説明

製紙用織物及び紙の製造方法

【課題】製紙用織物の機械的安定性を向上させる。
【解決手段】接結ヤーンは対になって配置され、各該接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンはトップ側CMDヤーン及びボトム側CMDヤーンと織り合わされ、対のうち第1接結ヤーンが該トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうち第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、各前記接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成する。前記トップ側MDヤーンの組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンの組合せは第2の数の複合トップ側MDヤーンを構成し、前記ボトム側MDヤーンの組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備え、前記第1の数及び前記第2の数の合計数と前記第3の数との比は2:3である製紙用織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には製紙に関するものであり、具体的には製紙に用いられる地合構成織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の長網式の製紙工程では、(紙の「原料」として知られる)セルロース繊維の水スラリーもしくは懸濁液が、2つ以上のローラの間を走行する織った金網及び/又は合成材料製エンドレスベルトの上側走行部の表面上に送り込まれている。「地合(じあい)構成織物」としばし呼ばれるこのベルトは、その上側走行部の上面に製紙表面を備え、この製紙表面は紙原料のセルロース繊維を水性媒体から分離して湿ったウェブ(web)を形成するフィルタとして機能している。この水性媒体は、重力により、又は織物の上側走行部の下面(即ち「マシン側」)に配置された真空装置により、水切り穴として知られる織物の網目から排水される。
【0003】
この地合構成部を通過後、ウェブは、抄紙機のプレス部に搬送され、同プレス部において「圧搾フェルト」と通常呼ばれる別の織物で覆われた1対以上のプレスローラのニップを通過して絞られることとなる。当該プレスローラからの圧力によってウェブから更に水分が除去され、この水分除去は、圧搾フェルトにある「芯もしくはバット(batt)」層により、しばし促進される。その後、紙は更なる水分除去のために乾燥部に搬送されることとなる。乾燥後の紙は、二次処理及び包装の準備のできた状態となっている。
【0004】
本明細書で使用しているように、「マシン方向(MD=machine direction)」及び「マシン横断方向(CMD=cross machine direction)」という用語は、それぞれ、抄紙機上での製紙用織物の走行方向に倣う方向、及びに織物表面に平行であり且つ走行方向を横切る方向を指している。同様に、織物における糸もしくはヤーンの上下関係についての方向上の呼称(例えば、上側、下側、トップ側、ボトム側、直下等)は、織物の製紙表面が織物のトップ側であること、及び織物のマシン側の表面が織物のボトム側であることを前提としている。
【0005】
通常、製紙用の織物は、2種類ある基本的な製織技術の1つによって、エンドレスベルトとして製造されている。これらの製織技術のうち第1の技術では、平坦に織る製織法により織物を平織りし、この織物の端部を接続してエンドレスベルトに形成するが、この接続は、多数の既知である接続方法のうち任意の1つにより行われている。例えば、端部をバラして再び互いに織り合わせる(一般的に、切継ぎとして知られている)ことにより、或いは各端部に又は特別の折返し部にピン縫合可能なフラップを縫い付けてその後これらをピン縫合可能なループに再び織り込むことにより行われている。多数の自動接続機が現在商業的に利用可能であり、当該自動接続機は、ある種の織物について、接続工程の少なくとも一部を自動化するために使用することが可能である。製紙用の平織物において、経糸はマシン方向に延在し、緯糸はマシン横断方向に延在することとなる。
【0006】
第2の基本的な製織技術では、織物は無端製織法により連続したベルトの形に直接に織られている。無端製織法では、経糸はマシン横断方向に延在し、緯糸はマシン方向に延在している。上述した製織方法は双方とも当該技術分野では周知であり、ここで使用されている「エンドレスベルト」という用語は、いずれかの方法により作製されたベルトを指し示している。
【0007】
効果的にシート及び繊維を支持することは、とりわけ湿ったウェブが最初に形成される抄紙機の地合構成部にとって、製紙を行う際の重要な問題となる。加えて、織物は抄紙機で高速で走行するときに良好な安定性を示す必要がある。また、ウェブが抄紙機のプレス部に搬送されるときにそのウェブに保持された水の量を減少させるために非常に高い透水性を有することが好ましい。ティッシュペーパー及び上質紙(即ち、上質印刷,カーボン付着(carbonizing),タバコ,電気コンデンサー等に使用される紙)の双方に適用される場合、製紙表面は、非常に微細に織った構造、或いは非常に微細な金網構造により構成されている。
【0008】
通常、ティッシュペーパー及び上質紙の用途で使用されるよう微細に織った織物は、比較的小径のMDヤーン又はCMDヤーンを少なくともいくつか備えている。しかし残念なことに、このようなヤーンは損傷し易く、織物としての表面寿命が短くなっている。更に、小径のヤーンを使用することが織物の機械的安定性(特に、斜め方向の抵抗,括れ(narrwoing)傾向、及び剛性)にも悪影響を与え、このことが織物の耐用年数及び特性の双方に悪影響を与えるおそれがある。
【0009】
微細に織る織物に関するこれらの問題に対応するため、紙の形成を容易にすべく、紙を形成する表面上に微細な目のヤーンを備え、かつ強度及び耐性を与えるべくマシン当接側に粗い目のヤーンを備えることにより、多層の織物が開発されてきた。例えば、1組のMDヤーンを用いてこれを2組のCMDヤーンと織り合わせ、微細な紙を形成する表面及びより耐性のあるマシン側表面を備える織物を形成するようにして、様々な織物が作製されてきた。これらの織物は、一般的に「二層織物」と呼ばれる種類の織物の一種である。同様に、2組のMDヤーン及び2組のCMDヤーンを備え、これらにより微細な目の紙側織物層及び別の粗いマシン側織物層を形成するようにして、様々な織物が作製されてきた。「三層織物」と一般的に呼ばれる種類の織物の一種であるこれらの織物において、2つの織物層が別々の接結ヤーンにより共に結ばれることが典型的である。しかしながら、これらは、1組以上のボトム側、トップ側CMDヤーン及びMDヤーンからのヤーンを使用して互いに結ばれていてもよい。二層及び三層織物は単層織物と比較して追加されたヤーンの組合せを備えているため、これらの織物は、比較し得る単層織物よりも大きな「厚さ(caliper)」を備えている(即ち、二層及び三層織物は単層織物よりも厚い)。二層織物の例としてはトンプソン(Thompson)に対しての特許文献1に示されており、三層織物の例としては、オスターバーグ(Osterberg)に対しての特許文献2、フォーリンガー(Vohringer)に対しての特許文献3、ワード(Ward)に対しての特許文献4及び特許文献5、並びにトゥロートン(Troughton)に対しての特許文献6に示されている。
