説明

複合シート

【課題】 機能性部材が装填された場合に立体ネット編地から抜け落ちることを確実に防止できる複合シートを提供すること。
【解決手段】 機能性部材3が各粗目網孔21aに押し込まれて各収容ポケット5内へ装填されると、かかる機能性部材3が、表編地21と裏編地22と連結糸23とによって包囲されて、立体ネット編地2の厚み間隔W内に緊密な状態で抱持される。この状態で、機能性部材3が装填された立体ネット編地2がオーブン内に収容されて、略140℃〜150℃の加熱温度で20分間ほど乾燥加熱されることで、立体ネット編地2が熱収縮されて粗目網孔21aが機能性部材3を挿脱不能な状態まで縮小されて、複合シート1が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1又は2以上の機能を発揮する機能性部材がダブルラッセル構造の立体ネット編地内に装填されている複合シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記する特許文献1には、機能性立体ネット編地シートと称して、所定の機能を発揮する球状体がダブルラッセル構造の立体ネット編地に多数装填されているものが提案されている。この機能性立体ネット編地シートは、多数の球状体が装填された立体ネット編地を敷いて、その上に利用者の身体を載せることで利用者の皮膚がマッサージされるような特異な肌触りが発揮されるものである。
【0003】
また、この機能性立体ネット編地シートによれば、立体ネット編地の網孔は外力を加えることで強制的に拡開されて球状体が通過可能となるため、複数の球状体は立体ネット編地の表編地にある粗目の網孔(ネット孔)から、その立体ネット編地の表編地及び裏編地の厚み間隔内に装填されるように構成されている。
【特許文献1】特開2007−16363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した機能性立体ネット編地シートでは、球状体が装填された後でも立体ネット編地の網孔は外力を加えれば強制的に拡開されて球状体が通過可能となるため、例えば、複合シートの使用する際に、誤って立体ネット編地に余計な外力を加えてしまうと、装填された球状体が立体ネット編地から抜け落ちてしまう恐れがあり、機能性部材を立体ネット編地に保持しておくための性能について問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、機能性部材が装填された場合に立体ネット編地から抜け落ちることを確実に防止できる複合シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1の複合シートは、マルチフィラメント糸で複数の粗目網孔を有するネット状に編成される表編地と、その表編地の粗目網孔に比べて小さな細目網孔を複数有するネット状にマルチフィラメント糸で編成される裏編地と、その裏編地及び表編地の間を往来するように編み込まれるモノフィラメント糸製の連結糸とを有して、その連結糸を介して前記表編地及び裏編地が所定の厚み間隔を保って連結されるダブルラッセル構造の立体ネット編地と、その立体ネット編地の前記粗目網孔を通過可能で、その粗目網孔から前記厚み間隔内に装填可能で、なおかつ、前記細目網孔より大きな略球状に形成されて、耐熱性を有している機能性部材とを備えており、前記表編地は、その表編地を編成するマルチフィラメント糸が所定の加熱処理によって収縮する熱収縮性を有し、その加熱処理によって前記粗目網孔が加熱処理前に比べて縮小されるとともに前記機能性部材よりも小さく縮小されるものである。
【0007】
この請求項1の複合シートによれば、複数の機能性部材は、立体ネット編地の表編地にある粗目網孔を通じて、立体ネット編地の表編地及び裏編地の厚み間隔内に装填される。このとき、機能性部材は、その全周が球面状となった略球状に形成されているので、どのような方向に向けても粗目網孔に円滑に押し込まれる。しかも、装填された機能性部材に比べて、立体ネット編地の裏編地における細目網孔はもともと小さく形成されているので、かかる機能性部材が細目網孔を通じて立体ネット編地の外に抜け出ることは予め防止されている。
【0008】
また、立体ネット編地の表編地を編成するマルチフィラメント糸は熱収縮性を備えている。このため、立体ネット編地に機能性部材を装填したまま、その表編地に対して所定の加熱処理が施されれば、表編地の粗目網孔が加熱処理前よりも小さくかつ機能性部材よりも小さく縮小されて、かかる粗目網孔についても機能性部材が通過不能となる。しかも、機能性部材は耐熱性を有するので、表編地を加熱処理する場合に、かかる機能性部材が装填された立体ネット編地をまるごと加熱することもできる。
【0009】
請求項2の複合シートは、請求項1の複合シートにおいて、前記立体ネット編地は、前記表編地が非熱収縮状態の場合に、前記粗目網孔に前記機能性部材が押し込まれることで、その粗目網孔の形状が前記機能性部材を挿脱不能な形状から前記機能性部材を挿脱自在な形状へと弾性的に拡開変形可能に形成されている。
【0010】
この請求項2の複合シートによれば、請求項1の複合シートの作用及び効果に加え、非熱収縮状態の表編地は外力が加わらなければ、その粗目網孔が機能性部材を挿脱不能な形状とされているが、この粗目網孔に対して機能性部材が押し込まれれば、この粗目網孔の形状が機能性部材を挿脱自在な形状に弾性的に拡開変形されて、その粗目網孔から機能性部材を表編地と裏編地との間に自由に装填することができるようになる。
【0011】
しかも、機能性部材が粗目網孔を通過すると、この粗目網孔は機能性部材を挿脱不能な形状に弾性的に復元されて、機能性部材は表編地及び裏編地の厚み間隔内に緊密に抱持される。このため、表編地が非熱収縮状態のままでも、一旦装填された機能性部材は、表編地の粗目網孔から抜け落ち難くなる。よって、機能性部材が抜け落ちやすい状況にある期間、例えば、機能性部材の装填後から表編地が加熱処理されるまでの期間であっても、立体ネット編地を取り扱い易くなり、その製造過程における作業性を向上できるのである。
【0012】
請求項3の複合シートは、請求項1又は2の複合シートにおいて、非熱収縮状態の前記表編地は、前記粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて大きく、かつ、前記粗目網孔における少なくとも一方向の幅が前記機能性部材の直径に比べて小さく形成されており、熱収縮後の前記表編地は、その熱収縮によって、前記粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて小さく変形されるものである。
【0013】
この請求項3の複合シートによれば、請求項1又は2の複合シートの奏する作用及び効果に加え、立体ネット編地の表編地が非熱収縮状態にある場合、機能性部材の外周長は粗目網孔の内周長より小さいので、粗目網孔に機能性部材を押し込めば、その押し込み力によって粗目網孔が拡開変形されて、機能性部材が粗目網孔を通過させられる。
【0014】
また、機能性部材が粗目網孔を通過して装填されてしまえば、この粗目網孔の一方向の幅は機能性部材の直径に比べて小さいので、機能性部材が粗目網孔に引っ掛かって立体ネット編地から抜け落ちることが防止される。しかも、表編地が加熱処理されて熱収縮されれば、粗目網孔の内周長は機能性部材の外周長より小さく変形されるので、機能性部材が表編地の粗目網孔に引っ掛かって抜け落ちることが確実に防止される。
【0015】
請求項4の複合シートは、請求項1から3のいずれかの複合シートにおいて、非熱収縮状態の前記表編地は、前記粗目網孔が略細長六角形状に形成されており、その粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて大きくされており、その粗目網孔における少なくとも一組の対辺間幅が前記機能性部材の直径に比べて小さくされており、残る対辺間幅が前記機能性部材の直径と略等しくされており、熱収縮後の前記表編地は、その熱収縮によって、前記粗目網孔が略正六角形状に変形され、その粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて小さく、かつ、その粗目網孔のいずれの対辺間幅も前記機能性部材の直径に比べて小さくなるものである。
【0016】
この請求項4の複合シートによれば、請求項1から3のいずれかの複合シートの奏する作用及び効果に加え、立体ネット編地の表編地が非熱収縮状態にある場合、機能性部材の外周長は粗目網孔の略細長六角形状の内周長より小さいので、粗目網孔に機能性部材を押し込めば、その押し込み力によって粗目網孔が略円形に拡開されるように変形されて、機能性部材が粗目網孔を通過させられる。
【0017】
また、機能性部材が粗目網孔を通過して装填されてしまえば、この略細長六角形状の粗目網孔は、その少なくとも一組の対辺間隔が機能性部材の直径に比べて小さいので、機能性部材が粗目網孔に引っ掛かって立体ネット編地から抜け落ちることが防止される。しかも、表編地が加熱処理されて熱収縮されれば、粗目網孔は、その内周長が機能性部材の外周長よりも小さな略正六角形状に変形され、かつ、いずれの対辺間幅も機能性部材の直径よりも小さく変形されるので、機能性部材が表編地の粗目網孔に引っ掛かって抜け落ちることが確実に防止される。
【0018】
請求項5の複合シートは、請求項1から4のいずれかの複合シートにおいて、前記立体ネット編地は、前記した各粗目網孔毎に、その粗目網孔と連通して前記表編地及び裏編地の厚み間隔内に設けられ、当該粗目網孔の周縁部とこれに対応する前記細目網孔の周縁部との間に往来される前記連結糸によって格子状に周囲を取り囲まれて略鉢状に画成され、前記機能性部材が緊密に収容可能に形成される収容ポケットを備えている。
【0019】
この請求項5の複合シートによれば、請求項1から4のいずれかの複合シートの奏する作用及び効果に加え、立体ネット編地には、その各粗目網孔について個々に収容ポケットが形成されており、各粗目網孔と連通する各収容ポケット毎に機能性部材が緊密に収容されるので、最も多い場合は、粗目網孔と同数に及ぶ多数の機能性部材が立体ネット編地内に装填される。
【0020】
しかも、立体ネット編地は、その表編地が加熱処理されて熱収縮されることで、その表編地の全ての粗目網孔がまとめて縮小される。このため、表編地に対する1の加熱処理によって、収容ポケットに収容されている全ての機能性部材について一度にまとめて立体ネット編地内に脱落不能な状態で封じ込めることができる。
【0021】
請求項6の複合シートは、請求項1から5のいずれかの複合シートにおいて、前記機能性部材は、略球形状に成形された珪藻土が素焼きされた多孔質体である。
【0022】
この請求項6の複合シートによれば、請求項1から5のいずれかの複合シートの奏する作用及び効果に加え、機能性部材は、多孔質の珪藻土を略球状に成形したものを素焼きすることで形成される多孔質体であるので、表編地の加熱処理に対する耐熱性を備えるとともに、湿気を吸放湿する特性も備えている。
【0023】
このため、かかる機能性部材が装填されている複合シートを使用すれば、調湿機能を発揮させることができ、更には、多孔質体である珪藻土によって臭気成分が吸着捕捉されることで脱臭機能も発揮される。よって、例えば、水切りマットとしての用途において、極めて有効な機能及び効果を発揮するものとなる。
【0024】
請求項7の複合シートは、請求項1から6のいずれかの複合シートにおいて、前記機能性部材は、その内部に混合され又はその表面に塗布される抗菌剤、消臭剤又は防黴剤などの補助成分を備えている。
【0025】
この請求項7の複合シートによれば、請求項1から6のいずれかの複合シートの奏する作用及び効果に加え、機能性部材は、主成分及び補助成分の双方による効能を発揮することができる。特に、補助成分として抗菌剤、消臭剤、又は、防黴剤を用いる場合には、衛生管理が求められる環境下で使用される製品、例えば、飲食関連製品、台所用品またはトイレ関連製品などの用途において、複合シートは、極めて有効な機能及び効果を発揮するものとなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の複合シートによれば、立体ネット編地内に粗目網孔から機能性部材を装填した後、表編地に対して所定の加熱処理を施すことで、その表編地を熱収縮させることができ、この熱収縮の結果、立体ネット編地の粗目網孔を加熱処理前に比べて縮小させるとともに機能性部材よりも小さく縮小させることができる。すると、この加熱処理後において、立体ネット編地は、その粗目網孔及び細目網孔のいずれについても機能性部材が通過不能となるので、機能性部材が抜け落ちることが確実に防止されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施例である複合シート1の平面図であり、立体ネット編地2及び機能性部材3の一部図示を省略している。また、図1(b)は、図1(a)を部分的に拡大視した拡大平面図であり、その一部の機能性部材3の図示を省略している。なお、図1に示した複合シート1は、その表編地21が熱収縮された後のものである。
【0028】
図1に示すように、複合シート1は、所定の厚みを有するシート状の立体ネット編地2と、その立体ネット編地2内に多数装填される機能性部材3と、立体ネット編地2の外周縁部に縫着される縁張り材4とを備えている。立体ネット編地2は、専用のダブルラッセル編機によって編成される特有のダブルラッセル構造を有するネット地であって、極めて強靭で、クッション性、体圧分散性、排水性、及び、通気性を有しており、一般的には「三次元シート」や「立体編物」等と呼ばれている。
【0029】
この立体ネット編地2は、複数の網孔21a,22aが全面に形成されるネット状に(網状)編成されている表編地21及び裏編地22と、これら表編地21及び裏編地22の間を往来するように編み込まれる連結糸23とを備えている。立体ネット編地2のダブルラッセル構造は、表編地21及び裏編地22が連結糸23を介して所定の厚み間隔Wを保って連結されることで形成されており、一方の表編地21がもう一方の裏編地22に対して霜柱状の連結糸23によって相対的に浮き上げられた特有の構造とされている(図4参照)。
【0030】
また、この立体ネット編地2の表編地21、裏編地22、及び、連結糸23は、いずれもナイロン又はポリエステルなどの熱収縮性を有する合成樹脂製の糸(繊維材料)で編成されており、特に、表編地21及び裏編地22には、強度に捲縮加工されたマルチフィラメント糸が用いられており、連結糸23には、略断面中実円形状で太いモノフィラメント糸が用いられている。
【0031】
また、表編地21の網孔21aは裏編地22の網孔22aに比べて開口サイズが大きく形成されており、裏編地22の網孔22aは表編地21の網孔21aに比べて開口サイズが小さく形成されている。このことから、本明細書では、表編地21における網孔21aを目が粗いという意味合いで「粗目網孔」と称し、裏編地22における網孔22aを目が細かいという意味合いで「細目網孔」と称している。
【0032】
ところで、立体ネット編地2は、熱収縮性を有するマルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸で編成されているため、かかる立体ネット編地2に対して所定の加熱処理を施すことで、これらのマルチフィラメント及びモノフィラメントが収縮されて、当該立体ネット編地2が加熱処理以前のサイズに比べて縮小されるように構成されている。特に、この加熱処理に伴う熱収縮によって、表編地21は、その粗目網孔21aのサイズが加熱処理前(非収縮状態)に比べて縮小されるとともに、機能性部材3のサイズよりも小さく縮小される(図3参照)。
【0033】
なお、表編地21の粗目網孔21aの形状及びサイズ、裏編地22の細目網孔22aの形状及びサイズ、並びに、表編地21及び裏編地22間の厚み間隔Wは、ダブルラッセル編機の設定操作によって適宜調整することができるものである。
【0034】
機能性部材3は、珪藻土を略球形状に成形して素焼きすることで焼成された多孔質体(以下「素焼き珪藻土多孔質球状体」という。)であって、立体ネット編地2を熱収縮させるための加熱処理に対する耐熱性を備えている。この機能性部材3は、立体ネット編地2が非収縮状態(加熱処理前)の場合に、表編地21の粗目網孔21aを通過可能で、その粗目網孔21aから厚み間隔W内に装填可能に形成されている。
【0035】
また、機能性部材3は、素焼き珪藻土製多孔質球状体であって遠赤外線の放射性能を備えており、これが装填されている複合シート1は、浴室内、洗面室、炊事場などの床面や浴槽内に底面に敷設されることで、機能性部材3から放射される遠赤外線によって利用者の足下や身体を内部から暖めることもでき、また、機能性部材3の凹凸によるマッサージ効果を与えることもできる。
【0036】
次に、図2を参照して、裏編地22の細目網孔22aと機能性部材3との大小関係について説明する。図2は、機能性部材3と裏編地22の細目網孔22aとの大きさを比較した図であって、表編地21及び連結糸23の図示を省略したものであり、更に、図中の2点鎖線は機能性部材3を示す仮想線である。
【0037】
図2に示すように、機能性部材3は、その外周長が立体ネット編地2の細目網孔22aの内周長に比べて大きく、かつ、その直径dが細目網孔22aの各対辺間幅w1,w2,w3よりも大きく形成されている。このため、かかる機能性部材3が裏編地22の細目網孔22aから抜け落ちることが防止されている。
【0038】
次に、図3を参照して、立体ネット編地2における、所定の加熱処理が施される前後における表編地21の粗目網孔21aについての形状変化と、かかる粗目網孔21aと機能性部材3との大小関係について説明する。
【0039】
図3は、所定の加熱処理による熱収縮前後における表編地21を比較した図であって、図3(a)は、非収縮状態(加熱処理前)の表編地21の平面図であり、図3(b)は、収縮後(加熱処理後)の表編地21の平面図であり、図中の2点鎖線は、立体ネット編地2内に装填されている機能性部材3を示す仮想線である。
【0040】
図3(a)に示すように、熱収縮前の表編地21は、粗目網孔21aが略細長六角形状に形成されており、また、粗目網孔21aの内周長が機能性部材3の外周長に比べて大きくされている。さらに、この熱収縮前の表編地21については、その粗目網孔21aの三組ある対辺間幅W1,W2,W3のうち、少なくとも一組の対辺間幅W1が機能性部材3の直径dに比べて小さくされており、残る対辺間幅W2,W3が機能性部材3の直径dと略等しくされている。
【0041】
具体的な数値例を示せば、熱収縮前の表編地21の粗目網孔21aは、横方向の対辺間幅W1が略8mm程、斜め方向の各対辺間幅W2,W3が略9mm〜9.5mm程、内周長が略30.2mm〜31.7mm程とされるのに対し、機能性部材3は、直径dが略9mm〜9.5mm程でかつ外周長が略28mm〜30mm程の略球形状に形成される。
【0042】
このため、熱収縮前の立体ネット編地2によれば、その表編地21の粗目網孔21aに機能性部材3が押し込まれることで、その粗目網孔21aの形状は、機能性部材3を挿脱不能な略細長六角形状から機能性部材3を挿脱自在な略円形状へと弾性的に拡開変形されて、機能性部材3を通過させるのである。
【0043】
また、機能性部材3が粗目網孔21aを通過して装填されれば、立体ネット編地2が備える弾性的復元力によって、粗目網孔21aは元の略細長六角形状に復元されるのであるが、かかる略細長六角形状の粗目網孔21aは、その少なくとも一組の対辺間幅W1が機能性部材3の直径dに比べて小さいので、機能性部材3が粗目網孔21aに引っ掛かって立体ネット編地2から抜け落ちることが防止される。
【0044】
上記した具体的数値例によれば、熱収縮前の粗目網孔21aは横方向の対辺間幅W1が略8mm程であるのに対し、機能性部材3は直径dが略9mm〜9.5mm程であるので、一旦装填された機能性部材3は表編地21に引っ掛かるのである。
【0045】
図3(b)に示すように、熱収縮後の表編地21にあっては、その熱収縮によって、粗目網孔21aが略正六角形状に収縮変形され、その粗目網孔21aの内周長が機能性部材3の外周長に比べて小さく、かつ、その粗目網孔21aの全ての対辺間幅W1,W2,W3が機能性部材3の直径dに比べて小さく縮小される。このため、熱収縮後の立体ネット編地2によれば、その表編地21の粗目網孔21aに機能性部材3が引っ掛かって抜け落ちることが確実に防止される。
【0046】
具体的な数値例を示せば、機能性部材3は直径dが略9mm〜9.5mm程でかつ外周長が略28mm〜30mm程の略球形状に形成されるのに対し、熱収縮後の表編地21の粗目網孔21aは横方向及び斜め方向の全ての対辺間幅W1,W2,W3が略8mm程まで縮小されかつ内周長が略27.8mm程まで縮小されるので、機能性部材3が粗目網孔21aを通過不能となるのである。
【0047】
次に、図4を参照して、機能性部材3が装填される立体ネット編地2に設けられる収容ポケット5に関する構造について説明する。
【0048】
