説明

製紙工業用消泡剤

水中油型エマルションに基づく、製紙工業用消泡剤であって、その油相が(a) 少なくとも12個のC原子を有する少なくとも1つのアルコール、少なくとも22個のC原子を有するアルコールとC1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはアルコキシ化されている蒸留残留物、上記の化合物の混合物、および/または(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの少なくとも1つの脂肪酸エステル、および場合によっては(c) 200℃より高い沸点を有する少なくとも1つの炭化水素、または12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸、および(d) 0〜10質量%のモノグリセリン、15〜40質量%のジグリセリン、30〜55質量%のトリグリセリン、10〜25質量%のテトラグリセリン、0〜15質量%のペンタグリセリン、0〜10質量%のヘキサグリセリン、および0〜5質量%のより高く縮合しているポリグリセリンからのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪酸との、少なくとも20%のエステル化によって得られる1〜80質量%のポリグリセリンエステルを含有し、その際、油相が水中油型エマルションの構成に50質量%より多く80質量%まで関与している消泡剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は水中油型エマルションを基礎とする製紙工業用消泡剤であって、油相が少なくとも12個のC原子を有する少なくとも1つのアルコール、少なくとも22個のC原子を有するアルコールとC1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはアルコキシ化された蒸留残留物、上記の化合物の混合物、および/またはC12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの少なくとも1つの脂肪酸エステル、および場合によっては200℃より高い沸点を有する少なくとも1つの炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸、および
0〜10質量%のモノグリセリン
15〜40質量%のジグリセリン
30〜55質量%のトリグリセリン
10〜25質量%のテトラグリセリン
0〜15質量%のペンタグリセリン
0〜10質量%のヘキサグリセリン、および
0〜5質量%のより高度に縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪酸との、少なくとも20%のエステル化によって得られる1〜80質量%のポリグリセリンエステルを含有する消泡剤に関する。
【0002】
US−A4950420号から、界面活性ポリエーテル、例えばポリオキシアルキル化(polyoxalkyliertes)グリセリンまたはポリアルコキシル化ソルビトール10〜90質量%、および多価アルコールの脂肪酸エステル、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのモノエステル、及びジエステル10〜90質量%を含有する製紙工業用消泡剤が公知である。これらの消泡剤は何らかの油、アミド、または疎水化二酸化ケイ素、またはシリコーンオイルを含まない。
【0003】
EP−A0149812号から、水中油型エマルションに基づく消泡剤であって、エマルションの油相が
(a) C12〜C26−アルコール、より高い炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはさらにアルコキシル化されている蒸留残留物、および/または
(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの脂肪酸エステル、および場合によっては
(c) 200℃より高い沸点を有する炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸を含有し、平均粒径0.5〜15μmを有し、且つ、15〜60質量%が該エマルションの構成に関与している消泡剤が公知である。該水中油型エマルションは、安定剤としてアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドまたはメタクリルアミドの、高分子で水溶性のホモポリマーまたはコポリマー0.05〜0.5質量%を含有する。
【0004】
JP−A60/083559号およびJP−A61/227756号から、食品、例えば豆腐の製造の際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルの泡止め剤としての使用が公知である。それらの調製物は脂肪アルコールを含有しないが、しかしアルカリ土類塩の存在が不可欠である。消泡剤調製物は公知の通り、前記調製物が開発されている適用分野、例えばテキスタイル工業、食品製造工業、製紙工業、塗料および皮革工業のみにおいて良好な有効性を有する。それらの特有の有効性ゆえに、効果的な転用、または他の分野における消泡剤の使用は与えられていない。
