説明

複合チューブの製造方法及び複合チューブ

【課題】複合チューブの内壁の摩擦抵抗が小さく、内層のフッ素樹脂層と外層のポリイミド層が強固に接着し、チューブを構成する材料が人体に安全で、しかもフッ素樹脂層とポリイミド樹脂層が1回で成形でき、製造コストの低い複合チューブとその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属芯線の表面に、フッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液とを重ねて塗布する重ね塗り工程と、前記フッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液から溶媒を除去する工程と、前記ポリイミド前駆体溶液をイミド化すると共に前記フッ素樹脂液を被膜化するイミド化焼成工程と、前記金属芯線と複合チューブを分離する工程とを供える複合チューブの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内層がフッ素樹脂からなり、外層がポリイミド樹脂からなる複合チューブに関する。詳しくは内層の摩擦抵抗がフッ素樹脂の特性に依存して極めて低く、外層がポリイミド樹脂の優れた機械的特性を有し、且つ、フッ素樹脂内層とポリイミド外層が強固に融着して一体化した、カテーテルなどに好適な複合チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は機械的、化学的、電気的、及び耐熱性などの優れた特性を有しフィルムやチューブなどの成形品、あるいはポリイミド前駆体溶液や塗料などの形態で市販されており、これらのポリイミド樹脂はフレキシブルプリント基板や、OA機器の転写、定着、感光などのプロセスで使用される管状物、また、耐熱電線用絶縁材料など種々の用途に使用され、特に内径が3mm以下の比較的細いチューブは、カテーテルや内視鏡などの医療用チューブ、あるいは電気絶縁チューブ等の用途として期待されている。
【0003】
ここで、ポリイミドチューブの1つの用途である医療用チューブについて説明する。近年、医療技術の高度な進歩に伴い、その治療方法も従来の切開手術方法に代わり、患者の体膣内に直接、カテーテル等の医療器具を挿入して治療を行うカテーテル治療方法や、胃カメラ、あるいはマイクロカメラなどの画像診断装置を用いて治療する内視鏡診断方法が主流になってきている。これらの治療方法は施術時の患者の肉体的、あるいは精神的な苦痛や不安を軽減し、且つ、施術による体力の消耗も最小限に抑え、疾病や患部の治療を行おうとするものである。ポリイミド医療用チューブは、このような新しい医療技術や医療現場において、カテーテルや内視鏡チューブあるいは、血液や医薬の搬送チューブなどの用途で使用されている。
【0004】
カテーテル治療法では、体内で複雑に配置されている血管の内部に、ガイドワイヤーの誘導により、カテーテルを挿入して治療がなされる。そのためカテーテルには、血管の中に押し込みやすい特性(プッシャビリティ)、あるいはカテーテルの基端部で操作された回転力や動的操作がカテーテルの先端部まで確実に伝達される特性(トルク伝達性)、さらに、カテーテルの先端で血管を損傷する事故を防止するために、耐キンク性や先端部の柔軟性などの特性が要求される。また、患者の苦痛や不安を軽減するためには可能な限り小径で、なお、且つ、薄壁(厚みが薄い)で内膣が大きいことや他の治療器具を通過させるための内腔径の形状維持が望まれる。そのため、カテーテルの外周には必要に応じて操作性、可撓性、機械的特性等を持つことが望まれる。
【0005】
更に、これらのカテーテルは前記トルク伝達性や、プッシャビリティなどの機械的な特性に加えてカテーテル内外面の低摩擦性も要求される。すなわちカテーテル治療方法では、治療用カテーテルを疾患部まで導くガイディングカテーテル内に治療用カテーテルが挿入され、ガイドワイヤーによって疾患部まで誘導される。このような操作において、治療用カテーテルの外表面はガイディングカテーテルの内壁に接触し、また、内表面はガイドワイヤーの外面に接触することになるため、治療用カテーテルの内外表面の低摩擦性も重要な特性の1つである。
【0006】
以上に述べたようにカテーテルに用いる医療用チューブの特性は、チューブ内外面の低摩擦化、及び機械的特性の安定化の観点から、医療用チューブの内側はフッ素樹脂、外側がポリイミド樹脂等の多層構造のチューブが開発され使用されている。
【0007】
上記のような特性を満たす医療用チューブとして特許文献1では、銀メッキ軟銅線の外面にフッ素樹脂ディスパージョンをコーティングし、固化してフッ素樹脂被膜を形成した後、前記フッ素樹脂被膜表面を、化学エッチング処理し、さらに、化学エッチングしたフッ素樹脂被膜表面にポリイミドワニスをコーティングし固化し、次いで前記銀メッキ軟銅線を引き伸ばし縮径して医療用チューブを得る方法が開示されている。
【0008】
一方、本出願人は、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを含む混合成分が加熱硬化された医療用チューブであって、前記フッ素樹脂は前記チューブの内面又は内外面に溶融して析出し、フッ素樹脂析出面は低摩擦抵抗面に形成されている医療用チューブを特許文献2で提案している。
