説明

複写防止用紙

【課題】コピー用紙に表示される潜像の濃色を高めた複写防止用紙を提供する。
【解決手段】矩形状のシートに複写時にコントラストが強調されて表示される第1及び第2の潜像を形成した複写防止用紙であって、前記第1の潜像は、前記シートの一辺に平行な第1の方向に長辺が配置される第1の長方形部と、この第1の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第1の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第1の正方形部とからなる第1の微細子を密に配することにより構成されており、前記第2の潜像は、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に長辺が配置される第2の長方形部と、この第2の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第2の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第2の正方形部とからなる第2の微細子を密に配することにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公的な証明力を有する重要書類などに用いられる複写防止用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、例えば公的証明力を有する印鑑証明書、健康保険証、有価証券等の重要書類がカラー複写機により偽造される事件が発生している。
【0003】
そこで、複写機を用いたコピー紙の偽造を防止する手段として、従来、多種多様の複写防止用紙が提案されており、その一例として、例えば特許文献1で示された複写防止用紙が知られている。
【0004】
この従来の複写防止用紙は、用紙表面に微細構成子よりなる潜像を複写し、この潜像周囲の白地部分に上記構成子とは異図形の微細構成子よりなる背景を複写し、しかして潜像の上面に、コピーで再現されない薄色の透明性インキで装飾模様を重ね刷りしたものである。
【0005】
しかしながら用紙の表面に、微細構成子よりなる潜像と、この潜像周囲の白地部分に上記構成子とは異図形の微細構成子よりなる背景を単に複写しただけでは有効な複写防止を期待することはできない。即ち図形の変化のみではコピーされた用紙の潜像と背景とを識別することが困難である。そこで上記従来例においては、潜像を構成する微細構成子及び背景を構成する微細構成子のいずれか一方を、複写機で再現される万線となし、その他方を複写機で再現されない網点で構成することに限定している。
【0006】
上記従来例において開示されている潜像及び背景の基本的構成手段は、その潜像を例えば網点で構成する場合には、その網点の大きさと密度を適宜設定し、また背景を例えば万線で構成する場合には、その万線の長さと密度を適宜設定したものであるが、それらの潜像及び背景を複写せしめてなる複写防止用紙の要点は、肉眼ではその潜像と背景とが容易に識別されることがなく、そのコピー紙から潜像が明確に表示されるような網点及び万線の大きさと密度に設定することが要求される。
【0007】
ところが、複写防止用紙の表面に施されている潜像と背景とが、肉眼では識別されにくいように上記網点及び万線の大きさ又は密度を設定しようとすると、上記網点及び万線の大きさ又は密度の差が自ずと小さくなり、これが原因でその複写防止用紙を基にしてコピーした場合には潜像と背景との識別差(コントラスト)が小さくなり、このためにコピー紙において潜像に対応する文字や警告マーク等の表示力に欠けるものがあった。
【0008】
またそれとは逆に、コピーした紙において、潜像に対応する警告マークと背景との識別差を高めようとする上記網点及び万線の大きさや密度差が大きくなり、これが原因で複写防止用紙に施している潜像と背景とが肉眼により容易に識別(判読)されやすくなり、潜像のカムフラージ効果の有効性が低いという不具合が生じる。
【0009】
上記課題を解決するものとして、特許文献2は、用紙の表面にコピー時に再現され易い網点と、コピー時に再現され難い網点で潜像構成してなる背景を複写する複写防止用紙において、前記潜像を構成する網点を、0.3mmの方形面積の中で、濃度が15〜17%の面積を示す大きさとし、かつコピー時のトーンジャンプによるドット面積拡張が可能な形状の微細子となし、前記背景を構成する網点を、150線でその濃度が10%程度程度の微細子に設定したことを特徴とする複写防止用紙を開示する。
【0010】