【0005】
公知の通り、通常、紙の製造の際に使用される水中油型エマルションに基づく消泡剤は、消泡される水性の系の温度が35℃より高くなると有効性を喪失する。50℃より高い温度の際、公知の水中油型エマルションを使用すると、消泡剤の有効性のさらに速い低下が生じる。製紙工場における水の循環は常により頻繁に閉じられているので、それが製紙の際に循環して流れている水の温度上昇をもたらし、従って従来使用されてきた消泡剤の有効性は明らかに低下する。
【0006】
EP−A0322830号から、水中油型エマルションに基づく消泡剤であって、エマルションの油相が
(a) C12〜C26−アルコール、より高い炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはさらにアルコキシル化されている蒸留残留物、および/または
(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの脂肪酸エステル、および場合によっては
(c) 200℃より高い沸点を有する炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸を含有し、
エマルションの構成に5〜50質量%関与し、且つ平均粒径<25μmを有し、且つ、水中油型エマルションの油相の成分(a)と(b)との5〜50質量%が
(d) 少なくとも28個のC原子を有する脂肪アルコール、C1〜C22−カルボン酸と少なくとも28個のC原子を有するアルコールとのエステル、C2〜C4−アルキレンオキシドの少なくとも28個のC原子を含有するアルコールへの付加物、少なくとも2000g/molの分子量を有するポリエチレンろう、カルナウバろう、モンタンエステルろう、およびモンタン酸ろう、並びにそれらの塩の群からの、少なくとも1つの70℃より高い温度で溶融する化合物によって置き換えられる消泡剤が公知である。
【0007】
該水中油型エマルションは35℃より高い温度、例えば50〜60℃の温度範囲でも、紙の製造の際の効果的な消泡剤である。
【0008】
EP−A0531713号から、水中油型エマルションに基づく消泡剤であって、エマルションの油相がエマルションの構成に5〜50質量%関与し、且つ、以下の成分:
(a) 少なくとも12個のC原子を有するアルコール、少なくとも22個のC原子を有するアルコールとC1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、より高い炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはアルコキシ化されている蒸留残留物、上記の化合物の混合物、および/または
(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの脂肪酸エステル、および場合によっては
(c) 200℃より高い沸点を有する炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸と
(d) 0〜10質量%のモノグリセリン
15〜40質量%のジグリセリン
30〜55質量%のトリグリセリン
10〜25質量%のテトラグリセリン
0〜15質量%のペンタグリセリン
0〜10質量%のヘキサグリセリン、および
0〜5質量%のより高度に縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪酸との少なくとも20%のエステル化によって得られる、1〜80質量%のポリグリセリンエステルとを組み合わせて含有する消泡剤が公知である。これらの消泡剤は、泡の除去のために、パルプ蒸解(Zellstoffkochung)、紙料のこう解(Mahlung)、製紙および製紙のための顔料の分散の際、泡形成媒体100質量部あたり0.02〜0.5質量部の量で使用される。紙料中でさらに、それは上記の量で脱気剤として作用する。
【0009】
本発明の基礎をなしている課題は、40℃以上の温度で少なくともこれまでそのために使用されてきた製品と同等に作用する、製紙工業のためのさらなる消泡剤を提供することである。
【0010】
本発明によれば前記の課題は、水中油型エマルションに基づく製紙工業用消泡剤であって、その油相が
(a) 少なくとも12個のC原子を有する少なくとも1つのアルコール、少なくとも22個のC原子を有するアルコールとC1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはアルコキシ化されている蒸留残留物、上記の化合物の混合物、および/または
(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの少なくとも1つの脂肪酸エステル、および場合によっては
(c) 200℃より高い沸点を有する少なくとも1つの炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸、および
(d) 0〜10質量%のモノグリセリン
15〜40質量%のジグリセリン
30〜55質量%のトリグリセリン
10〜25質量%のテトラグリセリン
0〜15質量%のペンタグリセリン
0〜10質量%のヘキサグリセリン、および
