説明

製鉄工程での発生物の再活用方法

【課題】Znを大量に含有する還元炉の二次ダスト中のFe分を有効利用するための湿式磁力選別技術に関して、随伴Zn含有量を抑制しながらFe分を有効利用する具体的な方法・好適な条件を提供すること。
【解決手段】製鉄工程で発生するダスト等の発生物を還元する還元炉から集塵した二次ダストをpH=8以上10以下のスラリーとなし、沈殿を生じないよう機械撹拌を併用しながらそのスラリーに超音波処理を行い、その後当該スラリーないしこれを希釈した希釈スラリーに対して表面磁束密度0.4テスラ以下の磁力で湿式磁力選別を行い、その磁着側分離物を脱水後に製鉄工程の原料として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄工程での発生物を再度製鉄工程で有効利用するためのリサイクル方法に関する。
【0002】
より詳しくは、製鉄工程で発生するダスト等の発生物の還元・脱Znを行う還元炉から集塵したZnを大量に含有する二次ダスト中のFe分を、随伴Zn量を抑制して製鉄工程で再活用する方法、同時にZn分も有効利用するためのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高炉などの製銑工程や転炉、電気炉などの製鋼工程など、製鉄諸工程で発生するダストなどの発生物には、FeのほかにZnが含まれる。これらのFe分を再度Fe源として再利用する際にはZnが障害となり、再利用のためにはZn除去が必要であることはよく知られている。例えば鉄鋼便覧第4版には、高炉への亜鉛装入量は炉壁への付着物形成から銑鉄1トンあたり0.2〜0.3kg 程度に制限されていると記されている。
【0004】
高炉ダストや転炉ダストからの脱Zn方法は従来から研究が行われ、数多くの方法が提案されている。それらの方法は、大きく「溶解抽出法」、「湿式分離法」、「乾式還元法」に分類される。
【0005】
このうち溶解抽出法はpHを調整してZnを溶解洗浄するものであり、例としては特許文献1がある。溶解抽出法は一般的にpH調整幅が大きく薬剤コストが掛かることが欠点である。また特許文献1のように焼結工場の排煙脱硫工程の排ガス冷却塔から排出される冷却水を用いる場合には、冷却水発生元の操業や設備制約を受け汎用性のある使い易いプロセスではない。
【0006】
湿式分離法は、サイクロンなど何らかの湿式分級機器を用いて、Fe含有粒子とZn含有粒子を物理的に分離する方法である。また湿式磁力選別法も分離手段として用いられる。前者の例が特許文献2であり、後者の例が特許文献3である。しかし、これらの方式は概してZn除去率が高くない。
【0007】
そこでZn除去率を改善するため、湿式分級処理の前にFe含有粒子とZn含有粒子の分離促進をするために、何らかの事前処理を行う方法も提案されている。その例が超音波を用いた特許文献4や、機械的強撹拌を用いた特許文献5及び6である。これらの前処理によりZn除去率の改善効果が得られるが、大量に発生する高炉ダストや転炉ダストを処理するためには、大規模な前処理設備が必要となり採算性の観点から問題がある。
【0008】
一方、乾式還元法はロータリーキルンや回転炉床炉などの還元炉で、ダストやスラッジをカーボンとともに還元焼成をしてZnを揮発除去するものである。この乾式還元法は高いZn除去性能のみならず得られた還元鉄の利用のしやすさ、結果的に良好な経済性などの観点から、前記「溶解抽出法」や「湿式分離法」を上回り、近年はその採用が広がっている。
【0009】
この還元炉からもダストが発生するが、この二次ダストにはZnが高濃度で含まれており、亜鉛精錬メーカーにて亜鉛源として使用されることが資源有効活用の観点からは望ましい。そのため還元炉の二次ダストを対象に、ZnないしZn・Fe双方を有効活用するための、更にZnとFeを分離・濃縮する方法も開発されている。その一例が特許文献7である。また本願発明者も、特願2008‐31680(以下「先願1」という。)及び特願2008‐296064(以下「先願2」という。)において別の技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3‐177522号公報
【特許文献2】特開昭52‐66805号公報
