説明

裾落し機

【課題】 刈刃の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しながらも駆動源側の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機を提供する。
【解決手段】 動力伝達装置を刈刃の長手方向に対してほぼ直交した状態で駆動源側に一体化させると共に、駆動源側からの駆動軸よりも刈刃を往復動させるための従動軸を上方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、裾落し機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
裾落し機は、摘採や管理作業の能率化を図るために、茶樹の不要な裾枝、裾芽を刈刃により刈り落とすものである。図7に示されるように、従来、このような裾落し機1にあっては、刈刃2を駆動する駆動源としての原動機3と、原動機3からの動力を接断する遠心クラッチを収めたクラッチケース4と、遠心クラッチを介して伝達された動力により刈刃2をほぼ垂直方向に往復動させる動力伝達装置としての刈刃駆動用伝動ケース(クランクケース)5とが相互に組付けられた状態で備えられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記した従来の裾落し機にあっては、図8に示されるように、原動機2側から出力される動力は、刈刃駆動用伝動ケース5内において機体前後方向に延びた駆動軸6から減速歯車対7A,7Bを介して下方側に並行配置された従動軸8に伝達され、従動軸8に連なった傘歯車対9A,9Bを介して機体左右方向に延びた左右一対の回転軸10に入力され、それぞれの回転軸10に連なった図示しない駆動歯車に下方側にて噛み合う従動歯車に一体化された偏芯カム及びコンロッド(例えば、特許文献2参照)を介して刈刃2を垂直方向に往復動するように構成されている。すなわち、伝動ケース5はその長手方向が刈刃2の長手方向に位置するように配置されるため、刈刃の全長(刈取高さ)を短縮化しないかぎりは原動機3及びクラッチケース4の搭載位置を低くすることは難しいという問題があった。
そして、原動機3及びクラッチケース4等の重量物の搭載位置を低くしないと、特に刈刃の高さ調整を可能とする高さ調節機構により刈取高さを最大とした場合、機体の安定性が損なわれてしまう虞があるばかりか、作業者や圃場の条件によっては良好な前方視認性を得ることは難しいという問題が発生してしまう。
【0004】
【特許文献1】特開2002−153114号公報
【特許文献2】特開平9−298930号公報(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、刈刃の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しながらも駆動源側の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、刈刃を駆動するための駆動源と、前記駆動源側からの動力により前記刈刃を往復動させる動力伝達装置とが一体化された状態で備えられた裾落し機において、
前記動力伝達装置は、前記刈刃の長手方向とは異なった状態で前記駆動源側に一体化されると共に、前記駆動源側からの駆動軸よりも前記刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記動力伝達装置は、前記駆動源側から取り出された動力を機体前後方向に延びた前記駆動軸に伝達させたのち、一対の噛み合いギヤを介して前記駆動軸よりも上方で、且つ前記駆動軸に並行した前記従動軸に伝達し、前記従動軸に設けられた傘歯車により左右一対の回転軸を回転させ、前記回転軸に連なった駆動ギヤに噛み合うように機体前後方向に設けられた従動ギヤを回転させ、前記従動ギヤの回転により回転運動を往復運動に変換する偏心カムに前記刈刃を連ならせるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記駆動源と動力伝達装置とは縦置き配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、刈刃を駆動するための駆動源と、前記駆動源側からの動力により前記刈刃を往復動させる動力伝達装置とが一体化された状態で備えられた裾落し機において、
前記動力伝達装置は、前記刈刃の長手方向にほぼ一致した状態で前記駆動源側に一体化されると共に、前記駆動源側からの駆動軸よりも前記刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、前記動力伝達装置は、前記駆動源側から取り出された動力を機体前後方向に延びた前記駆動軸に伝達させたのち、一対の噛み合いギヤを介して前記駆動軸よりも上方で、且つ前記駆動軸に並行した前記従動軸に伝達し、前記従動軸に設けられた傘歯車により左右一対の回転軸を回転させ、前記回転軸に連なった駆動ギヤに噛み合うように下方側に設けられた従動ギヤを回転させ、前記従動ギヤの回転により回転運動を往復運動に変換する偏心カムに前記刈刃を連ならせるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1又は2に記載の発明によれば、動力伝達装置は刈刃の長手方向とは異なる状態、例えば、刈刃の長手方向に対してほぼ直交した状態、すなわちほぼ水平に寝かされた状態で駆動源側に一体化されると共に、駆動源側からの駆動軸よりも刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置されているため、動力伝達装置の下部に駆動源側が一体的に組付けられるようになる。