説明

複合学習用教材キット

【課題】小学校や中学校において、生物育成についての教程と木工工作についての教程とを並行して効率よく学習させることができる複合学習用教材キットを提供する。
【解決手段】プランター1、育苗カップ3、仕切りユニット4、栽培用土5、培養土7、保護鉢製作用の木材片8,9、コーナーカバー10を具備する。育苗カップ3内に仕切りユニット4を挿入し、その仕切りユニット4と育苗カップ3との間の複数の育苗区域内に培養土7を詰め込んで苗床とし、その苗床に種を蒔いて発芽を待ち、またプランター1内に栽培用土5を収容し、さらに木材片8,9をのこぎりで切断し、コーナーカバー10を用いて保護鉢を製作する。苗床で種が発芽し、苗となったときに、仕切りユニット4と一体的に育苗カップ3内から苗床を抜き取り、その1つの苗床の苗をプランター1内に移植し、そのプランター1を保護鉢内に収納し、プランター1内の苗の育成を観察する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小学校や中学校の授業課程において、生物育成についての教程と木工工作についての教程とを並行して学習することができる複合学習用教材キットに関する。
【背景技術】
【0002】
小学校や中学校の教育課程のなかで、理科教育や技術教育として各児童(生徒を含む)が個々に植物を栽培し、その生育過程を観察するという体験学習がある。このような学習にあたっては、学校側から植物栽培用の教材キットが各児童に支給され、その教材キットを用いて各児童が植物を栽培し、生物現象を修得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−242393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこの種の教材キットは、植物を栽培してその生育過程を観察するという目的しかもっていない。学校の教育課程のなかには、複数の部品を組立てたり、木工材を加工したりして物を作り上げるという工作課程があり、このような各種の体験的な学習は個々の教程で学ぶよりも、一環の授業として実施したほうが習熟効果が上がり、また各児童の興味を高めて授業の効率化を図り得る。
【0005】
そこで、この発明は、生物育成についての教程と木工工作についての教程とを並行して効率よく、かつ児童に興味をもたせつつ学習させて授業の効率化を図ることができる複合学習用教材キットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、苗の植付け用の栽培用土を収容するための三角形状のプランター及びその栽培用土と、種蒔き用の培養土を収容するための育苗カップ及びその培養土と、前記育苗カップ内に挿入可能で、その挿入により前記育苗カップ内を複数の育苗区域に仕切ることが可能で、かつその各育苗区域内に前記培養土を詰め込んで苗床としたときにその各苗床を保持することが可能な仕切りユニットと、前記プランターを収納するための保護鉢を製作するための木材片及びコーナーカバーとを具備し、前記育苗カップ内に前記仕切りユニットを挿入し、その挿入で該育苗カップ内に形成される各育苗区域内に前記培養土を詰め込んで苗床とし、これら苗床に植物の種を蒔いて発芽を待ち、一方、前記プランター内に前記栽培用土を収容し、さらに前記保護鉢製作用の木材片をのこぎりで切断して3つの鉢用側板を作り、その3つの側板を三角形に並べ、その三角形の各角部となる一方の側板の端部と他方の側板の端部との隣接部に前記コーナーカバーを嵌め込み、その隣接する側板の端部相互を固定し、かつ前記三角形に配置された側板の底面に、前記保護鉢製作用の木材片を加工して底板として取り付けることで、前記プランターの収納が可能な三角形の保護鉢を製作し、前記育苗カップ内の各苗床で種が発芽し、苗となったときに、前記仕切りユニットを前記育苗カップ内から前記各苗床ごと抜き取り、その抜き取った各苗床のうちから1つの苗床を選択し、その選択した苗床を前記プランター内の栽培用土に移植し、そのプランターを前記保護内に収納し、前記プランター内の苗の育成を観察することを可能にしている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の複合学習用教材キットによれば、生物育成についての教程と木工工作についての教程とを並行して有効に、かつ児童に興味をもたせつつ学習させて授業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態に係る教材キットの用品一式を示す斜視図。
