説明

複合センサ

【課題】複数の情報から複合的にセンシングを行うことで高精度の測定を実現することができる複合センサを提供する。
【解決手段】平板電極11a、11bと圧電体11cとからなる第1圧電素子11と、第1圧電素子11に対向して配設され、平板電極12a、12bと圧電体12cとからなる第2圧電素子12と、第1圧電素子11と第2圧電素子12との間に挟持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体2と、第1圧電素子11に所定周波数の信号を印加する信号印加部21と、第1圧電素子11から接近する測定対象物20の方向に発振された信号の反射信号を検知する第1の信号検知部22と、第1圧電素子11から第2圧電素子12の方向に発振された信号を検知する第2信号検知部23と、第1圧電素子11の平板電極と第2圧電素子12の平板電極12bとの間の静電容量を検知する静電容量検知部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用いて、測定対象物の接近、接触及び押圧を検知する複合センサに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来を迎え、独居老人等が増えつつある中で、在宅医療を支援するために、ヒトの心拍、呼吸、体動等の動作を非拘束でセンシング又はモニタリングする技術の確立が重要であり、様々な研究・開発がなされている。現在、光ファイバーやマイクロフォンセンサ、圧電素子、感圧ゴムなどを用いた様々な圧力(分布)センサが開発され、ベッド内でのヒトのモニタリング(例えば、非特許文献1−3を参照)や椅子の座位姿勢検出システム(例えば、非特許文献4を参照)の研究が進められている。また、タッチパネルやゲーム等のタッチセンサを広く普及しており、より高精度なセンシング技術の開発が望まれている。
【0003】
このようなこのような状況の中で、圧力(分布)測定に加え、測定対象物の判別、接近、温度等の複数の情報を複合的にセンシングすることで、より高精度に測定を行う技術が望まれている。
【0004】
また、超音波や電圧を利用して押圧力や厚みを測定する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、第1、第2超音波センサが第1、第2板材を所定押付け力で押付けた状態で、第1、第2板材に対する超音波の伝播時間の計測、並びに第1、第2延長部間に介在された歪ゲージにかかる押圧力に対応するホイートストンブリッジ回路の電圧計の出力電圧を計測し、超音波の伝播時間及び伝播速度に基づいて板厚を算出し、出力電圧に基づいて両部材全幅を求め板隙を算出するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】渡辺春美、渡辺嘉二郎,「睡眠中の心拍、呼吸、イビキ、体動および咳の無侵襲計測」,計測自動制御学会論文集,Vol.35,No.8 pp.1012-1019(1999)
【非特許文献2】渡邊崇士、渡辺嘉二郎,「就寝時無拘束計測生体データによる睡眠段階の推定」,計測自動制御学会論文集,Vol.38,No.7 pp.581-589(2002)
【非特許文献3】松原篤、宇吹貴智、田中正吾,「エアー枕封入音響センサによる心拍、呼吸の無拘束無侵襲計測」,計測自動制御学会論文集,Vol.40,No.6 pp.403-407(2004)
【非特許文献4】瀬戸学雄、信太克規,「対象物検知用平面型静電容量センサの特性解析」,電学論C,Vol.123,No.5, pp.913-918(2003)
【特許文献1】特開2008−107204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の技術と比較してより高精度なセンシング技術が望まれている。特許文献1に示す技術は、電圧と超音波を利用して押圧力や厚みを測定することができるが、測定対象物の接近、材質、熱等を検知することはできないという課題を有する。また、電圧により押圧力を計測するものであるが、板材間の静電容量と超音波とから複合的に押圧力等を求めるものではないため、必ずしも高精度にセンシングを行うことができないという課題を有する。
【0007】
本発明は、複数の情報から複合的にセンシングを行うことで高精度の測定を実現することができる複合センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る複合センサは、平板電極と圧電体とからなる第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子に対向して配設され、平板電極と圧電体とからなる第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子との間に挟持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体と、前記第1の圧電素子に所定周波数の信号を印加する信号印加手段と、前記第1の圧電素子から接近する前記測定対象物の方向に発振された信号の反射信号を、前記第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第1の信号検知手段と、前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子の方向に発振された信号を、前記第2の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第2の信号検知手段と、前記第1の圧電素子の平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知する静電容量検知手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物が第1の圧電素子に接近している場合には、平板電極間の静電容量の変化を検知することで測定対象物の接近を測定することができると共に、第1の圧電素子から発振された信号の反射信号を第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知することで、接近距離を測定することができるという効果を奏する。また、測定対象物が第1の圧電素子に接触している場合には、平板電極間の静電容量を検知することで測定対象物の押圧力を測定することができると共に、第1の圧電素子から発振された信号を第2の圧電素子にて電気信号に変換して検知することで、平板電極間の距離を測定することができ、測定対象物の接近、接触、押圧力の状態をより高精度に測定することができるという効果を奏する。
