説明

製袋用クラフト紙

【課題】嵩高であるにもかかわらず、製袋用包装用紙としての加工適性及び強度を備え、軽量化が図れる嵩高な製袋用クラフト紙を提供すること。
【解決手段】クラフトパルプと機械パルプの2種類のパルプを含有し、JISP8120(1998)に準拠したC染色法において測定した、総パルプのうち機械パルプの割合が5〜35%であり、少なくとも片面に水溶性樹脂が塗工され、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプのJIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスが500〜650ccであり、JISP8118(1998)に準拠して測定した密度が0.4〜0.6g/mであることを特徴とする製袋用クラフト紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製袋用クラフト紙に関する。さらに詳しくは、製袋用の包装用紙として加工適性を備え、軽量化が図れ、嵩高な製袋用クラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、環境保護、循環型社会の観点から、包装用紙のリサイクル、削減が進められている。スーパー等で使用されている石油原料由来のレジ袋などは削減傾向にあり、紙素材へのシフトも進んでいる。また、ショッピングバック等の手提げ袋についても米坪を一規格低減するなど、軽量化の方向に進んでいる。一規格米坪がダウンしても、製袋用途として使用可能な加工適性、強度を有することが望まれている。
【0003】
また、未晒クラフト紙は、重量物用袋や、角底袋や手提げ袋等の軽包装用途に使用されている。いずれの場合も強い紙力が求められるため、重袋用途の未晒クラフト紙は針葉樹未晒クラフトパルプのみから作られ、軽包装用途の未晒クラフト紙は、針葉樹未晒クラフトパルプを主原料とし、一部で広葉樹未晒クラフトパルプを使用する未晒クラフトパルプのみから作られる。
【0004】
一方、環境対応型の未晒包装用紙としては、古紙パルプを配合しているものが広く知られている。しかし軽量化を実現し、原材料の使用を抑えることができ、嵩高な製袋用の包装用紙の例はあまりなく、いまだ製袋用として加工適性を満足できるものはない。
【0005】
この包装用紙の普及により、包装用紙に対しては、例えば(1)嵩高性を有していること(軽量化が可能なこと)、(2)印刷適性が高いこと、(3)製袋適性にすぐれていること、等が要求される。これらの中でも、嵩高性、製袋適性(角割れ、破袋等がないこと)に優れていることの要求は特に高い。
【0006】
包装用紙の嵩高性の向上策としては、嵩高剤の使用や、剛直で繊維間に空隙を作り易い機械パルプを高配合することが検討されている。しかしながら、嵩高剤は高価であり、繊維間の結合を阻害したり離間させる性質を有しているため、表面強度のみならず、Z軸(厚み)方向における紙質強度をも低下させる問題を有する。また機械パルプの配合については、安価に嵩高性を得ることが可能になるものの、やはりクラフト紙としての紙質強度を低下させる問題を有している。
【0007】
そこで、嵩高性の向上が図られ、なおかつ破れや罫線割れがなく、製袋加工適性や印刷適性に優れた包装用紙や嵩高紙を提供すべく、種々の技術が開発されている。
【0008】
例えば特許文献1には、クラフト包装紙において、古紙パルプ配合によるサイズ不足、印刷時の紙粉トラブル、吸湿による原紙のぼこつき等のトラブルを解消するため、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを添加し、酸化澱粉及び/又はポリアクリルアミドからなる表面処理剤が塗布されたクラフト包装紙が開示されている。光学的特性を維持し、かつ嵩高で印刷適性に優れた印刷用紙を得ようとしたものである。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示のクラフト紙では、JISP4301(2000)で定められたクラフト紙3種の規格を満足するものの、1ランク下の坪量に軽量化をおこなっても、当初のランクの強度を満足するものではない。
【0010】
また特許文献2には、クラフトパルプからなる基紙表面に重質炭酸カルシウム及び毬栗状顔料を含有した塗工剤を塗布してなる、滑り傾斜角が20度以上で、パーカー・プリント・サーフ粗さが2.0〜5.0μmのクラフト紙が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示のクラフト紙では軽量化することができず、単に同坪量においてクラフト3種の規格を満足し、印刷適性、製袋適性を備えた塗工タイプのクラフト紙を提供するにすきず、本発明の課題を満足することは困難である。
【0012】
さらに特許文献3には、ある特定の広葉樹パルプの繊維系を15μm以上とし、ルンケル比を1.0以上のパルプを用いることで、書籍、文庫やその他の用途の印刷用紙に適した低密度紙が開示されている。
【0013】
しかしながら、特許文献3に開示の低密度紙は、書籍、文庫本の用途の印刷用紙としての品質を満足するものであり、本発明の課題を満足できるものでもなく、本発明を解決できる技術思想の開示もない。
【0014】
さらに、特許文献4には、針葉樹化学パルプを乾燥し、含水率を10%以下とした後に、機械粉砕することにより、平均繊維長を0.5mm以下とした粉砕パルプを10〜50重量%配合した嵩高(低密度)であり、平滑性及び強度に優れる嵩高紙の製造方法の開示がある。
【0015】
しかしながら、特許文献4に開示の方法で製造された嵩高紙は、印刷用紙、記録用紙や塗工用原紙としては、満足しえるものの、本発明の課題を満足すものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−83488号公報
【特許文献2】特開2008−297635号公報
【特許文献3】特開2004−169193号公報
【特許文献4】特開2008−248453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、嵩高であるにもかかわらず、製袋用包装用紙としての加工適性及び強度を備え、軽量化が図れる嵩高な製袋用クラフト紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明は、クラフトパルプと機械パルプの2種類のパルプを含有し、
JISP8120(1998)に準拠したC染色法において測定した、総パルプのうち機械パルプの割合が5〜35%であり、
少なくとも片面に水溶性樹脂が塗工され、
JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプのJIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスが500〜650ccであり、
JISP8118(1998)に準拠して測定した密度が0.4〜0.6g/mであることを特徴とする製袋用クラフト紙である。
【0019】
本発明では、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した前記離解パルプの重量平均繊維長が2.0〜3.5mmであり、前記離解パルプの平均ルンケル比が0.9〜1.1であることが好ましい。
【0020】
また、前記クラフトパルプのJISP8211(1998)に準拠して測定したカッパー価が50〜70であり、前記クラフトパルプのJISP8150(2004)に準じて測定した明度が54〜60であることが好ましい。
【0021】
さらに、填料として再生粒子を含有し、前記再生粒子の白色度が75〜85%であり、
JISP8251(2003)に準拠して測定した灰分率が0.5〜3.0質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、嵩高であるにもかかわらず、製袋用包装用紙としての加工適性及び強度を備え、軽量化が図れる嵩高な製袋用クラフト紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】再生粒子の製造設備フロー図
【図2】第2次燃焼炉の概念図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0025】