これにより、刈刃の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しながらも駆動源側の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、駆動源と動力伝達装置とは縦置き配置されている。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、駆動源と動力伝達装置とを相互に組付けた際の全長を短縮化することができる。
【0013】
請求項3又は4に記載の発明によれば、動力伝達装置は刈刃の長手方向にほぼ一致した状態で駆動源側に一体化されている場合であっても、駆動源側からの駆動軸よりも刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置される。これにより、動力伝達装置の下部に駆動源側が一体的に組付けられるので、刈刃の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しながらも駆動源側の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
動力伝達装置を刈刃の長手方向に対してほぼ直交した状態で駆動源側に一体化させると共に、駆動源側からの駆動軸よりも刈刃を往復動させるための従動軸を上方に配置することによって、刈刃の全長を短縮化することなく駆動源側の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機が実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された自走式両面裾落し機の側面図、図2は、同例における背面図、図3は、最大刈幅とした刈刃を示した背面図、図4は、同例における要部の拡大図である。
【0016】
図1〜4に示されるように、本発明が適用された自走式両面裾落し機100には、刈刃11及びこの刈刃11に動力を供する駆動源、動力伝達装置が一体的に組付けられた第1の支持部材としての機体上下方向に延びる刈刃支持フレーム12と、この刈刃支持フレーム12の下部を摺動可能に挿嵌支持すると共に走行体としての車輪(駆動輪13、補助車輪14)を支持する第2の支持部材としての機体上下方向に延びた車輪支持フレーム15と、刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15とを固定することによって刈刃支持フレーム12の伸縮量を調整する位置決め手段としての高さ調整レバー16とが備えられている。
【0017】
刈刃支持フレーム12の上部には、図1に示されるように、駆動源としての原動機17と、動力伝達装置として、この原動機17からの動力を遠心力に応じて接断する遠心クラッチ18(図2、4に図示)を収めたクラッチケース19と、遠心クラッチ18を介して伝達された動力を刈刃11及び駆動輪13に伝達する歯車機構部を収めた刈刃駆動用の第1の伝動ケース20A及び動力分割用の第2の伝動ケース20Bからなる伝動ケース20とが縦置き配置された状態で相互に組付けられている。
【0018】
原動機17は、第2の伝動ケース20B後部にクラッチケース19を介して片持ち支持された状態で取り付けられている。図4に示されるように、この原動機17の動力は原動機17前部側から取り出され、遠心クラッチ18を介して機体前後方向に延びる駆動軸21に伝達されたのち、第2の伝動ケース20B内において一対の噛み合いギヤとしての減速ギヤ22を介して駆動軸21よりも上方で、かつ駆動軸21と並行配置された従動軸としてのカウンタ軸23に入力される。
【0019】
カウンタ軸23には、図3、4に示されるように、傘歯車としてのベベルギヤ24が設けられており、このべベルギヤ24の駆動側のベベルリングギヤ24Aに噛み合う従動側の2組のベベルピニオンギヤ24Bに連なる機体幅方向に延びる左右一対の回転軸25には、第1の伝動ケース20A内において図示しない刈刃駆動用の2組の偏心カム及びコンロッドを駆動するための駆動ギヤ26がそれぞれ設けられている。そして、カウンタ軸23の回転に伴いこの駆動ギヤ26が回転すると、第1の伝動ケース20A内で機体前後方向にほぼ水平状に離間して配置された従動ギヤを介して、2組の偏心カム及びコンロッドが偏心運動することによって(同様な構成の詳しい説明は特許文献2に記載のため、ここでは省略)、第1の伝動ケース20A下部から往復動可能、且つ摺動可能に垂下された2枚1組の刈刃11(刈刃111、112のこと)が摺動しながら互いに相対する方向に往復動するようになっている。
【0020】