トーンジャンプによるドット面積拡張が可能な形状の微細子として、L型の微細子、V字型微細子、凹型微細子が開示されている。これらの微細子によれば、仰角90度の内角を形成した内角部においてドットゲインに伴うトーンジャンプが起こる。これにより各微細子のドット面積が増大し、コピー紙に複写される潜像を濃色で強調表示させることができる。
【特許文献1】特公昭64−5835号公報
【特許文献2】特許第3538169号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、近年、複写機の性能が飛躍的に向上しており、コピー用紙に表示される潜像の濃色を従来以上に高めた複写防止用紙が求められるようになっている(第1の課題)。
【0012】
また、複写防止用紙には、複写方向によって潜像の濃色の度合いが変化しないような特性が求められているところ、特許文献2のL型微細子、V字型微細子、凹型微細子では、そのような要求を満足させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究の末、主走査方向及び副走査方向に対応した複写機の複写特性が第1の課題の要因となっていることを発見した。以下、図1および図2を参照して具体的に説明する。図1は、副走査方向に長辺が延びる長方形形状の微細子を複写した際の形状変化を段階的に示した平面図であり、図2は主走査方向に長辺が延びる長方形形状の微細子を複写した際の形状変化を段階的に示した平面図である。これらの図において、X軸及びY軸は互いに直交する二軸を示しており、X軸方向が副走査方向であり、Y軸方向が主走査方向である。なお、副走査方向とは、複写機に組み込まれたラインセンサーの移動方向、換言すると、原稿台ガラスに載置された原稿を照明する照明光学系の移動方向である。
【0014】
図1(A)は複写防止用紙に表示された微細子の形状を示しており、図1(B)は読み取り時の微細子の形状を模式的に示しており、図1(C)は複写防止用紙を複写したコピー用紙に表示された微細子の形状を模式的に示している。微細子を形成した複写防止用紙を複写機の原稿台ガラスに載置して、複写スイッチをオンすると、光源がX軸方向に移動して複写防止用紙がスリット状に読み取られる。なお、複写防止用紙は、平面視で矩形であるものとする。
【0015】
図1(B)を参照して、ハッチングした領域は、読み取り時に読み取られなかった領域(以下、縮小領域という)を示している。縮小領域のうちX軸方向の縮小量を2X1、Y軸方向の縮小量を2Y1とすると、大小関係は2X1>2Y1である。したがって、読み取り時に複写防止用紙の画像データは副走査方向に相対的に大きく縮小することがわかる。これは、光源から発せられる光の回り込みや、副走査方向に発生する図形の切り捨てなどを要因とするものである。
【0016】
図1(C)を参照して、ハッチングした領域は、図1(A)の微細子に対して縮小した領域(以下、縮小領域という)を示している。図1(C)の微細子は、図1(B)の微細子に対して、X軸及びY軸方向に2Y1だけ長さが拡大している。これは、複写時のつぶれやドットゲインによる図形の拡張を要因とするものである。
【0017】
つまり、複写時に微細子は、微細子の長辺方向である副走査方向に縮小し、微細子の面積が縮小する。なお、複写機の特性に応じて、微細子の面積変化量は変動するが、微細子の長辺方向の縮小量が短辺方向と比べて相対的に大きくなる現象は変わらない。
【0018】
図2(A)は複写防止用紙に表示された微細子の形状を示しており、図2(B)は読み取り時の微細子の形状を模式的に示しており、図2(C)は複写防止用紙を複写したコピー用紙に表示された微細子の形状を模式的に示している。微細子を形成した複写防止用紙を複写機の原稿台ガラスに載置して、複写スイッチをオンすると、光源がX軸方向に移動して複写防止用紙がスリット状に読み取られる。なお、複写防止用紙は、平面視で矩形であるものとする。
【0019】
図2(B)を参照して、ハッチングした領域は、読み取り時に読み取られなかった領域(以下、縮小領域という)を示している。縮小領域のうちX軸方向の縮小量を2X1、Y軸方向の縮小量を2Y1とすると、大小関係は2X1>2Y1である。したがって、読み取り時に複写防止用紙の画像データは副走査方向に相対的に大きく縮小することがわかる。これは、光源から発せられる光の回り込み、副走査方向に発生する図形の切り捨てなどを要因とするものである。
【0020】
図2(C)を参照して、ハッチングした領域は、図2(A)の微細子に対して縮小した領域(以下、縮小領域という)を示している。図2(C)の微細子は、図2(B)の微細子に対して、X軸及びY軸方向に2Y1だけ長さが拡大している。これは、複写時のつぶれやドットゲインによる図形の拡張を要因とするものである。