0〜5質量%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪酸との、少なくとも20%のエステル化によって得られるポリグリセリンエステルを1〜80質量%含有し、その際、油相が水中油型エマルションの構成に50質量%より多く80質量%まで関与している消泡剤を用いて解決する。
【0011】
その油相は、例えば51〜80質量%、好ましくは55〜65質量%、水中油型エマルションの構成に関与する。
【0012】
これらの消泡剤は、泡の除去のために、パルプ蒸解、紙料のこう解、製紙および製紙のための顔料の分散の際、泡形成媒体100質量部あたり0.02〜1.0質量部の量で使用される。紙料中でさらに、それは上記の量で脱気剤として作用する。
【0013】
水中油型エマルションの成分(a)としては、少なくとも12個のC原子を有する全てのアルコール、またはかかるアルコールの混合物を使用する。この場合、一般にそれは48個までのC原子を分子内に含有する一価のアルコールである。かかる製品は市販されている。しかしながら、本質的に、より多い総数の炭素原子を分子内に含有する脂肪アルコールが、成分(a)として使用されてもよい。成分(a)のアルコールとは、天然アルコールまたは合成アルコールのいずれかである。例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リシノールアルコール、リノレイル(Linoleyl)アルコールおよびエルカ(Eruca)アルコールが適している。
【0014】
成分(a)としては、様々な総数のC原子を有するアルコールの混合物、例えば(1)12〜26個のC原子を有するアルコールと(2)28〜48個のC原子を有するアルコールとの混合物もまた使用できる。
【0015】
成分(a)の合成アルコールは、少なくとも8個、通常、少なくとも10個のC原子を分子内に有する。それらは例えば、アルミニウムアルキルの酸化によってチーグラー法により得られる。この場合、それは飽和した直鎖の、分岐していないアルコールである。分子中に8個より多いC原子を有する合成アルコールは、オキソ合成法によっても得られる。この場合、一般にアルコール混合物が生じる。消泡剤エマルションの油相の成分(a)としては、さらに、上述のアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られる蒸留残留物が使用される。該蒸留残留物とは、本質的に圧力20mbarで少なくとも200℃の沸点を有するアルコールである。
【0016】
消泡剤−エマルションの油相の成分(a)としては、より高級アルコールのオキソ合成法による前述の製造方法の際、またはチーグラー法により生じる、アルコキシル化された蒸留残留物もまた適している。該蒸留残留物を、エチレンオキシドと共に、またはプロピレンオキシドと共に、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物とも共に、公知のアルコキシル化方法に供することによって、オキシアルキル化された蒸留残留物が得られる。蒸留残留物中のアルコールのOH基1つあたり、5つまでのエチレンオキシド、またはプロピレンオキシド基が付加される。好ましくは蒸留残留物中のアルコールのOH基1つあたり、1〜2つのエチレンオキシド基を付加させる。
【0017】
成分(a)としては、少なくとも22個のC原子を有するアルコールと、C1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、例えばモンタンろうまたはカルナウバろうが適している。
【0018】
成分(a)の前述の化合物は、単独、あるいは互いに任意の割合で混合して、成分(a)の部分として水中油型エマルションの油相を形成できる。
【0019】
消泡剤−エマルションの油相の成分(b)としては、C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの脂肪酸エステルを使用する。該エステルの基礎をなしている脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸である。好ましくは、該エステルの製造のためにパルチミン酸またはステアリン酸を使用する。上記のカルボン酸のエステル化のために、一価のC1〜C18−アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、デカノール、およびステアリルアルコール、また同様に、二価のアルコール、例えばエチレングリコール、または三価のアルコール、例えばグリセリンを使用できる。それらの多価アルコールを、完全あるいは部分的にエステル化できる。
【0020】
エマルションの油相は追加的に、さらに別の部類の水不溶性化合物を含有してもよく、それを以下で成分(c)として示す。成分(c)の化合物は、成分(a)および(b)に対して50質量%まで、消泡剤エマルションの油相の構成に関与できる。それを成分(a)と(b)との混合物に、あるいは(a)または(b)で挙げた化合物の各々に添加できる。成分(c)としては、例えば1013mbarで200℃より高い沸点および0℃より低い保管温度を有する炭化水素、または12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸が適している。好ましくは、炭化水素としては、パラフィン油、例えばホワイト油としても示される、市販の通常のパラフィン混合物が適している。
