説明

製麺機の縮れ付与装置

【課題】機械で縮れ癖を付けると麺の仕上がりが機械的で単調である。
【解決手段】縮れ付与装置3は、複数の駆動歯61を有する駆動ロール60Aと駆動歯61と同数の従動歯62を有する従動ロール60Bとの一対の円筒回転体でなる平歯車形の噛合ロール60を備える。噛合ロール60は、駆動歯61と従動歯62との麺の太さに対応する間隙gで麺線を屈曲させる。また、駆動ロール60Aを回転させるモータ60Cと、モータ60Cを制御する制御装置2とを備える。駆動ロール60Aと従動ロール60Bは、駆動歯61の歯面形状sと歯溝深さhにばらつきがある。制御装置2は、麺線切出装置40の切刃ロール40Aから切り出される麺線の送出速度に合わせて駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおける周速vδが常に一定になるようにモータ60Cの回転速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺に縮れ癖を与えて縮れ麺を生成する製麺機の縮れ付与装置に関する。特に、麺線を生成する麺線切出装置の下流に設けられ、麺線に不均一な波形状の縮れ癖を付ける縮れ付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製麺機は、素材を加水混練するミキサと、麺粒を加圧しながら引き伸ばして形成される麺帯原型を複合ロールで重ね合わせて麺帯を生成する麺帯生成装置と、複数の圧延ロールで麺帯の厚さを段階的に薄くして所定の厚さの麺帯を生成する麺帯圧延装置と、麺帯を切刃ロールで縦断して麺線を生成する麺線切出装置と、麺線をカッタで裁断して所定の長さの麺を生成する切断装置と、を備えている。
【0003】
ところで、中華麺あるいは即席麺でよく見受けられる、いわゆる縮れ麺を手作業で製造する場合は、麺の塊を手で揉んだりすることによって縮れ癖を付けるようにされる。麺の生産性を向上させるために、機械で縮れ麺を製造する場合は、麺を屈曲させてウェーブを施す縮れ付与装置が設けられる。縮れ癖は、麺線の状態で与えられることが有利である。そのため、縮れ付与装置は、一般に製麺作業の流れの方向で麺線切出装置の下流に設けられる。
【0004】
麺に縮れ癖を付ける方法によって縮れ付与装置をいくつかの方式に分類することができる。例えば、一対の噛合ロールによって麺を屈曲させる噛合ロール方式(特許文献1参照)と、摺動抵抗を与える邪魔板によって縮れ癖を付ける邪魔板方式(特許文献2参照)と、管状または漏斗形状の筒体によって縮れを与える筒体方式(特許文献3参照)とがよく知られている。
【0005】
邪魔板方式の縮れ付与装置では、移動する麺線に摺動抵抗が大きいゴムのような材質の邪魔板を押し付けて麺線を通過しにくくし、切刃ロールから切り出される麺線の送出速度と邪魔板を通過するときの通過速度との速度差によって麺線を案内板またはコンベアとの間で蛇行させて縮れるようにされる。また、筒体方式の縮れ付与装置では、筒体に麺線を通して筒体の内面における摺動抵抗によって麺線を筒体内で蛇行させて縮れるようにされる。
【0006】
したがって、邪魔板方式または筒体方式の縮れ付与装置では、本質的に麺線を詰まらせて縮れさせる思想であるので、麺線を十分に強く屈曲させることができない。そのため、麺を茹で上げるときに縮れ癖が解かれてしまい、縮れ麺に要求される程度の縮れ具合ではなくなり、縮れ麺としての特徴が失われやすい。このとき、麺線の表面に断続的に切込みを入れて屈曲しやすくして縮れ癖をより強く与えることが考えられるが、麺線が屈曲部位で切れやすくなるので、麺の強さが失われてしまう。
【0007】
噛合ロール方式の縮れ付与装置は、一対の歯車形の噛合ロールを所望の麺線の太さ程度の間隙をもって対向配置して間隙に麺線を通過させ、一対の噛合ロールの間隙において歯面形状に合わせて麺線を押し付けて屈曲するようにされる。そのため、麺線に与えられる縮れ癖が比較的強くなる。その結果、噛合ロール方式の縮れ付与装置は、麺を茹で上げるときも縮れ麺として十分な縮れ具合を維持させておくことができる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−179430号公報
