説明

複合フィルムおよび粘着シート

【課題】十分な破断強度を有し、応力緩和性が良好で、かつ加工性に優れた複合フィルムを提供すること。
【解決手段】複合フィルムは、ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物に、放射線を照射して硬化させてなる、100%modが5N/mm以上、破断伸度が150%以上、応力緩和時間が200秒以下の複合フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、例えば、ウレタン−アクリル複合フィルムおよびこのフィルムを用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープの基材として、塩化ビニル系フィルムは応力緩和性および強度に優れ、加工性が良好であるため、様々な用途に使用されてきた。近年においては、環境保護の観点から、ポリオレフィン系フィルムが代替品として使用されているが、応力緩和性に関しては塩化ビニル系フィルムに及ばない。
塩化ビニル系フィルムに匹敵する応力緩和性を有する非塩化ビニル系フィルムとして、(メタ)アクリル系ポリマーからなる粘着フィルム基材が特開2000−290622号公報に開示されているが、熱可塑性であるため感温性に劣る。ところで、ポリウレタンは、ポリオールやポリイソシアネートの種類などにより物性を大きく変化させることができるので、工業的に広く利用されている。このため、アクリル系ポリマーとポリウレタンの両ポリマーの特徴を生かした材料の開発が行われている。例えば特開平9−253964号公報には、エステル・ジオールを主骨格とする2官能ウレタンアクリレートであるウレタンアクリレート系オリゴマーと、反応性希釈モノマーとを放射線硬化させて得られる粘着テープ用基材が開示されている。ここでは、ウレタンアクリレート系オリゴマーに反応性希釈モノマーが付加して、架橋構造をとるため、得られたフィルムは強度の高いフィルムとなるが、伸びや応力緩和性が低下し、曲面などへの追従性や、加工性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−290622号公報
【特許文献2】特開平9−253964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明は十分な破断強度を有し、応力緩和性が良好で、かつ、加工性に優れた複合フィルムおよびこの複合フィルムを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複合フィルムは、ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物に、放射線を照射して硬化させてなる、100%モジュラスが5N/mm以上、破断伸度が150%以上、応力緩和時間が200秒以下であることを特徴とする。
ここで、上記複合フィルムは、ラジカル重合性モノマー中で、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを含む混合物を、剥離ライナー上に塗布し、放射線を照射して硬化させたフィルムであることができる。
また、ラジカル重合性モノマーは、アクリル系モノマーであることができる。
本発明の粘着シートは、上記複合フィルムを支持体とし、この支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、紫外線照射によりフィルムを形成することができるので、工程が簡易である。また、溶剤等を必要とせず、環境保護の観点からも優れている。また、乳化剤を使用することもないので、耐水性に優れている。さらにまた、本発明によれば、ポリオール、ポリイソシアネート、ラジカル重合性モノマーの種類や混合量を選択することにより、任意の物性値の複合フィルムが得られる。したがって、家庭用、医療用、農業用、工業用等の各種用途に適応しうるフィルム(本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする)を提供することができる。
本発明の複合フィルムは、曲面追従性が良好であるので、例えば粘着シートとして使用した場合には、被着体が屈曲運動をしたとしても、剥がれ等を生じることがない。また、加工性が良好であるので、プレス加工等の二次加工を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な破断強度を有し、応力緩和性が良好で、かつ、加工性に優れた複合フィルムおよびこの複合フィルムを用いた粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複合フィルムはウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物に放射線を照射して得られる複合フィルムであって、この複合フィルムは、100%モジュラス(mod)が5N/mm以上、応力緩和時間が200秒以下、破断伸度が150%以上である。
ここで100%modとは、フィルムを100%伸張するのに必要な応力をいう。100%modが5N/mmより小さいと、タックが生じたり、腰がなくて扱い難いフィルムとなるので、本発明においては、100%modが5N/mm以上であることが必要であり、望ましくは10N/mm以上である。
また、応力緩和時間とは、100%伸張状態を維持するときに、応力が最初の値(100%伸張時の応力)の1/e(e=2.7183)に減少するのに要する時間である。応力緩和時間が短いほど応力緩和性が良い。
破断伸度とは、フィルムを破壊するのに必要な伸び率をいう。
【0009】
本発明においては、まずウレタンポリマーを作製し、このウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを混合して放射線を照射し、重合させて、ウレタンポリマーとラジカル重合性ポリマーのハイブリッド化された複合フィルムを製造する。
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。イソシアネートとポリオールの水酸基との反応には、触媒を用いても良い。例えば、ジブチルすずジラウレート、オクトエ酸すず、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
【0010】
ポリオールとしては、1分子中に2個またはそれ以上の水酸基を有するものが望ましい。低分子のポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価または4価のアルコールなどが挙げられる。
また、高分子のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどがある。これらの中では、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエ−テルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては前記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの2塩基酸との重縮合物が挙げられる。その他、ポリカプロラクトンなどのラクトン系開環重合体ポリオールポリカーボネートジオールなどがある。アクリルポリオールとしてはヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体などが挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂などがある。
これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、トリオールによる架橋構造を導入したり、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0011】
ポリイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体などが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
これらのポリイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。ポリオールとの速やかな反応、および水との反応の抑制の観点からは、脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0012】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ポリイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が0.8以上であることが好ましく、1以上であることがさらに好ましい。NCO/OHが0.8未満では、ウレタンポリマーの分子鎖長を充分に延ばすことができず、強度や、伸びが低下しやすい。
【0013】
ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するものが使用される。反応性の点からは、アクリル系モノマーが好ましい。
本発明に好ましく用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、2−エチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、i−ノニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート等のヒドロキシル基を有するモノマーを用いることができる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピリメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、モルホリンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレートなどのモノマーを用いてもよい。
本発明においては、必要に応じて、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能モノマーを架橋剤として用いてもよい。これらのモノマーも、本発明に係るラジカル重合性モノマーに含まれる。
【0014】
これらのラジカル重合性モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。ラジカル重合性モノマーのホモポリマーまたはコポリマーのTgが0℃以下である場合は、応力緩和時間や破断伸びは良好だが、フィルムが柔らかくなりすぎて、100%modが低くなる。
【0015】
本発明の複合フィルムは、各成分の混合割合を変えることにより、任意の物性値に設定することができるので、用途、目的に応じて、混合割合を選択する。
本発明においては、必要に応じて、通常、フィルムに通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ポリイソシアネートとポリオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーと反応性モノマーとを重合させる前に、添加してもよい。
また、塗工の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0016】
本発明の複合フィルムは、ラジカル重合性モノマー中でポリオールとイソシアネートの反応を行い、ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとの混合物を、剥離処理した基材(剥離ライナー)上に塗布し、紫外線や電子線等の放射線を照射することにより、放射線硬化して得られる。
この際、酸素による重合阻害を避けるために、剥離ライナー上に塗布したウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとの混合物の上に、剥離処理したシートをのせて、酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に剥離ライナーを入れて、酸素濃度を下げてもよい。
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0017】
ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフェニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシムが好ましく用いられる。
【0018】
本発明の複合フィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、目的や用途に応じて、適宜設定することができるが、一般的には、5〜500μm、好ましくは10〜200μm程度である。
【0019】
本発明の複合フィルムは、そのままでも使用することができるが、片面または両面に粘着剤層を形成して粘着シートとすることもできる。粘着剤組成としては特に限定されず、アクリル系、ゴム系等、一般的なものを使用することができる。粘着剤層の形成方法も特に限定されるものではなく、複合フィルムに、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布して、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を複合フィルムに塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、複合フィルムと粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と複合フィルム層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部は重量部を意味する。
(実施例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリルモノマーとして、イソボルニルアクリレート49.7部、アクリル酸49.7部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量650、三菱化学(株)製)73.4部と、ウレタン反応触媒として、ジブチルすずジラウレート0.5部とを投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート26.6部を滴下し、65℃で2時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を、剥離処理したポリエステルフィルム(38μm厚)上に、硬化後の厚みが70μmになるように塗布した。これに、紫外線を2700mJ/cm照射して硬化させることにより、ウレタン−アクリル複合フィルムを作製した。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、ポリオールの種類と使用量を、ポリカーボネートジオール(商品名「ニッポラン983」、日本触媒(株)製)80.7部に変更し、ポリイソシアネートの種類と使用量を、トリレンジイソシアネート19.3部に変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合フィルムを作製した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0022】
(実施例3)
実施例1において、アクリル系モノマーの種類と使用量を、t−ブチルアクリレート99.4部に変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合フィルムを作製した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0023】
(実施例4)
実施例1において、イソシアネートの種類と使用量を、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(商品名「タケネート600」、タケダ薬品(株)製)27.4部に変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合フィルムを作製した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0024】
(比較例1)
実施例1において、ポリオールとしてのポリテトラメチレングリコールと、ポリイソシアネートとしてのキシリレンジイソシアネートを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、アクリルフィルムを作製した。
【0025】
(比較例2)
実施例1において、アクリル系モノマーの種類と使用量を、ブチルアクリレート99.4部(Tg=−54℃)に変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合フィルムを作製した。
【0026】
(比較例3)
100%mod=15N/mm、応力緩和時間>300秒、破断伸度300%である、ポリプロピレンフィルムを比較例3とした。
【0027】
(評価試験)
実施例1〜3、比較例1〜3で得られたフィルムについて、下記の試験を行った。
(1) 100%mod、破断伸度
20mm幅に切断したフィルムを、引張試験機として「オートグラフAGS−50D型」(島津製作所製)を用い、試験サンプルを、チャック間10mm、300mm/分の引張り速度で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。フィルムの100%伸張時における単位面積当りの応力を100%modとし、破断時の歪み量を破断伸度として得た。
(2) 応力緩和時間
上記と同様のサンプルを、同じ装置を用いて、チャック間10mm、300mm/分の引張り速度で引っ張り、100%伸張時点で、引張試験機を止め、その後の応力の変化を読み、100%伸張時点の応力に対して1/e(e=2.7183)の応力に減少するまでに要する時間を応力緩和時間とした。
(3) 加工性試験
フィルムにアクリル系粘着剤(エチルアクリレート60部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、ヒドロキシエチルアクリレート5部、トリレンジイソシアネート5部からなる粘着剤)を、厚みが5μmとなるように塗布して粘着シートを作製した。この粘着シートを、被着体として、0.4mm厚のSUS304BAに貼付し、60tプレスで15mm絞り加工(20mm角筒絞り)を行った。3時間後の粘着テープの浮きの状態を目視観察して、評価を行った。粘着シートの浮きが全く見られなかった場合を「○」、僅かに浮きが認められた場合を「△」、浮きが明瞭に認められた場合を「×」と評価した。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜4のウレタン−アクリル複合フィルムは、十分な破断強度を有し、応力緩和性も良好で、曲面追従性にも優れていることが分かった。また、加工性にも優れており、作業性が良好であることが分かった。さらに、紫外線照射により、簡易な工程でフィルムを作製することができた。
比較例1のフィルムは、破断伸度が10%であり、ほとんど伸びない脆いフィルムであって、100%mod、応力緩和時間を測定することができなかった。比較例2のフィルムは、100%modが小さいので、タックが発生し、作業性が悪く、また、粘着シートの浮きがやや発生した。比較例3のフィルムは、応力緩和時間が長く、弾性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の複合フィルムは、家庭用、医療用、農業用、工業用等の各種用途に適応可能である。また、本発明の複合フィルムは、曲面追従性が良好であるので、例えば粘着シートとして使用した場合には、被着体が屈曲運動をしたとしても、剥がれ等を生じることがない。また、加工性が良好であるので、プレス加工等の二次加工を容易に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物に、放射線を照射して硬化させてなる、100%モジュラスが5N/mm以上、破断伸度が150%以上、応力緩和時間が200秒以下の複合フィルム。
【請求項2】
ラジカル重合性モノマー中で、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、該ウレタンポリマーと該ラジカル重合性モノマーとを含む混合物を、剥離ライナー上に塗布し、放射線を照射して硬化させたことを特徴とする請求項1記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記ラジカル重合性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の複合フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の複合フィルムを支持体とし、該支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。

【公開番号】特開2012−1726(P2012−1726A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172577(P2011−172577)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2001−286304(P2001−286304)の分割
【原出願日】平成13年9月20日(2001.9.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】