【0009】
さらに、本出願人は、フッ素樹脂からなる内層と、該内層の外面にポリイミド樹脂とフッ素樹脂の混合物からなる外層を有する医療用チューブであって、前記外層中のフッ素樹脂の一部は、該外層の内側に溶融して析出し該析出層は、前記フッ素樹脂からなる内層と、融着一体化している医療用チューブを特許文献3で提案している。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の医療用チューブの製造方法では、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層間の接着力を確保するために、製造工程中で、ナトリウム−ナフタレン錯体などの溶液を用い、フッ素樹脂層表面を化学的な方法でエッチング処理して、ポリイミド樹脂層と接着する必要があり、これらの表面処理は製造工程が繁雑になるばかりでなく、ナトリウム−ナフタレン錯体などによる化学エッチングは、使用する薬品の危険性も高く、また、人体内で使用するためには安全性に対しても問題があった。
【0011】
さらに、従来の製造方法においては、内層となるフッ素樹脂層を所定の厚みに形成するためには金属芯線の表面にフッ素樹脂分散液の塗布及び加熱焼成を繰り返して行わなければならなく、製造方法が煩雑でコストが高くなる問題点があり、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層の接着力、及び人体に対して安全性が高く、且つ、低いコストで製造できる複合チューブの開発が所望されていた。
【特許文献1】特開2003−340946号公報
【特許文献2】特開2005−205183号公報
【特許文献3】特開2007−195959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、複合チューブの内壁の摩擦抵抗が小さく、内層のフッ素樹脂層と外層のポリイミド樹脂層が強固に接着し、チューブを構成する材料が人体に安全で、しかもフッ素樹脂層とポリイミド樹脂層が1回で成形でき、製造コストの低い複合チューブとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、金属芯線の外面に内層となるフッ素樹脂分散液と外層となるポリイミド前駆体溶液を液状で重ねて同時に塗布し、その後、溶媒除去、及びイミド転化・焼成処理することによって、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層の境界面にフッ素樹脂とポリイミド樹脂の混在した層が形成され、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層が強固に接着できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、本発明の複合チューブの製造方法に係る発明であって、金属芯線の表面に、フッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液とを重ねて塗布する重ね塗り工程と、前記フッ素樹脂液とポリイミド前駆体溶液から溶媒を除去する工程と、前記ポリイミド前駆体溶液をイミド化すると共に前記フッ素樹脂液を被膜化するイミド化焼成工程と、前記金属芯線と複合チューブを分離する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
次に、請求項2の発明は、請求項1に記載された複合チューブの製造方法において、前記重ね塗り工程では、前記金属芯線と直接、接する面にフッ素樹脂分散液が塗布され、該フッ素樹脂分散液の外側にポリイミド前駆体溶液が重ね塗りされることを特徴とする。
【0016】
次に、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された複合チューブの製造方法において、前記重ね塗り工程は、開口を有する第1円筒壁と、開口を有し軸が前記第1円筒壁の軸に沿うように前記第1円筒壁の上側に配置される第2円筒壁と、前記フッ素樹脂分散液を前記第1円筒壁の開口に配送する第1配送部と、前記ポリイミド前駆体溶液を前記第2円筒壁の開口に配送する第2配送部とを備える塗膜成形装置に前記フッ素樹脂分散液およびポリイミド前駆体溶液を供給されながら前記フッ素樹脂分散液と前記ポリイミド前駆体溶液とが前記金属芯線に重ねて塗布されることを特徴とする。
【0017】
次に、請求項4の発明は、請求項1から3に記載された複合チューブの製造方法において、前記フッ素樹脂分散液は、(a1)前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する樹脂粒子(以下「揮散等樹脂粒子」という)及び(a2)前記フッ素樹脂粒子100重量部に対して5重量部以上の不揮発分を含む(A)揮散等樹脂粒子分散液と、(B)チキソトロピー性付与剤と、(C)有機溶媒とをさらに含有することを特徴とする。
【0018】
次に、請求項5の発明は、請求項4に記載された複合チューブの製造方法において、前記チキソトロピー性付与剤は、水膨潤性または水溶性アクリル系樹脂粒子であることを特徴とする。
【0019】
次に、請求項6の発明は、請求項5に記載された複合チューブの製造方法において、水膨潤性または水溶性アクリル系樹脂粒子は、水膨潤性または水溶性架橋型アクリル系樹脂粒子であることを特徴とする。
【0020】
次に、請求項7の発明は、請求項4から6に記載された複合チューブの製造方法において、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
【0021】
次に、請求項8の発明は、請求項4から7に記載された複合チューブの製造方法において、前記ポリイミド前駆体溶液がフッ素樹脂粒子(b)を含有することを特徴とする。
【0022】
次に、請求項9の発明は、請求項8に記載された複合チューブの製造方法において、前記ポリイミド前駆体溶液の固形分に対してフッ素樹脂粒子(b)の含有量が、3重量%以上50重量%以下であることを特徴とする。
【0023】
次に、請求項10の発明は、本発明の複合チューブに係る発明であって、フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層と前記フッ素樹脂層と連続するフッ素樹脂層と、前記ポリイミド樹脂層とが混在する混在層とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複合チューブは、内層が化学的に最も安定なフッ素樹脂であるため人体に対して安全で、離型性に優れ、内壁(複合チューブの内面)の摩擦抵抗が極めて低い複合チューブを提供できる。また、外層には機械的特性に優れたポリイミド樹脂を用いた構成であるため、外径を細く、内径の大きい構造の複合チューブを提供できる。さらにポリイミド前駆体溶液とフッ素樹脂分散液を金属芯線の外面に同時に液体の状態で塗布することによって、ポリイミド樹脂とフッ素樹脂の混在層が形成され、内層と外層が強固に接着し一体化した信頼性の高い複合チューブを提供できる。また、前記ポリイミド前駆体溶液中にフッ素樹脂粒子(b)を分散させたフッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液を外層材料として塗布することによって、内層と外層が強固に接着され、さらに、フッ素樹脂混合ポリイミド樹脂外層の外面(複合チューブの最外層)にはポリイミド樹脂中に混合したフッ素樹脂が溶融して析出するため、チューブの内外面が摩擦抵抗の低い特性を持つ複合チューブを提供できる。次に、本発明の製造方法によれば、金属芯線の外面にフッ素樹脂分散液を内層として塗布し、その外面にポリイミド前駆体溶液又は、フッ素樹脂粒子(b)を混合したフッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液をそれぞれ液体の状態で重ねて塗布することにより塗布工程が簡略化でき、従来の複合チューブに比べ、低コストで精度の高い複合チューブの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1、図2は、本発明の複合チューブ4及び10の1例を示す模式的断面図である。本発明の複合チューブ4は、フッ素樹脂からなる内層1と、ポリイミド樹脂からなる外層2と、前記フッ素樹脂層と連続したフッ素樹脂層と前記ポリイミド樹脂層と連続したポリイミド樹脂層からなる混在層3を有する多層構造であって、フッ素樹脂からなる内層1とポリイミド樹脂からなる外層2とが混在層3を介して一体化している。
【0026】
また、本発明の実施の形態に係る図2の複合チューブ10は、フッ素樹脂からなる内層1と、フッ素樹脂粒子(b)が混合されたフッ素樹脂混合ポリイミド樹脂外層11と内層1、外層11の個々の樹脂からなる混在層12、フッ素混合ポリイミド樹脂外層の表面(チューブの最外層)に溶融して析出しているフッ素樹脂粒子(b)13から構成されている。複合チューブ10の構成であると外層11となるポリイミド樹脂にフッ素樹脂が含まれることによって、混在層12において、更に内層1と外層11が強固に接着し、また、フッ素樹脂混合ポリイミド樹脂外層11の表面に溶融して析出したフッ素樹脂(b)層13によってチューブの外表面も低い摩擦抵抗を有する複合チューブを製造できる。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係る複合チューブ4、10は、図3に示す複合チューブ製造装置50を用いて製造できる。また、前記複合チューブ製造装置では成形ダイスのサイズを変更することにより各層の被膜厚みを自由に選択することができ多種多様の複合チューブを製造できる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る複合チューブにおいて、フッ素樹脂分散液には、フッ素樹脂とフッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する揮散等樹脂粒子と、チキソトロピー付与剤と、有機溶媒とを含有されている。
【0029】
前記フッ素樹脂分散液に含まれるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。本発明において、より好ましいフッ素樹脂はPTFE、PFA、FEPである。これらのフッ素樹脂は、化学的に不活性であり、耐熱性が高く、医療用材料として安全で信頼性が高い材料だからである。
【0030】
次に、前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する揮散等樹脂粒子は、フッ素樹脂分散液を塗布乾燥後焼成するとき、フッ素樹脂への結着(バインダー)効果を維持しながら徐々に分解して、収縮によるクラックを防止する働きをするためである。したがって、前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する揮散等樹脂粒子は、焼成が完了するまでに、完全に分解して揮発することが好ましい。完全に分解揮発しないと、フッ素樹脂被膜にクラックやピンホール欠陥を発生させたり、被膜を着色させたりするからである。
【0031】
また、前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する揮散等樹脂粒子の平均粒子径は、前記フッ素樹脂の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
【0032】
前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する揮散等樹脂粒子は、例えば、アクリル系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子などが挙げられる。また、これら混合物を用いてもよい。これら樹脂の分散液は水性であってもよい。なお、本発明において、「アクリル系樹脂」、「ウレタン系樹脂」とは、それぞれ、「カルボキシビニルポリマー」、「ウレタン結合を含むポリマー」を示す。
【0033】
前記のアクリル系樹脂粒子は、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを乳化、縣濁重合などの方法で重合製造した水性分散液が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を示す。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル系モノマーを共重合してもよいし、スチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニルなどと共重合してもよい。
【0034】
本発明に用いることのできるウレタン系樹脂粒子は、例えば、ウレタンの原料であるジイソシアネートとポリオールを乳化、縣濁重合などの方法で重合製造した樹脂粒子あるいは、水中に強制分散させた樹脂粒子が挙げられる。
【0035】
ジイソシアネートは、芳香族、脂肪族、脂環族に大別され、例えば、芳香族ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI、ノルボルネンジイソシアネートなどが挙げられる。架橋等を目的として、トリイソシアネートを用いてもよい。
【0036】
ポリオールは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールに大別され、例えば、ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。ポリエステルジオールとしては、グリコールと二塩基酸を縮合重合したものが挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。また、二塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、フタル酸などが挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、グリコールとカーボネートを反応させたものが挙げられる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0037】
第3成分として、適宜、鎖延長剤や架橋剤として、短鎖ジオールや、トリオール、多価アルコールや、アミン系化合物を用いてもよい。
【0038】
前記フッ素樹脂分散液に含まれるチキソトロピー付与剤は、直鎖状ではなく、架橋型アクリル系樹脂粒子であることが好ましい。架橋型アクリル系樹脂粒子は、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを乳化、縣濁重合などの方法で重合製造した樹脂粒子が挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル系モノマーを共重合してもよいし、スチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニルなどと共重合してもよい。また、ポリ(メタ)アクリル酸は、塩であってもよい。例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。
【0039】
前記フッ素樹脂分散液の分散溶媒は、フッ素樹脂を分散できるものであれば、とくに限定されるものではないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライムなどが挙げられる。ポリイミドワニスなどと本発明のフッ素樹脂分散液を同時液状成形する場合、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)がとくに好ましい。これらの溶媒を単独で又は混合物としてあるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素などの他の溶媒と混合して用いることができる。また、水を含んでもよい。
【0040】
次に外層を形成するポリイミド前駆体溶液に、フッ素樹脂粒子(b)が含まれても良い。ポリイミド前駆体溶液にフッ素樹脂粒子(b)を混合してチューブに成形したのち加熱してイミド化を行うと、イミド化温度がフッ素樹脂粒子(b)の融点以下の温度では、フッ素樹脂粒子(b)はポリイミド樹脂層全体に分散した状態で存在する。
【0041】
しかしながら、フッ素樹脂粒子(b)の融点を越える温度まで加熱するとポリイミド樹脂層内部のフッ素樹脂粒子(b)は溶融し、同時にイミド化の促進によって、ポリイミド樹脂中で溶融しているフッ素樹脂粒子(b)はポリイミド樹脂層から外に向かって押出され、ポリイミド樹脂表面にフッ素樹脂が溶融して析出したような状態になる。
【0042】
この析出したフッ素樹脂と、チューブ内層を形成するフッ素樹脂の外面は同じ温度で加熱されるために、それぞれのフッ素樹脂は溶融して融着し、強固に一体化することになる。本発明の製造方法では、ポリイミド樹脂に混合したフッ素樹脂粒子(b)をポリイミド樹脂のイミド化時に、フッ素樹脂粒子(b)の融点を越える温度で加熱し析出させることによって、内層を形成するフッ素樹脂と強固に一体化させた複合チューブを製造することができる。また、この複合チューブではポリイミド樹脂層の外表面にもフッ素樹脂粒子(b)が溶融して析出するためチューブの外表面においても摩擦抵抗の低い複合チューブを製造することができる。
【0043】
前記ポリイミド前駆体溶液に含まれるフッ素樹脂粒子(b)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0044】
次に、前記ポリイミド前駆体溶液中に含まれるフッ素樹脂粒子(b)の混合率は、ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して3〜50重量%の範囲であることが好ましい。特に好ましくは10〜40重量%である。混合率が3重量%未満であると、溶融して析出してくるフッ素樹脂粒子(b)の量が少なく、内層のフッ素樹脂との融着力が得られにくく、また、50重量%を超えると、ポリイミド樹脂層の機械強度が低下し、同時にポリイミド樹脂表面の平滑性が損なわれ、割れが生じやすくなる。
【0045】
また、フッ素樹脂粒子(b)は粉末状のものが好ましい。粉末状であるとポリイミド前駆体溶液に混合し、均一に分散させやすいからである。前記フッ素樹脂粒子(b)の平均粒子径は、0.1〜25μmの範囲が好ましい。より好まし範囲は1.0〜15μmである。このような範囲であると粒子の凝集が少なく均一に分散できるからである。なお、前記平均粒径が0.1μm未満であると粒子が二次凝集しやすく、25μmを超えるとチューブの内面、あるいは外面にフッ素樹脂粒子に起因する凹凸が生じやすいため好ましくない。なお、前記フッ素樹脂粉末の平均粒径の測定方法はレーザー回析式粒度測定装置(ASLD−2100:島津製作所(製))やレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(LA−920:堀場製作所(製))で測定することが出来る。
【0046】
ここで、図3を用いて前記フッ素樹脂分散液と前記ポリイミド前駆体溶液とを用いた複合チューブの製造装置について説明する。
【0047】
複合チューブの製造装置50は、図3に示されるように、
主に、芯線供給ボビン52、乾燥炉70、イミド化焼成炉72、被膜線巻取り機53、フッ素樹脂被膜成形ダイス54、ポリイミド樹脂被膜成形ダイス55、フッ素樹脂分散液加圧タンク58、ポリイミド前駆体溶液加圧タンク59、フッ素樹脂分散液バルブ60、ポリイミド前駆体溶液バルブ61、第1主管、第2主管、フッ素樹脂分散液配送管62、ポリイミド前駆体溶液配送管63、フッ素樹脂分散液配送器64、ポリイミド前駆体溶液配送器65、フッ素樹脂分散液加圧バルブ68及びポリイミド前駆体溶液加圧バルブ69から構成される。
【0048】
フッ素樹脂被膜成形ダイス54は、中空の円筒成形体である。また、ポリイミド樹脂被膜成形ダイス55はフッ素樹脂被膜成形ダイス54と同様に中空の円筒成形体である。なお、被膜成形ダイス54,55の内径は、目的とする複合チューブの内径や厚みの仕様により決定される。なお、その際、金属芯線の外径、金属芯線への塗布速度、ポリイミド前駆体溶液の粘度あるいはスリット開口66,67からの吐出速度などを考慮する必要がある。また、フッ素樹脂被膜成形ダイス54の内周径はポリイミド樹脂被膜成形ダイス55の内周径よりも若干小さくされている。そして、フッ素樹脂被膜成形ダイス54は、軸がポリイミド樹脂被膜成形ダイス55の軸と沿うようにポリイミド樹脂被膜成形ダイス55の下側に近接して配置される。なお、フッ素樹脂被膜成形ダイス54及びポリイミド樹脂被膜成形ダイス55には、内周壁に所定の間隙で全周に渡ってスリット開口66,67が形成されている。このようにスリット開口66,67を形成すると、円周方向の吐出むらがなく、均一な厚さの溶液成形層を形成できるからである。また、スリット開口の幅は、0.1mm〜3mmの範囲内である。金属芯線の外径や塗布厚みなどによって最適なスリット開口幅を設計できる。また、フッ素樹脂被膜成形ダイス54及びポリイミド樹脂被膜成形ダイス55には外周壁に液投入口が形成されており、その液投入口には配送管62,63が接続される。
また、被膜成形ダイスが3つ以上重ねられる場合、下段に位置する被膜成形ダイスの内径が小さく、上段に位置する被膜成形ダイスの内径が大きくなることが必要である。
【0049】
フッ素樹脂分散液加圧タンク58は、フッ素樹脂分散液56を貯蔵するための貯蔵容器である。
そして、このフッ素樹脂分散液加圧タンク58には、上蓋にフッ素樹脂分散液加圧バルブ68が取り付けられており、また、下方にフッ素樹脂分散液バルブ60が取り付けられている。
【0050】
ポリイミド前駆体溶液加圧タンク59は、ポリイミド前駆体溶液57を貯蔵するための貯蔵容器である。そして、このポリイミド前駆体溶液加圧タンク59には、上蓋にポリイミド前駆体溶液加圧バルブ69が取り付けられており、また、下方にポリイミド前駆体溶液バルブ61が取り付けられている。
【0051】
フッ素樹脂分散液加圧バルブ68及びポリイミド前駆体溶液加圧バルブ69には加圧空気ボンベ等が取り付けられ、フッ素樹脂分散液加圧バルブ68及びポリイミド前駆体溶液加圧バルブ69が開状態となると、加圧タンク58,59 内部が加圧される。 なお、このとき、溶液バルブ60,61 が開状態となっていると、加圧タンク58,59に貯蔵されるフッ素樹脂分散液56およびポリイミド前駆体溶液57が被膜成形ダイス54,55の中空空間に送出される。
【0052】
フッ素樹脂分散液バルブ60及びポリイミド前駆体溶液バルブ61は、開閉式の電動弁である。
なお、これらの溶液バルブ60,61は図示しないタイミング制御装置に通信接続されており、このタイミング制御装置の運転開始ボタンが押されると、先ず、フッ素樹脂分散液バルブ60が開状態となり、その後所定時間が経過した後にポリイミド前駆体溶液バルブ61が開状態となる。
【0053】
フッ素樹脂分散液分配器64及びポリイミド前駆体溶液分配器65は1つの出入り口を有しており、その入口には主管が接続され、
出口には配送管62,63が接続される。 つまり、この分配器64,65は、加圧タンク68,69から主管を通って配送されるフッ素樹脂分散液56およびポリイミド前駆体溶液57
を被膜成形ダイス54,55に配送する役割を担う。より均一な塗膜の厚みを得る場合には、前記分配器からの配送管を増やしてもよい。
【0054】
つまり、フッ素樹脂分散液加圧バルブ68及びポリイミド前駆体溶液加圧バルブ69が開いた状態で、タイミング制御装置の運転開始ボタンが押されると、フッ素樹脂分散液56がフッ素樹脂分散液配送器64によりフッ素樹脂分散液配送管62に配送された後、フッ素樹脂被膜成形ダイス54に供給され、スリット開口部66から吐出される。そして、少し遅れて、ポリイミド前駆体溶液57がポリイミド前駆体溶液配送器65によりポリイミド前駆体溶液配送管63に配送された後、ポリイミド樹脂被膜成形ダイス55に供給され、スリット開口部67から吐出される。
【0055】
ポリイミド樹脂被膜成形ダイス55から供給されたポリイミド前駆体溶液57がフッ素樹脂被膜成形ダイス54から供給されたフッ素樹脂分散液56上に塗布された状態で、乾燥炉70まで移動し、乾燥炉70を通過させながら芯線51上に塗布されたフッ素樹脂分散液56とポリイミド前駆体溶液57に含まれる溶媒の除去、乾燥を行い、次に、イミド化焼成炉72まで移動し、イミド化焼成炉72を通過させながらポリイミド樹脂のイミド転化とフッ素樹脂の焼成を同時に行い、フッ素樹脂層とポリイミド樹脂層の複合膜が被覆された複合膜被覆線が得られる。
【0056】
次いで前記複合膜被覆線を巻取り機53で巻き取り、その後、所望の長さに切断し、芯線を引抜くことにとって複合チューブを得ることができる。
【0057】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0058】
1.フッ素樹脂分散液の原材料
(1)フッ素樹脂粒子(a)
平均粒子径が8μmであるPFA粒子(ソルベイソレクシス)を使用した。
【0059】
(2)揮散等樹脂粒子分散液
平均粒子径が0.13μmであるスチレン−メタ(アクリル)酸エステル共重合樹脂粒子の水性分散液であるポリゾールAP−691T(昭和高分子製、不揮発分:55重量%)335gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)500gで希釈して使用した。
【0060】
(3)溶媒
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用した。
【0061】
(4)増粘及びチキソトロピー性付与剤