【特許文献3】特開2009−6273号公報
【特許文献4】特開昭53‐81479号公報
【特許文献5】特開平5‐132724号公報
【特許文献6】特開平10‐317018号公報
【特許文献7】特開昭55‐104434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
還元炉から発生する二次ダスト中のZn濃度はしばしば50質量%を下回り、時には15〜30質量%程度の場合もある。このような低Zn濃度、即ち高Fe濃度の二次ダストをウェルツキルン法などの原料として用いると、Feがその残渣として大量に発生して問題がある。この残渣はその成分及び発生場所の条件から、鉄鋼精練の原料として有効に利用できていない。即ち二次ダスト中のZn濃度が低いことは、製鉄工程に戻らず有効活用されないFe分が多く発生することを意味する。
【0012】
また二次ダストをZn源として亜鉛精錬メーカーにて再利用するために引き渡す際にも、一般的に二次ダスト中のZn濃度がある程度以下となると有償・有価とならず、産業廃棄物扱いとなって処理費用を亜鉛精錬メーカーへ支払う必要が生じる。
【0013】
よって還元炉から発生する二次ダスト中のZnとFeを分離してZn主体の分離物とFe主体の分離物に分けられれば、Zn及びFeを、それぞれリサイクルして有効活用をする観点からは好ましい。
【0014】
このための方法の一例として、特許文献7に焼成炉から発生する二次ダストを水でリパルプして可溶性塩類を溶出せしめた後、湿式磁力選別を行って磁着物を分離し、次いで該パルプを固液分離して亜鉛を含む非磁性物とハロゲン化合物をそれぞれ回収分離する、亜鉛を含む製鉄ダストの処理法が示されている。本法には詳細な湿式磁力選別の手法・条件が示されているが、実施例を読み取ると請求項2規定の0.5テスラ以上で磁力選別を行った場合には、非磁着側(Zn利用側)のFe濃度は5質量%以下と良好なZn品位の分離物が得られているが、Znインプット総量に対する非磁着側(Zn利用側)のZn回収率は60質量%前後、また磁着側(Fe利用側)のZn濃度が25質量%以上と十分なZnとFeの分離が得られる方法ではない。
【0015】
本願発明者が先に提案した還元炉の二次ダストの処理技術(先願1)では、FeとZnの分離効率を向上するための方法全体を提示しているが、湿式磁力選別の好適な条件を明瞭に示してはいない。即ち、発明を実施するための最良の形態の中で、「強磁場は必要でなく、0.1〜0.2テスラ程度あれば十分である」と述べるに留まって、好適な条件を明確に提示していない。
【0016】
本願発明者の別提案である先願2では、湿式磁力選別の際のスラリー濃度に関しては触れられているが、最適磁力に関する提示はない。
【0017】
また特許文献3には湿式磁力選別の詳細な方法が提案されているが、この技術は製鉄工程から発生する一次ダスト(高炉ダスト・製鋼ダスト)を対象とした技術であり、この一次ダストと還元炉の二次ダストとは性状・構成が大きく異なり、そのまま適用できない。即ち、Zn含有量が、二次ダストでは20〜60質量%程度と高いのに対して一次ダストでは高々5質量%程度である。逆に全Fe分量は、二次ダストでは高々20〜30質量%程度であるのに比べ、一次ダストでは20〜60質量%である。また二次ダストではK、Ca、Na、Cl等の塩類をそれぞれ数%のオーダーで含有しているが、一次ダストではそれぞれ1質量%を上回ることはあまりない。これらの結果として、一次ダストに比べて、二次ダストはFeないしFe化合物の表面上にZn化合物及びK、Ca、Na、Cl等の塩類が密に覆っており、磁力選別の前提として、Fe化合物などとZn化合物をミクロに分離することは容易ではない。鉱物組成としても特許文献3にはFe、Fe34、Fe23、ZnOが挙げられているが、特許文献7にも記載があるように二次ダストにはZnFe24が含まれる。これらの差異から、一次ダスト(高炉ダスト・製鋼ダスト)を対象にした技術から容易に類推して、還元炉の二次ダストの最適磁力選別条件が得られるわけではない。
【0018】
以上のように、Znを大量に含有する二次ダスト中のFe分を有効利用するための湿式磁力選別技術に関して好適な条件は未だ示されていない。
【0019】