【特許文献2】特開平9−224546号公報
【特許文献3】特許第3796167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
噛合ロール方式の縮れ付与装置は、麺線を一対の噛合ロールの間隙において歯面形状に合うように縮れ癖を付けているが、麺線を一定の速度で導入し送り出すためには、本来の歯車と同じように各歯と歯溝を同一形状に揃えて均等な間隔で配置する必要がある。そのため、縮れ具合が均一になってしまい変化をもたせるようにすることができない。その結果、麺の仕上がりが機械的で単調であって無味なものになりがちであり、職人が手作りで製造する独特の縮れ麺の風味が損なわれる。したがって、製品価値を高めるために、手作りの麺により近い縮れ具合で縮れ癖を付けることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、製麺機に設けられる麺線に縮れ癖を付ける縮れ付与装置であって、麺の縮れ具合に変化をもたせることができる改良された平歯車形の噛合ロール方式の縮れ付与装置を提供することを主たる目的とする。本発明のいくつかの有利な点は、具体的な実施の形態の説明においてその都度詳細に示される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の製麺機の縮れ付与装置は、上記課題を解決するために、一対の切刃ロール(40A)を有する麺線切出装置(40)の下流に設けられ麺線に縮れ癖を付ける縮れ付与装置(3)において、複数の駆動歯(61)が設けられ駆動歯(61)の歯面形状(s)と歯溝深さに(h)ばらつきがある駆動ロール(60A)と駆動歯(61)と麺線の太さに対応する間隙をもって噛み合うように駆動ロール(60A)の歯溝形状(s)に対して反転形状を有する駆動歯(61)と同数の従動歯(62)が設けられ従動歯(62)の歯面形状(s)と歯溝深さ(h)にばらつきがある従動ロール(62)とからなり上記間隙において麺線を屈曲させる平歯車形の噛合ロール(60)と、駆動ロール(60A)を回転させるモータ(60C)と、麺線切出装置(40)から切り出される麺線の送出速度(fα)に合わせて駆動歯(61)と従動歯(62)との間の麺線の導入部位(X)における周速(vδ)が常に一定になるようにモータ60Cの回転速度を制御する制御装置(2)と、を備えてなるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製麺機の縮れ付与装置は、噛合ロール方式であるので、麺線に縮れ癖が比較的強く付けられる。そのため、茹で上がり後も縮れ麺として十分な縮れ具合が維持される。特に、平歯車形の噛合ロール方式であるので、斜歯歯車形または山歯歯車形の噛合ロールで発生する回転軸方向の推進力であるスラストが本質的に存在しない。そのため、麺線が回転軸方向に移動しようとして送給経路を逸脱して麺線どうしがくっついたり、駆動歯と従動歯との間隙で回転軸方向に捩れて麺が引き千切られるおそれが小さい。
【0013】
そして、歯面形状と歯溝深さにばらつきがある噛合ロールで麺線を屈曲させるので、麺線の屈曲形状と太さにばらつきが生じて単調でなくなり、麺の縮れ具合がより変化に富んだものとなる。そのため、麺の仕上がりが手揉みにより近くなって手作りの縮れ麺の独特の風味が損なわれず、機械生産では存在しなかった新しい食感の麺が生成される。その結果、製麺機で生産される縮れ麺の価値を向上させる効果を奏する。
【0014】
このとき、駆動ロールと従動ロールの各歯の歯面形状と歯溝深さにばらつきがあるため、回転軸の中心から駆動歯と従動歯との間の麺線の導入部位までの距離が各歯毎に異なるので、麺線の導入部位における周速が変化する。そのため、麺線を定速で安定して導入して送り出すことができず、麺線切出装置と縮れ付与装置との間で麺線が寸断されたり、駆動歯と従動歯との間隙で麺線が引き千切れるおそれがある。また、駆動歯と従動歯との間隙に麺線を介在させて噛み合うときに麺線に作用する力が適正に均等に伝達されないので、噛合ロールががたついて振動と騒音が増大する。
【0015】