【0010】
特許文献7と、2005年8月18日出願され共通の譲受人に譲渡された同時係属の特許文献8とは、「経糸接結(warped−stitched)」された多数の例示的な多層織物を示している。ある場合には、かかる織物は、緯糸接結された織物よりも製造が容易であるかも知れないし、及び/又は望ましい性能上の特性を有しているかも知れない。しかしながら、ありとあらゆる製紙上の必要性を満たす更なる経糸接結された織物の要求が依然として存在している。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,423,755号明細書
【特許文献2】米国特許第4,501,303号明細書
【特許文献3】米国特許第5,152,326号明細書
【特許文献4】米国特許第5,437,315号明細書
【特許文献5】米国特許第5,967,195号明細書
【特許文献6】米国特許第6,745,797号明細書
【特許文献7】米国特許第6,896,009号明細書
【特許文献8】米国特許願第11/207,277号明細書
【発明の開示】
【0012】
第1の形態として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物を指し示している。各繰返しユニットは、トップ側マシン方向(MD)ヤーンから成る組合せと、該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンから成る組合せと、ボトム側MDヤーンから成る組合せと、該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、接結ヤーンから成る組合せとを備えている。該接結ヤーンは対になって配置され、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうち第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうち第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過しており、それぞれの前記接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成している。前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の複合トップ側MDヤーンを構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えている。前記第1の数及び前記第2の数を合計した数と前記第3の数との比は2:3になっている。このような組織の織物は、広いトップ側表面開口面積を備え、強固にトップ側CMDヤーンを支持し、向上した脱水能力を備え、優れた安定性及び表面組織分布を備え、性能面での優位性を有することとなる。
【0013】
第2の形態として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物を指し示しており、この織物において、繰返しユニットの各々は、トップ側MDヤーンから成る組合せと、該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、ボトム側MDヤーンから成る組合せと、該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、接結ヤーンから成る組合せとを備えている。該接結ヤーンは対になって配置され、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうち第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされている場合に該対のうち第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされている場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過している。前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の接結ヤーン対を構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えている。前記第1の数及び前記第2の数を合計した数と前記第3の数との比は2:3になっている。このような織物によっても上述した性能面での優位性と同一効果を達成することができる。
【0014】
第3の形態として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物を指し示しており、各繰返しユニットは、トップ側MDヤーンから成る組合せと、該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、ボトム側MDヤーンから成る組合せと、該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、接結ヤーンから成る組合せとを備えている。該接結ヤーンは対になって配置されている。それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされている。対のうち第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうち第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過して、それぞれの前記接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成している。前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の複合トップ側MDヤーンを構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えている。前記第1の数及び前記第2の数を合計した数は前記第3の数よりも少なくなっている。
【0015】
第4の形態として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物に指し示しており、各繰返しユニットは、トップ側MDヤーンから成る組合せと、該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、ボトム側MDヤーンから成る組合せと、該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、接結ヤーンから成る組合せとを備えており、該接結ヤーンは対になって配置され、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされている。対のうち第1接結ヤーンの第1部分が前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうちの第2接結ヤーンの第1部分が前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち前記第2接結ヤーンの第2部分が前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンの第2部分が前記トップ側CMDヤーンの下側を通過して、それぞれの前記接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成している。前記第1接結ヤーンの前記第1部分及び前記第2接結ヤーンの前記第2部分は1本の共通のトップ側CMDヤーンの上側を通過している。この構成の織物は、改善されたトップ側表面組織分布を提示することを可能とする。
