説明

製薬学的活性化合物のinvivoでの迅速同定のための動物モデル

第一の態様において、本発明は、腫瘍細胞株がヒト以外の動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成することが可能であることを特徴とする、腫瘍退縮、腫瘍増殖の安定化若しくは転移性増殖の阻害と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子、好ましくは蛍光タンパク質を含有する発現ベクターで安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞株を提供する。伝統的なin vivoモデルに比較して、本発明は、レポーター遺伝子が構成的に発現されないがしかし腫瘍退縮、腫瘍増殖の安定化若しくは転移性増殖の阻害と関連するタンパク質若しくは酵素の発現をもたらす試験化合物への曝露後にのみ発現されるために異なる。試験されるべき化合物が循環に入りかつ腫瘍に浸潤した場合にのみ、それはレポーターシグナルを発生させうるが、但し、それが腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現を促進し、そして前記タンパク質のプロモーターはレポーター遺伝子に機能しうるように連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍性増殖、とりわけ癌性増殖のための動物モデルに関する。具体的には、該動物モデルは、製薬学的活性化合物のin vivoでの同定を可能にし、腫瘍退縮、腫瘍増殖の安定化若しくは転移の阻害と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含んでなる発現ベクターで安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞の使用を含んでなる。
【背景技術】
【0002】
長期の異種移植片研究を実施する必要を伴わずに、提案された新たな抗腫瘍薬の有効性を試験するための代表的な動物モデルに対する必要性が長い間存在している。潜在的な抗腫瘍薬が試験されている現在のin vivoモデルは、腫瘍細胞をヒト以外の動物に移植すること、該動物を提案された新たな抗腫瘍薬で処置すること、およびその後該動物をモニターして腫瘍の増殖に対する処置の効果を決定することを必要とする。宿主細胞の背景に対する腫瘍細胞の可視化を補助するために、多くのin vivoモデルは、生物発光分子のルシフェラーゼ族およびエクオリン族のようなレポーター遺伝子で安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞を使用する。
【0003】
抗腫瘍薬の開発におけるこれらのin vivoモデルの主要な欠点は制限された処理量である。すなわち、多数の動物および大量の提案された抗腫瘍性化合物が必要とされる。さらに、これらのin vivoモデルは、移植した腫瘍が動物中で増殖するのに十分な時間を必要とするために時間がかかる。従って、改良されたモデルが最近、特許文献1にてLassota P.により提案された。このモデルにおいて、抗腫瘍薬により活性化されるレポーター遺伝子をもつ腫瘍細胞を、ヒト以外の動物に移植されかつ試験されるべき化合物への該動物の曝露後に除去される生物適合性の半透性被包化装置中で増殖させる。しかしながら、該腫瘍細胞の人工的環境を鑑みれば、該腫瘍細胞の応答が、循環に入り、腫瘍組織に浸潤しそしてその生物学的効果を発揮することを化合物が必要とするin vivoの状況を正確に模倣するかどうかは疑問である。
【0004】
これゆえに、上で挙げられた欠点を伴わないヒトの腫瘍性疾患の動物モデルに対する必要性を実現させるために、本発明は、提案された抗腫瘍性化合物の薬理学的活性をin vivoで正確に模倣する能力を有する新規動物モデルを開示する。化合物の抗腫瘍活性をモニターすることを可能にしかつ腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされた安定に形質転換された腫瘍細胞の使用を含んでなるモデル。所望の動物モデルを提供するために、細胞は;
−動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成する能力を保持する;
−腫瘍退縮と関連するタンパク質の内因性応答と一致するシグナルを発生する;
−in vivoでの薬物物質の速度効果のリアルタイム分析を可能にするような良好なS/N比をもつシグナルを発生する;
−動物間の低い変動性を提供するような良好な再現性を伴うシグナルを発生する;および−誘導された応答の非侵襲的画像化を可能にするシグナルを発生する
べきである。
【特許文献1】2002年7月18日に第WO 02/055742号明細書として公開された国際特許出願(第PCT/EP02/00106号明細書)
【発明の開示】
【0005】
[発明の要約]
第一の態様において、本発明は、ヒト以外の動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成することが可能であることを特徴とする、腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子、好ましくは蛍光タンパク質を含有する発現ベクターで安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞株を提供する。
【0006】
伝統的なin vivoモデルに比較して、本発明は、レポーター遺伝子が構成的に発現されないがいしかし腫瘍退縮と関連するタンパク質若しくは酵素の発現をもたらす試験化合物への曝露後にのみ発現されるために異なる。試験されるべき化合物が循環中に入りかつ腫瘍に浸潤した場合にのみ、それはレポーターシグナルを発生させうるが、但し、それは腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現を促進し、また、前記タンパク質のプロモーターは該レポーター遺伝子に機能しうるように連結されている。
【0007】
該モデルは、提案された抗腫瘍性化合物のin vivoの製薬学的活性を試験するためのターンオーバー時間が短縮されるため、従来のin vivoモデルを上回り高度に有利である。従来のin vivoモデルにおいては、結果を得るのに典型的に4ないし5週かかり、本モデルにおいては、腫瘍がヒト以外の動物中で一旦形成されれば試験化合物の効果を一両日中に知ることが可能である。さらに、蛍光シグナルの輝度および再現性を鑑みれば、腫瘍は皮膚を通して見ることができかつ自動全身画像化系を使用して測定し得る。結果として、統計学的に有意の効果を得るためにより少数の動物が必要とされる。本動物モデルのさらなる一利点は、感度、および広範な濃度範囲内の試験化合物の蛍光シグナルの応答性である。この組合せは、試験化合物のin vivo活性について動態のリアルタイム解析を実施しかつ観察されるところの腫瘍重量の変化と組合される場合に試験化合物の抗腫瘍効果を予測することを可能にする。特徴のこの組合せは、制限された量の試験化合物の投与後の非侵襲的画像化を可能にして(30日という伝統的な期間の代わりに4日)、実験時間および従って試験化合物の低減、ならびに犠牲になる動物および動物施設の占有の減少につながる。
【0008】
特定の一実施態様において、プロモーターはp21プロモーターよりなる。p21タンパク質はサイクリン依存性のキナーゼ活性の阻害剤として作用しそして細胞周期の進行を効果的に停止する。DNA損傷剤、およびそれぞれp53応答配列(TATAボックスに関して−4500bpないし−1300bpの領域に位置する)若しくはsp1部位(TATAボックスに関して−60bpないし+40bpの領域に位置する)によりp21プロモーターを活性化するヒストンデアセチラーゼ阻害剤を包含する多種多様な抗腫瘍薬がp21プロモーターを活性化し、そしてp21タンパク質の増大した発現をもたらすことが示されている。本発明の特定の一実施態様において、p21プロモーターは、p53応答配列を含まずかつ従ってDNA損傷剤に対し非応答性であることを特徴とするp21の1300bpのプロモーターフラグメントよりなる。別の実施態様において、p21プロモーターはp53応答配列を含んでなるp21プロモーターよりなり、前記p21プロモーターはDNA損傷剤に応答性である。あるいは、DNA損傷剤に応答性のプロモーターは、少なくとも1個のp53応答配列を含んでなる単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ基礎プロモーター(HSV−TK)のような最小プロモーターよりなる。従って、使用されるプロモーターに基づき、本発明は、DNA損傷剤および/若しくはヒストンデアセチラーゼ阻害剤のいずれかのin vivoでの薬理学的効果に対して選択的なモデルを提供する。または、一般に、目的の腫瘍性剤に依存して、代替の応答配列を使用し得る。