【0021】
成分(a)と(b)とを、それぞれ任意の割合で消泡剤−エマルションの製造に使用できる。それら両方の成分のそれぞれを単独で、あるいは他のものと混合して、本発明による消泡剤の中に含有させることができる。実際には、例えば、40〜60質量%の成分(a)と60〜40質量%の成分(b)とを含有する(a)と(b)との混合物が実証されている。水中油型エマルションの油相は、場合によってはさらに追加的に少なくとも1つの化合物(c)を含有してもよい。しかしながら、本質的なのは、上で示された成分(a)または(b)の少なくとも1つを、次に示される群(d)の少なくとも1つの化合物と組み合わせて、水中油型エマルションの油相を形成させることである。
【0022】
該化合物(d)は、水中油型エマルションの油相の構成に1〜80、好ましくは5〜20質量%の量で関与する。それは消泡剤−エマルションの油相が以下の組み合わせ:(a)および(d)、(b)および(d)並びに(a)、(b)および(d)を必然的に含有することを意味する。成分(c)の化合物を、場合によっては油相の組成物の上述の3つすべての組み合わせで、水中油型エマルションの油相に対して40質量%までの量で使用してよい。油相の成分(d)としては、
0〜10質量%のグリセリン
15〜40質量%のジグリセリン
30〜55質量%のトリグリセリン
10〜25質量%のテトラグリセリン
0〜15質量%のペンタグリセリン
0〜10質量%のヘキサグリセリン、および
0〜5質量%のより高度に縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を分子中に有する少なくとも1つの脂肪酸との少なくとも20%のエステル化によって得られる、ポリグリセリンエステルが考慮される。
【0023】
上述のポリグリセリン混合物を、好ましくは16〜30個のC原子を含有する脂肪酸を用いてエステル化する。そのエステル化度は20〜100、好ましくは60〜100%である。ポリグリセリン混合物のエステル化のために考慮される脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。ポリグリセリン混合物のエステル化のために適している脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸およびモンタンろう酸である。ポリグリセリン混合物のエステル化のためには、エチレン性不飽和脂肪酸、例えばオレイル酸、ヘキサデセン酸、エライジン酸、エイコセン酸およびドコセン酸、例えばエルカ酸、またはブラシジン(Brassidin)酸並びに多重不飽和酸、例えばオクタデセンジエン酸およびオクタトリエン酸、例えばリノール酸およびリノレン酸、並びに上記の飽和および不飽和カルボン酸の混合物が考慮される。
【0024】
該ポリグリセリン混合物は、例えば高温でのグリセリンのアルカリ性触媒による縮合(例えばFette, Seifen, Anstrichmittel, 88. Jahrgang, Nr. 3, 101〜106ページ (1986)を参照、またはDE−A3842692号による)によって、あるいは酸性触媒の存在下でのグリセリンとエピクロロヒドリンとの高温での反応によって入手可能である。該混合物は、しかしながら、純粋なポリグリセリン成分、例えばジグリセリン、トリグリセリンおよびテトラグリセリンを互いに混合しても得られる。少なくとも20%がエステル化されるポリグリセリン混合物は、ポリグリセリン混合物と望ましい脂肪酸、または脂肪酸の混合物とのエステル化によって、公知の方法に従って製造される。この場合、一般に、酸性のエステル化触媒、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、クエン酸、亜リン酸、リン酸、次亜リン酸、または塩基性触媒、例えばナトリウムメチラート、またはカリウム−tert−ブチラートの存在中で作業する。
【0025】
成分(d)の化合物は、油相中で1〜80、好ましくは5〜20質量%含有される。該油相は、本発明によれば、水中油型エマルションの構成に50より多く80質量%まで関与する一方、エマルションの構成に対する水相の割合は50〜20質量%より少なく、ここで前記の質量パーセントはそれぞれ、合計が100になる。
【0026】
該油相を水相中に乳化して入れる。このために、例えばエマルションの成分を強い剪断勾配に供する装置、例えば分散器が必要である。特に安定した水中油型エマルションを得るには、油相の乳化を水相中で、好ましくは6より大きいHLB値を有する界面活性剤の存在下で実施する(HLB値の定義についてはW.C. Griffin, Journal of the Society of Cosmetic Chemists,第5巻,249〜256ページ (1954)を参照)。界面活性剤は、水中油型乳化剤、または典型的な湿潤剤である。界面活性剤のうち、アニオン性、カチオン性、または非イオン性化合物、または互いに相容性であるそれらの化合物の混合物、例えばアニオン性湿潤剤と非イオン性湿潤剤との、またはカチオン性湿潤剤と非イオン性湿潤剤との混合物を使用できる。