本発明の製麺機の縮れ付与装置は、麺線切出装置から切り出される麺線の送出速度に合わせて駆動歯と従動歯との間の麺線の導入部位における周速が常に一定になるようにモータの回転速度を制御する制御装置を備えているので、麺線切出装置と縮れ付与装置との間で麺線が略一定の速度で安定して送られる。そのため、麺線切出装置と縮れ付与装置との間で麺線が寸断したり、駆動歯と従動歯との間隙で麺線が切れることがない。また、駆動歯と従動歯の噛合時のストレスが増大せず、振動と騒音が抑制されるとともに噛合ロールの損傷のおそれが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の縮れ付与装置を備える製麺機の概容を示す模式図である。
【図2】縮れ付与装置の噛合ロールの構成を示す平面断面図である。
【図3】噛合ロールの構成を示す断面図である。
【図4】縮れ付与装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、縮れ付与装置が適正配置される製麺機の全体構成が模式的に示される。図1に示される製麺機1は、ミキサ10と、麺帯生成装置20と、麺帯圧延装置30と、麺線切出装置40と、切断装置50と、を含んでなる。ミキサ10で混練される素材から生成される麺粒は、麺帯生成装置20で麺帯にされてから麺帯圧延装置30で送り方向Fに送り出されながら段階的に所定の厚さまで圧延される。麺帯は、麺線切出装置40で麺線にされ、切断装置50で所定の長さに裁断される。実施の形態の製麺機1は、図示しない茹麺装置を備えており、所定の長さに裁断された麺が定量の麺の塊に分けられて茹で上げられる。
【0018】
ミキサ10は、水平方向の回転軸に対して放散するように設けられる複数の混練棒を備える。ミキサ10は、混練棒を回転軸廻りに回転させ、素材に適量の水を加えて素材を混練する。適量の水を含む素材は、大きさが不均一の麺粒になる。ミキサ10で加水混練される素材から生成される多数の麺粒は、麺帯生成装置20に供給される。
【0019】
麺帯生成装置20は、ホッパ20Aと、コンベア20Bと、一対の複合ロール20Cと、を含んでなる。麺帯生成装置20は、ミキサ10から供給される麺粒をホッパ20Aに集積する。麺帯生成装置20のホッパ20Aに近接配置されている一対の圧縮ロールは、麺粒を圧縮し麺粒から連続する板状の麺帯原型を形成しながらコンベア20Bに送り出す。麺帯生成装置20は、複数の麺帯原型を形成して複数の麺帯原型が重なるようにコンベア20Bで複合ロール20Cに搬送する。複合ロール20Cは、複数の麺帯原型を重ね合わせながら圧延して反物のような麺帯を生成する。
【0020】
麺帯圧延装置30は、ミキサ10から切断装置50までの製麺作業の流れに従う麺帯の送り方向Fに沿って整列配置される複数の圧延ロール30Aでなる。圧延ロール30Aは、モータによって回転するメスロールとメスロールに従動するオスロールとの一対の円筒回転体でなる。オスロールは、メスロールのフランジ間に収容されるように所定の間隙をもってメスロールに対向配置される。麺帯圧延装置30は、複数の圧延ロール30Aのメスロールとオスロールとの間隙を送り方向Fの整列順に小さくすることで麺帯の厚さを段階的に薄くして麺帯を所望の太さに相応する所定の厚さまで圧縮しながら引き伸ばす。
【0021】
麺線切出装置40は、所定の厚さの麺帯を連続的に縦断して麺線を生成する一対の切刃ロール40Aを有する。切刃ロール40Aの切刃の形状には複数の種類があって、切刃の形状に対応して麺線の断面形状が決められる。また、切刃ロール40Aの幅方向に同一間隔で配置される複数の切刃における隣接する切刃どうしの間隔は、所望の麺の太さに合わせて決められている。
【0022】
切断装置50は、麺線切出装置40で切り出された麺線を所定の長さに裁断するカッタを含んでなる。カッタは、麺線を所定時間毎に切断するように動作する。したがって、切断装置50に送られてくる麺線の送り速度が一定である場合は、麺の長さが略一定にされる。一方、切断装置50に送られてくる麺線の送り速度が変動する場合は、麺の長さが送り速度の変動に比例してばらつく。
【0023】
