説明

複合アンカ

本開示は複合アンカに関する。前記複合アンカは、ねじ式外面を有するカニューレ付き近位部と、前記近位部に結合された遠位部と、を含み、前記遠位部が、上部と、底部と、貫通孔と、含み、前記上部が、前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年12月15日付け出願の米国特許出願第61/122,512号の利益を主張するPCT国際特許出願であり、その開示は、その全体が参照により、ここに組み込まれる。
本開示は、組織を修復するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節鏡処置は、骨に再び取付ける軟組織を必要とすることが多い。これを実現するため、アンカが骨内に配置されると共に、アンカに取付けられた縫合糸が組織に通されて、適所に前記組織をしっかり保持している。アンカは、一体品構造(one-piece design)又は複合品構造(multiple piece design)とすることができる。これらのアンカは、アンカが時間とともに吸収される材料で作ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような吸収性材料から作られた縫合糸アンカ(suture anchors)は、アンカの分解中、組織が骨に対してしっかり保持されないことがあり、それにより骨に対して組織を再び取付けることができない。また、これらのアンカは、アンカとデバイスとの間の十分な表面接触が、骨にアンカを挿入するために使用されず、それによりアンカに大きなトルク量を加える、ユーザの能力を低下させる。この結果、ユーザは、アンカを挿入する前に、骨内に穴を作ることを強いられ、それにより外科医に対する処置ステップ及び時間を増やしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本開示は、複合アンカ(composite anchor)に関する。アンカは、ねじ式外面(threaded outer surface)を有するカニューレ付き近位部(cannulated proximal portion)と、前記近位部に結合された遠位部と、を含み、前記遠位部が、上部と、底部と、貫通孔と、を含み、前記上部が、前記近位部のカニューレ(cannulation)内に配置されるように構成されている。
【0005】
一実施形態において、前記遠位部の上部は、少なくとも二つの側部と、前記少なくとも二つの側部間に配置された中間部と、を備える。他の実施形態において、前記底部は、実質的に円錐状である。また他の実施形態において、前記少なくとも二つの側部は、実質的に台形状であり、且つ前記中間部は実質的に丸い形状である。更なる実施形態において、前記貫通孔は、前記遠位部の底部内に配置されている。また更なる実施形態において、前記アンカは、前記貫通孔内に配置されると共に前記近位部のカニューレを通して延在する、少なくとも一つの縫合糸(suture)を、更に備える。
【0006】
一実施形態において、前記近位部及び前記遠位部は共に、吸収性材料を含む。他の実施形態において、前記近位部は、吸収性材料を含み、且つ前記遠位部は非吸収性材料を含む。また他の実施形態において、前記吸収性材料は高分子材料を含み、且つ前記非吸収性材料は高分子材料を含む。更なる実施形態において、前記吸収性材料は高分子材料を含み、且つ前記非吸収性材料は金属材料を含む。
【0007】
他の態様において、本開示は、修復方法に関する。前記修復方法は、複合アンカを提供する工程であって、前記複合アンカが、カニューレ付き近位部と、前記近位部に結合された遠位部であって、前記遠位部が、上部、底部、及び貫通孔を含み、前記上部が、前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成された、前記遠位部と、前記貫通孔内に配置されると共に前記近位部のカニューレを通して延在する、少なくとも一つの縫合糸と、を含む、前記複合アンカを提供する工程と、
骨に前記複合アンカを挿入する工程と、
前記貫通孔全体に軟組織を配置すると共に、前記軟組織を通して前記縫合糸を挿入する工程と、
前記骨に前記軟組織を固定するために前記縫合糸を結ぶ工程と、
を備える。
【0008】
一実施形態において、前記アンカの回転挿入(rotary advancement)により、前記アンカは前記骨内に挿入される。他の実施形態において、前記方法は、前記骨内に前記アンカを挿入する工程よりも前段に、前記骨内に穴を作る工程を更に含む。また他の実施形態において、前記近位部は、ねじ式の外面を備える。
【0009】
本開示の利用可能な更なる分野は、後述される詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び特定の実施例は、本開示の好適な実施形態を示すものの、本開示の要旨を限定するためのものではなく、例示の目的のためであることが理解される。
【0010】
添付図面は、本明細書の一部に組み込まれ又は本明細書の一部を形成し、本開示の実施形態を示すと共に、本明細書と共に本開示の原理、特性、及び特徴を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の複合アンカの斜視図である。