なお、ここでは駆動ギヤ26と従動ギヤとを機体前後方向にほぼ水平状に離間して配置した構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示されるように、第1の伝動ケース20A内において駆動ギヤ26と従動ギヤとを機体前後方向に傾斜状、且つ従動ギヤ側(偏芯カム側)が駆動ギヤ26よりも高くなるように離間して配置することも可能である。これにより、さらに最大刈取高さを確保しつつ機体の重心を低くすることができる。
【0021】
これら刈刃11は、図2、3に示されるように、機体左右両側に等しく設けられていると共に、それらの背面側には、第1の伝動ケース20Aから垂下されて、刈刃11を摺動可能に支持する長尺状の支持フレーム27がそれぞれ配置されている。そして、これら左右一対の刈刃11の上部の刈幅を調整する上部刈幅調整レバー28は、第1の伝動ケース20Aよりも前方側の機体に備えられていると共に、刈刃11の下部の刈幅を調整する下部刈幅調整レバー29は、刈刃支持フレーム12の垂直部の背面側に備えられている。
【0022】
さらにまた、原動機17から駆動軸21に伝達された動力は、図4に示されるように、第2の伝動ケース20B内において駆動軸21先端部に一体的に設けられたベベルギヤ30を介して駆動軸21にほぼ直交するように下方に向けて約90度曲げられて、刈刃支持フレーム12の垂直部内に回転可能に設けられた中空状の中間伝達軸31に伝達される。この中間伝達軸31の内部には、この中間伝達軸31と同一軸心上に設けられ、機体上下方向に延びた長尺状のスプライン軸32が中間伝達軸31と一体となって回転するように嵌合配置されていると共に、中間伝動軸31はこのスプライン軸32に嵌合したままの状態で機体上下方向に向かって摺動可能とされている。
【0023】
スプライン軸32の下端部は車輪支持フレーム15の内部を連通し、図1、2に示されるように、車輪支持フレーム15下端部のギヤケース33内に達するように延設されている。このギヤケース33の内部には、スプライン軸32によって動力が伝達される図示しないウォームギヤ、ウォームホィール、動力伝達ベルト及びクラッチ付ベルトテンショナ等が備えられており、スプライン軸32の回転駆動力がウォームギヤ及びウォームホィールを介して動力伝達ベルトに伝達された状態でベルトテンショナのクラッチが繋げられると駆動車輪13が回転して裾落し機100を前進させる。
【0024】
さらに、このギヤケース33には機体を立たすための機体立て具としての折り畳み式の両立スタンド34が取り付けられており、この両立スタンド34を例えば、給油時、保管時、休憩時、刈刃高さ調節時にかけることによって裾落し機100の起立時の姿勢がより一層安定化するようになっている。なお、両立スタンド34は着脱式としてもよい。また、機体立て具にサイドスタンドを用いてもよい。
【0025】
また、刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15との摺動部位には、車輪支持フレーム15に対して刈刃支持フレーム12を解除、固定可能とする高さ調整レバー16が配設されている。この高さ調整レバー16を緩めると、車輪支持フレーム15に対して刈刃支持フレームが昇降移動可能となると共に、高さ調整レバー16を締めると、車輪支持フレーム15と刈刃支持フレーム12とが固定されることによって刈刃支持フレーム12の伸縮量が調整可能とされている。
【0026】
車輪支持フレーム15の前面側には、図1に示されるように、機体上下方向に延びた中空状の補強車輪支持フレーム35が車輪支持フレーム15の一部をなすように一体的に設けられている。この補強車輪支持フレーム35の上端部には、機体後方に向かって側面視ほぼ直線状に延びた左右一対のハンドル36が、例えば取り付け基部にクラウンギヤを用いることによって機体前方側に向かって回動可能に取り付けられている。また、これらのハンドル36には、原動機17の出力を制御するスロットルレバー37、ギヤケース33内のベルトテンショナのクラッチを接断する走行用クラッチレバー38が取り付けられている。
【0027】
さらに、補強車輪支持フレーム35の上部には、機体前方の地面に補助車輪14を接地させるように延設された補助車輪支持フレーム39が一体的に取り付け固定されている。この補助車輪支持フレーム39は、このフレーム39を形成する中空状の上部フレーム39Aと下部フレーム39Bとが互いに摺動可能となるように、上部フレーム39A内部に下部フレーム39Bの上部が挿嵌されていると共に、上部フレーム39Aと下部フレーム39Bとの摺動部位には、これら上部フレーム39Aと下部フレーム39Bとを固定可能とする高さ調整レバー40が設けられている。そして、この高さ調整レバー40の解除、固定によって、様々な圃場の条件に応じて図示しない異径の補助車輪を装着する場合に下部フレーム39Bの伸縮量が調整できるようになっている。
なお、補助車輪フレーム39は補強車輪支持フレーム35に一体的に取り付け固定される構成に限定されるものではなく、着脱式に構成することもできる。
【0028】
そして、伝動ケース20と補強車輪支持フレーム35との間、すなわち、刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15との間には、図1、4に示されるように、これら刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15とを互いに異なる方向、言い換えれば離反させる方向(この場合は、機体上下方向)に付勢する付勢手段としてのガススプリング41が備えられている。