実施の形態の製麺機1では、後に詳細に説明される制御装置2によって麺帯生成装置20の複合ロール20Cと麺帯圧延装置30の複数の圧延ロール30Aと麺線切出装置40の切刃ロール40Aとをそれぞれ回転させる各モータが制御される。各モータに駆動電流を供給する駆動回路装置(モータドライバ)は、制御装置2から別々に制御信号を受けて、各モータが独立して制御される。ただし、モータがサーボモータであるときは、制御装置2は、速度指令を同期させて出力し各モータを同時に制御することができる。
【0024】
本発明の製麺機1では、麺帯と麺線の送り方向Fに従う製麺作業の流れの方向で麺線切出装置40の下流に麺線に縮れ癖を付ける縮れ付与装置3が設けられる。図1に示される実施の形態の製麺機1においては、縮れ付与装置3は、麺線切出装置40と切断装置50との間に設けられる。また、縮れ付与装置3は、麺線切出装置40の切刃ロール40Aの下側に配置される。このとき、平行に送られる多数本の麺線が絡み合わないようにするために、麺線切出装置40と縮れ付与装置3との間に複数の麺線を平行に分離して通過させる案内部材が設けられる。
【0025】
縮れ付与装置3は、麺線に縮れ癖を付与する噛合ロール60を備える。噛合ロール60は、駆動ロール60Aと従動ロール60Bとの一対の円筒回転体でなる。また、縮れ付与装置3は、駆動ロール60Aを回転させるモータ60Cとモータ60Cの回転速度を制御する制御装置2とを備える。制御装置2は、麺線切出装置40から切り出される麺線の送出速度に合わせて駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおける周速が常に一定になるようにモータ60Cの回転速度を制御する。
【0026】
制御装置2によって切刃ロール40Aにおける麺線の送出速度に対して噛合ロール60における麺線の導入速度が常に僅かに速い一定の速度になるようにされるので、一対の切刃ロール40Aと縮れ癖を付与する噛合ロール60との間で麺線が略一定の速度で送られる。そのため、麺線切出装置40と縮れ付与装置3との間で麺線が寸断することがない。また、駆動ロール60Aと従動ロール60Bの間隙で麺線が切れたり、噛合不良のストレスによる振動と騒音が抑制される。また、切断装置50に送られる麺線の送り速度の変動が小さいので、麺の長さのばらつきが十分に小さくされるという利点がある。
【0027】
図2に、図1に示される噛合ロール60の平面断面が示される。また、図3に、噛合ロール60の横断面が示される。本発明でいう平歯車形の噛合ロールとは、歯車どうしの歯の噛合いで回転駆動力が直接伝達される平歯車そのものを意味するものではなく、直径よりも幅が長い円筒回転体であって歯車のような複数の歯を有する回転体のことをいう。
【0028】
縮れ付与装置3は、より具体的には、複数の駆動歯61が設けられ駆動歯61の歯面形状sと歯溝深さhにばらつきがある駆動ロール60Aと、駆動歯61と麺線の太さに対応する間隙gをもって噛み合うように駆動ロール60Aの歯溝形状に対して反転形状を有する駆動歯61と同数の従動歯62が設けられ従動歯61の歯面形状sと歯溝深さhにばらつきがある従動ロール60Bとからなり、駆動歯61と従動歯62との間隙gにおいて麺線を屈曲させる噛合ロール60を含んでなる。
【0029】
実施の形態の噛合ロール60は、回転軸に平行な複数の歯を有する平歯車形ロールである。平歯車形であるので本質的にスラストが発生しないから、駆動歯61と従動歯62との間隙gにおいて麺線を縮れ癖が解けない程度に十分に強い力で屈曲させても麺線は真直ぐに送り出される。そのため、麺線どうしがくっついたりすることがなく、切断装置50に送られる。また、駆動歯と従動歯との間隙で麺が千切れることがない。
【0030】
駆動ロール60Aの全駆動歯61の各先端は、駆動ロール60Aの回転軸を中心とする同一の歯先円の円周上に位置する。また、従動ロール60Bの全従動歯62の各先端は、従動ロール60Bの回転軸を中心とする駆動ロール60Aの歯先円と同一直径の歯先円の円周上に位置する。したがって、駆動歯61と従動歯62との間隙gが維持される。また、駆動歯61と従動歯62の先端は、麺線を切断しないように曲面にされる。
【0031】