【図2】その教材キットの仕切りユニットを示す斜視図。
【図3】その仕切りユニットの平面図。
【図4】その教材キットのコーナーカバーを示す斜視図。
【図5】(A)は図4中のA−A線に沿う断面図、(B)は図4中のB−B線に沿う断面図。
【図6】その教材キットの底皿内に培養土を入れた状態を示す斜視図。
【図7】その教材キットの育苗カップ内に培養土を詰め込んだ状態を示す斜視図。
【図8】その教材キットのプランター内に栽培用土を投入した状態を示す斜視図。
【図9】その教材キットの木材片を切断して保護鉢用の側板とした状態を示す斜視図。
【図10】その側板で保護鉢用の枠体を製作した状態を示す斜視図。
【図11】その保護鉢用の枠体の底面に底板を取り付けた状態を示す斜視図。
【図12】育苗カップ内から苗床を取り出した状態を示す斜視図。
【図13】苗を移植したプランターを保護鉢内に収納した状態を示す斜視図。
【図14】苗を移植したプランターを保護鉢内に収納した状態を示す平面図。
【図15】プランターを収納した複数の保護鉢の配列設置例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
この発明の教材キットは、図1に示すように、プランター1、底皿2、育苗カップ3、仕切りユニット4、ビニール袋詰めの栽培用土5、有機肥料6、保水性のタブレット形培養土7、保護鉢製作用の木材片8,9及びコーナーカバー10とを備えている。プランター1、底皿2は1つずつ、育苗カップ3、仕切りユニット4は2つずつ、袋詰めの栽培用土5、有機肥料6、タブレット形培養土7は1つずつ、保護鉢製作用の木材片8,9は大小1つずつ、コーナーカバー10は3つ用意されている。
【0011】
プランター1は、平面視がほぼ三角形をなす容器で、その1つの三角の角部は鋭角に突出しない平坦状の隅取り部13となっている。そして底面には多数の排水孔14が形成されている。底皿2は、平面視がプランター1よりやや大きい三角形の浅底皿形状をなしている。
【0012】
各育苗カップ3は、プランター1よりも小型の平面視が三角形の容器であり、これら育苗カップ3内に仕切りユニット4を挿脱自在に挿入することが可能となっている。各仕切りユニット4は、図2及び図3に示すように、育苗カップ3内に挿入可能な三角形のベース部17を有し、このベース部17の上に仕切り筒18が立設されている。仕切り筒18は、ベース部17の各角部に対応して垂直に起立する仕切り壁19を有し、これら仕切り壁19の外側でかつベース部17の各角部の内側上方となる領域がそれぞれ三角形の苗床用の空間部となっている。また、仕切り筒18の上面にはつまみ20が設けられている。なお21は、仕切り壁19の側面に突出形成された補強材を兼ねる仕切り用突起である。
【0013】
コーナーカバー10は、図4に示すように、縦長で、平面視がほぼ三角形の柱形に形成されている。図5には図4中のA−A線に沿う断面図とB−B線に沿う断面図を示してあり、これら断面図に示すようにこのコーナーカバー10の一側面には、保護鉢製作用の木材片8を切断して得る木片(8a)の端部を嵌め込むことが可能な2つの嵌合部23が設けられ、その一方の嵌合部23の開口の向きと、他方の嵌合部23の開口の向きとが互いに60度の角度で交わる形態となっている。
なお、前記プランター1、底皿2、育苗カップ3、仕切りユニット4、コーナーカバー10はそれぞれポリプロピレンなどの合成樹脂材料で一体に成形されている。
【0014】
次に、この教材キットを用いて授業を進める手順について説明する。
【0015】
まず、各児童に教材キットを支給する。各児童は、図6に示すように、袋詰め内のタブレット形培養土7を底皿2の上にあけ、その培養土7に水を注入する。水の注入には、育苗カップ3を軽量カップとして用いる。育苗カップ3を軽量カップとして用いることで、所定量の水を培養土7に適正に注入することができる。水の注入後には、底皿2内で培養土7を押し広げながらほぐす。
【0016】
次に、図7に示すように、各育苗カップ3内にそれぞれ仕切りユニット4を挿入する。仕切りユニット4の挿入により、仕切りユニット4の各仕切り壁19と、育苗カップ3の各頂部の壁面との間にその各仕切り壁19と、育苗カップ3の各角部の壁面とで囲まれる三角形状の苗床用の空間が生じ、これら空間が育苗区域となる。このような育苗区域は各育苗カップ3ごとに3つ形成される。