【0016】
第5の形態として、本発明の実施形態は、(a)上述した形式の製紙用織物を用意するステップと、(b)前記製紙用織物に紙原料を供給するステップと、(c)該紙原料から湿分を除去するステップと、から構成される紙の製造方法を指し示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、特に添付図面を参照しながら、本発明について以下に説明する。本発明は、例示した実施形態に限定されるものではなく、むしろ、これらの実施形態は、当業者に対して本発明を十分に且つ完全に開示することを意図している。図面において、同様の数字は全体にわたり同様の要素に言及している。幾つかの構成要素の厚さ及び寸法は明瞭にするため強調されることがある。
【0018】
既に知られている機能又は構成は、簡潔及び/又は明瞭にするために詳細に説明されない場合がある。
【0019】
特に別に定義されていない限り、ここで使用されている全ての用語(技術的及び科学的な用語を含む)は、本発明が属する技術について通常の知識を有する者により普通理解されるのと同じ意味を有している。更に、通常用いられている辞書に定義されているような諸用語は、その関連技術に即する意味と同一の意味を有するものと解釈されるべきであって、ここに明示的な定義がない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されてはならないであろう。
【0020】
ここで使用されている諸用語は、特定の実施形態を説明するために過ぎず、本発明を限定することを企図しているのではない。ここで使用されている個数について限定していない用語は、文脈が明らかに別のことを示していない限り、単数及び複数の個数を含むと考えられる。更に、この明細書で使用されている用語「備える」及び/又は「構成されている」とは、規定された特徴、完全体、ステップ、作業、素子及び/又は構成要素の存在を明示しているが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、作業、素子、構成要素及び/又はそれらのグループの存在もしくは付加を排除しているのではない。ここで使用する「及び/又は」という表現は、1つ以上の関連した記載項目の組合せのどれか1つ又は全てを含んでいる。
【0021】
図面はそこに例示された織物の単一繰返しユニットを示すに過ぎないが、技術に習熟した者は、商業的な適用例では、抄紙機での使用に適する大きな織物を形成するために、図示の繰返しユニットがマシン方向及びマシン横断方向の双方に何回も繰り返されることが分かるであろう。
【0022】
図面を参照すると、包括的に符号10で表された織物が図1に例示されている。図1〜図3Fを参照すると、本発明の実施形態による織物の繰返しユニットが、包括的に符号10で表されて、例示されている。この繰返しユニット10は、4本のトップ側MDヤーン11〜14と、4対の接結MDヤーン21〜28と、16本のトップ側CMDヤーン31〜46と、12本のボトム側MDヤーン51〜62と、8本のボトム側CMDヤーン71〜78とを備えている。これらのヤーンの織り合わせについて以下に記載する。
【0023】
図1及び図3Bに見られるように、トップ側MDヤーン11〜14の各々は、「上側1本/下側1本」の順序で連続させてトップ側CMDヤーン31〜46と織り合わせられており、この順序において、トップ側MDヤーン11〜14は、奇数番号が付されたトップ側CMDヤーン31,33,35,37,39,41,43,45の上側を通過すると共に偶数番号が付されたトップ側CMDヤーン32,34,36,38,40,42,44,46の下側を通過している(例えば、図3Bにおけるトップ側MDヤーン11を参照のこと)。図1に示されるように、接結ヤーン対21〜28の各々は、2本のトップ側MDヤーンの間に配置されている。図1、図3D及び図3Fに示されるように、接結ヤーン対21〜28の各々は、組み合わせられて、織物10のトップ側表面側に平織りパターンを形成する際、単一の「複合」ヤーンとして機能することとなる。具体的には、接結ヤーンの各々は、奇数で表された接結ヤーン(例えば、接結ヤーン21又は23)が1組4本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過すると共に、偶数で表された接結ヤーンの各々(例えば、接結ヤーン22又は24)が残りの1組4本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過している状態で、4本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過している。例えば、接結ヤーン21は、トップ側CMDヤーン33,35,37,39及び41の下側を通過しながら、トップ側CMDヤーン34,36,38及び40の上側を通過し、接結ヤーン22は、トップ側CMDヤーン41,43,45,31及び33の下側を通過しながらトップ側CMDヤーン42,44,46及び32の上側を通過している。従って、接結ヤーン21,22は共に、トップ側CMDヤーンに対して全体的に「上側1本/下側1本」の経路に沿う「複合」トップ側MDヤーンを形成している。このように形成された「複合」トップ側MDヤーンの各々が偶数番号を付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過するため、トップ側MDヤーン11〜14及びトップ側CMDヤーン31〜46により、織物10のトップ側、即ち、製紙表面側に平織りパターンが形成されることとなる。
【0024】
接結ヤーンの各対は、その隣接する接結ヤーン対からオフセット、即ち、位置ずれしている。例示した実施形態において、接結ヤーン対21,22は隣接する接結ヤーン対23,24から12本のトップ側CMDヤーン分だけ位置ずれしており、接結ヤーン対23,24は隣接する接結ヤーン対25,26から2本のトップ側CMDヤーン分だけ位置ずれしており、接結ヤーン対25,26は隣接する接結ヤーン対27,28から4本のトップ側CMDヤーン分だけ位置ずれしている。
【0025】
織物10のボトム側層は図2に例示されている。このボトム側層は、12本のボトム側MDヤーン51〜62と、接結ヤーン21〜28と、8本のボトム側CMDヤーン71〜78とを備えている。ボトム側MDヤーンは、「上側3本/下側1本」の順序で連続させてボトム側CMDヤーンと織り合わせられている。例えば、図2及び図3Cを参照すると、ボトム側MDヤーン52は、ボトム側CMDヤーン71の下側、ボトム側CMDヤーン72〜74の上側、ボトム側CMDヤーン75の下側、そしてボトム側CMDヤーン76〜78の上側を通過している。各ボトム側MDヤーンは、その隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれし、ボトム側MDヤーンの節部によって織物10のボトム側表面に4枚綜絖の繻子織パターンが形成されることとなる。
【0026】
