説明

複合容器

【課題】 排出部を開口後にも所定の排出部位に配置するまでは液体が排出されず、排出部の開口後でも取り扱い易いとともに、液体の保存安定性を確保し易い複合容器を提供する。
【解決手段】 排出部14及び閉塞された気体導入部15を備えた硬質液体容器11と、硬質液体容器11の気体導入部15に気密に接続されて密封された気体収容体12と、気体収容体12内に外部から操作可能に設けられ、気体導入部15を開口可能な導入部開口手段17とを備え、導入部開口手段17により気体導入部15が開口されて、気体収容体12内の気体が硬質液体容器11内に導入されることにより、液体が排出可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬質液体容器内に収容された液体を、硬質液体容器内に気体を供給することにより排出する複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液等の医療用の液体などを収容する容器として、排出部を開口させて容器内の内圧を上昇させることにより、排出部から液体を排出させるものが多数知られている。
【0003】
例えば、内視鏡処置時等に投与される局所止血用医薬組成物を封入した容器として、下記特許文献1等が提案されている。
ここでは、排出部を構成するキャップ付きノズルと、可撓性容器本体とからなり、可撓性容器本体が蛇腹構造を備え、内部に局所止血用医薬組成物である液体が収容されたプラスチック製の可撓性容器が提案されている。
【0004】
この可撓性容器を使用するには、キャップを除去し、ノズルを内視鏡鉗子口や薬液噴霧・散布用チューブの送液口金等の所定の排出部位に挿通させ、可撓性容器を圧縮変形させることにより内圧を上昇させて液体を排出することにより、患部に投与して使用される。
【0005】
このようなプラスチック製の可撓性容器によれば、バイアル瓶に収容された液体を注射針付シリンジに採取してから使用するものに比べて、使用時の取り扱いが容易であり、また、過誤によるミスを防止し易く、更に、注射針を用いないため廃棄等の手間も抑制できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなプラスチック製の可撓性容器では、可撓性容器本体を十分に変形し易く形成する必要があるが、排出部を開口後に排出するまでの間、例えば、プラスチック製の可撓性容器を移動させたり、ノズルを所定の排出部位に配置する操作において、可撓性容器が変形されて収容された液体が所定の排出部位以外で排出され易く、そのため容器が取り扱い難いという問題点があった。
【0007】
しかも、可撓性容器本体を構成する容器壁材料が可撓性を有するものに限定されてしまうため、収容される液体に対して最適な容器壁材料を選択し難く、収容された液体によっては、例えば、一部の成分が容器壁に吸着されたり、他の一部の成分が容器壁を透過し、収容された液体の変質が起こり易く、収容された液体の保持安定性に欠け易いという問題点もあった。
【0008】
そこで、この発明は、排出部を開口後にも所定の排出部位に配置するまでは液体が排出されず、排出部の開口後でも取り扱い易いとともに、液体の保存安定性を確保し易い複合容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、排出部及び閉塞された気体導入部を備えた硬質液体容器と、該硬質液体容器の前記気体導入部に気密に接続されて密封された気体収容体と、前記気体収容体内に外部から操作可能に設けられ、前記気体導入部を開口可能な導入部開口手段とを備えてなり、前記導入部開口手段により前記気体導入部が開口されて、前記気体収容体内の気体が前記硬質液体容器内に導入されることにより、前記硬質液体容器に収容された液体が前記排出部から排出可能に構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記硬質液体容器に予め液体が収容された状態で、前記排出部が閉塞されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記硬質液体容器が支持された際に実質的に変形不能な硬質材料により前記硬質液体容器の容器壁が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記気体収容体の容器壁が、押圧により変形可能な可撓性材料からなることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記気体収容体の容積を、前記硬