説明

複合印刷機及び印刷システム並びに印刷方法

【課題】 インクの乾燥又は硬化の為の赤外線や紫外線による搬送ベルトの劣化を抑制して、絵柄の変更が多い場合においても好適な複合印刷機を提供する。
【解決手段】 段ボールシート22を搬送する搬送ベルト21と、刷版によって印刷するフレキソ印刷機と、刷版の付け替え作業なしに絵柄の変更が可能な部分印刷機と、部分印刷機で使用する特定のインクを乾燥または硬化させるためにIR光又はUV光を照射する光源11と、光源11の光を遮蔽し、一部に光を通過させる開口部14を有する遮光板12aと、遮光板12aを回転させるモータ13と、所要のタイミングで光源11の光を通過又は遮蔽するように遮光板を回転させるようにモータ13を制御するモータ制御手段16とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製函機の印刷部等において、所定部分の絵柄の変更が多い印刷を行うのに用いて好適な複合印刷機及び印刷システム並びに印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製函機は段ボールシートに絵柄や文字等の印刷をする機械、またさらに折り目をつけたり、糊付けを行って段ボール箱を作る機械の総称である。図7は、このような製函機の印刷部に関する簡易構成を示す図である。
図7に示すように段ボールシート4への印刷は、水性インクを用いたフレキソ印刷が一般的である。印刷部には、いずれもフレキソ印刷機で構成された印刷ユニット1が印刷に必要な色数分(ここでは4つ)だけタンデムに配置され、給紙部から繰り出された段ボールシート4は、1枚ずつ搬送ベルト3で送られながら、1番目の印刷ユニットから順に印刷されていく。印刷ユニット内には、主な構成要素として刷版を巻きつけた印刷シリンダー2と刷版にインクを付けるアニロックスロール5とがある。段ボールシート4を搬送する搬送ベルト3には、シートのずれを防ぐ目的でゴムベルトが一般的に使用されている。
【0003】
段ボール印刷は同じ絵柄で大量に印刷するのが一般的であるが、絵柄の中の一部を変更する場合もある。例えば製造年月日などである。この場合、変更部分の刷版のみを付け替えてその他の刷版はそのままで印刷している。このため頻繁に変更部分を取り替えるケースでは、その度に機械を停止して付け替えるので、生産性の低下が著しい。
段ボール印刷において絵柄の変更による刷版の付け替えを要しない印刷方法としては特許文献1、特許文献2にインクジェットプリンタ又はレーザープリンタによって段ボールシートに絵柄を印刷する技術が開示されている。この技術によれば、印刷制御装置に記憶させる絵柄のデータを変更するだけで印刷する絵柄の変更が容易にできるため、刷版の付け替えによって生産性を低下させることなく、小ロット多品種の印刷を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−309848公報
【特許文献2】特開2002−337253公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、大量に印刷を行う場合、インクジェットあるいはレーザープリンタによる印刷では、フレキソ印刷と比較して印刷コストが高くなる。また、印刷する面積が広いほど印刷コストが高くなるため、広範囲の印刷を大量に行う場合は特に経済的ではない。
一方、通常、段ボールの印刷においては、製造年月日や品番等の比較的狭い特定の範囲の絵柄を変更することが多い。つまり、絵柄の変更に際しても印刷される図柄の大部分は変更なく同じ絵柄で大量に印刷されることが多いのである。
【0005】
そこで、フレキソ印刷機にインクジェットあるいは、レーザープリンタといった、刷版の付け替えを要しないタイプの印刷機を組み合わせて使用することが考えられる。つまり、印刷範囲が広く、絵柄の変更の無い部分はフレキソ印刷によって印刷し、比較的狭い範囲で絵柄の変更の多い部分をインクジェット等で印刷させるようにすれば、刷版の付け替えによる生産性の低下を防止しながら、印刷コストの増大も比較的小さく抑えられることが期待できる。
【0006】
ところで、フレキソ印刷機において、印刷部分のインクの乾燥は一般的には自然乾燥であるが、高速化に伴いIR(赤外線)乾燥などが設置されるケースもある。インクの乾燥手段としては、水性インクの場合は、IR乾燥機とエアーブローが主に使用され、UV(紫外線)インクの硬化にはUVランプが一般的によく用いられている。