従動ロール60Bの従動歯62が駆動ロール60Aの歯溝形状sの反転形状を有するということは、従動歯62の歯面形状sが駆動歯61の歯溝形状と相似であるということを意味するものではない。従動歯62の歯面形状sは、駆動歯61と従動歯62とが麺線の太さに対応する間隙gをもって干渉することなく噛み合うように駆動ロール60Aの歯溝63に従動歯62が入り込む形状を有する。同じように、従動ロール60Bの歯溝64に駆動歯61が干渉することなく入り込む。したがって、駆動歯61と従動歯62との間隙gが一定であるとは限らない。
【0032】
図3に示されるように、駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおいて駆動歯61と従動歯62との間隙gに麺線が導入されると、麺線が間隙gで圧縮されて駆動歯61の歯面65と従動歯62の歯面66との間に形成される波形状に合致するように麺線に縮れ癖が付けられる。このとき、駆動ロール60Aと従動ロール60Bの歯面形状sと歯溝深さhにはばらつきがあるので、縮れ具合が不定で厚さが不均一の波形状の変化に富んだ縮れ癖が付けられる。
【0033】
実施の形態における噛合ロール60の駆動ロール60Aを回転させるモータ60Cは、制御装置2の制御信号に従う回転速度で回転するインダクションモータである。制御装置2は、制御信号として単位制御時間毎の速度指令を出力する。また、図2に示されるモータ60Cは、駆動軸が駆動ロール60Aの回転軸に直結するダイレクトドライブ方式の交流電動機である。
【0034】
より正確に回転速度を制御するために、モータ60Cを位置決め制御が行なえるサーボモータにすることができる。モータ60Cがサーボモータである場合は、制御装置2は、単位制御時間毎の位置指令または位置指令と速度指令とを演算して出力する。このとき、モータ60Cの回転位置を検出する位置検出器と回転速度を検出する速度検出器が設けられる。制御装置2は、位置検出器と速度検出器から出力される検出信号を入力してモータ60Cをサーボ制御する。
【0035】
実施の形態の縮れ付与装置3は、従動ロール60Bを駆動ロール60Aと反対方向に等速に回転させるように駆動ロール60Aの回転駆動力を従動ロール60Bに伝達するギア60Dを備える。ギア60Dは、駆動ロール60Aの回転軸と同軸に設けられ駆動ロール60Aと共に回転する駆動歯車67と、駆動歯車67に従動する同一モジュールの従動歯車68とでなる。駆動歯車67と従動歯車68との間に中間歯車を設けることができる。従動ロール60Bは、駆動ロール60Aの速度変化に合わせて常に駆動ロール60Aと同一の回転速度で回転する。
【0036】
駆動ロール60Aと従動ロール60Bとの間隙gに麺線が存在するときは、平行に送られる複数の麺線が間隙gを埋めるため、駆動ロールAの回転駆動力が間隙gに介在する麺線を通して従動ロール60Cに伝達される。そのため、間隙gに麺線が存在する限り、ギア60Dがなくても従動ロール60Bが自由に回転する状態にしておくだけで駆動ロール60Aに追従させて従動ロール60Bを十分に回転させることができる。ただし、より安全に安定して従動ロール60Bを回転させるために、ギア60Dを設けることが依然として有利である。
【0037】
図4に、制御装置の構成がブロック図で示される。図4に示される制御装置は、統合制御装置として製麺機1の全ての制御対象を一括して制御することができる。統合制御装置は、制御対象に同期してまたは独立して複数の種類の制御信号を与えて製麺機1の全体の運転を管理することができる。ただし、以下では、制御装置2における縮れ付与装置3に直接関係する機能のみを図示して詳細に説明する。
【0038】
実施の形態の制御装置2は、縮れ付与装置3の運転に要求される設定値または設定値を計算するために必要なパラメータを入力することができる入力装置21と、設定値に基づいてモータ60Cに制御信号を出力する指令装置22と、設定値を記憶する記憶装置23と、指令装置22から出力される制御信号を入力して制御信号に従ってモータ60Cに駆動電流を供給する駆動回路装置24と、を含んでなる。
【0039】
入力装置21は、操作者が設定値を入力するための手段である。指令装置22が設定値を計算して設定できる場合は、入力装置21は、操作者が設定値を設定するために必要なパラメータを入力するための手段である。入力装置21は、制御装置2の操作盤として必要な複数のスイッチとボタンまたはキーを備える。また、入力装置21は、計器と表示器を含むモニタまたは液晶ディスプレイを備える。加えて、入力装置21は、パイロットランプと警報機を含んでなる。設定値は、モータ60Cの複数の所定時間または所定回転角度位置に対する回転速度である。