【0009】
−本発明の腫瘍細胞を試験されるべき化合物と接触させる段階;および
−レポーター遺伝子の発現を測定する段階
を含んでなる、抗腫瘍活性についての化合物のin vitroスクリーニング方法を提供することもまた本発明の一目的であり;
ここで、対照レベルに比較してのレポーター遺伝子発現の増大が該化合物を抗腫瘍活性を有すると同定する。特定の一実施態様において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質であり、そしてレポーター遺伝子の発現は発射される蛍光の量として測定される。上に説明されたとおり、本in vitroの方法についてもまた、使用されるプロモーターに依存してスクリーニングの選択性を変えることが可能である。本発明の特定の一実施態様において、該in vitroスクリーニング法はヒストンデアセチラーゼ阻害剤に対し選択的であり、そして、p21の1300bpのプロモーターフラグメントがp53応答配列を含まないことを特徴とする前記プロモーターフラグメントを含んでなる発現ベクターで安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞を含んでなる。さらなる一実施態様において、該in vitroスクリーニング法は例えばアクチノマイシンDのようなDNA損傷剤に対し選択的であり、そして最低1個のp53応答配列を含んでなる発現ベクターで安定にトランスフェクトされた腫瘍細胞を含んでなる。ある実施態様において、発現ベクターは、好ましくはHSV−TKプロモーターのような最小プロモーターの一部として配列番号10よりなるp53応答配列を含んでなる。
【0010】
さらなる一実施態様において、本発明は化合物の製薬学的活性をスクリーニングするためのヒト以外の動物を提供し、前記動物は本発明の安定に形質転換された腫瘍細胞を含んでなる。前記腫瘍細胞は、皮下モデルを提供するためにヒト以外の動物の皮下に、同所モデルを提供するために腫瘍起源の器官(例えば肺中の肺癌細胞)中に、腹膜モデルを提供するためにヒト以外の動物の腹腔中に、若しくは転移モデルを提供するためにヒト以外の動物の血管に外科的に移植若しくは腫瘍細胞懸濁液として注入し得る。好ましい実施態様において、腫瘍細胞は皮下モデルを提供するために皮下に注入される。
【0011】
従って、
−本発明の腫瘍細胞をヒト以外の動物において腫瘍を形成するのに十分な量で前記ヒト以外の動物に投与する段階;
−前記ヒト以外の動物中で腫瘍を形成するのに十分な時間を腫瘍細胞に与える段階;
−もしかすると活性のある化合物を前記ヒト以外の動物に投与する段階;および
−レポーター遺伝子の発現を測定することにより腫瘍細胞に対する前記化合物の効果を評価する段階
を含んでなる、製薬学的活性についての化合物のスクリーニング方法を提供することが本発明の一目的である。製薬学的活性化合物とのインキュベーションは対照レベルに比較してレポーター遺伝子発現の増大をもたらすことができる。
【0012】
これおよび本発明のさらなる態様は下により詳細に論考されるであろう。
[発明の詳細な記述]
ベクター
本発明は、発現レベルが生理学的状態と関連するタンパク質若しくは酵素の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含んでなるベクターに関する。
【0013】
本明細書で使用されるところの機能しうるように連結されたは、プロモーターを該プロモーターの制御下に遺伝子を発現するように正しいフレームで該遺伝子と機能可能に融合することを意味している。本明細書で使用されるところの「レポーター遺伝子」という用語は、単純で安価な方法若しくは試薬を使用して同定し得かつプロモーター領域若しくはその活性フラグメントに機能しうるように連結し得る遺伝子産物をコードする遺伝子を意味している。例えばホタルルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、細菌のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ若しくは蛍光タンパク質レポーター遺伝子のようなレポーター遺伝子を、転写活性を測定するために本発明のスクリーニングアッセイで使用し得る(例えば、Goeddel(編)、Methods Enzymol.、Vol.185、サンディエゴ:Academic Press,Inc.(1990)を参照されたい;Sambrook、上記もまた参照されたい)。好ましい一実施態様において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質、とりわけEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、GcRedよりなる群から選択される蛍光タンパク質、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質である。本発明の特定の一実施態様において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質ZsGreenである。前記レポーター分子およびその遺伝子配列は当該技術分野で既知でありかつClontech、カリフォルニア州サンディエゴにより販売される蛍光タンパク質のように商業的に入手可能である。
【0014】
例えば核酸構築物の製造、突然変異誘発、シークェンシング、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現における核酸の操作、ならびにタンパク質の分析の技術およびプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology、Ausbelら編、John Wiley & Sons、1997に詳細に記述されている。
【0015】
本発明のベクターはpCAT3、pGL2、pGL3若しくはpSV−β−Galactosidaseのような商業的に入手可能なベクターから選択若しくは構築し得、そして、典型的には適切な制御配列、ならびに1個若しくはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合のアンピシリン耐性遺伝子若しくは哺乳動物ベクターのためのネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。下に例示されるとおり、本発明の一実施態様において、ベクターはpGL3 basicベクターから構築する。前記ベクター配列は当該技術分野で既知でありかつPromega、ウィスコンシン州マディソンにより販売されるpGL3 basicベクターのように商業的に入手可能である。とりわけ、本発明のベクターは、該発現ベクターが設計される宿主細胞と適合性のみならずしかしまたそれぞれの宿主細胞中で所望の生理学的効果を有することが既知のタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび小分子を包含する化合物にも応答性のプロモーター配列を制御配列の1つとして含有する。従って、本発明の発現ベクター中のプロモーター配列は、それが、連結されたレポーター遺伝子の発現を調節しかつ転写因子の結合若しくは遊離により活性化されることを特徴とする応答配列としてもまた知られる最低1個の制御配列要素を含んでなり、ここで、前記転写因子の存在若しくは非存在は宿主細胞の所望の生理学的条件と相関する。例えば、所望の生理学的条件が宿主細胞中での細胞周期の停止および分化を誘導することよりなる場合、該プロモーター配列は、転写因子Sp1およびSp3のようなp21活性化因子ならびにステロイドホルモン、神経成長因子、腫瘍壊死因子−α、ホルボールエステル、ホスファターゼ阻害剤、インターフェロンγおよびSmad腫瘍サプレッサータンパク質のような細胞周期の停止および細胞分化の他の誘発因子への曝露に際して活性化されることが既知であるp21WAF−1/Cip1プロモーターの近接部分で見出されるGCリッチモチーフを含みうる。