質液体容器の容積より多く減少させることが可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の構成に加え、前記導入部開口手段が、前記硬質液体容器と一体に成形され、容器本体に対して傾倒されることにより破断可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の構成に加え、前記導入部開口手段が、前記気体収容体の内部に配置されて、除菌フィルタを備えた基部と、該基部から前記気体導入部側に向けて延びる中空針とを備え、前記中空針により前記気体導入部を刺通することにより、前記気体収容体内の気体が前記除菌フィルタを経由して前記硬質液体容器内に導入可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、硬質液体容器が閉塞された気体導入部を備え、気体導入部が開口されて気体が導入されることにより、硬質液体容器に収容された液体が排出部から排出可能に構成されているので、排出部が開口された後であっても気体導入部を開口するまでは液体が排出部から排出されることがない。そのため、排出部を所定の排出部位に配置するまで気体導入部を開口させなければ、液体を排出させることがない。また、気体導入部を開口させる導入部開口手段が気体収容体の外部から操作可能に設けられているので、排出部を所定の排出部位に配置した後、容易に気体導入部を開口させることができ、気体導入部の開口後には、密封された気体収容体が気体導入部に気密に接続されているので、気体収容体から硬質液体容器に容易に気体を導入して、硬質液体容器内の内圧を増加させて液体を容易に排出させることができる。そのため、排出部を開口させた状態でも複合容器の取り扱いが容易である。
【0017】
しかも、硬質液体容器と気体収容体とが気密に接続された別部材からなるので、硬質液体容器を構成する容器壁材料を気体収容体と異ならせることができ、収容する液体に応じて適切な容器壁材料を選択することにより、液体の保持安定性を確保でき、液体の変質を防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、硬質液体容器に予め液体が収容された状態で排出部が閉塞されているので、使用時には、排出部を開口させて、所定の排出部位に排出部を配置するだけで、直ちに液体を排出させることができ使い勝手がよい。しかも、硬質液体容器が液体に応じた適切な材料で形成されているため、複合容器の保存時の長期間において、液体の変質を防止することができる。そのため、液体の保存安定性と、使用時の複合容器の取り扱いの容易性とをより向上することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、硬質液体容器が支持された際に実質的に変形不能な硬質材料により硬質液体容器の容器壁が形成されているので、排出部を開口後に誤って硬質液体容器が外部から圧縮されても、液体が排出されることがなく、使用時の複合容器の取り扱いの容易性をより向上することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、気体収容体の容器壁が押圧により変形可能な可撓性材料からなるので、液体の排出時に気体収容体の容器壁を変形させて気体導入部を開口させることができると共に、気体収容体を圧縮して容積を減少させることにより、硬質液体容器内に気体収容体内の気体を導入することが可能である。そのため、気体を硬質液体容器に供給するための特別な装置が不要で、複合容器の構成を簡単にすることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、気体収容体の容積を硬質液体容器の容積より多く減少させることが可能であるので、液体の排出時に硬質液体容器内の液体の全量を排出させ易くすることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、導入部開口手段が硬質液体容器と一体に成形され、容器本体に対して傾倒されることにより破断可能に構成されているので、気体収容部の外部から気体導入部を容易に開口させることができ、使い勝手がよい。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、除菌フィルタを備えた基部に中空針を備え、この中空針で気体導入部を刺通することにより、気体収容体内の気体が除菌フィルタを経由して硬質液体容器内に導入可能に構成されているので、除菌された状態の気体により硬質液体容器内の内圧を上昇させることができ、硬質液体容器内の液体が菌により汚染されることを防止し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態1]