本発明におけるパルプの原料としては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプが用いられる。なかでも本発明に使用する機械パルプとしては、TMPが好ましい。
【0026】
本発明のクラフト紙は、クラフトパルプと機械パルプからなる。総パルプのうち機械パルプの配合率としては、5〜35%である必要がある。好ましくは、15〜25%である。機械パルプの配合率が5%未満であると、本発明の目的である嵩高の紙厚を得ることができない。機械パルプの配合率が35%を越えると、嵩高な紙厚は得られるが、製袋用のクラフト紙としての引張強度や引裂強度が低下し、製袋用紙として適したクラフト紙を得ることができない。前記機械パルプの配合率は、JISP8120(1998)に準拠したC染色法において測定する。
【0027】
クラフトパルプとしては、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)が好ましい。一般に市販の針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)のカッパー価は20〜40で調整されている。本発明では、カッパー価が50〜70に調整されたクラフトパルプを使用することが好ましい。より好ましいカッパー価は55〜65である。カッパー価が50未満であると、パルプ中の残リグニン量が減少する傾向にあり、製袋用として使用できるパルプの品質(特に剛性)を満足することが難しくなり、機械パルプ配合による引張強度や引裂強度の低下を補うことが出来ず、製袋用途に使用することが難しくなる。またカッパー価が70を超えると、パルプ中の残リグニン量が多くなる傾向にあり、パルプ繊維のしなやかさを得ることが出来ず、製袋時の角割れが発生し、製袋用途には適しない。また木材由来の樹脂分が多く残るため、製袋時に加工機の汚れの要因となる。
【0028】
カッパー価とは、パルプ製造時におけるリグニンの含有量の指標であり、チップ蒸解工程の温度や時間などの条件により増減する。カッパー価が低いほどパルプが漂白されていることを意味し、明度も上昇する。
【0029】
本発明に使用するクラフトパルプ、特に針葉樹未晒クラフトパルプの明度(L値)としては、54〜60であることが好ましい。明度が54未満であると、木材由来の樹脂分やリグニンが減少する傾向にあり、不透明度が低下する傾向がある。また、明度が60を超えると、木材由来の樹脂分やリグニンの残留量が多い傾向にあり、製袋時に加工機の汚れ原因となる傾向にある。また、光により、変色する傾向があるので、製品としての色調を安定させることが難しくなる。
【0030】
本発明の好適な態様では、上述した割合の機械パルプ(TMP)を、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)に配合して抄紙する。その際、本発明の製袋用クラフト紙のJIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプのJIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスは、500〜650ccである必要がある。550〜600ccがより好ましい。離解フリーネスが500cc未満であると、パルプの繊維長が短くなり、パルプの繊維径自体も細くなるので、製袋用のクラフト紙として剛性を保つことができず引裂強度が低下するので、本発明の目的を達成することができない。また、離解フリーネスが650ccを超えると、パルプの繊維長が長くなり、パルプの繊維径も太くなるので、製袋用のクラフト紙として必要な引張強度が低下する。フリーネスは、使用するパルプの叩解度を適宜設定することで容易に調整可能である。
【0031】
紙コシ(嵩)に寄与する要素としては、紙自体の坪量、緊度のほかに、パルプ繊維自体の物理的構造がある。パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、それ自体が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能に繋がる。内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率がクッション性にとって重要となる。また、クッション性の高い紙ほどマシン各所での圧力に対する嵩の復元効果が高いため、嵩高で紙コシのある製袋作業性に優れたクラフト紙を得ることが出来る。そこで、本形態においては、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプの平均ルンケル比を調節して、クッション性を好適化するのが好ましい。ここで、ルンケル比Rとは、繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtによって求められる値であり、
R=2・t/L
によって表される。このルンケル比は、数値が1.0に近いほど同じ径に対して繊維壁の厚みが厚いことを意味し、繊維の剛性をあらわす指数となる。本発明の目的を効率良く達成するには、平均ルンケル比は0.9〜1.1が好ましく、0.92〜1.00がより好ましい。平均ルンケル比が0.9未満であるとパルプ繊維の剛性が低下する傾向なり、本発明の目的である嵩を確保することが難しくなる。平均ルンケル比が1.1を超えると、パルプ繊維の剛性が増加する傾向になり、繊維どうしの絡み合いが少なくなる傾向になり、製袋用のクラフト紙として必要な強度を満足することが難しくなる。
【0032】
平均ルンケル比が0.9〜1.1付近になるように、前述原料パルプの選択、分級、叩解処理を極力施さないことで、より好ましいものとなる。なお、選択とは、例えば、自然林から得られた原木や植林木を原料としたパルプから、ルンケル比が比較的大きいパルプ繊維が得られる等の条件を基に、原料パルプの選択を行うことを意味する。分級とは、シックナー、スクリーン、クリーナー等を使用して分級すること、その他、一般的に紙・パルプ工場で使用されている、公知のSPフィルター、ウオッシャー、エキストラクター、フィルタープレス等により、大量の水を用いて希釈しながら分級すること等を意味する。叩解とはコニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナー等による叩解を行うことを意味する。
【0033】
本発明のクラフト紙では、JIS P 8220に準拠して離解した離解パルプの重量平均繊維長が2.0〜3.5mmであることが好ましい。これにより、本発明に係る装用紙の強度をより高めることができる。より具体的には、離解パルプの重量平均繊維長が2.0mm未満であると、緊度が上がるため、十分な紙コシが得られず、製袋作業性が悪化する傾向がある。他方、離解パルプの重量平均繊維長が3.5mmを超えると、長繊維であるがゆえに、パルプ繊維同士の絡み合いが多くなり地合ムラが発生し、包装用紙としての見た目が悪くなる。本発明の目的を効果的に達成する紙力、密度を確保するに好ましい重量平均繊維長は、2.2mm以上3.0mm未満である。
【0034】
本発明で云う重量平均繊維長は、JIS P 8220に準拠して離解した後の離解パルプについて、カヤニオートメーション社製繊維長測定機ファイバーラボを用いて測定した値であり、単位はmmである。
【0035】
以上の範囲に繊維長を調節する方法は、特に限定されず、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、分級スクリーン等の公知の方法により調整することが出来るが、植林木から得られる原料パルプは、本発明の目的を効果的に達成できるルンケル比を得ることができ、好適に本発明に利用できる。
【0036】
本形態の原料パルプには、サイズ剤や、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の、通常クラフト紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して用いることができる。
【0037】
さらに、本発明では、基紙の片面又は両面、好ましくは両面に水溶性樹脂を塗布することで、機械パルプ配合に伴う紙の腰や強度の劣化を補い、より効果的に本発明の製袋用クラフト紙を達成できる。
【0038】