【0016】
従って、本明細書で使用されるところのプロモーターは、発現レベルが所望の生理学的条件に依存するタンパク質の発現もまた制御するp21WAF−1/Cip1プロモーターのような天然に存在するプロモーター、若しくは下の実施例に記述されるところのp21の1300bpのプロモーターフラグメントのようなプロモーター活性を有するそのフラグメントのいずれかでありうる。特定の一実施態様において、プロモーター配列は、最小インターロイキン6(IL6)プロモーター(phu.IL6Pluc+ Plaisanceら(1997)MCB 17、3733−3743)、最小E1Bプロモーター(Stratageneから商業的に入手可能なpMCSluc)、若しくはルシフェラーゼの商業的に入手可能なTKプロモーター(pTKluc Promega)のような最小プロモーター要素に機能しうるように連結されたp53応答配列のような前述の制御配列要素の1つを含んでなる組換えDNA構築物よりなり、好ましくは、該プロモーター
は下述されるところのp21の1300bpのプロモーターフラグメント若しくは下述されるところのp53応答配列を含んでなるHSV−TK最小プロモーターよりなる。別の実施態様において、プロモーター配列は、腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーター若しくはプロモーター活性を有するそのフラグメントであることができる。
【0017】
標的細胞
別の態様において、本発明は、発現レベルが生理学的条件と関連するタンパク質若しくは酵素の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含んでなる発現ベクターで安定に形質転換された標的細胞に関する。
【0018】
上述されたところのベクター構築物は、好ましくはリポソーム、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法および遺伝子銃の使用のような標準的なトランスフェクション法を使用するトランスフェクション若しくは形質導入のようないずれかの既知の方法によって標的細胞に導入し得る。
【0019】
腫瘍性増殖、とりわけ癌性増殖のためのヒト以外の動物モデルを提供することが本発明のさらなる一態様であるため、本発明のベクターを、ヒト以外の動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成することが可能な標的細胞に導入することができる。適する細胞株の例は、黒色腫、肺癌株、腎癌株、結腸癌株、前立腺癌株、卵巣癌株、乳癌株、中枢神経系腫瘍株、白血病細胞株などを包含する。一実施態様において、標的細胞は卵巣癌細胞株、とりわけA2780(ECACC番号93112520)よりなり、別の実施態様において、標的細胞は結腸直腸癌細胞株、とりわけHCT116(ATCC番号CCL−247)よりなる。さらなる標的細胞は、多様な哺乳動物細胞株、とりわけヒト細胞株を包含する多様な細胞株から選択し得る。本明細書で使用されるところの標的細胞は、ネオマイシンのような選択マーカー、メチオニナーゼのような治療的タンパク質若しくはレポーター遺伝子産物のための発現系で既に形質転換されている前述の細胞のいずれかを包含することに注目すべきである。例えば、本発明の代替の一実施態様において、ヒト以外の動物に投与される場合に腫瘍を形成することが可能な標的細胞はホタルルシフェラーゼ若しくは蛍光タンパク質(上を参照されたい)のようなレポータータンパク質をコードする発現系で既に形質転換されている。これらの細胞を本発明のベクターで形質転換してよいが、但し、発光タンパク質すなわち基礎色を提供するレポーター遺伝子および誘導可能な色を提供する本発明のベクターの放射波長は相互に重ならない。可能な組合せは、とりわけ、高められた蛍光タンパク質EBFP、ECFP、EGFPおよびEYFPを伴うDsRed;DsRedを伴うZsGreen;EYFPを伴うEGFP;EBFPを伴うEGFP;EYFPを伴うEBFP;若しくはEYFPを伴うECFPを包含する。本発明のベクターで一旦形質転換されれば、これらの細胞は、例えば、投与された腫瘍細胞が、試験化合物の抗腫瘍活性を研究するための本明細書に記述される誘導可能な系と組合せで前記ヒト以外の動物中で腫瘍を形成するのに十分な時間を有した場合に、腫瘍全体の効率的な検出を確立することを可能にする。とりわけ、試験されるべき化合物が受動拡散および/若しくは血管新生を介して腫瘍に進入するかどうかを研究するため。いずれの場合も、標的細胞の選択は検討されるべき生理学的条件に依存するであろう。あるいは、本発明の発現ベクターは有意性に達するための良好な誘導因子でのレポーター遺伝子の低いがしかし検出可能な基礎発現を有する。本実施態様において、投与された腫瘍細胞が前記ヒト以外の動物中で腫瘍を形成するのに十分な時間を有した場合に確立するのに低い基礎発現を使用し得る。これゆえに標的細胞の二重トランスフェクションは必要とされない。この有利な実施態様は本発明のベクターがレポーター遺伝子としてZsGreenを含んでなる場合に生じた。
【0020】
従って、腫瘍退縮と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされて
いる安定に形質転換された腫瘍細胞株を提供することが、本発明の一目的である。とりわけ、p21活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる、安定に形質転換された卵巣癌細胞株、好ましくはA2780細胞、好ましくは、前記プロモーターは1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)を含んでなり、なおより好ましくは、前記プロモーター配列は1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質は、EGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRed、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において蛍光タンパク質はZsGreenよりなる。好ましい一実施態様において、安定に形質転換された細胞は、それぞれの受託番号LMBP 5958CBおよびLMBP 5959CBをもつpGL3−basic−ZsGreen−1300−クローン1およびpGL3−basic−ZsGreen−1300−クローン2として2003年1月20日にベルギーの微生物協調収集物(Belgian Coordinated Collection of Microorganisms)(BCCM)に寄託されたクローンから選択される。前記クローンは、商業的に入手可能なpGL3ベクター由来かつp21活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結されたZsGreenをコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなり、前記プロモーターは1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)を含んでなり、ここで前記クローンは、それらがMitsui(別名MS−275−Shering−登録番号209783−80−2)のような細胞周期の停止および細胞分化の既知の誘発因子での誘導に際して自動全身画像化系による蛍光の検出を可能にする低い基礎蛍光発現を有することを特徴とする。
これらの特徴、すなわち
−ヒト以外の動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成する能力、
−低い基礎蛍光、
−細胞周期の停止および細胞分化の既知の誘発因子への曝露に際して特定の様式で誘導可能である蛍光、ならびに
−非侵襲的な全身画像化技術を使用してあるレベルまで検出可能なこと
を鑑みれば、前記クローンは、提案された抗腫瘍性化合物のin vivo製薬学的活性を研究するための重要なツールを提供する。伝統的なin vivoモデルに比較して、ヒト以外の動物、とりわけウサギ、モルモット、マウス、ラットおよびイヌ、好ましくはげっ歯類のような実験動物でのこれらの細胞の使用は、時間および化合物を消費する薬物動態(PK)および薬動力学(PD)研究を実施することなく薬物発見過程のより早い時点で化合物が評価されることを可能にする。
【0021】