このようなフレキソ印刷機に部分印刷機を設置する場合は、以下の課題がある。
【0007】
UVインクを使った部分印刷機においては、UVインクを高速で硬化させるために印刷後強力なUV光(紫外線)を印刷面に照射する必要がある。UV光は、搬送ベルト3の上方に設置されたUVランプから印刷面に照射されるが、ここで段ボールシート4は間欠的に搬送ベルトで搬送されるため、段ボールシートが無い部分ではゴム製のベルトに強力なUV光が直接照射されることになる。また、製函する段ボール箱の大きさに応じて、段ボールシート4のサイズが異なるため、段ボールシート間の間隔は、箱サイズによって変化する。
【0008】
このため長時間印刷していると、ベルトに照射されるUV光の積算時間は長くなり、紫外線に弱いゴム製のベルトの劣化が生じる。
水性インクを使った部分印刷機で印刷する場合は、インク乾燥にIR乾燥機やブロワーが用いられるのが一般的であるが、段ボールシートが無い部分ではベルトに強力な熱線(IR光)が照射されることになるのはUV光の場合と同様である。つまり、熱に弱いゴム製のベルトにIR光による熱によって劣化が生じる可能性がある。
【0009】
このため、既存の印刷機に部分印刷機を設置する際は、強力な光(赤外線や紫外線)の照射に耐えられるような特殊なベルトを用いる必要があり、装置コストが高くなるという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、被印刷物に、部分的に印刷されたインクを光源から照射される強力な光(赤外線や紫外線)によって乾燥又は硬化させる際に、この光による搬送ベルトのダメージを抑制することができるようにした、複合印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、請求項1記載の本発明の複合印刷機は、被印刷物を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物に刷版を利用して主要な絵柄の印刷を行う主印刷機と、前記搬送ベルトによる搬送路に沿って前記主印刷機の上流部又は下流部に配設され、前記刷版の付け替え作業なしに絵柄の変更が可能であって、搬送される前記被印刷物に、部分的な絵柄の印刷を特定のインクを用いて行う部分印刷機と、前記部分印刷機で印刷された前記特定のインクの乾燥又は硬化のために光を照射する光源と、前記光源からの前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽する遮光機構とを備えて構成されることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項1のものにおいて、前記遮光機構は、前記光源と前記搬送ベルトとの間に配設され、前記搬送ベルトに向かう前記光を遮蔽しうる遮光部材と、前記遮光部材を回転駆動するモータと、前記光が前記搬送ベルトに直接照射されるタイミングで前記遮光部材が前記光を遮蔽するように前記モータを制御するモータ制御手段とからなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項2のものにおいて、前記遮光部材は少なくとも1つの開口部を有し、前記搬送ベルト上で、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記光が前記開口部を通じて前記部分的な絵柄の部分に照射されるように、前記モータ制御手段は、前記遮光部材が前記被印刷物の搬送速度に同期して回転するよう前記モータを制御することを特徴としている。
【0013】
また、請求項4記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項3のものにおいて、前記遮光部材は1つ以上の開口部を有する円盤状の遮光板であり、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記遮光板の前記開口部を前記部分的な絵柄の部分に照射されるように前記遮光板を前記被印刷物の搬送速度に同期して回転するよう前記モータを制御することを特徴としている。
【0014】