【0021】
つまり、複写時に微細子は、微細子の短辺方向である副走査方向に縮小し、微細子の面積が縮小する。なお、複写機の特性に応じて、微細子の面積変化量は変動するが、微細子の短辺方向の縮小量が長辺方向と比べて相対的に大きくなる現象は変わらない。
【0022】
図1(C)及び図2(C)を比較参照して、図1(C)の微細子は、図2(C)の微細子よりも縮小領域が相対的に小さくなっていることがわかる。したがって、微細子を密に配することにより構成される潜像をコントラストの強い画像として表示させるためには、長方形状の微細子を複写防止用紙の副走査方向に配置する必要がある。
【0023】
さらに、第2の課題を解決するためには、副走査方向に点対称な図形となるように潜像を構成する微細子を施す必要がある。
【0024】
これらの知見に基づき、本願発明は、一つの観点として(1)矩形状のシートに複写時にコントラストが強調されて表示される第1及び第2の潜像を形成した複写防止用紙であって、前記第1の潜像は、前記シートの一辺に平行な第1の方向に長辺が配置される第1の長方形部と、この第1の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第1の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第1の正方形部とからなる第1の微細子を密に配することにより構成されており、前記第2の潜像は、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に長辺が配置される第2の長方形部と、この第2の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第2の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第2の正方形部とからなる第2の微細子を密に配することにより構成されていることを特徴とする。
【0025】
(2)(1)の構成において、前記第1の長方形部の短辺は、前記第1の正方形部の辺と長さが同じであり、前記第2の長方形部の短辺は、前記第2の正方形部の辺と長さが同じである。
【0026】
(3)(1)又は(2)の構成において、前記第1及び第2の微細子の形状は同じであり、前記第1の長方形部の長辺の長さをL1、短辺の長さをL2としたときに、L1:L2=5:1なる条件を満足させるように構成するとよい。
【0027】
(4)(1)〜(3)の構成において、前記第1及び第2の微細子を、約0.3mmの方形面積の中で、濃度が約14〜17%の面積となる大きさに設定するのが好ましい。
【0028】
本願発明は、別の観点として、矩形状のシートに複写時にコントラストが強調されて表示される潜像を形成した複写防止用紙であって、前記潜像は、シートの一辺に平行な第1の方向とこの第1の方向に直交する第2の方向とにおいて第1及び第2の微細子を交互に並べて配置することにより構成されており、前記第1の微細子は、前記第1の方向に長辺が配置される第1の長方形部と、この第1の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第1の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第1の正方形部とから構成されており、前記第2の微細子は、前記第2の方向に長辺が配置される第2の長方形部と、この第2の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第2の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第2の正方形部とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本願発明によれば、複写防止用紙を複写した際に、複写防止用紙に配された潜像をコピー用紙に強調して表示させることができる。さらに、複写方向にかかわらず、一定のコントラストで潜像をコピー用紙に表示できる複写防止用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0031】
本明細書において、コピー用紙とは、複写機のカセットトレイに積載され、読み取られた画像データに対応した画像が複写される用紙のことである。
(実施形態1)