水溶性架橋型アクリル系樹脂のジュンロンPW−110(日本純薬製)を使用した。
【0062】
2.フッ素樹脂分散液の作製
100gのフッ素樹脂粒子(a)と、167gの揮散等樹脂粒子分散液とを混合した。なお、このとき、揮散等樹脂粒子分散液の不揮発分は、フッ素樹脂粒子(a)100重量部に対して37.8重量部存在することになる。
【0063】
そして、この混合物に、チキソトロピー性付与剤28gをNMP191gに添加したものを43.8g添加して、フッ素樹脂分散液を得た。
【0064】
なお、このフッ素樹脂分散液は、粘度が750ポイズであり、チキソトロピーインデックスが1.7であった。
【0065】
粘度980ポイズに調整したRC5063((株)IST製)ポリイミド前駆体液と前記フッ素樹脂分散液とを、図3に示される複合チューブの製造装置を用いてステンレス芯線表面に液状成形した後に、150〜200度Cの乾燥炉内を通過させフッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液に含まれる溶媒の除去及び初期のイミド化処理を行った。その後250〜380度Cのイミド化焼成炉内を2m/分の速度で連続的に通過させて最終のイミド化処理を行い、複合被膜を得た。その後、2mの長さに切断し、ステンレス心線の両端部を掴み、破断しないように引き伸ばし、その外径を縮径させてステンレス芯線を抜き取り、内径は0.55mm、外径が0.710mmである複合チューブを得た。得られた複合チューブはフッ素樹脂とポリイミド樹脂の混在層によって強固に接着され、剥離することができなかった。
【実施例2】
【0066】
実施例1においてフッ素樹脂分散液に含まれる揮散等樹脂粒子分散液の量を167gから78.1gに代えた以外は実施例1と同様の条件で複合チューブを作成した。このとき、フッ素樹脂分散液中に含まれる揮散等樹脂粒子分散液の不揮発分は、フッ素樹脂100重量部に対して17.2重量部存在することになる。上記条件で作成された複合チューブの内径は0.55mm、外径が0.715mmであり、フッ素樹脂とポリイミド樹脂の混在層によって強固に接着され、剥離することが出来なかった。
【実施例3】
【0067】
ポリイミド前駆体溶液としてフッ素樹脂粒子(b)、平均粒子径14μmのFEP樹脂粉末(デュポン社製商品名“532−8110”)をポリイミド前駆体溶液中の固形分100質量部に対して25質量部の割合になるように添加したフッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液を用いた以外は、実施例1と同様の条件で複合チューブを作製した。なお、フッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液の粘度は860ポイズであった。このチューブの内径は0.55mm、外径が0.715mmであり、内層はPTFE樹脂単体の低い摩擦係数を有し、内層とポリイミド樹脂外層はFEP樹脂の溶融層で強固に接着され、剥離することはできなかった。またポリイミド樹脂外層の外面(図2の13の部分)にもFEP樹脂が溶融して析出し、低い摩擦抵抗を有する複合チューブが得られた。
【実施例4】
【0068】
実施例3において、フッ素樹脂粒子(b)として、平均粒子径3.0μmのフッ素樹脂粉末(PTFE樹脂:融点327度C:デュポン社製商品名"Zonyl MP1200")をポリイミド前駆体溶液中の固形分100質量部に対して20質量部の割合になるように添加したフッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液(粘度900ポイズ)を用いた以外は、実施例2と同様の条件で複合チューブを作製した。このチューブの内径は0.55mm、外径が0.725mmであり、内層はPTFE樹脂単体の低い摩擦係数を有し、内層とポリイミド樹脂外層はPTFE樹脂の溶融層で強固に接着され、剥離することはできなかった。またポリイミド樹脂外層の外面(図2の13の部分)にPTFE樹脂が溶融して析出し、低い摩擦抵抗を有する複合チューブが得られた。
【実施例5】
【0069】
実施例3においてフッ素樹脂粒子(b)として、平均粒子径14μmのFEP樹脂粉末(デュポン社製商品名“532−8110”)をポリイミド前駆体溶液中の固形分100質量部に対して10重量部の割合になるように添加したフッ素樹脂混合ポリイミド前駆体溶液を用いた以外は、実施例2と同様の条件で複合チューブを作製した。このチューブの内径は0.55mm、外径が0.710mmであり、内層はPTFE樹脂単体の低い摩擦係数を有し、内層とポリイミド外層はFEP樹脂の溶融層で強固に接着され、剥離することはできなかった。またポリイミド外層の外面(図2の13の部分)にFEP樹脂が溶融して析出し、低い摩擦抵抗を有する複合チューブが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のチューブは、カテーテルや内視鏡などの医療用チューブ部材として、あるいは電気絶縁用の被覆チューブ、また内層がフッ素樹脂で構成されているため、化学分析機器などにおける溶解性、腐食性の高い薬液や溶剤の搬送チューブなどに利用できる。また、金属芯線として銀メッキ銅線を用い、本発明の製造方法によってフッ素樹脂とポリイミド樹脂を被覆した銀メッキ銅線は、このままの状態では、絶縁性及び電気特性に優れたフッ素樹脂・ポリイミド樹脂被覆電線として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】複合チューブ(析出層なし)の概略断面図である。