上記水溶性樹脂としては、例えば、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、アクリルアミド、ポリエステル等が挙げられる。
【0039】
澱粉としては、例えば酸化澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、α化澱粉、リン酸エステル化澱粉、エステル変性澱粉、尿素リン酸変性澱粉、未変性澱粉等、公知の種々のものを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。カルボキシメチルデンプン(アニオン性)、燐酸澱粉(アニオン性)等の変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張り強度や表面強度を向上させる効果を発揮する。水溶性樹脂のうち酸化澱粉は、取扱いが容易であり、本発明の目的とする引張強度及び腰を提供することができ、本発明の目的を効果的に達成することができるため好ましい。
【0040】
酸化澱粉の場合、塗布量は固形量で0.8〜3.5g/mが好ましい。
【0041】
本発明の製袋用クラフト紙は、坪量50〜120g/mであることが好ましい。より良好な製袋適性を得るには、坪量60g/m以上、更には70g/m以上が好ましい。ここで坪量とは1平方メートル当たりの用紙の重量であって、用紙の厚さと密度によって変化する。
【0042】
特に、近年の製袋用クラフト紙においては、省資源と環境により優しい製品ニーズに対応して、従来の手肉感よりも劣るものの、一ランク下の米坪に下げる軽量化が進められている場合が見られるようになってきている。
【0043】
従って、手肉感を犠牲にしながら軽量化する傾向にあるものの、本発明においては、製袋用包装用紙として公知の製袋機に好適に適合できる坪量50〜120g/mの製袋用クラフト紙において、クラフト3種の規格における坪量を1ランク引下げても、従来坪量の嵩高性(厚さ)と強度を満足することができる製袋用クラフト紙を提供することができる。
【0044】
本実施形態に係る印刷用紙を得るには、前記原料パルプからなるパルプスラリーに、必要に応じて填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を適宜添加し、例えばpH値などの条件を調整して長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙する方法を採用することができる。
【0045】
填料としては、例えば再生粒子、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等があげられる。なかでも、再生粒子が好ましい。
【0046】
本発明で使用できる再生粒子とは、以下の製造方法で製造した再生粒子のことである。
【0047】
すなわち、この方法とは、紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て、再生粒子を得るものであって、前記乾燥と燃焼工程が、前記脱水後の原料の乾燥と燃焼を一連で行う先の第1燃焼炉(内熱キルン炉)と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する後の第2燃焼炉(外熱キルン炉)を有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕し、再生粒子を得るものである。
【0048】
さらに詳述すれば、第1燃焼炉内の酸素濃度が0.2%〜20%となるように、500℃〜650℃の熱風を吹き込み、第2燃焼炉では、第1燃焼炉からの燃焼物を、550℃〜750℃の温度で燃焼するものである。
【0049】
しかしながら、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、本発明が得ようとする再生粒子の原料となる微細な無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含み、燃焼処理においては脱墨フロスそのものが自ら燃焼反応(酸化)を生じ燃焼するため、熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を惹き起こす問題があった。
【0050】
このような過剰な燃焼は、高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招き、原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質を生じやすくなって抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇し、原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下し、原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留し、結果として白色度の低下を招く等の問題がある。
【0051】
本発明者は、上記問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、第1燃焼炉において、燃焼温度を原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を放出するに必要なだけの第1燃焼炉の炉内温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることが、前記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0052】
さらに、第1燃焼炉内において、燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるために必要な酸素濃度0.2%〜20%を確保するとともに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。本発明者の知見によると、第1燃焼炉内の酸素濃度0.2%〜20%を確保することは、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなる。
【0053】
しかしながら、原料となる脱墨フロスの脱水後の水分を、好ましくは40%〜90%、より好ましくは40%〜70%、最も好ましくは45%〜70%の高含水状態で第1燃焼炉内に供給することが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。その理由は、第1燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1燃焼炉内において水の蒸発により、炉内温度が低下し、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進し、過剰な燃焼温度の上昇を抑制することができるものと考えられる。
【0054】
他方、より好適には、第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
【0055】
先に述べた発明者の知見によると、第1燃焼炉では、低い燃焼温度で原料脱墨フロスを燃焼反応に晒し、均質な第1燃焼炉出口原料を得たのち、残留する白色度を低下させる原因となる炭素分をできる限り燃焼させる必要があるため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフター設備を用い、原料の搬送速度を調整可能にすることができることも見出した。しかるに、公知のリフターは鉄素材で一般に製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有され、鉄の酸化により白色度を低下させる問題を招く。そこで、本発明者は、ステンレス製のリフターを第2燃焼炉に設けることで、前記鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
【0056】