また、請求項5記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項3のものにおいて、前記遮光部材は1つ以上の開口部を有するエンドレスベルト状の遮光ベルトであり、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記遮光板の前記開口部を前記部分的な絵柄の部分に照射されるように前記遮光板を前記被印刷物の搬送速度に同期して前記遮光ベルトが動作するよう前記モータを制御することを特徴としている。
【0015】
また、請求項6記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項3〜5のいずれか1項のものにおいて、前記被印刷物は給紙部から所定の給紙タイミングで前記搬送ベルト上に給紙される段ボールシートであって、前記遮光部材の前記開口部は、前記搬送コンベア上を搬送される前記段ボールシートの前記部分的な絵柄部分の位置及び大きさに応じて配設され、前記モータ制御手段は、前記給紙部からの給紙タイミングと前記印刷機の搬送コンベアの速度とに基づいて前記遮光部材を駆動させる駆動パターンを演算して、前記モータを制御することを特徴としている。
【0016】
また、請求項7記載の本発明の複合印刷機は、上記請求項1〜6のいずれか1項のものにおいて、前記搬送ベルトはゴムベルトであって、前記主印刷機はフレキソ印刷機であって、前記部分印刷機はインクジェットプリンタ又はレーザプリンタであって、前記特定のインクは水性インク又はUVインクであって、前記光は、前記特定のインクが水性インクの場合はIR光、前記特定のインクがUVインクの場合はUV光であることを特徴としている。
【0017】
また、請求項8記載の本発明の印刷システムは、被印刷物を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物の一部に絵柄の印刷を用いて行う部分印刷機と、前記部分印刷機により前記被印刷物に印刷された前記絵柄の乾燥又は硬化のために光を照射する光源とをそなえた印刷システムであって、前記光源からの前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽する遮光機構を備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項9記載の本発明の印刷方法は、被印刷物を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物の一部に絵柄の印刷を用いて行う部分印刷機と、前記部分印刷機により前記被印刷物に印刷された前記絵柄の乾燥又は硬化のために光を照射する光源とをそなえ、前記部分印刷機による印刷後に前記光源からの前記光により速やかに乾燥又は硬化の処理を行なう印刷方法であって、前記光源から前記光を照射する際に、前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の本発明の複合印刷機によれば、刷版を使用して印刷を行う主印刷機と刷版の付け替え作業なしに絵柄の変更が可能な部分印刷機を組み合わせて使用するので、所定部分の絵柄の変更が頻繁に要求される場合において、刷版の付け替えによる生産性の低下を防止することができる。特に部分印刷機で印刷されるインクは、光源から照射される光によって乾燥又は硬化が行われるがその際、光は所要のタイミングで遮蔽機構によって遮蔽されるので搬送ベルトに直接光が照射されないようにして搬送ベルトを保護しながらインクの乾燥又は硬化が行うことができる。
【0020】
また、請求項2に記載の本発明の複合印刷機によれば、光源と搬送ベルトとの間に配設された遮光部材がモータによって回転駆動され、光が搬送ベルトに直接照射されるタイミングで光を遮蔽するように遮光部材の回転駆動が制御されるので、遮光部材による光の遮蔽をスムーズに行うことができ、光による搬送ベルトのダメージを抑制することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の本発明の複合印刷機によれば、遮光部材に開口部が設けられ、開口部を通じて部分的な絵柄の部分に光が照射されるように搬送速度に同期して遮光部材の回転駆動が制御されるので、確実にインクの乾燥又は硬化を行いながら、搬送ベルトへの光の直接照射を防止して搬送ベルトを保護することができる。
また、請求項4に記載の本発明の複合印刷機によれば、遮光部材は1つ以上の開口部を有する円板状の遮光板で構成しているので単純な構造でインクの乾燥又は硬化と搬送ベルトの保護とを確実に行うことができる。