【図2】図1の複合アンカの近位部の斜視図である。
【図3】図2の近位部の断面図である。
【図4】図1の複合アンカの遠位部の斜視図である。
【図5】図1の複合アンカの断面図である。
【図6A】図1の複合アンカの使用による修復方法を示す。
【図6B】図1の複合アンカの使用による修復方法を示す。
【図6C】図1の複合アンカの使用による修復方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の好適な実施形態の説明は本質的に、例示的なものに過ぎず、本開示、その応用、又は使用を限定することを目的としたものではない。
【0013】
図1〜図5は、本開示の複合アンカ10を示す。アンカ10は、近位部11と、近位部11に結合された遠位部12と、含む。近位部11は、カニューレ11aと、以下に更に説明されるように、遠位部12及び供給デバイス(図示省略)を収容するように構成された内面11bであって、前記供給デバイスが骨内にアンカ10を挿入するために用いられるものである、内面11bと、ねじ山(thread)11dを含む外面11cと、を含む。遠位部12は、底部12aと、上部12bと、底部12a内に配置された貫通孔12cと、を含む。以下に更に説明されるように、底部12aは実質的に円錐状であって骨に対するアンカ10の容易な挿入を可能にしている。上部12bは、少なくとも二つの側部12dと、前記少なくとも二つの側部12d間に配置された中間部12eと、を含む。側部12dは台形状であり、且つ中間部12eは実質的に丸い形状である。図5に示されるように、側部12dの形状は、遠位部12が近位部11のカニューレ11a内に配置されると、側部12dが内面11bと係合し、それによって近位部11に遠位部12を結合するように、内面11bの形状に適合する。
【0014】
図6A〜図6Cは、本開示の複合アンカの使用による修復方法を示す。図6Aに示されるように、アンカ10は、貫通孔12内に収容されると共に近位部11のカニューレ11aを通して延在する端部20a,20bを有する、少なくとも一つの縫合糸20を含み、それにより縫合糸20は中間部12eに配置される。図6Bに示されるように、アンカ10は、供給デバイス40の使用を通じて、回転挿入により、骨30内に挿入される。供給デバイス40は、近位部11の実質的な長さを延長し、それにより、アンカ10と供給デバイス40との間の十分な量の表面接触を提供して、ユーザは、供給デバイス40が近位部11の実質的な長さよりも短く延在させられた場合よりも高いトルクをアンカ10に加えることができる。アンカ10に対して、より高いトルクを加えるための能力は、ユーザが、アンカ10を挿入する工程よりも前段において最初に骨30内に穴を作ることなく、骨30、特に硬い骨内にアンカ10を挿入することを可能にし、それにより手術中の時間を節約している。
【0015】
骨30内に対するアンカ10の配置後、供給デバイス40は取り除かれると共に、軟組織50が、アンカ10に隣接して位置する骨30に配置される。図6Cに示されるように、縫合糸の端部20a,20bはその後、軟組織50を通して挿入されると共に、骨30に軟組織50を固定するために結ばれる。
【0016】
本開示では、近位部11は、吸収性材料、例えば吸収性高分子材料を含み、且つ遠位部12は、非吸収性材料、例えば非吸収性高分子材料又は金属材料を含む。任意の吸収性高分子材料を使用することができる。例えば硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ファイバなどのフィラーを含む吸収性材料、又は、高められた強度、骨伝導性、下げられた高分子のpHレベル、又は他の利益をもたらす他のフィラー材料を含む吸収性材料を用いることができる。例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの非吸収性高分子材料、又は他の非吸収性高分子材料を用いることができる。同様に、金属材料は、ステンレス鋼、チタン、又は当業者に周知の他の金属材料を含むことができる。
【0017】
吸収性の近位部11及び非吸収性の遠位部12を有するアンカ10は、近位部11の分解中、軟組織50がゆるくなるおそれを実質的に低減する。また、複合構造をもつアンカを有することは、外科医に、手術中に使用されるアンカの種類の更なる選択性をもたらす。現在の二つの縫合糸アンカは、全て金属材料又は非金属材料から構成される。
【0018】
本開示では、アンカ10の近位部11とアンカ10の遠位部12とは、近位部11と遠位部12との間の締まりばめにより、結合されている。しかしながら、超音波溶接又は当業者に周知の他の結合方法により、コンポーネント11,12は、結合することができる。また、内面11b、側部12d、中間部12e、及び底部aは、異なる形状を有することができる。また、スレッド以外の特徴を、近位部11の外面11cに存在させることが可能である。つまり、外面11cは、バーブ(barb)、又は、骨30内にアンカ10の軸方向挿入(axial advancement)を可能にする他の表面特徴を含むことができる。更に、一つよりも多くの縫合糸を、貫通孔12c内にカニューレ11aを通して配置することができる。更に、骨30内にアンカ10を挿入する工程よりも前段において、骨30内に穴を作ることができる。