【0017】
次に、各育苗カップ3の内側の前記各空間内に前記底皿2内の培養土7を均等的に詰め込む。これにより各育苗カップ3に3つずつの苗床が作られる。この後、その各苗床に植物の種を1つずつ蒔き、発芽を待つ。この工程段階で、児童は培養土7の処理、苗床の作り方、種の蒔き方などを体験的に学ぶことができる。
【0018】
次に、この作業後、あるいはこの作業と並行して、図8に示すように、プランター1を底皿2の上に置き、袋詰め内の栽培用土5をそのプランター1内に投入し、さらに有機肥料6を混ぜ合わせ、苗植えの準備をする。この段階で、各児童は有機栽培について学ぶことができる。
【0019】
種を蒔いた各児童の育苗カップ3は、教室内などの所要の場所に設置し、水撒きなどの世話をしながら発芽を待つ。各育苗カップ3は三角形となっており、このため多数の育苗カップ3を互いに密に隣接させて無駄な空間を作ることなく並べることができる。したがって、教室の窓ぎわなどの狭い場所であっても各児童の育苗カップ3を密に効率よく設置することができる。
【0020】
各育苗カップ3の苗床に蒔いた種はやがて発芽するから、児童はその芽の成長を観察する。各育苗カップ3には、それぞれ3つの苗床が形成され、その各苗床に種が蒔かれ、その種が発芽するから、その各苗床ごとでの芽の成長度合を比較しながら観察することができる。このような観察で生物の芽の出方やその生育過程を体験的に学ぶことができる。
【0021】
発芽から苗への成長を待つ間には、保護鉢を製作する。この製作にあたっては、まず予め用意されている木材片8,9のうちの長尺寸法の木材片8を、児童がのこぎりを用いて長手方向を三等分するように切断して図9に示すように、3つの鉢用側板8aを得る。そしてその3つの側板8aを三角形状に並べ、その三角形の角部となる互いに隣接する一方の側板8aの端部と他方の側板8aの端部とに跨って、図10に示すように、1つのコーナーカバー10を嵌め込む。すなわち、一方の側板8aの端部をコーナーカバー10の内側の一方の嵌合部23に嵌め合わせ、他方の側板8aの端部をコーナーカバー10の内側の他方の嵌合部23に嵌め合わせる(図4及び図5の鎖線参照)。そしてそのコーナーカバー10をねじで双方の側板8aに固定する。このような作業を、三角形状に並べた側板8aの残りの他の二つの角部においても同様に実施し、各側板8aを互いに固定して図10に示すような三角形状の枠体を組立てる。
【0022】
さらにこの後、図11に示すように、短寸法の木材片9をのこぎりで所要形状に切断して底板9aとし、その底板9aを三角形に組立てた枠体の底面に、ハンマーを用いてくぎで打ち付ける。これにより保護鉢30が完成する。
【0023】
この作業工程で、児童は木工細工、つまりのこぎりの使い方、木材片の切り方、ハンマーの使い方、くぎやねじの取り扱い方、木工材の組立て方などを学ぶことができる。三角形の保護鉢30を組立てるときには、互いに隣接する側板8aをコーナーカバー10に嵌め込んで固定するだけでよく、したがって技量の稚拙な児童であってもその角部を適正な角度に整えて組立てることができる。
【0024】
前記育苗カップ3内で発芽した芽が成長して苗となったときには、その苗の移植を行なう。この移植の際には、図12に示すように、まず育苗カップ3内から仕切りユニット4を引き上げて取り出す。仕切りユニット4の引き上げは、つまみ20を指先でつまむことで容易に行なえる。1つの育苗カップ3内には3つの育苗区域において苗床が作られているが、その3つの苗床は仕切りユニット4のベース部17で支持されており、したがって仕切りユニット4を引き上げて取り出すことにより、その3つの苗床を同時に育苗カップ3内から抜き取ることができる。そしてその苗床の全体が仕切りユニット4と一体的に抜き取られるから、苗床や苗の根が傷んだり、根が崩れたりするようなことがない。
【0025】
育苗カップ3は、2つあるからその2つの育苗カップ3からそれぞれ苗床を抜き取る。したがって、苗床は都合6つとなる。そしてその各苗床について、苗の育成状態や根付きの状態を観察し、そのうちのなかから育成状態が最も良好な苗を選択し、その選択した苗を既に準備していある前記プランター1内の栽培用土5に移植する。この工程により、苗の育成状態、根付きの状態の観察や苗の移植の仕方を学ぶことができる。
【0026】