なお、第2燃焼炉の構造としては、外熱又は内熱キルンどちらも適宜採用することができる。外熱キルンはバーナーの直火が原料に直接晒されないため、過焼を防止でき、均一な焼成品質(高い白色度が得られる)一方、内熱キルンは、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できるメリットがある。第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて適宜選択できるが、いずれの方式についてもリフターを設けることが最適である。
【0057】
一方、従来、原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ未燃分を含む1次燃焼物を得る1次燃焼工程と、前記サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む1次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記1次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる2次燃焼工程とを含む、脱墨スラッジからの白色顔料または白色填料の製造方法が公知である。この方法によれば、本発明によって得られるものと同様な再生粒子を得ることができる。
【0058】
しかし、この方法では、サイクロン式流動燃焼炉を使用し、数十〜数百ミクロンの原料と空気を旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により原料を空気と効果的に混合しながら燃焼させるため、原料に含有する微粒子が排ガスとともに系外に排出されて製品歩留りが低下すること、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であることにより未燃焼分が生じやすいこと、また最終的に得られる燃焼物の品質(特に形状)が一定でなく、燃焼物の白色度にバラツキが生じること等の問題があることが知見されている。
【0059】
そこで、本発明は、過剰燃焼をさせないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ねた結果、前述したように、燃焼工程が、第1燃焼工程と、第1燃焼工程の第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する第2燃焼炉を有する第2燃焼工程の少なくとも2段階の工程を有し、前記第1燃焼工程において、300℃〜500℃で燃焼処理を行うことで、品質の安定した再生粒子を製造できることを見出したのである。
【0060】
更に好適な態様としては、脱水後の原料の乾燥と燃焼が一連で行われ、内熱による第1燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が好ましくは30分〜90分、より好ましくは40分〜80分、最も好ましくは50分〜70分、の第1燃焼炉を用い、本体が横置きで中心軸周りに回転する好ましい内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を再度燃焼する燃焼時間(滞留時間)が好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分の、外熱による第2燃焼炉を用い、本体が横置きで中心軸周りに回転する好ましい外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、燃焼する方法を採用するものである。
【0061】
また、後に図面と共に説明する実施の形態では、第1燃焼炉として内熱キルン炉、第2燃焼炉として外熱キルン炉を選択し詳説するが、これらのキルン炉としは公知の燃焼炉を使用できる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の燃焼炉を採用することもできる。
【0062】
本発明において好適な態様は、先の第1燃焼炉を内熱で行い、後の第2燃焼炉を外熱で行うものである。さらに、この外熱第2燃焼炉としては重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法が採用こともできる。
【0063】
第1燃焼炉として好適に用いることができる内熱キルン炉によれば、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いることができる外熱キルン炉により燃焼すると、その端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、微粉化を生じにくい。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなるのである。
【0064】
従来の第1燃焼炉においては、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法が先に述べた公知文献にも記載されているものの、本発明者の知見では、第1燃焼炉においては300℃〜500℃の従来の炉内温度に比して低温で加温操作することにより、原料中から、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、燃焼ガスを燃焼(酸化)させることが、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きいことを見出している。
【0065】
上記のとおり、乾燥、燃焼の工程を、好適には内熱キルン炉と外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、均一で安定的な再生粒子が得られる。
【0066】
好適な燃焼炉として用いられる内熱または外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らすことなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、本発明が低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
【0067】
ここで、好適な再生粒子を得るに当り、本発明者が最も注力した燃焼炉の選択について説明する。
【0068】
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者は、それぞれの焼却炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次の事項が明らかとなった。
【0069】
ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
【0070】
流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生填料へ混入し品質の低下を招く問題を有する。均一な攪拌ができない。硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離できない。硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で、燃焼物が通過しながら燃焼するため灰の攪拌が不十分で幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
【0071】
サイクロン炉については、炉内を一瞬で通過するため燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず白色度の低下に繋がる、さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
【0072】
前記諸問題について鋭意検討を重ねた結果、燃焼炉としてはキルン炉にて燃焼させることが最も好適な燃焼手段として選択され、さらに、本発明において最適な実施の形態である、先の第1燃焼炉を内熱キルン、後の第2燃焼炉を外熱キルンとすることは次の理由から好適であることが見出されている。
【0073】
すなわち、外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、キルン炉の構造が複雑になるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるゆえに多量の熱源が必要になるため、本発明に係る、脱水後の水分率が高い原料の乾燥、燃焼処理に外熱キルン炉を先の第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が悪く、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が極めて低くなる。