上記の種類の物質は、例えばより高級脂肪酸のナトリウムまたはアンモニウム塩、例えばオレイン酸アンモニウムまたはステアリン酸アンモニウム、オキシアルキル化アルキルフェノール、例えば1対2〜1対50のモル比で、エチレンオキシドによって置換されているノニルフェノールまたはイソオクチルフェノール、オキシエチル化(oxethylierte)不飽和油、例えば1モルのヒマシ油と30〜40モルのエチレンオキシドとの反応生成物、または1モルの抹香鯨アルコール(Spermalkohol)の、60〜80Molのエチレンオキシドによる変換生成物である。好ましくは乳化剤として、相応する硫酸半エステルのナトリウム塩またはアンモニウム塩として存在する、ノニルフェノールまたはオクチルフェノールのスルホン化されたオキシエチル化生成物(Oxethylierungsprodukte)もまた使用される。
【0027】
100質量部の水中油型エマルションは通常、0.1〜5質量部の乳化剤または乳化剤混合物を含有する。既に示された乳化剤の他に、さらに保護コロイド、例えば高分子多糖類、および石鹸、または他の通常の添加物、例えば安定剤を水中油型エマルションの製造の際に使用してよい。従って、例えば、エマルション全体に対して0.05〜0.5質量%で、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、またはメタクリルアミドの高分子量の水溶性ホモポリマーおよびコポリマーを安定剤として添加することが実証済みである。かかる安定剤の使用は、例えばEP−A0149812号の主題である。水相中に油相を乳化して入れることによって、製造後すぐに例えば300〜3000mPa・sの範囲の粘度を有し、且つ25μmより小さい、好ましくは0.5〜15μmの範囲の油相の平均粒径を有する、水中油型エマルションが得られる。
【0028】
成分(d)の化合物は単独で、または成分(c)と混合して、実際には水中油型エマルション消泡剤としての有効性を有さないにもかかわらず、意外なことに、成分(d)の化合物と化合物(a)および/または(b)との組み合わせの場合、相乗効果が生じ、それは(a)と(d)および(a)と(b)および(d)の組み合わせの際に最も顕著である。
【0029】
成分(a)および/または成分(b)および場合によってはさらに別の成分を乳化された形態で含有する、消泡剤の油相への成分(d)の添加は、より低い温度の場合、例えば室温の場合、得られる消泡剤の有効性を劣化させないか、あるいはほんのわずかしか劣化させないが、しかしながら、40℃より高い温度の水性の系におけるそれらの消泡剤の有効性を予想外に大きく増加させる。
【0030】
本発明による水中油型エマルションは、より高い温度で泡の発生が排除されなければならない際、例えばパルプ蒸解、紙料のこう解、抄紙機の閉じた水の循環の際の製紙、および製紙のための顔料の分散の際に、製紙工業における水性の系で使用される。泡形成媒体中の紙料100質量部に対して、0.02〜1.0、好ましくは0.05〜0.3質量部の水中油型消泡剤エマルションを使用する。該消泡剤はさらに、紙料懸濁液に添加された際、脱気を引き起こし、従って製紙の際(紙料へ添加して)、脱気剤としても使用される。それはさらに、紙の張り合わせの際の消泡剤としても適しており、その際、それは紙をコーティングする塗料に添加される。該消泡剤を食品工業、デンプン工業において、並びに浄化装置中で、泡の除去の際に使用してもよい。それが脱気剤として紙料に添加される場合、そのために用いられる量は紙料100質量部あたり0.02〜0.5質量部である。
【0031】
EP−A−0531713号から公知のエマルションと比べて、本発明による水中油型エマルションに伴う油相のより高い含有量は、より効果的な製品につながる。該製品は公知の製品と比較して、より少ない量の製品の使用で事足りるという利点を有している。さらに、本発明による水中油型エマルションのための輸送コストは公知のものよりも低い。
【0032】
実施例
実施例中で述べられる部は質量部である。パーセントの記載は、それに関連して特段記載されない限り、材料の質量に対するものである。
【0033】
水中に乳化している油相の粒子の平均粒径をBeckmann社(Firma Beckmann)のクールター計数器を用いて測定した。
【0034】
ポリマーのK値をH. Fikentscher, Cellulose−Chemie, 第13巻, 58〜64および71〜74 (1932)に従って、水溶液中、温度25℃および濃度0.5質量%で、pH7で計測した。
【0035】
空気含有率の測定(DS%):
透明なプラスチック製容器内で、発泡性の0.1%の紙料懸濁液(砕木パルプ)をそれぞれ10lずつ、5分間、ポンピングした。材料懸濁液中で形成される空気量を、その後、空気計測器(例えば、インピーダンス法に基づく、Conrex社(Firma Conrex)のSonica Geraetなど、あるいは音速測定に基づく、Cidra社(Firma Cidra)のSonatracなど)を用いて検出した。消泡剤の有効性の評価のために、脱気剤の添加の5分後の平均空気含有率を選択した。紙料分散液を消泡剤の不在下で5分間、ポンピングする場合、6%の平均空気含有率が得られる。それぞれ5ml/lの有効な消泡剤を紙料懸濁液へと添加することによって、前記の値は明らかに低下し、従ってそれは消泡剤の有効性の1つの尺度である。