【0010】
(2)本発明に係る複合センサは、前記第1の圧電素子が、対向して配設される1対の前記平板電極で前記圧電体を挟んで形成され、一方の前記平板電極が前記誘電体に接触して配設され、他方の前記平板電極が測定対象物が接近及び接触されるように配設されており、前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接近している場合に、前記第1の圧電素子における1対の平板電極のうち、前記誘電体側に配設されている平板電極がグランドに接続され、前記静電容量検知手段が、前記第1の圧電素子の測定対象物側に配設されている平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知し、前記第1の信号検知手段が、前記第1の圧電素子から前記測定対象物側に発振された信号の反射信号を受信して検知し、前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触している場合に、前記第1の圧電素子における1対の平板電極のうち、前記測定対象物側に配設されている平板電極がグランドに接続され、前記静電容量検知手段が、前記第1の圧電素子の誘電体側に配設されている平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知し、前記第2の信号検知手段が、前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子側に発振された信号を検知するものである。
【0011】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、第1の圧電素子が、一方の平板電極が誘電体に接触して配設され、他方の平板電極が測定対象物に接近及び接触されるように配設されて形成され、測定対象物が第1の圧電素子に接近している場合に、誘電体側に配設されている平板電極がグランドに接続され、測定対象物が第1の圧電素子に接触している場合に、測定対象物側に配設されている平板電極がグランドに接続されるため、測定対象物の接近と押圧とをそれぞれ正確に測定することができ、高精度なセンサを実現することができるという効果を奏する。
【0012】
(3)本発明に係る複合センサは、前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触したかどうかを検知する接触検知手段を備え、前記第1の圧電素子の検知に応じて、当該第1の
圧電素子における平板電極とグランドとの接続を切り替える接続切替手段を備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物が第1の圧電素子に接触したかどうかを検知し、その検知結果に応じて、平板電極とグランドとの接続を切り替えるため、測定対象物の接触/非接触状態を確実に検知し、グランドとの接続を切り替えて高精度なセンサを実現することができるという効果を奏する。
【0014】
(4)本発明に係る複合センサは、前記接触検知手段が、前記第1の信号検知手段が検知した前記測定対象物の振動、前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子までの信号の伝播時間及び/又は前記測定対象物の温度による電圧変化に基づいて、前記測定対象物の接触を検知するものである。
【0015】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物の振動、第1の圧電素子から第2の圧電素子までの信号の伝播時間及び/又は測定対象物の温度による電圧変化に基づいて、測定対象物の接触を検知するため、測定対象物の接触を高精度で且つ複合的に検知することができるという効果を奏する。
【0016】
(5)本発明に係る複合センサは、前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触している場合に、前記測定対象物から前記第1の圧電素子への圧力が所定の基準値以下であれば、前記第2の信号検知手段が検知した信号に基づいて前記圧力を算出し、前記測定対象物から前記第1の圧電素子への圧力が所定の基準値を超えていれば、前記静電容量検知手段が検知した静電容量に基づいて前記圧力を算出するものである。
【0017】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物から第1の圧電素子への圧力が所定の基準値以下であれば、第2の信号検知手段が検知した信号に基づいて押圧力を算出し、測定対象物から第1の圧電素子への圧力が所定の基準値を超えていれば、静電容量検知手段が検知した静電容量に基づいて押圧力を算出するため、押圧力が小さい(第1の圧電素子と第2の圧電素子との間の距離が長い)場合は、変化が大きい発振信号に基づいて押圧力を算出し、押圧力が大きい(第1の圧電素子と第2の圧電素子との間の距離が短い)場合は、変化が大きい静電容量に基づいて押圧力を算出し、発振信号と静電容量を用いて、複合的により高精度な測定を行うことができるという効果を奏する。
【0018】
(6)本発明に係る複合センサは、平板電極と圧電体とからなり、測定対象物が接近及び接触する第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子に対向して配設され、少なくとも平板電極を有する対向部と、前記第1の圧電素子と前記対向部との間に挟持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体と、前記第1の圧電素子に所定周波数の信号を印加する信号印加手段と、前記第1の圧電素子から前記対向部及び/又は接近する前記測定対象物の方向に発振された信号の反射信号を、前記第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第1の信号検知手段と、前記第1の圧電素子の平板電極と前記対向部の平板電極との間の静電容量を検知する静電容量検知手段とを備えるものである。