【0022】
また、請求項5に記載の本発明の複合印刷機によれば、遮光部材は開口部を有するエンドレスベルト状の遮光フィルタで構成しているので、開口部を搬送ベルトの送り方向(搬送ライン)と平行に移動させることができ、被印刷物の搬送速度と同期が取りやすく、搬送ベルトの保護を図りながらのインクの乾燥又は硬化を確実に行うことができる。
また、請求項6に記載の本発明の複合印刷機によれば、被印刷物が段ボールシートであり、遮光部材の開口部が部分印刷機で印刷される部分の位置及び大きさに応じて配設されるので製函機の印刷部において、段ボールシートの絵柄の変更が多い特定部分に対して印刷を行う際に有効である。
【0023】
また、請求項7に記載の本発明の複合印刷機によれば、部分印刷機がインクジェットプリンタ又はレーザープリンタであり、絵柄の変更に際して刷版の付け替えをすることなく容易に絵柄を変更して印刷できる上、水性インクを用いた場合はIRランプにより、速やかにインクの乾燥を行うことができ、またUVインクを用いた場合はUVランプによって速やかにインクの硬化を行うことができる。
【0024】
また、インクの乾燥又は硬化の為に用いるIR光(赤外線)やUV光(紫外線)が搬送ベルトに直接照射されないので、搬送ベルトとして、安価で摩擦係数は高いが熱や紫外線には弱いゴムベルトを使用しても、光によるゴムの劣化を抑制することができる。そのため、搬送ベルトとしてゴムベルトを用いる既存の製函機あるいはその印刷部に容易に付設することができ、安価な装置コストで複合印刷機を構成することができる。
【0025】
また、請求項8に記載の本発明の印刷システム及び請求項9に記載の本発明の印刷方法によれば、部分印刷機で印刷されるインクは、光源から照射される光によって乾燥又は硬化が行われるがその際、光は所要のタイミングで遮蔽機構によって遮蔽されるので搬送ベルトに直接光が照射されないようにして搬送ベルトを保護しながらインクの乾燥又は硬化が行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1〜図4は本発明の第1実施形態に係る、複合印刷機としての段ボールシート用印刷機の要部(光源及び遮光機構)を説明するためのものであって、図1はその光源及び遮光機構を示す図であって、図1(a)は模式的な側面図、図1(b)は模式的な平面図、図2はその搬送ベルト上を段ボールシートが送られる様子を示した模式的な平面図、図3はその遮光機構のモータ制御系の構成を示すブロック図、図4はそのモータの速度パターンを示すタイムチャートである。
【0027】
本実施形態に係る複合印刷機は、図7に示すような製函機に備えられた段ボールシート用印刷機であって、各印刷ユニット(フレキソ印刷機)を主印刷機としてこれに部分印刷機などを付設したものである。つまり、この複合印刷機の構成は、図7に示す製函機の印刷部において、最下流のフレキソ印刷機1より下流のP1の位置に図示しないインクジェット方式等の部分印刷機が設けられ、さらにその下流のP2の位置には図1に示す光源11、及び遮光板(遮光部材)12aを有する遮光機構12からなるインク処理装置が設けられた構成となっている。
【0028】
したがって、段ボールシート22は給紙部から1枚ずつ搬送ベルト21上に供給されてフレキソ印刷機1、部分印刷機(P1)、インク処理装置(P2)へと順に搬送されながら各処理が行われるようになっている。このとき、給紙部では指令された所定の周期で段ボールシート22を搬送ベルト21に供給する。また、段ボールシート22が1枚給紙される毎に給紙タイミング信号が出力される。各フレキソ印刷機1や部分印刷機やインク処理装置は、この給紙タイミング信号及び指令された所定の周期に基づいて作動するようになっている。給紙部から排出された段ボールシート22はまずフレキソ印刷機によって絵柄の変更の無い部分が印刷され、さらに部分印刷機(P1)によって絵柄の変更が頻繁に要求される部分(例えば製造年月日など)が印刷された後、インク処理装置(P2)へと搬送されるようになっている。ここでは、部分印刷機としてUVインクを使用するインクジェットプリンタを用いる。
【0029】
図1(a)に示すように、段ボールシート22は搬送ベルト21の上に載置された状態でインク処理装置に搬送される。なお、搬送ベルト21には段ボールシート22のずれ等を防止するため、摩擦係数の高いゴムベルトが用いられている。また、図2に示すように段ボールシート22は、搬送ベルト21上に1枚づつ間欠的に載置されているため、シートとシートとの間隙部分では搬送ベルト21が露出している。