【0029】
このガススプリング41は、密閉されたシリンダ41Aとこのシリンダ41Aの一端側から伸縮可能に突出されたピストンロッド41Bとを備えて構成され、シリンダ41A内に封入された圧縮ガスのガス反力によってピストンロッド41Bが伸縮動作する。このガススプリング41のバネ定数は、作業者が刈刃11の高さ調節を行うため高さ調整レバー16を解除した際に、刈刃支持フレーム12が少なくとも瞬発的に昇降移動することがなく、しかも作業者がごく僅かな力でもって刈刃支持フレーム12を昇降移動させることができるように設定されている。これにより、ガススプリング41によって作業者による刈刃11の刈取高さ調節がアシストされる。さらに、このガススプリング41のバネ定数は、作業者が手を離した位置で刈刃支持フレーム12が止まるように設定されているのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0030】
そして、このガススプリング41はシリンダ41Aを上方、ピストンロッド41Bを下方にした状態で、上端部の取付部41Cが取付ステー42を介して第2の伝動ケース20Bの下面側、すなわち刈刃支持フレーム12に取り付けられていると共に、下端部の取付部41Dが取付ステー43を介して補強車輪支持フレーム35の内面側、つまり車輪支持フレーム15に取り付けられている。
なお、付勢手段はガススプリング41にのみ限定されるものではなく、例えば、ガススプリング41を用いた構成に代えてコイルスプリングを用いることが可能である。
【0031】
このように構成された自走式両面裾落し機100を用いて茶園管理作業を行う場合、まず、作業者は、畝間の左右両側にある茶畝の高さに応じて刈刃11の高さ調節を行うため、裾落し機100を起立させた状態のままハンドル36を片手で握りながら、もう片方の手で高さ調整レバー16を緩めて刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15との固定を解除する。なお、この状態にあっては、両立スタンド34をかけることによって裾落し機100の姿勢をさらに安定化させるのが好ましいが、それに限定されるものではない。そして、固定が解除された刈刃支持フレーム12は、ガススプリング41によって付勢力が生じているため、瞬発的に昇降移動するようなことはなく、しかも、作業者による高さ調節をアシストするようにスムーズに昇降移動することによって、作業者は、容易に片手で刈刃支持フレーム12を所望する位置に昇降移動させることができる。
【0032】
そして、作業者は、所望する高さに刈刃支持フレーム12、つまり刈刃11を昇降移動させると、刈刃支持フレーム12を離した方の手で高さ調整レバー16を締めて刈刃支持フレーム12と車輪支持フレーム15とを締結固定させる。
それから、畝間の左右両側にある茶畝が所望する茶畝の形態となるように上部刈刃調整レバー28及び下部刈幅調整レバー29を調節して刈幅の調整を行う。 刈幅の調整を終えたならば、クラッチレバー38をいっぱいに握った状態で原動機17を起動し、スロットルレバー37を徐々に開いて原動機17の回転をゆるやかにあげていくと遠心クラッチ18が繋がり刈刃11が往復動するようになる。そして、作業者は、クラッチレバー38を放して駆動車輪13に駆動力を伝達することによって畝間を走行しながら裾落し作業を行う。
【0033】
この裾落し作業にあっては、図6に示されるように、原動機17の搭載位置が補助車輪14を備えた従来型の裾落し機1よりも低いために安定した走行が可能になる。特に、刈刃11の高さ調整を可能とする高さ調節レバー16により刈取高さを最大とした場合の走行安定性には格段の効果がある。さらに、刈刃11の刈取高さを最大限低くした状態にあっても従来型の裾落し機1よりも約300mm程度手前を見ることができるようになる。そのため、高さ調節レバー16により刈取高さを最大とした場合にはより顕著な差が生じて従来型よりも良好な前方視認性を得ることができる。これらにより、作業者による茶園管理作業の労力が大幅に軽減されると共に茶園管理作業が大幅に効率化する。
【0034】
以上述べたように本発明によれば、第1の伝動ケース20Aは刈刃11の長手方向とは異なる状態、つまり刈刃11の長手方向に対してほぼ直交した状態、すなわちほぼ水平に寝かされた状態で原動機17側に一体化されると共に、原動機17側からの駆動軸21よりも刈刃11を往復動させるためのカウンタ軸23が上方に配置されているため、第2の伝動ケース20Bの下部にクラッチケース19を介して原動機17が一体的に組付けられるようになる。これにより、刈刃11の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しがらも原動機17及びクラッチケース19の搭載位置を低くすることが可能な裾落し機を提供することができる。
【0035】
また、本発明によれば、原動機17、クラッチケース19及び伝動ケース20は縦置き配置されている。これにより、原動機17、クラッチケース19及び伝動ケース20を相互に組付けた際の全長を短縮化することができる。
【0036】