図2を参照すると、接結ヤーン21〜28の各対は1本のボトム側MDヤーンを挟んでおり(例えば、接結ヤーン21〜22はボトム側MDヤーン53を挟んでいる)、各接結ヤーンは1本のボトム側CMDヤーンの下側に1つの節部を形成している。ここで使用されている「節部(knuckle)」とは、1本のヤーンがその他のヤーンと織り合される際に単一の他のヤーンの上側又は下側を通過する該1本のヤーンの部分を指しており、これに対して「浮糸(float)」とは複数の隣接するヤーンの上側又は下側を通過する1本のヤーンの部分を指している。1本の接結ヤーンにより形成される各節部は、直近のボトム側MDヤーンにより形成された節部に並んで位置しているため、各接結ヤーン対及びそれらが挟まれたボトム側MDヤーンは対の節部を形成している。例えば、ボトム側MDヤーン53は、ボトム側CMDヤーン73及び77の下側に各節部を形成している(図3E参照)。接結ヤーン21はボトム側CMDヤーン77の下側に1つの節部を形成し(図3D参照)、接結ヤーン22はボトム側CMDヤーン73の下側に1つの節部を形成している(図3F参照)。従って、各接結ヤーン21〜28は、4本のボトム側CMDヤーン分だけ対の他の接結ヤーンから位置ずれすることとなる。接結ヤーンの各対は、織物のボトム側表面上の4枚綜絖の繻子織パターンについての位置ずれに一致するように、その近隣の接結ヤーン対から位置ずれしている。
【0027】
織物10の例示した繰返しユニットには、12本のボトム側MDヤーンと事実上8本のトップ側MDヤーン(即ち、4本の通常のトップ側MDヤーン、及び4つの接結ヤーン対により形成された4本の「複合」トップ側MDヤーン)とが存在することが分かる。現存のボトム側MDヤーンよりも多くのボトム側MDヤーンを備えることにより、トップ側表面の開口面積を増すと共に、トップ側CMDヤーンによる繊維支持を増すことが可能となる。MD接結ヤーンを備えることにより、透過度を増加させ、縫目強さを向上させ、そして層間磨耗を減少させるだけでなく、さらに、CMDヤーン(典型的には緯糸として織られる)の本数を減少させ、縫目での結合のためのヤーンの本数を減少させることで製造を簡略化させることが可能となる。
【0028】
また、例示した実施形態におけるボトム側MDヤーンに対する効果的なトップ側MDヤーン(即ち、トップ側MDヤーンの数及び接結ヤーン対の数の合計)の比が2:3であることも理解できる。2:3のトップ側MDヤーン/ボトム側MDヤーン比は、織物に対して顕著な性能面での優位性をもたらし得ることが確認できた。例えば、トップ側層上のCMD節部の長さが典型的な平織物と比較して増大されることとなり、このことが、1:1の比で構成される織物と比較して高い排水能力をもたらすこととなり、特に織物が少ない網目数で構成される場合に、典型的なものでは1:2の比で構成される緯糸接結織物に対して大きな安定性及び良好な安定性を備えることとなる。加えて、より少ない数のトップ側MDヤーンが、織物の特定の実施形態において、より太いヤーンを使用することが可能となる。より太いヤーンを用いることは、シャワー抵抗(shower resistance)及びトップ側表面磨耗抵抗を改善をさせることを可能とする。
【0029】
本発明の実施形態による4枚綜絖のボトム側層を備える代表的な織物は表1に記載した特徴を備えていてもよい。
【0030】
【表1】

【0031】
本発明の別の実施形態による織物の繰返しユニットは、符号110で概略的に表されており、図4〜図6Fに示されている。この繰返しユニット110は、4本のトップ側MDヤーン111〜114と、4対の接結MDヤーン121〜128と、24本のトップ側CMDヤーン131〜154と、12本のボトム側MDヤーン161〜176と、12本のボトム側CMDヤーン181〜192と、を備えている。これらのヤーンの織り合わせについて以下に説明する。
【0032】
図4及び図6Bで確認されるように、トップ側MDヤーン111〜114の各々は、「上側1本/下側1本」の順序で連続させてトップ側CMDヤーン131〜154と織り合わせられており、この連続により、トップ側MDヤーン111〜114は、奇数番号が付されたトップ側CMDヤーン131,133,135,137,139,141,143,145,147,149,151,153の上側を通過し、偶数番号が付されたトップ側CMDヤーン132,134,136,138,140,142,144,146,148,150,152,154の下側を通過することとなる。図4で確認されるように、接結ヤーン121〜128の各対は、2本のトップ側MDヤーンの間に配置されている。図4、図6D及び図6Fで確認されるように、接結ヤーン対121〜128の各々は、組み合わせられて、(繰返しユニット10について図1〜図3Fで上記に示されたものと同様に)織物110のトップ側表面側に平織りパターンを形成する際には、単一のヤーンとして機能することとなる。具体的には、接結ヤーンの各々は、奇数で表された接結ヤーン(例えば、接結ヤーン121又は123)が1組6本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過して、偶数で表された接結ヤーンの各々(例えば、接結ヤーン122又は124)が残りの1組6本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過している。例えば、接結ヤーン121は、トップ側CMDヤーン147,149,151,153,131,133及び135の下側を通過しながらトップ側CMDヤーン148,150,152,154,132及び134の上側を通過し、接結ヤーン122は、トップ側CMDヤーン135,137,139,141,143,145及び147の下側を通過しながらトップ側CMDヤーン136,138,140,142,144及び146の上側を通過している。従って、繰返しユニット10に関する上述した方法で、接結ヤーン121,122は共に、トップ側CMDヤーンに対して全体的に「上側1本/下側1本」の経路に沿った「複合」トップ側MDヤーンを形成することとなる。このように形成された「複合」トップ側MDヤーンは偶数番号を付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過し、その結果トップ側MDヤーン111〜114及びトップ側CMDヤーン131〜154により、織物110のトップ側、即ち製紙表面側に平織パターンを形成することとなる。
【0033】
接結ヤーンの各対は、その隣接する接結ヤーン対から6本のトップ側CMDヤーン分だけオフセット、即ち位置ずれしている。一つの例では、接結ヤーン対121,122のヤーンの双方は、トップ側CMDヤーン135の下側を通過している。隣接する接結ヤーン対123,124の双方のヤーンは、6本のトップ側CMDヤーン分だけトップ側CMDヤーン135から位置ずれしたトップ側CMDヤーン141の下側を通過している。この位置ずれは、繰返しユニット110の全体にわたり繰り返されている(図4参照)。
【0034】
織物110のボトム側層は図5に例示されている。このボトム側層は、12本のボトム側MDヤーン161〜172と、接結ヤーン121〜128と、12本のボトム側CMDヤーン181〜192とを備えている。ボトム側MDヤーンは、「上側5本/下側1本」の順序で連続させてボトム側CMDヤーンと織り合わせられている。例えば、図5及び図6Aを参照すると、ボトム側MDヤーン161は、ボトム側CMDヤーン181の下側、ボトム側CMDヤーン182〜186の上側、ボトム側CMDヤーン187の下側、そしてボトム側CMDヤーン188〜192の上側を通過している。各ボトム側MDヤーンは、ボトム側MDヤーンのMD節部によって6枚綜絖の破れ斜文織パターンが形成されるように、その隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれしている。