【0074】
また、内熱キルン炉を2次燃焼炉に使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また、多量の空気を投入しないと燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難であり、さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じやすい問題を呈する。
【0075】
さらに、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難な問題が生じる。
【0076】
次に、本発明に係る再生粒子の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0077】
図1は、本発明の一実施形態に係る再生粒子の製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生粒子の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、粉砕工程を有するが、さらに、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、各工程間に分級工程等を設けてもよい。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
【0078】
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、好ましくは40%〜90%、より好ましくは45%〜70%、最も好ましくは50%〜60%の高含水状態とすることが望ましい。
【0079】
かかる脱水後の原料10は、望ましくは、粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておくことが望ましい。かかる原料10が貯槽12から切り出されて、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0080】
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2%〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0081】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
【0082】
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適であり、したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
【0083】
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が、好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは10%〜15%となるようにして燃焼する。温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は、好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分で残カーボンを完全に燃焼させる。
【0084】
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
【0085】
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
【0086】
以上、再生粒子の製造工程の概要を説明したが、その詳細及び応用例を以下に説明する。
【0087】
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0088】
本発明でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
【0089】
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
【0090】
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくな問題を有する。また、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。また、脱水処理エネルギーの削減にも寄与する。
【0091】
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を惹き起こす。
【0092】
脱墨フロスの脱水工程は、本発明における再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
【0093】
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径が好ましくは40mm以下、より好ましくは3mm〜30mm、最も好ましくは5mm〜20mmの範囲になるように調整される。さらに平均粒子径が50mm以下の割合が、70重量%以上に成るように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難な問題を有するためである。
【0094】
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した。
【0095】
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉20にて生成された熱風を第1燃焼炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0096】
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する第1燃焼炉14によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
【0097】
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が好ましくは0.2%〜20%、より好ましくは1%〜17%、最も好ましくは7%〜15%となるようにされている。
【0098】
酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。第1燃焼炉14内の酸素は、原料10の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、第1燃焼炉14内の温度を細かく調節可能になり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
【0099】
第1燃焼炉14の炉内温度としては、好ましくは300℃〜500℃より好ましくは400℃〜500℃、最も好ましくは400℃〜450℃である。第1燃焼炉14においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300℃〜500℃の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
【0100】
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0101】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
【0102】
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に熱風発生炉20に送り、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられて排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようになっている。
【0103】