なお、従来型の裾落し機1のように刈刃用伝動ケース4を刈刃1の長手方向にほぼ一致した状態で原動機3側に組付けるような場合であっても、原動機側からの駆動軸よりも刈刃を往復動させるための従動軸、言い換えれば、偏芯カムが上方に配置されるように構成することによって、刈刃の全長を短縮化することなく最大刈取高さを確保しがらも原動機3及びクラッチケース4の搭載位置を低くして、走行安定性及び前方視認性を向上させることができる。
【0037】
このような場合、動力伝達装置としての伝動ケースは、原動機側から取り出された動力を機体前後方向に延びた駆動軸に伝達させたのち、一対の噛み合いギヤを介して駆動軸よりも上方で、且つ駆動軸に並行した従動軸に伝達し、この従動軸に設けられた傘歯車により左右一対の回転軸を回転させ、この回転軸に連なった駆動ギヤに噛み合うように下方側に設けられた従動ギヤを回転させ、この従動ギヤの回転により回転運動を往復運動に変換する偏心カム及びコンロッドに刈刃を連ならせるように構成されているのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0038】
なお、本発明は、上述したような自走式両面裾落し機にのみ適用されるものではなく、自走式片面裾落し機にも適用することができる。
さらに、本発明は、駆動車輪13及び補助車輪14を備えた2輪式の自走式両面裾落し機にのみ適用されるものではなく、1輪式の両面(片面)裾落し機、1輪式の自走式両面(片面)裾落し機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明が適用された自走式両面裾落し機の側面図である。
【図2】同例における背面図である。
【図3】最大刈幅とした刈刃を示した背面図である。
【図4】同例における要部を示した断面図である。
【図5】要部の一変形例を示した断面図である。
【図6】同例における裾落し機と従来型とを比較した側面図である。
【図7】従来の裾落し機の側面図である。
【図8】従来の裾落し機の動力伝達装置の内部構成を示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
100 自走式両面裾落し機
11 刈刃
17 原動機(駆動源)
19 クラッチケース
20 伝動ケース(動力伝達装置)
20A 第1の伝動ケース
20B 第2の伝動ケース
21 駆動軸
22 減速ギヤ(一対の噛み合いギヤ)
23 カウンタ軸(従動軸)
24 傘歯車
25 回転軸
26 駆動ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃を駆動するための駆動源と、前記駆動源側からの動力により前記刈刃を往復動させる動力伝達装置とが一体化された状態で備えられた裾落し機において、
前記動力伝達装置は、前記刈刃の長手方向とは異なった状態で前記駆動源側に一体化されると共に、前記駆動源側からの駆動軸よりも前記刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置されていることを特徴とする裾落し機。
【請求項2】
前記動力伝達装置は、前記駆動源側から取り出された動力を機体前後方向に延びた前記駆動軸に伝達させたのち、一対の噛み合いギヤを介して前記駆動軸よりも上方で、且つ前記駆動軸に並行した前記従動軸に伝達し、前記従動軸に設けられた傘歯車により左右一対の回転軸を回転させ、前記回転軸に連なった駆動ギヤに噛み合うように機体前後方向に設けられた従動ギヤを回転させ、前記従動ギヤの回転により回転運動を往復運動に変換する偏心カムに前記刈刃を連ならせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の裾落し機。
【請求項3】
前記駆動源と動力伝達装置とは縦置き配置されていることを特徴とする請求項1に記載の裾落し機。
【請求項4】
刈刃を駆動するための駆動源と、前記駆動源側からの動力により前記刈刃を往復動させる動力伝達装置とが一体化された状態で備えられた裾落し機において、
前記動力伝達装置は、前記刈刃の長手方向にほぼ一致した状態で前記駆動源側に一体化されると共に、前記駆動源側からの駆動軸よりも前記刈刃を往復動させるための従動軸が上方に配置されていることを特徴とする裾落し機。
【請求項5】
前記動力伝達装置は、前記駆動源側から取り出された動力を機体前後方向に延びた前記駆動軸に伝達させたのち、一対の噛み合いギヤを介して前記駆動軸よりも上方で、且つ前記駆動軸に並行した前記従動軸に伝達し、前記従動軸に設けられた傘歯車により左右一対の回転軸を回転させ、前記回転軸に連なった駆動ギヤに噛み合うように下方側に設けられた従動ギヤを回転させ、前記従動ギヤの回転により回転運動を往復運動に変換する偏心カムに前記刈刃を連ならせるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の裾落し機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−141354(P2006−141354A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339492(P2004−339492)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】