【0030】
インク処理装置は光源11と遮光機構12を備え、遮光機構12は遮光板12aを有している。つまり、搬送ベルト21の上方には、部分印刷機で印刷されたインクを乾燥又は硬化させるための光を照射する光源11が設置される。なお、本実施形態に係る複合印刷機では部分印刷機としてUVインクを使用するインクジェットプリンタを用いているため、光源11にはUVインクを硬化させるためにUVランプを用いてUV光(紫外線)を照射しているが、使用するインクが水性インクである場合には光源11にIRランプを用いてIR光(赤外線)を照射する。また、IRランプを用いる場合はブロワーを併設してIR光とエアブローによって水性インクの乾燥を促進させるようにしてもよい。
【0031】
また、光源11と搬送ベルト21の間には、段ボールシート22の通過に邪魔にならないように搬送ベルト21の上面から適当な間隔をおいて円板状の遮光板12aが搬送ベルト21の上面と平行に設置されており、円板の中心に接続された軸17によって回動可能に支持されている。また、遮光板12aには、図1(b)に示すように、開口部14が設けられている。この開口部14は、周方向に等間隔に複数(ここでは2つ)設けられているが1つのみでもよい。軸17にはモータ13が直結されており、モータ13はモータ制御手段16によって回転を制御されるようになっている。
【0032】
モータ制御手段16は、給紙タイミング信号を検知した時期と搬送ベルト21の搬送速度と給紙部から光源11の光が照射可能になる位置までの距離に加えて、あらかじめ上位システムから伝達された段ボールシート22のサイズ情報と部分印刷機によって印刷された箇所(部分印刷)25の位置情報L2とに基づいて、光源11の光が部分印刷25に照射可能になる時点(即ち、光源11の光が段ボールシート21上への照射範囲内に入る時期)を演算し、その時点から遮光板12aの開口部14を通して光源11の光を照射できるように遮光板12aの回転状況を制御するようになっている。即ち、開口部14が所定の位置にくるようにモータ13を通じて遮光板12aを回転させるようになっている。
【0033】
その後、モータ制御手段16は、部分印刷25に光源11の光が照射可能な間は、段ボールシート22の搬送速度と同期して常に部分印刷25に光が照射される状態に開口部14が移動するようにモータ13を制御する。さらに時間が経過し、部分印刷25に光源11の光が照射不可能になった時点でモータ制御手段16は、光源11の光が開口部14を通じて搬送ベルト21に直接照射されないように開口部14が移動するようにモータ13を制御する。
【0034】
モータ制御手段16によるモータ13の制御についてさらに詳しく説明すると、モータ制御手段16は機能要素として、図1,図3に示すように、演算回路16aとモータ制御部16bとが備えられている。図3に示すように演算回路16aは、給紙タイミング信号と、あらかじめ上位システムから伝達された部分印刷25の位置情報L2と段ボールシート22の搬送速度Vsとに基づいて、モータ13の各目標回転速度V1,V2,モータの各作動期間T,及びT1〜T4を演算し、図4(a),(b)の速度パターンを設定する。モータ制御部16bは、この速度パターンに基づいてモータドライバ13aを制御してモータ13を適切に駆動させる。
【0035】
なお、図4(a),(b)において、目標回転速度V1,V1´は前の段ボールシート22との同期期間が終了してから、次の段ボールシート22と同期するまでの期間においてのモータの待機速度であり、給紙タイミング信号の信号間隔とシート速度に加えて、シート端部から部分印刷25までの位置情報L2に基づいて演算される。目標回転速度V2,V2´は部分印刷25の動きに同期させる同期速度であって、段ボールシート22の搬送速度Vsに比例する[即ち、Vs∝V2(Vs∝V2´)の関係である]。T1,T1´は待機速度V1(V1´)でモータを回転させる期間、T2,T2´は待機速度V1(V1´)から同期速度V2(V2´)へモータ回転を移行する際の移行期間である。T3,T3´は同期速度V2(V2´)でモータを回転させる期間即ち、段ボールシート22との同期期間である。T4,T4´は同期時間T3(T3´)を過ぎた後、次の段ボールシート22に対するモータの目標回転速度V1(V1´)の速度へモータの回転を移行する際の移行期間である。
【0036】
段ボールシート22の間隔(部分印刷25の間隔)が狭い場合には、図4(a)に示すように速度V1は、段ボールシート22の搬送速度との同期速度V2よりも速く設定される。一方、段ボールシート22の間隔(部分印刷25の間隔)が広い場合は図4(b)に示すようにV1´は同期速度V2´よりも遅く設定されることになる。
また、遮光板12aは常に強力な光(いわゆる電磁波)の照射を受けるため高温になる。そこで、遮光板12aが高温になるのを防ぐために、例えば、UVランプの場合は、熱線の反射を防止するダイクロイックミラーや、あるいは、図5に示すように、熱線の透過を抑える熱線吸収フィルタで形成される断熱部材15をUVランプの照射面に挿入してもよい。
【0037】
また、これらの熱線抑制手段をとらない場合にも、遮光板12aにフィンなどを取付け放熱効率をあげてさらにエアブローによる冷却を行うとともに、駆動軸の一部に断熱部を設けてモータ13への熱伝達を抑えるようにしてもよい。
【0038】
本発明の第1実施形態としての複合印刷機は、上述のごとく構成されているので、絵柄の一部を頻繁に変更して印刷するようなケースにおいてもフレキソ印刷機と部分印刷機を組み合わせて印刷することができるため、印刷コストを抑えながらも刷版の付け替えによる生産性の低下を抑制することができる。また、光源11から照射される強力な赤外線や紫外線が遮光板12aによって遮蔽され、搬送ベルト21に直接照射されることはない。そのため、搬送ベルト21が熱や紫外線に弱いゴムベルトであっても、赤外線や紫外線によるゴムの劣化等の不具合が大幅に低減される。
【0039】
また、遮光板12aを適切に回転させ、段ボールシート22の搬送速度(部分印刷25の移動速度)に同期して開口部14を移動させるようにしているので、開口部14を通じて、インクの乾燥又は硬化を要する部分に対しては十分に赤外線や紫外線が照射されるため、インクの乾燥又は硬化は確実に行われる上、その場合においても赤外線や紫外線は段ボールシート22によって遮蔽されるので搬送ベルト21に照射されることはない。
【0040】
さらに、遮光板12aの回転パターンは給紙タイミングに基づいて設定されるため、段ボールシート22のサイズ及び段ボールシート22の搬送間隔や部分印刷の位置までも考慮して演算されるので、段ボールシートのサイズが変更され、また印刷位置が変更された場合であっても、搬送ベルト21への光の直接照射を遮蔽しながらもインクの乾燥又は硬化を確実に行うことができる。
【0041】
[第2実施形態]
図6は本発明の第2実施形態に係る複合印刷機としての段ボールシート用印刷機の要部(光源及び遮光機構)を説明するためのものであって、図6はその光源及び遮光機構の模式的な斜視図である。
【0042】
本実施形態に係る複合印刷機においては図6に示すように、遮光機構31に遮光部材としてエンドレスベルト状の遮光フィルタ31aが用いられている点が第1実施形態と異なる。遮光フィルタ31aは耐熱性、耐紫外線性の樹脂やゴム又は薄いステンレスなどの金属によってエンドレスベルト状に形成され、4つのローラ32で支持されながら、光源11と搬送ベルト21との間を通るように配設される。4つのローラ32のうちの1つはモータ13の駆動力を伝達できるように軸17を介してモータ13に接続され、モータ13が駆動することによってローラ32を介して遮光フィルタ31aが送られるようになっている。
【0043】
本実施形態においてもモータ13の駆動は、給紙タイミング信号を検知した時期と搬送ベルト21の搬送速度と給紙部から光源11の光が照射可能になる位置までの距離と段ボールシート22のサイズと部分印刷25の位置情報に基づいてモータ制御手段16によって制御される点は第1実施形態と同様である。
【0044】
本発明の第2実施形態に係る光源及び遮光機構は上述のごとく構成されているので、絵柄の一部を頻繁に変更して印刷するようなケースにおいて、印刷コストを抑えながらも刷版の付け替えによる生産性の低下を抑制することができるとともに、光源11から照射される強力な赤外線や紫外線が遮光フィルタ31aによって遮蔽され、搬送ベルト21に直接照射されることはなく、搬送ベルト21のゴムの劣化等の不具合が大幅に低減されるという第1実施形態と同様の効果を得る事ができる。
【0045】