代替の一実施態様において、該細胞株は、最小インターロイキン6(IL6)プロモーター(phu.IL6Pluc+ Plaisanceら(1997)MCB 17、3733−3743)、最小E1Bプロモーター(Stratageneから商業的に入手可能なpMCSluc)、若しくはルシフェラーゼの商業的に入手可能なTKプロモーター(pTKluc Promega)のような最小プロモーター要素に機能しうるように連結されたp53応答配列のような前述の制御配列要素の1つを含んでなる組換えDNA構築物よりなるプロモーター配列を含んでなる発現ベクターで形質転換される。とりわけ、p53活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる安定に形質転換された結腸直腸癌細胞株若しくは卵巣癌細胞株、好ましくはHCT116細胞若しくはA2780細胞、好ましくは、前記プロモーターはp53応答配列(配列番号10)を含んでなり、より好ましくは、前記プロモーターは、p53応答配列(配列番号10)を含んでなる最小HSV−TKプロモーターよりなり、なおより好ましくは、p53応答性のHSV−TKプロモーター配列(配列番号13)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質はEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRed、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において蛍光タンパク質はZsGreenよりなる。特定の一実施態様において、安定に形質転換された細胞は、商業的に入手可能なpGL3ベクター由来かつp53活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結されたZsGreenをコードする核酸配列を含有するp53RE_TK/pGL3−Basic−ZsGreenベクター(図)でトランスフェクトしたA2780若しくはHCT116細胞よりなり、前記プロモーターはp53応答性のHSV−TKプロモーター配列(配列番号14)を含んでなり、ここで前記クローンは、それらがDNA損傷剤への曝露、低酸素、ヌクレオチド枯渇若しくは発癌活性化のようなp53の活性化因子での誘導に際して自動全身画像化系による蛍光の検出を可能にする低い基礎蛍光発現を有することを特徴とする。これらの特徴、すなわち
−ヒト以外の動物に移植若しくは注入される場合に腫瘍を形成する能力、
−低い基礎蛍光、
−細胞周期の停止および細胞分化の既知の誘発因子への曝露に際して特定の方法で誘導可能である蛍光、ならびに
−非侵襲的な全身画像化技術を使用してあるレベルまで検出可能であること、
を鑑みれば、前記クローンは、提案された抗腫瘍性化合物のin vivo製薬学的活性を研究するための重要なツールを提供する。伝統的なin vivoモデルに比較して、ヒト以外の動物、とりわけウサギ、モルモット、マウス、ラットおよびイヌ、好ましくはげっ歯類のような実験動物でのこれらの細胞の使用は、時間および化合物を消費する薬物動態(PK)および薬動力学(PD)研究を実施することなく、薬物発見過程のより早い時点で化合物が評価されることを可能にする。
【0022】
従って、さらなる一実施態様において、本発明は、最小プロモーター要素が腫瘍退縮と関連する化合物に応答することを特徴とする、該プロモーター配列に機能しうるように連結された制御配列要素を含んでなる組換えDNA構築物よりなるプロモーター配列に機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされている安定に形質転換された腫瘍細胞株を提供する。本明細書で使用されるところの化合物はタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび小分子を包含する。
【0023】
アッセイ
本発明の安定に形質転換された細胞を試験されるべき化合物と接触させること;およびレポーター遺伝子の発現を測定するを含んでなる、製薬学的活性化合物を同定するためのin vitroスクリーニングアッセイでの上で挙げられた細胞株の使用を提供することもまた本発明の一目的である。本明細書で使用されるところの製薬学的活性化合物は、発現ベクター中に存在するプロモーター配列を活性化することが可能な化合物を指す。
【0024】
抗腫瘍活性をもつ化合物を同定するための特定の実施態様において、前述のスクリーニング方法における安定に形質転換された細胞は、腫瘍退縮と関連する化合物に応答性であるプロモーター配列に機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターを含んでなる。従って;本発明の安定に形質転換された腫瘍細胞を試験されるべき化合物と接触させること、およびレポーター遺伝子の発現を測定するを含んでなる、抗腫瘍活性をもつ化合物のin vitro同定方法を提供することが本発明の一目的である。
【0025】
前述のin vitroスクリーニング法の好ましい一実施態様において、安定に形質転換された腫瘍細胞は、p21活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる安定に形質転換された卵巣癌細胞、好ましくはA2780細胞よりなり、好ましくは、前記プロモーターは1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)を含んでなり、
なおより好ましくは、前記プロモーター配列は1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質はEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRed、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において蛍光タンパク質はZsGreen若しくはZsRedよりなる。より好ましい一実施態様において、該in vitroスクリーニング法で使用される安定に形質転換された腫瘍細胞は、受託番号LMBP 5958CBおよびLMBP 5959CBでBCCMに寄託されたクローンから選択される。前述のin vitroスクリーニング法の別の実施態様において、安定に形質転換された腫瘍細胞は、p53活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる安定に形質転換された結腸直腸癌細胞若しくは安定に形質転換された卵巣癌細胞、好ましくはA2780細胞若しくはHCT116細胞よりなり、好ましくは、前記プロモーターはp53応答配列(配列番号10)を含んでなり、なおより好ましくは、前記プロモーターはp53応答配列を含んでなる最小HSV−TKプロモーター(配列番号13)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質はEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRedまたはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において蛍光タンパク質はZsGreenよりなる。特定の一実施態様において、該in vitroの方法で使用される安定に形質転換された細胞は、p53RE_TK/pGL3−Basic−ZsGreenベクター(図6)でトランスフェクトしたA2780若しくはHCT116細胞よりなる。
【0026】
前述のアッセイをハイスループットスクリーニングの目的に適合させ得ることが当業者により容易に認識されるであろう。例えば、蛍光の変化を測定することにより抗腫瘍活性を評価するアッセイは、蛍光イメージングプレート読取装置((FLIPRA(R))、Molecular Devices Corporation)と呼ばれる機器に基づいて設計し得る。その最も一般的な構成においてそれは蛍光化合物を励起しかつそれにより発射される蛍光を測定する。それは、フルオロフォアの高出力励起を生じさせるためのアルゴンイオンレーザー、96/384ウェルプレートの底全体を迅速に走査するための光学系、および発射された蛍光を捕捉するための高感度の冷却CCDカメラを使用する。それは、該機器が試験剤の溶液を96/384ウェルプレートのウェルに送達することを可能にする96/384ウェル分注ヘッドもまた含有する。FLIPRアッセイは、化合物の添加前、間および後の細胞の集団からの蛍光シグナルを全部の96/384ウェルから同時にリアルタイムで測定するよう設計されている。FLIPRアッセイは、本発明の安定に形質転換された腫瘍細胞中で機能的に活性の化合物についてスクリーニングしかつそれらを特徴づけるのにも使用しうる。
