で予測された前記品質が予め定めた目標範囲に属しない場合には、該品質が前記目標範囲に属することとなるように後続製造工程の前記製造条件を変更する、製造条件変更部が、さらに備えられることを特徴とする、請求項8に記載の製品品質の制御装置。
【請求項10】
前記製造条件変更部で特定される前記製造条件は、前記回帰式定義部で定義された前記線形回帰式における該製造条件に対する係数を用いた1次式を目的関数とするとともに、前記製造条件変更部で変更される製造条件に関する数式を制約条件とする、最適化問題を解くことにより特定されることを特徴とする、請求項9に記載の製品品質の制御装置。
【請求項11】
さらに、前記回帰式定義部で定義される前記線形回帰式の係数を、前記品質の測定結果、及び/又は、前記製造条件の実績データに基づいて算出する、算出部が、備えられることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の製品品質の制御装置。
【請求項12】
制御される前記製品の品質が欠点数である場合には、前記数式化部で用いる前記確率モデルとしてポアソン分布が用いられることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の製品品質の制御装置。
【請求項13】
制御される前記製品の品質が不良品数又は不良品率である場合には、前記数式化部で用いる前記確率モデルとして二項分布が用いられることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の製品品質の制御装置。
【請求項14】
前記製品が鋼材であることを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の製品品質の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate