説明

複合ジベル及び該複合ジベルを用いた鋼床版補強方法

【課題】 鋼部材に接合するコンクリート部材又はモルタル部材の厚みが小さくても、特殊な専用品を用いることなく良好なずれ止め効果を得る。
【解決手段】 軸心方向の一端部にスタッドベース3を備え且つ軸心方向の他端側に雄ねじ部4を設けてなる汎用のねじ付きスタッド2と、フランジ部7がねじ付きスタッド2のスタッドベース3側とは反対側に位置するようにした姿勢でねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に螺着させた汎用のフランジ付きナット5とから複合ジベル1を構成する。鋼部材8の表面に、複合ジベル1を、そのねじ付きスタッド2のスタッドベース3を溶接することで設置し、次いで、複合ジベル1を埋没させるように所定の厚みでコンクリート又はモルタルを打設し、硬化させて、鋼部材8に設置してある複合ジベル1を埋め込ませたコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼部材の表面にコンクリート部材又はモルタル部材を一体に接合するために用いるもので、特に、鋼部材に厚み寸法が小さいコンクリート部材又はモルタル部材を接合する場合に適した複合ジベル、及び、該複合ジベルを用いた鋼床版補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路を構成する床版の1つに鋼床版がある。かかる鋼床版は、鋼板製としてあるデッキプレートの下面側に縦リブと横リブを取り付けて補強し、該補強されたデッキプレートの上側にアスファルト舗装を設けてなる構成としてある。
【0003】
この種の鋼床版では、経年変化に伴う疲労や損傷の発生が懸念されており、そのために、上記のような鋼床版の疲労や損傷を補うための手法として、たとえば、デッキプレートの上側の既設のアスファルト舗装を撤去した後、上記デッキプレートの上側にコンクリート層又はモルタル層を一体に設けることにより該デッキプレートを補強し、しかる後、上記コンクリート層又はモルタル層の上側に、アスファルト舗装を設けるようにする手法が考えられている。
【0004】
ところで、上記鋼板製のデッキプレートの上面に上記コンクリート層又はモルタル層を一体化させた合成構造を形成する場合のように、鋼部材の表面にコンクリート部材又はモルタル部材を一体化させてなる鋼コンクリート合成構造(鋼部材とモルタル部材との合成構造も含む)を形成する場合は、鋼部材とコンクリート部材又はモルタル部材との間での剪断方向の相対的なずれや、該各部材同士が互いに離反する方向の相対的なずれを防止する必要がある。
【0005】
なお、鋼コンクリート合成構造のずれ止めとしては、スタッドジベル(頭付きスタッド)が広く一般的に使用されている。
【0006】
かかるスタッドジベルを使用する場合は、鋼部材の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材の接合個所に、複数のスタッドジベルを溶接により植設し、次いで、上記鋼部材の表面にコンクリート又はモルタルを上記スタッドジベルを覆うように打設し、硬化させてコンクリート部材又はモルタル部材を形成させるようにしてある。これにより、上記鋼部材に植設してある各スタッドジベルがコンクリート部材又はモルタル部材に埋め込まれるようになるため、上記コンクリート部材又はモルタル部材に埋め込まれたスタッドジベルにより該コンクリート部材又はモルタル部材の相対変位を拘束させることで、上記鋼部材とコンクリート部材又はモルタル部材の相対的なずれを防止して両者を一体化できるようにしてある。
【0007】
又、鋼床版のデッキプレートの表面にコンクリート層又はモルタル層を一体に接合するための手法の1つとしては、鋼床版のデッキプレートの表面に、樹脂製のジベルを接着剤により接着し、その後、上記樹脂製のジベルを覆うように繊維補強モルタル(繊維補強セメント複合材料)を打設して、上記デッキプレートとその上側で形成させる繊維補強モルタル層を上記樹脂製のジベルを介して一体に連結させるようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
鋼床版のデッキプレートの表面にコンクリート層又はモルタル層を一体に接合するための別の手法としては、鋼床版の全面に接着剤を塗布し、該接着剤が塗布された鋼床版上にコンクリートを打設することにより、鋼床版とその上側で形成させるコンクリート層とを上記接着剤により接着することで、一体化させるようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4276527号公報
【特許文献2】特開2007−162417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、鋼床版のデッキプレート上に敷設されるアスファルト舗装の通常の厚み寸法は80mm程度であることから、前述したように鋼床版のデッキプレートの補強を目的として該デッキプレートの上側にコンクリート層又はモルタル層を一体に設ける場合、該コンクリート層又はモルタル層の厚み寸法と、その上側に設けるアスファルト舗装の厚み寸法の和を、従来の鋼床版にてデッキプレート上に設けられていたアスファルト舗装の厚み寸法と同様の80mm程度にするためには、上記コンクリート層又はモルタル層の厚み寸法は40mm程度に設定する必要がある。
【0011】
この場合、鋼コンクリート合成構造のずれ止めとして広く使用されているスタッドジベルは、汎用のものは呼び長さが最低でも40mm程度となっているため、この汎用のスタッドジベルを上記鋼床版のデッキプレートに植設した状態では、該デッキプレートの上側に40mm程度の厚み寸法で形成するコンクリート層又はモルタル層に埋没させることが困難であり、たとえ、該コンクリート層又はモルタル層に埋没させることができたとしても、スタッドジベルの頭部の先端から上記コンクリート層又はモルタル層の上面までの間に、被り厚さを確保することが難しいというのが実状である。
【0012】
又、上記汎用のスタッドジベルは、通常、呼び長さが小さいものは軸径が細くなっているため、呼び長さが小さいスタッドジベルほど、一点当たりの剛度が低くなる傾向がある。
【0013】
更に、上記のように鋼床版のデッキプレートに植設したスタッドジベルを用いて該鋼床版の上側に接合するコンクリート層又はモルタル層との剪断方向のずれ止めを図る場合、スタッドジベルの軸径が細い場合は、コンクリート層又はモルタル層における上記スタッドジベルの軸部の周囲に位置する部分に応力集中が生じ易い。しかも、上記スタッドジベルは、その頭部が円柱形状としてあって、該頭部における鋼床版に臨む側となる軸部寄りの端面と外周面との間のコーナ部が、ほぼ直角の断面形状となっていることから、上記コンクリート層又はモルタル層にて上記コーナ部に接する部分にも応力集中が生じ易い。したがって、汎用のスタッドジベルにて呼び長さが小さくて軸径が細いものは、ずれ止めとしての強度があまり高くないというのが実状である。
【0014】
そのために、上記鋼床版のデッキプレートに呼び長さの小さいスタッドジベルを植設して、該デッキプレートの上側に設けるコンクリート層又はモルタル層とのずれ止めを図る場合、上記デッキプレートとコンクリート層又はモルタル層との間に作用する剪断力に耐えてずれ止めを図ることができるようにするためには、上記デッキプレートに植設するスタッドジベルの本数を多くする必要がある。したがって、部材点数が嵩むと共に、スタッドジベルの植設のための溶接作業に手間と時間を要するという問題がある。
【0015】
なお、以上の点に鑑みると、スタッドジベルとして、全長が短くて軸径が太い外形のスタッドジベルを用いるようにすれば、上記のような問題はいずれも解消できると考えられるが、この場合は、スタッドジベルが汎用のものではなく、専用品(特注品)となるため、該スタッドジベルの製造に要するコストが大幅に嵩むという問題が生じてしまう。
【0016】
特許文献1に示された手法によれば、鋼床版のデッキプレートの上面に樹脂製のジベルを接着剤により接着した状態で、該デッキプレートの上側に上記樹脂製のジベルが埋め込まれた繊維補強モルタル層を形成させることができるとされている。
【0017】
ところで、一般に、接着剤は、引っ張り力(剥離させる方向の力)と剪断力が同時に作用する場合に接着強度が低下し易い。しかし、上記鋼床版のデッキプレートと樹脂製のジベルとの接着部分には、上記デッキプレートと繊維補強モルタル層との間の相対的な剪断方向のずれと、上記デッキプレートと繊維補強モルタル層が相対的に離反する方向のずれの力が一緒に作用するようになるため、上記デッキプレートと樹脂製のジベルとの上記接着剤のみによる接着部分の耐力が不足する虞がある。
【0018】
又、接着剤は、施工時の接着強度の発現に温度依存性があり、環境の影響を受けやすいため、品質の確保が難しいという問題もある。
【0019】
更に、上記樹脂製のジベルは専用品となるため、製造コストが嵩むという問題があると共に、ジベルが樹脂製であるために強度を得にくく、よって、上記鋼床版のデッキプレートと繊維補強モルタル層を相対的に離反させる方向の力に対する耐力が低いというのが実状である。
【0020】
特許文献2に示されたものは、鋼床版の全面に接着剤を塗布し、その上にコンクリートを打設することで、形成されるコンクリート層と上記鋼床版とを上記接着剤により接着して一体化させるものであるため、上記鋼床版に対する接着剤の塗布に際し、予め上記鋼床版の表面を全面に亘ってケレンする作業が必要になる。したがって、そのケレン作業に要する手間や時間が嵩むと共に、コストが嵩むという問題がある。
【0021】
そこで、本発明は、鋼部材と該鋼部材に一体に接合するコンクリート部材又はモルタル部材とのずれ止めを図ることができると共に、上記鋼部材に接合するコンクリート部材又はモルタル部材の厚み寸法が比較的小さい場合であっても、特殊な専用品を用いることなく上記ずれ止めの効果を良好に図ることができ、更には、鋼部材に対する取り付けに要する手間と時間を抑制することができる複合ジベル、及び、該複合ジベルを用いた鋼床版補強方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有する複合ジベルとする。
【0023】
更に、上記構成において、ねじ部材を、軸心方向の一端部に鋼部材に溶接するスタッドベースを備え、且つ少なくとも軸心方向の他端側に雄ねじ部を備えたねじ付きスタッドとした構成とする。
【0024】
同様に、上記構成において、ねじ部材を、ボルト軸部の軸心方向の一端部にボルト頭部を備えたボルトとし、且つ該ボルトのボルト軸部を、鋼部材に表裏両面に貫通するように穿設してあるボルト挿通孔に該鋼部材の裏面側から挿通させると共に、該鋼部材の表面側に突出する上記ボルト軸部に、フランジ付きナットを、フランジ部が上記ボルト頭部とは反対側に位置するようにした姿勢で螺着させると共に締め込むことで、該ボルトの軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるようにした構成とする。
【0025】
又、請求項4に対応して、軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有する複合ジベルにおける上記ねじ部材の軸心方向の一端側を、鋼床版のデッキプレートに取り付けることにより、該複合ジベルを上記デッキプレートの上面に設置し、次いで、該デッキプレートの上側に、上記複合ジベルを埋没させるようにコンクリート又はモルタルを打設し、硬化させて、上記複合ジベルを埋め込んでなるコンクリート層又はモルタル層を形成させるようにする鋼床版補強方法とする。
【0026】
更に、上記構成において、複合ジベルのねじ部材を、軸心方向の一端部に鋼部材に溶接するスタッドベースを備え、且つ少なくとも軸心方向の他端側に雄ねじ部を備えたねじ付きスタッドとして、鋼床版のデッキプレートの上面に、上記ねじ付きスタッドのスタッドベースを溶接することにより、上記複合ジベルの上記デッキプレートへの取り付けを行うようにする。
【0027】
同様に、上記構成において、複合ジベルのねじ部材を、ボルト軸部の軸心方向の一端部にボルト頭部を備えたボルトとして、鋼床版のデッキプレートに上下両面に貫通するように穿設したボルト挿通孔に、上記ボルトのボルト軸部を下面側より挿通させると共に、上記ボルト挿通孔よりデッキプレートの上面側に突出する上記ボルト軸部に、フランジ付きナットを、フランジ部が上記ボルト頭部とは反対側に位置するようにした姿勢で螺着させると共に締め込むことで、該ボルトとフランジ付きナットとからなる上記複合ジベルの上記デッキプレートへの取り付けを行うようにする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有する複合ジベルとしてあるので、鋼部材の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材の接合領域に、ねじ部材の軸心方向の一端側を取り付け、且つ該ねじ部材にはフランジ付きナットを上記所定の姿勢で取り付けてなる状態とした後、上記接合領域にコンクリート又はモルタルを打設し、硬化させて、上記ねじ部材及びフランジ付きナットを埋め込ませたコンクリート部材又はモルタル部材を形成することにより、該コンクリート部材又はモルタル部材と上記鋼部材との剪断方向の相対的なずれや、該各部材同士が互いに離反する方向の相対的なずれを効率よく防止した状態で一体化させることができる。
(2)更に、上記ねじ部材をねじ付きスタッドやボルトとすることにより、該ねじ部材として汎用品のねじ付きスタッドやボルトを使用することもでき、又、フランジ付きナットとして汎用品を使用することもできる。しかも、上記汎用のねじ付きスタッドやボルトとして呼び長さが小さいものを選定することにより、上記鋼部材に接合するコンクリート部材又はモルタル部材の厚み寸法が小さい場合にも、コストが嵩む特殊な専用品を要することなく容易に対応することができる。
(3)更に又、上記ねじ部材として、径が大きいものを使用することにより、その剛度を高めることができると共に、上記鋼部材に接合させたコンクリート部材又はモルタル部材に生じる応力集中を軽減させることができる。よって、上記鋼部材とコンクリート部材又はモルタル部材とのずれ止めの効果を良好に得ることができる。
(4)又、軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有する複合ジベルにおける上記ねじ部材の軸心方向の一端側を、鋼床版のデッキプレートに取り付けることにより、該複合ジベルを上記デッキプレートの上面に設置し、次いで、上記デッキプレートの上側に、上記複合ジベルを埋没させるようにコンクリート又はモルタルを打設し、硬化させて、上記複合ジベルを埋め込んでなるコンクリート層又はモルタル層を形成させるようにする鋼床版補強方法としてあるので、鋼床版のデッキプレートと、該デッキプレートに接合するコンクリート層又はモルタル層との接合個所に、上記(1)(2)(3)における鋼部材とコンクリート部材又はモルタル部材との接合個所について得られる効果と同様の良好なずれ止めの効果、及び、応力集中を軽減させる効果を得ることができる。これにより、上記デッキプレートに対して上記コンクリート層又はモルタル層を一体化させることができて、鋼床版のデッキプレートの補強を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の複合ジベルの実施の一形態を示すもので、(a)は鋼部材の表面に取り付ける前の複合ジベルの状態を、(b)は鋼部材の表面に取り付けた複合ジベルの状態を、それぞれ示す概略側面図である。
【図2】図1の複合ジベルの応用例を示すもので、(a)は複合ジベルを構成するねじ付きスタッドに螺着させたフランジ付きナットをカラーに突き当たるまで締め込んだ状態を示す概略側面図、(b)はねじ付きスタッドの外周に嵌めたスリーブに突き当たるまでフランジ付きナットを締め込んだ状態を示す一部切断概略側面図、(c)は高ナットとなるナット本体を具備したフランジ付きナットをカラーに突き当たるまで締め込んだ状態を示す概略側面図である。
【図3】図1の複合ジベルを用いて実施する鋼床版の補強方法を示すもので、(a)は鋼床版のデッキプレート上に複合ジベルを設置した状態を、(b)はデッキプレートの上側に繊維補強モルタル層を接合した状態を、(c)は繊維補強モルタル層の上側にアスファルト舗装を設けた状態を、それぞれ示す概略切断側面図である。
【図4】本発明の複合ジベルの実施の他の形態を示す概略側面図である。
【図5】図4の複合ジベルの応用例を示すもので、(a)は複合ジベルを構成するボルトに螺着させたフランジ付きナットと鋼部材の表面との間に座金を介装させた状態を示す一部切断概略側面図、(b)は複合ジベルを構成するボルトに螺着させたフランジ付きナットと鋼部材の表面との間にスリーブを介装させた状態を示す一部切断概略側面図である。
【図6】図4の複合ジベルの別の応用例を示すもので、フランジ付きナットを、高ナットとなるナット本体を具備したフランジ付きナットとした構成を示す概略側面図である。
【図7】図4の複合ジベルの変形例を示す概略側面図である。
【図8】図4の複合ジベルを用いて実施する鋼床版の補強方法を示すもので、(a)は鋼床版のデッキプレートに複合ジベルを設置した状態を、(b)はデッキプレートの上側に繊維補強モルタル層を接合した状態を、(c)は繊維補強モルタル層の上側にアスファルト舗装を設けた状態を、それぞれ示す概略切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1(a)(b)は本発明の複合ジベルの実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0032】
すなわち、本発明の複合ジベル1は、軸心方向の一端部を鋼部材8の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材9の接合領域に溶接(溶植)するスタッドベース(溶接側の端部)3とし、且つ少なくとも軸心方向の他端側に雄ねじ部4を設けてなるねじ部材としてのねじ付きスタッド(ねじ付き溶接スタッド)2と、ナット本体6の軸心方向の片側端部に一体に具備したフランジ部7が上記ねじ付きスタッド2のスタッドベース3側とは反対側に位置するような姿勢で上記ナット本体6を該ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に螺着したフランジ付きナット5とからなる構成とする。
【0033】
詳述すると、上記ねじ付きスタッド2は、たとえば、図1(a)(b)に示すように、スタッドベース3側となる軸心方向一端側の領域を雄ねじ部4の谷の径と対応する外径の円筒部(ねじなし部)10としてある。
【0034】
又、上記ねじ付きスタッド2は、その呼び長さLが、鋼部材8の表面に接合すべき図1(b)に二点鎖線で示す如きコンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dから、該コンクリート部材又はモルタル部材9の形成時に本発明の複合ジベル1に対して必要とされる被り厚さCを引いた寸法に対応するものを、汎用のねじ付きスタッド2から選定するようにしてある。具体的には、たとえば、上記鋼部材8に接合するコンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dが40mm、該コンクリート部材又はモルタル部材9の形成時に上記本発明の複合ジベル1に対して必要とされる被り厚さCが15mmの場合、上記ねじ付きスタッド2としては、呼び長さLが25mmのねじ付きスタッド2を選定して用いるようにすればよい。なお、ねじ付きスタッド2は、呼び長さLが20mm程度のものから汎用品がある。よって、上記呼び長さLが25mmのねじ付きスタッド2は、汎用品として入手可能である。
【0035】
更に、上記ねじ付きスタッド2は、後述するように鋼部材8の表面に本発明の複合ジベル1を埋め込ませたコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させた状態で、上記コンクリート部材又はモルタル部材9における該ねじ付きスタッド2の周囲に位置する部分の応力集中を防ぐという観点から考えると、上記したように必要とされる呼び長さLが定められた条件の下で、この呼び長さLを備えた汎用のねじ付きスタッド2のうち、雄ねじ部4の外径や円筒部10の径ができるだけ大きいねじ付きスタッド2を用いることが望ましい。たとえば、上記呼び長さLが25mmのねじ付きスタッド2としては、一般的に、雄ねじ部4の外径が12〜16mmのものが汎用品として広く用いられているため、これらの汎用品から所望される剛度や、コストを考慮して最適な形状のねじ付きスタッド2を適宜選択して用いるようにすればよい。
【0036】
上記フランジ付きナット5は、上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に螺着可能な雌ねじ部(図示せず)を備えたものを適宜選定して用いるようにすればよい。
【0037】
なお、図1(b)における符号11は、上記ねじ付きスタッド2のスタッドベース3を鋼部材8の表面に溶接(スタッド溶接)することに伴って、該ねじ付きスタッド2から溶け出した溶融金属により上記スタッドベース3付近の外周を取り囲むように形成されるカラーである。
【0038】
以上の構成としてある本発明の複合ジベル1を使用する場合は、鋼部材8の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材9を接合すべき領域に、本発明の複合ジベル1における上記ねじ付きスタッド2を、その軸心方向が上記鋼部材8の表面に対して垂直になる姿勢で配置して、該ねじ付きスタッド2のスタッドベース3を、上記鋼部材8の表面に溶接により取り付ける。このときの溶接方法としては、既知のスタッド溶接方法を用いるようにすればよい。
【0039】
なお、上記鋼部材8に対して上記ねじ付きスタッド2を溶接する作業は、該ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に、上記所定の姿勢としたフランジ付きナット5を取り付けたまま行うようにしてもよい。しかし、スタッド溶接時の上記ねじ付きスタッド2の保持の観点、及び、スタッド溶接時の電気の流れの観点から考えると、上記ねじ付きスタッド2のスタッド溶接作業は、該ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に上記フランジ付きナット5を螺着させていない状態で行うようにする方が好適である。
【0040】
上記のようにして、上記ねじ付きスタッド2の鋼部材8に対する溶接作業を、該ねじ付きスタッド2にフランジ付きナット5が取り付けられていない状態で実施した場合は、そのねじ付きスタッド2の溶接作業後に、上記鋼部材8に取り付けられたねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に、フランジ付きナット5を、フランジ部7とは反対側の軸心方向端部側から螺着させて取り付けて、本発明の複合ジベル1を形成させるようにする。
【0041】
上記鋼部材8に取り付けた本発明の複合ジベル1における上記フランジ付きナット5は、図1(b)に示すように、上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4の軸心方向他端寄り位置に配置させるようにすればよい。
【0042】
上記鋼部材8の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材9の接合領域に対する本発明の複合ジベル1の取り付けを行った後は、上記鋼部材8の表面の上記所定の領域に、所定の組成のコンクリート又はモルタルを、上記本発明の複合ジベル1を覆うように打設し、その後、硬化させることにより、図1(b)に二点鎖線で示すように、上記鋼部材8に取り付けてある本発明の複合ジベル1を埋め込ませた状態のコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させるようにする。
【0043】
これにより、上記鋼部材8に取り付けられ且つ上記コンクリート部材又はモルタル部材9に埋め込まれた本発明の複合ジベル1は、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9が互いに剪断方向にずれる挙動、及び、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9が互いに離反する方向にずれる挙動を防止できるようになる。
【0044】
この際、本発明の複合ジベル1では、ねじ付きスタッド2として、所望される呼び長さLを備えた汎用のねじ付きスタッド2のうち、雄ねじ部4の外径や円筒部10の外径の大きいものを用いるようにすることにより、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9との間に剪断方向のずれを生じさせるような荷重が作用する際に、上記コンクリート部材又はモルタル部材9における該ねじ付きスタッド2の周囲に位置する部分に生じる応力集中を、軽減させることができるようになる。
【0045】
しかも、上記本発明の複合ジベル1におけるフランジ付きナット5は、通常、ナット本体6における鋼部材8寄りに配置されている端面と外側面との間のコーナ部、及び、フランジ部7における鋼部材8寄りに配置されている端面と外周面との間のコーナ部が、それぞれ鈍角の断面形状になっているため、上記コンクリート部材又はモルタル部材9における上記フランジ付きナット5のナット本体6とフランジ部7の上記各コーナ部に接する部分に対する応力集中も抑制することができるようになる。
【0046】
更に、本発明の複合ジベル1では、鋼部材8に溶接したねじ付きスタッド2の先端側(上記鋼部材8より離反する側の端部)に、該ねじ付きスタッド2の断面形状よりも大きな平面形状を有するナット本体6を備えたフランジ付きナット5が取り付けてあり、該フランジ付きナット5は、上記鋼部材8より離反する側の端部に、ナット本体6より外周に張り出すフランジ部7が設けてあるため、該フランジ付きナット5のナット本体6及びフランジ部7の存在により、ねじ付きスタッド2の周囲に位置する上記コンクリート部材又はモルタル部材9の部分が、鋼部材8より離反する方向へ変位しないように拘束されるようになる。このため、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9が互いに離反する方向にずれる挙動が効率よく防止されるようになる。
【0047】
このように、本発明の複合ジベル1によれば、鋼部材8の表面におけるコンクリート部材又はモルタル部材9の接合領域には、ねじ付きスタッド2のスタッドベース3が溶接して取り付けられることにより、該領域にコンクリート又はモルタルを打設して形成させるコンクリート部材又はモルタル部材9と、上記鋼部材8とを、該各部材8と9同士の間での剪断方向の相対的なずれや、該各部材8と9同士が互いに離反する方向の相対的なずれを効率よく防止した状態で一体化させることができる。
【0048】
更に、本発明の複合ジベル1は、汎用のねじ付きスタッド2と汎用のフランジ付きナット5から構成することができる。しかも、上記汎用のねじ付きスタッド2としては、呼び長さLが小さいものを選定することで、上記鋼部材8に接合するコンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dが、従来の汎用のスタッドジベルは適用できないような小さい厚み寸法Dである場合にも、本発明の複合ジベル1で必要とされる被り厚さCを容易に確保することができる。これにより、コストが嵩む特殊な専用品を要することなく、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9とのずれ止めの効果を良好に図ることができる。
【0049】
更には、上記汎用のねじ付きスタッド2としては、雄ねじ部4の外径や円筒部10の径が大きいものを使用することにより、本発明の複合ジベル1の一点当たりの剛度を高めることができると共に、上記鋼部材8に接合させたコンクリート部材又はモルタル部材9における本発明の複合ジベル1の周囲に位置する部分での応力集中を軽減させることができる。
【0050】
又、上記本発明の複合ジベル1の鋼部材8への取り付けは、上記ねじ付きスタッド2のスタッドベース3を鋼部材8の表面に溶接することで行うようにしてある。この溶接は、溶接部に高い強度を得るための方法が確立されていると共に、溶接品質が確保できるようになっている既存のスタッド溶接方法で実施することができるため、本発明の複合ジベル1におけるねじ付きスタッド2の上記鋼部材8への取付強度を高いものとすることができる。更に、上記ねじ付きスタッド2及びフランジ付きナット5は、共に鋼製のものとすることにより、本発明の複合ジベル1を強度の高いものとすることができる。よって、前述した特許文献1に示された手法、すなわち、鋼部材に樹脂製のジベルを接着剤によって接着する手法を採る場合に生じていたような問題をいずれも回避することができる。
【0051】
更に、上記鋼部材8の表面に本発明の複合ジベル1を取り付ける際は、予め該鋼部材8の表面に対するケレンが必要となる場合であっても、上記鋼部材8の表面にて、本発明の複合ジベル1のねじ付きスタッド2の溶接対象個所のみをケレンすればよいため、該ケレン作業に要する手間と時間、及び、コストを抑制することができる。
【0052】
なお、上記において、鋼部材8の表面に本発明の複合ジベル1を取り付けた状態で、該領域にコンクリート又はモルタルを打設してコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させるときは、上記本発明の複合ジベル1におけるフランジ付きナット5を、ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4の軸心方向他端寄り位置に単に螺着させた状態とさせるものとして説明したが、この状態では、上記フランジ付きナット5が、上記コンクリート又はモルタルの打設前に作業者や工具や機材の接触によって外力を受けたり、打設されるコンクリート又はモルタルより外力を受けたりすると、上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に対して締める方向や緩める方向に容易に回転できるようになっているため、この回転に伴って、該フランジ付きナット5の上記ねじ付きスタッド2の軸心方向に対する取付位置が変位することが考えられる。
【0053】
そのため、上記鋼部材8の表面に取り付けた本発明の複合ジベル1において、上記したようなフランジ付きナット5のねじ付きスタッド2の軸心方向に対する取付位置の変位を防止することが求められる場合には、図2(a)に示すように、上記フランジ付きナット5を、上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に対し、カラー11に突き当たる位置まで締め込むようにすればよい。
【0054】
あるいは、図2(b)に示すように、上記ねじ付きスタッド2の外周に、円筒状、あるいは、円筒の内周面に上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に螺合可能な雌ねじを設けてなるスリーブ12(なお図2(b)では、円筒状のスリーブ12が示してある)を、上記カラー11に突き当たるように嵌めた後、この状態で、上記フランジ付きナット5を、上記ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に、上記スリーブ12に突き当たる位置まで締め込むようにしてもよい。
【0055】
ところで、上記図2(a)に示したものでは、フランジ付きナット5を、鋼部材8に溶接したねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に、カラー11に突き当たる位置まで締め込むようにしてあることに伴って、該フランジ付きナット5のフランジ部7の位置が、図1(a)(b)に示した如き本発明の複合ジベル1に比して、より鋼部材8に近接した配置とされている。
【0056】
そこで、本発明の複合ジベル1におけるフランジ付きナットは、図2(c)に示すように、高ナットとなるナット本体6aの軸心方向の片側端部にフランジ部7を一体に具備してなる構成のフランジ付きナット5aとして、該高ナット形式のフランジ付きナット5aを、ねじ付きスタッド2の雄ねじ部4に、カラー11に突き当たる位置まで締め込み、該フランジ付きナット5aにおけるフランジ部7が、上記ねじ付きスタッド2の先端側の鋼部材8より離れた位置に配置できるようにしてもよい。
【0057】
なお、図2(a)(b)(c)において、図1(a)(b)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0058】
上記図2(a)(b)(c)にそれぞれ示したように、本発明の複合ジベル1は、上記フランジ付きナット5,5aを上記ねじ付きスタッド2に対して上記カラー11又は上記スリーブ12に突き当たる位置まで締め込んだ状態とすることにより、該フランジ付きナット5,5aの自由な回転が抑制されるようになるため、上記フランジ付きナット5,5aのねじ付きスタッド2の軸心方向に対する取付位置が変位することを防止できるようになる。
【0059】
次に、図3(a)(b)(c)は、図1(a)(b)に示した本発明の複合ジベル1を用いて行う鋼床版の補強方法を示すものである。
【0060】
すなわち、上記鋼床版の補強方法を実施する場合は、先ず、図3(a)に示すように、既設の鋼床版13におけるデッキプレート14上より既存の図示しないアスファルト舗装を撤去する。
【0061】
次に、鋼部材としての上記デッキプレート14の上面(表面)における上記図示しないアスファルト舗装が撤去された領域は、コンクリート部材又はモルタル部材としての繊維補強モルタル層15の接合領域として、該領域にて、後の工程で上記図1(a)(b)に示した本発明の複合ジベル1の設置対象となる個所についてのケレン作業を行う。
【0062】
次いで、上記デッキプレート14の上面のケレンされた個所には、図3(a)に示すように本発明の複合ジベル1におけるねじ付きスタッド2のスタッドベース3を溶接して、上記デッキプレート14の上面に、本発明の複合ジベル1を設置する。
【0063】
この際、本発明の複合ジベル1は、ねじ付きスタッド2の呼び長さが、後の工程で形成する繊維補強モルタル層15の厚み寸法から、該繊維補強モルタル層15の形成時に本発明の複合ジベル1に対して必要とされる被り厚さを引いた寸法となるように設定してあるものとする。
【0064】
上記のようにしてデッキプレート14上に本発明の複合ジベル1の設置が終了すると、図3(b)に示すように、上記デッキプレート14の上面における繊維補強モルタル層15の接合領域には、該領域に設置してある本発明の複合ジベル1を埋没させるような厚さでコンクリート又はモルタルとしての繊維補強モルタルを打設し、その後、硬化させて、上記本発明の複合ジベル1を埋め込ませてなる繊維補強モルタル層15を形成させる。
【0065】
なお、上記繊維補強モルタル層15は、上記鋼床版13のデッキプレート14の補強のために必要とされる強度、剛度等の性能が得られるようにしてあれば、その配合や混合してある繊維の種類は適宜定めるようにすればよい。
【0066】
これにより、上記デッキプレート14とその上側に形成された上記繊維補強モルタル層15は、本発明の複合ジベル1を介在させた状態で接合されるため、該接合部分にて、上記鋼部材であるデッキプレート14と、コンクリート部材又はモルタル部材である繊維補強モルタル層15同士の間での剪断方向の相対的なずれや、デッキプレート14と繊維補強モルタル層15同士が互いに離反する方向の相対的なずれが効率よく防止された状態で、該デッキプレート14と繊維補強モルタル層15を一体化させることができる。
【0067】
その後、上記デッキプレート14の上側に一体に接合されている上記繊維補強モルタル層15の上側には、図3(c)に示すように、アスファルト舗装16を設けて、上記既設の鋼床版13に対する補強工事を完了する。
【0068】
なお、図3(a)(b)(c)において図1(a)(b)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0069】
以上の鋼床版補強方法によれば、本発明の複合ジベル1は、既設の鋼床版13におけるデッキプレート14と、その上面に接合する繊維補強モルタル層15との接合個所に介在させることになり、上記デッキプレート14と繊維補強モルタル層15について、図1(a)(b)の実施の形態における鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9と同様のずれ止めの効果、及び、応力集中を軽減させる効果を得ることができる。
【0070】
よって、上記デッキプレート14は、上記繊維補強モルタル層15が一体化されることにより、補強を行うことができ、該デッキプレート14と繊維補強モルタル層15の一体化された構造の上側に、アスファルト舗装16を施工することにより、上記鋼床版13の補強を図った上で、その機能を回復させることができる。
【0071】
なお、図示してないが、上記図3(a)(b)(c)に示した鋼床版補強方法を実施する際は、図1(a)(b)に示した複合ジベル1に代えて、図2(a)(b)(c)のいずれかの構成の複合ジベル1を用いてもよいことは勿論である。この場合も、上記図3(a)(b)(c)で説明したと同様の効果を得ることができる。
【0072】
図4は本発明の複合ジベルの実施の他の形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0073】
すなわち、本実施の形態の複合ジベル1aは、鋼部材8における表面側にコンクリート部材又はモルタル部材9を接合するための接合領域に穿設したボルト挿通孔17に該鋼部材8の裏面側よりボルト軸部19を挿通させて該ボルト軸部19の先端側を鋼部材8の表面側へ後述する所定の寸法で突出させて配置したねじ部材としてのボルト18と、図1(a)(b)に示したフランジ付きナット5と同様にナット本体6の軸心方向の片側端部にフランジ部7を一体に具備した構成として、上記フランジ部7を上記鋼部材8のボルト挿通孔17に挿通配置してあるボルト18のボルト頭部20側とは反対側に位置するような姿勢でボルト軸部19に先端側より螺着させたフランジ付きナット5とからなる構成とする。
【0074】
詳述すると、上記ボルト18は、たとえば、図4に示すように、ボルト軸部19の軸心方向の一端部に六角のボルト頭部20を備えた六角ボルトとしてある。更に、該ボルト18は、鋼部材8のボルト挿通孔17に裏面側よりボルト軸部19を挿通させて、ボルト頭部20を上記鋼部材8の裏面に接触させ、この状態で、該鋼部材8の表面側に突出するボルト軸部19の先端側の突出量L1が、鋼部材8の表面に接合すべきコンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dから、該コンクリート部材又はモルタル部材9の形成時に本実施の形態の複合ジベル1aに対して必要とされる被り厚さCを引いた寸法に対応するように、選定するようにしてある。具体的には、たとえば、上記鋼部材8に接合するコンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dが40mm、該コンクリート部材又はモルタル部材9の形成時に上記本発明の複合ジベル1に対して必要とされる被り厚さCが15mmの場合、上記ボルト18としては、呼び長さL0が、上記ボルト軸部19の先端側の突出量L1として必要とされる25mmに、上記鋼部材8の厚み寸法Tを加えた寸法となるボルト18を選定して用いるようにすればよい。
【0075】
更に、上記ボルト18は、後述するように鋼部材8の表面側に本実施の形態の複合ジベル1aを埋め込ませたコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させた状態で、上記コンクリート部材又はモルタル部材9におけるボルト軸部19の周囲に位置する部分の応力集中を防ぐという観点から考えると、上記したように必要とされる呼び長さL0が定められた条件の下で、この呼び長さL0を備えた汎用のボルト18のうち、ボルト軸部19の径ができるだけ大きいボルト18を用いることが望ましい。
【0076】
上記フランジ付きナット5は、上記ボルト18のボルト軸部19の雄ねじに螺着可能な雌ねじ部(図示せず)を備えたものを適宜選定して用いるようにすればよい。
【0077】
なお、図4において図1(a)(b)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0078】
以上の構成としてある本実施の形態の複合ジベル1aを使用する場合は、鋼部材8の表面側にコンクリート部材又はモルタル部材9を接合するための接合領域に、予め、上記ボルト18のボルト軸部19の径よりもやや大きな内径のボルト挿通孔17を表裏両面に貫通させて穿設しておくようにする。
【0079】
次に、上記ボルト挿通孔17には、上記ボルト18のボルト軸部19を、上記鋼部材8の裏面側より挿通させる。次いで、上記鋼部材8の表面側に突出する上記ボルト軸部19には、本実施の形態の複合ジベル1aを構成するためのフランジ付きナット5を上記所定の姿勢で螺着させ、該フランジ付きナット5を上記鋼部材8の表面側に接する位置まで上記ボルト軸部19に対して締め込むようにする。このようにして、上記ボルト18及びフランジ付きナット5からなる本実施の形態の複合ジベル1aは形成されると同時に、該複合ジベル1aの上記鋼部材8への固定が行われる。
【0080】
上記のようにして鋼部材8におけるコンクリート部材又はモルタル部材9の接合領域に対する本実施の形態の複合ジベル1aの取り付けを行った後は、上記鋼部材8の表面の上記所定の領域に、所定の組成のコンクリート又はモルタルを、鋼部材8の表面側に露出されているボルト軸部19及びフランジ付きナット5を覆うように打設し、その後、硬化させることにより、図4に二点鎖線で示すように、本実施の形態の複合ジベル1aのボルト軸部19及びフランジ付きナット5を埋め込ませた状態のコンクリート部材又はモルタル部材9を形成させるようにする。
【0081】
これにより、上記鋼部材8に取り付けられ且つ上記コンクリート部材又はモルタル部材9に埋め込まれた本実施の形態の複合ジベル1aは、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9が互いに剪断方向にずれる挙動、及び、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9が互いに離反する方向にずれる挙動を防止できるようになる。
【0082】
この際、本実施の形態の複合ジベル1aでは、ボルト18として、所望される呼び長さL0を備えた汎用のボルト18のうち、ボルト軸部19の径の大きいものを用いるようにすることにより、上記鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9との間に剪断方向のずれを生じさせるような荷重が作用する際に、上記コンクリート部材又はモルタル部材9における該ボルト軸部19及びフランジ付きナット5の周囲に位置する部分に生じる応力集中を、軽減させることができるようになる。
【0083】
しかも、上記本実施の形態の複合ジベル1aにおけるフランジ付きナット5は、図1(a)(b)に示したものと同様に、上記コンクリート部材又はモルタル部材9における上記フランジ付きナット5のナット本体6とフランジ部7の上記各コーナ部に接する部分に対する応力集中も抑制することができるようになる。
【0084】
したがって、本実施の形態の複合ジベル1aは、図1(a)(b)に示した複ジベル1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
又、図4に示す本実施の形態の複合ジベル1aの鋼部材8に対する取り付けは、上記該鋼部材8に穿設したボルト挿通孔17にボルト軸部19を挿通させたボルト18に、フランジ付きナット5を螺着させて締め込むという手法で行うようにしてあるため、本実施の形態の複合ジベル1aの上記鋼部材8に対する取付強度を高いものとすることができる。更に、上記ボルト18及びフランジ付きナット5を共に鋼製のものとすることで、本実施の形態の複合ジベル1a自体の強度を高いものとすることができる。よって、前述した特許文献1に示された手法、すなわち、鋼部材に樹脂製のジベルを接着剤によって接着する手法を採る場合に生じていたような問題をいずれも回避することができる。
【0086】
更に、本実施の形態の複合ジベル1aは、鋼部材8に対する取付作業を行う際の溶接作業を不要にすることができる。
【0087】
ところで、上記図4の実施の形態の複合ジベル1aでは、鋼部材8への固定を行う必要上、上記フランジ付きナット5を、上記鋼部材8のボルト挿通孔17より該鋼部材8の表面側に突出する上記ボルト18のボルト軸部19に、該鋼部材8の表面に突き当たる位置まで締め込むようにしてあるため、該フランジ付きナット5のフランジ部7は、上記鋼部材8の表面より該フランジ付きナット5のナット本体6の軸心方向の寸法に対応する寸法分、離れた位置に配置されるようになる。
【0088】
そこで、上記フランジ付きナット5のフランジ部7を、鋼部材8の表面から、より離反させた位置に配置することが所望される場合は、図4に示したと同様の構成において、図5(a)に示すように、鋼部材8の表面側に突出するボルト軸部19の外周に、該ボルト軸部19の径よりもわずかに大きい内径を備えた単数又は複数の座金21(図では4枚の座金21)を、上記鋼部材8の表面に突き当たるように嵌めた後、この状態で、上記フランジ付きナット5を、上記ボルト18のボルト軸部19に、上記座金21に突き当たる位置まで締め込むようにしてもよい。なお、上記図5(a)の構成において、上記座金21の数は、該ボルト軸部19の軸心方向における上記フランジ付きナット5の取り付けを所望する位置(高さ位置)と、座金21自体の厚み寸法に応じて自在に変更してよいことは勿論である。
【0089】
あるいは、図5(b)に示すように、鋼部材8の表面側に突出するボルト軸部19の外周に、円筒状、あるいは、円筒の内周面に上記ボルト軸部19の雄ねじに螺合可能な雌ねじを設けてなるスリーブ22(なお図5(b)では、円筒状のスリーブ22が示してある)を、上記鋼部材8の表面に突き当たるように嵌めた後、この状態で、上記フランジ付きナット5を、上記ボルト18のボルト軸部19に、上記スリーブ22に突き当たる位置まで締め込むようにしてもよい。
【0090】
更には、図6に示すように、フランジ付きナットは、図2(c)に示したと同様の高ナットとなるナット本体6aの軸心方向の片側端部にフランジ部7を一体に具備してなる構成のフランジ付きナット5aとして、該高ナット形式の該フランジ付きナット5aを、鋼部材8のボルト挿通孔17に挿通させて配置したボルト18の該鋼部材8の表面側に突出するボルト軸部19に、鋼部材8の表面に突き当たる位置まで締め込んだ状態としてもよい。
【0091】
なお、図5(a)(b)及び図6において、図4に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0092】
上記図5(a)、図5(b)、及び、図6のいずれの実施の形態の複合ジベル1aは、上記フランジ付きナット5,5aのフランジ部7の位置を、図4の実施の形態の複合ジベル1aに比して、鋼部材8の表面から、より離反させた位置に配置できるため、該鋼部材8の表面側に接合するコンクリート部材又はモルタル部材9を、上記フランジ付きナット5,5aのフランジ部7により、上記鋼部材8の表面より離反した位置で拘束することができるようになる。
【0093】
次に、図7は本発明の複合ジベルの実施の更に他の形態として、図4に示した複合ジベル1aの変形例を示すもので、以下のようにしてある。
【0094】
すなわち、図7の実施の形態の複合ジベル1aは、図4に示したと同様の構成において、鋼部材8に穿設するボルト挿通孔17を、該鋼部材8の裏面側開口部の周縁に座ぐり23を備えてなる構成のボルト挿通孔17とし、且つ該ボルト挿通孔17に対して鋼部材8の裏面側より挿通させて配置するボルトとして皿ボルト18aを用いた構成としてある。
【0095】
その他の構成は図4に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0096】
本実施の形態の複合ジベル1aによっても、図4に示した複合ジベル1aと同様の効果を得ることができる。
【0097】
更に、上記本実施の形態の複合ジベル1aは、ボルトとして皿ボルト18aを用いると共に、鋼部材8に設けるボルト挿通孔17の裏面側開口部の周縁に座ぐり23が設けてあることから、該座ぐり23の内側に上記皿ボルト18aのボルト頭部20が密着するようになる。このため、上記本実施の形態の複合ジベル1aは、鋼部材8に対する固定をより確実に行うことができる。
【0098】
次に、図8(a)(b)(c)は、図3(a)(b)(c)に示したと同様の鋼床版補強方法において、図1(a)(b)の実施の形態の複合ジベル1に代えて、図4の実施の形態の複合ジベル1aを用いて行うようにした鋼床版補強方法を示すものである。
【0099】
すなわち、上記鋼床版の補強方法を実施する場合は、先ず、図8(a)に示すように、既設の鋼床版13におけるデッキプレート14上より既存の図示しないアスファルト舗装を撤去する。
【0100】
次に、鋼部材としての上記デッキプレート14の上面(表面)における上記図示しないアスファルト舗装が撤去された領域は、コンクリート部材又はモルタル部材としての繊維補強モルタル層15の接合領域として、該領域にて、後の工程で上記複合ジベル1aの設置が所望される個所に、表裏両面に貫通するボルト挿通孔17を穿設する。
【0101】
次いで、上記ボルト挿通孔17には、図8(a)に示すように上記複合ジベル1aを構成するボルト18を下面(裏面)側から挿通配置させる。これにより、該ボルト挿通孔17を通してデッキプレート14の上面側に突出するボルト軸部19には、フランジ付きナット5を上方より螺着させて締め込むことで、上記デッキプレート14に、複合ジベル1aを設置する。
【0102】
この際、上記複合ジベル1aは、上記ボルト18のボルト軸部19の上記デッキプレートの上面側に突出する突出量が、後の工程で形成する繊維補強モルタル層15の厚み寸法から、該繊維補強モルタル層15の形成時に上記複合ジベル1aに対して必要とされる被り厚さを引いた寸法となるように設定してあるものとする。
【0103】
上記のようにしてデッキプレート14に上記複合ジベル1aの設置が終了すると、図8(b)に示すように、上記デッキプレート14の上面における繊維補強モルタル層15の接合領域には、該領域に設置してある上記複合ジベル1aを埋没させるような厚さで繊維補強モルタルを打設し、その後、硬化させて、上記デッキプレート14の上面側で上記複合ジベル1aを埋め込ませてなる繊維補強モルタル層15を形成させる。
【0104】
なお、上記繊維補強モルタル層15は、上記鋼床版13のデッキプレート14の補強のために必要とされる強度、剛度等の性能が得られるようにしてあれば、その配合や混合してある繊維の種類は適宜定めるようにすればよい。
【0105】
これにより、上記デッキプレート14とその上側に形成された上記繊維補強モルタル層15は、上記複合ジベル1aを介在させた状態で接合されるため、該接合部分では、上記鋼部材であるデッキプレート14と、コンクリート部材又はモルタル部材である繊維補強モルタル層15同士の間での剪断方向の相対的なずれや、デッキプレート14と繊維補強モルタル層15同士が互いに離反する方向の相対的なずれが効率よく防止された状態で、該デッキプレート14と繊維補強モルタル層15を一体化させることができる。
【0106】
その後、上記デッキプレート14の上側に一体に接合されている上記繊維補強モルタル層15の上側には、図8(c)に示すように、アスファルト舗装16を設けて、上記既設の鋼床版13に対する補強工事を完了する。
【0107】
なお、図8(a)(b)(c)において図4に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0108】
以上の鋼床版補強方法によっても、既設の鋼床版13におけるデッキプレート14と、その上面に接合する繊維補強モルタル層15との接合個所に上記複合ジベル1aを介在させることにより、上記デッキプレート14と繊維補強モルタル層15については、図4の実施の形態における鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9に対するものと同様のずれ止めの効果、及び、応力集中を軽減させる効果を得ることができる。
【0109】
よって、上記デッキプレート14は、上記繊維補強モルタル層15が一体化されることにより、補強を行うことができ、該デッキプレート14と繊維補強モルタル層15の一体化された構造の上側に、アスファルト舗装16を施工することにより、上記鋼床版13の補強を図った上で、その機能を回復させることができる。