【0027】
p21若しくはp53活性化因子を同定するためにとりわけ有用なハイスループットスクリーニングアッセイは、本発明の発現ベクターで安定に形質転換された卵巣癌細胞、とりわけA2780細胞を試験化合物とともにインキュベートし、そして相互作用を可能にするための十分な時間(8〜24時間、典型的には12〜24時間、とりわけ24時間)の後に、FLIPR若しくはAscent Fluoroskan(Thermo Labsystems、ベルギー・ブリュッセルから商業的に入手可能)のような自動蛍光プレート読取装置を使用して相対蛍光単位の変化を測定する単一段階の処置よりなり得る。
【0028】
ヒト以外の動物モデル
本発明の標的細胞を含んでなるヒト以外の動物を提供することもまた本発明の一実施態様である。とりわけ、腫瘍性増殖、とりわけ癌性増殖についてのヒト以外の動物モデルを提供すること。
【0029】
従って、本発明は、前記ヒト以外の動物において腫瘍の産生を遂げるのに十分な量の本発明の安定に形質転換された腫瘍細胞を前記ヒト以外の動物に投与することを含んでなる、腫瘍性増殖のヒト以外の動物モデルの製造方法を提供する。ここで、モデルとしての使用のための前記ヒト以外の動物は、好ましくは哺乳動物被験体、最も好ましくはモルモット、ウサギ、ラットおよびマウスなどのような便宜的な実験動物である。ヒト被験体へのより近密な類似のため霊長類もまた使用し得る。損なわれた免疫系を伴う被験体、典型的にはヌードマウス若しくはSCIDマウスのような、腫瘍の進行に感受性の被験体がとりわけ有用である。いかなる適切な脊椎動物被験体も使用し得、選択は主として便宜性および最終目的の系への類似性により決定される。該ヒト以外の動物モデルは、好ましくはヌードマウスのようなげっ歯類であり、また、腫瘍の産生を遂げるための細胞の量は典型的に10から10細胞までの範囲にわたる(例えば米国特許第6,251,384号明細書を参照されたい)。好ましくは、こうした投与は皮下でありかつ腫瘍は充実性の塊として形成される。
【0030】
上で挙げられた動物モデルは抗腫瘍活性をもつ化合物のスクリーニング方法で使用し得る。好ましくは、前記ヒト以外の動物に投与される腫瘍細胞は、p21活性化因子に対し応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる安定に形質転換された卵巣癌細胞、好ましくはA2780細胞よりなり、好ましくは、前記プロモーターは1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)を含んでなり、なおより好ましくは、前記プロモーター配列は1300bpのp 21プロモーター配列(配列番号1)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質はEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRed、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において、蛍光タンパク質はZsGreen若しくはZsRedよりなる。より好ましい一実施態様において、該in vivoスクリーニング法で使用される安定に形質転換された腫瘍細胞は、受託番号LMBP 5958CBおよびLMBP 5959CBでBCCMに寄託されたクローンから選択される。
【0031】
代替の一実施態様において、該in vivoスクリーニング法で使用される腫瘍細胞は、最小インターロイキン6(IL6)プロモーター(phu.IL6Pluc+ Plaisanceら(1997)MCB 17、3733−3743)、最小E1Bプロモーター(Stratageneから商業的に入手可能なpMCSluc)、若しくはルシフェラーゼの商業的に入手可能なTKプロモーター(pTKluc Promega)のような最小プロモーター要素に機能しうるように連結されたp53応答配列のような前述の制御配列要素の1つを含んでなる組換えDNA構築物よりなるプロモーター配列を含んでなる発現ベクターで形質転換されている。一実施態様において、該in vivoスクリーニングで使用される安定に形質転換された腫瘍細胞は、p53活性化因子に応答性であるプロモーターに機能しうるように連結された蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含有する発現ベクターを含んでなる安定に形質転換された結腸直腸癌細胞若しくは安定に形質転換された卵巣癌細胞、好ましくはA2780細胞若しくはHCT116細胞よりなり、好ましくは、前記プロモーターはp53応答配列(配列番号10)を含んでなり、なおより好ましくは、前記プロモーターはp53応答配列を含んでなる最小HSV−TKプロモーター(配列番号13)よりなる。ここで、さらなる一実施態様において、蛍光タンパク質はEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRed、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる群から選択され、そして特定の一実施態様において蛍光タンパク質はZsGreenよりなる。特定の一実施態様において、該in vivoの方法で使用される安定に形質転換された細胞は、p53RE_TK/pGL3−Basic−ZsGreenベクター(図6)でトランスフェクトしたA2780若しくはHCT116細胞よりなる。
【0032】
従って、さらなる一実施態様において、本発明は、本発明のin vivoスクリーニング法において最小プロモーター要素が腫瘍退縮と関連する化合物に応答することを特徴とする、前記プロモーター配列に機能しうるように連結された制御配列要素を含んでなる組換えDNA構築物よりなるプロモーター配列に機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされている安定に形質転換された腫瘍細胞株の使用を提供する。
【0033】
該in vivoスクリーニング法で使用される場合に、前記ヒト以外の動物に投与される安定に形質転換された腫瘍細胞は、前記ヒト以外の動物において腫瘍を形成するための十分な時間を有するべきであった。腫瘍、およびとりわけキャリパーで測定可能な充実性腫瘍は、典型的には該ヒト以外の動物への安定に形質転換された腫瘍細胞の投与7〜20日後に形成される。特定の一実施態様において、本発明のA2780形質転換細胞を使用して、およびとりわけ受託番号LMBP 5958CB若しくはLMBP 5959CBでBCCMに寄託された卵巣癌細胞を使用して、キャリパーで測定可能な腫瘍は細胞の注入12日後に得られる。
【0034】
従って、さらなる一実施態様において、本発明は;
本発明の安定に形質転換された腫瘍細胞が典型的にはヒト以外の動物の皮下に注入される10ないし10細胞を含んでなる腫瘍細胞懸濁液として投与される、本発明の腫瘍細胞をヒト以外の動物に投与する段階;および
前記ヒト以外の動物において腫瘍を形成するための十分な時間(上で概説されたところの卵巣癌細胞を使用する特定の実施態様において典型的には7〜14日、より好ましくは9〜12日およびとりわけ12日よりなる)を腫瘍細胞に与える段階
を含んでなる、抗腫瘍活性をもつ化合物を同定するためのヒト以外のin vivo動物モデルの製造方法を提供する。
【0035】
上で挙げられた方法に従って得ることができるヒト以外の動物モデルは;
もしかすると活性のある化合物を本発明のヒト以外の動物、好ましくは上で概説されたところの卵巣癌細胞を注入されたヌードマウスに投与する段階(ここで該もしかすると活性のある化合物は静脈内、経口および腹腔内を包含する全部の臨床上適切な投与経路により投与してよい);ならびに
レポーター遺伝子の発現を測定することにより腫瘍細胞に対する前記もしかすると活性のある化合物の効果を評価する段階
を含んでなる、抗腫瘍活性をもつ化合物のin vivo同定方法でその後使用しうる。
【0036】
本記述を通じ、「標準的方法」、「標準的プロトコル」および「標準的手順」という用語は、分子生物学の技術の情況で使用される場合、Current Protocols