【0035】
図5を参照すると、接結ヤーン121〜128の各対は、1本のボトム側MDヤーンを挟んでおり(例えば、接結ヤーン121〜122はボトム側MDヤーン163を挟んでいる)、各接結ヤーンは1本のボトム側CMDヤーンの下側に1つの節部を形成している。図1〜図3Fに例示した織物と同様に、1本の接結ヤーンにより形成される各節部は、直ぐ近くにあるボトム側MDヤーンにより形成された節部の脇に位置しているため、各接結ヤーン対及びそれらが挟んだボトム側MDヤーンは対の節部を形成することとなる。例えば、ボトム側MDヤーン163は、ボトム側CMDヤーン185及び191の下側に各節部を形成している(図6E参照)。接結ヤーン121はボトム側CMDヤーン185の下側に1つの節部を形成し(図6D参照)、接結ヤーン122はボトム側CMDヤーン191の下側に1つの節部を形成している(図6F参照)。従って、各接結ヤーン121〜128は、6本のボトム側CMDヤーン分だけ対になっている他の接結ヤーンから位置ずれしている。接結ヤーンの各対は、その近隣の接結ヤーン対から3本のボトム側CMDヤーン分だけ位置ずれしており、この位置ずれは繰返しユニット110のトップ側表面に関して上述した6本のトップ側CMDヤーン分の位置ずれに一致している。
【0036】
繰返しユニット10と同様に、この繰返しユニット110は、2:3の効果的なトップ側MDヤーン/ボトム側MDヤーン比を備えている。従って、該繰返しユニットは、全てではないが、繰返しユニット10に関して上述した利点のいくつかを備えている。図4〜図6Fに例示した組織を備える織物の一実施形態におけるヤーンの寸法は表2に記載されている。
【0037】
【表2】

【0038】
本発明の実施形態による更なる織物の繰返しユニットは、符号210で概略的に表されており、図7〜図9Fに示されている。この繰返しユニット210は、4本のトップ側MDヤーン211〜214と、4対の接結MDヤーン221〜228と、24本のトップ側CMDヤーン231〜254と、12本のボトム側MDヤーン261〜276と、12本のボトム側CMDヤーン281〜292とを備えている。これらのヤーンの織り合わせについて以下に説明する。
【0039】
図7及び図9Bに示されるように、トップ側MDヤーン211〜214の各々は、「上側1本/下側1本」の順序で連続させてトップ側CMDヤーン231〜254と織り合わされており、この連続によって、トップ側MDヤーン211〜214は、奇数番号が付されたトップ側CMDヤーン231,233,235,237,239,241,243,245,247,249,251,253の上側を通過し、偶数番号が付されたトップ側CMDヤーン232,234,236,238,240,242,244,246,248,250,252,254の下側を通過している。図7に示されるように、接結ヤーン221〜228の各対は、2本のトップ側MDヤーンの間に配置されている。図7、図9D及び図9Fに示されるように、接結ヤーン対221〜228の各々は組み合わせられて、(繰返しユニット10について図1〜図3Fに示されたもの、及び繰返しユニット110について図4〜図6Fに上記のように示されたものと同様に)織物210のトップ側表面上に平織りパターンを形成する際には、単一のヤーンとして機能することとなる。しかしながら、接結ヤーン対の各々は2つの接結点を備えており、そこでは、この対の接結ヤーンの双方が同じトップ側CMDヤーンの上側を通過している。従って、接結ヤーンの各々は偶数番号が付された7本のトップ側CMDヤーンの上側を通過しており、このとき奇数で表された接結ヤーン(例えば、接結ヤーン221又は223)が1組6本の偶数番号の付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過し、且つ偶数で表された接結ヤーンの各々(例えば、接結ヤーン222又は224)が残り5本の偶数番号が付されたトップ側CMDヤーンと、第1組のトップ側CMDヤーンのどちらかの端部に位置したトップ側CMDヤーンと、から成る組の上側を通過している。例えば、接結ヤーン221は、トップ側CMDヤーン245,247,249,251,253,231,233及び235の下側を通過しながら、トップ側CMDヤーン246,248,250,252,254,232及び234の上側を通過している。そして、接結ヤーン222は、トップ側CMDヤーン233,235,237,239,241,243,245及び247の下側を通過しながら、トップ側CMDヤーン234,236,238,240,242,244及び246の上側を通過している。従って、接結ヤーン221,222は共に、接結ヤーン対の双方が上側を通過しているトップ側CMDヤーン234及び246を除いて、トップ側CMDヤーンに対して全体的に「上側1本/下側1本」の経路に倣う「複合」トップ側MDヤーンを形成している(ここで使用されている用語「複合ヤーン」とは、接結ヤーンが同じトップ側CMDヤーン上にトップ側表面節部を形成していない状態の図1〜図6Fの接結ヤーン対と、接結ヤーンの「経糸(ends)」が同じトップ側CMDヤーンの上側を通過している状態の図7〜図9Fの接結ヤーン対と、の双方を含むものと考えられる)。このようにして形成された「複合」トップ側MDヤーンは偶数番号を付されたトップ側CMDヤーンの上側を通過し、その結果としてトップ側MDヤーン211〜214及びトップ側CMDヤーン231〜254により、織物210のトップ側、即ち、製紙表面側に平織パターンを形成することとなる(ここで使用されている「平織パターン」とは、図1〜図6Fにおける織物の完全な「上側1本/下側1本」パターンと、接結ヤーンの各経糸に位置する追加のトップ側表面節部によって通常の平織とは異なっている図7〜図9Fにおける織物の「上側1本/下側1本」パターンと、の双方を含むものと考えられる)。
【0040】
接結ヤーンの各対は、その隣接する接結ヤーン対から6本のトップ側CMDヤーン分だけオフセット、即ち、位置ずれしている。一例として、接結ヤーン対221,222のヤーンの双方は、トップ側CMDヤーン234の上側を通過している。隣接する接結ヤーン対223,224の双方のヤーンはトップ側CMDヤーン240の上側を通過しており、このトップ側CMDヤーン240は6本のトップ側CMDヤーン分だけトップ側CMDヤーン235から位置ずれしている。この位置ずれは、繰返しユニット210の全体にわたり繰り返されている(図7参照)。
【0041】
織物210のボトム側層は図8に例示されている。このボトム側層は、12本のボトム側MDヤーン261〜272と、接結ヤーン221〜228と、12本のボトム側CMDヤーン281〜292とを備えている。ボトム側MDヤーンは、「上側5本/下1側本」の順序で連続させてボトム側CMDヤーンと織り合わされている。例えば、図8及び図9Aを参照すると、ボトム側MDヤーン261は、ボトム側CMDヤーン281の下側、ボトム側CMDヤーン282〜286の上側、ボトム側CMDヤーン287の下側、そしてボトム側CMDヤーン288〜292の上側を通過している。各ボトム側MDヤーンは、その隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれして、ボトム側MDヤーンのMD節部によって6枚綜絖の破れ斜文織パターンを形成している。
【0042】