さらに、遮光フィルタ31aがエンドレスベルト状に形成され、搬送ベルト21と平行に配置されているので、遮光フィルタ31aの開口部14を搬送ベルト21の送り方向(即ち、搬送ライン)と平行に移動させることができ、開口部14が円弧状に移動する第1実施形態よりもさらに段ボールシート22の搬送速度(部分印刷25の移動速度)との同期がとりやすく、光源11の光を効率よく照射してインクの乾燥又は硬化を行うことができる。
【0046】
また、遮光フィルタ31aによって光源11の光を遮蔽する場合において、遮光フィルタ31aが光源11の光の照射面(光を発する面)全体を覆うように配置することにより、インクの乾燥又は硬化を行わない場合(部分印刷25が光源11からの光の照射領域にない場合)には、遮光フィルタ31aの開口部14の無い部分で光源11の光を確実に遮蔽することができ、搬送ベルト21に直接照射される光を大幅に低減し、搬送ベルト21のダメージを抑制することができる。
【0047】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば上述の実施形態では、主印刷機としてフレキソ印刷機を用い、部分印刷機としてインクジェットプリンタを用いているが、上記の印刷方式は適宜変更可能である。被印刷物についても段ボールシートに限らない。
また、本実施形態では主印刷機に部分印刷機を加えた複合印刷機に、インク処理装置(光源11と遮光機構12,31)を備えたものについて説明したが、かかる部分印刷機を単独で使用した場合にこのようなインク処理装置を備えるようにしてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態における遮光部材(遮光板12a及び遮光フィルタ31a)は通常印刷時の遮光を目的とし、緊急時すなわち機械が意図せざる原因によって停止した場合には、別の遮光部材を作動させて搬送ベルト21に強力な赤外線またが紫外線が照射されるのを防止するようにしてもよい。この場合、第1,第2実施形態の効果に加えて不測の事態においても搬送ベルト21の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光源と遮光機構を示す図であって、(a)はその模式的な断面図、(b)は特に遮光機構のうちの遮光板を示す模式的な平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光源と遮光機構を示す図であって、搬送ベルト上を段ボールシートが送られる様子を示した模式的な平面図である。
【図3】本発明の第1及び第2実施形態に係るモータ制御手段の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1及び第2実施形態に係るモータの駆動速度と駆動時間を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例に係る光源と遮光機構を示す図であって、断熱部材を配設した場合の模式的な側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光源と遮光機構を示す模式的な斜視図である。
【図7】従来の製函機の印刷部に関する簡易構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 印刷ユニット
2 印刷シリンダ
3,21 搬送ベルト
4,22 段ボールシート
5 アニアックスロール
11 光源
12 遮光機構
12a 遮光板(遮光部材)
13 モータ
14 開口部
15 断熱部材
16 モータ制御手段
17 軸材
25 部分印刷
31 遮光機構
31a 遮光フィルタ(遮光部材)
32 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物に刷版を利用して主要な絵柄の印刷を行う主印刷機と、
前記搬送ベルトによる搬送路に沿って前記主印刷機の上流部又は下流部に配設され、前記刷版の付け替え作業なしに絵柄の変更が可能であって、搬送される前記被印刷物に、部分的な絵柄の印刷を特定のインクを用いて行う部分印刷機と、
前記部分印刷機で印刷された前記特定のインクの乾燥又は硬化のために光を照射する光源と、
前記光源からの前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽する遮光機構とを備えた
ことを特徴とする、複合印刷機。
【請求項2】
前記遮光機構は、