図4は、複合シート1の拡大部分縦断面図である。図4に示すように、立体ネット編地2には、表編地21及び裏編地22の厚み間隔W内に複数の収容ポケット5が設けられている。複数ある収容ポケット5は、その一つ一つが機能性部材3を緊密に収容可能な空間であり、表編地21の各粗目網孔21aと一対一の関係で設けられている。つまり、各粗目網孔21a毎に、それに連通する収容ポケット5が1つずつ設けられている。
【0049】
各収容ポケット5は、粗目網孔21aの周縁部(マルチフィラメント糸)とこれに対応する細目網孔22aの周縁部(マルチフィラメント糸)との間に往来される連結糸23によって、その周囲が格子状取り囲まれることで、それぞれ独立した略鉢状に画成されている。よって、各収容ポケット5毎に機能性部材3を独立させて収容させることができ、立体ネット編地2の姿勢によって、機能性部材3が一箇所に片寄って形崩れすることを防止できる。
【0050】
次に、上記のように構成された複合シート1の製造方法について説明する。上記した複合シート1によれば、まず、熱収縮させられる前の立体ネット編地2が用途に応じたサイズに裁断されて、その立体ネット編地2の外周縁部に縁張り材4が縫着される。なお、この縁張り材4の縫着とともに、裏編地22全体に覆設される裏地(図示せず)を縫着したり、この裏地や縁張り材4に滑り止め材(図示せず)を縫着しても良い。
【0051】
それから、機能性部材3が各粗目網孔21aに押し込まれて各収容ポケット5内へ装填されると、かかる機能性部材3が、表編地21と裏編地22と連結糸23とによって包囲されて、立体ネット編地2の厚み間隔W内に緊密な状態で抱持される。この状態で、機能性部材3が装填された立体ネット編地2がオーブン内に収容されて、略140℃〜150℃の加熱温度で20分間ほど乾燥加熱されることで、立体ネット編地2が熱収縮されて粗目網孔21aが機能性部材3を挿脱不能な状態まで縮小されて、図1に示した複合シート1が完成する。
【0052】
以上説明した複合シート1によれば、立体ネット編地2自体が高い排水性(水切れ性能)を有しているため、例えば、水切りマットとして有効な機能を発揮することができる。しかも、機能性部材3は、素焼き珪藻土製の多孔質体であるので、その内部に浸み込んだ余分な水分を放出する調湿性能と臭気成分の吸着捕捉性能とを備えているので、多湿状態に起因する黴などの微生物の繁殖を防止でき、水切りマット自体が脱臭効果を発揮することもできる。
【0053】
しかも、機能性部材3は、立体ネット編地2の裏編地22の上に載置され、裏編地22の細目網孔22aから立体ネット編地2の裏面から突出されたないため、複合シート1の敷設面と接触することが防止され、かかる敷設面の損傷が回避される。
【0054】
ところで、上記した機能性部材3は、素焼き珪藻土製多孔質球状体で形成されており、素焼きされた珪藻土を主成分とするものであったが、その主成分の機能とは異なる別の機能、又は、主成分の機能を補完する機能を有する補助成分を、かかる機能性部材3の内部に混合したり、或いは、その表面に塗布(コーティング)して、機能性部材3に更なる機能を付加しても良い。
【0055】
特に、補助成分として抗菌剤、消臭剤、又は、防黴剤を用いる場合には、衛生管理が求められる環境下で使用される製品、具体的には、飲食関連製品、台所用品またはトイレ関連製品などの用途において、複合シート1は、極めて有効な機能及び効果を発揮するものとなる。
【0056】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、機能性部材3は、立体ネット編地2の略全面に装填させることもできるが、その一部の粗目網孔21aのみに装填するようにしても良い。
【0057】
また、本実施例では、例えば、複合シート1が、水切りマット、飲食関連製品、台所用品またはトイレ関連製品などの用途において極めて有効な機能及び効果を発揮するものとなると説明した。しかしながら、かかる複合シート1の用途は必ずしもこれらに限定されるものではなく、機能性部材3の肌触りの良さや皮膚に対するマッサージ機能に着眼すれば、これらの特性を活かした健康器具として活用しても良い。
【0058】
また、機能性部材3は、必ずしも素焼き珪藻土製多孔質球状体に限定されるものではなく、立体ネット編地2の加熱処理に対する耐熱性を有するものであれば、複合シート1の用途に応じて別の素材で形成するようにしても良く、或いは、機能が異なる機能性部材3を1枚の立体ネット編地2に混在させて装填するようにしても良い。