図8を参照すると、接結ヤーン221〜228の各対は、1本のボトム側MDヤーンを挟んでおり(例えば、接結ヤーン221〜222はボトム側MDヤーン263を挟んでいる)、各接結ヤーンは1本のボトム側CMDヤーンの下側に1つの節部を形成している。図1〜図3F及び図4〜図6Fに例示した織物と同様に、1本の接結ヤーンにより形成される各節部は、直ぐ近くにあるボトム側MDヤーンにより形成された節部の脇に位置しており、そのために各接結ヤーン対とそれらが挟んだボトム側MDヤーンとは対の節部を形成することとなる。例えば、ボトム側MDヤーン263は、ボトム側CMDヤーン285及び291の下側に各節部を形成している(図9E参照)。接結ヤーン221はボトム側CMDヤーン285の下側に1つの節部を形成し(図9D参照)、接結ヤーン222はボトム側CMDヤーン291の下側に1つの節部を形成している(図9F参照)。従って、各接結ヤーン221〜228は、6本のボトム側CMDヤーン分だけ対になっている他の接結ヤーンから位置ずれすることとなる。接結ヤーンの各対は、その近隣の接結ヤーン対から3本のボトム側CMDヤーン分だけ位置ずれしており、この位置ずれは繰返しユニット210のトップ側表面に関して上述した6本のトップ側CMDヤーン分の位置ずれに一致している。
【0043】
繰返しユニット10及び110と同様に、この繰返しユニット210は、2:3の効果的なトップ側MDヤーン/ボトム側MDヤーン比を有している。そのため、該繰返しユニットは、全てではないが、繰返しユニット10に関して上述した利点のいくつかを備えている。図7〜図9Fに例示した組織を備える織物の一実施形態におけるヤーンの寸法は表3に記載されている。
【0044】
【表3】

【0045】
この織物は、織物表面の組織分布を改善することに効果的である場合がある。場合によっては、1対の接結ヤーンの双方が下側を通過しているトップ側CMDヤーン(例えば、接結ヤーン221及び222の双方が下側を通過しているトップ側CMDヤーン234)が、接結ヤーンからの支持がないために織物のトップ側表面上で若干下方に位置することがある。上側を通過する対の接結ヤーンの双方(例えば、トップ側CMDヤーン234の上側を通過する接結ヤーン221,222)により形成される「二重節部」は、これら節部の高さを持ち上げることにより上述の問題を処理することが可能となる。このことは織物210のトップ側表面の組織分布を改善することを可能にする。
【0046】
この技術分野における当業者には分かるように、本発明の織物は異なる形態を取ることが可能である。例えば、繰返しユニット当たり異なる本数のトップ側及びボトム側MDヤーン(例えば、4本のトップ側MDヤーン及び6本のボトム側MDヤーン、又は16本のトップ側MDヤーン及び24本のボトム側MDヤーン)を用いて2:3というトップ側MDヤーン/ボトム側MDヤーンの好ましい比率を達成してもよい。別の実施形態として、トップ側MDヤーン当たり異なる数の接結ヤーン対を用いてもよい(例えば、2本又は3本のトップ側MDヤーン毎に1つの接結ヤーン対があっても、又はトップ側MDヤーン毎に2〜3つの接結ヤーン対があってもよい)。更なる別の実施形態として、トップ側及び/又はボトム側CMDヤーンの本数が変更されてもよい。また、1対のうちの両方の接結ヤーンが異なる本数のトップ側CMDヤーンと織り合わせられても、又は1対のうちの1本の接結ヤーンのみがトップ側CMDヤーンと織り合わせられてもよい(例えば、国際公開第2004/085741号パンフレットを参照のこと。当該開示内容全体はここに組み込まれるものとする)。更に、織物のトップ側表面は、例示したような平織である必要はなく、繻子織、綾織等でもよく、織物のボトム側表面は、繻子織である必要はなく、平織又は綾織のような別の形態をとることができる。本発明の織物では、織成パターンについてその他の変形例を採用することも可能である。
【0047】
本発明の織物において用いられるヤーンの形式は、製紙業者の最終的な織物に求められる特性に応じて変更することが可能である。例えば、ヤーンは、モノフィラメント糸、上述したように平らにされたモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸,撚りマルチフィラメント又はモノフィラメント糸,紡出糸,又はこれらを任意に組合せたものであってもよい。また、本発明の織物において使用されるヤーンを構成する材料は、製紙業者の織物において普通に用いられているものでもよい。例えば、ヤーンは、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン,アラミド等で形成されてもよい。当業者は、最終的な織物の特定用途に合わせてヤーンの材料を選択すべきである。特に、ポリエステル又はポリアミドから形成された円形のモノフィラメント糸を用いることが好ましい。
【0048】
ヤーンの寸法例が図1〜図9Fの織物について上記に記載されているが、当業者には明らかであるように、異なる寸法のヤーンが本発明の織物の実施形態で採用されることが可能である。例えば、トップ側MDヤーン、トップ側CMDヤーン及び接結ヤーンは約0.10〜0.25mmの直径を有することが可能であり、そしてボトム側CMDヤーンは約0.20〜0.30mmの直径を有することが可能である。本発明の実施形態による織物のメッシュもまた変更することが可能である。例えば、トップ側表面のメッシュは約20×30〜30×50(cm当たりの経糸数×cm当たりのピック数(epcm to ppcm))の間で変更することが可能であり、また、総メッシュは約60×45〜90×75の間で変更することが可能である。
【0049】
本発明の別の形態によると、紙を製造する方法が提供されている。これらの方法に従って、ここに記載した代表的な製紙用織物の1つが提供されており、紙は、この織物に紙原料を供給すると共に、次にこの紙原料から水分を除去することにより製造される。織物に紙原料をどのようにして供給するか、そしてこの紙原料から水分をどのようにして除去するについての詳細は当業者の良く理解するところであるから、本発明のこの点に関する更なる記載はここでは行なわないものとする。
【0050】
上述した実施形態は、本発明を例証するものであって、本発明を限定する意味にとられるべきではない。本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、該例示的な実施形態において、技術に習熟した者には本発明の新規な教示事項及び利点から逸脱することなく多くの改変が可能であることが容易に分かるであろう。従って、かかる改変例の全ても特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内に含まれると考えられる。本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されており、同特許請求の範囲と同等のことはその特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による織物の繰返しユニットの頂面図である。
【図2】図1の織物の繰返しユニットのボトム側層の頂面図である。
【図3】図3A〜図3Fは、図1及び図2の織物の代表的なMDヤーンの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による織物の繰返しユニットの頂面図である。
【図5】図4の織物の繰返しユニットのボトム側層の頂面図である。
【図6】図6A〜図6Fは、図4及び図5の織物の代表的なMDヤーンの断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態による織物の繰返しユニットの頂面図である。