【0019】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物が第1の圧電素子に接近している場合には、平板電極間の静電容量の変化を検知することで測定対象物の接近を測定することができると共に、第1の圧電素子から発振された信号の反射信号を第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知することで、測定対象物の接近距離を測定することができるという効果を奏する。また、測定対象物が第1の圧電素子に接触している場合には、平板電極間の静電容量を検知することで測定対象物の押圧力を測定することができると共に、第1の圧電素子から発振された信号の反射信号を第1の圧電素子にて電気信号に変化して検知することで平板電極間の距離を測定することができ、測定対象物の接近、接触、
押圧力の状態を複合的に高精度に測定することができるという効果を奏する。
【0020】
(7)本発明に係る複合センサは、前記第1の信号検知手段が、前記第1の圧電素子が受けた前記測定対象物からの熱を信号として検知するものである。
【0021】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、第1の信号検知手段が、第1の圧電素子が受けた測定対象物からの熱を信号として検知するため、測定対象物の温度から、その種別を特定することができ、高性能なセンサを実現することができるという効果を奏する。
【0022】
(8)本発明に係る複合センサは、前記測定対象物の方向に対して光を照射する発光素子を備え、前記第1の信号検知手段が、前記発光素子が照射した光を前記測定対象物が吸収したことによる熱及び/又は振動を検知するものである。
【0023】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物に対して照射された光を測定対象物が吸収したことによる熱及び/又は振動を検知するため、光の情報を利用して、より複合的な測定を高精度に行うことができるという効果を奏する。すなわち、第1の圧電素子及び第2の圧電素子間の静電容量、信号の伝播速度、第1の圧電素子に付加された振動及び熱(光エネルギーによる熱も含む)の同時測定を行うことが可能となり、複合的な測定を高精度に行うことができる。
【0024】
(9)本発明に係る複合センサは、前記測定対象物の方向から照射される光を受光する受光素子を備え、前記受光素子が受光した光に関する情報に基づいて、前記測定対象物の有無を検知するものである。
【0025】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物の方向から照射される光に関する情報に基づいて、測定対象物の有無を検知するため、光の情報を利用して、より複合的な測定を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【0026】
(10)本発明に係る複合センサは、前記測定対象物の方向に対して光を照射する発光素子と、前記測定対象物の方向から照射される光を受光する受光素子とを備え、前記受光素子が、前記発光素子から照射された光の前記測定対象物からの反射光を受光して得られた情報に基づいて、前記測定対象物の有無を検知するものである。
【0027】
このように、本発明に係る複合センサにおいては、測定対象物の方向に対して光を照射する発光素子と、測定対象物の方向から照射される光を受光する受光素子とを備え、測定対象物からの反射光を受光して得られた情報に基づいて、測定対象物の有無を検知するため、光の情報を利用して、より複合的な測定を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態に係る複合センサのセンサ部を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る複合センサの機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る複合センサの原理を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る複合センサにおいて対象物が接近する場合の回路図である。
【図5】第1の実施形態に係る複合センサにおいて対象物が押圧する場合の回路図である。
【図6】第1の実施形態に係る複合センサにおいて一方の圧電素子を平板電極とした場合の図である。
【図7】第1の実施形態に係る複合センサにおいて光を検知する場合を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係る複合センサの圧電素子をマトリックス状に組合わせた場合の図である。
【図9】電気特性及び超音波特性の測定システムの概略図である。
【図10】PVDFフィルムの間隔を5mmとしたときの送信波及び受信波の一例を示す図である。
【図11】振動及び温度特性の測定システムの概略図である。
【図12】ウレタンシートの厚さに対する電気特性としての電位と超音波特性としての伝播時間を示す図である。
【図13】各押圧力における電気特性としての電位と超音波特性としての伝播時間を示す図である。
【図14】押圧力に対する電気特性としての電位と超音波特性としての伝播時間を示す図である。
【図15】スピーカにより生体情報を模擬したパルス、正弦波で発振させた場合の測定の結果を示す図である。
【図16】対象物の温度がセンサよりも高い場合、低い場合及びセンサと同じ温度の場合の測定結果を示す図である。