【0059】
例えば、機能性部材として、保温効果のある遠赤外線を発するセラミックス、消臭効果やリラクゼーション効果のあるマイナスイオンを放出するセラミックス、調湿機能のある炭化物、発泡ゴムやスポンジ等の弾性復元性(クッション性)を有する多孔質組成物、肌触りのよいガラス玉や木製ビーズ等の球状体を使用しても良い。
【0060】
さらに、機能性部材として、複数の機能を併有するもの、例えば、遠赤外線の放射性能やマイナスイオンの放出性能を有するシリカの焼成粉末を一般的な陶材料に混合して焼成したものを用いても良い。
【0061】
ここで、陶材料は、通常、粘土板状態で提供されているので、これを適度な大きさに裁断し、20重量%程度のシリカの微粉末を加え、均等質となるまで十分に水練りされる。水練りした組成物は、造粒に適度する含水率に加圧脱水して造粒機にかけ、上記した機能性部材3の直径dサイズに造粒成形される。それから、この造粒された組成物が、自然乾燥された後、電気炉によって800℃〜900℃の加熱温度で略20分間ほど素焼きされる。
【0062】
このようにして素焼きにより焼成された組成物は、機能性部材としてそのまま複合シート1に使用しても良い。もっとも、素焼き状態の機能性部材の表面は粗いので、肌触りを重視する場合には、素焼きされた組成物に少量の釉薬を塗布して更に900℃〜1000℃の加熱温度で略60分〜120分間ほど本焼きしたものを、機能性部材として使用しても良い。なお、マイナスイオンや遠赤外線の発生効果を高めるため、釉薬に20重量%程度のシリカを加えても良い。
【0063】
また、本実施例では、立体ネット編地2の全体が熱収縮性を有する繊維材料で形成されたが、かかる熱収縮性は、必ずしも立体ネット編地全体に求められるものではなく、少なくとも表編地の繊維材料について常に求められるものであり、したがって、少なくとも表編地のマルチフィラメント糸が熱収縮性のある合成樹脂製の繊維材料、例えば、ナイロンやポリエステルで形成されていれば良い。
【0064】
また、本実施例では、非熱収縮状態の表編地21における粗目網孔21aの形状が略細長六角形状であったが、かかる非熱収縮状態の表編地における粗目網孔の形状は、必ずしもこれに限定されるものではなく、熱収縮前の粗目網孔の内周長が機能性部材3の外周長に比べて大きく、かつ、少なくとも一方向の幅が機能性部材3の直径dに比べて小さければ、例えば、略菱形状、略平行四辺形状、略楕円形などの一方向の幅が他方向の幅に比べて大きな比較的細長い形状であっても良い。
【0065】
また、本実施例では、熱収縮後の表編地21における粗目網孔21aの形状が略正六角形状であったが、かかる熱収縮後の表編地における粗目網孔の形状は、必ずしもこれに限定されるものではなく、熱収縮後の粗目網孔の内周長が機能性部材3の外周長に比べて小さければ、他の形状であっても良く、自ずと熱収縮前の粗目網孔の形状が収縮変形することで推移した結果得られる形状となることは容易に推測されるものである。
【0066】
例えば、熱収縮前の粗目網孔が略菱形状ならば熱収縮後の粗目網孔は略正方形、熱収縮前の粗目網孔が略平行四辺形ならば熱収縮後の粗目網孔は略菱形または略正方形、熱収縮前の粗目網孔が略楕円形状ならば熱収縮後の粗目網孔は熱収縮前より長径が短縮された略楕円形または略円形となっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は、本発明の一実施例である複合シートの平面図であり、(b)は、(a)を部分的に拡大視した拡大平面図である。
【図2】機能性部材と裏編地の細目網孔との大きさを比較した図である。
【図3】所定の加熱処理による熱収縮前後における表編地を比較した図であって、(a)は、非熱収縮状態の表編地の平面図であり、(b)は、熱収縮後の表編地の平面図である。
【図4】複合シートの拡大部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 複合シート
2 立体ネット編地
3 機能性部材
5 収容ポケット
21 表編地
21a 粗目網孔
22 裏編地
22a 細目網孔
23 連結糸
d 機能性部材の直径
W 厚み間隔