【図8】図7の織物の繰返しユニットのボトム側層の頂面図である。
【図9】図9A〜図9Fは、図7及び図8の織物の代表的なMDヤーンの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10,110,210 織物
11〜14,111〜114,211〜214 トップ側MDヤーン
21〜28,121〜128,221〜228 接結MDヤーン
31〜46,131〜154,231〜254 トップ側CMDヤーン
51〜62,161〜176,261〜276 ボトム側MDヤーン
71〜78,211〜214,281〜292 ボトム側CMDヤーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物であって、各繰返しユニットが、
トップ側MDヤーンから成る組合せと、
該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、
ボトム側MDヤーンから成る組合せと、
該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、
接結ヤーンから成る組合せと、を備えており、
該接結ヤーンは対になって配置され、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは、前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうち第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうち第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうち該第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうち前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過して、前記各接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成しており、
前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の複合トップ側MDヤーンを構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えており、
前記第1の数及び前記第2の数を合計した数と前記第3の数との比が2:3になっていることを特徴とする製紙用織物。
【請求項2】
前記接結ヤーン対から成る組合せのうち1対は、それぞれ隣接して対になっているトップ側MDヤーンの間に位置していることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項3】
それぞれの前記接結ヤーン対のうち第1ヤーンは前記ボトム側MDヤーンの一方の側部で接結しており、それぞれの前記接結ヤーン対のうち第2ヤーンは前記ボトム側MDヤーンの他方の側部で接結していることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項4】
一対を成す前記接結ヤーンのそれぞれは、少なくとも1本のボトム側CMDヤーンの下側を通過していることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項5】
前記第1の数及び前記第2の数を前記合計した数が8であることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項6】
前記トップ側MDヤーンの直径及び前記接結ヤーンの直径が略同一であることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項7】
前記トップ側MDヤーンの直径及び前記接結ヤーンの直径が約0.10〜0.20mmの間にあることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項8】
前記トップ側MDヤーン、前記接結ヤーン、及び前記トップ側CMDヤーンは互いに織り合わされて平織パターンを形成していることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項9】
前記トップ側CMDヤーンから成る組合せは、前記ボトム側CMDヤーンから成る組合せの2倍の数のヤーンから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項10】
前記織物のトップ側表面のメッシュが約20×30〜30×50の間にあることを特徴とする請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項11】
一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物であって、各繰返しユニットが、
トップ側MDヤーンから成る組合せと、
該トップ側MDヤーンと織り合わされるCMDヤーンから成る組合せと、
ボトム側MDヤーンから成る組合せと、
該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、
接結ヤーンから成る組合せと、を備えており、
該接結ヤーンは対になって配置されて、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは、前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうちの第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうちの第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうちの該第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされている場合に、前記対のうちの前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過しており、
前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の接結ヤーン対を構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えており、
前記第1の数及び前記第2の数を合計した数と前記第3の数との比が2:3になっていることを特徴とする製紙用織物。
【請求項12】
前記接結ヤーン対から成る組合せのうち1対は、それぞれ隣接して対になっているトップ側MDヤーンの間に位置していることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項13】
それぞれの前記接結ヤーン対のうち第1ヤーンは前記ボトム側MDヤーンの一方の側部で接結しており、それぞれの前記接結ヤーン対のうち第2ヤーンは前記ボトム側MDヤーンの他方の側部で接結していることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項14】
一対を成す前記接結ヤーンのそれぞれは、少なくとも1本のボトム側CMDヤーンの下側を通過していることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項15】