第1燃焼炉14は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30分〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。また有機物の燃焼と生産効率の面で40分〜80分がより好ましく、さらに恒常的な品質を確保する面から50分〜70分が最も好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料10の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
【0104】
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を、2質量%〜20質量%に乾燥・燃焼することが好ましく、より好ましくは5〜17質量%、最も好ましくは7質量%〜12質量%である。
【0105】
未燃率を、2質量%〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉32出口における白色度の低下等の品質低下をきたす場合がある。
【0106】
〔第2燃焼工程〕
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する、外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。
【0107】
この第2燃焼炉32では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料10の炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
【0108】
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14において供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が好ましくは10mm以下、さらに好ましくは1mm〜8mm、最も好ましくは1mm〜5mmとなるように調整される。
【0109】
第2燃焼炉32入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を惹き起こす。第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1mm〜8mmの燃焼物が70%以上になるように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化の可能性の面で有益である。さらに、本実施形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
【0110】
第2燃焼炉32での外熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる第2燃焼炉32であることが望ましい。
【0111】
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
【0112】
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解をきたすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
【0113】
第2燃焼炉32においては、酸素濃度が好ましくは5%〜20%、より好ましくは10%〜20%、最も好ましくは、10%〜15%となるように設定される。酸素濃度は、第2焼成炉(外熱キルン炉)32に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な実施形態の図示は省略してある)。
【0114】
第2燃焼炉32内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。
【0115】
温度としては、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。
【0116】
第2燃焼炉32は先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる問題が生じる。
【0117】
また、滞留時間は好ましくは60分〜240分、より好ましくは90分〜150分、最も好ましくは120分〜150分である。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
【0118】
さらに、燃焼物の安定生産を行うにおいて滞留時間を60分以上、過燃焼の防止、生産の確保のため240分以下で燃焼させることが好適である。
【0119】
この第2燃焼炉32から排出される燃焼物の平均粒子径としては、好ましくは10mm以下、より好ましくは1mm〜8mm以下、最も好ましくは1mm〜4mmに調整される。
【0120】
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体(再生粒子凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
【0121】
なお、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
【0122】
〔粉砕工程〕
本実施形態に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
【0123】
一例では、燃焼後に得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本実施形態の再生粒子は、平均粒子径2〜5μmであるのが好ましい。
【0124】
これは、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上するためと考えられる。タルクやクレーは再生填料より平均粒子径が大きく、嵩高効果が期待できるが、酸性抄紙となるために黄変化しやすくなり、実用的ではない。
【0125】
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した。
【0126】
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
【0127】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0128】
本製造方法の原料10としては、再生粒子の原料となり得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0129】
さらに、本実施形態に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で好ましくは30〜82:9〜35:9〜35、より好ましくは、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、最も好ましくは、60〜82:9〜20:9〜20である。
【0130】
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程のおける脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
【0131】
本実施形態の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
【0132】
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
【0133】
また、本製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本実施形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
【0134】
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
【0135】
この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図で示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
【0136】