図3は実施形態1の複写防止用紙の平面図である。X軸及びY軸は直交する二軸であり、X軸方向が副走査方向であり、Y軸方向が主走査方向である。複写防止用紙1は平面視矩形に形成されており、複写防止用紙1の四隅には一対の第1の潜像21及び一対の第2の潜像22が形成されている。一対の第1の潜像21は複写防止用紙1の一方の対角線上に位置しており、一対の第2の潜像22は複写防止用紙1の他方の対角線上に位置している。
【0032】
第1及び第2の潜像21、22は、微細子を密に配することによりローマ字の「F」の形状に形成されている。図4(A)は、図3の第1の潜像21のうち破線で囲まれた領域を拡大して図示した拡大図である。図4(B)は第1の潜像21を構成する第1の微細子を拡大して図示した拡大図である。
【0033】
第1の潜像21を構成する第1の微細子211は、長方形部(第1の長方形部)212とこの長方形部212の中心に対して点対称に配置される一対の正方形部(第1の正方形部)213とからなる。長方形部212の長辺212Aは副走査方向(第1の方向)に延びている。図3及び図4を参照して、長方形部212の長辺212Aは、複写防止用紙1の短辺12に沿って延びている。なお、第2の潜像22は、第1の潜像21を90度回転させた向きに配置したものであり、第1の潜像21と同じ構成である。
【0034】
図3を参照して、複写防止用紙1の背景31を構成する微細子には、150線10%程度の網点を用いることができる。ここで、150線10%程度の網点とは、1インチを150線で分割してなる各升目内にそれら各升目面積に対して10%程度の大きさの網点のことである。第1の潜像21を構成する第1の微細子211の大きさは、好ましくは、約0.3mmの方形面積内において、その全面積の14〜17%が塗りつぶされる大きさに設定する。なお、「程度」としたのは、寸法誤差を許容する主旨である。
【0035】
このように、背景を構成する微細子の大きさを150線10%程度の面積とし、第1の潜像21を構成する第1の微細子211の大きさを約0.3mmの14〜17%である面積に設定したことにより、これらの微細子を用いて用紙の表面に背景と第1の潜像21とを複写せしめてなる複写防止用紙においては、その用紙表面を肉眼で見たとき、背景と潜像の区別が視覚的にわかりにくく、複写防止のための潜像を施してなる複写防止用紙として有効である。なお、「約」としたのは、寸法誤差を許容する主旨である。
【0036】
より好ましくは、図4(B)に図示するように、正方形を横に7個、縦に7個並べた(合計:49個)方形領域の方形面積を約0.3mmとしたときに、第1の微細子211は、該正方形7個分に相当する面積(以下、最適面積という)を占めるように構成される。この場合、方形面積に占める最適面積の占有率は、約14.3%である。
【0037】
ここで、長方形部212の長辺212A及び短辺212Bの比率は、好ましくは、5:1である。長辺212A及び短辺212Bの比率を5:1に設定することにより、本発明の効果を高めることができる。また、図4(B)に図示するように、約0.3mmの方形領域を49個の正方形に領域分けして、7個の正方形を塗りつぶすことにより、簡単に第1の微細子211を構成することができる。
【0038】
一対の正方形部213及び長方形部212は互いの角部が接触しており、正方形部212と長方形部212とのなす角度は90度である。また、正方形部213の辺と長方形部212の短辺212Bとの長さは同一に設定されている。
【0039】
次に、図4(B)、図5および図6を参照して、複写防止用紙を複写した際の第1の微細子の形状変化について段階的に説明する。図4(B)複写防止用紙に表示された第1の微細子の形状を示しており、図5は読み取り時の第1の微細子の形状を模式的に示しており、図6は複写防止用紙を複写したコピー用紙に表示された第1の微細子の形状を模式的に示している。
【0040】
まず、複写防止用紙を図示しない複写機の原稿台ガラスに載置する。複写防止用紙は、図3及び図4に図示するように、第1の潜像21の第1の微細子211を副走査方向に向けた状態で載置されている。複写ボタンをオンすると、光源がX軸方向に移動して読み取り動作が開始される。その結果、複写防止用紙は、スリット状に読み取られる。
【0041】
図5を参照して、ハッチングした領域は、読み取り時に読み取られなかった領域(以下、縮小領域という)を示している。このとき、光源から発せられる光の回り込みや、副走査方向に発生する図形の切り捨てなどを要因として、第1の微細子211はその面積が縮小する。ここで、解決手段の欄で説明したように、第1の微細子211は、主走査方向よりも副走査方向に相対的に大きく縮小する。
【0042】
図6を参照して、ハッチングした領域は、図4(B)の微細子に対して縮小した領域を示している。解決手段の欄で説明したように、複写時のつぶれやドットゲインによる拡張により、コピー用紙に表示された第1の微細子211は、図5の第1の微細子211に対して主走査方向及び副走査方向に略均等に拡大する。