【0110】
なお、図示してないが、上記図8(a)(b)(c)に示した鋼床版補強方法を実施する際には、図4に示した複合ジベル1aに代えて、図5(a)、図5(b)、図6、図7のいずれかの構成の複合ジベル1aを用いてもよいことは勿論である。この場合も、上記図8(a)(b)(c)で説明したと同様の効果を得ることができる。
【0111】
又、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図1(a)(b)の実施の形態、及び、図2(a)(b)(c)の実施の形態の複合ジベル1を構成するねじ付きスタッド2は、スタッドベース3側となる軸心方向一端側の領域に設けた円筒部10が、雄ねじ部4の外径と対応する外径を備えてなる形式のものや、全ねじ形式のものを使用するようにしてもよい。
【0112】
図4の実施の形態、図5(a)(b)の実施の形態、図6の実施の形態、及び、図7の実施の形態の複合ジベル1aを構成するボルト18は、全ねじ形式のボルト18であってもよい。
【0113】
更に、図4の実施の形態、図5(a)(b)の実施の形態、図6の実施の形態の複合ジベル1aを構成するボルト18は、六角ボルトとして示したが、六角以外の任意の外形のボルト頭部20を備えたボルト18を使用してもよい。
【0114】
上記各実施の形態では、フランジ付きナット5,5aは、図面上、六角ナットの形式のナット本体6を備えたものとして示したが、ナット本体6の外形は六角ナットに限定されるものではない。
【0115】
本発明の複合ジベル1,1aは、鋼部材8にコンクリート部材又はモルタル部材9を一体に接合して両者の剪断方向や離反する方向のずれ止めを図ることが求められる個所であれば、鋼床版13のデッキプレート14と該デッキプレート14の上側に補強のために接合する繊維補強モルタル層15との接合個所以外の任意の鋼部材8とコンクリート部材又はモルタル部材9との接合個所に適用してよい。
【0116】
又、鋼部材8とこれに接合するコンクリート部材又はモルタル部材9との位置関係は、必ずしも鋼部材8の上側にコンクリート部材又はモルタル部材9が配置されていなくてもよい。したがって、鋼部材8とこれに接合するコンクリート部材又はモルタル部材9との位置関係はいかなる配置であってもよい。
【0117】
本発明の複合ジベル1,1aは、上記コンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dに制限を受けることなく適用してよい。したがって、図1(a)(b)の実施の形態、及び、図2(a)(b)(c)の実施の形態の複合ジベル1におけるねじ付きスタッド2は、上記コンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dに応じて、その厚み寸法Dから必要とされる被り厚さCを引いた寸法の呼び長さLとなるものを適宜選定すればよい。同様に、図4の実施の形態、図5(a)(b)の実施の形態、図6の実施の形態、図7の実施の形態の複合ジベル1aにおけるボルト18は、上記コンクリート部材又はモルタル部材9の厚み寸法Dに応じて、その厚み寸法Dから必要とされる被り厚さCを引いた寸法が、鋼部材8のボルト挿通孔17より該鋼部材8の表面側に突出するボルト軸部19の先端側の突出量L1と一致するものを適宜選定すればよい。
【0118】
図3(a)(b)(c)の実施の形態、及び、図8(a)(b)(c)の実施の形態の鋼床版補強方法は、複合ジベル1,1aを設置した後の鋼床版13のデッキプレート14上に繊維補強モルタル層15を接合する場合について示したが、コンクリートの打設により形成させるコンクリート部材としてのコンクリート層、又は、モルタルの打設により形成させるモルタル部材としてのモルタル層であれば、いかなる組成のコンクリート層又はモルタル層を上記デッキプレート14の上側に接合する場合にも適用してよい。
【0119】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0120】
1,1a 複合ジベル
2 ねじ付きスタッド(ねじ部材)
3 スタッドベース
4 雄ねじ部
5,5a フランジ付きナット
7 フランジ部
8 鋼部材
9 コンクリート部材又はモルタル部材
13 鋼床版
14 デッキプレート(鋼部材)
15 繊維補強モルタル層(コンクリート部材又はモルタル部材)
17 ボルト挿通孔
18 ボルト
19 ボルト軸部
20 ボルト頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有することを特徴とする複合ジベル。
【請求項2】
ねじ部材を、軸心方向の一端部に鋼部材に溶接するスタッドベースを備え、且つ少なくとも軸心方向の他端側に雄ねじ部を備えたねじ付きスタッドとした請求項1記載の複合ジベル。
【請求項3】
ねじ部材を、ボルト軸部の軸心方向の一端部にボルト頭部を備えたボルトとし、且つ該ボルトのボルト軸部を、鋼部材に表裏両面に貫通するように穿設してあるボルト挿通孔に該鋼部材の裏面側から挿通させると共に、該鋼部材の表面側に突出する上記ボルト軸部に、フランジ付きナットを、フランジ部が上記ボルト頭部とは反対側に位置するようにした姿勢で螺着させると共に締め込むことで、該ボルトの軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるようにした請求項1記載の複合ジベル。
【請求項4】
軸心方向の一端側を鋼部材に取り付けるねじ部材と、該ねじ部材のねじ部に螺着させるナット本体にフランジ部を取り付けて、該フランジ部が上記ねじ部材の一端側とは反対側に位置するようにした姿勢で上記ねじ部材に上記ナット本体を螺着させたフランジ付きナットとからなる構成を有する複合ジベルにおける上記ねじ部材の軸心方向の一端側を、鋼床版のデッキプレートに取り付けることにより、該複合ジベルを上記デッキプレートの上面に設置し、次いで、上記デッキプレートの上側に、上記複合ジベルを埋没させるようにコンクリート又はモルタルを打設し、硬化させて、上記複合ジベルを埋め込んでなるコンクリート層又はモルタル層を形成させるようにすることを特徴とする鋼床版補強方法。
【請求項5】
複合ジベルのねじ部材を、軸心方向の一端部に鋼部材に溶接するスタッドベースを備え、且つ少なくとも軸心方向の他端側に雄ねじ部を備えたねじ付きスタッドとして、鋼床版のデッキプレートの上面に、上記ねじ付きスタッドのスタッドベースを溶接することにより、上記複合ジベルの上記デッキプレートへの取り付けを行うようにする請求項4記載の鋼床版補強方法。
【請求項6】
複合ジベルのねじ部材を、ボルト軸部の軸心方向の一端部にボルト頭部を備えたボルトとして、鋼床版のデッキプレートに上下両面に貫通するように穿設したボルト挿通孔に、上記ボルトのボルト軸部を下面側より挿通させると共に、上記ボルト挿通孔よりデッキプレートの上面側に突出する上記ボルト軸部に、フランジ付きナットを、フランジ部が上記ボルト頭部とは反対側に位置するようにした姿勢で螺着させると共に締め込むことで、該ボルトとフランジ付きナットとからなる上記複合ジベルの上記デッキプレートへの取り付けを行うようにする請求項4記載の鋼床版補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11108(P2013−11108A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144601(P2011−144601)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】