そこで本発明は、二次ダストに関して、随伴Zn含有量を抑制しながらFe分を有効利用する具体的な方法を提供することを課題とする。
【0020】
またZn利用の方法は多数提案されているが、Fe分の利用と両立する具体的な方法は示されていないので、本発明はこれを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、製鉄工程で発生するダスト等の発生物を還元する還元炉から集塵した二次ダストをpH=8以上10以下のスラリーとなし、沈殿を生じないよう機械撹拌を併用しながらそのスラリーに超音波処理を行い、その後当該スラリーないしこれを希釈した希釈スラリーに対して表面磁束密度0.4テスラ以下の磁力で湿式磁力選別を行い、その磁着側分離物を脱水後に製鉄工程の原料として使用する、製鉄工程での発生物の再活用方法である。
【0022】
本発明において湿式磁力選別の非磁着側分離物は、脱水後にZn原料として使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、脱Zn用の還元炉からのZnを含む二次ダスト中のFeを有効・高効率に、随伴Znの悪影響を抑制しつつ製鉄工程で再度有効利用できる。またFe分の利用と同時に、分離したZn濃縮部分をZn精練の原料として用いるとFe系残渣が少なく効率的な再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の基本プロセスを示すフロー図である。
【図2】本発明が無い場合のフロー図である。
【図3】実施例2の結果(磁着側のFe回収率)を示す図である
【図4】表面磁束密度を上げたときの磁着側増加部分のZn/Fe比率を説明する図である。
【図5】実施例2の結果 (磁束密度を上げた場合の、0.1Tからの磁着側増加部分のZn/Fe比率) を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
高炉・転炉工程などの製鉄工程から発生するダスト等の発生物はZn分を含んでいるので、そのまま焼結工程などの製鉄工程にリサイクルはできない。図2に示すように還元炉で脱Zn処理を行い、脱Znされた還元鉄を製鉄工程にリサイクルする。還元炉からの二次ダストはそのまま非鉄精練会社に引き渡してZn源としてリサイクルされることが多い。
【0026】
本発明法では、図1に示すように、還元炉の二次ダストをスラリー化して超音波処理及び湿式磁力選別処理を行い、磁着側に分離されたものを製鉄工程にリサイクルし、非磁着に分離されたものをZn源としてリサイクルする。
【0027】
以下本発明に関して説明する。
(スラリー化)
二次ダストをスラリー化する際にはスラリー化した状態でのpHが8以上10以下となるよう、何らかのアルカリを用いてpH調整を行う。用いるアルカリ薬剤の種類は問わず、例えば水酸化ナトリウム等を用いることができる。pHを8以上とする理由は、それ未満だとZnの溶解ロスが大きくなることである。pH調整を行わず、pH=8未満だとZnの溶解ロスがインプットZn量の1〜数質量%になる。pHが8以上10以下の範囲なら、液中のZnの溶解量は0.0005質量%以下となるため、実質的に液中への溶解ロスはインプットZnの0.1質量%以下となり無視できるほど少ない。またpHを10以下とする理由は、そこまでコストを掛けて調整する意味がないからである。
【0028】
スラリー化の際の固体濃度(固液比)は特に制限はない。低濃度なら均一化も容易で扱い易いが、同一量を処理する際の設備容量が大きくなる欠点がある。高濃度であれば設備容量は小さく経済的に有利だが、固体分が沈殿し易く移送や超音波処理などが難しくなる。撹拌や移送の設備仕様次第だが、通常は数質量%〜30質量%程度が扱い易い。
【0029】
(超音波処理)
その後、スラリーに超音波処理を施す。超音波処理の目的は、超音波により生じるキャビテーションや振動加速度によりFe粒子に付着しているZn含有粒子を、ミクロ的に分かれさせることである。付着したままだとその後の湿式磁力選別によりZn分もFe粒子とともに磁着側に随伴される不都合が生じる。但しFeとZnが化学的に反応した化合物は物理的に分離できないので、超音波処理を行っても随伴Zn量が皆無になることはない。
【0030】