【図17】図16の電圧波形から得られるピーク電圧と温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0030】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る複合センサについて、図1ないし図8を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る複合センサのセンサ部を示す図、図2は、本実施形態に係る複合センサの機能ブロック図、図3は、本実施形態に係る複合センサの原理を示す図、図4は、本実施形態に係る複合センサにおいて対象物が接近する場合の回路図、図5は、本実施形態に係る複合センサにおいて対象物が押圧する場合の回路図、図6は、本実施形態に係る複合センサにおいて一方の圧電素子を平板電極とした場合の図、図7は、本実施形態に係る複合センサにおいて光を検知する場合を示す図、図8は、本実施形態に係る複合センサの圧電素子をマトリックス状に組合わせた場合の図である。
【0031】
本実施形態においては、圧力(分布)測定に加え、測定の対象となる対象物の温度などの複数情報を測定する複合センサを説明する。本実施形態に係る複合センサは、例えば、ポリエステル系の材料でラミネートされた電極を有するPVDF(PolyVinylidene DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)フィルムの圧電素子からなり、柔らかい誘電体を一対のPVDFフィルムで挟んで構成されている。物体あるいはヒトにより、複合センサに負荷がかけられたときにPVDFフィルムにより物体の振動及び温度特性を測定する。さらに、その負荷により生じる圧力をPVDFフィルム間の電気及び超音波特性を測定することにより測定する。よって、本実施形態に係る複合センサにより、物体を認識するとともに圧力(分布)を測定することが可能となる。本実施形態では、複合センサの基礎特性として、圧力変化による電気特性及び超音波特性の測定並びに振動及び温度変化検出を行うものとする。温度特性の測定については、PVDFフィルムで得られた温度変化を積分することで、温度に変換して測定することができる。また、電圧変化に対する温度の情報を予めデータベースとして取っておくことで温度情報を得ることもできる。
【0032】
図1において、複合センサ1におけるセンサ部10は、対向して配設される2つの圧電素子(第1圧電素子11、第2圧電素子12)と、第1圧電素子11及び第2圧電素子12に狭持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体2とを備える。誘電体2として、例えばゴム、ウレタン、液体等を用いることができる。第1圧電素子11及び第2圧電素子12は、対向して配設される1対の平板電極(第1圧電素子11の平板電極を第1平板電極11a、第2平板電極11bとし、第2圧電素子12の平板電極を第3平板電極12a、第4平板電極12bとする)と、第1平板電極及び第2平板電極並びに第3平板電極及び第4平板電極で狭持される圧電体(第1圧電体11c、第2圧電体12c)とを備える。
【0033】
センシングの対象となる対象物20は、第1圧電素子11の第1平板電極11a又は第2圧電素子12の第3平板電極12aに対して、接近、接触及び押圧する。センサ部10では、対象物20の接近、接触及び押圧を検知して電気信号に変換する。なお、図1のように、両側から対象物20を測定してもよいし、片側のみ(一方の圧電素子の外側の平板電極が固定物に固定されている状態)で測定を行うようにしてもよい。
【0034】
図2において、複合センサ1は、図1に示したセンサ部10と、センサ部10の第1圧電素子に所定周波数の信号を印加する信号印加部21と、センサ部10の第1圧電素子11で受信して電気信号に変換された信号を検知する第1信号検知部22と、センサ部10の第2圧電素子12で受信して電気信号に変換された信号を検知する第2信号検知部23と、第1平板電極11aと第3平板電極12aとの間の静電容量、及び、第2平板電極11bと第4平板電極12bとの間の静電容量を検知する静電容量検知部24と、第1信号検知部22、第2信号検知部23及び静電容量検知部24で検知した情報に基づいて、例えば対象物20の接近の有無、接近距離、接触の有無、押圧力及び対象物の種別等を特定するための演算を行う演算制御部25と、演算制御部25が演算した結果を出力する出力部26とを備える。
【0035】
上記の各構成を用いた複合センサ1の原理について、図3を用いて説明する。図3(A)は、静電容量による対象物20の測定(電気的特性)、図3(B)は、超音波による対象物20の測定(超音波特性)、図3(C)は、振動による対象物の測定(振動特性)、図3(D)は、熱による対象物20の測定(温度特性)を示す。なお、図3における回路の接続構成は、原理を説明するための一例として記載している。以下に説明する原理を用いることで、対象物20の押圧力を静電容量及び超音波並びに振動及び熱を同時に測定することが可能となる。なお、振動の測定に関して、特定の周波数を限定することで、対象物20を識別することができると共に、振動の特徴(例えば、一時的な振動、連続的な振動、周波数の変化等)を用いることで、対象物20を識別することが可能である。
【0036】
図3(A)では、第1圧電素子11及び第2圧電素子12間の静電容量を検知することで、対象物20の接近、接触及び押圧を検知する。対象物20が接近している場合は、第1平板電極11aと第3平板電極12aとの間の静電容量の変化を検知することで、対象物20の接近を測定する。対象物20が押圧している場合は、第2平板電極11bと第4平板電極12bとの間の静電容量を検知することで、押圧力の大きさを測定する。
【0037】
図3(B)では、第1圧電素子11から対象物20に対して発振された超音波の反射信号を第1圧電素子11で受信することで、対象物20の接近距離を測定する。また、対象物20が押圧している場合は、第1圧電素子11から第2圧電素子12に対して発振された超音波を第2圧電素子が受信して電気信号に変換することで、その伝播時間から対象物20の押圧力を測定する。静電容量及び超音波伝播時間は、第1圧電素子11と第2圧電素子12との間隔の変化に依存しているため、付加された圧力の測定が可能である。なお、第1圧電素子11、第2圧電素子12の双方におけるグランドと信号線の接続を入れ替
えても測定を行うことは可能である。
【0038】
図3(C)では、第1圧電素子11の圧電効果により、第1圧電素子に加えられた振動特性を得て、対象物20の接触や対象物20の種別を測定する。図3(D)では、第1圧電素子11の焦電効果により、第1圧電素子の温度変化による電圧の変化から、対象物20の接触や種別を測定する。これらの測定により、接触した対象物20の振動や温度変化などの情報を測定することが可能となる。
【0039】
図4及び図5に本実施形態に係る複合センサ1の回路の一例を示す。ファンクションジェネレータにより、第1圧電素子11に所定周波数の信号が印加され、フィルタリング/増幅された信号を検出装置(例えば、オシロスコープ等)に出力する。複合センサ1は、対象物20が接触しているかどうかにより、第1平板電極11aと第2平板電極11bのいずれかがグランドに接続されるように切替部(スイッチA、スイッチB)を有する。
【0040】
図4に示すように、対象物20の接近時(非接触時)には、スイッチA及びスイッチBが、それぞれIに接続した状態で測定される。すなわち、平板電極11bをグランドに接続することで、平板電極11aと平板電極12bとの間の静電容量を高感度に測定する。静電容量の変化を測定することで、対象物20の接近を測定することができる。また、同時に、第1圧電素子11からファンクションジェネレータを用いて超音波を発振し、当該発振された超音波の対象物20からの反射信号を、電気信号に変換して検知することで、第1圧電素子11から対象物20までの距離を正確に測定することができる。さらに、対象物20が熱物体であれば、対象物20が接近する際に電圧が発生するため、対象物20の接近を測定することができる。
【0041】
特に、上記のように第1圧電素子11から対象物20の方向に発振された超音波で、対象物20の距離を測定すると共に、同時に発振される第2圧電素子12の方向への超音波を第2圧電素子12が検知することで、対象物20が第1圧電素子11に接触した(押圧した)ことを超音波の伝播時間から検知することができ、対象物20の接触をより正確に測定することができる。
【0042】
したがって、超音波による伝播時間、静電容量及び熱による電圧変化を併用して測定することで、対象物20が接近しているかどうか、その接近距離を正確且つ確実に検知することが可能となる。各測定値は、演算制御部25に入力されて演算されることで、最終的に対象物20の接近の有無、接近距離等が得られる。
【0043】
一方、図5に示すように、対象物20の接触時又は押圧時には、スイッチA及びスイッチBが、それぞれIIに接続した状態で測定される。図5では、押圧した場合を示している。平板電極11aをグランドに接続することで、平板電極11bと平板電極12bとの間の静電容量を高感度に測定する。静電容量を検知することで、対象物20の押圧力に応じた誘電体2の変形による平板電極11bと平板電極12bとの間の距離の変化を測定する。そうすることで、対象物20の押圧力を測定することができる。また、同時に、第1圧電素子11からファンクションジェネレータを用いて超音波を発振し、当該発振された超音波を第2圧電素子12で電気信号に変換して検知することで、第1圧電素子11と第2圧電素子との距離を正確に測定することができる。
【0044】
したがって、超音波による伝播時間と静電容量を併用して測定することで、対象物20の押圧力を正確に検知することが可能となる。各測定値は、演算制御部25に入力されて演算されることで、最終的に対象物20の押圧力の大きさが得られる。
【0045】
図5は、対象物20が押圧した場合を示しているが、対象物20の振動や熱を感知して
、接触の有無や対象物20の種別を検知することもできる。すなわち、対象物20が振動する場合(例えば、ヒトの脈動や血流等)、その振動を第1圧電素子11が受信し電気信号に変換して検知することで、対象物20がヒトで、接触したことを測定することができる。また、対象物20が熱を発する場合(例えば、ヒトの体温等)も同様に、第1圧電素子11が熱を電気信号に変換して検知することで、対象物20がヒトで、接触したことを検知することができる。当然、ヒトが押圧した場合には、図5に示すように、その押圧力も正確に測定することが可能である。これらの値についても、各測定値が演算制御部25に入力されて演算されることで、最終的に対象物20の接触の有無、種別及び押圧力等が得られる。
【0046】
図4及び図5に示したように、対象物20が接触状態であるか非接触状態であるかによって測定の方法が異なる。すなわち、切替部のスイッチA、Bを切り替える必要がある。そこで、図2の構成において、第1信号検知部22及び静電容量検知部24からの情報に基づいて、対象物20が接触した瞬間を検知する接触検知部(図示しない)を設け、接触検知部が対象物20の接触を検知した場合に、切替部のスイッチを切り替える切替制御部(図示しない)を備える構成とすることもできる。
【0047】
なお、図5において、押圧力を測定する場合に、上述したように静電容量による測定と超音波による測定とを併用するが、それぞれの測定値が同値である場合はその値を採用し、異値である場合はそれらの平均値を採用するようにしてもよい。また、異値である場合はどちらか一方の測定値を採用するようにしてもよい。
【0048】
どちらか一方の測定値を採用する場合、対象物20の押圧力に応じて、採用する測定値を適宜選択できる構成とすることが望ましい。すなわち、実施例において詳細を後述するが、第1圧電素子11と第2圧電素子12との距離が大きい場合(押圧力が小さい場合)は、押圧力の変化に対して超音波の伝播時間の変化が明らかに大きくなるため、超音波による測定値を採用し、第1圧電素子11と第2圧電素子12との距離が小さい場合(押圧力が大きい場合)は、押圧力の変化に対して静電容量の変化が大きくなるため、静電容量による測定値を採用する。
【0049】