【0036】
消泡剤の試験:紙料懸濁液の温度は試験に応じて30、40、50または60℃であり、その際、5分の試験の間、+/−1℃で一定に保たれた。この用語において、紙料懸濁液の平均空気含有率が少ないほど、消泡剤はより有効である。
【0037】
実施例1
分散器を用いて、油相がエマルションの構成に60質量%関与し、且つ平均粒径3〜10μmを有する、水中油型エマルションを製造した。該油相は、次の成分:
(a) 21部のC12〜C26−アルコールの脂肪アルコール混合物
(b) 5部のC16〜C18−脂肪酸のグリセリントリエステル
(c) 1部の鉱油(市販のホワイト油)、および
(d) 27%のジグリセリン、
44%のトリグリセリン、
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合したポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、C12〜C26−脂肪酸混合物とのエステル化によって得られる2部のポリグリセリンエステルからなる。そのエステル化度は60%であった。
【0038】
該水相は、
65部の水、
25モルのエチレンオキシドを1モルのイソオクチルフェノールに付加させ、そしてその付加物を硫酸を用いて半エステルにエステル化することによって得られる、3部の乳化剤、
70%のアクリルアミドと30%のアクリル酸との、K値270の1部のコポリマー、および
0.2部の苛性ソーダ
からなった。
【0039】
成分(a)〜(d)を、初めに110℃の温度まで加熱し、そしてその後、80℃に暖めた水相に分散させながら添加した。前記の通り得られた水中油型エマルションは、製造直後に温度20℃で粘度1550mPa・sを有していた。該消泡剤エマルションの有効性を上述の通り、紙料懸濁液で試験した。その結果は表に記載されている。
【0040】
比較例1a (EP−A0531713号に対しての比較)
拡散器を用いて、油相がエマルションの構成に30質量%関与し、且つ平均粒径3〜10μmを有する、水中油型エマルションを製造した。該油相は、次の成分:
(a) 21部のC12〜C26−アルコールの脂肪アルコール混合物
(b) 5部のC16〜C18−脂肪酸のグリセリントリエステル
(c) 1部の鉱油(市販のホワイト油)、および
(d) 27%のジグリセリン、
44%のトリグリセリン、
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合したポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、C12〜C26−脂肪酸混合物とのエステル化によって得られる2部のポリグリセリンエステルからなる。そのエステル化度は60%であった。該水相は、
65部の水、
25モルのエチレンオキシドを1モルのイソオクチルフェノールに付加させ、そしてその付加物を硫酸を用いて半エステルにエステル化することによって得られる、3部の乳化剤、
70%のアクリルアミドと30%のアクリル酸との、K値270の1部のコポリマー、および
0.2部の苛性ソーダ
からなった。
【0041】
成分(a)〜(d)を、初めに110℃の温度まで加熱し、そしてその後、80℃に暖めた水相に分散させながら添加した。前記の通り得られた水中油型エマルションは、製造直後に温度20℃で粘度2850mPa・sを有していた。該消泡剤エマルションの有効性を上述の通り、紙料懸濁液で試験した。その結果は表に記載されている。
【0042】
比較例1b
成分(d)を無くして、且つ成分(a)の脂肪アルコール混合物の割合を23部に増加させる以外、実施例1a中で述べられた手法に従って水中油型エマルションを製造した。製造直後、20℃で粘度が340mPa・sであるエマルションを得た。該消泡剤エマルションの有効性を上述の通り、紙料懸濁液で試験した。その結果は表に記載されている。
【0043】
比較例1c
成分(d)を無くして、且つ成分(a)の脂肪アルコール混合物の割合を23部に増加させ、且つ油の部分全体を30%に調節する以外、例1aにおいて述べられた手法に従って水中油型エマルションを製造した。製造直後、20℃で粘度が540mPa・sであるエマルションを得た。該消泡剤エマルションの有効性を上述の通り、紙料懸濁液で試験した。その結果は表に記載されている。
【0044】
実施例2
実施例1a中で述べられた手法に従ってエマルションを製造し、その際、実施例1aによる水相は変えないままで、且つ、消泡剤の油相は次の組成:
(a) C12〜C26−アルコールからの22.0部の脂肪アルコール混合物
(b) C16〜C18−脂肪酸の6.2部のグリセリントリエステル、および
(d) 27%のジグリセリン
44%のトリグリセリン
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、モンタンろう酸との1:3の比でのエステル化によって製造された、2部のポリグリセリンエステル
を有していた。そのエステル化度は60%であった。製造直後、該エマルションの粘度は約1630mPa・sであった。消泡剤としてのエマルションの試験を上述の方法に従って実施し、そして表に示される値が判明した。
【0045】
比較例2 (EP−A0531713号に対しての比較)