in Molecular Biology、編者F.Ausubelら、John Wiley and Sons,Inc.、1994、若しくはSambrook,J.、Fritsch,E.F.とManiatis,T.、Molecular Cloning:A laboratory manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989のような通常の実験室手引き書に見出されるプロトコルおよび手順として理解されるべきである。
【0037】
本発明は後に続く実験の詳細への参照によりより良好に理解されるであろうが、しかし、当業者は、これらがその後に続く請求の範囲でより完全に記述されるところの本発明の
具体的説明にすぎないことを容易に認識するであろう。加えて、本出願を通じて多様な刊行物が引用される。これらの刊行物の開示はこれにより、本発明が属する従来技術をより完全に記述するために本出願に引用することにより組込まれる。
【実施例1】
【0038】
材料および方法
細胞培養および試薬
A2780細胞(ATCC)は、5%COを含む加湿インキュベータ中、37℃で、10%FCS、2mM L−グルタミンおよびゲンタマイシンを補充したRPMI 1640培地中で培養した。HCT116細胞(ATCC)は5%COを含む加湿インキュベータ中、37℃で、10%FCS、2mM L−グルタミンおよびゲンタマイシンを補充したマッコイ5a培地中で培養した。全部の細胞培養溶液はGibco−BRL(メリーランド州ゲイサーズバーグ)により提供される。他の材料はNuncにより提供される。
【0039】
4500kbのp21プロモーターフラグメントおよび1300kbのp21プロモーターフラグメントの製造
ゲノムDNAを、増殖しているA2780細胞から抽出しかつp21プロモーターのネステッドPCR単離の鋳型として使用した。第一の増幅は、鋳型としてのゲノムDNAとともにオリゴヌクレオチド対GAGGGCGCGGTGCTTGG(配列番号2)およびTGCCGCCGCTCTCTCACC(配列番号3)を使用して55℃のアニーリング温度で20周期の間実施した。TATAボックスに関して−4551ないし+88のフラグメントを含有する、生じる4.5kbのフラグメントを、4.5kbのフラグメントをもたらす88℃でのアニーリングを伴う20周期の間オリゴヌクレオチドTCGGGTACCGAGGGCGCGGTGCTTGG(配列番号4)およびATACTCGAGTGCCGCCGCTCTCTCACC(配列番号5)を用い、そしてその後TATAボックスに関して−1300ないし+88のフラグメントを含有する1.3kbのフラグメントをもたらす88℃のアニーリングを伴う20周期の間オリゴヌクレオチド対TCGGGTACCGGTAGATGGGAGCGGATAGACACATC(配列番号6)およびATACTCGAGTGCCGCCGCTCTCTCACC(配列番号7)を用いて再増幅した。オリゴヌクレオチド中に存在する制限部位XhoIおよびKpnI(下線を付けた配列)をサブクローニングに使用した。
【0040】
p21プロモーター構築物
ルシフェラーゼレポーターをpGL3−basicから除去しかつKpnIおよびXbaI制限部位でZsGreenレポーター(pZsGreen1−N1プラスミドから)により置換した。pGL3−basic−ZsGreen−1300は、ヒトp21プロモーター領域の上で挙げられた1.3kbのフラグメントのpGL3−basic−ZsGreenへのXhoIおよびKpnI部位での挿入を介して構築した。全部の制限酵素はBoehringer Manheim(ドイツ)により提供される。
【0041】
一過性トランスフェクションおよび安定なトランスフェクション
A2780細胞を2×10細胞の密度で6ウェルプレートにプレーティングし、24時間インキュベートし、そして製造元により記述されたとおりリポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen、ベルギー・ブリュッセル)を使用することにより2μgのpGL3−basic−ZsGreen−1300および0.2μgのpSV2neoベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をG418(Gibco−BRL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)で10日間選択し、そして単一細胞懸濁液を増殖させた。3週後に80個の単一クローンを得た。
【0042】
p21プロモーター活性の誘導
A2780のトランスフェクトしたプールおよび選択した80クローンを拡大しそしてウェルあたり10000細胞で96ウェルプレートに接種した。接種24時間後に、標的を定めた化合物(近接のp21プロモーター領域中のsp1部位に影響を及ぼす)若しく
はDNA損傷剤(p53応答配列に影響を及ぼす)で細胞を追加の24時間処理した。その後細胞を4%PFAで30分間固定し、そしてヘキスト染色で対染色した。ZsGreen産生および従って蛍光に至るp21プロモーターの活性化を、Ascent Fluoroskan(Thermo Labsystems、ベルギー・ブリュッセル)および蛍光顕微鏡(Zeiss)によりモニターした。
【0043】
in vivo評価
選択したクローンをヌードマウスの脇腹に皮下注入し(10細胞/200μl)そしてキャリパーで測定可能な腫瘍を12日後に得た。第12日以降、溶媒、20mpkのMitsui(別名MS−275−Shering−登録番号209783−80−2)若しくは40mpkのJNJX(それぞれ10、10および4動物)を6日間毎日動物に経口投与した。腫瘍は、社内で開発した自動全身画像化系(GFPフィルターを装備しかつNational Instruments(R)からのIMAQ Visionソフトウェアに基づくソフトウェアパッケージにより制御されるCCDカメラ 型式JAI(R)CV−M90に接続した蛍光立体顕微鏡 型式Olympus(R)SZX12)により蛍光について評価した。
【0044】
結果
HDAC阻害剤によるp21の1300bpのプロモーターフラグメントのin vitroでの誘導
A2780の安定なトランスフェクトしたプールおよび選択した80クローンを、材料および方法に記述されたとおり、TSA(10−7M)、ブレオマイシン(15mU)およびMitsui(10−6M)で処理した。80クローンのうち6クローンがTSAおよびMitsui処理に応答した。これらのクローンの4個は、Fluoroskanで検出可能でなかったくらい低い基礎蛍光発現を示したが、しかし蛍光顕微鏡を使用するZsGreen産生の人的評価により選択し得た。2個の他のクローンは測定が可能であり、そしてTSA(10−7)により5倍およびMitsui(10−6)により1.2〜1.5倍の誘導を示した。
【0045】
これら6クローンをDNA損傷剤(カンプトテシン、ブレオマイシンおよびドキソルビシン)ならびにHDAC阻害剤(TSA、Mitsui、化合物XおよびSaha)に対する用量応答にて評価した。クローン1は10−7のTSAに応答して5倍、10−6MのMitsuiに対し1.8倍および10−6MのJNJXに対し3倍の誘導を示した(図1)。DNA損傷剤はp21プロモーターの1300bpのフラグメントを活性化することが可能でなかった(図1)。クローン5は同一の応答を示した(図1)。クローン2、3、4および6の誘導は該系の感度の問題によりFluoroskanにより測定し得なかったが、しかし蛍光顕微鏡を使用することにより蛍光の増大を可視化し得た(データは示されない)。
【0046】
HDAC阻害剤によるin vivoでのp21プロモーターの誘導
マウスにクローン1、2、3および5を注入し、そして材料および方法に記述されたとおり化合物(溶媒、20mpkのMitsui若しくは40mpkのJNJ’99)を投与した。基礎のZsGreen発現および誘導は、クローン2および3において、自動全身画像化系により検出されるには低すぎた。クローン1および5の基礎蛍光は測定が可能であり、また、ZsGreenの誘導は第一の用量の投与3日後に非常に明瞭でありかつ5日後にプラトーに達した(図2)。
【0047】
考察
TSA、MitsuiおよびSAHAのような数種の既知のヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、TATAボックスに関して−60bpから+40bpまでの領域のネズミのp21waf1,cip1プロモーターのトランス活性化を誘導することが示された。この領域はわれわれのp21waf1,cip1の1300bpのプロモーター構築物中に存在する。われわれのデータは、これらの剤がpGL3−basic−ZsGreen−1300でトランスフェクトしたA2780細胞中でin vitroでZsGreen産生