【0043】
上述の構成によれば、複写時に発生する第1の微細子211の長方形部212の面積の縮小を抑制できるため、結果的にコピー用紙に複写される第1の微細子211を背景に対して強調して表示させることができる。これにより、複写防止効果の高い複写防止用紙を提供することができる。
【0044】
また、図6を参照して、長方形部212と正方形部213との辺のなす角度を直角にすることにより、この直角部においてドットゲインに伴うトーンジャンプが起こる。これにより、各第1の微細子211のドット面積が増大し、コピー用紙において潜像を背景に対して強調して表示させることができる。
【0045】
さらに、一対の正方形部213を長方形部212の中心に対して点対称に配置しているため、X軸方向の一方向及び他方向からそれぞれ複写防止用紙を複写した際に、第1の潜像21の背景に対する強調度合のバラツキを抑制することができる。これにより、複写方向にかかわらず、コピー用紙に一定の強調度合で潜像を表示できる高品位の複写防止用紙を提供することができる。
【0046】
図7は複写防止用紙の平面図であり、原稿台ガラスに載置する複写防止用紙の向きを図3の状態から90度回転させている。第2の潜像22は、第1の潜像21を90度回転させた向きに配されている。このため、図7に図示する構成では、第2の潜像22がコピー用紙に強調して表示される。そのメカニズムは上述したため説明を繰り返さない。
【0047】
矩形形状の複写防止用紙を副走査方向及び主走査方向のうちいずれの方向に向けて複写するかは、使用者によって異なる。第1の潜像21及び第2の潜像22を複写防止用紙に施すことにより、複写方向にかかわらず、コピー用紙に鮮明な潜像を表示させることができる。
【0048】
(変形例)
上述の実施形態では、第1及び第2の微細子21、22を複写防止用紙の対角線上に配置したが、これに限られるものではなく、対角線から退避した位置に配置することもできる。ただし、第1及び第2の微細子21、22の方向性については、上記実施例と同様に設定する必要がある。
【0049】
上述の実施形態では、第1及び第2の微細子21、22を英文字の「F」で構成したが、これに限られるものではなく、別の文字で構成することもできる。
【0050】
(実施形態2)
図8を参照して、本発明の実施形態2について説明する。潜像を構成する微細子311、321は、第1の潜像21を構成する第1の微細子211と同じ形状であるため、説明を繰り返さない。なお、潜像は、実施形態1と同様に、英文字の「F」で構成してもよいし、他の形態で構成してもよい。
【0051】
微細子311は、その長方形部312の長辺が副走査方向に配されており、微細子321は、その長方形部322の長辺が主走査方向に配されている。微細子311及び微細子321は副走査方向及び主走査方向に交互に並ぶように配されている。
【0052】
上述の構成によれば、複写時に特に微細子311の濃度が高くなり、潜像をコピー用紙に強調して表示させることができる。また、複写防止用紙の複写方向を90度回転させた場合には、特に微細子321の濃度が高くなり、潜像をコピー用紙に強調して表示させることができる。
【0053】
複写防止用紙の背景を構成する微細子には、150線10%程度の網点を用いることができる。潜像を構成する微細子311の大きさは、好ましくは、約0.3mmの方形面積内において、その全面積の14〜17%が塗りつぶされる大きさに設定する。
【0054】
このように、背景を構成する微細子の大きさを150線10%程度の面積とし、潜像を構成する微細子311の大きさを約0.3mmの14〜17%である面積に設定したことにより、これらの微細子を用いて用紙の表面に背景と潜像とを複写せしめてなる複写防止用紙においては、その用紙表面を肉眼で見たとき、背景と潜像の区別が視覚的にわかりにくく、複写防止のための潜像を施してなる複写防止用紙として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】副走査方向に長辺が延びる長方形形状の微細子を複写した際の形状変化を模式的に示した平面図であり、(A)は読み込み前の微細子の形状を示しており、(B)は読み取り時の微細子の形状を模式的に示しており、(C)はコピー用紙に複写された微細子の形状を模式的に示している。
【図2】主走査方向に長辺が延びる長方形形状の微細子を複写した際の形状変化を模式的に示した平面図であり、は読み込み前の微細子の形状を示しており、(B)は読み取り時の微細子の形状を模式的に示しており、(C)はコピー用紙に複写された微細子の形状を模式的に示している。