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図4は、実施の形態1の複合容器を示す。
図において、符号10は複合容器を示し、硬質液体容器11と気体収容体12とを備えている。
硬質液体容器11は、中空の略円筒形状を呈する容器本体13の一方の端部側に、排出部としてのノズル14が設けられ、他方の端部には閉塞された状態で気体導入部15が設けられている。
【0025】
この硬質液体容器11の容器本体13内部には、液体が収容されている。この液体は使用時に収容してもよいが、この実施の形態では、予め収容されている。
硬質液体容器11に収容される液体としては、液体であれば特に限定されるものではなく、例えば薬液等の医療用液体を収容することが可能である。医療用液体としては、経口薬液や内視鏡の鉗子用通路やチューブから胃腸に投与される薬液等を収容でき、エピネフリン注射液等の血管収縮剤、アルギン酸ナトリウム、トロンビン等の止血剤、臭化ブチルスコポラミン、グルカゴン等の顫動抑制剤が挙げられ、L−メントール等の揮発性成分を含有するものであってもよい。
【0026】
硬質液体容器11の内部には、液体と共に気体が収容されていてもよいが、気体導入部15が閉塞されてノズル14が開口された状態において、収容された液体がノズル14から漏出し難いという理由で、気体の収容量を少なくするのが好適である。
【0027】
このような硬質液体容器11の容器壁は、使用者が複合容器10を支持した際、実質的に変形を生じない、即ち、変形による容積変化で収容された液体が滴下しない程度の強度を確保できるような硬質材料により成形されるのが好ましい。具体的には、容器壁が0.1Kg/cm2以下の圧力で押圧した際に変形しない程度の強度を確保できるものが好適である。
この容器壁材料としては、内部に収容される液体に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、医療用液体を収容する場合には、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、環状ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、ガラスなどを用いることが可能である。このうち、可撓性が少なく、揮発性成分に対するバリヤー性が高く、異物の発生が少ない等の理由で、環状ポリオレフィンを用いることがより好ましい。
【0028】
硬質液体容器11の一端側のノズル14は、このような容器本体13と同一材料により一体に形成されている。このノズル14の孔径は、特に限定されるものではないが、気体導入部15が閉塞されてノズル14が開口された状態において、収容された液体がノズル14から排出され難いという理由で、φ4mm以下とするのが好適である。
このノズル14の先端には、硬質液体容器11に液体が収容された状態で、着脱可能なキャップ16が螺合されており、ノズル14が気密に閉塞されている。
【0029】
一方、気体導入部15には、容器本体13の端面から突出した導入部開口手段としての可倒突片17が、上述の容器本体13と同一材料により一体に形成されている。この可倒突片17は、容器本体13に対して傾倒させることにより、容器本体13の端面部分に形成されている括れ部17aにおいて破断され、この部分が開口されて容器本体13の内部と気体収容体12の内部とが連通されるように構成されている。
【0030】
次に、気体収容体12は、中空の収容体本体18の一端側に硬質液体容器11との接続用開口部19が設けられ、他の部分が全て閉塞されて構成されている。この気体収容体12は収容体本体18の内部に気体導入部15の傾倒突片17が収容された状態で、環状のガスケット19aを介して接続用開口部19を容器本体13の気体導入部15側の外周に弾性により気密に嵌合することにより、硬質液体容器11に一体的に組合わされている。
【0031】
この実施の形態では、気体収容体12は、使用者が押圧することにより容易に変形可能な程度の可撓性を有する容器壁材料から形成されている。このような容器壁材料としては、例えば、各種のゴム材料、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂などを例示することができる。
このうち、内部に配置された傾倒突片を視認可能な程度の透明性を有する樹脂を用いることがより好適である。
気体収容体12は、これらの可撓性を有する容器壁材料から薄肉、且つ、気密に形成されることが好ましく、接続用開口部19を収容体本体18より厚肉に形成することにより接合強度を確保するようにしてもよい。
【0032】
また、気体収容体12の大きさは、特に限定されるものではないが、硬質液体容器11内の液体を全量排出させやすいという理由で、気体収容体12を変形させた際、硬質液体容器11の容積より多く容積を減少させることが可能な大きさとするのが好ましい。
【0033】
以上のような複合容器10を使用するには、まず、図2に示すように、キャップ16を取り外し、ノズル14を開口させる。この状態で、複合容器10を支持して、ノズル14を内視鏡鉗子口や薬液噴霧・散布用チューブの送液口金等、所定の排出部位としての注入口Pに挿入する。
次に、図3に示すように、気体収容体12を変形させることにより、可倒突片17を傾倒させて、括れ部17aの部位で破断させる。これにより、気体導入部15を開口する。
【0034】
そして、図4に示すように、気体収容体12を更に変形させることにより、気体収容体12の容積を減少させる。すると、気体収容体12内の気体が、気体導入部15に形成された開口を通して、硬質液体容器11の容器本体13内に導入される。これにより、容器本体13内の内圧が上昇し、硬質液体容器11内に収容されていた液体がノズル14の先端から排出され、内視鏡鉗子口や薬液噴霧・散布用チューブを介して、患部に投与される。
【0035】
以上のような複合容器10によれば、バイアル瓶に収容された液体を注射針付シリンジに採取してから使用するものに比べると、採取作業が不要で取り扱いが容易であり、また、シリンジを用いないため過誤により注射液として投与するような取り扱い上のミスを防止でき、更に、注射針を用いないため廃棄等の手間も少ない。
【0036】
そして、硬質液体容器11が閉塞された気体導入部15を備え、気体導入部15が開口されて気体が硬質液体容器11内に導入されることにより、収容された液体がノズル14から排出するように構成されているため、ノズル14が開口された後であっても気体導入部15を開口するまでは液体がノズル14から排出されることがなく、ノズル14を注入口Pに配置するまで、液体を排出させることがない。そのため、液体の無駄を防止でき、周辺に液体を付着させて環境を悪化させることがない。
【0037】
また、気体導入部15を開口させる可倒突片17が気体収容体12の外部から操作可能に設けられているので、ノズル14を注入口Pに配置した後、容易に気体導入部15を開口させることができると共に、気体導入部15の開口後には、密封された気体収容体12が気体導入部15に気密に接続されているので、気体収容体12から硬質液体容器11に容易に気体を導入して内圧を増加させ、液体を容易に排出させることができる。
従って、ノズル14を開口させた後に、複合容器10の取り扱いが容易である。
【0038】
しかも、硬質液体容器11と気体収容体12とが別部材からなるので、硬質液体容器11を構成する容器壁材料を気体収容体12と異ならせることができ、その結果、収容する液体に応じて硬質液体容器11の適切な容器壁材料を選択することで、液体の保持安定性を確保でき、液体の変質を防止することができる。
【0039】
また、この実施の形態1では、硬質液体容器11に予め液体が収容された状態でノズル14が閉塞されているので、使用時に、キャップ16を取り外して注入口Pにノズル14を配置するだけで、気体導入部15を開口させて液体を排出させることができて使い勝手がよい上、硬質液体容器11が液体に応じた適切な材料で形成されているので、長期間保存しても、収容されている液体の変質を防止し易い。
【0040】
更に、この実施の形態1では、気体収容体12の容器壁が押圧により変形可能な可撓性材料からなるので、気体収容体12の容器壁を変形させて気体導入部15を開口させることができると共に、硬質液体容器11内に気体収容体12内の気体を導入することが可能であり、気体を硬質液体容器11に供給するための特別な装置が不要で、複合容器10の構成を簡単にすることができる。
【0041】
ここでは、可倒突片17が硬質液体容器11と一体に成形され、容器本体13に対して傾倒することにより破断可能に構成されているので、気体収容体12の外部から気体導入部15を容易に開口させ易い。
【0042】
なお、上記実施の形態1では、気体収容体12として、可撓性を有する容器壁材料により形成したものの例について説明したが、例えば、液体容器11の気体導入部15に気密に装着できると共に、外部から操作して気体導入部15を開口させて圧縮気体を噴出可能な圧縮気体の収容体などを用いることも可能である。
【0043】
また、上記ではノズル14にキャップ16を螺合することにより、ノズル14を気密に閉塞した例について説明したが、ノズル14の先端に一体的に成形されて破断可能な破断チップを設けることにより閉塞することも可能であり、更に、他の方法によりノズル14を閉塞することも可能である。
【0044】
[実施の形態2]
次に、図5を用いて実施の形態2について説明する。
この実施の形態2の複合容器20は、硬質液体容器11の気体収容体12側の端部付近と、気体収容部12の接続用開口部19との構成が異なる他は、実施の形態1と同一の構成を有している。
【0045】
ここでは、硬質液体容器11の容器本体13の気体収容体12側に円筒状の縮径部22が設けられており、この縮径部22の端部に実施の形態1と同一の気体導入部15が設けられている。この縮径部22の外周には、外径が容器本体13の縮径部22近傍の外径と同一で、内径が縮径部22の外周に嵌合可能な円筒状のガスケット23が装着されている。
【0046】
また、容器本体13の縮径部22近傍の外周囲には環状に凹部24が形成されている。
一方、気体収容体12の接続用開口部19は、ガスケット23の外周と嵌合可能であると共に、先端に容器本体13の凹部24に嵌合可能な凸部25が環状に形成されている。
そして、この気体収容体12は、接続用開口部19をガスケット23に嵌合するとともに、凸部25を容器本体13の凹部24に嵌合させて、硬質液体容器11に一体的に組み合わされている。
【0047】
このような構成を有する複合容器20では、実施の形態1と同様の効果を得ることができる上、気体収容体12と硬質液体容器11とをより確実に気密に接続することができる。
【0048】
[実施の形態3]
次に、図6乃至図7を用いて、実施の形態3について説明する。
この実施の形態3の複合容器30は、硬質液体容器31と気体収容体32とを備えている。
硬質液体容器31は、実施の形態1と同様に、中空の略円筒形状を呈する容器本体33の一方の端部側に、ノズル34及びキャップ36が設けられ、他方の端部には閉塞された状態で平面状の気体導入部35が設けられている。また、容器本体33内部には、液体又は液体及び気体が収容されている。
【0049】
気体収容体32は、実施の形態1と同様に、中空の収容体本体38の一端側に硬質液体容器31との接続用開口部39が設けられ、他の部分が全て閉塞されて構成されている。
接続用開口部39は、環状のガスケット39aを介して容器本体33の気体導入部35側の外周に弾性により気密に嵌合されている。
【0050】
収容体本体38の容器壁の側周面には、蛇腹構造部41が設けられており、ノズル34及び気体導入部35が設けられた長手方向、ここでは、ノズル34の延長方向に収容体本体38が収縮可能となっている。
【0051】
収容体本体38の内部には、収容体本体38の閉塞端部38a側から硬質液体容器31側に向けて、気体導入部35を開口可能な導入部開口手段としての刺通突起部42が立設されている。
この刺通突起部42は、樹脂により形成されており、閉塞端部38aに設けられた中空基部43と、中空基部43から硬質液体容器31の気体導入部35側に延びる中空針44とを備えており、中空基部43の側面に設けられた連通孔45と、中空基部43と中空針44との接合部に設けられた除菌フィルタ46とを通して、収容体本体38の内部と中空針44の内部とが連通している。
【0052】
以上のような複合容器30を使用するには、まず、キャップ36を取り外し、ノズル34を開口させる。この状態で、複合容器30を支持して、ノズル34を内視鏡鉗子口や薬液噴霧・散布用チューブの送液口金等の所定の注入口Pに挿入する。
【0053】
次に、図7に示すように、気体収容体32の蛇腹構造部41を硬質液体容器31側に圧縮して変形させることにより、刺通突起部42を移動させ、中空針44の先端で平面状の気体導入部35を破断して刺通する。このとき、硬質液体容器31の容器壁材料の肉厚が気体導入部35では薄く形成されているため、中空針44により容易に刺通することができる。
【0054】
更に気体収容体32の蛇腹構造部41を硬質液体容器31側に圧縮して変形させると、収容体本体48内の気体が、連通孔45から中空基部43内を経由し、除菌フィルタ46を通過した後、中空針44から硬質液体容器31内に導入される。
これにより、除菌された状態の気体により容器本体33内の内圧を上昇させることができ、硬質液体容器31内の液体が菌により汚染されることなく、ノズル14の先端から注入口Pに排出して、内視鏡鉗子口や薬液噴霧・散布用チューブを介して、患部に投与することができる。
【0055】
以上のような複合容器30によれば、実施の形態1と同様に、ノズル34が開口された後であっても気体導入部35を開口するまでは液体がノズル34から排出されることがなく、また、気体収容体32から硬質液体容器31に容易に気体を導入して液体を排出させることができ、複合容器30の取り扱いが容易である。しかも、収容する液体に応じて硬質液体容器31の適切な容器壁材料を選択することで、液体の保持安定性を確保でき、液体の変質を防止することができる。
【0056】
また、使用時に、キャップ36を取り外して注入口Pにノズル34を配置して、気体導入部35を開口させるだけで、液体を排出させることができて使い勝手がよい上、硬質液体容器31が液体に応じた適切な材料で形成されているので、長期間液体の変質を防止し易い。
【0057】
更に、蛇腹構造部41により気体収容体12を変形させるので、気体導入部35を容易に開口させることができ、硬質液体容器31内に気体収容体32内の気体を容易に導入することができる。
【0058】
加えて、硬質液体容器31が、支持された際に実質的に変形不能な硬質材料により形成されているので、ノズル34を開口後に、誤って硬質液体容器31が外部から圧縮されても、液体が排出されることがない。
【0059】
また、気体収容体32の容積を硬質液体容器31の容積より多く減少させることが可能に構成されているので、液体の排出時に硬質液体容器31内の液体の全量を排出させ易い。
【0060】
[実施の形態4]
次に、図8及び図9を用いて、実施の形態4について説明する。
実施の形態4の複合容器50は、気体導入部55及び刺通突起部62の構成と、接続用開口部59と硬質液体容器51との接続部分の構成が異なる他は、実施の形態3と同様である。
【0061】
ここでは、気体導入部55は、平面状に設けられた容器本体53の端部壁53aに、ゴム材料等からなる平板パッキン56を備えている。この平板パッキン56は、容器本体53の端部壁53aと気体収容体52の接続用開口部59との間で液密に挟持されている。
【0062】
一方、刺通突起部62は、収容体本体58の内部に閉塞端部58a側から硬質液体容器51に向けて立設されており、互いに対向して中間部分で離間する一対の多関節体61と、両多関節片61の先端に固定された中空基部63と、中空基部63に固定された中空針64とから構成されている。
【0063】
一対の多関節体61は、それぞれ3片のプレート部61a、61b、61cが関節部61d、61eにより互いに相対傾倒自在に連結されており、各プレート部61aの一端部が収容体本体58の閉塞端部58aに互いに接して傾倒自在に接続されると共に、各プレート部61cの他端が中空基部63に互いに接して傾倒自在に接続され、各プレート61bが互いに離間した状態配置されている。
なお、中空基部63及び中空針64の構成は、実施の形態3と同様である。
【0064】
この刺通突起部62は、一対の多関節体61の互いに対向して離間するプレート61bを、当接させる方向に移動させることにより伸長し、中空基部63及び中空針64が硬質液体容器51側に移動するように構成されている。
【0065】
また、接続用開口部59と硬質液体容器51との接続部分は、接続用開口部59の先端に設けられた環状の凸部67が硬質液体容器51の外周囲に設けられた段差部68に嵌合することにより、気体収容体62が硬質液体容器51の気体導入部55に気密に接続されている。
【0066】
このような構成を有する複合容器50によれば、実施の形態3と同様の効果が得られる。
しかも、気体導入部55を中空針64で刺通することにより破断するには、気体収容体52を側面側から径方向に圧縮することにより、多関節体61を伸長させ、中空基部63及び中空針64を硬質液体容器51側に移動させればよく、その後に収容体本体58内の気体を硬質液体容器51内に導入するには、収容体本体58を側面側から更に圧縮すればよいため、気体収容体52を側面側から押し潰すように変形させるだけで硬質液体容器51のノズル34から液体を排出させることができる。そのため、気体収容体52を曲げ方向に変形させる必要がなく、変形させ易くて排出時の操作が容易である。
【0067】