静電容量による測定値を採用するか超音波による測定値を採用するかの判断は、予め設定されている所定の押圧力の値を基準値として行ってもよいし、後述する図14のグラフにおける交点の押圧力を事前に測定し、その値を基準値として行ってもよい。基準値よりも小さい場合は、超音波による測定値を採用し、基準値以上の場合は、静電容量による測定値を採用する。
【0050】
上記複合センサ1は、1対の圧電素子(第1圧電素子11と第2圧電素子12)で誘電体2を狭持する構成であるが、図6に示すように、第2圧電素子12に代えて平板電極13とする構成であってもよい。この場合、上述した複合センサと異なるのは、第1圧電素子11が発振した超音波を、第2圧電素子12が受信して対象物20の押圧力を検知するのではなく、第1圧電素子が平板電極13で反射した反射信号を受信して対象物20の押圧力を検知する。また、平板電極13はオシロスコープ等の検出装置を通してグランドに接続された状態となっている。なお、平板電極13は2つの電極で構成されてもよく、その場合は、内側の電極が検出装置、外側の電極がグランドに接続される。
【0051】
また、本実施形態に係る複合センサは、光の情報を取得することも可能となる。光の情報を取得する場合の原理を図7に示す。図7に示すように、第1圧電素子11、第2圧電素子12及び誘電体2を透明又は光が通過する物体にすることで、対象物20の光に関する情報を得ることができる。図7(A)は、センサ部10の下部に受光素子(PD)を積層化することでセンサ部10の上部からの光を受光することでき、対象物20がセンサ部
20の上部にあれば、光が遮断され受光量から対象物20の有無を検出することができる。また、図7(B)に示すように、可視以外の光を用い、センサ部10の下部に発光素子(LED)を用いることで、対象物20からの反射光を受光素子で受光し、対象物20の有無を検出可能することができる。さらに、図7(C)に示すように、対象物20が光を吸収することで生じる熱や振動をセンサ部10で検知することで、対象物20の情報を得ることが可能である。
【0052】
さらに、本実施形態に係る複合センサは、図8に示すように、縦方向に延出した複数の第1圧電素子11を平行に併設し、横方向に延出した複数の第2圧電素子12を平行に併設し、それぞれの圧電素子をマトリックス状に交差させた平面センサとすることもできる。図8(B)は図8(A)における矢印aの矢視図である。このような構成にすることで、対象物20の測定を面で行うことができ、押圧位置を正確に検出することができる。また、対象物20が接近している場合に、第1平板電極11aと第4平板電極12bとの間の静電容量の変化を正確に把握することができ、対象物20の種別、接近距離を高精度に測定することができる。
【0053】
さらにまた、図1に示す複合センサの場合、第1圧電素子11側で対象物20の接近、接触、押圧を測定してもよいし、第2の圧電素子12側で対象物20の接近、接触、押圧を測定してもよい。すなわち、信号印加部21を第2圧電素子12にも接続させることで、第1圧電素子11及び第2圧電素子12の双方で測定が可能となる。このとき、対象物20が、第1圧電素子11に接近しているか第2圧電素子12に接近しているかを判定し、その判定結果に応じて、信号の印加や検知の処理を制御するようにしてもよい。
【0054】
さらにまた、図5に示す複合センサの処理について、対象物20の押圧力を測定する際に、対象物20が接触している第1圧電素子11から超音波を発振するのではなく、対象物20が接触していない第2圧電素子12から超音波を発振し、第1圧電素子11で受信した超音波を電気信号に変換するようにしてもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、上記複合センサに関する実験結果を示す。
【0056】
(1)実験方法
(1.1 複合センサ)複合センサは、図1に示す複合センサと同じ構造を有し、13mm×25mmの一対のPVDFフィルムで40mm×20mm×5mmのウレタンシート(硬度0)を挟んだ構造である。複合センサに対して物体により負荷がかけられたときの上部PVDFフィルム(第1圧電素子11に相当)で振動により生じる電圧と温度変化により生じる電圧とをそれぞれ測定した。また、上部のPVDFフィルム及び下部のPVDFフィルム(第2圧電素子12に相当)間の電気特性としての静電容量と、超音波特性としての伝播時間とを測定した。それらの測定値から、物体の振動、温度情報及び押圧力を測定した。
【0057】
(1.2 電気特性及び超音波特性の測定)図9に、電気特性及び超音波特性の測定システムの概略図を示す。電気特性に関して、ファンクションジェネレータで電圧10V、周波数800kHzの1波の正弦波を上部PVDFフィルムの内側電極(平板電極11bに相当)に送信し、下部PVDFフィルムの内側電極(平板電極12bに相当)に接続したディジタルストレージスコープに生じる電圧波形を測定した。超音波特性に関して、電気特性と同様に、ファンクションジェネレータにより上部PVDFフィルムの内側電極に電圧10V、周波数800kHzの1波の正弦波からなるバースト波を送信し、下部PVDFフィルムの外側電極(平板電極12aに相当)で受信された透過波をディジタルストレージスコープに取り込み、それらの波形から伝播時間を得た。図10にPVDFフィル
ムの間隔を5mmとしたときの送信波及び受信波の一例を示す。本実験では、受信波形の2つ目のピークまでの時間を伝播時間とした。よって、電気特性と超音波特性の同時測定が可能である。実験として、PVDFフィルム間のウレタンシートの厚さを1mmから5mmまで1mm間隔で変化させたときの厚さに対する電気特性としての電圧と超音波特性としての伝播時間の測定を行った。また、押圧力を0kgから50kgまで変化させた場合の電気特定としての電圧と超音波特性としての伝播時間の測定を行った。
【0058】