を誘導することを確認する。DNA損傷剤(カンプトテシン、ブレオマイシンおよびドキソルビシン)はp21waf1,cip1プロモーターのp53依存性の調節を介してそれらの活性を発揮する。p53応答配列は、p21waf1,cip1プロモーター中のより下流に1300bpのプロモーターフラグメント中に存在しない領域に位置している。これはDNA損傷剤に対する該系の非応答性を説明する。これらのデータから、われわれは、われわれのレポーター系がヒストン脱アセチル化に関する分子事象を検討するためのモデルを提供しかつ該レポーター系の特異性をin vitroで明らかにすると結論する。この概念はまた、とりわけDNA損傷剤を、若しくは応答配列を適合させることによりいずれかの他の薬物を試験するのにも使用し得る。
【0048】
化合物のin vivoでの作用ははるかにより複雑であり、そして該化合物が活性の形態で循環に入り、腫瘍に達するかどうか、および腫瘍内の濃度がその生物学的活性を発揮するのに十分高いかどうかを決定するための労働集約的な動物試験を必要とする。Mitsui化合物が腫瘍に達し得ること、および腫瘍中で達する濃度が腫瘍が増殖するのを止めるのに十分高いことが、より複雑なPK/PD研究で示された。本報告において、われわれは、Mitsui化合物が、pGL3−basic−ZsGreen−1300でトランスフェクトしたA2780異種移植片中で処置4日後に蛍光を誘導することを示し、該化合物がin vivoで腫瘍に達しかつその生物学的活性を発揮することを暗示する。これは、本系がin vivoでの活性についての迅速かつ正確な結論を可能にする非常に強力なin vivoツールであることを確認し、時間および化合物を消費するPK/PD研究を実施することなく薬物発見過程のより早い時点で化合物が評価されることを可能にする。
【実施例2】
【0049】
材料および方法
細胞培養および試薬
A2780細胞(ATCC)は5%COを含む加湿インキュベータ中、37℃で、10%FCS、2mM L−グルタミンおよびゲンタマイシンを補充したRPMI 1640培地中で培養した。HCT116細胞(ATCC)は5%COを含む加湿インキュベータ中、37℃で、10%FCS、2mM L−グルタミンおよびゲンタマイシンを補充したマッコイ5a培地中で培養した。全部の細胞培養溶液はGibco−BRL(メリーランド州ゲイサーズバーグ)により提供される。他の材料はNuncにより提供される。
【0050】
p53応答配列の製造
以下のオリゴのp53REフォワードCCTGCCTGGACTTGCCTGGGTCGACCCTGCCTGGACTTGCCTGGC(配列番号8)およびp53REリバースTCGAGCCAGGCAAGTCCAGGCAGGGTCGACCCAGGCAAGTCCAGGCAGGGAGCT(配列番号9)をEurogentecから注文した。該オリゴヌクレオチド対を、アニーリング緩衝液(150mMトリス pH7.6、15mM MgCl、23mM DTT)中で65℃で開始して50℃、40℃、30℃にわたり20℃の最終温度まで5分ごとのアニーリング温度の段階的低下によりアニーリングした。クローニングのためのSacI/XhoIオーバーハングをもつフラグメントが形成された(応答配列は下線を付けた配列である)(配列番号10):
TCCCTG CCTGGACTTG CCTGGGTCGA CCCTGCCTGG ACTTGCCTGG C
CTCGAGGGAC GGACCTGAAC GGACCCAGCT GGGACGGACC TGAACGGACC GAGCTC
【0051】
構築物
ルシフェラーゼレポーターをpGL3−basicから除去しかつKpnIおよびXbaI制限部位でZsGreenレポーター(pZsGreen1−N1プラスミドから)により置換した。
【0052】
HSV−TK最小プロモーター(単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ基礎プロモーター)をPCRにより得、pTK Lucプラスミド(Clontech #6252−1)を鋳型として使用した。pTK Lucプラスミドのマルチクローニング部位と一緒にHSV−TK最小プロモーターを増幅するようにプライマーを設計した。増幅は、鋳型としてのプラスミドとともにオリゴヌクレオチド対GTACCGAGCTCTTACGCGTG(配列番号11)およびGTGGATCCCTGCTTCATCCCCGTGGC(配列番号12)を使用して58℃のアニーリング温度で30周期の間実施した。Expand High Fidelity PCR系はRocheにより提供された。オリゴヌクレオチド中に存在する制限部位SacIおよびBamHI(下線を付けた配列)をサブクローニングに使用した。SacI/BglII部位でのpGL3−basic−ZsGreen1−N1中への上で挙げられた197bpのPCRフラグメントの挿入を介して、構築物TK/pGL3−basic−ZsGreenを構築した。全部の制限酵素はRoche(ドイツ)により提供される。
【0053】
p53応答配列をその後、TK/pGL3−basic−ZsGreenベクターのSacI/XhoIクローニング部位にTKプロモーターの前にクローン化して、構築物p53RE_TK/pGL3−basic−ZsGreen(図6)を得た。
【0054】
安定なトランスフェクション
A2780細胞およびHCT116細胞を4×10細胞の密度で6ウェルプレートにプレーティングし、24時間インキュベートし、そして製造元により記述されたとおりリポフェクタミン(Lipofectamine)およびプラス試薬(Plus Reagent)(Invitrogen、ベルギー・ブリュッセル)を使用することにより2μgのp53RE_TK/pGL3−basic−ZsGreenおよび0.2μgのpMC1−neo−Poly Aベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をG418(Gibco−BRL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)で16日間選択し、そして単一細胞懸濁液を増殖させた。3週後に60個の単一クローンをトランスフェクトしたHCT116細胞から得、また、40個の単一クローンをトランスフェクトしたA2780細胞から得た。
【0055】
p53RE_tk活性の誘導
A2780およびHCT116のトランスフェクトしたプールおよび選択したクローンを拡大し、そしてウェルあたり20000細胞で96ウェルプレートに接種した。接種24時間後に、細胞をDNA損傷剤(p53応答配列に影響を及ぼす)で追加の24時間処理した。ZsGreen産生および従って蛍光に至るp53RE_tkの活性化を、Ascent Fluoroskan(Thermo Labsystems、ベルギー・ブリュッセル)および蛍光顕微鏡(Zeiss)によりモニターした。
【0056】
結果
DNA損傷剤によるin vitroでのp53RE_tkの誘導
HCT116およびA2780の安定なトランスフェクトしたプールおよび選択したクローンをアクチノマイシンD(10ng/ml)で処理した。選択したクローンのうち、6個のHCT116クローンおよび2個のA2780クローンがアクチノマイシンD処理に応答した。これら8クローンについて、蛍光の最低2倍の誘導が処理に応答してFluoroskanで検出可能であった。とりわけ、A2780のクローン36ならびにHCT116のクローン5および36は、アクチノマイシン処理に応答しての強い誘導係数を伴う、検出可能な低い基礎蛍光発現を示した(図3)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】クローン1のDNA損傷剤およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)に対するp21プロモーターの用量応答。細胞を、指定された化合物、すなわちDNA損傷剤カンプトテシン(camp.)、ブレオマイシン(bleo)およびドキソルビシン(dox)ならびにHDACi化合物TSA、Mitsui、化合物XおよびSAHAで24時間処理する。材料および方法に記述されるとおりAscent Fluoroskanを使用して蛍光を測定した。誘導の倍数は、DMSO処理した細胞の蛍光により除算した誘導後の蛍光として計算した。クローン1は、10−7MのTSAでの処理後5倍の誘導;10−6MのMitsuiに対し2倍の誘導および10−6Mの化合物Xに対し3倍の誘導を示した。