超音波処理の際、超音波による撹拌力だけではスラリーの均一化が不十分であり、インペラー撹拌など何らかの機械撹拌が必須である。撹拌方法や強度は問わないが、超音波処理の最中に固体分が沈殿せず懸濁していることが実質的に必要である。固体分の全部ないし一部が沈殿した状態で超音波処理をしてもその効果が無いか、あっても著しく減少する。
【0031】
超音波処理の条件も特に制限しない。実施例1に示すように、超音波処理により磁着側へのZn随伴率が実質的に改善されたと判断できれば良い。もとの還元炉の設備や操業条件より効果が得られる超音波処理条件は異なるが、一般的にはスラリーの単位体積当たりの超音波強度と照射時間の積が100〜120kW・min/m程度以上あればよい。
【0032】
(湿式磁力選別)
超音波処理の次に湿式磁力選別を行う。湿式磁力選別機の型式は問わない。但し磁性物質を磁着し非磁性物質と分別を行う磁着面の表面磁束密度は0.4テスラ以下とする。この値は実測ないし計算により確認する。
【0033】
以下、表面磁束密度を0.4テスラ以下とする理由を、実施例2を用いて述べる。磁力選別の際の磁着面の表面磁束密度を低い値から順次増加すると、表2・図3のようにインプットFe量総量に対する磁着側Fe回収率は増加する。Fe回収量が増えることは好ましいことではあるが、表2のD列のように磁着側にFeとともに随伴するZn量も増加する。0.1テスラでの磁力選別結果を比較のベースとし、その磁着物より0.2テスラ以上の磁着物にて増えた磁着増加部分のZn/Fe比を計算して見ると、表2のG列のように表面磁束密度が高くなるにつれて追加で磁着されるのは、Fe主体の物質でなくFeとZnの混合物であることが判る。Feを回収することが目的で磁力選別を行っているのに、表面磁束密度を増加することによるFe増分よりZn増分が大きくなることは意味がないので、図3の磁着側へのFe回収率の改善代が頭打ちになり、かつ図5の増加分のZn/Fe比が急速に高くならない0.4Tが好適な表面磁束密度範囲の上限と判断される。
【0034】
また工業的に磁力選別が行える限り、下限側の表面磁束密度の制約は無い。表面磁束密度が0テスラ(磁力なし)では磁力選別が行われないから意味は無いが、Feなどが工業的に磁着し磁力選別を行える限りは、意味はある。即ち、磁着側を製鉄原料に用いれば、何も行わないで二次ダストをそのまま全量を製鉄原料に使用するのに比し随伴Zn量は減少する。また非磁着側をZn原料に用いれば、何も行わないで二次ダストをそのまま全量をZn原料に使用するのに比し随伴Fe量は減少する。
【0035】
但し、表面磁束密度0.04テスラではインプットFe総量に対する磁着側回収Fe比率が50〜60質量%程度となることもあるので、通常磁力選別を行う以上は少なくとも半分以上Feを回収すると考えれば、0.04テスラ程度以上の表面磁束密度で湿式磁力選別を行うことが実用的である。
【0036】
湿式磁力選別の際のスラリー濃度の制約はない。湿式磁力選別が工業的にスムーズに行える範囲であれば、どのような範囲でも構わない。また超音波処理の際のスラリー濃度と同一である必要もないので、操業がし易い値をそれぞれ選べる。二次ダスト中のFe含有量次第だが、一般的に湿式磁力選別はスラリー濃度が高いと磁着物の分離など操業が難しくなるので、超音波処理の時のスラリー濃度より希釈することもある。
【0037】
(磁力選別後の磁着物の利用方法)
Fe分を活用するために磁着物を製鉄工程にリサイクルする戻し先場所は特に制限しない。焼結工程その他の何れでも可である。但し固液分離を行わず、スラリーそのままだと液中に微細なZn化合物が懸濁している場合があるので、少しでも随伴Zn量を減らすためには適当な固液分離を行い、少しでも水分を減ずることが好ましい。必ずしも含水率の制約がある訳ではないが、少なくとも固液分離装置にて工業的意味での脱水を行うことは必須である。
【0038】
(磁力選別後の非磁着物の利用方法)
非磁着側のZnの利用方法も特に制約は無い。回収されたZnが有効利用できる方法であれば方法を問わない。実用的にはスラリーのままでは、輸送やハンドリングに不便なので、固液分離(脱水)を行ってからZnリサイクルを行う。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