比較例1a中で述べられた手法に従ってエマルションを製造し、その際、比較例1aによる水相は変えないままで、且つ、消泡剤の油相は次の組成:
(a) C12〜C26−アルコールからの22.0部の脂肪アルコール混合物
(b) C16〜C18−脂肪酸の6.2部のグリセリントリエステル、および
(d) 27%のジグリセリン
44%のトリグリセリン
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、モンタンろう酸との1:3の比でのエステル化によって製造された、2部のポリグリセリンエステル
を有していた。そのエステル化度は60%であった。製造直後、該エマルションの粘度は約2930mPa・sであった。消泡剤としてのエマルションの試験を上述の方法に従って実施し、そして表に示される値が判明した。
【0046】
実施例3
実施例2中で述べられた手法に従ってエマルションを製造し、その際、実施例1aによる水相は変えないままで、且つ、消泡剤の油相は次の組成:
(a) C12〜C26−アルコールからの22.0部の脂肪アルコール混合物
(b) C16〜C18−脂肪酸の6.2部のグリセリントリエステル、および
(d) 27%のジグリセリン
44%のトリグリセリン
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、C22−脂肪酸との1:2の質量比でのエステル化によって得られ、且つ、エステル化度40%を有する、2部のポリグリセリンエステル
を有していた。製造直後、該エマルションの粘度は約660mPa・sであった。該エマルションを上述の方法に従って消泡剤として試験した。その結果は表に記載されている。
【0047】
比較例3
比較例2中で述べられた手法に従ってエマルションを製造し、その際、実施例1による水相は変えないままで、且つ、消泡剤の油相は次の組成:
(a) C12〜C26−アルコールからの22.0部の脂肪アルコール混合物
(b) C16〜C18−脂肪酸の6.2部のグリセリントリエステル、および
(d) 27%のジグリセリン
44%のトリグリセリン
19%のテトラグリセリン、および
10%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、C22−脂肪酸との1:2の質量比でのエステル化によって得られ、且つ、エステル化度40%を有する、2部のポリグリセリンエステル
を有していた。製造直後、該エマルションの粘度は約660mPa・sであった。該エマルションを上述の方法に従って消泡剤として試験した。その結果は表に記載されている。
【0048】
【表1】

【0049】
DS%: 上述の方法に従って測定された、材料懸濁液のパーセントでの平均空気含有率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルションに基づく製紙工業用消泡剤であって、その油相が
(a) 少なくとも12個のC原子を有する少なくとも1つのアルコール、少なくとも22個のC原子を有するアルコールとC1〜C36−カルボン酸との脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素数を有するアルコールのオキソ合成法による製造の際、またはチーグラー法により得られ、且つ、場合によってはアルコキシ化された蒸留残留物、上記の化合物の混合物、および/または
(b) C12〜C22−カルボン酸と一価〜三価のC1〜C18−アルコールとの少なくとも1つの脂肪酸エステル、および場合によっては
(c) 200℃より高い沸点を有する少なくとも1つの炭化水素、または12〜22個のC原子を有する脂肪酸、および
(d) 0〜10質量%のモノグリセリン
15〜40質量%のジグリセリン
30〜55質量%のトリグリセリン
10〜25質量%のテトラグリセリン
0〜15質量%のペンタグリセリン
0〜10質量%のヘキサグリセリン、および
0〜5質量%のより高く縮合しているポリグリセリン
からのポリグリセリン混合物と、12〜36個のC原子を有する少なくとも1つの脂肪酸との、少なくとも20%のエステル化によって得られる1〜80質量%のポリグリセリンエステルを含有する消泡剤において、油相が水中油型エマルションの構成に50質量%より多く80質量%まで関与していることを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
請求項1に記載の消泡剤を、泡の除去のために、パルプ蒸解、紙料のこう解、製紙および製紙のための顔料の分散の際、泡形成媒体100質量部あたり0.02〜1.0質量部の量で用いる使用。
【請求項3】
請求項1に記載の消泡剤を、紙料中の脱気剤として、紙料100質量部あたり0.02〜0.5質量部の量で用いる使用。

【公表番号】特表2011−500983(P2011−500983A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529348(P2010−529348)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063701
【国際公開番号】WO2009/050138
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】