W1,W2,W3 対辺間幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸で複数の粗目網孔を有するネット状に編成される表編地と、その表編地の粗目網孔に比べて小さな細目網孔を複数有するネット状にマルチフィラメント糸で編成される裏編地と、その裏編地及び表編地の間を往来するように編み込まれるモノフィラメント糸製の連結糸とを有して、その連結糸を介して前記表編地及び裏編地が所定の厚み間隔を保って連結されるダブルラッセル構造の立体ネット編地と、
その立体ネット編地の前記粗目網孔を通過可能で、その粗目網孔から前記厚み間隔内に装填可能で、なおかつ、前記細目網孔より大きな略球状に形成されて、耐熱性を有している機能性部材とを備えており、
前記表編地は、その表編地を編成するマルチフィラメント糸が所定の加熱処理によって収縮する熱収縮性を有し、その加熱処理によって前記粗目網孔が加熱処理前に比べて縮小されるとともに前記機能性部材よりも小さく縮小されるものであることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
前記立体ネット編地は、前記表編地が非熱収縮状態の場合に、前記粗目網孔に前記機能性部材が押し込まれることで、その粗目網孔の形状が前記機能性部材を挿脱不能な形状から前記機能性部材を挿脱自在な形状へと弾性的に拡開変形可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の複合シート。
【請求項3】
非熱収縮状態の前記表編地は、前記粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて大きく、かつ、前記粗目網孔における少なくとも一方向の幅が前記機能性部材の直径に比べて小さく形成されており、
熱収縮後の前記表編地は、その熱収縮によって、前記粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて小さく変形されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
非熱収縮状態の前記表編地は、前記粗目網孔が略細長六角形状に形成されており、その粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて大きくされており、その粗目網孔における少なくとも一組の対辺間幅が前記機能性部材の直径に比べて小さくされており、残る対辺間幅が前記機能性部材の直径と略等しくされており、
熱収縮後の前記表編地は、その熱収縮によって、前記粗目網孔が略正六角形状に変形され、その粗目網孔の内周長が前記機能性部材の外周長に比べて小さく、かつ、その粗目網孔のいずれの対辺間幅も前記機能性部材の直径に比べて小さくなるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合シート。
【請求項5】
前記立体ネット編地は、前記した各粗目網孔毎に、その粗目網孔と連通して前記表編地及び裏編地の厚み間隔内に設けられ、当該粗目網孔の周縁部とこれに対応する前記細目網孔の周縁部との間に往来される前記連結糸によって格子状に周囲を取り囲まれて略鉢状に画成され、前記機能性部材が緊密に収容可能に形成される収容ポケットを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合シート。
【請求項6】
前記機能性部材は、略球形状に成形された珪藻土が素焼された多孔質体であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合シート。
【請求項7】
前記機能性部材は、その内部に混合され又はその表面に塗布される抗菌剤、消臭剤又は防黴剤などの補助成分を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−30198(P2009−30198A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194554(P2007−194554)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(597112922)馬場化学工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】