【0019】
対応する図を参照して上述したように、本開示の要旨から逸脱することなく、種々の修正を例示的な実施形態に対して行うことが可能であり、上記の説明及び添付図面に示された全ての事項が、限定ではなく、例示として解釈される。したがって、本開示の広さ及び範囲は、任意の上述した例示的な実施形態に限定されるべきではなく、本明細書に添付された以下の特許請求の範囲及びその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0020】
10 複合アンカ
11 近位部
11a 近位部のカニューレ
11b 近位部の内面
11c 近位部の外面
11d 近位部のねじ山
12 遠位部
12a 遠位部の底部
12b 遠位部の上部
12c 遠位部の貫通孔
12d 遠位部の側部
12e 遠位部の中間部
20 縫合糸
40 供給デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ式外面を備えるカニューレ付きの近位部と、
前記近位部に結合され、上部と、底部と、貫通孔と、を備える遠位部と、
を備え、前記遠位部の上部が前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成された複合アンカ。
【請求項2】
前記遠位部の上部が、少なくとも二つの側部と、前記少なくとも二つの側部間に配置された中間部と、を備える請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項3】
前記底部が実質的に円錐形である請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項4】
前記少なくとも二つの側部が実質的に台形状であり、且つ前記中間部が実質的に丸い形状である請求項2に記載の複合アンカ。
【請求項5】
前記貫通孔が、前記遠位部の底部内に位置させられている請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項6】
前記複合アンカが、前記貫通孔内に配置されると共に前記近位部のカニューレを通して延在する、少なくとも一つの縫合糸を、更に備える請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項7】
カニューレ付きの近位部と、前記近位部に結合された遠位部であって、上部、底部、及び貫通孔を備え、前記遠位部の上部が前記近位部のカニューレ内に配置されるように構成された前記遠位部と、前記貫通孔内に配置されると共に前記近位部のカニューレを通じて延在する少なくとも一つの縫合糸と、を備える複合アンカを提供する工程と、
骨に前記複合アンカを挿入する工程と、
前記貫通孔全体に軟組織を配置し且つ前記軟組織を通して前記縫合糸を挿入する工程と、
前記骨に前記軟組織を固定するために前記縫合糸を結ぶ工程と、
を備える修復方法。
【請求項8】
前記複合アンカの回転挿入により、前記複合アンカが前記骨に挿入される請求項7に記載の修復方法。
【請求項9】
前記骨に前記複合アンカを挿入する工程よりも前段に、前記骨内に穴を作る工程を更に備える請求項7に記載の修復方法。
【請求項10】
前記近位部が、ねじ式の外面を備える請求項7に記載の修復方法。
【請求項11】
前記近位部及び前記遠位部が共に、吸収性材料を含む請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項12】
前記近位部が吸収性材料を含み、且つ前記遠位部が非吸収性材料を含む請求項1に記載の複合アンカ。
【請求項13】
前記吸収性材料が高分子材料を含み、且つ前記非吸収性材料が高分子材料を含む請求項12に記載の複合アンカ。
【請求項14】
前記吸収性材料が高分子材料を含み、且つ前記非吸収性材料が金属材料を含む請求項12に記載の複合アンカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2012−511956(P2012−511956A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540802(P2011−540802)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066966
【国際公開番号】WO2010/071742
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504048135)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW,INC.
【住所又は居所原語表記】150 Minuteman Road,Andover,MA 01810,United States of America
【Fターム(参考)】