【0040】
指令装置22は、設定値を設定する手段である。指令装置22は、入力装置か21から設定値が直接入力される場合は、入力される設定値を記憶装置23に記憶させる。指令装置22は、入力装置21から設定値を設定するために必要なパラメータが入力されるときは、入力されてくるパラメータに基づいて所定時間または所定回転角度位置に対する回転速度を計算して設定値として記憶装置23に記憶させる。また、指令装置22は、設定値として記憶装置23に記憶されている複数の回転速度に従って制御信号を演算して出力する手段である。
【0041】
指令装置22は、少なくとも演算器とメモリを含んでなる。演算器は、制御信号として速度指令を演算して出力するための高速の専用演算プロセッサである。制御プログラムは、演算プロセッサが備える記憶装置(ROM, Read Only Memory)に記憶されている。また、メモリは、少なくとも演算器が出力する演算結果を記憶し得る記憶容量を有する一時記憶装置(RAM, Random Access Memory)である。
【0042】
ただし、制御装置2が縮れ付与装置3以外の制御対象を制御する場合は、制御プログラムを記憶装置23にインストールしておき、製麺機1を運転するときに制御プログラムを記憶装置23から読み出してメモリに記憶させ実行させることができるように、制御装置2に汎用のパーソナルコンピュータの機能が要求されることがある。制御装置2がパーソナルコンピュータの機能を有する場合は、指令装置22に中央演算処理装置(CPU, Central Processing Unit)と比較的容量が大きいメモリが設けられる。
【0043】
指令装置22は、複数の駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおける周速が常に切刃ロール40Aの麺線の送出速度に合わせて一定になるように導入部位Xにおける所定時間または所定回転角度位置に対する回転速度を記憶装置23から読み込んで回転速度に従う速度指令を演算して駆動回路装置24に出力する。特に、指令装置22は、切刃ロール40Aと噛合ロール60との間で麺線が絡んだり、引っ掛かったりすることなく安定して送られるために、切刃ロール40Aの麺線の送出速度に対して噛合ロール60の麺線の導入速度が僅かに速い一定の速度に維持される回転速度に従う速度指令を出力する。
【0044】
また、実施の形態における指令装置22は、予め設定され記憶装置23に記憶されている麺線の送出速度に相応する回転速度に従う速度指令を演算して切刃ロール40Aを回転させるモータ40Bの駆動回路装置25に出力する。また、指令装置22は、麺帯の送出速度を揃えるために、予め設定され記憶装置23に記憶されている麺帯の送出速度に相応する回転速度に従う速度指令を麺帯圧延装置30の各圧延ロール30Aを回転させる各モータ30Bの駆動回路装置26に出力する。ただし、各モータ30Bとモータ40Bとを同期して回転させることは要求されない。
【0045】
記憶装置23は、複数の設定値を記憶する手段である。指令装置22が具備するメモリを記憶装置23として利用することができる。ただし、指令装置22のメモリに設定値を記憶させる場合は、制御装置2の電源を遮断したときに設定値が消去される。そのため、制御装置2の電源を投入して制御プログラムを起動するたびに設定値を設定する必要が生じる。したがって、基本的に、制御装置2の電源が遮断されているときでも設定値のデータを失うことがなく、設定値のデータを任意に書き換えることができる記憶装置23を設けることが望ましい。
【0046】
駆動回路装置24は、指令装置22から出力される速度指令を入力して速度指令に従う駆動電流をモータ60Cに供給する。好ましくは、駆動回路装置24のアンプにインバータ制御回路を設けてモータ60Cをより正確に制御するようにされる。モータ60Cがサーボモータであるときは、位置決め制御を行なうために、指令装置22と駆動回路装置24との間に位置検出器と速度検出器から入力される検出信号を処理して駆動回路装置24に制御信号を出力するモータ制御装置が設けられる。