プランター1に苗を移植した後には、図13及び図14に示すように、そのプランター1を底皿2と共に製作済みの前記保護鉢30内に収納する。そして各児童の保護鉢30を教室内や校庭などの所要の場所に設置し、水撒きなどの世話をしながら苗の生育を観察する。
【0027】
栽培用のプランター1が汚れたような場合には、その栽培用のプランター1を保護鉢30内から取り出して清掃する。三角形の栽培用のプランター1は、その角部の1つが鋭利に突出しない平坦状の隅取り部13となっており、このため栽培用のプランター1の隅取り部13と保護鉢30との間には一定の空間が生じている。したがって、その空間内に児童が指を挿入し、その指先を栽培用のプランター1に掛けることでプランター1を容易に取り出すことができる。
【0028】
プランター1を収納した保護鉢30は三角形をなしており、このため多数の保護鉢30を互いに密に隣接させて無駄な空間を作ることなく並べ花壇とすることができる。例えば、図15(A)に示すように、班ごとに6つ分けた保護鉢30を互いのその一側面が隣接するように横一列に並べて横形花壇としたり、図15(B)に示すように、6つの保護鉢30を互いにその一側面が隣接するように六角形状に並べて角形花壇としたりすることが可能である。さらには、星形や三角形などの種々の形状の花壇とすることも可能である。
【0029】
このようにこの発明の教材キットを用いることにより、生物育成についての教程と木工工作についての教程とを並行して有効に、かつ児童に興味をもたせつつ学習させることができ、これにより授業の効率化を達成することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1…プランター
2…底皿
3…育苗カップ
4…仕切りユニット
5…栽培用土
6…有機肥料
7…培養土
8.9…木材片
8a…鉢用側板
9a…底板
10…コーナーカバー
13…隅取り部
17…ベース部
18…仕切り筒
19…仕切り壁
23…嵌合部
30…保護鉢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の植付け用の栽培用土を収容するための三角形状のプランター及びその栽培用土と、種蒔き用の培養土を収容するための育苗カップ及びその培養土と、前記育苗カップ内に挿入可能で、その挿入により前記育苗カップ内を複数の育苗区域に仕切ることが可能で、かつその各育苗区域内に前記培養土を詰め込んで苗床としたときにその各苗床を保持することが可能な仕切りユニットと、前記プランターを収納するための保護鉢を製作するための木材片及びコーナーカバーとを具備し、
前記育苗カップ内に前記仕切りユニットを挿入し、その挿入で該育苗カップ内に形成される各育苗区域内に前記培養土を詰め込んで苗床とし、これら苗床に植物の種を蒔いて発芽を待ち、一方、前記プランター内に前記栽培用土を収容し、さらに前記保護鉢製作用の木材片をのこぎりで切断して3つの鉢用側板を作り、その3つの側板を三角形に並べ、その三角形の各角部となる一方の側板の端部と他方の側板の端部との隣接部に前記コーナーカバーを嵌め込み、その隣接する側板の端部相互を固定し、かつ前記三角形に配置された側板の底面に、前記保護鉢製作用の木材片を加工して底板として取り付けることで、前記プランターの収納が可能な三角形の保護鉢を製作し、
前記育苗カップ内の各苗床で種が発芽し、苗となったときに、前記仕切りユニットを前記育苗カップ内から前記各苗床ごと抜き取り、その抜き取った各苗床のうちから1つの苗床を選択し、その選択した苗床を前記プランター内の栽培用土に移植し、そのプランターを前記保護内に収納し、前記プランター内の苗の育成を観察することが可能なことを特徴とする複合学習用教材キット。
【請求項2】
前記育苗カップは2つ備えられており、その2つの育苗カップがそれぞれ三角形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合学習用教材キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−175926(P2012−175926A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40452(P2011−40452)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(391008618)山崎教育システム株式会社 (11)
【Fターム(参考)】