(1.3 振動特性及び温度特性の測定)図11に、振動及び温度特性の測定システムの概略図を示す。振動特性に関して、上部PVDFフィルム上に配置したスピーカにファンクションジェネレータより正弦波を与えることで振動させ、それにより生じる電圧波形を上部PVDFフィルムで受信した。受信した電圧をローパスフィルタ(カットオフ周波数30Hz)、増幅器(40dB)を通し、ディジタルストレージスコープに取り込んだ。実験として、2種類の振動波形を与えた場合の電圧波形の測定を行った。温度特性に関して、スピーカを複数の温度からなる溶液で満たされたビーカに置き換え、上部PVDFフィルムに生じる電圧波形をディジタルストレージスコープに取り込んだ。実験として溶液の温度を16度、19度、27度、34度、42度と設定したときにPVDFフィルムに生じる電圧波形を測定した。なお、このときの室温は27度で一定にして実験を行った。
【0059】
(2)実験結果
(2.1 電気特性及び超音波特性の測定結果)図12に、ウレタンシートの厚さに対する電気特性としての電位と超音波特性としての伝播時間を示す。図12より、PVDFフィルム間の間隔が狭くなるにつれ、電気特性としての電圧は大きくなり、超音波特性としての伝播時間は小さくなることがわかる。また、間隔に対する電気特性と超音波特性の変化はそれぞれ異なっていることがわかる。これらの結果より、電気特性及び超音波特性の測定によりセンサにかかる圧力の測定が可能であり、両方の測定値を用いることで測定能力の向上を図ることが可能である。
【0060】
図13に、各押圧力における電気特性としての電位(図13(A))と超音波特性としての伝播時間(図13(B))を示す。図13より、押圧力が大きくなるにつれ、電気特性としての電圧は大きくなり、超音波特性としての伝播時間は小さくなることがわかる。また、図14に、押圧力に対する電気特性としての電位と超音波特性としての伝播時間を示す。図14より、押圧力に対する電気特性と超音波特性の変化はそれぞれ異なっていることがわかる。特に、押圧力が小さい場合(0kg〜15kg程度)は超音波特性の変化が大きく、押圧力が大きい場合(15kg〜)は電気特性の変化が大きくなっている。これらの結果より、本実験の場合は、例えば15kg程度を基準値として、押圧力が基準値より小さい場合に超音波による測定値を採用し、押圧力が基準値より大きい場合に静電容量による測定値を採用することで、測定能力の向上を図ることが可能である。
【0061】
(2.2 振動特性及び温度特性の測定結果)図15に、スピーカにより生体情報を模擬した周波数10Hz、1波のパルスを0.56秒間隔で発振させた場合(図15(B))と周波数1Hz、振幅0.7Vの正弦波で発振させた場合(図15(A))の測定の結果をそれぞれ示す。図15の結果から、正弦波及びパルス波のどちらの場合においても本発明に係る複合センサにより振動の検出が可能であった。
【0062】
また、図16に、対象物の温度がセンサよりも約15度高い場合(図16(A))、約11度低い場合(図16(B))及びセンサと同じ温度の場合(図16(C))の測定結果を示す。図16の結果から、センサの温度、すなわち環境温度と対象物の温度に温度差があれば、PVDFフィルムに電圧が生じていることがわかる。図17に、図16の電圧波形から得られるピーク電圧と温度との関係を示す。図17の結果から、測定電圧により
対象の温度測定が可能であることがわかる。
【0063】
(3)考察
以上の結果から、本発明に係る複合センサにより、電気及び超音波特性の同時測定から圧力測定が可能であり、上部PVDFフィルムの電圧測定から対象の温度及び振動特性の測定が可能であることが明らかである。本発明に係る複合センサにより対象物の圧力とその温度や振動などの情報を得るために、以下のように測定を行ことができる。まず、対象物が接触したときに生じる電圧を検出し、その電圧をトリガとして、上部PVDFフィルムで振動情報と温度情報の測定を行う。両方の電圧が混在している場合は、フィルタ処理を行うことで振動と温度情報を分離する。また、上部PVDFフィルムに電気特性と超音波特性の測定を行うために、PVDFフィルムに任意の交流信号を送信することで電気及び超音波特性の同時測定が可能であり、圧力測定が可能となる。よって、対象の振動及び温度情報と圧力の同時測定が可能になる。当然、上記実施の形態で説明したように、対象物が接近している場合も電気及び超音波特性の同時測定が可能である。
【0064】
本実施例では、基礎特性として、一対のPVDFフィルムの実験を行ったが、図8に示すように、PVDFフィルムの組み合わせで測定することで、物体の振動及び温度分布を含めた圧力分布の測定が可能となる。また、上部の複数のPVDFフィルムにより物体の超音波及び電気特性の測定が可能であるゆえ、測定能力の向上を測ることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 複合センサ
2 誘電体
10 センサ部
11 第1圧電素子
11a 第1平板電極
11b 第2平板電極
11c 第1圧電体
12 第2圧電素子
12a 第3平板電極
12b 第4平板電極
12c 第2圧電体
20 対象物
21 信号印加部
22 第1信号検知部
23 第2信号検知部
24 静電容量検知部
25 演算制御部
26 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板電極と圧電体とからなる第1の圧電素子と、
前記第1の圧電素子に対向して配設され、平板電極と圧電体とからなる第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子との間に挟持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体と、
前記第1の圧電素子に所定周波数の信号を印加する信号印加手段と、
前記第1の圧電素子から接近する前記測定対象物の方向に発振された信号の反射信号を、前記第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第1の信号検知手段と、
前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子の方向に発振された信号を、前記第2の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第2の信号検知手段と、