【0047】
以下に、制御装置2の動作を説明する。ここで、麺線切出装置40の切刃ロール40Aにおける回転軸の中心から切断部位までの半径をrα(mm)とし、設定されている回転数をωα(rpm)としたときの切断部位における周速をvα(m/sec)とする。このとき、切刃ロール40Aの麺線の送出速度fα(mm/min)は、切刃ロール40Aの切断部位における周速vαとおよそ一致するとみなすことができる。なお、回転数ωは、回転速度vに換算されるので、同一のパラメータとして説明する。また、指令装置22の演算装置は、単位を揃えて計算するものとする。
【0048】
切刃ロール40Aの切断部位における周速vαは、切刃ロール40Aの回転数ωαと切断部位までの半径rαとの積である。設計上、噛合ロール60の各駆動歯61と従動歯62との噛合位置は決められている。また、複数の各駆動歯61と従動歯62との噛合位置における回転軸の中心から噛合位置までの距離rδが決められている。このとき、駆動歯61と従動歯62との噛合位置で麺線が導入されるので、麺線の導入時に駆動歯61と従動歯62の噛合位置と麺線の導入部位Xが一致し、距離rδは、回転軸の中心から導入部位Xまでの半径であるとみなすことができる。
【0049】
指令装置22は、基本的に、噛合ロール60の駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおける周速vδが切刃ロール40Aにおける麺線の送出速度fαに対して噛合ロール60における麺線の導入速度fδが1.1倍〜1.3倍程度の僅かに速い一定の速度であるように駆動ロール60Aを回転させるモータ60Cの回転速度を制御する。モータ60Cに要求される回転数ωδは、周速vδに周速kvα(ただし、定数kは1.1〜1.3)を代入して距離rδと周速kvαとで求められる。
【0050】
したがって、指令装置22は、第1番目から第n番目までの全ての駆動歯61と従動歯62との間の麺線の各導入部位Xにおける各到達予定の所定時間tに対する回転数ωδをそれぞれ設定値として記憶装置23に記憶させておく。なお、所定時間の実数値は絶対時刻ではなく時間幅である。または、駆動歯61と従動歯62の噛合位置が導入部位Xに到達したときの基準の回転角度位置に対する回転角度位置θが事前にわかるので、指令装置22は、各導入部位Xにおける所定回転角度位置θに対する回転数ωδを設定値として記憶装置23に記憶させておくようにすることができる。
【0051】
指令装置22は、記憶装置23に記憶されている複数の所定時間tをデータセレクタにセットして常時時間を測定する。指令装置22は、第n番目の駆動歯61と従動歯62の噛合位置が導入位置Xnとが一致するtn時間に到達したときに所定時間tnに対する回転数ωδnを記憶装置23から読み出して、回転数ωδnに相当する速度指令を演算して駆動回路装置24に出力する。
【0052】
または、指令装置22は、記憶装置23に記憶されている複数の所定回転角度位置θをデータセレクタにセットして常時位置検出器から位置を検出する。指令装置22は、第n番目の駆動歯61と従動歯62の噛合位置が導入位置Xnとが一致する所定回転角度位置θnに到達したときに所定回転角度位置θnに対する回転数ωδnを記憶装置23から読み出して、回転数ωδnに相当する速度指令を演算して駆動回路装置24に出力する。
【0053】
指令装置22は、実用上は、回転数ωδを変更するたびに速度指令を演算する必要はない。例えば、初期状態で回転数ωδに相当する速度指令を演算したときに求められた速度指令をメモリに記憶させておき、それ以降ではモータ60Cの回転速度を回転数ωδに変更するときにメモリから速度指令を読み出して出力するようにすることができる。または、各導入位置Xにおける複数の回転数ωδに相当する速度指令を予め演算しておき、回転数ωδに代えて速度指令値を設定値として記憶装置23に記憶させておくことができる。
【0054】