前記光源と前記搬送ベルトとの間に配設され、前記搬送ベルトに向かう前記光を遮蔽しうる遮光部材と、
前記遮光部材を回転駆動するモータと、
前記光が前記搬送ベルトに直接照射されるタイミングで前記遮光部材が前記光を遮蔽するように前記モータを制御するモータ制御手段とからなる
ことを特徴とする、請求項1記載の複合印刷機。
【請求項3】
前記遮光部材は少なくとも1つの開口部を有し、前記搬送ベルト上で、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記光が前記開口部を通じて前記部分的な絵柄の部分に照射されるように、前記モータ制御手段は、前記遮光部材が前記被印刷物の搬送速度に同期して回転するよう前記モータを制御する
ことを特徴とする、請求項2記載の複合印刷機。
【請求項4】
前記遮光部材は1つ以上の開口部を有する円板状の遮光板であり、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記光が前記遮光板の前記開口部を通じて前記部分的な絵柄の部分に照射されるように、前記遮光板を前記被印刷物の搬送速度に同期して回転するよう前記モータを制御する
ことを特徴とする、請求項3記載の複合印刷機。
【請求項5】
前記遮光部材は1つ以上の開口部を有するエンドレスベルト状の遮光ベルトであり、前記特定のインクを用いて印刷された前記部分的な絵柄の部分が前記光の照射範囲を通過する際には、前記光が前記遮光ベルトの前記開口部を通じて前記部分的な絵柄の部分に照射されるように前記遮光ベルトを前記被印刷物の搬送速度に同期して動作するよう前記モータを制御する
ことを特徴とする、請求項3記載の複合印刷機。
【請求項6】
前記被印刷物は給紙部から所定の給紙タイミングで前記搬送ベルト上に給紙される段ボールシートであって、
前記遮光部材の前記開口部は、前記搬送コンベア上を搬送される前記段ボールシートの前記部分的な絵柄部分の位置及び大きさに応じて配設され、
前記モータ制御手段は、前記給紙部からの給紙タイミングと前記印刷機の搬送コンベアの速度とに基づいて前記遮光部材を駆動させる駆動パターンを演算して、前記モータを制御する
ことを特徴とする、請求項3〜5の何れか1項に記載の複合印刷機。
【請求項7】
前記搬送ベルトはゴムベルトであって、
前記主印刷機はフレキソ印刷機であって、
前記部分印刷機はインクジェットプリンタ又はレーザプリンタであって、
前記特定のインクは水性インク又はUVインクであって、
前記光は、前記特定のインクが前記水性インクの場合はIR光、前記特定のインクが前記UVインクの場合はUV光である
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の複合印刷機。
【請求項8】
被印刷物を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物の一部に絵柄の印刷を用いて行う部分印刷機と、
前記部分印刷機により前記被印刷物に印刷された前記絵柄の乾燥又は硬化のために光を照射する光源とをそなえた印刷システムであって、
前記光源からの前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽する遮光機構を備えた
ことを特徴とする、印刷システム。
【請求項9】
被印刷物を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによる搬送路に沿って配設され、搬送される前記被印刷物の一部に絵柄の印刷を用いて行う部分印刷機と、
前記部分印刷機により前記被印刷物に印刷された前記絵柄の乾燥又は硬化のために光を照射する光源とをそなえ、前記部分印刷機による印刷後に前記光源からの前記光により速やかに乾燥又は硬化の処理を行なう印刷方法であって、
前記光源から前記光を照射する際に、前記光が前記搬送ベルトに直接照射されないように所要のタイミングで前記光を遮蔽する
ことを特徴とする、印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272873(P2006−272873A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98928(P2005−98928)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】