実施例1を以下に示す。還元炉からバグフィルターで回収されたFe=20質量%、Zn=26質量%の二次ダストを20質量%濃度のスラリーにした。このスラリーを超音波処理有無の両ケースで湿式磁力選別を行い、比較を行った。スラリーのpHはともに8.8であった。
【0040】
超音波処理は2kW/mの強度で60分間の処理とした。湿式磁力選別は、表面磁束密度0.1テスラで行った。
【0041】
その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
超音波処理を行ったケース(本発明法)は、未処理のケース(比較法)に比して磁着側への随伴Zn量が減少した。目的とする磁着側へのFe回収率(H列)は本発明法・比較法でも殆ど差は無かったにも係わらず、本発明法ではI列に示すように、インプットZn総量を100質量%とした磁着側(Fe回収)へのZn随伴量は38質量%から14質量%と、半分以下まで減少した。
【0044】
因みに、スラリーを本発明のpH範囲に調整していれば前述のように液中へのZn溶解ロスは実質的に無視できるので、I列掲載の磁着側へ随伴した以外のZnは非磁着側にて脱水により回収できる。即ち本発明法ならインプットのZnの86質量%が回収できることとなり、比較法の62%より大幅に向上した。
【0045】
(実施例2)
次にスラリー化及び超音波処理の方法・条件は実施例1と同じで、湿式磁力選別の磁着面の表面磁束密度を0.1〜1.0テスラの範囲で変化させた。
その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
磁着側のFe回収率(E列)を図3に示す。表面磁束密度が増加するにつれて磁着物量が増加するので、回収量が増える。特に0.4テスラ程度までの増加が著しい。
【0048】
D列のように、表面磁束密度の増加に伴い磁着側へ随伴するZn量も増える。F列は、各水準でのD列記載のZn値をC列記載のFe値で除したものである。表面磁束密度が高くなるほど磁着側への随伴Zn比率が増加することがわかる。
【0049】
またG列は、0.2テスラ以上の水準について、0.1テスラのケースとの比較にて磁着物が増えた部分のZn/Feを示したものである。図4を用いて、具体的に説明する。図4に模式的に示したように、0.1テスラの水準に比し、高磁束密度の水準での磁着物量は増加する。Feについては0.1テスラの水準ではFe0.1であったものが高磁束密度の水準ではFeに増える。このFeは図4のように、0.1テスラの水準でのFe0.1相当量のWaと、表面磁束密度が高くなった結果で磁着が増加した部分Wbからなる。Znについても同様に、高磁束密度の水準は0.1テスラの水準でのZn0.1相当量のWpと、表面磁束密度が高くなった結果で磁着が増加した部分Wqからなる。よって0.1テスラの水準から表面磁束密度が高くなった結果で磁着が増加した部分(純増部分)のZnとFeの比率はWq/Wbで表すことができる。これが表2のG列の値である。またこれをグラフ化したものが図5である。
【0050】
0.1テスラの水準での磁着物のZn/Feの比率より、表面磁束密度が高くなることにより磁着量が増えた部分はZnの比率が高くなり、その比率は高磁束密度となるほど大となる。そして0.4テスラを上回って表面磁束密度を上げても、Fe増加より随伴Zn量のほうが大きいだけとの結果となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄工程で発生するダスト等の発生物を還元する還元炉から集塵した二次ダストをpH=8以上10以下のスラリーとなし、沈殿を生じないよう機械撹拌を併用しながらそのスラリーに超音波処理を行い、その後当該スラリーないしこれを希釈した希釈スラリーに対して表面磁束密度0.4テスラ以下の磁力で湿式磁力選別を行い、その磁着側分離物を脱水後に製鉄工程の原料として使用する、製鉄工程での発生物の再活用方法。
【請求項2】
湿式磁力選別の非磁着側分離物を脱水後にZn原料として使用する請求項1記載の製鉄工程での発生物の再活用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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