【図3】複写防止用紙の平面図である。
【図4A】潜像の一部を拡大した拡大平面図である。
【図4B】微細子の拡大図である。
【図5】読み取り時の微細子の形状を模式的に示した拡大図である。
【図6】コピー用紙に複写された微細子の形状を模式的に示した拡大図である。
【図7】図3の複写防止用紙を90度回転させた複写防止用紙の平面図である。
【図8】実施形態2の潜像の一部を拡大した拡大平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 複写防止用紙
11 長辺
12 短辺
21 第1の潜像
22 第2の潜像
211 第1の微細子
212 長方形部
213 正方形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のシートに複写時にコントラストが強調されて表示される第1及び第2の潜像を形成した複写防止用紙であって、
前記第1の潜像は、前記シートの一辺に平行な第1の方向に長辺が配置される第1の長方形部と、この第1の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第1の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第1の正方形部とからなる第1の微細子を密に配することにより構成されており、
前記第2の潜像は、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に長辺が配置される第2の長方形部と、この第2の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第2の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第2の正方形部とからなる第2の微細子を密に配することにより構成されていることを特徴とする複写防止用紙。
【請求項2】
前記第1の長方形部の短辺は、前記第1の正方形部の辺と長さが同じであり、前記第2の長方形部の短辺は、前記第2の正方形部の辺と長さが同じであることを特徴とする請求項1に記載の複写防止用紙。
【請求項3】
前記第1及び第2の微細子の形状は同じであり、前記第1の長方形部の長辺の長さをL1、短辺の長さをL2としたときに、L1:L2=5:1なる条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の複写防止用紙。
【請求項4】
前記第1及び第2の微細子を、約0.3mmの方形面積の中で、濃度が約14〜17%の面積となる大きさに設定したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の複写防止用紙。
【請求項5】
矩形状のシートに複写時にコントラストが強調されて表示される潜像を形成した複写防止用紙であって、
前記潜像は、シートの一辺に平行な第1の方向とこの第1の方向に直交する第2の方向とにおいて第1及び第2の微細子を交互に並べて配置することにより構成されており、
前記第1の微細子は、前記第1の方向に長辺が配置される第1の長方形部と、この第1の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第1の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第1の正方形部とから構成されており、
前記第2の微細子は、前記第2の方向に長辺が配置される第2の長方形部と、この第2の長方形部の中心に対して点対称に配置され、かつ、前記第2の長方形部の辺に対する角度が90度である辺を有する一対の第2の正方形部とから構成されていることを特徴とする複写防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−149384(P2010−149384A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329843(P2008−329843)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【特許番号】特許第4291406号(P4291406)
【特許公報発行日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(501070768)高千穂商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】