また、気体導入部55を中空針64で刺通後には、中空針64が平板パッキン56を貫通して硬質液体容器51内に挿入されるので、中空針64と平板パッキン56との間に隙間が発生することがない。そのため、除菌フィルター46を経由しない気体が気体収容体52から硬質液体容器51内に導入されることがなく、除菌フィルター46を経由した清浄な気体だけを硬質液体容器51内に導入させることができ、硬質液体容器51内の液体の菌による汚染をより防止し易い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の実施の形態1の複合容器の側面図である。
【図2】実施の形態1の複合容器の操作を説明する断面図であり、気体導入部の開口前の状態を示す。
【図3】実施の形態1の複合容器の操作を説明する断面図であり、気体導入部の開口時の状態を示す。
【図4】実施の形態1の複合容器の操作を説明する断面図であり、気体導入部の開口後の状態を示す。
【図5】この発明の実施の形態2の複合容器を示す断面図であり、気体導入部の開口前の状態を示す。
【図6】この発明の実施の形態3の複合容器を示す断面図であり、気体導入部の開口前の状態を示す。
【図7】実施の形態3の複合容器の操作を説明する断面図であり、気体導入部の開口後の状態を示す。
【図8】この発明の実施の形態4の複合容器を示す断面図であり、気体導入部の開口前の状態を示す。
【図9】実施の形態4の複合容器の操作を説明する断面図であり、気体導入部の開口後の状態を示す。
【符号の説明】
【0069】
10、20、30、50 複合容器
11、31、51 硬質液体容器
12、32、52 気体収容体
13、33、53 容器本体
14、34 ノズル
15、35 気体導入部
16、36 キャップ
17 可倒突片
18、38、58 収容体本体
38a、58a 閉塞端部
19、39、59 接続用開口部
19a、23、39a ガスケット
41 蛇腹構造部
42、61 刺通突起部
43 中空基部
44 中空針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出部及び閉塞された気体導入部を備えた硬質液体容器と、
該硬質液体容器の前記気体導入部に気密に接続されて密封された気体収容体と、
前記気体収容体内に外部から操作可能に設けられ、前記気体導入部を開口可能な導入部開口手段とを備えてなり、
前記導入部開口手段により前記気体導入部が開口されて、前記気体収容体内の気体が前記硬質液体容器内に導入されることにより、前記硬質液体容器に収容された液体が前記排出部から排出可能に構成されたことを特徴とする複合容器。
【請求項2】
前記硬質液体容器に予め液体が収容された状態で、前記排出部が閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記硬質液体容器が支持された際に実質的に変形不能な硬質材料により前記硬質液体容器の容器壁が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記気体収容体の容器壁が、押圧により変形可能な可撓性材料からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の複合容器。
【請求項5】
前記気体収容体の容積を、前記硬質液体容器の容積より多く減少させることが可能であることを特徴とする請求項4に記載の複合容器。
【請求項6】
前記導入部開口手段が、前記硬質液体容器と一体に成形され、容器本体に対して傾倒されることにより破断可能に構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合容器。
【請求項7】
前記導入部開口手段が、前記気体収容体の内部に配置されて、除菌フィルタを備えた基部と、該基部から前記気体導入部側に向けて延びる中空針とを備え、
前記中空針により前記気体導入部を刺通することにより、前記気体収容体内の気体が前記除菌フィルタを経由して前記硬質液体容器内に導入可能に構成されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の複合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−247000(P2006−247000A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64945(P2005−64945)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(302053814)有限会社ケーアールビジネス (10)
【出願人】(597017247)株式会社ナミコス (9)
【Fターム(参考)】