すなわち、この第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に投入部32aが、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端には筒状本体32b内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー(図示せず)が配設されている。筒状本体32bの投入部32a側における耐火壁32cの内面には、筒状本体32bの軸心に対して45°〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター32dがブラケット32eを介して等間隔に突設されており、この他端側には、筒状本体32bの軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター32fが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)、軸心方向に複数列(図示例では8列)ブラケット32gを介して突設されている。
【0137】
なお、耐火壁32cは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成することが好ましく、また、螺旋状リフター32dと平行リフター32fを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとは、上記のとおり、被燃焼物の投入部32a側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
【0138】
上記のとおり構成されたこの第2次燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部32a側から投入された内容物が、まず螺旋状リフター32dにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター32fにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター32dにて平行リフター32fに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター32f部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
【0139】
なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
【0140】
以上のようにして得られた再生粒子は白色度が好ましくは75〜85%、さらに好ましくは80〜85%と高く、白色度の変動が少ない。また、以上に記載の製造方法によって得られた再生粒子を本件製袋用クラフト紙に用いると、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、紙力低下が少なく、嵩高であり、製袋用のクラフト紙として使用できるクラフト紙を得ることができる。
【0141】
再生粒子の白色度は、米国TAPPI標準法T−646 OS−75に準拠し、熊谷理機工業社製白色度計KR−III型にて測定した。
【0142】
なお、本発明に係る製造方法によって得られた再生粒子は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(0.3〜2.0μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生粒子中のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、紙力低下の少ないクラフト紙を提供することができるものと考えられている。
【0143】
再生粒子から持ち込まれる無機物を合わせた全無機物の内、酸化アルミニウムの含有率は、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%とすることが、本発明のクラフト紙において望ましい。アルミニウムの含有量が10%未満の場合、定着性の向上が少なくなる。一方でアルミニウムの含有率が35%を超えると、カチオン性が強くなりすぎて抄紙薬品と反応し、凝集物が発生したり、ピッチなどの黒色異物が発生することがあるため、望ましくない。
【0144】
本実施形態では、上記の如き再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料を併用することもできる。もちろん、これらの2種以上と併用することもできる。
【0145】
再生粒子の基紙中の(基紙に対する)含有率としては、好ましくは0.5〜3.0質量%、より好ましくは0.5〜1.8質量%であることが望ましい。含有率が3.0質量%を超えると密度が低下し、嵩高にならない。含有率が0.5質量%未満となると、白色度が低下する。
【0146】
内添サイズ剤としては、例えば酸性抄紙用ロジンサイズ剤、中性抄紙用変性ロジンサイズ剤、アルケニルコハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、ワックス系サイズ剤、スチレン樹脂系サイズ剤、オレフィン樹脂系サイズ剤、スチレン−アクリル樹脂系サイズ剤、高級脂肪酸系サイズ剤、カチオンポリマー型サイズ剤、酸化澱粉等があげられる。
【0147】
また前記各種添加剤の他にも、原料パルプスラリーに嵩高剤を添加し、得られる印刷用紙の嵩高さを向上させる方法も試みられてきたが、嵩高剤は、用紙のZ軸強度を主体に紙質強度を低下させるため、その使用を控えることが好ましい。
【0148】
嵩高剤を使用せずに、効果的に本発明の目的を達成するには、好適には、JIS P 8251(2003)に準拠して測定した灰分率が、0.5〜3.0質量%になるように上述した填料を添加することが好ましい。より好ましくは、前記製造方法で製造した再生粒子が良い。灰分率が0.5質量%未満であると、紙の地合が悪化する傾向になり、印刷適性が低下する傾向になる。また、灰分が3.0質量%を超えると本発明の目的である嵩高で製袋用途として加工適性、強度の優れた製袋用クラフト紙を得ることが難しくなる。
【0149】
なお本実施形態に係る製袋用嵩高包装紙を、例えば特にオフセット印刷に適用する場合、かかるオフセット印刷にて湿し水が用いられることから、本発明の包装紙に適宜、サイズ性(吸水抵抗性)を付与することが好ましい。かかるサイズ性を良好に保持することにより、湿し水転移量の上昇、紙伸び、ウェット着肉不良、色ずれ等の恐れをより充分に抑えることができる。
【0150】
サイズ性をコントロールするには、前記のごとき内添サイズ剤を原料パルプスラリーに添加し、抄紙と同時に本発明の包装紙の内部に内添サイズ剤を含有させるか、又は抄紙後、2本ロールサイズプレス、ゲートロールコーター等の塗工機を用い、表面サイズ剤を本発明の包装紙表面に塗工するか、少なくともいずれか一方を行うことが好ましい。なお該表面サイズ剤としては、例えば内添サイズ剤として例示したものを用いることが可能である。
【0151】
例えば前記内添サイズ剤を用いる場合、得られる本発明の包装紙に充分なサイズ性を付与し、耐湿し水性をより向上させるには、原料パルプ100質量部に対して0.1質量部以上、さらには0.3質量部以上を配合することが好ましく、本発明の包装紙表面でのインクの吸収乾燥性が低下せず、印刷操業性が悪化する恐れがないようにするには、原料パルプ100質量部に対して1質量部以下、さらには0.8質量部以下とすることが好ましい。
【0152】
また、例えば前記表面サイズ剤を用いる場合、得られる本発明の包装紙に充分なサイズ性を付与し、耐湿し水性をより向上させるには、本発明の包装紙への塗工量を片面あたりで0.04g/m以上、さらには0.06g/m以上とすることが好ましく、本発明の包装紙表面でのインクの吸収乾燥性が低下せず、印刷操業性が悪化する恐れがないようにするには、印刷用紙への塗工量を片面あたりで0.20g/m以下、さらには0.18g/m以下とすることが好ましい。
【0153】
本実施形態に係る本発明の包装紙の、JIS P 8118に記載の「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した密度は0.4〜0.6g/cmであるが、かかる密度は印刷適性と相俟って必要であり、JIS P 8143に記載の「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して測定した剛度(縦)は、良好な印刷作業性や手触り感を付与し、また充分な印刷適性を維持するという点から、70〜180cm/100程度であることが好ましい。