【図1B】クローン5のDNA損傷剤およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)に対するp21プロモーター構築物の用量応答。細胞を、指定された化合物、すなわちDNA損傷剤カンプトテシン(camp.)、ブレオマイシン(bleo)およびドキソルビシン(dox)ならびにHDACi化合物TSA、Mitsui、JNJ99(Comp.X)およびSAHAで24時間処理する。材料および方法に記述されるとおりFluoroskanを使用して蛍光を測定した。誘導の倍数は、DMSO処理した細胞の蛍光により除算した誘導後の蛍光として計算した。クローン5は、10−7MのTSAでの処理後5倍の誘導;10−6MのMitsuiに対し2倍の誘導および10−6Mの化合物Xに対し4倍の誘導を示した。
【図2】異種移植片の蛍光のin vivo可視化。クローン1をヌードマウスの脇腹に皮下注入した(10細胞/200μl)。第12日以降、溶媒、Mitsui(20mpk)若しくは化合物X(40mpk)を6日間毎日動物に投与した。生存マウス中の腫瘍を、社内で開発した自動全身画像化系蛍光について評価し、そして蛍光強度を比較した。ZsGreenの誘導は第一の用量の投与3日後に非常に明瞭であり、そして処置の開始5日後にプラトーに達した。
【図3】A2780およびHCT116クローンにおけるDNA損傷剤アクチノマイシンDに対するp53REプロモーター構築物の応答。細胞をアクチノマイシンDで24時間処理する。蛍光を、実施例2に記述されるとおりFluoroskanを使用して測定した。誘導の倍数は、DMSO処理した細胞の蛍光により除算した誘導後の蛍光として計算した。A2780クローン36は10ng/mlのアクチノマイシンDでの処理後2倍の誘導を示し;2ないしほぼ4倍の誘導がHCT116クローンで観察された。
【図4】p21waf,cip1プロモーター−ZsGreenモデルはHDAC阻害剤の生物学的効果をin vitroで予測する。pGl3−basic−ZsGreen−1300でトランスフェクトしたA2780卵巣癌細胞のクローン5を、指定された濃度のHDAC阻害剤SAHA(*)、MS−275(Δ)、LAQ−824( )およびTSA(●)若しくは溶媒(0.1%DMSO)で24時間処理した。図4Aはp21 ELISAを使用して測定されたところのクローン5のp21タンパク質誘導を示す。図4BはAscent Fluoroskanを使用して測定されたところのクローン5中で誘導された蛍光を表す。p21の誘導パターンは、p21応答性のZsGreen発現ベクターpGl3−basic−ZsGreen−1300の誘導パターンと同一である。
【図5】p21waf,cip1プロモーター−ZsGreenモデルは個別のマウスでのMS−275の抗腫瘍効果をin vivoで予測する。ヌードマウスに、ヒトA2780p21waf,cip1ZsGreen卵巣癌細胞(107細胞/マウス)を皮下に注入し、そして第4日からその後、ベヒクル(対照群、20%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)若しくは指定された用量のMS−275(QD)で経口で処置した。自動全身画像化系を使用して個々の腫瘍の腫瘍重量および蛍光を第28日に評価した。
【図6】53RE_TK/pGL3−basic−ZsGreen発現ベクター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍退縮、腫瘍増殖の安定化若しくは転移性増殖の阻害と関連するタンパク質の発現もまた制御するプロモーターに機能しうるように連結されたレポーター遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされている、安定に形質転換された腫瘍細胞。
【請求項2】
安定に形質転換された腫瘍細胞が、安定に形質転換された卵巣癌細胞若しくは結腸直腸癌細胞よりなる、請求項1に記載の腫瘍細胞。
【請求項3】
レポーター遺伝子が、好ましくはEGFP、EYFP、DsRed、ZsGreen、ZsYellow、HcRedよりなる群から選択される蛍光タンパク質、またはpDsRed、pHcRed1、pd2EGFP若しくはpd2EYFPのような不安定化蛍光タンパク質よりなる、請求項1若しくは2に記載の腫瘍細胞。
【請求項4】
プロモーターがp21プロモーター若しくはその機能的フラグメントよりなる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の腫瘍細胞。
【請求項5】
プロモーターが1300bpのp21プロモーター配列(配列番号1)を含んでなる、請求項4に記載の腫瘍細胞。
【請求項6】
プロモーターがp53応答配列を含んでなる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の腫瘍細胞。
【請求項7】
p53応答配列が配列、配列番号10を有する、請求項6に記載の腫瘍細胞。
【請求項8】
プロモーターが、配列番号13を有するp53応答配列を含んでなる最小HSV−TKプロモーターよりなる、請求項6若しくは7に記載の腫瘍細胞。
【請求項9】
受託番号LMBP 5958CBを有する2003年1月20日にpGL3−basic−ZsGreen−1300−クローン1としてベルギーの微生物協調収集物(Belgian coordinated collection of microorganisms)に寄託された、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の腫瘍細胞。
【請求項10】
受託番号LMPB 5959CBを有する2003年1月20日にpGL3−basic−ZsGreen−1300−クローン2としてベルギーの微生物協調収集物(Belgian coordinated collection of microorganisms)に寄託された、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の腫瘍細胞。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の安定に形質転換された腫瘍細胞を含んでなる、化合物の製薬学的活性のスクリーニングのためのヒト以外の動物モデル。
【請求項12】
安定に形質転換された腫瘍細胞がヒト以外の動物の皮下に外科的に移植若しくは注入される、請求項10に記載のヒト以外の動物。
【請求項13】
ヒト以外の動物がげっ歯類である、請求項11若しくは12に記載のヒト以外の動物。
【請求項14】
前記ヒト以外の動物において腫瘍を形成するのに十分な量の請求項1ないし10のいずれか1つに記載の細胞を前記ヒト以外の動物に投与することを含んでなる、請求項11ないし13のいずれか1つに記載のヒト以外の動物の製造方法。
【請求項15】
ヒト以外の動物が遺伝子的に免疫無防備状態であるか若しくは前記腫瘍と同系である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の腫瘍細胞を、試験されるべき化合物と接触させる段階;および
レポーター遺伝子の発現を測定する段階
を含んでなる、抗腫瘍活性についての化合物のin vitroスクリーニング方法。
【請求項17】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載のヒト以外の動物にもしかすると活性のある化合物を投与する段階;および
レポーター遺伝子の発現を測定することにより腫瘍細胞に対する前記化合物の効果を評価する段階
を含んでなる、製薬学的活性についての化合物のスクリーニング方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−523606(P2007−523606A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504535(P2006−504535)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002195
【国際公開番号】WO2004/078985
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】