【図2】複合チューブ(析出層あり)の概略断面図である。
【図3】被膜成形装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 内層
2 外層
3 混在層
4 複合チューブ(析出層なし)
10 複合チューブ(析出層あり)
11 外層
12 混在層
13 フッ素樹脂(b)層
50 複合チューブ製造装置
51 芯線
52 芯線供給ボビン
53 被膜線巻取り機
54 フッ素樹脂被膜成形ダイス
55 ポリイミド樹脂被膜成形ダイス
58 フッ素樹脂分散液加圧タンク
59 ポリイミド前駆体溶液加圧タンク
60 フッ素樹脂分散液バルブ
61 ポリイミド前駆体溶液バルブ
62 フッ素樹脂分散液配送管
63 ポリイミド前駆体溶液配送管
64 フッ素樹脂分散液分配器
65 ポリイミド前駆体溶液分配器
68 フッ素樹脂分散液加圧バルブ
69 ポリイミド前駆体溶液加圧バルブ
70 乾燥炉
72 イミド化焼成炉
Y 芯線の引き上げ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属芯線の表面に、フッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液とを重ねて塗布する重ね塗り工程と、前記フッ素樹脂分散液とポリイミド前駆体溶液から溶媒を除去する工程と、前記ポリイミド前駆体溶液をイミド化すると共に前記フッ素樹脂分散液を被膜化するイミド化焼成工程と、前記金属芯線と複合チューブを分離する工程とを備える複合チューブの製造方法。
【請求項2】
前記重ね塗り工程では、前記金属芯線と直接、接する面にフッ素樹脂分散液が塗布され、該フッ素樹脂分散液の外側にポリイミド前駆体溶液が重ね塗りされる請求項1に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項3】
前記重ね塗り工程は、開口を有する第1円筒壁と、開口を有し軸が前記第1円筒壁の軸に沿うように前記第1円筒壁の上側に配置される第2円筒壁と、前記フッ素樹脂分散液を前記第1円筒壁の開口に配送する第1配送部と、前記ポリイミド前駆体溶液を前記第2円筒壁の開口に配送する第2配送部とを備える塗膜成形装置に前記フッ素樹脂分散液およびポリイミド前駆体溶液を供給されながら前記フッ素樹脂分散液と前記ポリイミド前駆体溶液とが前記金属芯線に重ねて塗布される請求項1又は2に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項4】
前記フッ素樹脂分散液は、(a1)前記フッ素樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮散又は熱分解する樹脂粒子(以下「揮散等樹脂粒子」という)及び(a2)前記フッ素樹脂粒子100重量部に対して5重量部以上の不揮発分を含む(A)揮散等樹脂粒子分散液と、(B)チキソトロピー性付与剤と、(C)有機溶媒とをさらに含有する請求項1から3のいずれかに記載の複合チューブの製造方法。
【請求項5】
前記チキソトロピー性付与剤は、水膨潤性または水溶性アクリル系樹脂粒子である請求項4に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項6】
水膨潤性または水溶性アクリル系樹脂粒子は、水膨潤性または水溶性架橋型アクリル系樹脂粒子である請求項5に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項7】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)から選ばれる少なくとも1つである請求項4から6に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体溶液がフッ素樹脂粒子(b)を含有する請求項4から7に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項9】
前記ポリイミド前駆体溶液の固形分に対してフッ素樹脂粒子(b)の含有率が、3重量%以上50重量%以下である請求項8に記載の複合チューブの製造方法。
【請求項10】
フッ素樹脂層と、ポリイミド樹脂層と前記フッ素樹脂層と連続するフッ素樹脂層と、前記ポリイミド樹脂層と連続するポリイミド樹脂層とが混在する混在層とを備える複合チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−75434(P2010−75434A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246976(P2008−246976)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】