【0154】
このように、本実施形態に係る製袋用嵩高包装紙は、軽量で嵩高であるにもかかわらず印刷適性に優れたものである。
【実施例】
【0155】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0156】
CSF650mLに叩解した針葉樹未晒クラフトパルプと、CSF250mLに叩解した機械パルプ(TMP)とを、C染色法による機械パルプの配合率が表1記載の割合(%)となるように配合したパルプスラリーに、硫酸アルミニウム(硫酸バンド、昭和化学工業(株)社製)を固形分で0.28質量%、中性ロジンサイズ剤(品番:NS74、ハリマ化成(株)製)を固形分で0.1質量%、及び、紙力増強剤(品番:アミロファックスTS2600、AVEBEb.a.社製)を固形分で0.5質量%内添し、さらに白色度83.9%の再生粒子を、灰分率が0.8質量%になるように添加した後、ワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、サイズパート、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート及びワインダーパートを含む製紙システムを用いて抄紙した。
【0157】
得られた紙の両面に、ゲートロールコーターにて、サイズ剤(品番:SE2064、星光PMC(株)社製)を0.15g/m、酸化澱粉(品番:MS3800、日本食品加工(株)社製)を固形分で2.0g/mになるよう塗布し、試験紙を得た。
【0158】
各試験紙を得るにあたっては、表1中に記載のとおり、行った。結果は、表1に示した。なお、評価方法は、以下のとおりである。フリーネスや繊維長、ルンケル比については市販の離解機、叩解機等を用いて調整した。カッパー値も上記の記載に基づき調整した。灰分率は再生粒子の添加量を変更することで調整した。
【0159】
各実施例で水溶性樹脂としては以下のものを使用した。
タピオカ澱粉:SB GUM-EVOSBガム、三晶株式会社
PVA:JF−04、日本酢ビポバール株式会社性
PAM:ハリコートG−51、ハリマ化成株式会社
コーンスターチ:CHARGEMASTER R462チャージマスター、三晶株式会社
馬鈴薯澱粉:マーメイド M-350B、三晶株式会社
ラテックス:ナルスターSR−103、日本エイアンドエル株式会社
(カッパー価)
JIS P 8211(1998)「パルプ−カッパー価試験方法」に準拠して測定した。
【0160】
(明度)
分光白色光度計「EPR−80WX」(東京電色株式会社製)で測定した。
【0161】
(離解フリーネス)
JIS P 8220(1998)「パルプ−離解方法」とJIS P 8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0162】
(坪量)
JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0163】
(重量平均繊維長)
得られた試験紙を、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解し、得られた記離解パルプについて、J.TAPPI NO.52に準拠し、カヤニオートメーション社製繊維長測定器ファイバーラボにて測定した。
【0164】
(平均ルンケル比)
得られた試験紙を、JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解し、得られた記離解パルプについて、カヤニオートメーション社製繊維長測定機ファイバーラボにて測定し、繊維内径、繊維外径から算出した。
【0165】
(引張強度)
JIS P8113に準拠して測定した。
【0166】
(引裂き強度)
JIS P8116に準拠して測定した。
【0167】
(製袋適性<紙のコシ>)
自動製袋機(型番:136T+504TH、ニューロング工業(株)製)を使用し、クラフト紙から角底袋を加工して加工速度の状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0168】
〔評価基準〕
◎:加工状態が全体的に均一で、従来の未晒クラフト紙と同等の速度で加工できる。
○:加工状態がやや劣るものの、従来の未晒クラフト紙と同等の速度で加工できる。
△:加工状態が低下する傾向が見られるため従来の未晒クラフト紙と比べ、加工速度を低下させる必要がある。糊付け部分に波打ちが認められる。
×:加工状態が均一でなく、加工速度を大幅に落としても改善が見られない。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0169】
(製袋適性<角割れ>)
前述の自動製袋機を使用し、クラフト紙から角底袋を加工して、角底袋の折り部での角割れの状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0170】
〔評価基準〕
◎:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の未晒クラフト紙以下。
○:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の未晒クラフト紙と同等。
△:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の未晒クラフト紙と同等だが1袋に複数箇所角割れが見られる場合、又は角割れの発生頻度が従来の未晒クラフト紙の倍未満で1袋の程度が軽い場合。
×:加工した角底袋において、角割れの発生頻度が従来の未晒クラフト紙の倍以上。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0171】
【表1】

【符号の説明】
【0172】
10 原料
12 貯槽
14 第1燃焼炉
15 装入機
16 排ガスチャンバー
18 排出チャンバー
20 熱風発生炉
20A バーナー
22 再燃焼室
24 予冷器
26 熱交換器
28 誘引ファン
30 煙突
32 第2燃焼炉
34 冷却機
36 粒径選別機
38 燃焼品サイロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトパルプと機械パルプの2種類のパルプを含有し、
JISP8120(1998)に準拠したC染色法において測定した、総パルプのうち機械パルプの割合が5〜35%であり、
少なくとも片面に水溶性樹脂が塗工され、
JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した離解パルプのJIS−P8121(1995)に準拠して測定したフリーネスが500〜650ccであり、
JISP8118(1998)に準拠して測定した密度が0.4〜0.6g/mであることを特徴とする製袋用クラフト紙。
【請求項2】
JIS−P8220(1998)に準拠した方法で離解した前記離解パルプの重量平均繊維長が2〜3.5mmであり、前記離解パルプの平均ルンケル比が0.9〜1.1であることを特徴とする請求項1記載の製袋用クラフト紙。
【請求項3】
前記クラフトパルプのJISP8211(1998)に準拠して測定したカッパー価が50〜70であり、前記クラフトパルプのJISP8150(2004)に準じて測定した明度が54〜60であることを特徴とする請求項2記載の製袋用クラフト紙。
【請求項4】
填料として再生粒子を含有し、前記再生粒子の白色度が75〜85%であり、
JISP8251(2003)に準拠して測定した灰分率が0.5〜3.0質量%であることを特徴とする請求項3記載の製袋用クラフト紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202997(P2010−202997A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49183(P2009−49183)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】