前記第1の圧電素子の平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知する静電容量検知手段とを備えることを特徴とする複合センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の複合センサにおいて、
前記第1の圧電素子が、対向して配設される1対の前記平板電極で前記圧電体を挟んで形成され、一方の前記平板電極が前記誘電体に接触して配設され、他方の前記平板電極が測定対象物が接近及び接触されるように配設されており、
前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接近している場合に、前記第1の圧電素子における1対の平板電極のうち、前記誘電体側に配設されている平板電極がグランドに接続され、前記静電容量検知手段が、前記第1の圧電素子の測定対象物側に配設されている平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知し、前記第1の信号検知手段が、前記第1の圧電素子から前記測定対象物側に発振された信号の反射信号を受信して検知し、
前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触している場合に、前記第1の圧電素子における1対の平板電極のうち、前記測定対象物側に配設されている平板電極がグランドに接続され、前記静電容量検知手段が、前記第1の圧電素子の誘電体側に配設されている平板電極と前記第2の圧電素子の平板電極との間の静電容量を検知し、前記第2の信号検知手段が、前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子側に発振された信号を検知することを特徴とする複合センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の複合センサにおいて、
前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触したかどうかを検知する接触検知手段を備え、
前記第1の圧電素子の検知に応じて、当該第1の圧電素子における平板電極とグランドとの接続を切り替える接続切替手段を備えることを特徴とする複合センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の複合センサにおいて、
前記接触検知手段が、前記第1の信号検知手段が検知した前記測定対象物の振動、前記第1の圧電素子から前記第2の圧電素子までの信号の伝播時間及び/又は前記測定対象物の温度による電圧変化に基づいて、前記測定対象物の接触を検知することを特徴とする複合センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の複合センサにおいて、
前記測定対象物が前記第1の圧電素子に接触している場合に、前記測定対象物から前記第1の圧電素子への押圧力が所定の基準値以下であれば、前記第2の信号検知手段が検知した信号に基づいて前記押圧力を算出し、前記測定対象物から前記第1の圧電素子への押圧力が所定の基準値を超えていれば、前記静電容量検知手段が検知した静電容量に基づいて前記押圧力を算出する複合センサ。
【請求項6】
平板電極と圧電体とからなり、測定対象物が接近及び接触する第1の圧電素子と、
前記第1の圧電素子に対向して配設され、少なくとも平板電極を有する対向部と、
前記第1の圧電素子と前記対向部との間に挟持され、外力に対して可塑性を有し、密度が略均一である誘電体と、
前記第1の圧電素子に所定周波数の信号を印加する信号印加手段と、
前記第1の圧電素子から前記対向部及び/又は接近する前記測定対象物の方向に発振された信号の反射信号を、前記第1の圧電素子にて電気信号に変換して検知する第1の信号検知手段と、
前記第1の圧電素子の平板電極と前記対向部の平板電極との間の静電容量を検知する静電容量検知手段とを備えることを特徴とする複合センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の複合センサにおいて、
前記第1の信号検知手段が、前記第1の圧電素子が受けた前記測定対象物からの熱を信号として検知することを特徴とする複合センサ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の複合センサにおいて、
前記測定対象物の方向に対して光を照射する発光素子を備え、
前記第1の信号検知手段が、前記発光素子が照射した光を前記測定対象物が吸収したことによる熱及び/又は振動を検知することを特徴とする複合センサ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の複合センサにおいて、
前記測定対象物の方向から照射される光を受光する受光素子を備え、
前記受光素子が受光した光に関する情報に基づいて、前記測定対象物の有無を検知することを特徴とする複合センサ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の複合センサにおいて、
前記測定対象物の方向に対して光を照射する発光素子と、
前記測定対象物の方向から照射される光を受光する受光素子とを備え、
前記受光素子が、前記発光素子から照射された光の前記測定対象物からの反射光を受光して得られた情報に基づいて、前記測定対象物の有無を検知することを特徴とする複合センサ。

【図2】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−242210(P2012−242210A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111403(P2011−111403)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月18日 社団法人電気学会発行の「電気学会研究会資料」に発表
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)