このとき、噛合ロール60は、ある一定期間において一定の度合いで速度変化を繰り返すように回転制御される。そこで、初期状態で演算される一定期間の駆動ロール60Aの刃数nとn箇所の導入部位Xにおける各周速vδとから速度変化を求めて、求めた速度変化に従う特定の周波数変化で速度指令を出力するようにすることができる。指令装置22が特定の周波数変化で制御信号を出力するようにされる場合は、制御装置2の構成をより簡単にできる。また、要求される送り速度vδが比較的速く噛合ロール60の回転数ωδが100rpm以上に及ぶときでも、制御上の遅延時間による回転速度の誤差を小さくすることができる。
【0055】
操作者が駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入位置Xにおける所定時間tまたは所定回転角度位置θに対する回転数ωδを計算して設定値を直接入力することができる。ただし、既述のとおり、製麺機の製造者が設計上判明している回転数ωδを求めるために必要なパラメータを事前に制御装置2に与えておくことで、制御装置2に複数の回転数ωδをそれぞれ計算させて設定することができる。そのため、実施の形態の縮れ付与装置3では、操作者が切刃ロール40Aの回転数ωαを入力するだけでモータ60Cの回転速度を制御させることができるので、操作者の負担が小さく作業がより容易である。
【0056】
以上のように制御装置2を動作させることによって、麺線切出装置40から切り出される麺線の送出速度に合わせて駆動歯61と従動歯62との間の麺線の導入部位Xにおける周速が常に一定になるようにモータ60Cの回転速度が制御される。その結果、麺線が略一定の速度で送られるので、麺線が途中で寸断することがなく、縮れ具合がより変化に富んで麺の仕上がりが手揉みにより近い麺が製造される。
【0057】
以上に説明される実施の形態の製麺機における縮れ付与装置は、実用上最良と考えられる構成が示されているが、すでにいくつかの例が挙げられているように、本発明の作用効果を十分に得られる範囲で適宜変形して実施することができる。また、本発明の縮れ付与装置は、作用効果を失わない範囲で製麺機に設置される他の目的で設置される装置と組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、中華麺あるいは即席麺のような縮れ麺を製麺機によって製造するときに有益に実施される。本発明によって手作り麺の風味がある新しい食感の麺が生成される。本発明は、製麺機で生産される麺の品質と価値を向上させ、麺産業の発展に貢献する。
【符号の説明】
【0059】
1 製麺機
2 制御装置
3 縮れ付与装置
10 ミキサ
20 麺帯生成装置
20A ホッパ
20B コンベア
20C 複合ロール
30 麺帯圧延装置
30A 圧延ロール
40 麺線切出装置
40A 切刃ロール
50 切断装置
60 縮れ癖付与ローラ
60A 駆動ローラ
60B 従動ローラ
60C モータ
60D ギア
61 駆動歯
62 従動歯
63,64 歯溝
65,66 歯面
67 駆動歯車
68 従動歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の切刃ロールを有する麺線切出装置の下流に設けられ前記麺線に縮れ癖を付ける縮れ付与装置において、複数の駆動歯が設けられ前記駆動歯の歯面形状と歯溝深さにばらつきがある駆動ロールと前記駆動歯と前記麺線の太さに対応する間隙をもって噛み合うように前記駆動ロールの歯溝形状に対して反転形状を有する前記駆動歯と同数の従動歯が設けられ前記従動歯の歯面形状と歯溝深さにばらつきがある従動ロールとからなり前記間隙において麺線を屈曲させる平歯車形の噛合ロールと、前記駆動ロールを回転させるモータと、前記麺線切出装置から切り出される麺線の送出速度に合わせて前記駆動歯と前記従動歯との間の麺線の導入部位における周速が常に一定になるように前記モータの回転速度を制御する制御装置と、を備えてなる製麺機の縮れ付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−160667(P2011−160667A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23250(P2010−23250)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】