前記第1の数及び前記第2の数を合計した数が8であることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項16】
前記トップ側MDヤーンの直径及び前記接結ヤーンの直径は略同一であることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項17】
前記トップ側MDヤーンの直径及び前記接結ヤーンの直径は約0.10〜0.20mmの間にあることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項18】
前記トップ側MDヤーン、前記接結ヤーン、及び前記トップ側CMDヤーンは互いに織り合わされて平織パターンを形成していることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項19】
前記トップ側CMDヤーンから成る組合せは前記ボトム側CMDヤーンから成る組合せの2倍の数のヤーンから構成されていることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項20】
前記織物のトップ側表面のメッシュは約20×30〜30×50の間にあることを特徴とする請求項11に記載の製紙用織物。
【請求項21】
一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物であって、各繰返しユニットが、
トップ側MDヤーンから成る組合せと、
該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、
ボトム側MDヤーンから成る組合せと、
該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、
接結ヤーンから成る組合せと、を備えており、
該接結ヤーンは対になって配置されて、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは、前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうちの第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に、該対のうちの第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうちの前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされているときに、前記対のうちの前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過して、各接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成しており、
前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の複合トップ側MDヤーンを構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えており、
前記第1の数及び前記第2の数を合計した数は前記第3の数よりも少ないことを特徴とする製紙用織物。
【請求項22】
一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物であって、各繰返しユニットが、
トップ側MDヤーンから成る組合せと、
該トップ側MDヤーンと織り合わされるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、
ボトム側MDヤーンから成る組合せと、
該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、
接結ヤーンから成る組合せと、を備えており、
該接結ヤーンは対になって配置されて、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは、前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうちの第1接結ヤーンの第1部分が前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうちの第2接結ヤーンの第1部分が前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうちの前記第2接結ヤーンの第2部分が前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうちの前記第1接結ヤーンの第2部分が前記トップ側CMDヤーンの下側を通過して、それぞれの前記接結ヤーン対が複合トップ側MDヤーンを形成しており、
前記第1接結ヤーンの前記第1部分及び前記第2接結ヤーンの前記第2部分は1本の共通のトップ側CMDヤーンの上側を通過していることを特徴とする製紙用織物。
【請求項23】
前記第1接結ヤーンの前記第1部分及び前記第2接結ヤーンの前記第2部分は、非隣接の2本の共通トップ側CMDヤーンの上側を通過していることを特徴とする請求項22に記載の製紙用織物。
【請求項24】
紙を製造する方法であって、
(a) 一連の繰返しユニットから構成される製紙用織物であって、各繰返しユニットが、
トップ側MDヤーンから成る組合せと、
該トップ側MDヤーンと織り合わせられるトップ側CMDヤーンから成る組合せと、
ボトム側MDヤーンから成る組合せと、
該ボトム側MDヤーンと織り合わされるボトム側CMDヤーンから成る組合せと、
接結ヤーンから成る組合せと、を備えており、
該接結ヤーンは対になって配置されて、それぞれの前記接結ヤーン対の少なくとも1本のヤーンは、前記トップ側CMDヤーン及び前記ボトム側CMDヤーンと織り合わされており、対のうちの第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に該対のうちの第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過し、前記対のうちの前記第2接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンと織り合わされる場合に前記対のうちの前記第1接結ヤーンが前記トップ側CMDヤーンの下側を通過しており、
前記トップ側MDヤーンから成る組合せは第1の数のトップ側MDヤーンを備え、前記接結ヤーンから成る組合せは第2の数の接結ヤーン対を構成し、前記ボトム側MDヤーンから成る組合せは第3の数のボトム側MDヤーンを備えており、
前記第1の数及び前記第2の数を合計した数と前記第3の数との比が2:3である、製紙用織物を用意するステップと、
(b) 前記製紙用織物に紙原料を供給するステップと、
(c) 該紙原料から湿分を除去するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−231503(P2007−231503A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−47188(P2007−47188)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(500048074)ウィーヴェックス・コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】